【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2以上のサブキャリアにおける前記検出された妨害レベルおよび前記伝送路特性の推定結果を用いて、前記2以上のサブキャリアに割り当てられたデータに対して、合成された信頼度を算出する信頼度算出部、を更に具備し、
前記軟判定部は、前記合成された信頼度を用いて、前記合成・等化処理後の復調信号を軟判定する、
請求項9記載の受信装置。
前記2以上のサブキャリアにおける前記検出された妨害レベルおよび前記伝送路特性の推定結果を用いて、前記2以上のサブキャリアに割り当てられたデータに対して、合成された妨害レベルを算出する合成妨害算出部と、
前記合成された妨害レベルに基づき、前記合成された信頼度を補正する信頼度補正部と、
を更に具備し、
前記軟判定部は、前記補正された信頼度を用いて、前記合成・等化処理後の復調信号を軟判定する、
請求項10記載の受信装置。
伝送帯域内に所定間隔で配置されたパイロットサブキャリアと、前記伝送帯域内の前記パイロットサブキャリア以外のヌルサブキャリアと、から構成されるショートプリアンブル、及び、データ部を含む伝送フォーマットを用いて送信装置から送信された信号を受信する受信装置における周波数選択性妨害訂正方法であって、
受信信号を用いて、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路特性の推定値を推定し、前記推定値に基づいて、前記伝送帯域内のサブキャリア毎の信頼度を求め、
前記受信信号の前記ショートプリアンブル内のヌルサブキャリアにおける受信電力に基づいて、前記伝送帯域内の複数のパイロットサブキャリアを含む全てのサブキャリアにおける妨害電力を検出し、
前記妨害電力に応じて前記信頼度を補正し、
前記補正された信頼度に基づいて、前記受信信号の前記データ部の復調信号に対して軟判定し、
前記軟判定の結果に基づいて誤り訂正を行う、
周波数選択性妨害訂正方法。
【背景技術】
【0002】
これまで、IEEE802.11における無線LAN規格の取り組みとしては、屋内通信をメインターゲットとし、物理層の規格として802.11b(最大11Mbps)、802.11a、11g(最大54Mbps)、802.11n(最大600Mbps)、及び、802.11ac(最大6.9Gbps)等と主に伝送容量の増大を主点とした規格の追加が続いている。一方、スマートグリットを実現するためのスマートメータの検討が本格化しているのに伴い、屋外における低レート・長距離伝送の必要性も高まってきている。このような用途に向けた特定小電力無線の使用可能な周波数の割り当てなどの議論も続いている。これらの背景から、サブGHz帯(1GHzよりやや低い周波数帯)を用いた新たな通信規格策定へ向けた検討が始まり、IEEE802.11においても1GHz以下の周波数帯を用いた無線LAN規格を検討内容としたタスクグループであるTGah(802.11ah)が2010年に立ち上がっている。TGah(802.11ah)における主な要求仕様は、「データレート100kbps以上・最大伝送距離1km」である。
【0003】
TGah(802.11ah)を含めて、OFDM変調方式を用いるIEEE802.11a以降の規格では、パケット先頭のプリアンブルを用いて各種同期を確立してバースト通信が行われる。プリアンブルは、AGC(Automatic Gain Control)又は粗調整のAFC(Automatic Frequency Control)に用いられるSTF(Short Training Field。ショートプリアンブルと称されることもある)と、微調整のAFC又は伝送路特性の推定に用いられるLTF(Long Training Field。ロングプリアンブルと称されることもある)とで構成される。
【0004】
限られた周波数資源を効率良く使用するために、一般的に、隣接した複数のチャネルを複数のユーザで使用する運用を採ることがある。しかし、このような運用では、フェージング等の影響により、或る受信装置において、自機向けのチャネル(自チャネル)の受信電力よりも、隣接チャネルの受信電力の方が大きくなる場合がある。そのため、隣接チャネルを複数のユーザで使用する運用では、送信信号のスペクトルマスクを規定し、且つ、チャネル間に周波数マージン(ガードバンドと称されることがある)を設けることにより、隣接チャネルへの干渉量を軽減させている。
【0005】
しかしながら、隣接チャネルへの干渉が大きく、スペクトルマスク、ガードバンド等によって許容される干渉量を上回るようなDU比(Desired signal to Undesired signal Ratio:希望波電力対干渉波電力比)となる環境では、隣接チャネルからの漏洩電力(干渉電力又は妨害電力と称することもある)が自チャネルに混入し、隣接チャネルからの干渉が周波数選択性妨害として発生してしまうことがある。
【0006】
図13は、隣接チャネル干渉の一例を示す。
図13において横軸は周波数(f)を表し、縦軸は電力(P)を表す。
図13に示すように、自チャンネルの周波数帯域(伝送帯域)の信号スペクトルに隣接チャネルの周波数帯域の信号スペクトルの一部が干渉し、周波数選択性妨害が発生している。このような周波数選択性妨害を受けた周波数領域のサブキャリアに割り当てられたデータに起因して受信特性が劣化してしまう。
【0007】
特に802.11ahでは、上述したように、長距離伝送環境を想定している。このため、自チャネル向けの信号を送信する送信装置が遠くに配置され、隣接チャネル向けの信号を送信する送信装置が近くに配置された状況では、自チャネルの受信電力よりも隣接チャネルの受信電力の方が大きくなる確率が高くなることが予想される。
