特許第5977711号(P5977711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977711
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20160817BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20160817BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20160817BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01L31/02 B
   H01L33/52
   H01L23/28 D
   H01L21/56 J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-101304(P2013-101304)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-222696(P2014-222696A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】古市 昌子
(72)【発明者】
【氏名】眞▲崎▼ 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 修二
(72)【発明者】
【氏名】岩部 彩香
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−129399(JP,A)
【文献】 特開2009−064813(JP,A)
【文献】 特開2006−063092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
H01L 21/56
H01L 23/28
H01L 33/48−33/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、光機能素子を有し、前記基板に実装されワイヤにより前記基板上の電極と接続された半導体チップと、前記半導体チップを基板上で封止する透明樹脂とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップを前記基板上に実装し、前記半導体チップと前記基板上の電極とを接続する第1の工程と、
前記基板の上面において、前記ワイヤを覆う高さに透明樹脂をポッティングする第2の工程と、
前記第2の工程でポッティングした前記透明樹脂を、該透明樹脂の硬化温度より高い温度に加熱して硬化された中間製品を作製する第3の工程と、
前記第3の工程で作製された前記中間製品をガラス転移温度以下に冷却する第4の工程と、
前記第4の工程の後、前記透明樹脂の表面を、硬化前の前記透明樹脂の硬化温度より低い温度で、かつ、硬化後の前記透明樹脂のガラス転移温度より高い温度に加熱した板で押圧する第5の工程とを有し、
前記第5の工程において、前記透明樹脂を軟化させるとともに、前記透明樹脂の表面を平坦化することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の工程における前記透明樹脂のポッティング量は、少なくとも前記第3の工程において作製される前記中間製品の前記透明樹脂の表面に起伏が生じても前記ワイヤが露出しないように設定されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の工程における前記透明樹脂のポッティング量は、前記ワイヤの最高位置の高さより30μm〜230μm高くしたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3の工程は、前記透明樹脂を第1の温度で第1の時間硬化させる先工程と、前記第1の時間経過後に、前記第1の温度よりも高い第2の温度で第2の時間硬化させる次工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第5の工程では、前記透明樹脂の表面凹凸が5μm以下となるように前記板の平坦面で押圧することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光機能素子を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオード(以下、PDと呼ぶ)を実装した半導体チップを透明樹脂を用いて封入した半導体装置(PD素子)が知られている。このようなPD素子は、透明樹脂の表面に入射する光をPDが受光して光信号を出力する。PD素子を製造する際、透明樹脂の表面の平坦度が不十分であると、PD素子に入射した光がPDチップに十分入射せず、PD素子の性能が十分利用されない、あるいはPD素子を用いた回路が動作しない等の不具合を生じることがある。特に、複数のPDを実装した半導体チップを有するPD素子では、表面の平坦度が十分でないと、複数のPDへの光の入射量を同一にできず、複数の半導体チップの動作特性を揃えることが難しくなる。
