特許第5977645号(P5977645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977645
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】リカバリー機能付きマーキング装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   B21C51/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-240554(P2012-240554)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-87838(P2014-87838A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】502134292
【氏名又は名称】ベクトル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健治
(72)【発明者】
【氏名】工藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】小田 智弘
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05316397(US,A)
【文献】 特開2008−249457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、該シリンダーに往復動自在に設けられたピストンと、該ピストンの先端側に設けられたスタイラスとを備えたエアペンを4つ以上一列に配置してなる振動ペン装置、および、前記シリンダーに接続されて前記ピストンをその長手方向に振動させる駆動手段を備え、被マーキング体に前記スタイラスの先端を打ち付けて情報を刻印するマーキング装置であって、
前記被マーキング体に刻印された情報を読み取り、読み取った当該情報から刻印不良を検出する不良検出器または前記被マーキング体に対する前記スタイラス打刻時の振動から刻印不良を検出する不良検出器と、前記不良検出器からの刻印不良の情報に基づいて前記複数のエアペンの動作を切り替える制御装置とを備え、
前記複数のエアペンのうち、何れかのエアペンによる刻印不良が発生したことを前記不良検出器が検出した場合、故障したエアペンを故障エアペンとして記憶し、前記故障エアペンに代えて、正常エアペンのいずれかに刻印を代替えさせ、前記故障エアペンが刻印するべき予定の情報を前記正常エアペンのいずれかで被マーキング体に刻印する機能を前記制御装置に具備させたリカバリー機能付きマーキング装置。
【請求項2】
前記エアペンが4本一列に配置され、前記故障エアペンが1本の場合、該故障エアペンの隣の正常エアペンを用いて刻印し、前記故障エアペンが2本の場合、該2本の故障エアペンの刻印情報を1度の刻印で同時に補える残り2本のエアペンを選択し、前記2本の故障エアペンの刻印情報を1度の刻印で同時に補えない場合、前記2本の故障エアペンの刻印情報を他の1本の正常エアペンにて順次刻印し、前記故障エアペンが3本の場合 、残り1本の正常エアペンで全ての刻印情報を刻印する機能を前記制御装置に備えたことを特徴とする請求項1に記載のリカバリー機能付きマーキング装置。
【請求項3】
シリンダーと、該シリンダーに往復動自在に設けられたピストンと、該ピストンの先端側に設けられたスタイラスとを備えたエアペンを4つ以上一列に配置してなる振動ペン装置、および、前記シリンダーに接続されて前記ピストンをその長手方向に振動させる駆動手段を備え、被マーキング体に前記スタイラスの先端を打ち付けて情報を刻印するマーキング装置であって、
前記被マーキング体に刻印された情報を読み取り、読み取った当該情報から刻印不良を検出する不良検出器または前記被マーキング体に対する前記スタイラス打刻時の振動から刻印不良を検出する不良検出器と、前記不良検出器からの刻印不良の情報に基づいて前記複数のエアペンの動作を切り替える制御装置とを備え、
前記1つの被マーキング体に対する全ての刻印が終了した後、前記不良検出器により刻印不良を発見した場合、前記刻印不良に対応する故障エアペンのペン番号を制御装置に記憶し、故障エアペンではない正常エアペンを用いて前記刻印不良部分のみを再刻印することで前記全ての刻印が終了した前記被マーキング体に対し刻印不良をリカバリーする機能を前記制御部に具備させたリカバリー機能付きマーキング装置。
【請求項4】
シリンダーと、該シリンダーに往復動自在に設けられたピストンと、該ピストンの先端側に設けられたスタイラスとを備えたエアペンを4つ以上一列に配置してなる振動ペン装置、および、前記シリンダーに接続されて前記ピストンをその長手方向に振動させる駆動手段を備え、被マーキング体に前記スタイラスの先端を打ち付けて情報を刻印するマーキング装置であって、
前記被マーキング体に刻印された情報を読み取り、読み取った当該情報から刻印不良を検出する不良検出器または前記被マーキング体に対する前記スタイラス打刻時の振動から刻印不良を検出する不良検出器と、前記不良検出器からの刻印不良の情報に基づいて前記複数のエアペンの動作を切り替える制御装置とを備え、
全てのエアペンの刻印回数を計数して前記制御装置に記憶し、全てのエアペンの刻印回数を比較して規定の閾値以上にエアペンの刻印回数の差異を生じた場合、刻印回数の少ないエアペンを優先的に使用する機能を前記制御装置に備えたことを特徴とするリカバリー機能付きマーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品等に二次元コード、ロット番号などを刻印するために使用されるマーキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マーキング装置は、自動車や建設機械等の自動化された工場においてロット番号等の英数字や合いマークの刻印などに使用されている。
例えば、下記特許文献1には、シリンダーと、シリンダー内で往復運動するピストンと、ピストンを基端側に付勢する弾性部材と、このピストンの往復運動に追従して先端部でワークの表面を打刻するスタイラスとを備えたマーキング装置用振動ペンが開示されている。
この振動ペンを用いて機械部品に印字を行うには、圧縮性流体を利用してピストンおよびスタイラスを振動させ規定位置に打刻し、このスタイラスを振動ペンごと移動させながら必要な位置毎に打刻を繰り返す。この操作により、機械部品の被刻印部に文字、数字、記号などをマーキングすることができる。また、スタイラスを一ヵ所で振動させるとその部分にドットが形成されるので、そのドットを所定のパターンになるように複数形成することにより、いわゆる二次元コードを形成することができる。
【0003】
また、下記特許文献2には、シリンダーと、先端にスタイラスを有するピストンと、該ピストンの往復手段を具備したマーキング装置用振動ペンを4基集合配置してなるマーキング装置が開示されている。
特許文献2に記載のマーキング装置によれば、スタイラスを4本集合配置してなり、4本のスタイラスを独自に振動制御することで4本のスタイラスにより複数の文字情報などのマーキングあるいは二次元コードなどの刻印処理ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−99798号公報
【特許文献2】特開2006−272341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マーキング装置はスタイラスの先端を機械部品に打ち付ける打刻によりマーキングを行う装置であり、継続使用によりスタイラスの先端が損耗するので、定期的にスタイラスを交換する必要が生じ、スタイラスや装置のメンテナンスを行う必要がある。
ところで、刻印の効率を向上するために複数のスタイラス、例えば4本のスタイラスを並列して設け、各スタイラスを独自に往復駆動する機構を設けたマーキング装置が登場している。
【0006】
4本のスタイラスを個別駆動することにより打刻を行うマーキング装置にあっては、4本のスタイラスのうち、いずれかを駆動する機構が故障した場合、故障したスタイラスが打刻するべき刻印が抜けてしまうこととなり、刻印不良を引き起こす問題があった。
例えば、4本スタイラスの駆動装置のうち、いずれかの駆動装置が故障した場合、故障したスタイラスに対応する刻印が抜けて刻印不良となってしまう問題があった。また、スタイラスを駆動する装置自体の故障が無い場合であっても、スタイラスの先端部が徐々に摩耗することで刻印不良を引き起こすこともある。
【0007】
次に、複数のスタイラスを有するマーキング装置では、刻印回数の多いスタイラスの摩耗状態により、メンテナンスの間隔が決まってしまう問題がある。例えば、複数本のスタイラスのうち、摩耗量が一番多いスタイラスを交換したとしても、二番目に摩耗量が多いスタイラスの交換時期が短い間隔で到来するなど、4本のスタイラスを順番にメンテナンスしなくてはならない問題がある。
また、摩耗量が大きいスタイラスの交換時に、摩耗が生じている他のスタイラスも交換しておくなどの操作を行うことで頻繁なメンテナンスを回避できる。ところが、この操作では交換時期が来ていない摩耗量が少ないスタイラスを交換することになるので、不要なメンテナンス費用が発生する問題がある。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、複数のスタイラスを備えてそれらのスタイラスを個別駆動できるマーキング装置において、故障したスタイラスを他の故障していないスタイラスで補う機能を有し、刻印不良を生じないマーキング装置を提供することを目的とする。
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、刻印完了後に刻印不良を発見した場合、故障したスタイラスを制御部に記憶しておき、故障していないスタイラスで再刻印することで刻印不良をリカバリーすることができるマーキング装置の提供を目的とする。
