特許第5977656号(P5977656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977656
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】貯留材およびそれを備えた貯留浸透施設
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/03 20060101AFI20160817BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20160817BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   E03B3/03 B
   E03B11/14
   E03F1/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-265251(P2012-265251)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109171(P2014-109171A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】荒原 隆文
(72)【発明者】
【氏名】中島 修一
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−152741(JP,A)
【文献】 特開2009−287337(JP,A)
【文献】 特開2006−336196(JP,A)
【文献】 特開2004−263519(JP,A)
【文献】 特開2007−321388(JP,A)
【文献】 特開2008−082007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00−11/16
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側壁と、前記第1側壁の反対側に位置する第2側壁とを有し、内外を貫く通水孔が形成された箱体と、
前記第1側壁に一体的に形成された第1係合部と、
前記第2側壁に一体的に形成され、第1係合部と係合可能な第2係合部と、を備え、
隣り合う貯留材の一方の第1係合部と他方の第2係合部とが係合することによって互いに連結される貯留材であって、
前記第1係合部は、前記第1側壁から外側に延びる延伸部と、前記延伸部の先端に設けられ、前記延伸部よりも幅が大きい第1ストッパ部とを有し、
前記第2係合部は、前記延伸部よりも幅が大きくかつ前記第1ストッパ部よりも幅が小さい係合孔と、前記係合孔の奥側に設けられ、隣り合う他の貯留材と最も接近するように連結された状態において他の貯留材の第1ストッパ部とクリアランスを介して対向する第2ストッパ部とを有し、
前記第1係合部の延伸部と前記第2係合部の係合孔の内面との間に、クリアランスが設けられている貯留材。
【請求項2】
前記箱体は、底板と、前記底板上に立設された側板とを有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記底板に設けられている、請求項に記載の貯留材。
【請求項3】
前記箱体は、前記側板として、前記第1側壁の一部を形成する第1側板と、前記第2側壁の一部を形成する第2側板と、前記第1側板と前記第2側板との間に位置する第3側板と、前記第1側板と前記第2側板との間に位置し、前記第3側板の反対側に位置する第4側板とを備え、
前記第1側板および前記第2側板には、前記底板に向けて下方に開いたメンテナンス孔が形成されている、請求項に記載の貯留材。
【請求項4】
前記底板には、前記第1側板のメンテナンス孔の下方から前記第2側板のメンテナンス孔の下方にわたって延びる溝が形成され、
前記底板を前記溝の長手方向に沿って見たときに、前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一部は、前記溝よりも外側に設けられている、請求項に記載の貯留材。
【請求項5】
第1側壁と、前記第1側壁の反対側に位置する第2側壁とを有し、内外を貫く通水孔が形成された箱体と、
前記第1側壁に一体的に形成された第1係合部と、
前記第2側壁に一体的に形成され、第1係合部と係合可能な第2係合部と、を備え、
隣り合う貯留材の一方の第1係合部と他方の第2係合部とが係合することによって互いに連結される貯留材であって、
前記第1係合部は、前記第1側壁から外側に延びる延伸部と、前記延伸部の先端に設けられ、前記延伸部よりも幅が大きい第1ストッパ部とを有し、
前記第2係合部は、前記延伸部よりも幅が大きくかつ前記第1ストッパ部よりも幅が小さい係合孔と、前記係合孔の奥側に設けられ、隣り合う他の貯留材と最も接近するように連結された状態において他の貯留材の第1ストッパ部とクリアランスを介して対向する第2ストッパ部とを有し、
前記箱体は、底板と、前記底板上に立設された側板とを有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記底板に設けられ、
前記箱体は、前記側板として、前記第1側壁の一部を形成する第1側板と、前記第2側壁の一部を形成する第2側板と、前記第1側板と前記第2側板との間に位置する第3側板と、前記第1側板と前記第2側板との間に位置し、前記第3側板の反対側に位置する第4側板とを備え、
前記第1側板および前記第2側板には、前記底板に向けて下方に開いたメンテナンス孔が形成され、
前記底板には、前記第1側板のメンテナンス孔の下方から前記第2側板のメンテナンス孔の下方にわたって延びる溝が形成され、
前記底板を前記溝の長手方向に沿って見たときに、前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一部は、前記溝よりも外側に設けられている貯留材。
【請求項6】
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記メンテナンス孔の下方に設けられている、請求項3〜5のいずれか一つに記載の貯留材。