【0003】
特許文献1には、透明樹脂の表面を平坦にする方法として、光透過性樹脂を充填するために半導体素子の周縁に所定の高さのダムを設ける方法が開示されている。
また特許文献2には、充填した透明樹脂を押圧しつつ加熱して硬化させて平坦に加工することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−297324号公報
【特許文献2】特開2005−268440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、樹脂の流動性を利用して表面の平坦化を行うものであるが、封止される半導体チップやボンディングワイヤ等の形状およびこれら熱膨張の影響を受けて、表面には10μm程度の起伏が生じる。また特許文献2の方法では、封止部材を押圧しながら加熱して硬化させるため、押圧する金属板に封止部材が付着しやすく、平坦化後に金属板を除去する際に表面が剥がれる等の損傷が発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)基板と、光機能素子を有し、前記基板に実装されワイヤにより前記基板上の電極と接続された半導体チップと、前記半導体チップを基板上で封止する透明樹脂とを有する半導体装置の製造方法であって、前記半導体チップを前記基板上に実装し、前記半導体チップと前記基板上の電極とを接続する第1の工程と、前記基板の上面において、前記ワイヤを覆う高さに透明樹脂をポッティングする第2の工程と、前記第2の工程でポッティングした前記透明樹脂を、該透明樹脂の硬化温度より高い温度に加熱して硬化された中間製品を作製する第3の工程と、前記第3の工程で作製された前記中間製品をガラス転移温度以下に冷却する第4の工程と、前記第4の工程の後、前記透明樹脂の表面を、硬化前の前記透明樹脂の硬化温度より低い温度で、かつ、硬化後の前記透明樹脂のガラス転移温度より高い温度に加熱した板で押圧する第5の工程とを有し、前記第5の工程において、前記透明樹脂を軟化させるとともに、前記透明樹脂の表面を平坦化することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、第2の工程における透明樹脂のポッティング量は、少なくとも第3の工程において作製される中間製品の透明樹脂の表面に起伏が生じてもワイヤが露出しないように設定されていることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、第2の工程における透明樹脂のポッティング量は、ワイヤの最高位置の高さより30μm〜230μm高くしたことを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、第3の工程は、透明樹脂を第1の温度で第1の時間硬化させる先工程と、第1の時間経過後に、第1の温度よりも高い第2の温度で第2の時間硬化させる次工程とを含むことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、第5の工程では、透明樹脂の表面凹凸が5μm以下となるように板の平坦面で押圧することを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォトダイオード等の光学素子が実装された半導体チップを封止する透明樹脂の表面を容易にかつ損傷なく平坦にすることができ、半導体装置の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明による半導体装置を示す断面図、(b)はその上面図
図2】(a)〜(c)は、比較例の半導体装置の製造工程を説明する図
図3図2(c)に示す樹脂硬化後の樹脂表面に生じた高低差を等高線により模式的に示した図
図4】(a)〜(g)は、本発明による半導体装置の製造方法の手順を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜4を参照して、本発明による半導体装置およびその製造方法の実施形態を説明する。
図1は、本発明による半導体装置10を説明する図である。図1(a)は、半導体装置10の断面図、図1(b)は上面図である。なお、図1(a)は(b)のIa-Ia線で切断して示す図である。
半導体装置10は、基板5と、基板5に実装された半導体チップ1と、封止樹脂である透明樹脂7とを有している。基板5は、有機材料であるガラスエポキシ、セラミックなど、透明樹脂7の素材により変性されない絶縁物質が用いられる。
【0010】
基板5の上面には半導体チップ1が実装されている。半導体チップ1は、たとえばフォトダイオード(PD)2を2つ搭載した半導体チップであり、透明樹脂7の表面に入射される光を受光して光信号を出力する。半導体チップ1は上面に電極を有し、この電極はボンディングワイヤ3によって基板5の電極4と接続されている。
【0011】