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、刻印数が少ないスタイラスを優先的に使用することによりスタイラス毎の摩耗量を同量としてメンテナンス間隔を延ばすことができるマーキング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明は、シリンダーと、該シリンダーに往復動自在に設けられたピストンと、該ピストンの先端側に設けられたスタイラスとを備えたエアペンを4つ以上一列に配置してなる振動ペン装置、および、前記シリンダーに接続されて前記ピストンをその長手方向に振動させる駆動手段を備え、被マーキング体に前記スタイラスの先端を打ち付けて情報を刻印するマーキング装置であって、前記被マーキング体に刻印された情報を読み取り、読み取った当該情報から刻印不良を検出する不良検出器または前記被マーキング体に対する前記スタイラス打刻時の振動から刻印不良を検出する不良検出器と、前記不良検出器からの刻印不良の情報に基づいて前記複数のエアペンの動作を切り替える制御装置とを備え、前記複数のエアペンのうち、何れかのエアペンによる刻印不良が発生したことを前記不良検出器が検出した場合、故障したエアペンを故障エアペンとして記憶し、前記故障エアペンに代えて、正常エアペンのいずれかに刻印を代替えさせ、前記故障エアペンが刻印するべき予定の情報を前記正常エアペンのいずれかで被マーキング体に刻印する機能を前記制御装置に具備させたリカバリー機能付きマーキング装置に関する。
【0010】
本発明において、前記エアペンが4本一列に配置され、前記故障エアペンが1本の場合、該故障エアペンの隣の正常エアペンを用いて刻印し、前記故障エアペンが2本の場合、該2本の故障エアペンの刻印情報を1度の刻印で同時に補える残り2本のエアペンを選択し、前記2本の故障エアペンの刻印情報を1度の刻印で同時に補えない場合、前記2本の故障エアペンの刻印情報を他の1本の正常エアペンにて順次刻印し、前記故障エアペンが3本の場合、残り1本の正常エアペンで全ての刻印情報を刻印する機能を前記制御装置に備えた先に記載のリカバリー機能付きマーキング装置であっても良い。
【0011】
本発明は、シリンダーと、該シリンダーに往復動自在に設けられたピストンと、該ピストンの先端側に設けられたスタイラスとを備えたエアペンを4つ以上一列に配置してなる振動ペン装置、および、前記シリンダーに接続されて前記ピストンをその長手方向に振動させる駆動手段を備え、被マーキング体に前記スタイラスの先端を打ち付けて情報を刻印するマーキング装置であって、前記被マーキング体に刻印された情報を読み取り、読み取った当該情報から刻印不良を検出する不良検出器または前記被マーキング体に対する前記スタイラス打刻時の振動から刻印不良を検出する不良検出器と、前記不良検出器からの刻印不良の情報に基づいて前記複数のエアペンの動作を切り替える制御装置とを備え、前記1つの被マーキング体に対する全ての刻印が終了した後、前記不良検出器により刻印不良を発見した場合、前記刻印不良に対応する故障エアペンのペン番号を制御装置に記憶し、故障エアペンではない正常エアペンを用いて前記刻印不良部分のみを再刻印することで前記全ての刻印が終了した前記被マーキング体に対し刻印不良をリカバリーする機能を前記制御部に具備させたリカバリー機能付きマーキング装置に関する。


【0012】
本発明は、シリンダーと、該シリンダーに往復動自在に設けられたピストンと、該ピストンの先端側に設けられたスタイラスとを備えたエアペンを4つ以上一列に配置してなる振動ペン装置、および、前記シリンダーに接続されて前記ピストンをその長手方向に振動させる駆動手段を備え、被マーキング体に前記スタイラスの先端を打ち付けて情報を刻印するマーキング装置であって、
前記被マーキング体に刻印された情報を読み取り、読み取った当該情報から刻印不良を検出する不良検出器または前記被マーキング体に対する前記スタイラス打刻時の振動から刻印不良を検出する不良検出器と、前記不良検出器からの刻印不良の情報に基づいて前記複数のエアペンの動作を切り替える制御装置とを備え、
全てのエアペンの刻印回数を個々に計数して前記制御装置に記憶し、全てのエアペンの刻印回数を比較して規定の閾値以上にエアペンの刻印回数の差異を生じた場合、刻印回数の少ないエアペンを優先的に使用する機能を前記制御装置に備えたことを特徴とするマーキング装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、故障したエアペンに伴う刻印不良の部分を他の正常エアペンで補い、刻印できるので、刻印不良を生じていない適正な刻印を被マーキング体に形成できる。
本発明によれば、全ての刻印が終了した時点で刻印不良を発見した場合、故障したエアペンを特定し、正常エアペンに置き換えて再刻印することにより、刻印が完了した被マーキング体に対し刻印不良をリカバリーできる。
更に、全てのエアペンの刻印回数を計測しておき、刻印回数において特定の閾値より差がついた場合、刻印回数の少ないエアペンを優先的に使用し打刻することで、複数のスタイラス間の刻印回数を均一化してメンテナンス期間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明に係るマーキング装置の第一実施形態を示すもので、図1(a)はその全体構成を示す図、図1(b)は同装置に備えられる振動ペン装置の平面図である。
図2図2は同振動ペン装置の内部構造を示すもので、図2(a)は振動ペン装置の断面図、図2(b)は振動ペン装置の分解断面図。
図3図3は同振動ペン装置に組み込まれているエアペンの構造を示すもので、図3(a)はエアペンの組み立て状態を示す断面図、図3(b)はエアペンを分解した状態を示す断面図。
図4図4は同エアペンの動作について示すもので、図4(a)はスタイラスが後退している未振動状態を示す断面図、図4(b)はエアペンにエアを供給し始めた初期状態を示す断面図、図4(c)はエア供給によりスタイラスが伸張した状態を示す断面図、図4(d)は供給したエアが排気孔から抜ける状態を示す断面図、図4(e)はスタイラスが後退して初期状態に復帰した状態を示す断面図。
図5図5は同エアペンの動作について示すもので、図5(a)は4本のスタイラスを未振動状態とした場合の正面図、図5(b)は4本のスタイラスのうち1本のスタイラスを振動状態とした場合の正面図、図5(c)は4本のスタイラスのうち2本のスタイラスを振動状態とした場合の正面図、図5(d)は4本のスタイラスを振動状態とした場合の正面図である。
図6図6は本発明に係るマーキング装置において4本のスタイラスを振動させて8×8ドットの4つの領域にそれぞれ文字を刻印した状態の一例を示す説明図。
図7図7図6に示す8×8ドットの4つの領域に描いたそれぞれの文字の刻印順序の一例を示す説明図。
図8図8は4本のスタイラスを用いて32×32ドッドの領域に二次元コードを打刻した状態の一例を示す説明図。
図9図9は本発明に係るマーキング装置においてエアペンが故障した際、リカバリーを行う場合の文字刻印について説明するためのもので、図9(a)は正常時を示す説明図、図9(b)は第2番目のエアペンが故障した場合の説明図、図9(c)は第1番目のエアペンが第2番目のエアペンの代わりに刻印する状態を示す説明図。
図10図10は本発明に係るマーキング装置において2本のエアペンが故障した際、リカバリーを行う場合の文字刻印について説明するためのもので、図10(a)は正常時を示す説明図、図10(b)は第3番目と第4番目のエアペンが故障した場合の説明図、図10(c)は第1番目と第2番目のエアペンが第3番目と第4番目のエアペンの代わりに刻印する状態を示す説明図。
図11図11は本発明に係るマーキング装置においてエアペンが故障した際、リカバリーを行う場合の二次元コード刻印について説明するためのもので、図11(a)は正常時を示す説明図、図11(b)は第2番目のエアペンが故障した場合の説明図、図11(c)は故障した第2番目のエアペンの代わりに第3番目と第4番目のエアペンが刻印する状態を示す説明図、図11(d)は2本並びに刻印できない故障の場合に1本のペンで刻印する状態を示す説明図。
図12図12は本発明に係るマーキング装置においてエアペンが故障した際、リカバリーを行う場合の二次元コード刻印について説明するためのもので、図12(a)は正常時を示す説明図、図12(b)は第2番目のエアペンが故障した場合の説明図、図12(c)は故障した第2番目のエアペンの代わりに第1番目のエアペンが刻印する状態を示す説明図。
図13図13は本発明に係るマーキング装置においてエアペンが故障した際、リカバリーを行う場合の二次元コード刻印について説明するためのもので、図13(a)は第2番目と第4番目のエアペンが故障した場合の説明図、図13(b)は故障したエアペンの代わりに第1番目と第3番目のエアペンが刻印する状態を示す説明図。
図14図14は本発明に係るマーキング装置においてエアペンが故障した際にリカバリーを行う場合の二次元コード刻印について説明するためのもので、図14(a)は第1番目と第2番目のエアペンが故障した場合の説明図、図14(b)は故障したエアペンの代わりに第3番目と第4番目のエアペンが刻印する状態を示す説明図。
図15図15は故障したエアペンに対しリカバリー刻印を行う場合のフロー図。
図16図16は不良刻印が発生した被マーキング体に対するリカバリー刻印を行う場合のフロー図。
図17図17は二次元コード刻印と文字刻印を行う際、刻印数が少ないエアペンを優先的に使用する場合について説明するためのもので、図17(a)は文字数によってエアペンの刻印数に偏りを生じた場合の通常時を示す説明図、図17(b)はエアペンの交代によりエアペンの刻印数の偏りを改善する状態を示す説明図。
図18図18は刻印回数をカウントし、刻印数が少ないエアペンを優先的に使用する場合のフロー図。
図19図19図18のフロー図に沿ってエアペンを優先的に使用する場合に用いる刻印数が少ないエアペンの置き換えリストの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第一実施形態のマーキング装置、並びにマーキング方法の一例について、図面を適宜参照しながら説明する。
本実施形態のマーキング装置1は、図1(a)の全体構成図に示すように、被マーキング体(ワーク)2に対し、一列に配置された4本のマーキング用エアペン3を備えた振動ペン装置Hによって所定の情報をマーキングする装置である。
振動ペン装置Hには、エアペン3に加圧気体を供給して振動駆動させる駆動装置(駆動手段)4が接続され、エアペン3と駆動装置4に対し駆動信号を送出して、エアペン3及び駆動装置4の駆動を制御する制御装置5が接続されている。なお、振動ペン装置Hには該振動ペン装置Hを水平方向および垂直方向に所定距離移動制御するための図示略のステージ機構が接続されていて、振動ペン装置Hをxyz軸方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。図1(a)に示す例では、ステージ機構の記載は略し、エアペン3を備えた振動ペン装置Hが移動できる方向のみをxyz軸方向として矢印にて示した。図1(a)の例では、x軸方向は後述するワークホルダ6の長手方向に沿って被マーキング体2が移動される方向、y軸方向は上下方向、z軸方向はエアペン3が被マーキング体2に対して接近離間する方向に設定されている。