【請求項7】
前記第1係合部および前記第2係合部をそれぞれ2つ以上備えている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の貯留材。
【請求項8】
前記第1側壁、前記第2側壁が設けられている側をそれぞれ前側、後側とし、前記第1側壁および前記第2側壁を左端領域、左中央領域、右中央領域、および右端領域に左右に4等分したときに、前記第1係合部および前記第2係合部は左中央領域および右中央領域に位置している、請求項に記載の貯留材。
【請求項9】
前記延伸部は、真っ直ぐに延びる棒状体からなり、
前記第1ストッパ部は、前記棒状体と直交する平板状に形成され、
前記係合孔は、前記第2側壁に形成された孔からなり、
前記第2ストッパ部は、前記第2側壁の前記孔の縁部によって形成されている、請求項1〜のいずれか一つに記載の貯留材。
【請求項10】
前記第1係合部、前記第2係合部は、それぞれ前記第1側壁、前記第2側壁の下部に設けられ、
前記第2係合部の前記係合孔は、下方に開いた孔からなっている、請求項1〜のいずれか一つに記載の貯留材。
【請求項11】
地中に埋設される貯留浸透施設であって、
それぞれ請求項1〜10のいずれか一つに記載の貯留材からなり、第1係合部が他の貯留材の第2係合部に係合し、第2係合部が更に他の貯留材の第1係合部に係合することによって互いに連結された複数の貯留材と、
前記貯留材の周囲を覆うシートと、を備えた貯留浸透施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される貯留浸透施設を構成する貯留材およびそれを備えた貯留浸透施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば雨水を貯留する雨水貯留槽や、雨水を一時的に貯留してから地中に浸透させる雨水貯留浸透槽などのように、地中に埋設される貯留浸透施設が知られている。一般的にこの種の貯留浸透施設は、地面を掘って形成した穴(以下、ピットという)に遮水性または透水性のシートを敷き、そのシートの上に複数の貯留材を配置した後、それら貯留材の上にシートを被せることによって構成される。貯留浸透施設の設置後はシートの上に土を載せ、ピットを埋めることによって貯留浸透施設は埋設される。
【0003】
貯留材の上のシートには、上方から土圧が加わる。シートにおける貯留材の上の部分は貯留材によって支持されるが、隣り合う貯留材の隙間の上に位置する部分は支持されない。そのため、隣り合う貯留材の間に大きな隙間があると、シートの一部がその隙間に入り込んで下方に大きく撓み、シートが破損するおそれがある。そこで従来から、隣り合う貯留材の間に大きな隙間が空かないように、貯留材同士を連結具によって連結することが行われている。
【0004】
特許文献1には、貯留材同士を連結する連結具として、H型連結具が開示されている。各貯留材には連結具挿入穴が形成されており、隣り合う2つの貯留材の連結具挿入穴に1つのH型連結具を嵌め込むことによって、貯留材同士が連結される。特許文献2には、長尺の水平板の左右両端部が下方に向けて略直角に屈曲されたような形状の水平連結具が開示されている。貯留材には穴が形成されており、隣り合う貯留材の穴に水平連結具を上方から嵌め込むことによって、貯留材同士が連結される。
【0005】
ところが、貯留材の連結にあたって貯留材と別体の連結具を用いることとすると、部品点数の増加を招くこととなる。特許文献3には、連結部が一体的に形成された貯留材が開示されている。このような貯留材によれば、別体の連結具は不要となる。詳しくは、特許文献3に開示された貯留材は、相対向する2辺に互いに対応する凹部および凸部を有する面板部材を備えている。隣り合う一方の面板部材の凹部に他方の面板部材の凸部を嵌め込むことにより、面板部材同士は隙間無く連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4041351号公報
【特許文献2】特開2012−52349号公報
【特許文献3】特開2005−16084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、施工現場の状況によっては、貯留浸透施設を設置するピットが必ずしも真っ直ぐであるとは限らず、複数の貯留材を多少曲線状に配列したい場合がある。また、ピット内に不陸(すなわち、表面の凹凸)が生じることがあり、その不陸に応じて少なくとも一部の貯留材を鉛直方向から多少傾いた姿勢で設置したい場合がある。
【0008】
貯留材と別体の連結具を用いて貯留材同士を連結する構造であれば、連結具の取付箇所を適宜変更することにより、貯留材を多少曲線状に配列することや、一部の貯留材を鉛直方向から多少傾いた姿勢で設置することが可能である。しかし、貯留材自体に設けられた連結部(言い換えると、貯留材と一体化された連結部)を用いて貯留材同士を連結する構造によると、連結箇所を適宜に変更することはできない。そのため、貯留材の配列方向の微調整や、不陸に応じて貯留材の設置姿勢を微調整することは困難である。したがって、部品点数は削減できるものの、貯留材を真っ直ぐに配列することができる場所にしか設置できないという課題があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貯留浸透施設の部品点数を削減でき、配列方向および設置姿勢の微調整が可能な貯留材およびそれを備えた貯留浸透施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る貯留材は、第1側壁と、前記第1側壁の反対側に位置する第2側壁とを有し、内外を貫く通水孔が形成された箱体と、前記第1側壁に一体的に形成された第1係合部と、前記第2側壁に一体的に形成され、第1係合部と係合可能な第2係合部と、を備え、隣り合う貯留材の一方の第1係合部と他方の第2係合部とが係合することによって互いに連結される貯留材である。前記第1係合部は、前記第1側壁から外側に延びる延伸部と、前記延伸部の先端に設けられ、前記延伸部よりも幅が大きい第1ストッパ部とを有している。前記第2係合部は、前記延伸部よりも幅が大きくかつ前記第1ストッパ部よりも幅が小さい係合孔と、前記係合孔の奥側に設けられ、隣り合う他の貯留材と最も接近するように連結された状態において他の貯留材の第1ストッパ部とクリアランスを介して対向する第2ストッパ部とを有している。
