特許第5977787号(P5977787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977787近赤外線吸収性マスターバッチ、前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性製品、および前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性繊維の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977787
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】近赤外線吸収性マスターバッチ、前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性製品、および前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性繊維の製法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20160817BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C08J3/22CER
   C08J3/22CEZ
   D01F1/10
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-191160(P2014-191160)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-227435(P2015-227435A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】103118968
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500471629
【氏名又は名称】台虹科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】高有志
(72)【発明者】
【氏名】張▲キ▼詠
(72)【発明者】
【氏名】李冠諭
(72)【発明者】
【氏名】洪子景
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−314716(JP,A)
【文献】 特開平03−249214(JP,A)
【文献】 特開2001−140123(JP,A)
【文献】 特開2005−200520(JP,A)
【文献】 特開2006−199850(JP,A)
【文献】 特開2005−097754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00〜 3/28
C08K3/00〜 13/08
C08L1/00〜101/14
D01F1/00〜 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性と、波長が2ミクロメートルないし22ミクロメートルである領域のスペクトルにおける放射率が0.85にイコールまたはより大きい遠赤外線放射性と、を併せて有する近赤外線吸収性粒子と、
第1ポリマーと、
を有する混合物を溶融押出してなり、
前記粒子は、
(a)アンチモンドープ酸化スズ、
(b)フッ素ドープ酸化スズ、
(c)アンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(d)フッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(e)アンチモンドープ酸化スズおよびフッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、および
(f)前記(a)ないし(e)のいずれか2項よりなる組み合わせ、
からなる群より選択され、
前記粒子の二次粒径は、40ナノメートルないし900ナノメートルであり、
さらに、アミノ基を有する分散剤を有し、
前記マスターバッチの重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度が5重量%ないし40重量%であると共に、前記マスターバッチの重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.5重量%ないし4重量%であることを特徴とする近赤外線吸収性マスターバッチ。
【請求項2】
前記分散剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
前記第1ポリマーはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびその組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとからなる75d/72fないし70d/48fの近赤外線吸収性繊維である近赤外線吸収性製品であり、
前記近赤外線吸収性マスターバッチは、
波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性と、波長が2ミクロメートルないし22ミクロメートルである領域のスペクトルにおける放射率が0.85にイコールまたはより大きい遠赤外線放射性と、を併せて有する近赤外線吸収性粒子と、
第1ポリマーと、
を有する混合物を溶融押出してなり、
前記粒子は、
(a)アンチモンドープ酸化スズ、
(b)フッ素ドープ酸化スズ、
(c)アンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(d)フッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(e)アンチモンドープ酸化スズおよびフッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、および
(f)前記(a)ないし(e)のいずれか2項よりなる組み合わせ、
からなる群より選択され、
前記粒子の二次粒径は、40ナノメートルないし900ナノメートルであり、
さらに、アミノ基を有する分散剤を有し、
前記マスターバッチの重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度が5重量%ないし40重量%であると共に、前記マスターバッチの重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.5重量%ないし4重量%であることを特徴とする近赤外線吸収性製品。
【請求項5】
前記分散剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項に記載の製品。
【請求項6】