xyz軸に沿う方向に振動ペン装置Hを移動するステージ機構は、xyz軸に沿う方向それぞれ設けられた案内レールに振動ペン装置Hを支持する架台を備え、架台を案内レールに沿って移動自在に支持した一般的なステージ機構を採用することができるので、ステージ機構についての説明は省略する。
【0016】
本実施形態において被ワーキング体2は搬送路型のワークホルダ6の上に設置されてエアペン3の近傍に水平搬送される。ワークホルダ6は図1(a)のx軸方向に平行に被マーキング体2を搬送するように移動され、ライン状に配置されるワークホルダ6の上には所定の間隔で複数の被マーキング体2が支持されている。
前記ワークホルダ6によりエアペン3の近傍に搬送されてきた被マーキング体2は、エアペン3の近傍の刻印開始位置で停止される。そして、この刻印開始位置からx軸方向とy軸方向に所定距離移動しつつ被マーキング体2に対し4本のエアペン3が接近離間しつつ刻印を行うことで被マーキング体2の表面に所定の情報のマーキングができるようになっている。即ち、エアペン3を支持している図示略のステージ機構の動作により被マーキング体2の任意のマーキング位置に対し4本のエアペン3を接近離間させて位置決めし、順次刻印できるように構成されている。
本実施形態において被マーキング体2は一例として自動車エンジン用のクランクシャフトやコンロッドなどの金属製の機械部品を適用でき、この被マーキング体2に対しマーキングする情報は、文字情報、部品番号や製造ロット番号等、あるいは、二次元コード情報等を例示できるが、これらの情報刻印に特に限定されるものではなく、他の情報刻印に適用しても良い。
【0017】
前記ワークホルダ6の側面6aの一部であって、被マーキング体2に刻印を行う位置の近くに振動センサ7が設けられ、この振動センサ7に振動検出器8とマーキングチェック部9とが電気的に接続されている。振動センサ7はワークホルダ6上の刻印中の被マーキング体2の振動を検出するもので、一例として加速度センサを適用できる。この振動センサ7から振動検出器8を介して出力される振動検出信号と、前記制御装置5がエアペン3に対して送出した駆動信号とがマーキングチェック部9において比較されるようになっている。
振動センサ7は、ワークホルダ6の側面6aに取り付けられているので、被マーキング体2の振動の有無を高精度で検知できる。なお、この例では振動センサ7をワークホルダ6の側面6aに取り付けたが、振動センサ7の取付位置は図1(a)に示す位置に限らず、被マーキング体2に対する刻印時(打刻時)の振動を検知できる位置であれば、任意の位置でよい。例えば、振動センサ7を被マーキング体2に直接取り付けて振動検出しても良いし、被マーキング体2を装着した治具等に別途取り付けることもできる。本実施形態では振動センサ7の出力を振動検出器8に入力でき、該振動検出器8が振動の有無あるいは大小を示す振動検知信号をマーキングチェック部9に対し出力する。
【0018】
マーキングチェック部9は、図1(a)に示すように制御装置5から駆動装置4に対して信号線5aを介し送出されるエアペン3の駆動信号が信号線5bを介し分岐されて入力され、振動検出器8から信号線8aを介し入力される振動検知信号と比較がなされる。
一例としてマーキングチェック部9は、エアペン3の駆動装置4に対し駆動信号の送出が開始されてから駆動信号の送出完了までの間、振動検出信号を監視し、振動検出信号が継続されて入力された場合は「マーキング漏れ無し」と判定し、振動検出信号が入力されなかったり、途切れたりした場合に、「マーキング漏れ有り」と判断する。あるいは、エアペン3により被マーキング体2に打刻する際の振動(打刻時の振幅や衝撃)はある程度決まっているので、規定の振動を検出した場合は「マーキング漏れ無し」と判定し、異常振動を検出した場合、規定の振動より小さい振幅や衝撃のみ検出された場合は「マーキング漏れ有り」と判定しても良い。
そして、前記「マーキング漏れ無し」の場合は制御装置5に対し正常駆動していることを示す信号をマーキングチェック部9が出力し、前記「マーキング漏れ有り」と判断された場合はエラー信号をマーキングチェック部9が制御装置5に対し出力する。本実施形態においては、振動センサ7と振動検出器8とマーキングチェック部9により振動検出装置(不良検出器)11が構成されている。
【0019】
制御装置5はマーキング漏れが発生した場合、該当するエアペン3を故障ペンと判断する。具体的には、制御装置5の内部に設けられているメモリに故障ペンに対応するペン番号を記憶する。本実施形態では4本のエアペン3を備えているので、4本のエアペン3の一端側から順に、ペン番号を仮に、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4などの数字を割り当て、区別し、故障ペンを生じた場合に、これらのペン番号を制御装置5のメモリに記憶する。
【0020】
4本のエアペン3を用いて後述するように複数の領域(エリア)毎に刻印する場合、複数のエアペン3が被マーキング体2に対し同時打刻を行うこともあるので、4本のエアペン3のうち、いずれのエアペン3が故障したのかを特定するために、以下のように検知することが好ましい。
基本的には、4本のエアペン3のうち、いずれか1本のみのエアペン3が打刻する場合の振動の強さ(レベル)を振動センサ7で捕らえて4本のエアペン3のいずれか1つが故障したのかを特定することができる。また、2本のエアペン3が同時打刻する場合の振動の振幅や衝撃の強さ、3本のエアペン3が同時打刻する場合の振動の振幅や衝撃の強さ、4本のエアペン3が同時打刻する場合の振動の振幅や衝撃の強さを予め刻印前に計測してマーキングチェック部9のメモリに記憶しておき、該当本数エアペン3が動作した場合に得られるべき振動の強さに達しない場合にこれらに該当するいずれかのエアペン3の故障と判断することができる。
【0021】
なお、複数のエアペン3が同時に刻印した場合に得られるべき異常振動の強さを検出しても、いずれのエアペン3が故障したのかを特定はできないので、複数のエアペン3が同時に刻印して異常振動を検出したならば、対応する複数のエアペン3を全て故障と判断し、これらの故障エアペン3のリカバリーを後述するように行うことができる。あるいは、複数のエアペン3が刻印した場合に異常を確認したとして、複数のエアペン3の番号を制御装置5のメモリに一端記録し、刻印を続行し、該当するエアペン3のいずれかを用いて次の刻印を行った場合、次の刻印時に使用するエアペン3は予め明らかになっているので、次の刻印を行った場合にいずれかのエアペン3に故障が生じたかは特定できる。
例えば、3本のエアペン3により同時打刻して異常を検知したとして、次に3本のエアペン3の内、いずれか特定の1本を使用した場合に再度異常が生じると、特定の1本のエアペン3の故障を検知できる。3本のエアペン3により同時打刻して異常を検知したとして、次に3本のエアペン3の内、いずれか特定の2本を使用した場合に異常が生じない場合は、使用していない残り1本のエアペン3が故障したと判断できる。あるいは、次に3本のエアペン3の内、いずれか特定の2本を使用した場合に異常が生じた場合は、特定の2本のうち、いずれかが故障したと判断し、これらのエアペン番号を再度制御装置5のメモリに記憶し、これらのエアペン3のいずれかを次の刻印に使用して異常が生じたならば、その時点で特定の1本のエアペン3の故障であることを検知できる。これらいずれのパターンの検知判断手法を用いても良いので、いずれのエアペン3が故障したのか、特定ができる。
【0022】
なお、以上説明したように、振動センサ7を用いた振動検出装置11によりエアペン3の故障や刻印不良を検知しても良いが、以下に説明する読み取り手段10を用いてエアペン3の故障検出、並びに、刻印不良を検知することがより好ましい。
【0023】
図1(a)に示すマーキング装置1においてエアペン3の近傍には、被マーキング体2に刻印された情報の読み取り手段10が設けられている。この読み取り手段10は、対象の情報が二次元コード情報である場合は2Dリーダ(2次元コードリーダ)が用いられ、読み取る情報が文字や数字などの場合は、それらを読み取って判別する文字解読リーダや数字解読リーダが用いられる。
2Dリーダは刻印結果から予め定められた閾値に基づいて明暗の領域を検出する。具体的には、2Dリーダはマーキングされた刻印面に対し、光源によって光を照射し反射した光をレンズで集光した結果に従って、白黒または明暗に応じた2Dコード情報を生成し、この2Dコード情報を一定の規格に従ってマーキング情報である文字列情報を生成するものである。
【0024】
読み取り手段10からの検出信号は信号線5cを介し制御装置5のメモリに送出され、制御装置5においてエアペン3により書き込みする予定であったマーキング情報と、読み取り手段10からの読み取り結果の照合がなされ、その結果が一致していれば、正常にマーキングできていると判断でき、該当するエアペン3を正常エアペン3と判断する。また、前述の照合の結果、その結果が不一致の場合はマーキング不良と判断し、該当する刻印を行ったエアペン3を故障エアペン3と判断する。ここで検出した正常マーキングの判定とマーキング不良の判定情報を後述するように利用してエアペン3のリカバリーに利用することができる。
【0025】
図1(a)に示すように本実施形態のエアペン3は、振動ペン装置Hに4本一列に配置されており、それぞれのエアペン3を別個に独立駆動しつつ被マーキング体2に情報をマーキングして刻印できるように構成されている。
振動ペン装置Hは、図2に内部構造を示すようにブロック状かつ内部に4つの平行な直線状の流路16を備えた後部ヘッド17と、該後部ヘッド17の先端側に着脱自在に一体化された凸ブロック型の前部ヘッド18とを備えている。前部ヘッド18は、4本のエアペン3を挿通するための4本の貫通孔19を中央部に一列に隣接形成したブロック体からなる。前部ヘッド18は、その両端部を前記貫通孔19と平行に貫通した取付ボルト20、20を利用し、これらを後部ヘッド17の先端両側端面に形成されたネジ穴21に螺合することで後部ヘッド17の先端側に着脱自在にネジ止めされている。
【0026】
前部ヘッド18の4本の貫通孔19に挿通されたエアペン3はそれらの後端側を前部ヘッド18の後端側に所定長さ突出させ、それらの先端側を前部ヘッドの先端側に所定長さ突出させて前部ヘッド18に装着されている。後部ヘッド17の先端側中央には前部ヘッド18の後端側に突出した4本のエアペン3を収容できる大きさの凹部22が形成されている。この凹部22の内底部側に前述の4つの流路16が所定の間隔で開口され、凹部22の内底部側において前記流路16を開口させた位置に円環状の段部を備えた受部23が形成されている。これらの受部23は、後部ヘッド17に前部ヘッド18をネジ止め固定した状態においてエアペン3の後端部を受けるために設けられている。
【0027】