【0008】
このような、周波数選択性妨害の影響を抑圧する方法として、特許文献1には、受信装置が、データと共に周波数多重されたパイロット信号を用いて周波数選択性妨害を受けたサブキャリアを検出し、当該サブキャリアに割り当てられたデータを消失処理して、誤り訂正を施す方法が提案されている。
【0009】
また、特許文献2及び特許文献3には、受信装置が、データが割り当てられるサブキャリア(以下、データサブキャリアと称する)毎の復調信号の分散の大きさを求め、求められた分散の大きさに基づいて周波数選択性妨害を受けているサブキャリアを検出して、分散の大きさに基づいて当該サブキャリアの復調信号の信頼性の度合を判定し、判定された信頼性の度合に基づいて復調信号に段階的に重み付けを行って軟判定し、軟判定結果について誤り訂正を行う方法が提案されている。
【0010】
また、特許文献4には、受信装置が、パイロット信号が一定の規則で挿入された複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を受信し、パイロット信号を抽出して、パイロット信号の伝送路特性を求め、パイロット信号の伝送路特性と一周期前に求められたパイロット信号の伝送路特性とから時間変動量として誤差信号を算出し、誤差信号の値に基づいて周波数選択性妨害を受けているサブキャリアの信頼性の度合を検出し、信頼性の度合に基づいて復調信号に重み付けを行って軟判定し、軟判定結果について誤り訂正を行う方法が提案されている。
【0011】
また、特許文献5には、受信装置が、予め定められたサブキャリア位置にデータと共にヌルサブキャリア(何れの信号が割り当てられていないサブキャリア)が挿入されたOFDM信号を受信し、ヌルサブキャリアの受信電力を算出し、算出したヌルサブキャリアの受信電力に応じて、各サブキャリア位置に干渉が発生したか否かを判定する方法が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、802.11等で利用されているバースト通信用のOFDM伝送フォーマットの一例を示す。
図1において横軸は周波数領域に対応したサブキャリア方向を表し、縦軸は時間領域に対応したシンボル方向を表す。また、
図1において、ハッチングされたブロックは、予め定められた振幅及び位相を有し、送受信側で既知であるパイロット信号が割り当てられるリソースを表し、白色のブロックは、データが割り当てられるリソースを表す。
【0024】
また、
図1に示す伝送フォーマットは、プリアンブルとSIGNALとデータ部とから構成される。更に、プリアンブルは、STFとLTFとから構成される。「STF(ショートプリアンブル)」は、伝送帯域内に所定の周波数間隔で配置される複数のパイロットサブキャリアおよび複数のヌルサブキャリアを有する。パイロットサブキャリアは、パイロット信号が割り当てられ、伝送帯域内に所定間隔で配置されたサブキャリアである。また、ヌルサブキャリアは、伝送帯域内のパイロットサブキャリア以外のサブキャリアであって、信号の送信に使用されないサブキャリアである。具体的には、
図1に示すSTFでは、パイロット信号が4サブキャリア間隔で多重され、有効シンボル長の1/4時間のSTS(Short Training Symbol)を10個連続したもので構成され、データシンボルの2シンボル分の時間に相当する。
【0025】
「LTF(ロングプリアンブル)」は、パイロット信号が割り当てられ、伝送帯域内に連続して配置されたパイロットサブキャリアから構成される。具体的には、
図1に示すLTFでは、パイロット信号が中央のDC成分(直流成分)のサブキャリアを除く全サブキャリアに多重され、データシンボルの2シンボル分の時間に相当する。すなわち、LTFには、複数のパイロットサブキャリアが周波数方向に連続し、且つ、時間方向に2つ繰り返して配置される。なお、
図1では、時間方向に2シンボル分繰り返して配置されるLTFを示すが、LTFにおいて時間方向に繰り返し配置されるシンボル数は少なくとも2シンボルであればよく、3シンボル以上(例えば、4シンボル)であってもよい。
【0026】
「SIGNAL」では、物理層のヘッダ情報が規定のサブキャリアに多重され、かつ、特定のサブキャリアにパイロット信号が多重されている。また、「データ部」では、情報データが規定のサブキャリアに多重され、かつ、特定のサブキャリアにパイロット信号が多重されている。また、データ部は、伝送帯域内に所定の周波数間隔で複数のサブキャリアにデータ多重された信号を1シンボルとし、複数のシンボルが時分割多重されたもので構成される。
【0027】
<実施の形態1>
図2は、本実施の形態に係るOFDM受信装置100の要部構成を示したブロック図である。
図2に示すOFDM受信装置100では、伝送帯域内に所定の周波数間隔で配置される複数のパイロットサブキャリアおよび複数のヌルサブキャリアを有するショート
プリアンブル(STF)と、ショート
プリアンブルと時間多重されるデータ部とを含む信号が受信される。妨害検出部110において、ヌルキャリア抽出部151は、受信された信号から複数のヌルサブキャリア周波数の信号を抽出し、電力算出部152は、抽出された信号レベルに基づいて伝送帯域内の複数のサブキャリアの各妨害レベルを検出する。軟判定部112は、検出された妨害レベルに基づき算出される複数のサブキャリアの信頼度を用いて、受信されたデータ部の復調信号を軟判定する。誤り訂正部113は、軟判定部112による軟判定結果に基づき誤り訂正を行ってデータを復元する。