前記第2ポリマーはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびその組み合わせからなる群より選択され
前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度は、0.1重量%ないし5重量%であると共に、前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.01重量%ないし0.5重量%であることを特徴とする請求項に記載の製品。
【請求項7】
前記近赤外線吸収性マスターバッチからなる芯部と、該芯部を被包する、前記第2ポリマーからなる鞘部とを有し、
前記近赤外線吸収性粒子は、該芯部の内部に分散されるものであることを特徴とする請求項4に記載の製品。
【請求項8】
前記第2ポリマーからなる芯部と、該芯部を被包する、前記近赤外線吸収性マスターバッチからなる鞘部とを有し、
前記近赤外線吸収性粒子は、該鞘部に分散されることを特徴とする請求項4に記載の製品。
【請求項9】
請求項に記載の近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを調合することにより、調合物を獲得し、
前記調合物で融解紡糸を行い、75d/72fないし70d/48fの近赤外線吸収性繊維を獲得する、近赤外線吸収性繊維の製造方法であり、前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度は、0.1重量%ないし5重量%であると共に、前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.01重量%ないし0.5重量%であることを特徴とする近赤外線吸収性繊維の製造方法。
【請求項10】
前記第2ポリマーはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびその組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項9に記載の近赤外線吸収性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に太陽光を吸収し、熱量を蓄積すると共に、遠赤外線を放射することができる近赤外線吸収性マスターバッチに関する。また、本発明は、前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性製品、および前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性繊維の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線放射性材料を有する繊維からなる衣服は、蓄熱性および快適性を有すると評価されている。
【0003】
特許文献1に示すように、従来、二酸化ジルコニウム、ジルコン、シリカ、および二酸化チタンが遠赤外線放射性材料として用いられている。また、特許文献2には、竹炭を遠赤外線放射性材料として用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許出願公開第2303375号公報(GB2303375A)
【特許文献2】中国特許出願公開第1558007号公報(CN1558007A)
【特許文献3】日本特許出願公開平01―132816号公報(JPH01−132816A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の技術には、以下のような問題がある。
【0006】
遠赤外線放射性材料からなる繊維は、遠赤外線を放射することができるが、蓄熱性低下の欠点を有するので、前記遠赤外線放射性繊維を有する衣服は、使用者の体に密着しなくては、体からの熱量を吸収し、遠赤外線を体に提供することが出来なかった。即ち、従来の遠赤外線放射性材料からなる繊維は、限られた条件でしか、保温効果を発揮することができなかった。
【0007】
上述した問題を解決するための解決策として、近赤外線吸収性材料が提案された。例えば特許文献3に記載した従来の技術は、炭化ジルコニウム、酸化アンチモン、二酸化スズを太陽光の近赤外線を吸収する遠赤外線放射性材料とするものである。前記従来の近赤外線吸収性材料からなる繊維は、太陽光の近赤外線を吸収すると共に、蓄熱性を有するが、遠赤外線放射性の低下の著しい。特に、この従来の繊維は、室内では、太陽光の吸収も熱量の蓄積もできなくなってしまうので、この従来の繊維も同様に、限られた条件でしか、保温効果を発揮することができなかった。
【0008】
上述した通り、従来の技術は、有効に太陽光を吸収し、蓄熱性を有すると共に、遠赤外線を放射することができる、室内外でも使用し得る近赤外線吸収性材料を提供することができなかった。
【0009】
そこで、出願されたのが本発明であって、従来の問題を解決し、有効に太陽光を吸収し、蓄熱性を有すると共に、遠赤外線を放射することができる、室内外でも使用し得る近赤外線吸収性マスターバッチ、前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性製品、および前記マスターバッチよりなる近赤外線吸収性繊維の製法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1の発明は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性と、波長が2ミクロメートルないし22ミクロメートルである領域のスペクトルにおける放射率が0.85にイコールまたはより大きい遠赤外線放射性と、を併せて有する近赤外線吸収性粒子と、
第1ポリマーと、
を有する混合物を溶融押出してなり、
前記粒子は、
(a)アンチモンドープ酸化スズ、
(b)フッ素ドープ酸化スズ、
(c)アンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(d)フッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(e)アンチモンドープ酸化スズおよびフッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、および
(f)前記(a)ないし(e)のいずれか2項よりなる組み合わせ、
からなる群より選択され、
前記粒子の二次粒径は、40ナノメートルないし900ナノメートルであり、
さらに、アミノ基を有する分散剤を有し、
前記マスターバッチの重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度が5重量%ないし40重量%であると共に、前記マスターバッチの重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.5重量%ないし4重量%であることを特徴とする近赤外線吸収性マスターバッチ、を提供する。
【0011】