後部ヘッド17の凹部内に受部23が4つ隣接形成されているので、図2(b)の状態から図2(a)に示すようにエアペン3を4本備えた前部ヘッド18を後部ヘッド17に対し取付ボルト20、20によりネジ止めして一体化した場合、受部23にエアペン3の後端部を収容してエアペン3の後端部に流路16を接続できるようになっている。なお、逆に図2(a)に示す状態から取付ボルト20、20を取り外して図2(b)に示すように前部ヘッド18を分離することで、後述するように任意のエアペン3を交換できるように構成されている。
【0028】
前記エアペン3は、図3(a)に拡大して示すように、細筒型のシリンダー25と、その後端側内部に摺動自在に収容されたピストン26と、該ピストン26の先端部に一体化された丸棒状のスタイラス27と、シリンダー25の後端部側に嵌入された導入筒28と、シリンダー25の先端側内周部に挿入固定された肉厚の筒型の案内部材29と、スタイラス27の外周に挿通されたコイル型のバネ部材30を備えて構成されている。
シリンダー25の先端内部側に案内部材29が接着等の手段により固定され、スタイラス27の先端側が案内部材29を挿通してシリンダー25の先端から若干突出されている。スタイラス27の後端部に一体化されたピストン26はシリンダー25の後端側に挿入され、ピストン26の後端が導入筒28の先端部にバネ部材30の付勢力により押し付けられている。ピストン26は、シリンダー25の内径とほぼ等しい外径を有する中央部26aと、この中央部26aの先端側と後端側にそれぞれ形成されて前記中央部26aの外径より若干小さな外径の前部ピストン26b及び後部ピストン26cからなる。
【0029】
図3(b)はエアペン3の一部分解断面図である。シリンダー25からバネ部材30とスタイラス27とピストン26と導入筒28を取り外し、案内部材29をシリンダー25内に残した状態を示している。
なお、スタイラス27の先端には円錐形状の打刻部27aが形成され、この打刻部27aを被マーキング体2の表面の規定の刻印位置に打ち付けることで打刻痕を形成し、この打刻痕を複数形成することにより被マーキング体2の表面に文字やマークあるいは二次元コードなどの情報を刻印することができる。
【0030】
前記導入筒28にはその全長を貫通する導入孔28aが形成されているので、導入筒28の外部側から導入孔28aを介してシリンダー25の内部に圧縮空気などの気体を導入することができる。
シリンダー25の後端部分にその開口部内周縁を絞った形状の内向きのフランジ部25aが形成され、シリンダー25の後端部側の周壁には第1の排気孔25bが形成され、シリンダー25の先端部側の周壁部には第2の排気孔25cが形成され、シリンダー25の外周部において排気孔25bに近い位置に段部25dが形成されている。
【0031】
第1の排気孔25bは、図3(a)に示すようにピストン26の後端部分を導入筒28の先端部に当接させた状態でピストン26の中央部26aによって第1の排気孔25bを閉じることができる位置に形成されている。第2の排気孔25cの形成位置は、シリンダー25の先端側において案内部材29を内挿した位置より若干後ろ側に形成され、第2の排気孔25cはピストン26の移動位置によらず、常に開放状態にされている。また、第2の排気孔25cは、図2(a)に示すようにエアペン3を前部ヘッド18に装着した状態において前部ヘッド18の先方側に露出される。従って、シリンダー25の内部をピストン26が前後移動する位置に応じてシリンダー25の空気を第2の排気孔25から排出するか、第2の排気孔25cを介しシリンダー25の内部に空気を吸入できる構成にされている。
【0032】
図3に示すように導入筒28の先端部よりの部分にはシリンダー25のフランジ部25aに被着するための外向きのフランジ部28bが形成され、導入筒28の先端部側にはシリンダー25のフランジ部25aの内側に挿入されて導入筒28の抜け止めとなる外周部先窄まり状の挿入部28cが形成されている。また、導入筒28の後端部よりの部分には、後部ヘッド17の受部23に位置合わせするためのフランジ部28dが形成され、導入筒28後端に前記フランジ部28dに沿うように気密封止用のOリング31が装着されている。
【0033】
以上構成のエアペン3は、前記ヘッド18の前方側にエアペン3の先端側を所定長さ突出させ、貫通孔19にシリンダー25を挿通し、シリンダー25の外周部に形成されている段部25dで貫通孔19から前方側への抜け止めを行って前部ヘッド18に取り付けられている。図2に示すように前部ヘッド18の4つの貫通孔19にはそれぞれエアペン3が挿通されている。図2(a)に示すように前部ヘッド18を後部ヘッド17に装着して凹部22の内側にエアペン3の後端側を挿入し、後部ヘッド17の受部23にエアペン3の後端部をOリング31を介し押し付けることにより後部ヘッド17の流路16にエアペン3が接続されている。
【0034】
以上構成のエアペン3に接続された後部ヘッド17の流路16には、それぞれ駆動装置4に接続された圧縮空気供給管4aが分岐接続され、図1(a)に示す駆動装置4から個別に圧縮空気を供給できるようになっている。従って、駆動装置4から4本の流路16のいずれかに圧縮空気を送ることで圧縮空気を送った流路16に対応するエアペン3を個別に振動させることができる。
【0035】
図4はエアペン3の振動動作の一例について示すもので、図4(a)はバネ部材30の付勢力によってピストン26を導入筒28の先端側に当接させ、スタイラス27の先端をシリンダー25の先端から若干突出させた初期状態を示している。この初期状態のエアペン3に対し、図4(b)の矢印に示すように導入筒28を介し圧縮空気をシリンダー25の後端側から導入すると、バネ部材30の弾性力に抗するようにピストン26を前進させることができるので、図4(c)に示すようにスタイラス27の先端をシリンダー25の先端から更に前方に突出させることができる。ピストン26の前進に伴い、ピストン26より前方側のシリンダー25内の空気は第2の排気孔25cから排出される。
【0036】
図4(d)に示すように圧縮空気圧によりピストン26を更に前進させると、ピストン26により閉じられていた第1の排気孔25bが開口され、シリンダー25に供給された圧縮空気が第1の排気孔25bからシリンダー25の外部に排出される。このため、ピストン26を押圧していた空気圧は解消されるのでバネ部材30の弾性復帰力により図4(e)に示すように導入筒28に当接するまで後退する。これにより、スタイラス27の先端側はシリンダー25の内部側に納まるように後退し、初期状態の位置に復帰する。
【0037】
この状態から再度圧縮空気をシリンダー25の内部側に導入すると、図4(b)〜図4(e)に至るスタイラス27の動作を繰り返すことができ、結果として圧縮空気を送ることによりスタイラス27を往復移動させて振動させることができる。
このように振動しているスタイラス27を用いてその先端の打刻部27aを被マーキング体2のマーキング位置表面の所定位置に対し打ち付けることにより被マーキング体2に対する刻印操作を実現でき、被マーキング体2の表面に打刻痕を形成できる。
【0038】
図5は4本のエアペン3に備えられているスタイラス27をそれぞれ個別に動作させた場合の一例を示すものである。
図5(a)に示す如く4本のスタイラス27をいずれも伸張させていない状態を初期状態とする。この初期状態から、図5(b)に示すように一側端(左端)から第1番目のエアペン3のスタイラス27を伸張させた状態、図5(c)に示すように一側端(左端)から第1番目と第3番目のエアペン3のスタイラス27を伸張させた状態、図5(d)に示すように第1番目から第4番目まで全てのエアペン3のスタイラス27を伸張させた状態などを適宜切り替えつつ利用して必要なスタイラス27の先端を被マーキング体2の表面に打ち付けることで、必要位置に打刻痕を形成し、目的の情報を刻印できる。
【0039】
図5(b)に示すように第1番目のスタイラス27を伸張させることで、1箇所のみ打刻することができ、図5(c)に示すように第1番目と第3番目のスタイラス27を伸張させることで、同時に2箇所打刻することができ、図5(d)に示すように4つのスタイラス27を伸張させることで、同時に4箇所刻印することができる。
図5(b)、(c)、(d)はスタイラス27による刻印状態の3つの例を示したものであり、図5に示す状態以外に、4本のエアペン3のうち、任意の1本、任意の2本、任意の3本、あるいは4本を使用してそれぞれ被マーキング体2に文字情報や二次元コード情報などを刻印することができる。
【0040】
以下、被マーキング体2に対し文字情報や二次元コード情報を刻印する場合の具体例について説明する。
本実施形態の4本のエアペン3を用いることで被マーキング体2に対する任意の位置に刻印処理を行うことができるが、以下に4本のエアペン3を用い、各エアペン3について8×8ドットの刻印領域に文字情報を打刻する場合のリカバリー操作について説明する。
図6は、4本のエアペン3を用い、1つのエアペン3について8×8ドットの刻印領域に文字情報を打刻する場合の一例動作について示す図である。
【0041】
4本整列しているエアペン3のうち、第1番目のエアペン3を便宜的にPen1と表記し、第2番目のエアペン3を便宜的にPen2と表記し、第3番目のエアペン3を便宜的にPen3と表記し、第4番目のエアペン3を便宜的にPen4と表記する。
図6は、Pen1のエアペン3がAの文字を8×8ドットの第1番目の刻印領域に刻印し、Pen2のエアペン3がBの文字を8×8ドットの第2番目の刻印領域に刻印し、Pen3のエアペン3がCの文字を8×8ドットの第3番目の刻印領域に刻印し、Pen4のエアペン3がDの文字を8×8ドットの第4番目の刻印領域に刻印した状態を示している。
【0042】
図7は各刻印領域にA、B、C、Dの文字情報を刻印する場合の刻印順序と刻印位置について示す図である。
図7に示すように、8×8ドットの第1番目〜第4番目の刻印領域について、A、B、C、Dの文字を刻印する場合、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4のエアペン3はそれぞれ、白丸が示す8×8ドット、合計64のドット位置において、縦列、横行とすると、いずれのエアペン3も縦列と横行に沿って同じように移動させる。
一例として、いずれのエアペン3も振動ペン装置Hを移動支持するステージ機構によってx軸方向、y軸方向、z軸方向に同時移動されるので、被マーキング体2に対してエアペン3の先端位置をステージ機構によりz方向に沿って調整し、ステージ機構によりx軸方向、y軸方向に移動制御しながら刻印する。
【0043】