【0011】
前記貯留材によれば、第1係合部が隣り合う他の貯留材の第2係合部と係合することにより、および/または、第2係合部が隣り合う他の貯留材の第1係合部と係合することにより、他の貯留材と連結される。第1係合部は第1側壁に一体的に形成され、第2係合部は第2側壁に一体的に形成されている。そのため、別体の連結具は不要であり、部品点数を削減することができる。第1係合部の第1ストッパ部と第2係合部の第2ストッパ部とは、隣り合う貯留材同士が最も接近するように連結された状態において、クリアランスを介して対向する。そのため、クリアランスの分だけ両貯留材を互いに離反する方向に移動させることが可能である。したがって、貯留材同士の相対位置を微調整することができる。よって、貯留材の配列方向および設置姿勢の微調整が可能となる。一方、第1ストッパ部と第2ストッパ部とが接触すると(言い換えると、上記クリアランスがなくなると)、両貯留材の更なる相対移動は規制される。したがって、両貯留材の間に大きな間隔が空くことを防止することができる。以上より、貯留浸透施設の部品点数を削減でき、配列方向および設置姿勢の微調整が可能な貯留材を提供することができる。
【0012】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1係合部および前記第2係合部をそれぞれ2つ以上備えている。
【0013】
このことにより、貯留材が第1係合部の延伸部を中心として捩れることを防止することができる。よって、貯留材同士を安定して連結することができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1側壁、前記第2側壁が設けられている側をそれぞれ前側、後側とし、前記第1側壁および前記第2側壁を左端領域、左中央領域、右中央領域、および右端領域に左右に4等分したときに、前記第1係合部および前記第2係合部は左中央領域および右中央領域に位置している。
【0015】
前記クリアランスの大きさが同一の場合、第1係合部および第2係合部が中央側に位置している方が、左右の端側に位置している場合よりも、第1側壁および第2側壁の外側部分の相対変位量を大きく確保することができる。上述のように第1係合部および第2係合部を左中央領域および右中央領域に位置付けることにより、貯留材の位置の自由度を大きく確保することができる。また、第1係合部および第2係合部を中心線の左右にそれぞれ配置することにより、貯留材をバランスよく連結することができる。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記延伸部は、真っ直ぐに延びる棒状体からなり、前記第1ストッパ部は、前記棒状体と直交する平板状に形成され、前記係合孔は、前記第2側壁に形成された孔からなり、前記第2ストッパ部は、前記第2側壁の前記孔の縁部によって形成されている。
【0017】
このことにより、互いの位置の自由度を確保しながら大きな隙間が空かないように貯留材同士を連結する第1係合部および第2係合部を、簡単な構成により得ることができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1係合部、前記第2係合部は、それぞれ前記第1側壁、前記第2側壁の下部に設けられ、前記第2係合部の前記係合孔は、下方に開いた孔からなっている。
【0019】
このことにより、第1係合部の延伸部の上に第2係合部の係合孔を被せるという簡単な作業により、第1係合部と第2係合部とを係合させることができる。簡単な作業により、貯留材同士を連結させることができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1係合部の延伸部と前記第2係合部の係合孔の内面との間に、クリアランスが設けられている。
【0021】
このことにより、第1係合部と第2係合部とは、互いに接近および離反する方向だけでなく、当該方向に対して垂直な方向にも相対移動可能となる。隣り合う貯留材同士は、第1係合部の延伸部が延びる方向だけでなく、第1係合部の延伸部が延びる方向と垂直な方向にも相対移動可能となる。そのため、貯留材の設置位置および設置姿勢の自由度を更に確保することができる。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記箱体は、底板と、前記底板上に立設された側板とを有し、前記第1係合部および前記第2係合部は、前記底板に設けられている。
【0023】
このことにより、第1係合部および第2係合部がピットの底面に近い底板に設けられているので、貯留材の位置および姿勢をピットの底面の不陸に応じて微調整することが容易となる。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記箱体は、前記側板として、前記第1側壁の一部を形成する第1側板と、前記第2側壁の一部を形成する第2側板と、前記第1側板と前記第2側板との間に位置する第3側板と、前記第1側板と前記第2側板との間に位置し、前記第3側板の反対側に位置する第4側板とを備えている。前記第1側板および前記第2側板には、前記底板に向けて下方に開いたメンテナンス孔が形成されている。
【0025】
前記貯留材によれば、メンテナンス孔を通じてメンテナンス機器(例えば、貯留材の内部を観察するための自走式カメラ、底部に溜まった泥を洗浄するジェットノズル等)を導入することができるので、メンテナンスが容易となる。メンテナンス孔は第1側板および第2側板に形成されているので、メンテナンス孔は貯留材の配列方向に並ぶことになる。したがって、貯留材の配列方向が曲線状になった場合、メンテナンス孔も曲線状に並ぶことになる。隣り合う貯留材同士においてメンテナンス孔の位置が大きくずれることはないので、貯留材の配列方向が曲線状になったとしても、メンテナンスを行うことができる。