本願の請求項2の発明は、前記分散剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチ、を提供する。
【0012】
本願の請求項3の発明は、前記第1ポリマーはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびその組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチ、を提供する。
【0013】
本願の請求項4の発明は、近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとからなる75d/72fないし70d/48fの近赤外線吸収性繊維である近赤外線吸収性製品であり、
前記近赤外線吸収性マスターバッチは、
波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性と、波長が2ミクロメートルないし22ミクロメートルである領域のスペクトルにおける放射率が0.85にイコールまたはより大きい遠赤外線放射性と、を併せて有する近赤外線吸収性粒子と、
第1ポリマーと、
を有する混合物を溶融押出してなり、
前記粒子は、
(a)アンチモンドープ酸化スズ、
(b)フッ素ドープ酸化スズ、
(c)アンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(d)フッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、
(e)アンチモンドープ酸化スズおよびフッ素ドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、および
(f)前記(a)ないし(e)のいずれか2項よりなる組み合わせ、
からなる群より選択され、
前記粒子の二次粒径は、40ナノメートルないし900ナノメートルであり、
さらに、アミノ基を有する分散剤を有し、
前記マスターバッチの重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度が5重量%ないし40重量%であると共に、前記マスターバッチの重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.5重量%ないし4重量%であることを特徴とする近赤外線吸収性製品、を提供する。
【0014】
本願の請求項5の発明は、前記分散剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項4に記載の製品、を提供する。
【0015】
本願の請求項6の発明は、前記第2ポリマーはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびその組み合わせからなる群より選択され、
前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度は、0.1重量%ないし5重量%であると共に、前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.01重量%ないし0.5重量%であることを特徴とする請求項54に記載の製品、を提供する。
【0016】
本願の請求項7の発明は、前記近赤外線吸収性マスターバッチからなる芯部と、該芯部を被包する、前記第2ポリマーからなる鞘部とを有し、
前記近赤外線吸収性粒子は、該芯部の内部に分散されるものであることを特徴とする請求項4に記載の製品、を提供する。
【0017】
本願の請求項8の発明は、前記第2ポリマーからなる芯部と、該芯部を被包する、前記近赤外線吸収性マスターバッチからなる鞘部とを有し、
前記近赤外線吸収性粒子は、該鞘部に分散されることを特徴とする請求項4に記載の製品、を提供する。
【0018】
本願の請求項9の発明は、請求項に記載の近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを調合することにより、調合物を獲得し、
前記調合物で融解紡糸を行い、75d/72fないし70d/48fの近赤外線吸収性繊維を獲得する、近赤外線吸収性繊維の製造方法であり、
前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記近赤外線吸収性粒子の濃度は、0.1重量%ないし5重量%であると共に、前記近赤外線吸収性繊維の重量に基づいた前記分散剤の濃度が0.01重量%ないし0.5重量%であることを特徴とする近赤外線吸収性繊維の製造方法、を提供する。
【0019】
本願の請求項10の発明は、前記第2ポリマーはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびその組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項9に記載の近赤外線吸収性繊維の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上述した技術特徴を有するので、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性と、波長が2ミクロメートルないし22ミクロメートルである領域のスペクトルにおける放射率が0.85にイコールまたはより大きい遠赤外線放射性と、を併せて有する粒子により、例えば近赤外線吸収性繊維などの前記本発明に係るマスターバッチよりなる近赤外線吸収性製品、および該繊維からなる織物は、有効に太陽光を吸収すると共に、蓄熱性を有するのみならず、遠赤外線を放射することができる。
すなわち、本発明に係るマスターバッチから作製された製品は、室内外を問わず保温効果を発揮することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図2】本発明の実施例9に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図3】本発明の実施例10に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図4】本発明の実施例11に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図5】本発明の実施例12に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図6】本発明の実施例13に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図7】本発明の実施例14に係る近赤外線吸収性繊維におけるその長手軸に直交する断面の断面図である。
図8】本発明の実施例1および比較例2に係る近赤外線吸収性粒子における紫外可視近赤外(UV−Vis−NIR)領域のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0024】