各エアペン3の移動方向は、本実施形態では、各刻印領域の1列目を1行目から順番に8行目まで走査するように移動した後、2列目に移り、2列目の8行目から順に1行目まで走査するように移動した後、3列目に移り、3列目の1行目から8行目まで順次走査するように、順次8列目が終了するまでつづら折れ状に移動する。つづら折れ移動の順序の一例を図6中に符号fで示す折れ線を用いて例示する。本実施形態ではこのつづら折れ移動を振動ペン装置Hの単位で第1列目から第8列目まで順次繰り返すことにより、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4の各エアペン3を用いて各8×8ドット、各領域とも合計64ドットの刻印を行うことができる。
【0044】
以上のような振動ペン装置Hの移動動作により、Pen1は、第1番目の刻印領域において、図7で示すように順番記号3、4、5、6、7、9、11、13、15、19、21、24、25、26、27、28で示す位置に移動した際、それぞれの位置においてスタイラス27を伸張させる動作による刻印を行い、1列目〜8列目まで移動する間に最終的にAの文字を刻印する。
同様にPen2は、第2番目の刻印領域において、図7で示すように順番記号1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、13、14、16、17、20、22、23、24、26、27で示す位置に刻印してBの文字を刻印する。
同様にPen3は、第3番目の刻印領域において、図7で示すように順番記号2、3、4、5、6、8、12、13、16、17、22、23、27で示す位置に刻印してCの文字を刻印する。
同様にPen4は、第4番目の刻印領域において、図7で示すように順番記号1、2、3、4、5、6、7、8、12、13、16、18、21、24、25、26で示す位置に刻印してDの文字を刻印する。
【0045】
これらの数字は、平面視つづら折れ状にPen1、Pen2、Pen3、Pen4が順次移動する際、Aの文字、Bの文字、Cの文字、Dの文字を刻印するために必要なドット位置にPen1、Pen2、Pen3、Pen4のいずれかのエアペン3が移動した際、スタイラス27を伸張させて打刻する順番を示す。
よって、例えば、図7において順番記号1の位置について、Pen2とPen4のエアペン3が作動してスタイラス27を伸張して刻印するが、Pen1とPen3のエアペン3については順番記号1の位置ではスタイラス27を伸張させないので刻印していない。また、順番記号3、4、5、6の位置については、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4の全てのエアペン3が動作してスタイラス27を伸張し刻印し、順番記号7の位置については、Pen1、Pen2、Pen4のエアペン3が動作してスタイラス27を伸張し刻印する。
【0046】
このように、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4のエアペン3のうち、1つのエアペン3がスタイラス27を伸張させるか、2つのエアペン3がスタイラス27を伸張させるか、3つのエアペン3がスタイラス27を伸張させるか、4つのエアペン3がスタイラス27を伸張させるか適宜切り替えつつ刻印を行う。よって、図7に示すように第1番目〜第4番目の刻印領域のそれぞれに対し、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4の全てのエアペン3がつづら折れ状に移動しつつ、必要な位置において各エアペン3が打刻する情報に合わせて刻印することで、第1番目〜第4番目の刻印領域のそれぞれに必要な文字情報を刻印できる。本実施形態のマーキング装置1においては、前部ヘッド18に一体化された4つのエアペン3が同時移動しつつ被マーキング体2に対し刻印するので、4つのエアペンが個別に移動する構造の従来のマーキング装置に比べて効率良く刻印ができる構成となっている。
【0047】
図8は、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4のエアペン3を用いて二次元コードを刻印する場合の一例を説明するためのもので、二次元コードを刻印する場合、二次元コードのシンボルサイズに応じてエアペン3が刻印を受け持つ部分が異なる。図8の例では、シンボルサイズが32×32ドットのため、Pen1〜Pen4のエアペン3は横方向に8ドット、縦方向に32ドットの領域を移動し、刻印を行うことができる。
【0048】
図8に示すように二次元コード情報を刻印する場合であっても、図6に示したつづら折れ状に振動ペン装置Hを移動させつつ刻印する場合と同様に、第1の刻印領域〜第4の刻印領域を順次つづら折れ状に移動することで、順次必要な位置においてスタイラス27を伸張させて情報を刻印することができる。
なお、図8に示す例では各エアペン3が32×8ドットの刻印領域に刻印する必要があるので、振動ペン装置Hを支持しているステージ機構は、Pen1のエアペン3に対し1列目は1行目から32行目まで対応するように移動し、1列目の32行目の位置から2列目の32行目の位置に移り、2列目の32行目の位置から2列目の1行目の位置まで移動し、次に3列目の1行目の位置に移動するという移動経路を8列目まで同じ順序で順次繰り返すというつづら折れ状に振動ペン装置Hを移動すればよい。
【0049】
なお、シンボルサイズが10×10ドットの場合、Pen1のエアペン3は横方向に8ドット、縦方向に10ドットの領域を受け持ち、Pen2は横方向に2ドット、縦方向に10ドットの領域を受け持つことで目的の10×10ドットの二次元コードを刻印できる。
本実施形態のように4本1列のエアペン3を用い、各エアペン3が受け持つシンボルサイズの大きさについて、ステージ機構により移動させる振動ペン装置Hの移動領域を適宜拡大あるいは縮小して対応できるので、刻印できるシンボルサイズを調整することができる。一例として上述したように、10×10ドット〜32×32ドットサイズのシンボルまで対応した刻印が可能となる。
これが仮に、4本のエアペン3を有する構造であっても、2本ずつ2列に、合計4本のエアペン3を設ける構造にすると、1本のエアペン3が受け持ち可能な領域8×8ドットに限定され、シンボルサイズも16×16ドットになるが、本実施形態のエアペン3においてシンボルサイズはこのような範囲に限定されることがなく、10×10ドット〜32×32ドットサイズのシンボルまで刻印が可能となる。
【0050】
次に、Pen1、Pen2、Pen3、Pen4の4本エアペン3を用いて図6図7を元に説明したように文字情報を刻印している場合、Pen2のエアペン3が故障した際のリカバリー動作について説明する。
正常時においては図9(a)に示すように第1番目の領域〜第4番目の領域に順に文字A、B、C、Dを刻印する。ここで図9(b)に示すようにPen2のエアペン3が故障して刻印ができなくなった場合、一例として、8×8ドットの第1番目の刻印領域〜第4番目の刻印領域まで全ての領域の刻印終了後、振動ペン装置Hをステージ機構によって再度上述と同じつづら折れ状に移動させ、この場合にPen1のエアペン3のみを代わりに作動させてPen2のエアペン3の代わりに、Pen2のエアペン3が担当していた第2番目の刻印領域に対し、Pen1のエアペン3を用いて文字Bの刻印を行う。この刻印の場合、Pen1のエアペン3の刻印動作は、Pen2のエアペン3が刻印しようとしていた動作と同等でよい。
【0051】
図9(c)に示すように故障したPen2のエアペン3による刻印不良をリカバリーしてPen1のエアペン3による刻印動作により第2番目の刻印領域にBの文字を刻印することにより、第1番目の刻印領域〜第4番目の刻印領域に対し全ての必要な文字情報の刻印を完了できる。
このリカバリー動作については、制御装置5がステージ機構を作動させて振動ペン装置Hの移動を制御し、第2の刻印領域に対しPen1のエアペン3が刻印できるようにPen1のエアペン3を移動させた後、Pen2のエアペン3を移動制御する場合と同等の制御をPen1のエアペン3に対し行えばよい。
【0052】
また、Pen2のエアペン3が故障したか否かを検出するには、読み取り装置10により被マーキング体2の表面に刻印されている文字情報や二次元コード情報を逐次読み取り、文字情報や二次元コード情報の刻印に異常が生じたことを逐次検知する。
読み取り装置10が刻印異常を検知した場合、該当するPen2のエアペン3を故障ペンとして制御装置5のメモリにエアペン3の番号を記憶し、故障エアペン3の動作を停止し、他の正常なエアペン3が各刻印領域に対し正常な刻印を完了した後、故障エアペン3が担当していた刻印領域に対しPen1のエアペン3で刻印することによりリカバリー動作を完了できる。なおここで、Pen2のエアペン3に対するリカバリー動作において、Pen1のエアペン3を用いたが、Pen2のリカバリー動作においてPen3のエアペン3、あるいは、Pen4のエアペン3を用いても良い。
【0053】
以上のようなリカバリー動作を行うために、振動ペン装置Hをx軸方向、y軸方向、z軸方向に移動させるステージ機構を制御して刻印終了後、故障したPen2のエアペン3の代わりにPen1のエアペン3を動作させるために、Pen2のエアペン3が故障したことを検知する必要がある。
Pen2のエアペン3が故障したことを検知するには、前述した振動センサ7による検知と読み取り手段10による検知の少なくとも一方あるいは両方を利用することができる。あるいは、これらの検知手段とは別に作業者による目視検査の結果を利用することもできる。
【0054】
次に、Pen1〜Pen4の4本エアペン3を用いて文字情報を刻印している場合、Pen3、Pen4のエアペン3が故障した際のリカバリー動作の一例について説明する。
正常時においては図10(a)に示すように第1番目の領域〜第4番目の領域に順次文字A、B、C、Dを刻印する。ここで図10(b)に示すようにPen3、Pen4のエアペン3が故障して刻印ができなくなった場合、一例として、8×8ドットの第1番目の刻印領域と第2番目の刻印領域まで全ての領域の刻印終了後、振動ペン装置Hをステージ機構によって再度つづら折れ状に移動させ、この場合にPen1、Pen2のエアペン3を作動させてPen3のエアペン3の代わりに、Pen3のエアペン3が担当していた第3番目の刻印領域に対し、Pen1のエアペン3を用いて文字Cの刻印を行い、Pen4のエアペン3の代わりに、Pen4のエアペン3が担当していた第4番目の刻印領域に対し、Pen2のエアペン3を用いて文字Dの刻印を行う。この刻印の場合、Pen1のエアペン3の刻印動作は、Pen3のエアペン3が刻印しようとしていた動作と同等でよく、Pen2のエアペン3の刻印動作は、Pen4のエアペン3が刻印しようとしていた動作と同等でよく、刻印する対象の領域のみが異なる。
【0055】