図1(b)に示すように、半導体装置10は、上下左右の四辺にそれぞれリード4を6つずつ有している。左右の6つのリード4はすべてのボンディングワイヤ3で半導体チップ1と接続され、上下の6つのリード4は2つのリード4がボンディングワイヤ3で半導体チップ1と接続されている。したがって、左右のボンディングワイヤ3の間隔は上下のボンディングワイヤ3の間隔よりも短く、配置密度が高い。
【0012】
なお、図1では、説明の便宜上、各辺6つのリード4を示しているが、通常十数個のリードが設けられ、ボンディングワイヤ3も十数本設けられる。
【0013】
(比較例による透明樹脂の封止方法)
図2および図3により、図1に示した半導体装置10の比較例について説明する。図2は、比較例である半導体装置110の透明樹脂封止方法を説明する比較例を示す。ここでは説明のため、半導体チップ1は、その両側にのみボンディングワイヤ3があるとしている。なお、図2に示す方法は、たとえば特許文献1に示すように、樹脂の流動性のみを利用して樹脂表面の平坦化を行う方法に相当する。
図3は、ポッティングされて硬化した透明樹脂70の表面形状、すなわち凹凸を等高線により模模式的に示すものである。
【0014】
図2(a)は、ボンディングワイヤ3で半導体チップ1とリード4とを接続した工程が終了した中間製品110Aを示す。図2(a)の中間製品110Aに対して、流動性のある透明樹脂70をポッティングして半導体チップ1を樹脂封止する。図2(b)は、この工程終了時の中間製品110Bの断面図である。
【0015】
図2(b)の中間製品110Bに適宜熱を加えて透明樹脂70を硬化させる。このとき、半導体装置110を構成する半導体チップ1、ボンディングワイヤ3、リード4、基板5のそれぞれの膨張率の違いにより、透明樹脂70は、ボンディングワイヤ3の上部が持ち上がるように変形して硬化する。図2(c)は、透明樹脂70を硬化させて得られた半導体装置110の最終形状を模式的に示す図である。このような封止樹脂の表面の変形の程度は、半導体装置110を構成するそれぞれの部材の膨張率および使用する透明樹脂70の量(厚さ)および加熱温度に依存する。
【0016】
図2に示す例では、透明樹脂70として加熱温度120℃程度で硬化(重合)が開始するようなエポキシ樹脂および硬化剤を用い、樹脂の厚さがチップ上で約200〜400μm程度となるようにしている。この樹脂厚さはボンディングワイヤ3が十分樹脂で覆われる程度で、できるだけ薄く設定される。
【0017】
図2(c)に示す半導体装置、すなわち、透明樹脂70を加熱硬化させた半導体装置110の透明樹脂70の表面の凹凸を3次元的に表す図が図3である。図3のII-II線で切断した断面が図2に対応している。
この例では、ボンディングワイヤ3の直上で樹脂が最も盛り上がり、ボンディングワイヤ3の周辺に比べて最大16μm程度の高度差を生じている。これは以下の理由によると思われる。
【0018】
図1に示すようなPD素子2を2個搭載したような半導体チップ1においては、ボンディングワイヤ3は、通常十数本設けられている。図1(b)に示すように、上下に比べて左右の2辺に多くのボンディングワイヤ3が集中するような構造では、ボンディングワイヤの上部の樹脂が、半導体チップ1の中央部や、チップ上のみで10〜30μm程度盛り上がる。換言すると、樹脂表面の凹凸、すなわち高度差はとくにボンディングワイヤ3の配線密度に影響を受ける。
【0019】
図2で示すような透明樹脂70の表面、すなわち、半導体装置110の光入射面に凹凸が形成されると、入射した光がPD素子2に十分到達しなかったり、また凹凸によっては、図1のような2つのPD素子2に入射する光量が不均一になり、半導体装置110の特性に大きな影響を与えることになる。本発明は、このような透明樹脂表面の凹凸の低減を図るものである。
【0020】
以下に説明するように、本発明の方法は硬化した透明樹脂に加熱した平坦な金属部材を押圧して、透明樹脂を軟化させ、表面の起伏を均すものである。
【0021】
(本発明による透明樹脂の封止方法)
図4は、本発明による半導体装置の製造方法を説明する概略図である。図4では、説明を簡単にするため図2と同様に単純な構造の半導体装置10としている。
【0022】
図4(a)に示す中間製品10Aを以下の3つの工程により作製する。
電極であるリード4を有する基板5を作製する基板作成工程。
基板5の上面に半導体チップ1を実装する実装工程。
半導体チップ1の上面の電極と基板5のリード4とをワイヤ3で接続する接続工程。
【0023】
図4(a)に示す中間製品10Aの上面に透明樹脂7aをポッティングした様子を図4(b)の中間製品10Bで示す。中間製品10Bを所定温度で所定時間加熱して硬化させる。図4(c)は硬化した中間製品10Cを示す。透明樹脂7aの硬化後の表面の起伏の大きさは、半導体チップ、基板、ボンディングワイヤ等の幾何形状や熱膨張特性等に依存する。
一般にエポキシ樹脂は所定の温度以上で硬化し、この温度に依存する所定の時間で硬化が完了する。本例では、数時間から15時間程度で硬化が完了するような条件(樹脂成分、硬化剤、加熱温度)としている。
【0024】