以下は近赤外線吸収性マスターバッチの製造について述べる。ヘンシェルミキサー(登録商標)に、近赤外線吸収性粒子と、分散剤と、第1ポリマーとを均質的に混合することにより、混合物が得られる。
前記混合物が溶かれ、セ氏220度ないしセ氏250度で2軸押出し機により押し出される。これにより、押し出されたマスターバッチを得ることができる。前記近赤外線吸収性粒子、分散剤、および第1ポリマーの重量比は、1:0.1:8.9である。また、前記マスターバッチの重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、10重量%である。
【0025】
本実施例において、前記粒子は、アンチモンドープ酸化スズ(Inframat Advanced Materials Co., Ltd.から購入)である。前記アンチモン対錫の原子比は、1:9である。前記粒子の二次粒径は、40ナノメートルないし100ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.85である遠赤外線放射性を有する。前記粒子が放射する遠赤外線は、2ミクロメートルないし22ミクロメートルの波長を有するものである。また、前記分散剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Sigma−Aldrich(登録商標)Co.から購入)であり、前記第1ポリマーは、ポリアミド6樹脂(Li Peng Enterprise Co., Ltd.から購入)である。
【0026】
以下は近赤外線吸収性繊維の製造について述べる。前記近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを重量比1:9で調合することにより、調合物が得られる。前記調合物をセ氏240度で押し出しすることにより、繊維が得られる。前記繊維が巻取り機により3500メートル/分の巻取り速度で巻き取られ、110d/48fの部分配向糸になる。前記「110d/48f」との表記は、この部分配向糸は110デニール(d)の重量と48本の繊維(f)とを有するものであることを意味する。該110d/48fの部分配向糸にさらに摩擦式延伸仮撚機で仮撚加工を施すことにより、70d/48fの近赤外線吸収性繊維が獲得される。また、前記「70d/48f」との表記は、該近赤外線吸収性繊維は70デニール(d)の重量と48本の繊維(f)とを有するものであることを意味する。
【0027】
本実施例において、前記第2ポリマーは、ポリアミド6樹脂である。また、前記繊維の重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、1重量%である。
【0028】
図1に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10における該繊維10の長手軸と直交する断面が円形である。近赤外線吸収性粒子20は該近赤外線吸収性繊維10の内部に分散される。
【0029】
以下は近赤外線吸収性織物の製法について述べる。織機で前記近赤外線吸収性繊維を組織させ、織物を製織することにより、該織物を獲得する。
【実施例2】
【0030】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0031】
本実施例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0032】
近赤外線吸収性マスターバッチの製法において、本実施例における、近赤外線吸収性粒子、分散剤、および第1ポリマーの重量比は、1:0.1:18.9である。また、本実施例におけるマスターバッチの重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、5重量%である。
【0033】
近赤外線吸収性繊維の製法において、本実施例における調合物は、近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを重量比1:4で調合することにより得られるものである。また、本実施例における繊維の重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、1重量%である。
【実施例3】
【0034】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0035】
本実施例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0036】
近赤外線吸収性マスターバッチの製法において、本実施例における、近赤外線吸収性粒子、分散剤、および第1ポリマーの重量比は、4:0.4:5.6である。また、本実施例におけるマスターバッチの重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、40重量%である。
【0037】
近赤外線吸収性繊維の製法において、本実施例における調合物は、近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを重量比1:39で調合することにより得られるものである。また、本実施例における繊維の重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、1重量%である。
【実施例4】
【0038】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0039】
本実施例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0040】
近赤外線吸収性繊維の製法において、本実施例における調合物は、近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを重量比1:190で調合することにより得られるものである。また、本実施例における繊維の重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、0.1重量%である。
【実施例5】
【0041】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0042】
本実施例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0043】
近赤外線吸収性繊維の製法において、本実施例における調合物は、近赤外線吸収性マスターバッチと、第2ポリマーとを重量比1:1で調合することにより得られるものである。また、本実施例における繊維の重量に基づいた近赤外線吸収性粒子の濃度は、5重量%である。
【実施例6】
【0044】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0045】