図10に示すリカバリー動作は、故障エアペンが2本の場合、該2本の故障エアペンの刻印情報を1度の刻印で同時に補える並びの残り2本のエアペンを選択してリカバリー動作したことを意味する。このようにリカバリー動作することで、正常な1本のエアペン3を用いてリカバリー動作するよりも短い時間でリカバリー動作を行うことができる。例えば、図10に示すようにCとDの文字情報を刻印する場合、Pen1とPen2のエアペン3を同時使用することによりCとDの文字情報を刻印できる。
本実施形態の如く4本並列されたエアペン3のち、2本並びのエアペン3が故障した場合、残りのエアペン3のうち、故障していない2本並びのエアペン3を用いてリカバリー動作することが効率的な刻印を行う上で好ましい。
【0056】
図11は二次元コードを被マーキング体2の表面に刻印する場合のリカバリー動作の一例について説明するための図であり、Pen1とPen2の2本のエアペン3により二次元コードを刻印している場合、Pen2が故障した状態について説明するための図である。
Pen2のエアペン3が故障し、Pen1とPen2のエアペン3が2本横並びに刻印できない故障の場合、Pen3とPen4のエアペン3で刻印するように制御装置5がPen3、Pen4を制御する。更に、エアペン3が故障し、2本横並びに刻印できないような故障が発生した場合、例えば、Pen1とPen3のエアペン3の組み合わせ、あるいは、Pen2とPen4の組み合わせで故障が発生した場合は、残りの故障していない1本のエアペン3により故障したエアペン3が刻印する予定にしていた情報を刻印する。
【0057】
図12は二次元コードを被マーキング体2の表面に刻印する場合のリカバリー動作の一例について説明するための図であり、Pen1〜Pen4の4本のエアペン3により二次元コードを刻印している場合、Pen2が故障した状態について説明するための図である。全てのエアペン3が正常の場合、図12(a)に示すように二次元情報を刻印できる。
ここで、Pen2のエアペン3が故障した場合、Pen1のエアペン3で刻印するように制御装置5がPen1のエアペン3を制御する。即ち、Pen2のエアペン3が刻印できない第2番目の領域に対し、ペン1のエアペン3がリカバリーして刻印を行う。
以上のリカバリー動作においても支障なく全ての情報を刻印することができる。
【0058】
図13は二次元コードを被マーキング体2の表面に4本のエアペン3を用いて刻印する場合のリカバリー動作の一例について説明するための図であり、Pen1〜Pen4の4本のエアペン3により二次元コードを刻印している場合、1つ飛びのPen2とPen4のエアペン3が故障した状態について説明するための図である。
Pen2とPen4のエアペン3がいずれも故障した場合、Pen1とPen3のエアペン3による刻印終了後、Pen2のエアペン3が刻印する予定としていた情報をPen1のエアペン3が刻印し、Pen4のエアペン3が刻印する予定としていた情報をPen3のエアペン3が刻印するように制御装置5がPen1、Pen3のエアペン3を制御する。このように1つ飛びのPen2とPen4のエアペン3が故障した場合は、同じように1つ飛びのPen1とPen3のエアペン3で代用し、刻印することで、刻印不良を生じた領域に対して効率良く目的の刻印ができる。
【0059】
図14は二次元コードを被マーキング体2の表面に4本のエアペン3を用いて刻印する場合のリカバリー動作の一例について説明するための図であり、Pen1〜Pen4の4本のエアペン3により二次元コードを刻印している場合、Pen1とPen2のエアペン3が故障した状態について説明するための図である。
Pen1とPen2のエアペン3がいずれも故障した場合、Pen3とPen4のエアペン3による第3番目の領域と第4番目の領域への刻印終了後、Pen1のエアペン3が刻印する予定としていた情報をPen3のエアペン3が第1番目の領域に刻印し、Pen2のエアペン3が刻印する予定としていた情報をPen4のエアペン3が第2番目の領域に刻印するように制御装置5がPen3、Pen4のエアペン3を制御する。
以上のリカバリー動作においても支障なく全ての情報を刻印することができる。
【0060】
図15は、Pen1〜Pen4の4本のエアペン3を用いて被マーキング体2に対し情報を刻印する場合、図9図14を参照して例示した各々の場合の故障エアペン3の発生本数に対応し、故障エアペン3に代わりに、他の正常エアペン3を用いてリカバリー動作により刻印を行う場合を統括的に示すフローチャートである。
このリカバリー動作の機能は、先の刻印工程において故障エアペン3が発生した場合、故障した該当エアペン3のペン番号、例えば、Pen1〜4のいずれか1つのペン番号、あるいは、複数の該当ペン番号を事前に制御装置5に記憶しておき、自動的に他の故障していないエアペン3を用い、故障したエアペン3の代わりに被マーキング体2に刻印を実施するものである。先の刻印工程においていずれかのエアペン3に故障が発生したか否かについての情報は、読み取り装置(不良検出器)10による二次元情報の読み取り結果、あるいは、振動センサ7による振動検出装置(不良検出器)11の検出結果に応じて得られる。そして、この故障したエアペン3の特定により先の刻印工程において発生したエアペン3のペン番号を制御装置5のメモリに記憶することにより、故障エアペン3の特定がなされる。なお、読み取り装置10や振動検出装置11による検出結果を利用しない場合は、作業者の目視検査により被マーキング体2の表面の刻印情報を読み取り、刻印情報に異常が生じていた場合に、該当するエアペン3を特定し、該当するエアペン3のペン番号を制御装置5に作業者自身が記録することで行うこともできる。制御装置5に作業者がペン番号を記録する場合のことを想定し、制御装置5にパーソナルコンピュータなどの情報処理装置を接続し、この情報処理装置から故障したペン番号を入力して制御装置5のメモリに記憶する構成としてもよい。
以下、図9図14に基づき故障ペンのリカバリー動作について説明した種々のパターンについて、統括的に制御する場合の制御装置5のリカバリー動作について図15のフロー図に従い説明する。
【0061】
ステップS1においてPen1〜Pen4の4本エアペン3により被マーキング体2に対し必要な情報を刻印する。被マーキング体2に対する情報刻印を行っている間、図1(a)に示す読み取り装置10により刻印を撮像して監視するか、あるいは、振動センサ7により被マーキング体2の振動を検知して4本のエアペン3の作動を制御装置5が監視する。
刻印が全て終了するまで、振動センサ7が検出する被マーキング体2の振動に異常が生じていない場合、あるいは、読み取り装置10の画像監視の結果、正常に刻印が形成されている状態が継続されている場合は、リカバリー動作を必要としないので、Pen1〜Pen4のエアペン3を用いて刻印を続行し、最終の情報まで刻印して刻印終了とする。
また、作業者が被マーキング体2の表面の刻印情報を読み取り、異常がない場合はリカバリー動作が必要ないので、通常の刻印作業を続行すればよい。
【0062】
図1(a)に示すマーキング装置1の動作については先に説明した如く、ステージ機構により被マーキング体2の表面に対しx軸方向とy軸方向とz軸方向に移動する振動ペン装置Hを作動させ、文字情報を刻印する場合は図6図7に例示して説明した如くPen1〜Pen4のエアペン3を作動させてそれらのスタイラス27を振動させて被マーキング体2の表面の所定位置に打刻を繰り返して刻印し、文字情報を刻印する。振動ペン装置Hにより二次元コード情報を刻印する場合は図8を元に先に記載した例示の如くPen1〜Pen4のエアペン3を作動させてそれらのスタイラス27を振動させて被マーキング体2の表面の所定位置に打刻を繰り返して二次元コード情報を刻印する。
【0063】
前述の文字情報あるいは二次元コード情報を刻印する間、図1(a)に示す読み取り装置10により刻印を撮像して監視するか、あるいは、振動センサ7により被マーキング体2の振動を検知して4本のエアペン3の作動を制御装置5が監視している。ここで、エアペン3のいずれかに故障が発生した場合、制御装置5は読み取り装置10からの検出信号により、あるいは、振動センサ7からの振動検知結果により、ステップS2において使用中のエアペン3に故障が発生しているか否か検知する。
故障を検知しない場合は、Pen1〜Pen4のエアペン3を作動させてそれらのスタイラス27を振動させて被マーキング体2の表面の所定位置に打刻を繰り返して二次元コード情報を最後まで刻印する。
【0064】
この判断手法については先に説明した通り、読み取り装置10による画像解析の結果、被マーキング体2の表面に刻印した文字情報あるいは二次元コード情報が正確に刻印されないことをもっていずれのエアペン3に故障が発生したのか特定することができる。また、振動センサ7を用いてエアペン3の故障を検知している場合は、特定のエアペン3が被マーキング体2の表面に刻印する際の振動を把握し、この振動が正常ではない場合にエアペン3の故障を判別できる。また、先に説明した通り、複数のエアペン3が同時刻印した場合、複数のエアペン3が与える振動と異なる振動を検出した場合において、同時刻印に対応した複数のエアペン3をまとめて故障エアペン3として認定しても良い。また、刻印後の被マーキング体2の表面を作業者が観察し、刻印情報を確認して刻印不良を検知し、この刻印不良結果から故障したエアペン3を特定することも可能である。
【0065】
Pen1〜Pen4のエアペン3のいずれかに異常を生じた場合、制御装置5は、ステップS3において4本のエアペン3のうち、故障したエアペン3が何本であるか判断する。4本のエアペン3のうち、何本のエアペン3が故障したのかについては、読み取り装置10が刻印中の刻印情報の全てを読み取っているので、第1番目〜第4番目の刻印領域のいずれの刻印領域における刻印情報に不良を生じたのか、制御装置5において把握することで判断できる。例えば、第1番目の刻印領域の刻印情報のみに不良を検知した場合は、Pen1のエアペン3が不良となったことを意味し、第1番目と第3番目の刻印領域の刻印情報に不良を検知した場合は、Pen1とPen3のエアペン3が不良となったことを意味する。
【0066】
また、振動センサ7が振動を検知しながらエアペン3により刻印している場合、第1番目の刻印領域〜第4番目の刻印領域のうち、いずれか1つの刻印領域に1つのエアペン3が刻印している場合は、該当するエアペン3のみの振動を検知しているので、個々のエアペン3の不良を検知できる。また、2つか3つあるいは4つのエアペン3が故障している場合は、動作している複数のエアペン3の打刻により発生する被ワーキング体2の振動量が変化するので、2つあるいは3つあるいは4つのエアペン3が故障していることを振動センサ7からの検知信号によって検知できる。
例えば、1本のエアペン3での刻印時の打刻力は、用いるエアペン3の本数が増加すればするほど大きくなるので、不良の検知は以下のように行うことができる。