【0026】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1係合部および前記第2係合部は、前記メンテナンス孔の下方に設けられている。
【0027】
このことにより、隣り合う貯留材同士の相対変位量が大きい場合でも、それら貯留材のメンテナンス孔同士の位置が大きくずれることは防止される。したがって、貯留材の配列方向が曲線状になったとしても、メンテナンスを良好に行うことができる。
【0028】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記底板には、前記第1側板のメンテナンス孔の下方から前記第2側板のメンテナンス孔の下方にわたって延びる溝が形成されている。前記底板を前記溝の長手方向に沿って見たときに、前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一部は、前記溝よりも外側に設けられている。
【0029】
上記溝は、例えばメンテナンス機器を案内する通路として利用することができ、また、貯留材の底部に溜まる泥等を集める役割を果たすことができる。上記構成によれば、第1係合部および第2係合部は溝の邪魔になりにくい。したがって、溝を良好に形成することができる。
【0030】
本発明に係る貯留浸透施設は、地中に埋設される貯留浸透施設であって、それぞれ前記貯留材からなり、第1係合部が他の貯留材の第2係合部に係合し、第2係合部が更に他の貯留材の第1係合部に係合することによって互いに連結された複数の貯留材と、前記貯留材の周囲を覆うシートと、を備えたものである。
【0031】
このことにより、部品点数を削減しつつ、曲線状の配置および不陸対応が可能な貯留浸透施設を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、貯留浸透施設の部品点数を削減でき、配列方向および設置姿勢の微調整が可能な貯留材およびそれを備えた貯留浸透施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る貯留浸透槽の側面図である。
図2】実施形態に係る貯留浸透槽の正面図である。
図3】実施形態に係る貯留浸透槽の平面図である。
図4】底板の平面図である。
図5】底板の正面図である。
図6】底板の裏面図である。
図7】底板の背面図である。
図8】底板の右側面図である。
図9】底板の前方斜視図である。
図10】底板の後方斜視図である。
図11】第1係合部の水平断面図である。
図12】第2係合部の水平断面図である。
図13】第1係合部と第2係合部との係合状態を表す図であり、(a)は貯留材同士が最も接近した状態、(b)は貯留材同士が最も離反した状態を表す。
図14】不陸に対応した貯留材の設置姿勢を誇張して表す側面図である。
図15】他の実施形態に係る第1係合部および第2係合部の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る貯留浸透施設は、地中に埋設され、雨水を一時的に貯留してから地中に浸透させる雨水貯留浸透槽(以下、単に貯留浸透槽という)1である。貯留浸透槽1は、互いに連結された複数の貯留材10と、それら複数の貯留材10を覆う透水性のシート2とを備えている。本実施形態では、厚みが4mm以下の樹脂製のシート2が用いられている。ただし、シート2の厚みおよび材料は特に限定される訳ではない。貯留浸透槽1は、地面を掘って形成したピット5(図2および図3参照)に透水性のシート2を敷き、そのシート2の上に複数の貯留材10を設置した後、それら貯留材10の上にシート2を被せることによって構成されている。本実施形態では、貯留材10は溝状のピット5に配置され、貯留材10は一方向に連結されている。
【0035】
貯留材10は直線状に配列されていてもよいが、図3に示すように、本実施形態に係るピット5は曲線状に形成されている。本実施形態では、このピット5の形状に合わせて、貯留材10は曲線状に配列されている。なお、図1および図3では、3つの貯留材10のみを図示しているが、実際には4つ以上の貯留材10が設置されている。ただし、貯留材10の設置個数は何ら限定されない。
【0036】
図1に示すように、一端側に位置する貯留材10には、ます3が取り付けられている。ます3の上側開口には蓋4が嵌め込まれている。図示は省略するが、ます3の下側開口は貯留材10の内部に開口している。図2に示すように、ます3の側部には、雨水を導入する管6が接続されている。なお、符号GLは地面を表している。
【0037】
図2に示すように、貯留材10は、内外を貫く透水孔12が形成された箱体11を備えている。箱体11は、縦長の略直方体形状に形成されている。ただし、箱体11は内部に空間が形成された形状を有していればよく、箱体11の形状は縦長の略直方体形状に限定されない。箱体11の形状は横長の略直方体形状であってもよく、略立方体形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0038】
以下の説明では、図2の手前側、奥側、左側、右側をそれぞれ前側、後側、左側、右側とする。箱体11は、底板20と、前板13と、後板14(図1参照)と、左板15と、右板16と、天板17とから構成されている。前板13と右板16とは一体的に形成され、後板14と左板15とは一体的に形成されている。一体化された前板13および右板16と、一体化された後板14および左板15と、底板20と、天板17とは、それぞれ別体であり、事後的に組み立てられている。ただし、底板20、前板13、後板14、左板15、右板16、および天板17は適宜に一体化または別体化することができ、それらの組立構造は何ら限定される訳ではない。箱体11は一体物であってもよく、本実施形態のように、複数の部材が組み立てられることによって形成されていてもよい。底板20、前板13、後板14、左板15、右板16、および天板17は、いずれも樹脂からなっている。すなわち、貯留材10は樹脂製である。ただし、貯留材10の材料は樹脂に限らず、貯留材10の一部または全部が樹脂以外の材料からなっていてもよい。
