特許第5977654号(P5977654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977654液体試料中の分析物を検出する発光法及び分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977654
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】液体試料中の分析物を検出する発光法及び分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20160817BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20160817BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20160817BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G01N21/64 B
   G01N33/553
   G01N33/543 575
   G01N33/53 U
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-262504(P2012-262504)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2013-152215(P2013-152215A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】12152363.3
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ウルスラ・ギーゼン
(72)【発明者】
【氏名】エルナ・ドナーバウアー
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−184842(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109772(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/011531(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/151058(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097240(US,A1)
【文献】 特開昭51−001188(JP,A)
【文献】 Yuzaburo Namba, Michinori Usami, and Osamu Suzuki,Highly Sensitive Electrochemiluminescence Immunoassay Using the Ruthenium Chelate-Labeled Antibody Bound on the Magnetic Micro Beads,Analytical Sciences,日本,The Japan Society for Analytical Chemistry,1999年11月,Vol. 15,1087-0193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/75
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の分析物の有無および濃度を測定する発光法であって、
a)励起エネルギーを付与すると発光を生じ得るマーカーで分析物を標識する工程、ここで、マーカーによって生じる発光の発光減衰について記述している参照データ(142)が電子メモリ(140)に保存されている、
b)発光を生じさせるために励起エネルギーを付与する工程、
c)測定信号を取得するために、発光を一定の期間にわたって時間分解測定する工程、
d)電子メモリから参照データを読み込む工程、
e)測定信号と参照データに記述されている発光減衰を比較する工程、
f)測定信号を使用して、液体試料中の分析物の存在の指標となる出力信号を生成する工程、及び
g)測定信号と参照データに記述された発光減衰に不一致が生じる場合にエラー信号を生成する工程を含み、
参照データが、発光の最大振幅を減衰期間後に達する発光レベルに関連づける線形則についての記述であり、
該方法がさらに、
測定信号から最大振幅を決定する工程、
参照データを用いて、減衰期間後の発光の予測レベルを算出する工程、
不一致が存在するか否かを決定するために、予測レベルと減衰期間での測定信号を比較する工程
を含む、発光法。
【請求項2】
参照データが複数の分析物に関する一連の参照データを含み、各分析物には一連の参照データが割り当てられており、かつ、
検出される分析物の内の1種が液体試料に含まれることの指標となる信号を受信する工程、
受信信号によって示された分析物に割り当てられた、参照データの一連の参照データの内の1つを選択する工程、及び
選択した一連の参照データを使用して、測定信号と一連の参照データによって記述された発光減衰の比較を実施する工程
をさらに含む、請求項1に記載の発光法。
【請求項3】
出力信号にエラー信号を割り当てる工程、及び
出力信号と割り当てられたエラー信号を表形式データとして出力する工程
をさらに含む、請求項1又は2に記載の発光法。
【請求項4】