【0028】
[OFDM受信装置100の構成]
図3は、本実施の形態に係るOFDM受信装置100の構成を示したブロック図である。
図3に示すOFDM受信装置100は、アンテナ101、LNA(Low Noise Amplifier)102、直交検波部103、AD変換部104、キャリア周波数誤差検出部105、第1周波数補正部106、第1FFT(Fast Fourier Transform)部107、推定部108、等化部109、妨害検出部110、信頼度補正部111、軟判定部112、誤り訂正部113から構成される。なお、
図3において、細線矢印は実信号を表し、太線矢印は複素信号を表す。
【0029】
LNA102は、OFDM伝送フォーマット(例えば
図1参照)を用いてOFDM送信装置(図示せず)から送信された信号を、アンテナ101を介して受信し、受信信号に対して、所定レベルの増幅を施し、増幅後の信号を直交検波部103に出力する。
【0030】
直交検波部103は、LNA102から受け取る信号に対して、予め定められた周波数で直交検波を行い、所望の受信チャネルに配置されたOFDM信号を複素ベースバンド信号(アナログ信号)としてAD変換部104に出力する。
【0031】
AD変換部104は、直交検波部103から受け取る複素ベースバンド信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、デジタル値となった複素ベースバンド信号を、キャリア周波数誤差検出部105及び第1周波数補正部106に出力する。
【0032】
キャリア周波数誤差検出部105は、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号のうち、OFDM伝送フォーマット(
図1参照)におけるSTF又はLTFの信号等を用いて、複素ベースバンド信号のキャリア周波数誤差を検出する。キャリア周波数誤差検出部105は、検出したキャリア周波数誤差を、第1周波数補正部106に出力する。
【0033】
第1周波数補正部106は、キャリア周波数誤差検出部105から受け取るキャリア周波数誤差に基づいて、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号に対してキャリア周波数補正を施し、補正後の複素ベースバンド信号を第1FFT部107に出力する。
【0034】
第1FFT部107は、第1周波数補正部106から受け取る複素ベースバンド信号のうち、所定の窓位置の有効OFDMシンボル期間に対応する部分を抽出して得られた信号を、時間領域から周波数領域へフーリエ変換する。第1FFT部107は、フーリエ変換後の信号を、周波数領域OFDM信号として推定部108、等化部109及び妨害検出部110に出力する。
【0035】
推定部108は、第1FFT部107から受け取る周波数領域OFDM信号を用いて、受信信号が伝送路で受けた振幅及び位相の歪特性(OFDM送信装置とOFDM受信装置100との間の伝送路特性)をサブキャリア毎に推定する。例えば、推定部108は、周波数領域OFDM信号のLTF内のパイロット信号を用いて伝送路特性を推定する。推定部108は、推定した歪み特性を、伝送路特性推定値として等化部109に出力する。また、推定部108は、伝送路特性推定値を用いて、伝送帯域内のサブキャリア毎の信号電力を算出し、算出した電力を信頼度補正部111に出力する。この算出された電力は、対応するサブキャリアの信頼度に相当する。すなわち、電力(伝送路特性推定値)が大きいほど、対応するサブキャリアの信頼度はより高くなる。
【0036】
等化部109は、推定部108から受け取る伝送路特性推定値を用いて、第1FFT部107から受け取る周波数領域OFDM信号のデータ部に含まれるデータ信号に対して、振幅及び位相の補正(等化)を施し、補正後の信号を復調データ信号として軟判定部112に出力する。
【0037】
妨害検出部110は、第1FFT部107から受け取る周波数OFDM信号のSTFを用いて、周波数選択性妨害を受けているサブキャリアを検出する。具体的には、妨害検出部110は、STF内のヌルサブキャリア周波数における信号レベル(例えば、受信電力(ヌルサブキャリア電力))に基づいて、伝送帯域内の複数のサブキャリアの各妨害レベル(例えば、隣接チャネルからの妨害電力)を検出する。そして、妨害検出部110は、全サブキャリア毎の妨害電力を、信頼度補正部111に出力する。なお、妨害検出部110における周波数選択性妨害の検出方法の詳細については後述する。
【0038】
信頼度補正部111は、妨害検出部110から受け取る妨害レベル(妨害電力)に応じて、推定部108から受け取る伝送路特性推定値の電力(つまり、信頼度)に対して信頼度補正を施す。信頼度補正部111は、補正結果を補正された信頼度として軟判定部112に出力する。ここで、条件として、信頼度は、伝送路特性推定値の電力に比例し、伝送路特性推定値の電力が大きいほど、信頼度は高くなる。また、信頼度は、妨害電力に反比例し、妨害電力が大きいほど、信頼度は低くなる。つまり、信頼度補正部111は、妨害電力が大きいほど、信頼度がより低くなるように、信頼度を補正する。例えば、信頼度の補正式は|H
k|
2/|I
k|
2で表される。ここで、|H
k|
2は伝送送路特性推定値の電力を表し、|I
k|
2は妨害電力を表し、kはサブキャリア番号を示す。なお、補正式としては、上記補正式を対数表現してもよく、上述した信頼度の条件を満たすものであれば、これに限定されるものではない。
【0039】
軟判定部112は、信頼度補正部111から受け取るサブキャリア毎の信頼度(つまり、補正された信頼度)に基づいて、等化部109から受け取る復調データ信号に対して軟判定を行う。