【0039】
箱体11は前壁、後壁、左壁、および右壁を備えている。箱体11の前壁は、底板20の前壁と前板13の前壁と天板17の前壁とにより構成されている。箱体11の後壁は、底板20の後壁と後板14の後壁と天板17の後壁とにより構成されている。箱体の前壁、後壁は、それぞれ本発明に係る「第1側壁」、「第2側壁」の一例である。
【0040】
図4は底板20の平面図である。図4に示すように、底板20は上方から見て略正方形状に形成されている。ただし、上方から見た底板20の形状は略正方形状に限定されず、略長方形状であってもよく、他の形状であってもよい。底板20の左右の中央には、前後に延びる溝21が形成されている。溝21は底板20の前端から後端にわたって延びている。底板20を左右に三等分した場合、溝21は中央の領域に形成されている。図5は底板20の正面図である。図5に示すように、溝21の左方、右方には、それぞれ傾斜面22L、22Rが設けられている。左の傾斜面22Lは右斜め下向きに傾斜し、右の傾斜面22Rは左斜め下向きに傾斜している。左の傾斜面22Lの左方には左底面23Lが設けられ、右の傾斜面22Rの右方には右底面23Rが設けられている。本実施形態では、左底面23Lは右斜め下向きに傾斜した傾斜面からなり、右底面23Rは左斜め下向きに傾斜した傾斜面からなっている。ただし、左底面23Lおよび右底面23Rを水平面とすることも可能である。
【0041】
図4に示すように、溝21および溝21の近傍部分を除いて、底板20の周囲部には挿入溝24L,24Rが形成されている。挿入溝24L,24Rは、それぞれ平面視コ字状に形成されている。左の挿入溝24Lは、前板13の左半部の下端部と、左板15の下端部と、後板14の左半部の下端部とが挿入されるように構成されている。右の挿入溝24Rは、前板13の右半部の下端部と、右板16の下端部と、後板14の右半部の下端部とが挿入されるように構成されている。
【0042】
図6は底板20の裏面図である。図6に示すように、底板20の裏側部分には複数のリブ25が設けられている。これらのリブ25により、底板20の剛性が高くなっている。
【0043】
貯留材10は、他の貯留材10との連結手段として、第1係合部30および第2係合部40を備えている。次に、第1係合部30および第2係合部40について説明する。
【0044】
図4および図9に示すように、第1係合部30は底板20の前壁20fに設けられている。ただし、第1係合部30は箱体11の前壁に形成されていればよく、例えば、前板13の下部に設けられていてもよい。第1係合部30は底板20に一体的に形成されている。ここで、本明細書において「一体的に形成されている」とは、貯留材10同士の連結に際して一体的に取り扱われるように形成されていることを言う。言い換えると、貯留材10同士の連結作業の際に、一体物であるかのように取り扱われるように形成されていることを言う。第1係合部30と底板20とは一体成形されてもよく、別々に成形された後、接着等によって結合されてもよい。
【0045】
本実施形態では、底板20に2つの第1係合部30が設けられている。ただし、第1係合部30の個数は2つに限られない。第1係合部30の個数は1つでもよく、3つ以上であってもよい。本実施形態では、第1係合部30は底板20の中心線CLの左方、右方にそれぞれ1つずつ設けられている。また、図5に示すように、底板20の前壁20fを左端領域A1、左中央領域A2、右中央領域A3、および右端領域A4に左右に4等分したときに、第1係合部30は左中央領域A2および右中央領域A3に位置している。
【0046】
図11は第1係合部30の水平断面図である。図11に示すように、第1係合部30は、底板20の前壁20fから外側(すなわち前側)に延びる延伸部31(図8参照)と、延伸部31の先端に設けられた第1ストッパ部32とを備えている。本実施形態では、延伸部31は真っ直ぐに延びる棒状体からなり、2本設けられている。延伸部31は、断面が矩形状の棒状体からなっているが、断面が円形等の棒状体であってもよいことは勿論である。また、延伸部31は、延伸部31の幅(なお、以下では特に断らない限り、延伸部31の幅とは延伸部31の全体の幅のことを意味する。)D1が後述する第2係合部40の係合孔41の幅D2(図12参照)よりも小さければよく、その一部または全部が曲がっていてもよい。第1ストッパ部32は、棒状体の延伸部31と直交する平板状に形成されている。第1ストッパ部32の幅D3は延伸部31の幅D1よりも大きい。第1ストッパ部32は、延伸部31よりも左方および右方に位置する部分32aを有している。
【0047】
図7は底板20の背面図である。図6図7、および図10に示すように、第2係合部40は底板20の後壁20bに設けられている。第2係合部40は底板20の後壁20bに一体的に形成されている。ただし、第2係合部40は箱体11の後壁に形成されていればよく、例えば、後板14の下部に設けられていてもよい。第2係合部40は、第1係合部30と反対側の位置に形成されている。すなわち、隣り合う貯留材10同士が第1係合部30および第2係合部40を介して連結されるように、第2係合部40は第1係合部30に対応する位置に設けられている。第2係合部40は、第1係合部30と同様、2つ設けられている。ただし、第1係合部30の個数に応じて第2係合部40の個数は適宜変更可能である。第2係合部40は底板20の中心線CLの左方、右方にそれぞれ1つずつ設けられている。図7に示すように、底板20の後壁20bを左端領域A1、左中央領域A2、右中央領域A3、および右端領域A4に左右に4等分したときに、第2係合部40は左中央領域A2および右中央領域A3に位置している。
【0048】