出力信号がエラー信号によって印付けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
エラー信号に応答して、少なくとも工程(b)から(g)の処理を繰り返すことで再測定する工程をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光法。
【請求項6】
励起エネルギーが、電気エネルギー、放射エネルギー及び/又は化学エネルギーの付与によって付与される、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光法。
【請求項7】
電気化学的に活性な物質がマーカーとの電気化学発光反応に寄与し、その結果、発光が生じることで、マーカーが電気化学発光を生じ得る、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光法。
【請求項8】
分析物が液体試料中に存在している結果生じる、マーカーを含みかつ磁性微粒子(138)に結合している複合体を形成させる、少なくとも1つの特定の生化学的結合反応を含む一連の反応を実施する工程、
前記分析物の存在を決定するために、作用電極を有する測定セル内で検出サイクルを実施する工程であって、前記検出サイクルが、微粒子が作用電極の試料と反対側に位置する磁性部品(116)の磁場により引きつけられるように複合体が作用電極(120)に接触し、作用電極の試料側の表面に前記微粒子が堆積される捕捉工程、及びマーカーと電気化学的に活性な物質の電気化学発光反応を引き起こしてマーカーを発光させて、液体試料中での分析物の存在を決定するために、作用電極に電位を印加する工程
をさらに含む、請求項に記載の発光法。
【請求項9】
マーカーがルテニウム錯体であり、かつ、電気化学的に活性な物質がトリプロピルアミンである、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光法。
【請求項10】
発光が光学検出器(126)で測定され、かつ、光学検出器の出力信号を抽出することによって測定信号を取得する、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光法。
【請求項11】
液体試料の一部を、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子、ビオチン化抗体、及びルテニル化抗体と混合する工程、
分析物、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子、ビオチン化抗体、及びルテニル化抗体を含む混合物を、サンドイッチが形成されるようにインキュベーター(102)内でインキュベートする工程、
混合物の一部をインキュベーター内から測定セルに移し、かつ、測定セルにトリプロピルアミンを移す工程、
励起エネルギーを付与する前に、磁性微粒子が測定セルの作用電極に磁気によって吸着されるように、測定セルに磁場を印加する工程
をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光法。
【請求項12】
時間分解測定を実施するために混合物の一部を測定セルに移す前に混合物を平衡状態には達しない所定の期間インキュベートする、請求項11に記載の発光法。
【請求項13】
液体試料中の分析物の有無および濃度を測定するための分析システムであって、
分析物と、該分析物を標識するためのマーカーであって励起エネルギーを付与されると発光を生じ得るマーカーと、を含む液体(104)を受け入れるためのインキュベーター(102)、
マーカーによって生じる発光の発光減衰についての記述である参照データを保存している電子メモリ(140)、
発光を生じさせるために励起エネルギーを付与するための起動部(122)、
一定の期間にわたって発光を時間分解測定するための、測定信号を提供するように構成されている取得部(126)、及び
データ処理部(144)であって、
・電子メモリから参照データを読み込み、
・測定信号と参照データによって記述されている発光減衰を比較し、
・測定信号を使用して液体試料中の分析物の存在の指標となる出力信号を生成し、
・測定信号と参照データによって記述されている発光減衰に不一致が生じる場合にエラー信号を生成する
ように構成されているデータ処理部(144)
を含み、
データ処理部が以下の工程を実行することで、測定信号と、参照データによって記述されている発光減衰を比較するように構成されている、分析システム:
測定信号から最大振幅を決定する工程、
参照データを使用して、最大振幅を用いた減衰期間後の発光の予測レベルを算出する工程、
不一致の有無を確認するために、予測レベルと減衰期間での測定信号を比較する工程。。
【請求項14】
参照データが複数の分析物についての一連の参照データを含み、
各分析物には一連の参照データが割り当てられており、かつ、検出される分析物の内の1種が液体試料中に含まれることの指標となる信号を受信するためのインターフェース(150)をさらに含み、
データ処理部が、受信信号によって示された分析物に割り当てられている参照データの一連の参照データの内の1つを選択し、選択した一連の参照データを用いて測定信号と一連の参照データによって記述されている発光減衰の比較を実施するように構成されている、請求項13に記載の分析システム。
【請求項15】
各一連の参照データが、発光減衰を記述している検定特異的な線形則を記述している、請求項14に記載の分析システム。