【0040】
図4は、軟判定部112の内部構成を表すブロック図である。軟判定部112は、デマッパ部121及び乗算器122で構成される。デマッパ部121は、多値化のマッピングに基づき、復調データ信号に対してビット毎の軟判定を実施し、軟判定結果を軟判定データ信号として乗算器122に出力する。乗算器122は、デマッパ部121から受け取る軟判定データ信号と、信頼度補正部111から受け取る信頼度とを乗算する。この乗算処理により、信頼度の高いサブキャリアでは、軟判定データ信号(軟判定値)を大きくすることにより、当該サブキャリアにおけるデータの確からしさ(尤度)を高める。一方、信頼度の低いサブキャリアでは、軟判定データ信号(軟判定値)を小さくすることにより、当該サブキャリアにおけるデータの確からしさ(尤度)を低くする。例えば、あるビットの軟判定値に関して、「1」である最大尤度をAとし、「0」である最大尤度を−Aとすると「1」、「0」どちらでもない尤度は0で表現される。つまり、乗算器122は、軟判定値に対して重み付けを行う。乗算器122は、乗算結果(重み付きの軟判定値)を誤り訂正部113へ出力する。
【0041】
誤り訂正部113は、軟判定部112から受け取る軟判定値の尤度に従い、誤り訂正を行い、情報データを復元する。
【0042】
[妨害検出部110の動作]
図3に示すOFDM受信装置100の妨害検出部110における周波数選択性妨害の検出方法の詳細について説明する。
【0043】
図5は、妨害検出部110の内部構成を表すブロック図である。
図5に示す妨害検出部110は、ヌルキャリア抽出部151及び電力算出部152から構成される。電力算出部152が第1妨害検出部に相当する。
【0044】
また、
図6は、STF内のサブキャリアの受信電力の一例を示す図である。
図6において、横軸は周波数(サブキャリア)を表し、縦軸は電力を表す。
【0045】
ヌルキャリア抽出部151は、第1FFT部107から受け取る周波数領域OFDM信号のSTF(
図1参照)内のヌルサブキャリア周波数の信号を抽出し、電力算出部152に出力する。例えば、
図6では、サブキャリア番号が-24,-20,-16,-12,-8,-4,4,8,12,16,20,24のサブキャリア(つまり、4サブキャリア間隔のサブキャリア)がパイロットサブキャリアである。ヌルキャリア抽出部151は、上記パイロットサブキャリア以外のサブキャリア番号の周波数をヌルサブキャリア周波数とし、ヌルサブキャリア周波数の信号を抽出する。
【0046】
電力算出部152は、ヌルキャリア抽出部151から受け取ったヌルサブキャリア周波数の信号から受信電力を算出し、算出した受信電力を妨害電力として信頼度補正部111に出力する。
【0047】
例えば、
図6に示すように、周波数選択妨害環境下のSTFでは、ヌルサブキャリア周波数の受信電力は、全サブキャリアにおいて一定電力である熱雑音電力と、周波数選択的な妨害信号(隣接チャネルからの干渉信号)の電力(妨害電力)とから成ることが分かる。つまり、ヌルサブキャリア周波数の受信電力は、周波数選択性妨害の大きさに起因して変動する。つまり、妨害検出部110(電力算出部152)は、ヌルサブキャリア周波数の受信電力を求めることにより、ヌルサブキャリア周波数における妨害電力を推定することができる。
【0048】
また、電力算出部152は、例えば、ヌルサブキャリア周波数における妨害電力を用いて、パイロットサブキャリア周波数における妨害電力を補間してもよい。つまり、電力算出部152は、複数のヌルサブキャリア周波数の信号レベルに基づき、更に、STFに含まれる複数のパイロットサブキャリア周波数の妨害レベルを、推定的に検出する。こうすることにより、電力算出部152は、全サブキャリア毎の妨害レベルを算出することができる。
【0049】
なお、電力算出部152における電力算出方法として、例えば、複素信号の実数の2乗と虚数の2乗と和を求めてもよい。また、電力算出部152における補間方法として、例えば、パイロットサブキャリア周波数の両端に隣接するヌルサブキャリア周波数の平均電力を用いてもよく、何れか一方の電力を用いてもよい。また、電力算出部152は、妨害電力の算出の際、算出した電力から熱雑音電力を差し引いた値を妨害電力とすることが望ましい。例えば、電力算出部152は、各ヌルサブキャリア周波数の電力算出結果のうち、最も小さい電力算出結果を熱雑音電力の代表値と見なしてもよく、ヌルサブキャリア周波数の電力の総和を全サブキャリア数で割った値に、1より小さい係数を掛けた値を熱雑音電力の代表値と見なしてもよい。そして、電力算出部152は、各ヌルサブキャリア周波数の電力から熱雑音電力の代表値を差し引けばよい。
【0050】
以上のように、OFDM受信装置100は、STFのヌルサブキャリア周波数の受信電力からサブキャリア毎の妨害電力を推定することにより、周波数選択性妨害を受けているサブキャリアを検出することができる。ここで、
図1又は
図6に示すように、STFでは、ヌルサブキャリアは、4サブキャリア間隔で配置されるパイロットサブキャリア以外のサブキャリアである。よって、OFDM受信装置100は、連続する4サブキャリアのうち3サブキャリアを用いて妨害電力を推定することができる。つまり、OFDM受信装置100では、周波数選択性妨害の検出の周波数分解能が高くなり、周波数選択性妨害を精度よく検出することができる。よって、本実施の形態によれば、隣接チャンネルの漏洩電力等により生じる周波数選択性妨害の影響による受信性能劣化を改善することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、OFDM受信装置100は、ヌルサブキャリア周波数の受信電力に基づいて妨害電力を推定する。こうすることで、雑音の大きい環境であっても、例えばデータサブキャリアの硬判定のように雑音の大きさに影響を受ける処理を行う必要がなくなり、ヌルサブキャリアにおいて周波数選択性妨害を精度良く検出することができる。