一例として、振動検知中に特定の振動検出した時に正常な振動量ではなく、故障と判断される振動量を検出した場合、直前の正常振動検出時に正常であったエアペン3の番号と今回使用したエアペン3のペン番号の比較を行い、今回新たに使用したエアペン3が故障したと認識することができる。例えば、二次元コードや複数の文字を刻印すると、エアペン3の組み合わせパターンを複数得ることができ、故障したエアペン3がいずれの番号のエアペン3であるのか判別可能となる。なお、以上の場合でも何らかの原因により故障エアペン3を特定できない場合は、複数同時に使用したエアペン3を制御装置5が全て故障と一端判断してラインを停止し、制御装置5が作業者に異常を通知する構成とするならば、作業者はいずれのエアペン3が故障しているのか否か、目視で直に確認でき、エアペン3の交換や装置の修理ができるので、刻印の正確性を高める面では望ましい。
【0067】
ステップS3において故障しているエアペン3が1つ(1本)と判断された場合は、ステップS4に進み、ステップS4においては制御装置5が故障しているエアペン3の隣の1本のエアペン3で故障しているエアペン3が行う予定であった刻印を補う刻印を実施する。
ステップS3において故障しているエアペン3が2つ(2本)と判断された場合は、ステップS5に進み、故障したエアペン3が2本並んで故障しているか否か判断される。ステップS5において故障したエアペン3が2本並びであると判断された場合、ステップS6に移行し、制御装置5は故障していない残り2本並びのエアペン3で故障したエアペン3が行う予定であった刻印を補う刻印を被マーキング体2に対し実施する。故障したエアペン3が2本並びではないと判断された場合、ステップS7に移行し、2本並びで刻印できないので、故障した2本のエアペン3が行う予定であった刻印を制御装置5が故障していない1本のエアペン3を用いて順次1本分ずつ刻印し、全部の刻印を実施する。
ステップ3において故障エアペン3の本数を制御装置5が3つ(3本)と判断した場合は、ステップS8に移行し、ステップS8において故障していない1本のエアペン3を用いて故障した3本のエアペン3が刻印するべき予定であった位置に順次刻印を補い、刻印を完了する。
【0068】
以上説明のように、4本のエアペン3により刻印する場合、先の刻印工程における1本のエアペン3の故障、2本のエアペン3の故障、3本のエアペン3の故障のいずれの場合についても次の刻印工程で対応し、残りの故障していないエアペン3を用いて次の刻印工程で各刻印領域に対し刻印を行うことができる。なお、4本のエアペン3が4本とも故障した場合は、刻印を直ちに中止し、ステップS9に示すように4本のエアペン3を交換し、再度刻印を行えばよい。
なおまた、1〜3本のエアペン3が故障した場合、所定ロット数の刻印が終了した後、速やかに故障した分のエアペン3を新規のエアペン3に交換しておくことが好ましいが、生産状況などの理由によりすぐに交換できない場合は、数ロット後に交換しても良い。
【0069】
本実施形態において用いるエアペン3は、図2図3を基に先に説明したように後部ヘッド17に対し取付ボルト20を介し取り付けた前部ヘッド18に着脱自在に取り付けられた構造とされている。このため、図2(b)に示すように取付ボルト20を後部ヘッド17から取り外して前部ヘッド18を分離し、前部ヘッド18からエアペン3を後ろ側に向けて引き抜き、故障していない新しいエアペン3と交換することでエアペン3の交換ができる。
なお、エアペン3が故障して刻印不良となった場合、スタイラス27の先端が損耗して刻印不良となる場合と、エアペン3のスタイラス以外の部分、例えばシリンダー25やピストン26が故障して刻印不良となる場合が考えられる。このため、故障が生じたエアペン3の故障部分を特定し、必要な部分のみ修理するか新規部品と交換してエアペン3の故障を無くし、再度故障していない修理済みのエアペン3として再利用することができる。図3に示すように本実施形態のエアペン3は、シリンダー25とピストン26およびスタイラス27とバネ部材30と導入筒28と案内部材29を主体としてなり、図3(b)に示すように容易に分解できる構造であるので、分解修理も容易にできる。
【0070】
図16は、Pen1〜Pen4の4本のエアペン3を用いて被マーキング体2に対し情報を刻印する際、特定の被マーキング体2に対し全ての刻印が完了した時点で刻印不良を発見した場合、該当する被マーキング体2に対しリカバリー動作により刻印不良の部分を刻印し直す操作の一例について示すフロー図である。
図16に示すようにいずれかのエアペン3が故障し、故障による刻印不良が発生した場合、ステップS11において故障しているエアペン3のペン番号を制御装置5がメモリに記憶し、指定する。故障の発生は、先に説明した場合と同様、読み取り装置10による検知結果か振動センサ7により検知された検知結果に基づき、ペン番号が制御装置5のメモリに記憶される。ペン番号が記憶された後、ステップS12において再刻印動作が開始され、制御装置5はメモリに記憶された故障ペンのペン番号を基に以下のリカバリー動作を行う。
なお、特定の被マーキング体2に対し刻印後に作業者が目視検査により刻印不良を発見した場合、故障したペン番号を作業者が手動により制御装置5のメモリに入力し、制御装置5に故障したペン番号を指定した後、ステップS12以降の以下のリカバリー動作を行わせるように構成してもよい。
【0071】
ステップS13において故障エアペン3の発生本数が何本か制御装置5が判断する。故障ペンが1本の場合、ステップS14において制御装置5が故障ペンの隣の正常なエアペン3を選択し、故障したエアペン3が刻印するべき刻印を補うように刻印を実施する。
故障ペンが2本の場合、ステップS15において故障ペンが2本並んで故障しているか否か制御装置5が判断し、2本並びのエアペン3が故障していると判断された場合、ステップS16において、以下のリカバリー動作を行う。即ち、故障していない2本並びのエアペン3を用いて故障した2本分のエアペン3の刻印を補うように刻印し、被マーキング体2に対する刻印を実施するリカバリー動作を行う。
ステップS15において、故障ペンが2本並びで故障していないと判断された場合、2本並びのエアペン3にて刻印はできないため、ステップS17において故障していない1本のエアペン3を用いて故障した2本のエアペン3の分の刻印を順次行うリカバリー動作を行う。
【0072】
ステップS13において、故障ペンが3本と判断された場合、ステップS18において故障していない1本のエアペン3を用いて故障した3本のエアペン3の分の刻印を順次行うリカバリー動作を行う。
以上説明の各リカバリー動作を行うことで、いずれかのエアペン3の故障による刻印不良が発生した被マーキング体2に対し、全ての刻印を行うことができ、被マーキング体2に対し完全な刻印ができる。
なお、ステップS13において、故障ペンが4本と判断された場合、ステップS19において直ちに刻印を中止してエアペン3の全数を交換する。
【0073】
なお、作業者が目視検査で刻印不良を発見した場合、故障したエアペン3のペン番号について読み取り装置10と振動センサ7が不良として検出していないことが考えられる。読み取り装置10と振動センサ7を作動させていても検査工程で作業者が刻印不良を発見した場合、ステップS13で行う故障エアペン3の本数特定と、ステップS15において行う2本並んで故障しているか否かの特定ができない可能性がある。この場合の故障エアペン3の本数やその位置は作業者が制御装置5のメモリに記録する必要があるので、故障エアペン3が何本であるのか、2本並んで故障しているか否かの判定を作業者が行う必要がある。
このような場合を想定し、先に説明したように制御装置5に作業者がペン番号を記録する場合のことを想定し、制御装置5にパーソナルコンピュータなどの情報処理装置を接続し、この情報処理装置から故障したペン番号を入力できる構成としておく。この構成を採用した場合、制御装置5のメモリには作業者が手作業にてペン番号を入力できるので、読み取り装置10あるいは振動検出装置11による故障ペン番号の特定の他に、作業者自身の情報入力により故障したエアペン3の番号を記録し、上述した各種のリカバリー動作に適用することができる。
即ち、作業者の検査結果の判定に基づき、故障エアペン3の本数特定と、2本並んでいるか否かの判別が可能となるので、先のステップS14、S16、S17、S18のいずれかに移行して再刻印することで、刻印不良を無くすることができる。
【0074】
次に、複数のエアペン3を用いて被マーキング体2に刻印する場合、個々のエアペン3の刻印回数を逐次記録し、刻印数が少ないエアペン3を優先的に使用する場合について説明する。
図17はPen1とPen2のエアペン3を用いて二次元コード情報を刻印するとともに、Pen1〜Pen4のエアペン3を用いて文字情報も併せて刻印する場合について説明するための図である。
図17に示す場合、Pen1とPen2のエアペン3は二次元コード情報と文字情報の両方を刻印するのに対し、Pen3とPen4のエアペン3は文字情報のみを刻印するのでPen1とPen2のエアペン3はPen3とPen4のエアペン3よりも刻印回数が多くなる。複数のエアペン3において刻印回数差が大きくなると、複数のエアペン3において個々のスタイラス27の先端の損耗状態が大きく異なることとなる。
【0075】
エアペン3においてスタイラス27の損耗状態が異なると、刻印数の大きい特定のスタイラス27が刻印不良を起こすおそれがある。
このため、本実施形態においては、各エアペン3の刻印回数(打刻回数)を逐一計数(若しくはカウント)してPen1〜Pen4のエアペン3の個々の刻印回数を制御装置5のメモリに記憶しておく。
制御装置5はPen1〜Pen4のエアペン3の個々の刻印回数を記憶して各エアペン3の刻印回数を比較し、各エアペン3の刻印回数差が特定の閾値を超えたならば、二次元コード情報の刻印をPen1、2のエアペン3ではなく、Pen3、4のエアペン3で刻印するように変更し、Pen1、2のエアペン3とPen3、4のエアペン3の刻印数の偏りを改善することができる。
【0076】
図18はPen1、2のエアペン3を用いて二次元コード情報を刻印するとともに、Pen3、4のエアペン3を用いて文字情報も併せて刻印する際、各エアペン3の刻印数の偏りを改善する場合のフロー図である。
図18に示すように刻印開始した時点からステップS31に示すようにPen1〜Pen4の各エアペン3の刻印ドット数(打刻回数)は、制御装置5で刻印指示した回数を積算し、制御装置5のメモリに記憶する。制御装置5のメモリには特定の閾値が記録されていて、各エアペン3の刻印ドット数の差が閾値を超えているか否か、判断する。ここで制御装置5のメモリに記録している閾値として、例えば後述する表1に示すように、限界刻印数÷(1回の刻印で最も多く刻印するエアペン3の刻印回数+1回の刻印で最も少なく刻印するエアペン3の刻印回数)を例示することができる。