【請求項16】
各一連の参照データが、測定信号の振幅の関数としての励起エネルギーを指示された時間間隔で付与した後の測定信号の予測レベルを記述している、請求項14又は15に記載の分析システム。
【請求項17】
ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子(138)を含む第一の容器(168)、ビオチン化抗体(156)を含む第二の容器(170)、ルテニル化抗体(162)を含む第三の容器(172)、液体試料、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子、ビオチン化抗体及びルテニル化抗体を含む混合物の一部を、分析物、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子、ビオチン化抗体及びルテニル化抗体のサンドイッチがインキュベーター内で形成されるようにインキュベーターに提供するためのロボット部(176)、混合物の一部をインキュベーターから測定セルに移し、かつトリプロピルアミンを測定セルに移すための輸送部(110、136)、磁性微粒子が磁気によって吸着されるように測定セルに磁場を印加するための磁性部品(116)、並びに、ロボット部、輸送部、磁性部品、起動部及び獲得部を、時間分解測定を実施するために測定セルに混合物の一部を移す前に混合物をインキュベーター内で、平衡状態には達しない所定の期間インキュベートするように制御するための制御部(132)をさらに含む、請求項1316のいずれかに記載の分析システム。
【請求項18】
制御部が、エラー信号に応答して再測定するように構成されており、ロボット部が、再測定のために液体試料の他の一部を含む混合物に提供するように制御されている、請求項17に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光免疫測定の利用などにより発光を生じさせることで液体試料中の分析物を検出する分野及び対応する分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生化学的物質や生物学的物質に含まれる目的の分析物を検出し、定量するための数多くの方法とシステムが多数開発されてきた。微量の微生物、薬品、ホルモン、ウイルス、抗体、核酸及び他のタンパク質を測定することができる方法やシステムは、研究者や臨床医にとって非常に価値がある。
【0003】
その分野のかなり多くの部分は、周知の結合反応、例えば、抗原−抗体反応、核酸ハイブリダイゼーション技術、及びタンパク質−リガンド系に基づいて開発されてきた。生化学的結合系や生物学的結合系の多くは特異性が高いため、研究や診断に価値のある多くの検定方法やシステムが導き出されてきた。目的とする分析物の有無は典型的には、1種以上の結合物質に付着した観察可能な「標識」の有無によって示される。
【0004】
目的の分析物を含む試料を化学発光標識で標識した反応物質と混合する化学発光測定技術が開発された。反応混合物をインキュベートすると標識した反応物質の一部が分析物に結合する。インキュベートした後、片方又は両方の画分に含まれる標識の濃度を化学発光技術によって決定することができる。片方又は両方の画分で決定された化学発光のレベルが、その生物学的試料に含まれる目的の分析物の量を示す。
【0005】
電気化学発光(ECL)測定技術は化学発光技術を改良したものであり、これによって、目的の分析物の有無や濃度が高感度で正確に測定される。そのような技術では、発光を生じさせるために、インキュベートした試料を定電圧制御された又は定電流制御された作用電極に暴露する。適切な化学環境で、そのような電気化学発光が、特定の時点に特定の方法で作用電極に印加された電圧又は電流によって発生する。標識によって生じた光が測定され、分析物の有無や量を示す。そのようなECL技術の詳細については、例えば米国特許第5,238,808号及び国際公開第86/02734号を参照のこと。
【0006】
米国特許第6,881,536号は、不活性な微粒子が検定系の結合反応物質の内の1種に特異的に結合する発光現象に基づいた、具体的な結合検定の方法を示している。
米国特許第6,599,473号は、電気化学発光結合反応分析(electrochemiluminescence binding reaction analysis=ECL−BBA)を開示している。
【0007】
ECL−BBAでは、検出可能な複合体が生成され、その濃度が、求めている分析結果の測定値である。ECL反応を起こすことができる標識物質(標識)は分析物、例えば抗体に特異的な結合試薬に結合する。標識物質と結合試薬を含む種は標識複合体と呼ばれる。
【0008】
電解電量計の作用電極で適切な電圧をかけると、そのような物質は光度計で測定可能な光を発する。通常この反応には、共反応物質と呼ばれる第二の電気化学的に活性な物質が寄与する。実際には、第一のルテニウム錯体(ルテニウム−トリス[ビピリジル])がECL標識として、共反応物質であるTPA(トリプロピルアミン)と共に用いられる。この2種の電気化学的に活性な物質は両方とも、電極への電圧に印加によって酸化される。続いて起こるプロトンの消失により、TPAは強い還元種へと変換される。続く酸化還元反応によってECL標識が励起状態になり、そこから光子の放出を伴いECL標識は基底状態に戻る。ECL標識反応は、電極への電圧の印加後に単一の標識分子が複数の光子を放出する循環反応であることが好ましい。