【0052】
更に、本実施の形態によれば、OFDM受信装置100は、パイロットサブキャリアとヌルサブキャリアとから成るSTFにおいて、ヌルサブキャリア(つまり、何れの信号も割り当てられていないサブキャリア)を用いて妨害電力を推定する。こうすることで、データを割り当てるサブキャリアを減少させることはなく、つまり、伝送容量が少なくなってしまうことなく、周波数選択性妨害を訂正することができる。
【0053】
<実施の形態2>
実施の形態1では、ヌルサブキャリアにおける妨害電力を推定する場合について説明した。これに対して、本実施の形態では、ヌルサブキャリアに加え、パイロットサブキャリア及びデータサブキャリアにおける妨害電力を推定する場合について説明する。
【0054】
図7は、本実施の形態におけるOFDM受信装置200の構成を示すブロック図である。なお、
図7において、実施の形態1(
図3)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。具体的には、
図7では、
図3における妨害検出部110の代わりに、妨害検出部201を用いている点が異なる。
【0055】
妨害検出部201は、第1FFT部107から受け取る周波数OFDM信号の「STF」及び「LTF」内の信号を用いて、周波数選択性妨害を受けているサブキャリアを検出する。また、妨害検出部201は、等化部109から受け取る周波数OFDM信号の「SIGNAL」又は「データ」内の信号を用いて、周波数選択性妨害を受けているサブキャリアを検出する。
【0056】
図8は、妨害検出部201の内部構成を示すブロック図である。なお、
図8において、実施の形態1(
図5)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。具体的には、
図8に示す妨害検出部201は、妨害検出部110に対して、パイロットキャリア抽出部251、差分電力算出部252、変調誤差電力算出部253及び積分算出部254、が新たに追加された構成を採る。すなわち、差分電力算出部252が第2妨害検出部に相当し、変調誤差電力算出部253が第3妨害検出部に相当する。
【0057】
パイロットキャリア抽出部251は、第1FFT部107から受け取る周波数領域OFDM信号のLTF(
図1参照)内のパイロットサブキャリア周波数の信号(パイロット信号)を抽出し、パイロット信号を用いてパイロットサブキャリア毎の伝送路特性推定値を算出する。パイロットキャリア抽出部251は、伝送路特性推定値を差分電力算出部252に出力する。
【0058】
差分電力算出部252は、パイロットキャリア抽出部251で抽出された複数のパイロットサブキャリア周波数の信号のシンボル間差分(
図1では、時間方向に2つ繰り返される信号の差分)に基づいて、伝送帯域内の複数のサブキャリアの各妨害レベルを検出する。例えば、差分電力算出部252は、パイロットキャリア抽出部251から受け取る伝送路特性推定値のシンボル間(例えば、
図1に示すLTF内の2シンボル間)の差分電力を算出し、積分算出部254に出力する。つまり、差分電力算出部252は、パイロットサブキャリアにおける伝送路特性推定値の時間変動量に基づいて妨害電力を算出する。
【0059】
変調誤差電力算出部253は、等化部109から受け取るデータ部の復調データ信号を硬判定し、且つ、復調データ信号の硬判定結果からの誤差に基づいて、伝送帯域内の複数のサブキャリアの妨害レベルを検出する。例えば、変調誤差電力算出部253は、等化部109から受け取るサブキャリア毎の復調データ信号を、変調時のコンスタレーションに硬判定し、コンスタレーションにおける硬判定値と復調データ信号との差分(誤差電力)を算出する。具体的には、変調誤差電力算出部253は、コンスタレーション(硬判定結果)におけるシンボル点(信号点)と、復調データ信号のシンボル点との差分に基づいて誤差電力を算出する。変調誤差電力算出部253は、算出した誤差電力を積分算出部254に出力する。つまり、変調誤差電力算出部253は、復調データ信号(データサブキャリア)における上記誤差電力に基づいて妨害電力を算出する。
【0060】
積分算出部254は、電力算出部152、差分電力算出部252及び変調誤差電力算出部253から受け取る値に対して、サブキャリア毎にシンボル方向に時間積分することにより、サブキャリア毎の妨害電力を得る。積分算出部254は、得られた妨害電力を信頼度補正部111に出力する。例えば、積分算出部254は、STFの信号の受信時には、電力算出部152の出力を選択し、LTFの信号の受信時には、差分電力算出部252の出力を選択し、SIGNAL又はデータ部の信号の受信時には、変調誤差電力算出部253の出力を選択する。
【0061】
すなわち、軟判定部112は、第1妨害検出部(電力算出部152)、第2妨害検出部(差分電力算出部252)または第3妨害検出部(変調誤差電力算出部253)により検出された妨害レベルに基づき算出された各サブキャリアの信頼度を用いて軟判定を行う。
【0062】