図12は第2係合部40の水平断面図である。図12に示すように、第2係合部40は、底板20の後壁20bに形成された係合孔41と、係合孔41の縁部からなる第2ストッパ部42とを備えている。図7に示すように、係合孔41は下方に開いた矩形状の孔からなっている。図12に示すように、係合孔41の幅D2は、第1係合部30の延伸部31の幅D1よりも大きく、かつ、第1ストッパ部32の幅D3よりも小さい。後壁20bの厚みL2は、第1係合部30の延伸部31の長さL1よりも短い。
【0049】
図13(a)および(b)は、第1係合部30と第2係合部40とが係合している状態を表す図である。図13(a)は、隣り合う貯留材10の一方の底板20の前壁20fが他方の底板20の後壁20bと接触した状態、すなわち、隣り合う貯留材10同士が最も接近した状態を表している。図13(b)は、隣り合う貯留材10の一方の第1ストッパ部32が他方の第2ストッパ部42と接触した状態、すなわち、隣り合う貯留材10同士が最も離反した状態を表している。
【0050】
第1係合部30の延伸部31の長さL1は、後壁20bの厚みL2よりも大きい。図13(a)に示すように、隣り合う貯留材10同士が最も接近した状態において、第1ストッパ部32と第2ストッパ部42との間にはクリアランスC1が設けられている。本実施形態では、第1係合部30の延伸部31の長さがL1であり、底板20の後壁20bの厚みがL2であるので、クリアランスC1=L1−L2となる。クリアランスC1の大きさは特に限定されないが、例えば、1cm〜10cmとすることができる。クリアランスC1の大きさは、3cm以上または5cm以上であってもよく、8cm以下または6cm以下であってもよい。第1係合部30の第1ストッパ部32と第2係合部40の第2ストッパ部42との間にクリアランスC1が設けられていることにより、貯留材10同士は、連結された状態において前後に相対移動可能となる。すなわち、貯留材10同士は、互いに接近する方向および離反する方向に相対移動可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、第2係合部40の係合孔41の幅D2は第1係合部30の延伸部31の幅D1よりも大きい。図13(a)に示すように、延伸部31と係合孔41の内面との間には、クリアランスC2が設けられている。そのため、貯留材10同士は、連結された状態において左右に相対移動可能となる。すなわち、貯留材10同士は、横にずれる方向に相対移動可能となる。クリアランスC2はクリアランスC1よりも小さく設定されている。
【0052】
前述したように、第1ストッパ部32の幅D3は係合孔41の幅D2よりも大きい。図13(b)に示すように、貯留材10同士がクリアランスC1の分だけ互いに離反する方向に相対移動すると、第1ストッパ部32と第2ストッパ部42とは接触するようになっている。第1ストッパ部32および第2ストッパ部42は、貯留材10同士の連結が解除されることを防止するとともに、貯留材10同士が離れすぎることを規制する。
【0053】
このように、第1係合部30と第2係合部40とは、前後方向に相対移動可能なように係合している。第1係合部30と第2係合部40とは、左右方向に相対移動可能なように係合している。また、第1係合部30と第2係合部40とは、所定範囲内の相対移動が可能なように係合している。すなわち、第1係合部30と第2係合部40とは、互いの係合が解除されないように規制しつつ、相対位置の微調整が可能なように係合している。以上が第1係合部30および第2係合部40の構成である。
【0054】
図2に示すように、前板13にはメンテナンス孔18が形成されている。メンテナンス孔18は、メンテナンス用の機器(例えば、貯留材10の内部を観察するための自走式カメラ、貯留材10の底部に溜まった泥を洗浄するジェットノズル等)を貯留材10の外部から内部に導入し、また、内部から外部に導出する役割を果たす。図示は省略するが、後板14にも同様のメンテナンス孔18が形成されている。このように、箱体11の前部、後部、左部、および右部のうち、メンテナンス孔18は、第1係合部30が設けられた方の部分(すなわち、前部)と、第2係合部40が設けられた方の部分(すなわち、後部)とに形成されている。メンテナンス孔18は、底板20の溝21の一端部と他端部との上方に形成されている。言い換えると、底板20の溝21は、前板13のメンテナンス孔18の下方から後板14のメンテナンス孔18の下方にわたって延びている。メンテナンス孔18は、正面から見て底板20の溝21の上方に位置するように、前板13および後板14の中央の下部に形成されている。メンテナンス孔18は、底板20に向けて下方に開いた孔からなっている。本実施形態では、メンテナンス孔18の形状は半円状であるが、その形状は特に限定される訳ではない。メンテナンス孔18の幅は、溝21の幅よりも大きくなっている。
【0055】
第1係合部30および第2係合部40は、メンテナンス孔18の下方に設けられている。図5および図7に示すように、底板20を前方および後方から見たとき、言い換えると、底板20を溝21の長手方向に沿って見たときに、第1係合部30および第2係合部40の少なくとも一部は、溝21よりも外側に設けられている。本実施形態では、第1係合部30の全部および第2係合部40の全部が、溝21よりも外側(すなわち、溝21よりも左側または右側)に設けられている。
【0056】
第1係合部30と第2係合部40とは、第2係合部40の係合孔41を第1係合部30の延伸部31の上に被せることによって係合させることができる。あるいは、第1係合部30の延伸部31を第2係合部40の係合孔41に下方から挿入することによって係合させることができる。
【0057】