【0009】
その分析に特徴的なECLで標識された複合体分子は、磁性微粒子(ビーズ)に固定される。実際には、直径が通常2〜3マイクロメーターの磁性化したポリスチレンビーズが使用される。固定は、一対の特定の生化学的な結合パートナーによって起こる。ストレプトアビジンとビオチンの組み合わせは特に有効となっている。ビーズをストレプトアビジンで被覆し、そこにビオチン化抗体が結合する。
【0010】
標識された複合体を結合したビーズを測定装置の測定セルに入れる。セルには、ECL反応を起こすのに必要な電場を発生させるのに必須の電極が備えられている。作用電極の下に配置した磁石の磁場の中にある作用電極の表面に、ビーズが流れ込む。これは通常、液体試料が流れ続けている流水式セルの中で起こることから、この磁気によるビーズの堆積は「捕捉」と呼ばれている。その後ECL反応を起こすのに必要な電圧を作用電極に印加し、生じた発光を適した光学検出器で測定する。発光強度は作用電極の表面にあるビーズに結合した標識抗体の数の濃度に関する測定値で、これが試料中に含まれる分析物の濃度の測定値となる。求める濃度は測定された発光信号を校正して算出することができる。
【0011】
この種のECL−BBA法の複数の異なる変形例が、文献中で考察され、記載されている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、独立請求項で請求した、液体試料中の分析物を検出する改良された発光法と分析システムを提供する。本発明の態様を従属請求項で示す。
本発明の態様では、励起エネルギーを付与すると発光を生じ得るマーカーで分析物を標識する工程(ここで、マーカーによって生じる発光の発光減衰について記述している参照データは電子メモリに保存されている)、発光を生じさせるために励起エネルギーを付与する工程、測定信号を収集するために発光を一定の期間にわたって時間分解測定する工程、電子メモリから参照データを読み込む工程、測定信号と参照データに記述された発光減衰を比較する工程、測定信号を使用して液体試料中の分析物の有無の指標となる出力信号を生成する工程、及び、測定信号と参照データに記述された発光減衰に不一致が生じる場合にエラー信号を生成する工程により、液体試料中の分析物を検出する。
【0013】
本明細書における「分析物」は、分析する液体試料の成分、例えば様々な大きさの分子、タンパク質、代謝産物などのことである。
本明細書における「液体試料」は、ヒトや他の生物由来のいかなる種類の組織や体液のような生体試料を包含するものである。具体的には、生体試料は血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、脳脊髄液試料若しくは唾液試料又はそれらのいかなる誘導体であってよい。
【0014】
本明細書における用語「発光」は、放射誘導性発光、化学発光及び電気化学発光、具体的にはECL−BBAなどの、いかなる型の発光をも包含するものである。
本明細書における用語「発光免疫測定」は、液体試料中の特定の分析物の有無を示す光学信号、すなわち発光信号を生成する、いかなる免疫測定をも包含するものである。
【0015】
本発明の出発点は、発光を生じさせるために励起エネルギーを付与すると、まれに干渉信号もまた生じ得るという驚くべき発見である。驚いたことに、そのような干渉信号はマーカーから生じる特定の発光信号の減衰とは異なる減衰特性を有する。干渉信号は発光免疫測定によって生成される発光信号と重なる可能性があるため、誤った測定結果が誘導される可能性がある。
【0016】
本発明の態様は、測定信号に含まれる干渉信号の有無を確認するためにこの発見を用いているため、特に有用である。干渉信号の存在が検出された場合には、測定信号に基づいて提供された出力信号が間違っている可能性があること、液体試料中に実際には存在しない分析物の存在や液体試料中の分析物の誤った濃度を示している可能性があることを利用者に知らせるために、エラー信号が生成され得る。
【0017】
本発明の態様は、励起エネルギーの付与によって意図的にではなく生じ、確認されなければ誤った測定結果を誘導する可能性がある望ましくない干渉信号を確認できるため、特に有用である。例えば、干渉信号の構成要素は、測定セルに含まれる物質のいくらかの物理的特性及び/又は化学特性によって生じる。
【0018】
そのような干渉信号の発生は非常に稀であることが分かっている。それにもかかわらず、重なった干渉信号による間違った測定信号を確実に確認することは、そのような非常に稀な例で誤診を回避するためにきわめて重要である。そのような望ましくない干渉信号は、測定セルに含まれる自家発光物質の存在によって生じる可能性がある。
【0019】
例えば、稀な例ではあるが、励起エネルギーを付与した際に十分な信号強度をもつ干渉信号を生じ、その結果間違った測定信号を誘導するのに十分な濃度の自家発光分子が患者の液体試料に含まれている可能性がある。そのような濃度の自家発光分子は、いくつかの特定の条件、患者の稀な疾患又は病理で引き起こされる可能性がある。
【0020】
本発明の態様では、マーカーによって生じる発光信号の発光減衰について記述している参照データは、発光信号の最大振幅を指定された減衰期間後に達する発光信号の発光レベルに関連づける線形則についての説明である。これは、発光信号の最大振幅と、所定の減衰期間後に達する残存発光レベルの直線関係という驚くべき発見に基づいている。励起エネルギーの付与によって干渉信号が生じた場合、干渉信号が発光信号に重なり、得られる測定信号の減衰期間がこの線形則を満たさなくなる。これにより、測定信号に含まれる干渉信号の有無が検出できる。