本例では、図4(b)でポッテイングした透明樹脂7aの硬化を2段階で加熱して行っている。たとえば用いたエポキシ樹脂の硬化開始温度が120℃である場合、125℃程度で数時間加熱し(第1段階)、次に150℃程度で更に数時間加熱する。完全に硬化させる処理を2段階で行うのは、硬化開始温度より若干高い程度の加熱である程度硬化させ、その後にさらに高い温度で加熱することで、内部応力を緩和させるためである。いきなり高い温度に加熱して硬化すると、硬化時間は短縮できるが、熱ストレスによる変形や破損が生じる可能性があるためである。したがって、上記の第2段階の温度150℃は1例であり、第1段階の温度より適宜高くすることにより、硬化時間が短縮できるものである。
【0025】
図4(b)での透明樹脂7aのポッテイング量は、この透明樹脂7aの硬化後(図4(c))の起伏を金属部材9で押圧して起伏を均してもボンディングワイヤ3が露出したり、あるいは押圧によりボンディングワイヤ3が影響を受けない程度に、ボンディングワイヤ3の高さより十分高くなるように設定した。
【0026】
図3に示すような例では、このような起伏を均すには、少なくともボンディングワイヤ3の最も高い位置より30μm以上高くしなければならない。本発明では、金属部材9の押圧による影響も考慮して、ボンディングワイヤ3の高さより30μm〜230μm程度高くなるように、図4(b)での透明樹脂7aのポッティング量を設定している。これ以上厚くしても、金属部材9の押圧による表面の均しに対する効果はあまり変わらず、半導体装置全体の厚さを増加させるので、上記のような範囲の厚さとしている。
【0027】
図4(c)に示す中間製品10Cを常温とした後、中間製品10Cを透明樹脂7aが軟化する温度まで加熱する。透明樹脂7aが硬化している半導体装置の中間製品10C(図4(c))を加熱して、透明樹脂7aを軟化させる。この様子は図4(d)の中間製品10Dとして示されている。加熱温度は、流動性のある透明樹脂の硬化温度より低い温度であって、硬化後の透明樹脂のガラス転移温度よりやや高い温度で行う。ここで用いたエポキシ樹脂では、ガラス転移温度は43℃であり、この例では70〜80℃程度で加熱して樹脂の軟化を行った。
【0028】
次に、図4(e),(f)に示すように、表面が平坦な金属板9で軟化した透明樹脂7aの表面を押圧して平坦とする。金属板9を同様な温度に予め加温するのが好ましい。
【0029】
金属部材9により軟化した透明樹脂の押圧は、樹脂表面の起伏が無くなるまで行われる。この押圧条件は、樹脂の種類、ガラス転移温度、軟化のための加熱温度、押圧力、押圧時間に依存する。上記で説明したような特性を有するエポキシ樹脂および加熱温度では、0.8〜0.9kgfで5分程度で十分であった。
【0030】
金属部材9による押圧後の透明樹脂7の表面平坦度は、この金属部材9の押圧面の平坦度で決定される。本例では、表面の平坦度と金属部材9の押圧後の離型性を考慮し、金属部材9の材料として、鉄材にNiメッキを施したものを採用し、表面平坦度は5μm以下とした。
なお、上記では透明樹脂7の表面の平坦化のために金属部材9を押圧するとしたが、表面が平坦であって、離型性が十分であれば金属以外の材質な平坦な板を適宜用いてもよい。
【0031】
なお、エポキシ樹脂の硬化開始温度を120℃、第1段階の温度を125)℃、第2段階の温度を150℃として説明したが、これらの値は1例であり、適宜、選択することができる。
【0032】
以上説明した実施形態による半導体装置10は、基板5と、光機能素子を有し、基板5に実装されワイヤ3により基板5上の電極と接続された半導体チップ1と、半導体チップ1を基板5上で封止する透明樹脂であって、その表面の凹凸が5μmより小さい透明樹脂7の層とで構成される。
【0033】
この半導体装置10の製造方法は、半導体チップ1を基板5上に実装し、半導体チップ1と基板5上の電極とを接続する第1の工程と、基板5の上面において、ワイヤ3を覆う高さに透明樹脂7aをポッティングする工程と、ポッティングした透明樹脂7aを加熱して硬化して中間製品10Dを作成する工程と、この中間製品10Dをたとえば透明樹脂7aのガラス転移温度以下である常温とした後に再度加熱し、硬化した透明樹脂7aを軟化させる、軟化した透明樹脂7aの表面を平坦面で押圧して透明樹脂7aの表面を平坦化するとともに、透明樹脂7aの高さを所定値に設定する工程とを有する。なお、中間製品10Dを押圧する平坦面をたとえば金属板の平坦面とし、この金属板を加熱しておくことにより、上記の中間製品10Dの再加熱の工程と、透明樹脂7aの表面を平坦化して所定の高さに設定する工程とを一緒に行うことも可能である。すなわち、上記で説明したような、透明樹脂7aが硬化した後に再加熱して軟化させる工程を用いずに、加熱した金属板を押圧することによって透明樹脂7aの軟化とその表面の平坦化を一緒に行うことができる。
【0034】
なお、図4(a)〜(g)では、一つの半導体装置10を製造する工程を説明したが、本発明による半導体装置は、1枚の基板5の上に複数個の半導体チップ1を実装し、各半導体チップ1の上部を透明樹脂7aで一括して覆い、硬化加熱、常温保持、軟化加熱、押圧の処理も一括して行い、最後に個片化して作製することができる。