貯留浸透槽1は、例えば以下のようにして施工することができる。始めに、シート2が敷かれたピット5の底面に底板20を設置していく。この際、先に設置した底板20の第1係合部30の延伸部31の上に、後から設置する底板20の第2係合部40の係合孔41を被せるようにして、底板20を順次設置していく。これにより、第1係合部30と第2係合部40とが係合し、隣り合う底板20同士は第1係合部30および第2係合部40によって連結される。次に、連結された底板20に対し、一体化された前板13および右板16と、一体化された後板14および左板15を組み立てる。更に、前板13、右板16、後板14、および左板15に対し、天板17を組み立てる。これにより、複数の貯留材10を互いに連結した状態にてピット5内に配列することができる。貯留材10の設置が完了した後は、貯留材10の上にシート2を被せ、その上に土を被せる。すなわち、ピット5を埋め戻す。これにより、貯留浸透槽1の施工が完了する。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る貯留材10によれば、底板20と一体的に形成された第1係合部30および第2係合部40を備えており、第1係合部30および第2係合部40によって他の貯留材10と連結される。そのため、他の貯留材10との連結に際して、別体の連結具は不要である。本実施形態に係る貯留浸透槽1によれば、別体の連結具が不要なので、部品点数を削減することができる。
【0059】
第1係合部30と第2係合部40とは隙間無く嵌合するのではなく、隣り合う貯留材10同士が最も接近するように連結された状態において、第1ストッパ部32と第2ストッパ部42とがクリアランスC1を介して対向するように係合する。そのため、クリアランスC1の分だけ、両貯留材10を互いに離反する方向(本実施形態では前後方向)に移動させることが可能となる。貯留材10同士は、相対位置の微調整が可能なように連結される。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、貯留材10の設置位置の自由度を確保することができる。これにより、貯留材10の配列方向の微調整が可能となり、図3に示すように、貯留材10を曲線状に配列することが可能となる。施工現場の状況によっては、ピット5が直線状ではなく、曲線状に形成されることがある。本実施形態に係る貯留材10によれば、このような曲線状のピット5内にも配置することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、貯留材10同士の相対位置の微調整が可能であることから、貯留材10の設置姿勢の自由度を確保することができる。これにより、ピット5の底面の不陸に対応した姿勢で貯留材10を設置することができる。例えば、図14に誇張して示すように、ピット5の底面9の一部9aが水平面から傾斜している場合に、傾斜した底面9aに合うように貯留材10を傾斜した姿勢で設置することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、貯留材10同士の相対位置の微調整が可能であるが、貯留材10の底板20同士の距離が大きくなると、第1係合部30の第1ストッパ部32と第2係合部40の第2ストッパ部42とが接触し、底板20同士の距離が大きくなりすぎることが防止される。したがって、隣り合う貯留材10の間に大きな間隔が空くことを防止することができる。よって、シート2は上方から圧力を受けているが、そのシート2を好適に支持することができる。シート2が貯留材10の間の隙間に入り込んで破損することを防止することができる。
【0063】
したがって、本実施形態によれば、部品点数を削減しつつ、曲線状の配置および不陸対応が可能な貯留浸透槽1を得ることができる。
【0064】
ところで、貯留材10が備える第1係合部30および第2係合部40の個数は、それぞれ1つであってもよいが、本実施形態ではそれぞれ2つである。第1係合部30および第2係合部40をそれぞれ2つ以上備えることとすれば、貯留材10が第1係合部30の延伸部31を中心として回転することを確実に防止することができる。すなわち、貯留材10同士が捩れることを確実に防止することができる。したがって、貯留材10同士を安定して連結することができる。
【0065】
図5および図7に示すように、底板20の前壁20fおよび後壁20bを左端領域A1、左中央領域A2、右中央領域A3、および右端領域A4に左右に4等分したときに、第1係合部30および第2係合部40は左中央領域A2および右中央領域A3に位置している。これにより、第1係合部30および第2係合部40が左端領域A1および右端領域A4に位置している場合に比べて、図3に示すように、貯留材10の外側端同士のクリランスTを大きくすることができる。第1係合部30の第1ストッパ部32と第2係合部40の第2ストッパ部42との間のクリアランスC1の大きさが同一の場合、第1係合部30および第2係合部40が左端領域A1および右端領域A4に位置している場合よりも、左中央領域A2および右中央領域A3に位置している場合の方が、貯留材10同士の左端または右端の相対変位量(クリアランスTの大きさ)を大きくすることができる。したがって、本実施形態によれば、貯留材10の設置位置の自由度をより大きく確保することができる。
【0066】
第1係合部30および第2係合部40の形状は特に限定されないが、本実施形態では、第1係合部30の延伸部31は真っ直ぐに延びる棒状体からなり、第1ストッパ部32は前記棒状体に対して垂直な平板状に形成されている。第2係合部40の係合孔41は、箱体11の後壁の一部を構成する底板20の後壁20bに形成された孔からなり、第2ストッパ部42は後壁20bにおける上記孔の縁部によって形成されている。本実施形態によれば、互いの位置の自由度を確保しながら大きな隙間が空かないように貯留材10同士を連結する第1係合部30および第2係合部40を、簡単な構成により得ることができる。
【0067】
第1係合部30、第2係合部40は、それぞれ箱体11の前壁、後壁の底部を構成する底板20の前壁20f、後壁20bに設けられ、第2係合部40の係合孔41は下方に開いた孔からなっている。そのため、第1係合部30の延伸部31の上に第2係合部40の係合孔41を被せるという簡単な作業により、第1係合部30と第2係合部40とを係合させることができる。本実施形態によれば、貯留材10同士を簡単な作業により連結させることができる。