【0021】
本発明の態様では、複数の分析物と発光免疫測定についての一連の参照データが保存される。一連の参照データはそれぞれ、分析物の検出に用いた免疫測定に特異的な、発光の最大振幅と減衰期間後に達する発光レベルに関する線形則についての記述である。これは、分析物の検出に用いられる特定の免疫測定に関係なくそのような線形則が存在し、かつ、この線形則は特定の発光免疫測定に特異的であるという驚くべき発見に基づいている。言い換えれば、最大振幅と、所定の減衰期間後の残存信号レベルの間の関係は常に線形であるが、線形則の座標と傾きは発光免疫測定に特異的である。
【0022】
本発明の態様は、化学発光及び電気化学発光、具体的にはECL−BBAを含む、様々な型の発光技術に応用することができる。
別の側面で本発明は、液体試料中の分析物を検出するための分析システムに関する。
【0023】
この分析システムの態様は、分析物と分析物を標識するためのマーカー(このマーカーは励起エネルギーを付与されると発光を生じ得る)を含む液体を受け入れるためのインキュベーター、マーカーによって生じる発光の発光減衰について記述している参照データを保存している電子メモリ、発光を生じさせるために励起エネルギーを付与するための起動部、一定の期間にわたって発光を時間分解測定するための取得部(この取得部は測定信号を提供するように構成されている)、電子メモリから参照データを読み込み、測定信号と参照データによって記述されている発光減衰を比較し、測定信号を使用して液体試料中の分析物の有無の指標となる出力信号を生成し、測定信号と参照データによって記述されている発光減衰に不一致が生じる場合にエラー信号を生成するように構成されているデータ処理部を含む。
【0024】
本発明の態様では、インキュベート時間を短縮することができ、それによって分析システムの処理能力を改良することができる。このことは、平衡状態に達するまでインキュベートする必要はないという事実による。一方で、比較的短時間でのインキュベートでも、発光信号に寄与する比較的小数のサンドイッチの形成には十分である場合がある。これは、本発明の態様では、発光信号が比較的弱くても測定信号に含まれる干渉信号の有無を正確に検出することができるため、サンドイッチによって生じる発光信号が干渉信号と比較して相対的に弱くても構わないためである。
【0025】
本発明の態様では、サンドイッチ型又は競合型の発光免疫測定を用いる。
以下に本発明の態様を、図面を参照しながら、詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の分析システムの一態様のブロック図である。
図2図2は、ECL−BBA技術を示す図である。
図3図3は、ロボット部を含む分析システムのさらなる態様のブロック図である。
図4図4は、本発明の方法の一態様を示すフローチャートである。
図5図5は、様々な振幅をもつ発光信号の、発光減衰についての説明である。
図6図6は、図5に示す発光信号の最大振幅を減衰期間tの後に達する残存発光信号レベルと関連づける線形則について説明している図である。
図7図7は、様々な振幅をもつ干渉信号について、分析物に特異的な発光信号を含まない干渉信号の減衰特性を図示している。
図8図8は、干渉信号の最大振幅を減衰期間tの後に達する信号レベルと関連づける線形則について説明している図である。
図9図9は、発光信号と干渉信号の減衰特性について説明している図である。
図10図10は、干渉信号が重なっていない発光信号と、干渉信号と発光信号が重なった結果得られた測定信号を比較する図である。
図11図11は、発光信号の最大振幅を、トリガー信号から減衰期間tの後に達する発光信号レベルを関連づける検定特異的な線形則を説明している図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の本発明の態様についての記述全体を通して、同様又は同一の構成要素は、同一の参照符号によって示す。
図1は、液体試料中の分析物を検出するための分析システム100を示す。この分析システム100は、液体試料の分割量(aliquot)と分析物を標識するためのマーカー(発光免疫測定用のマーカーなど)の混合物である液体104を受け入れるためのインキュベーター102を含む。
【0028】
分析システム100は、発光を生じる、電気化学反応の共反応物質を含んでいる貯蔵部106を備えている。インキュベーター102と貯蔵部106はパイプ系110により分析システムの測定セル108に接続されており、液体104の一部と共反応物質をパイプ系110経由で測定セル108に流入させることができる。
【0029】
測定セル108は、液体104の一部と共反応物質をパイプ系110から受け入れるための導管114を有するセル本体112を含む。測定セル108は、測定セル中に磁場を作るための、永久磁石などの磁性部品116を有する。磁性部品116は、導管内の磁場の電源を入れたり切ったりするために、導管114に面するように或いは導管114から離れるように磁性部品116を回転させるための作動装置118に接続されていてもよい。
【0030】
磁性部品116は、電源122に接続されている作用電極120の下に位置している。励起領域124は、導管114中で、作用電極120上の磁性部品116によって生じる磁場内に形成される。