以上のように、本実施の形態では、OFDM受信装置200は、ヌルサブキャリアのみでなく、パイロットサブキャリア及びデータサブキャリアを用いて妨害電力を推定し、サブキャリア毎のシンボル方向(時間領域)において妨害電力の平滑化動作を行う。こうすることにより、サブキャリア毎の妨害電力の推定精度を向上させることができ、実施の形態1と比較して、隣接チャンネルの漏洩電力等により生じる周波数選択性妨害の影響による受信性能劣化を更に改善することができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、ヌルサブキャリアに加えて、パイロットサブキャリア及びデータサブキャリアの双方を用いる構成について説明したが、パイロットサブキャリア(パイロットキャリア抽出部251、差分電力算出部252)、又は、データサブキャリア(変調誤差電力算出部253)の何れか一方を用いる構成としてもよい。
【0064】
また、本実施の形態において、データサブキャリアの硬判定結果が誤るような雑音の大きい環境では積分算出部254の処理を停止させることにより、変調誤差電力算出部253の出力を、妨害電力として使用しないようにしてもよい。こうすることで、妨害電力の推定精度の劣化を抑えることができる。例えば、妨害検出部201は、変調誤差電力算出部253の出力を全サブキャリアにわたって積分し、積分値が所定の閾値よりも大きければ、硬判定結果が誤るような劣悪な伝送路環境であると判断し、積分算出部254の処理を停止してもよい。
【0065】
また、積分算出部254の出力を妨害電力とするためには、積分値(電力算出結果)から熱雑音電力を差し引くことが望ましい。例えば、積分算出部254は、各サブキャリアの電力算出結果のうち、最も小さい電力算出結果を熱雑音電力の代表値と見なしてもよく、各サブキャリアの電力の総和を全サブキャリア数で割った値に、1より小さい係数を掛けた値を熱雑音電力の代表値と見なしてもよい。そして、積分算出部254は、各サブキャリアの電力から熱雑音電力の代表値を差し引いた値を妨害電力とすればよい。
【0066】
<実施の形態3>
図9は、本実施の形態におけるOFDM受信装置300の構成を示すブロック図である。なお、
図9において、実施の形態1(
図3)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。具体的には、
図9に示すOFDM受信装置300は、
図3に示すOFDM受信装置100に対して、遅延部301、第2周波数補正部302及び第2FFT部303が新たに追加されている。また、
図9では、実施の形態1と異なり、妨害検出部110は、第1FFT部107の出力の代わりに、第2FFT部303の出力を用いる。
【0067】
遅延部301は、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号を、STFに相当する時間だけ遅延させて、遅延させた複素ベースバンド信号を第2周波数補正部302に出力する。
【0068】
第2周波数補正部302は、キャリア周波数誤差検出部105から受け取るキャリア周波数誤差に基づいて、遅延部301から受け取る複素ベースバンド信号に対してキャリア周波数補正を施す。具体的には、第2周波数補正部302は、STFを用いて検出されたキャリア周波数誤差を用いて、STFの信号に対して粗調整のAFCを施す。そして、第2周波数補正部302は、補正後の複素ベースバンド信号を第2FFT部303に出力する。
【0069】
第2FFT部303は、第2周波数補正部302から受け取る複素ベースバンド信号のうち、所定の窓位置の有効OFDMシンボル期間に対応する部分を抽出して得られた信号を、時間領域から周波数領域へフーリエ変換する。第2FFT部303は、フーリエ変換後の信号を、周波数領域OFDM信号として妨害検出部110に出力する。
【0070】
すなわち、OFDM受信装置300は、STFを用いて検出されたキャリア周波数誤差を用いた周波数補正を、STFそのものにも適用する。これにより、妨害検出部110が受け取る周波数領域OFDM信号では、STFの信号においてキャリア周波数誤差がなくなっている。これにより、妨害検出部110は、キャリア周波数誤差の無いSTF(周波数補正後のSTFの信号)を用いて、妨害電力を推定することができる。つまり、妨害電力の推定精度をより良くすることができる。
【0071】
よって、本実施の形態によれば、実施の形態1と比較して、隣接チャンネルの漏洩電力等により生じる周波数選択性妨害の影響による受信性能劣化を更に改善することができる。
【0072】
<実施の形態4>
図10は、本実施の形態におけるOFDM受信装置400の構成を示すブロック図である。なお、
図10において、実施の形態2(
図7)又は実施の形態3(
図9)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。具体的には、
図10では、
図9における遅延部301の代わりに、遅延部401を用いており、
図9における妨害検出部110の代わりに、実施の形態2(
図7)における妨害検出部201を用いている点が異なる。
【0073】
遅延部401は、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号を、プリアンブル(STF及びLTF)に相当する時間だけ遅延させて、遅延させた複素ベースバンド信号を第2周波数補正部302に出力する。
【0074】
すなわち、OFDM受信装置400は、STF及びLTFを用いて検出されたキャリア周波数誤差を用いた周波数補正を、STF及びLTFそのものにも適用する。具体的には、STFに対して粗調整のAFCが施され、LTFに対して微調整のAFCが施されている。これにより、妨害検出部201が受け取る周波数領域OFDM信号では、STF及びLTFの双方の信号においてキャリア周波数誤差がなくなっている。これにより、妨害検出部201(電力算出部152及び差分電力算出部252の少なくとも一方)は、キャリア周波数誤差の無いSTF及びLTFを用いて、妨害電力を推定することができる。つまり、妨害電力の推定精度をより良くすることができる。