【0077】
4つのエアペン3の打刻数差が特定の閾値を超えた場合、制御装置5はステップS33において刻印ドット数の多いエアペン3が何本あるのか判断する機能を有する。
1本の場合、ステップS34において制御装置5は刻印ドット数が閾値を越えているエアペン3に代え、刻印ドット数が最も少ないエアペン3を用いて刻印する。
刻印ドット数の閾値を越えているエアペン3が2本の場合、ステップS35において制御装置5はエアペン3を2本同時に置き換え可能か判断する。即ち、同時に置き換え可能な場合、ステップS36において刻印ドット数が閾値を越えている2本のエアペン3が刻印するべき刻印を刻印ドット数が最も少ない2本のエアペン3に替えて刻印を実施する。
同時に置き換え不能の場合、ステップS37において刻印ドット数が閾値を越えている2本のエアペン3が刻印するべき刻印を刻印ドット数が最も少ない1本のエアペン3に替えて刻印を実施する。
刻印ドット数の閾値を越えているエアペン3が3本の場合、ステップS38において、刻印ドット数が閾値を越えている3本のエアペン3が刻印するべき刻印を刻印ドット数が最も少ない1本のエアペン3に替えて刻印を実施する。
【0078】
以上説明の刻印数が少ないエアペン3への置き換え例として図19に示すリストを制御装置5のメモリに記憶しておき、このリストに示すいずれかのNo.のケースであるのかに従ってPen1〜Pen4のいずれかのエアペン3の代替えペンを選択し、刻印することが好ましい。
図19に示すリストにはNo.1〜No.10のケースに分けて代替えエアペン3のいずれを選択するのか記載されている。図19に示すリストのケースのNo.1〜4は、Pen1〜Pen4のエアペン3のいずれか1つが閾値から刻印数を越えた場合である。Pen1のエアペン3が閾値を越えた場合は、Pen2〜4のエアペン3のいずれか最も刻印数の小さなエアペン3に置き換えて刻印できる。
ケースNo.2のようにPen2のエアペン3が閾値を越えた場合は、Pen1あるいはPen3〜Pen4のいずれか最も刻印数の小さなエアペン3に置き換えて刻印できる。ケースNo.3のようにPen3のエアペン3が閾値を越えた場合は、Pen1〜Pen2またはPen4のいずれか最も刻印数の小さなエアペン3に置き換えて刻印できる。ケースNo.4のようにPen4のエアペン3が閾値を越えた場合は、Pen1〜Pen3のいずれか最も刻印数の小さなエアペン3に置き換えて刻印できる。
【0079】
ケースNo.5のようにPen1とPen2のエアペン3が閾値を超えた場合は、Pen1のエアペン3をPen3のエアペン3に替え、Pen2のエアペン3をPen4のエアペン3に替えて刻印する。
ケースNo.6のようにPen1とPen3のエアペン3が閾値を超えた場合は、Pen1のエアペン3をPen3のエアペン3に替え、Pen2のエアペン3をPen4のエアペン3に替えて刻印する。
ケースNo.7のようにPen1とPen4のエアペン3が閾値を超えた場合は、Pen1のエアペン3をPen2のエアペン3に替え、Pen3のエアペン3をPen4のエアペン3に替えて刻印する。
【0080】
ケースNo.8のようにPen2とPen3のエアペン3が閾値を超えた場合は、Pen2のエアペン3をPen1のエアペン3に替え、Pen3のエアペン3をPen4のエアペン3に替えて刻印する。
ケースNo.9のようにPen2とPen4のエアペン3が閾値を超えた場合は、Pen2のエアペン3をPen1のエアペン3に替え、Pen4のエアペン3をPen3のエアペン3に替えて刻印する。
ケースNo.10のようにPen3とPen4のエアペン3が閾値を超えた場合は、Pen3のエアペン3をPen1のエアペン3に替え、Pen4のエアペン3をPen2のエアペン3に替えて刻印する。
【0081】
なお、図19のリストの欄外に記載したが、Pen1〜Pen4のエアペン3のうち、3本のエアペン3が閾値を超えた場合は、残り1本のエアペン3で残った刻印を順次行うこととする。
図19に示すリストに記載のケースNo.毎にいずれのエアペン3を代替えとするのか決めておき、Pen1〜Pen4のエアペン3の打刻数を逐次計数(もしくはカウント)して制御装置5のメモリに記憶しておき、図19のリストのいずれのケースに該当するか監視しながら刻印することで4本のエアペン3のスタイラス27の摩耗量を均一化し、メンテナンス間隔を延ばすことができる。
【0082】
ところで、刻印数のカウントは、以下の2種類を想定できる。
第一の想定:エアペン3はドットを刻印し文字や二次元コードを形成するため、それらに必要なドット数を刻印する。文字の形状や二次元コードにより刻印するドット数が異なる。文字や二次元コードを刻印する度に刻印したドット数を4つのエアペン3毎にカウントする。
第二の想定:文字数をカウントする。文字の形状により刻印するドット数は異なるが、同等のドット数と見なし、二次元コードは刻印したシンボルサイズから文字数換算を行いカウントする。
例えば、16×16ドットシンボルの場合、刻印するドット数は概ね16×16/2=128ドットになる。1文字当たりの刻印数を概ね20ドットと見積もると、16×16ドットのシンボルの二次元コードの文字数換算値は6文字となる。
【0083】
この背景の基、エアペン3毎の刻印数の差を少なくするためには、刻印を開始する度に1回の刻印において、刻印数の多いエアペン3を刻印カウントの少ないエアペン3と入れ替えることで各エアペン3の刻印数を均一化することができる。
しかし、1回の刻印の度にエアペン3の入れ替えを行ったのでは、複数のエアペン4で同時に刻印し、刻印時間を短くするというマーキング装置1としての本来の機能が失われるので、全てのエアペン3の刻印カウント数を同じにするのではなく、以下に説明するような条件下での刻印において、エアペン3の摩耗量を揃えることが好ましい。
【0084】
「二次元コードと文字を併記して刻印する場合」
この場合、二次元コードは16×16ドット以下のシンボルサイズのものが多く、二次元コードをPen1〜Pen2のエアペン3で刻印し、文字をPen1〜Pen4のエアペン3で刻印する。二次元コードを刻印するエアペン3は文字も刻印するので、Pen3〜Pen4のエアペン3に比べて刻印カウント数が多くなる。また、文字も4の倍数であれば、Pen1〜Pen4の刻印カウント数はほぼ同じになるが、6文字を刻印する場合は、Pen1〜Pen2のエアペン3では4文字刻印し、Pen3〜Pen4のエアペン3では2文字刻印するため、文字カウント数に違いが生じる。即ち、4の倍数以外の刻印カウント数で構成される文字を刻印する場合、複数のエアペン3間の刻印カウント数に差が生じる。
よって、Pen1〜Pen2〜Pen3〜Pen4のエアペン3の刻印カウント数の差を無くするように、Pen1〜Pen2のエアペン3の刻印部分と、Pen3〜Pen4のエアペン3の刻印部分を自動的に入れ替えて刻印することが好ましい。
【0085】
「文字のみを刻印する場合」
文字のみを刻印する場合について、先の場合と同等、文字が4の倍数であれば、Pen1〜Pen4の刻印カウント数はほぼ同じになるが、6文字を刻印する場合は、Pen1〜Pen2のエアペン3では4文字刻印し、Pen3〜Pen4のエアペン3では2文字刻印するため、文字カウント数に違いが生じる。即ち、4の倍数以外の刻印カウント数で構成される文字を刻印する場合、複数のエアペン3間の刻印カウント数に差が生じる。
よって、Pen1〜Pen4のエアペン3の刻印カウント数の差を無くするように、Pen1〜Pen2のエアペン3の刻印部分と、Pen3〜Pen4のエアペン3の刻印部分を自動的に入れ替えて刻印することが好ましい。
【0086】
次に、エアペン3の切り替え方法について以下のようにすることが好ましい。
制御装置5のメモリに設定するパラメータとして、エアペン3の交換目安数を設定することが好ましい。最も多く刻印するエアペン3と最も少なく刻印するエアペン3の1回当たりの刻印数を求め加算する。エアペン3の交換目安数を上で求めた刻印数で割った値をエアペン3の入れ替え刻印回数とする。これにより、最も多く刻印するエアペン3と最も少なく刻印するエアペン3では、エアペン交換目安数に到達するタイミングを同じにすることができる。
以下に表1に示す数値を用い、エアペン3の切り替えを行う場合の一例について説明する。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すようにPen1とPen2のエアペン3が1回の刻印で10回の刻印数(打刻数)となり、Pen3とPen4のエアペン3が1回の刻印で2回の打刻数となる場合、刻印を繰り返し行い、18回行った場合を想定する。Pen1とPen2のエアペン3は刻印1回当たり10ずつ刻印数が増加するので、刻印回数80回までそのまま刻印し、刻印回数8回目の終了後にPen1とPen2のエアペン3と、Pen3とPen4のエアペン3を切り替える。エアペン3の交換刻印数は100と規定しておく。
【0089】
切り替え後は、Pen3とPen4のエアペン3の刻印数が10ずつ増加し、Pen1とPen2のエアペン3の刻印数が2ずつ増加する。このため、刻印回数が17回の場合においてPen1とPen2の刻印数が98となり、Pen3とPen4の刻印数が105となるので、エアペン3の交換のための刻印数を100と定めた場合、17回の刻印終了後、Pen1〜Pen4のエアペン3を全て交換するならば、エアペン3毎のスタイラス27の摩耗量を均一化することができ、メンテナンス間隔をできる限り延ばすことができる効果を奏する。
【0090】
なお、エアペン3の交換刻印数は表1に示す如く100回に限らず、被マーキング体2とスタイラス27の相対硬度や互いの耐摩耗性などの関係から、交換に必要な回数は任意の数に設定できる。このため、交換刻印数に応じたペン交換時期を選択できる。表1はペン交換時期を決める場合の一つの例として表示したもので、本発明が表1の例に限定されないのは勿論である。
【符号の説明】
【0091】
1…マーキング装置、2…被マーキング体、3…エアペン、H…振動ペン装置、4…駆動装置、5…制御装置、6…ワークホルダ、7…振動センサ、8…振動検出器、9…マーキングチェック部、10…読み取り装置(不良検出器)、11…振動検出装置(不良検出器)、16…流路、17…後部ヘッド、18…前部ヘッド、20…取付ボルト、22…凹部、23…受部、25…シリンダー、25a…フランジ部、25b、25c…排気孔、25d…段部、26…ピストン、27…スタイラス、27a…打刻部、28…導入筒、28a…導入孔、29…案内筒、30…バネ部材、31…Oリング。
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