【0031】
励起エネルギーを付与した場合に、すなわち起動電流を作用電極120に印加した場合に励起領域124で生じる発光を、光電子増倍管126などの光学検出器を用いた手段で測定する。光学検出器は、発光が検出器の振動数の範囲内にある場合に、干渉信号(測定セル中に存在し得る自家発光分子によって生じる発光信号など)が寄与する可能性のある測定信号を提供するように、特定の振動数の範囲内で精度が高い。
【0032】
光電子増倍管126は、励起領域124の対面で、作用電極120の対電極128によって形成された窓の上にあり、励起エネルギーによって生じた発光光子や他の干渉光子はどれもこの窓を通って光電子増倍管126に衝突する。その結果得られた時間分解測定信号130が、光電子増倍管126から分析システム100の制御部132に提供される。
【0033】
測定を実施した後、導管114内にある液体は液体廃棄容器134内に廃棄され、測定信号を続けて収集するために測定セル108は再生される。
制御部132は、トリガー信号を作用電極120に付与する電源122を制御するために、電源122に接続される。制御部132は、永久磁石を動かし、それに応じて磁場を入れたり切ったりする作動装置118を制御するために、作動装置118ともまた接続される。
【0034】
さらに制御部132は、液体104の一部をインキュベーター102から、共反応物質の一部を貯蔵部106から抽出し、また測定セル108から液体を除去し、測定セルを再生させるために、「注入部」、すなわちポンプ136に接続されていてもよい。加えて制御部132は、ピペット操作装置のようなさらなるロボット部に接続されていてもよい(図3の態様を参照)。
【0035】
測定セル108を、様々な発光免疫測定を用いたECL−BBAを実施するために改造してもよい。
例えば、液体104がいわゆる「サンドイッチ」を形成させるための液体試料の一部、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子、ビオチン化抗体及びルテニル化抗体の混合物を含み、貯蔵部106に含まれる共反応物質がトリプロピルアミンであってもよい。従って、標識が結合した磁性微粒子138が導管114に流入する。磁性微粒子138は、磁場の電源が入った場合に作用電極120上に固定される。次に作用電極120に起動電流が印加され、ECL−BBA技術によって電気化学発光が生じる。
【0036】
制御部132は、干渉信号が重なっていない有効測定信号の発光減衰について記述している参照データ142を保存する電子メモリ140を含む。その参照データは、分析物の検出に用いられる発光免疫測定に特異的なものである。
【0037】
本明細書で検討した態様では、参照データ142は、参照テーブル或いはデータベースのテーブルとして保存されている。参照データは、分析システム100によって支持される各発光免疫測定についての一連の参照データを含む。例えば、支持される免疫測定のそれぞれについて、2つの係数a及びb並びに時間tがメモリ140に保存されている。係数a及びbは発光信号の最大振幅を減衰期間tの後に達する発光レベルと関連づける線形則を記述している。考慮する減衰期間tが常に一定の場合には、参照データの一部として減衰期間tを保存することは不要であるかも知れない。
【0038】
制御部132は、プログラムモジュール146と148を実行する少なくとも1つの電子処理部144を含む。プログラムモジュール146は測定信号132を取得するために処理部144によって実行され、プログラムモジュール148は取得した測定信号132を評価するために処理部144によって実行される。
【0039】
制御部132は、画面152或いは別のヒューマン・マシン・インターフェースを制御部132に接続するインターフェース150を含む。インターフェース150は、利用者が選択した、分析システム100によって支持される発光免疫測定のうちの1種を窓154に、分析結果を窓156表示するためのグラフィカル・ユーザー・インターフェースとして実装される場合がある。
【0040】
分析システム100によって実施された分析の結果は、図1に図示するような表形式データ(ここで、カラムAは検出する分析物を、カラムCは検出された分析物の濃度を示す)として出力される場合がある。カラムEは、検出された濃度が間違っている可能性があるかどうかを、印や他の警告信号、或いは赤い疑問符や感嘆符などの符号を表示することなどで示すのに役立つ。
【0041】
操作中利用者は窓154にそれぞれの選択を入力して、分析システム100によって支持される発光免疫測定のうちの1つを選択する。液体試料の分析は、ポンプ136が液体104の一部と共反応物質の一部を導管114に輸送するように制御されるように、プログラムモジュール146を実行して開始される。
【0042】
次に、磁性微粒子とそれに結合した標識を作用電極120上に固定するために永久磁石の磁場が導管114に印加されるように、作動装置118が永久磁石を所定位置に動かすために制御される。その後、測定信号130が生じるように発光を励起させるため、作用電極に起動電流を印加するように電源122が制御される。
【0043】
光電子増倍管126からの出力を所定の時間にわたって、例えば電源122から起動電流を印加した2秒後から抽出することにより、発光を時間分解測定するための測定信号130を取得する。
【0044】