【0075】
よって、本実施の形態によれば、実施の形態2と比較して、隣接チャンネルの漏洩電力等により生じる周波数選択性妨害の影響による受信性能劣化を更に改善することができる。
【0076】
<実施の形態5>
TGah(802.11ah)における要求仕様を満たすべく、従来の無線LAN規格からの技術変更案が各社から提案されている。中でも、低電力出力による伝送距離1kmを確保するには、従来の無線LANで用いられていた、伝送誤り耐性の最も高い方式(BPSK変調・誤り訂正(畳み込み符号)符号化率1/2)よりも強靭な伝送方式(ロバストな伝送方式)が必要であると考えられている。このため、TGahでは、ロバスト性を高める有力な方法として、同一データを2以上のサブキャリアに割り当て、繰り返し送信する方法が挙がっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0077】
図11は、繰返し送信方法の一例を示す。
図11に示すように、シンボル番号pとシンボル番号p+1とは互いに独立している。また、同一シンボル内で同一データが異なるサブキャリアに割り当てられる。
図11では、サブキャリア番号のプラス側(0より大きいサブキャリア番号)のデータ群(シンボル番号pではx
0,x
1,…,x
i、シンボル番号p+1ではx
i+1,x
i+2,…,x
N)が、マイナス側(0より小さいサブキャリア番号)にも配置されている。つまり、繰り返しとして、2回同じデータが送信されている。これにより、受信側では、異なるサブキャリアを用いて送信された同一データに対して合成復号を行うことにより、3dB(2倍)のパワー利得を得ることができ、ロバスト性を向上させることができる。このように、
図11では、同一データが異なるサブキャリアに割り当てられるため、例えば、マルチパス干渉が存在して特定のサブキャリアが消失して、受信側でデータの復号が困難な場合でも、他のサブキャリアに割り当てられた位置における同一データが消失していなければ、受信側においてそのサブキャリアに割り当てられたデータを利用して復調可能となる。つまり、周波数ダイバーシティ効果を得ることができる。
【0078】
しかしながら、上述した繰り返し送信方法のように、単にマルチパス干渉の影響を考慮した合成復号を行うのみでは、周波数選択性妨害の影響を除去できず、周波数選択性妨害環境下において受信特性の劣化を引き起こしてしまう可能性が高い。そこで、本実施の形態では、繰り返し送信方法を用いた場合において、周波数選択性妨害の影響を抑圧する方法について説明する。
【0079】
図12は、本実施の形態におけるOFDM受信装置500の構成を示すブロック図である。なお、
図12において、実施の形態1(
図3)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。具体的には、
図12では、
図3における等化部109の代わりに、合成等化部501を用いている点が異なる。また、
図12に示すOFDM受信装置500には、
図3に示すOFDM受信装置100に対して、合成電力信頼性算出部502及び合成妨害算出部503が新たに追加されている。
【0080】
合成等化部501は、第1FFT部107から受け取る周波数領域OFDM信号Y、推定部108から受け取る、伝送路特性推定値H及び伝送路特性推定値の電力|H|
2、及び、妨害検出部110から受け取る妨害電力|I|
2を用いて、複数のサブキャリアに割り当てられた同一データに対して合成・等化処理を行い、復調データ信号X^を得る。つまり、合成等化部501は、同一データが割り当てられた2以上のサブキャリアにおいて検出された妨害レベルおよび伝送路特性の推定結果を用いて、上記2以上のサブキャリアに割り当てられたデータに対して合成・等化処理を行う。例えば、合成等化部501は、式(1)に従って、合成・等化処理を行い、復調データ信号X^を得る。合成等化部501は、復調データ信号X^を軟判定部112に出力する。
【数1】
【0081】
式(1)において、kはサブキャリア番号を示し、pはシンボル番号を示し、cnumはサブキャリア番号の最大値を示す。
【0082】
合成電力信頼性算出部502は、推定部108から受け取る伝送路特性推定値の電力|H|
2、及び、妨害検出部110から受け取る妨害電力|I|
2を用いて、複数のサブキャリアに割り当てられた同一データに対する電力|H|
2(つまり、信頼度)を合成して、合成電力H^を得る。すなわち、合成電力信頼性算出部502は、同一データが割り当てられた2以上のサブキャリアにおいて検出された妨害レベルおよび伝送路特性の推定結果を用いて、上記2以上のサブキャリアに割り当てられたデータに対して、合成された信頼度を算出する。例えば、合成電力信頼性算出部502は、式(2)に従って合成処理を行い、合成結果を伝送路特性推定値の合成電力H^として信頼度補正部111に出力する。
【数2】
【0083】
合成妨害算出部503は、推定部108から受け取る伝送路特性推定値の電力|H|
2、及び、妨害検出部110から受け取る妨害電力|I|
2を用いて、複数のサブキャリアに割り当てられた同一データに対する妨害電力|I|