【0068】
図13(a)に示すように、第1係合部30の延伸部31と第2係合部40の係合孔41の内面との間には、クリアランスC2が設けられている。そのため、貯留材10同士は、前後方向(延伸部31が延びる方向)だけでなく左右方向(延伸部31が延びる方向と垂直な方向)にも相対移動可能である。したがって、本実施形態によれば、貯留材10の設置位置および設置姿勢の自由度を更に確保することができる。
【0069】
貯留材10のうち、底板20はピット5の底面9の近傍に配置される部材である。本実施形態では、第1係合部30および第2係合部40は底板20に設けられている。そのため、貯留材10をピット5の底面9の不陸に対応した姿勢で設置することが容易となる。
【0070】
図2に示すように、箱体11の前壁の一部を構成する前板13と、箱体11の後壁の一部を構成する後板14とには、底板20に向けて下方に開いたメンテナンス孔18が形成されている。貯留材10によれば、メンテナンス孔18を通じてメンテナンス機器を導入することができるので、メンテナンスが容易となる。また、メンテナンス孔18は貯留材10の配列方向(本実施形態では前後方向)に並ぶことになるので、貯留材10の配列方向が曲線状になった場合、メンテナンス孔18も曲線状に配列されることになる。したがって、貯留材10を曲線状に配列した場合であっても、メンテナンス孔18の位置がずれてメンテナンス孔18が塞がれることはない。そのため、貯留材10を曲線状に配列した場合であっても、メンテナンス機器をメンテナンス孔18に順次通過させることができ、メンテナンスを行うことができる。
【0071】
本実施形態によれば、第1係合部30および第2係合部40はメンテナンス孔18の下方に設けられている。そのため、隣り合う貯留材10同士の相対変位量が大きい場合であっても、それら貯留材10のメンテナンス孔18同士の位置が大きくずれることは防止される。したがって、貯留材10の配列方向が曲線状になったとしても、メンテナンスを良好に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、底板20には、前板13のメンテナンス孔18の下方から後板14のメンテナンス孔18の下方にわたって延びる溝21が形成されている。この溝21は、メンテナンス機器を案内する通路として利用することができ、また、貯留材10の左右の底部に溜まる泥等を中央に集める役割を果たす。本実施形態では、図5および図7に示すように、底板20を溝21の長手方向に沿って見たときに、第1係合部30および第2係合部40の少なくとも一部は溝21よりも外側に設けられている。そのため、第1係合部30および第2係合部40は溝21の邪魔になりにくい。したがって、溝21を良好に形成することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、他に種々の形態にて実施できることは勿論である。次に、他の実施形態について説明する。
【0074】
前記実施形態では、第1係合部30は、断面矩形状の棒状体からなる2本の延伸部31と、平板状の第1ストッパ部32とによって構成されていた。しかし、第1係合部30の構成は特に限定される訳ではない。例えば、図15に示すように、第1係合部30は、丸棒状の1本の延伸部31と、延伸部31の先端に設けられた球状の第1ストッパ部32とによって構成されていてもよい。このような形態であっても、第1ストッパ部32と第2係合部40の第2ストッパ部42との間のクリアランスC1の大きさに応じて、貯留材10同士の相対位置の微調整が可能となる。
【0075】
前記実施形態では、第2係合部40の係合孔41は下方に開いた孔であった。しかし、係合孔41の形状は特に限定されず、全周囲が閉じられた孔であってもよい。例えば、第1係合部30の延伸部31と第1ストッパ部32とが別体であり、係合孔41に延伸部31を挿入した後、延伸部31の先端に第1ストッパ部32を取り付けるようにしてもよい。
【0076】
前記実施形態では、貯留材10は第1係合部30および第2係合部40を2つずつ備えていた。しかし、貯留材10は、第1係合部30および第2係合部40をそれぞれ3つ以上備えていてもよい。また、貯留材10は第1係合部30および第2係合部40を1つずつ備えていてもよい。
【0077】
図3に示すように前記実施形態では、貯留材10は1列に配列されていた。しかし、貯留材10は2列以上配列されていてもよい。底板20の前壁20f、後壁20bだけでなく、左壁および右壁の一方、他方にそれぞれ第1係合部30、第2係合部40を設けることも可能である。箱体11の前壁および後壁の一方、他方にそれぞれ第1係合部30、第2係合部40を設けるとともに、箱体11の左壁および右壁の一方、他方にそれぞれ第1係合部30、第2係合部40を設けるようにしてもよい。
【0078】
前記実施形態に係る貯留浸透施設は、雨水を一時的に貯留してから地中に浸透させる雨水貯留浸透槽1であった。しかし、貯留浸透施設は少なくとも一時的に水を溜める機能を有するものであればよく、雨水貯留浸透槽に限定される訳ではない。本発明に係る貯留浸透施設は、浸透機能を備えずに雨水を貯留する雨水貯留槽であってもよい。例えば、透水性のシート2に代えて、遮水性のシートを用いることにより、前記実施形態と同様の構成を備えた雨水貯留槽を設置することができる。また、本発明に係る貯留浸透施設が溜める水は雨水に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
1 雨水貯留浸透槽(貯留浸透施設)
2 シート
10 貯留材
11 箱体
12 透水孔
13 前板(第1側板)
14 後板(第2側板)
15 左板(第3側板)
16 右板(第4側板)
18 メンテナンス孔
20 底板
21 溝
30 第1係合部
31 延伸部
32 第1ストッパ部
40 第2係合部
41 係合孔
42 第2ストッパ部
C1 クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15