測定信号130を構成するデータ試料は制御部132のメモリ140内に保存され、プログラムモジュール148が取得した測定信号130の評価を開始する。プログラムモジュール148を実行することにより、測定信号130の振幅が決定する。次にプログラムモジュール148は、利用者が選択した免疫測定の係数a及びb並びに時間tを読み込むことで、参照データ142を入手するための読み込みを実施する。
【0045】
a及びbによって記述される線形則を利用して、時間t後に測定信号130が達する予測信号レベルを算出し、その時間t後の測定信号130の実際の信号レベルと比較する。不一致が生じる場合、すなわち測定信号130の実際の信号レベルが予測信号レベルの所定の限度を下回る或いは上回る場合には、不一致、すなわち重なった干渉信号の存在が検出される。
【0046】
次に、液体中の分析物(検出された場合)の濃度Cを、測定信号130を使用してプログラムモジュール148によって決定し、不一致が検出された場合には、決定した濃度Cをエラー信号Eで印付ける。
【0047】
次に、導管114から液体を除去し、測定セル108を再生するために、ポンプ136が制御部132で制御される。
図2は、インキュベーター102内で形成される「サンドイッチ」の図であり、これに作用電極120上にある励起領域124内で起動電流が印加される。本明細書で検討した態様では、各磁性微粒子138の直径は約2.8マイクロメーターである。磁性微粒子138は、検出する分析物160に応じて選択される免疫測定用のビオチン化抗体158に結合している。本明細書で検討した態様では、分析物160に応じて選択される抗体162に結合したルテニウム錯体(ルテニウム−トリス[ビピリジル])が発光標識として使用される。
【0048】
起動電流を印加すると、ECL−BBA技術に従ってトリプロピルアミンとの電気化学反応が誘導され、発光が生じる。
図3は、分析システム100のさらなる態様を示している。分析システム100は、各試料管が液体試料を含む、試料管などの容器を受け取るための回転部164を有する。ピペッター176が無作為に利用できるように、回転部164は多数の試料管を保持してもよい。
【0049】
分析システム100は、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子の入った容器168、ビオチン化抗体の入った容器170、及びルテニル化抗体の入った容器172を受け取るための第二の回転部166を備えている。第二の回転部は、容器168、170及び172に入った様々な試薬をピペッター176が利用出来るように、図3に示すような試薬ディスクとして実行されてもよい。
【0050】
分析システム100は、混合物をインキュベーター102に提供するためのロボット部を備えている。本明細書で検討した態様では、ロボット部は制御部132によって制御され、かつ、ピペッター176を有するピペット操作装置174を含む。
【0051】
操作中、制御部132は、ローター164が保持している試料管の内の1本から液体試料の分割量を抽出し、容器168、170及び172のそれぞれからストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子の一部、ビオチン化抗体及びルテニル化抗体を抽出するようにピペッター176を制御し、その後、この混合物をインキュベーター102内で所定の時間、例えば9〜27分間インキュベートする。
【0052】
制御部132は、液体混合物が共反応物、すなわちトリプロピルアミンと共に、インキュベーター102から測定セル108の導管114内に流入するように、「注入部」、例えばポンプ136(図1参照)を制御する。次に制御部132は、磁場の電源を入れるために作動装置118を、続いて起動電流を印加するために電源122を制御する(図1参照)。
【0053】
生じた測定信号130を、光電子増倍管126の出力を抽出することにより制御部132によって取得する。
プログラムモジュール148によりエラー信号が生成された場合には(図1参照)、重なり合った信号干渉信号を含まない、正確な測定信号130の収集を試みるために、再測定が行われる。このことは、測定セル108を洗浄・再生し、それに続いて、一連の全実行を、分析する液体試料の別の分割量を抽出することから繰り返すことによって行われる。
【0054】
図4は、それぞれのフローチャートを示している。工程200では、分析する液体試料の分割量、ストレプトアビジンで被覆した磁性微粒子、ビオチン化抗体及びルテニル化抗体の混合物を提供するために、分析システムのピペッターが操作される。この混合物を工程202で所定の期間インキュベートし、その後工程204で、トリプロピルアミン(TPA)と共に測定セルへ移す。
【0055】
工程206では結合した磁性微粒子が作用電極に向かって励起領域124へと引きつけられるように、磁場の電源が入れられる(図1参照)。工程208では、発光を生じる起動電流を提供するために、作用電極に電位が印加される。工程210では、光電子増倍管から提供される出力信号を抽出することなどにより、生じた発光が一定の期間測定される。稀に、干渉信号もまた起動電流によって生じる。そのような稀な例では、測定信号は発光信号と干渉信号が重なり合うことによって生じる。
【0056】
工程212では、最大振幅、すなわち収集した測定信号の最大信号レベルが決定され、工程214では一連の参照データが分析システムの電子メモリから読み込まれる。一連の参照データは、測定した最大振幅を所定の減衰期間t後の予測残存信号レベルと関連づけた線形則について記述している。
【0057】