2を合成して、妨害合成電力I^を得る。すなわち、合成妨害算出部503は、同一データが割り当てられた2以上のサブキャリアにおいて検出された妨害レベルおよび伝送路特性の推定結果を用いて、上記2以上のサブキャリアにおける合成された妨害レベルを算出する。例えば、合成妨害算出部503は、式(3)に従って、合成処理を行い、合成結果を妨害合成電力I^として信頼度補正部111に出力する。
【数3】
【0084】
信頼度補正部111は、各データに対する妨害合成電力(合成された妨害レベル)I^を用いて、各データに対する合成電力H^に対して信頼度補正を施す。そして、軟判定部112は、信頼度補正部111から受け取るデータ毎の信頼度(統合された信頼度)に基づいて、合成等化部501から受け取る復調データ信号(合成等化処理後の復調データ信号)X^に対して軟判定を行う。すなわち、軟判定部112は、同一データが割り当てられた2以上のサブキャリアにおける検出された妨害レベルおよび伝送路特性の推定結果を用いて算出された信頼度を用いて、合成等化処理後の復調信号を軟判定する。
【0085】
このように、OFDM受信装置500は、サブキャリアk及びサブキャリアk−(cnum+1)にそれぞれ割り当てられた同一データ(繰り返し送信されたデータ)、伝送路特性推定値の電力(信頼度)及び妨害電力の合成処理を行い、合成後の妨害電力に応じて合成後の信頼度を補正し、補正後の信頼度に基づいて合成信号に対する軟判定が行われる。
【0086】
これにより、OFDM受信装置500では、周波数選択性妨害環境下においても周波数ダイバーシティ効果を最大限に発揮できる合成等化処理と、周波数選択性妨害の影響を抑圧できる信頼度補正処理とによって、適切な軟判定値(尤度)を求めることが可能となる。
【0087】
つまり、繰り返し送信方法が適用された場合でも、隣接チャンネル妨害に対する耐性を向上させることができ、OFDM受信装置500では安定した受信処理が可能となる。よって、本実施の形態によれば、繰り返し送信方法が適用される場合でも、実施の形態1と同様、隣接チャンネルの漏洩電力等により生じる周波数選択性妨害の影響による受信性能劣化を改善することができる。
【0088】
なお、OFDM受信装置500における合成方法としては、周波数選択性妨害の影響を抑圧するものであればよく、等利得合成(等比合成、(例えば式(1)〜(3)))、又は、選択合成を適用してもよい。
【0089】
例えば、選択合成の一例として、OFDM受信装置500は、同一データが割り当てられた異なるサブキャリアの各々における妨害電力を比較して、妨害電力が最も小さいサブキャリアにおける信号のみを用いてもよい。例えば、
図11において、合成等化部501は、サブキャリア番号がマイナスのサブキャリアにおける妨害電力の総和と、サブキャリア番号がプラスのサブキャリアにおける妨害電力の総和とを比較し、妨害電力が小さい方の周波数領域OFDM信号Y及び伝送路特性推定値Hを選択して、復調データ信号X(=Y/H)を算出すればよい。同様に、合成電力信頼性算出部502は、サブキャリア番号がマイナスのサブキャリアにおける妨害電力の総和と、サブキャリア番号がプラスのサブキャリアにおける妨害電力の総和とを比較し、妨害電力が小さい方の伝送路特性推定値の電力|H|
2を合成電力H^として選択すればよい。同様に、合成妨害算出部503は、サブキャリア番号がマイナスのサブキャリアにおける妨害電力の総和と、サブキャリア番号がプラスのサブキャリアにおける妨害電力の総和とを比較し、妨害電力が小さい方の妨害電力|I|
2を妨害合成電力I^として選択すればよい。
【0090】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
【0091】
なお、上記各実施の形態では、802.11の伝送フォーマット(
図1)を用いる場合について説明した。しかし、上記各実施の形態では、伝送フォーマットは、パイロットサブキャリアとヌルサブキャリアとからなるプリアンブルを含むものであればよく、802.11の伝送フォーマットに限定されるものではない。
【0092】
また、上記各実施の形態の説明に用いたOFDM受信装置の各構成要素(機能ブロック)は、集積回路であるLSIとして実現してもよい。このとき、各構成要素は、個別に1チップ化されてもよいし、一部もしくは全てを含むように1チップ化されてもよい。また、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0093】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセサを利用してもよい。
【0094】
さらに、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあげられる。
【0095】
また、上記各実施の形態で示したOFDM受信装置の動作の手順の少なくとも一部をプログラムに記載し、例えばCPU(Central Processing Unit)がメモリに記憶された当該プログラムを読み出して実行するようにしてもよいし、上記プログラムを記録媒体に保存して頒布等するようにしてもよい。
【0096】
また、上記各実施の形態のOFDM受信装置は、記載した受信処理の少なくとも一部を行う受信方法を用いて実現してもよい。
【0097】
また、上記各実施の形態を実現する受信処理の一部を行ういかなる受信装置、受信方法、受信回路、又はプログラムを組み合わせて上記各実施の形態を実現してもよい。例えば、上記各実施の形態で説明した受信装置の構成の一部を受信装置又は集積回路で実現し、その一部を除く構成が行う動作の手順を受信プログラムに記載し、例えばCPUがメモリに記憶された当該プログラムを読み出して実行することによって実現してもよい。