【0035】
以上説明した実施形態の半導体装置およびその製造方法によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)一旦硬化させた透明樹脂を軟化させ、この軟化状態で透明樹脂の表面を押圧部材9の平坦面で押圧することにより、樹脂表面の起伏、すなわち凹凸(高度差)を5μm以下に抑えることができる。この製造方法は、金型を必要とせずに樹脂表面の凹凸を抑制することができ、製造コストを抑えることができる。
(2)そして、このような製造方法で作製された半導体装置によれば、入射面の凹凸が5μm以下であり、たとえば、PDを2個並設した場合でも、各PDに正しく光が導入される。
【0036】
(変形例1)
上記では、半導体チップ1にPD素子を2個搭載した例を説明したが、半導体チップ1の構成はこれに限定するものではない。PD素子が1個のみ搭載されているものであっても、本発明による半導体装置およびその製造方法を用いて、個々の半導体装置における透明樹脂表面の起伏を低減することができるので、半導体装置間の特性のバラツキが抑えられる。また、3個以上のPD素子を搭載したような半導体チップにおいても、同様に本発明を適用できる。
【0037】
(変形例2)
本発明による半導体装置およびその製造方法は、半導体チップ1にPD素子以外の光学素子、たとえばレーザダイオード(LED)素子が搭載されたものに対しても適用することができる。透明樹脂の表面の起伏が低減されるので、LED素子の発光方向が揃えられるので、特性の均一化を図ることができる。
【0038】
(変形例3)
また、この半導体チップ1にはLED素子とPD素子が搭載されたものであってもよい。本発明により、透明樹脂の表面の起伏が低減されるので、LED素子から放出される光は真っ直ぐ外部に向かう。このため、LED素子の光の透明樹脂7内での乱反射が大幅に低減されるので、LED素子とPD素子が搭載されたものであっても、十分動作可能となる。またこのような半導体チップを備えた半導体装置1個で光による入出力動作が可能となる。あるいは、LED素子から放出された光が外部で反射されたものを同じ半導体チップのPD素子で受光することも可能であり、このような半導体装置を用いてたとえば外部物体の有無を検出する小型のセンサを製造することが可能となる。
【0039】
(変形例4)
図1では、PD素子2個を搭載した半導体チップ1個がパッケージされた半導体装置を示したが、このような半導体チップを複数個備えるような半導体装置においても適用できる。本発明によれば、透明樹脂の表面の起伏が低減されるので、PD素子やLED素子の特性にさらにバラツキを与えることがない。したがって、このような素子を備える半導体装置の特性を揃えることが容易となる。また複数の半導体チップを搭載する場合は、波長感度の異なるPD素子や、発光波長の異なるLED素子等を同時に搭載した半導体装置の製造も可能である。このような半導体装置に対しても、特性を容易に揃えることが可能となる。
【0040】
(変形例5)
透明樹脂としてエポキシ樹脂を用いたものとして説明した。しかしながら、本発明による半導体装置およびこの製造方法では、PD素子などの半導体素子2の特性(波長感度)を妨げないような波長吸収特性を有し、また、あまり急激に硬化しない、たとえば所定の硬化温度で数時間程度で硬化するような樹脂であればよく、エポキシ樹脂や硬化剤の組成を限定するものでない。
【0041】
(変形例5)
図2では省略しているが、基板5は、平板上の底板部と、底板部の周縁に設けた周壁と、周壁に適宜の間隔で設けたリード部とを予め有する構成としてもよい。この場合、透明樹脂が投入された場合は、周壁をこの透明樹脂の堰き止める壁として用いることができる。
あるいは、たとえば大型のガラスエポキシ基板の上に、半導体チップを搭載する部分以外は不透明な樹脂を積層あるいは封入したような大型のパッケージを用いて、これに多数の半導体チップを搭載し、個々の半導体チップを透明樹脂で封入するような製造方法であってもよい。いずれの方法でも、リード4の周囲の壁が、流動性のある透明樹脂7の堰き止め用の壁として用いられる。
【0042】
以上の説明は本発明の実施形態の例であり、本発明はこれらの実施形態や実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の特徴を損なわずに様々な変形実施が可能である。たとえば、EPROMのパッケージの封止に、本発明による半導体装置の製造方法を適用することにより、EPROMチップ全体に均一に消去光を入射することができ、メモリ消去作業の信頼性を向上することができる。したがって、本発明による半導体チップはフォトダイオード、レーザダイオード、EPROMなどの光機能素子を有するものである。
【符号の説明】
【0043】
1・・・半導体チップ
2・・・フォトダイオード素子(PD素子)
3・・・ボンディングワイヤ
4・・・リード
5・・・基板
7・・・透明樹脂
9・・・金属部材
10・・・半導体装置
図1
図2
図3
図4