工程216では、一連の参照データと測定された測定信号の振幅を使用して時間t後の予測信号レベルを測定する。工程218では、時間t後の予測信号レベルと測定信号の実際の信号レベルとの間に不一致が存在するかを決定する。不一致があった場合、工程220でエラー信号が生成され、工程222で測定結果と共に出力される。不一致がない場合には、制御は工程218から工程222に直接進む。測定結果、すなわち分析物の有無及び/又は分析物の濃度は、適切な校正情報(それ自体は先行技術から分かっている)を用いて測定信号から得られる。
【0058】
図5は、tが0秒の時に起動電流を印加し、それから2秒間隔で取得した複数の測定信号130を示している。図5で示した測定信号は、重なり合った干渉信号を含まない発光信号である。
【0059】
図6は、測定信号の振幅(「最大信号」)を時間tでの残存信号レベルと関連づけた図5に示す測定信号から得られたグラフを示している。図6から明らかなように、発光信号の振幅を時間t後の残存信号レベルと関連づける線形則があり、図6では、減衰期間をt=385ミリ秒、t=885ミリ秒及びt=1385ミリ秒とした場合の、3つの代表的な曲線を示している。
【0060】
図7は、マーカーを含めずに、従って発光信号を含めずに取得された別の一連の測定信号を示す。従って、図7で図示した測定信号は、マーカーによって生じたものではない、純粋な干渉信号である。図7は、起動電流によって生じた各干渉信号の一定の期間にわたる信号レベルを示している。図7に示すように、起動電流によって生じた干渉信号もまた信号の減衰特性を有するが、干渉信号の信号減衰がより遅いという点で、図5に示す発光信号の減衰特性とは異なる。
【0061】
図8は、図7に示すデータに基づく、図6と同様の図である。図8から明らかなように、干渉信号の振幅と一定の期間後の残存信号との関係もまた、線形性である。
図9aから9dは、マーカーから生じる発光信号176と、不純物のような別の物質から生じる干渉信号178(これも起動電流などの励起エネルギーにより生じる)の、一定の期間にわたる異なる発光減衰の特性を示している図である。図9から明らかなように、時間tが0の時点での信号の振幅にかかわらず、干渉信号178の信号減衰は発光信号176よりも遅い。
【0062】
図10a及び10bはそれぞれ、分析物であるトロポニンT及びCEAのそれぞれを検出する免疫測定で測定した発光信号176を示している。
図10a及び10bでも示されている重なり合った信号180の振幅は発光信号176の振幅とほぼ同じであり、発光信号176と干渉信号178の重なりからなる。図10a及び10bから明らかなように、重なり合った信号180は、重なり合った干渉信号178に起因する、発光信号176よりも遅い減衰特性をもつ。
【0063】
発光信号176と重なり合った信号180の減衰特性が異なることにより、発光信号176だけでなく干渉信号178も励起されたことによって生じる誤った測定を確認することができる。これにより重なり合った信号180がエラーを含んでいることを確認することができるので、それぞれの測定結果を無視し、再測定をすることが可能となる。
【0064】
図11aは、時間tが0、すなわち励起エネルギーを付与した時点での発光信号176の振幅と、減衰期間をt、t及びtとした場合の減衰期間t後の残存信号レベルとの間の直線関係を示している。図11aは、トロポニンTの免疫測定についてのこの線形則を、図11b及びcはCEAとCA15−3の免疫測定についてのこの直線関係を示している。図11a、b及びcから明らかなように、少なくとも直線関係の傾きは検定特異的であり、関係そのものは常に線形性である。
【0065】
【表1】
【0066】
上の表は、トロポニンTとCEAの免疫測定についてのこの線形則の一連の参照データを示している。一連の参照データはそれぞれ、時間t、t及びtについての係数a及びbを含み、ここでaは縦座標、bは傾きであり、指示された減衰期間t後の残存信号レベルyはy=a+bxで算出される。式中、xは時間tが0の時点、すなわち励起エネルギーを付与した時点での測定信号の振幅である。
【0067】
実際の測定信号と参照データに記述された発光減衰との間の不一致を検出するには、測定信号の振幅を決定し、例えば時間tでの予測残存信号レベル(これにより時間tでの予測残存信号レベルyが得られる)を算出する。実際の残存信号レベルと測定信号が、予測信号レベルの所定の限度を越えて異なる場合には、不一致、つまり干渉信号178の存在が確認される。
【符号の説明】
【0068】
参照符号一覧
分析システム 100
インキュベーター 102
液体 104
貯蔵部 106
測定セル 108
パイプ系 110
セル本体 112
導管 114
磁性部品 116
作動装置 118
作用電極 120
電源 122
励起領域 124
光電子増倍管 126
対電極 128
測定信号 130
制御部 132
容器 134
ポンプ 136
微粒子 138
メモリ 140
参照データ 142
処理部 144
プログラムモジュール 146
プログラムモジュール 148
インターフェース 150
画面 152
窓 154
窓 156
ビオチン化抗体 158
分析物 160
ルテニル化抗体 162
回転部 164
回転部 166
容器 168
容器 170
容器 172
ピペット操作装置 174
発光信号 176
干渉信号 178
重なり合った信号 180
図1
図2
図4
図5
図6
図8
図11
図3
図7
図9
図10