本実施例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0046】
近赤外線吸収性マスターバッチの製法において、本実施例における近赤外線吸収性粒子は、アンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタン(Ishihara Sangyo Kaisha, Ltd.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、800ナノメートルないし900ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.87である遠赤外線放射性を有する。前記粒子が放射する遠赤外線は、2ミクロメートルないし22ミクロメートルの波長を有するものである。
【実施例7】
【0047】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0048】
本実施例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0049】
近赤外線吸収性マスターバッチの製法において、本実施例における近赤外線吸収性粒子、分散剤、および第1ポリマーを有する混合物が溶かれ、セ氏250度ないしセ氏280度で2軸押出し機により押し出されることにより、押し出されたマスターバッチが得られる。また、前記第1ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート樹脂(Far Eastern New Century Co.から購入)である。
【0050】
近赤外線吸収性繊維の製法において、本実施例における第2ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。本実施例における繊維は、調合物をセ氏285度で押し出しすることにより得られるものである。前記繊維が巻取り機により3200メートル/分の巻取り速度で巻き取られ、125d/72fの部分配向糸になる。この125d/72fの部分配向糸にさらに摩擦式延伸仮撚機で仮撚加工を施すことにより、75d/72fの近赤外線吸収性繊維が獲得される。
【実施例8】
【0051】
本実施例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製法に関する。
【0052】
本実施例は、前記実施例7とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0053】
近赤外線吸収性マスターバッチの製法において、本実施例における近赤外線吸収性粒子は、フッ素ドープ酸化スズ(Keeling and Walker, Ltd.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、100ナノメートルないし150ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.92である遠赤外線放射性を有する。前記粒子が放射する遠赤外線は、2ミクロメートルないし22ミクロメートルの波長を有するものである。
【実施例9】
【0054】
本実施例は、近赤外線吸収性繊維に関する。
【0055】
本実施例に係る近赤外線吸収性繊維は、前記実施例1の近赤外線吸収性繊維とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0056】
図2に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Aにおける該繊維10Aの長手軸と直交する断面に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Aは、特に、芯部11Aと、該芯部11Aを被包する鞘部12Aとを有する芯鞘型複合繊維である。該芯部11Aは前記近赤外線吸収性マスターバッチを有するとともに、該鞘部12Aは前記第2ポリマーを有する。また、近赤外線吸収性粒子20Aは、前記断面の中央部に位置するように、該芯部11Aの内部に分散される。
【実施例10】
【0057】
本実施例は、近赤外線吸収性繊維に関する。
【0058】
本実施例に係る近赤外線吸収性繊維は、前記実施例9の近赤外線吸収性繊維とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0059】
図3に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Bにおける芯部11Bは、第2ポリマーを有する。本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Bの鞘部12Bは、近赤外線吸収性マスターバッチを有する。また、近赤外線吸収性粒子20Bは、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Bの断面の周縁部に位置するように、該乃至12Bに分散される。
【実施例11】
【0060】
本実施例は、近赤外線吸収性繊維に関する。
【0061】
本実施例に係る近赤外線吸収性繊維は、前記実施例1の近赤外線吸収性繊維とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0062】
図4に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Cにおける該繊維10Cの長手軸と直交する断面に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Cは、特に、該断面に環状を呈する管状部11Cを有する中空状を呈する繊維である。
【実施例12】
【0063】
本実施例は、近赤外線吸収性繊維に関する。
【0064】
本実施例に係る近赤外線吸収性繊維は、前記実施例1の近赤外線吸収性繊維とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0065】
図5に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Dにおける該繊維10Dの長手軸と直交する断面は、四角形を呈する。本実施例において、特に、該断面は長方形を呈するものである。
【実施例13】
【0066】
本実施例は、近赤外線吸収性繊維に関する。
【0067】
本実施例に係る近赤外線吸収性繊維は、前記実施例1の近赤外線吸収性繊維とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0068】
図6に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Eにおける該繊維10Eの長手軸と直交する断面は、Y字形を呈する。
【実施例14】
【0069】
本実施例は、近赤外線吸収性繊維に関する。
【0070】
本実施例に係る近赤外線吸収性繊維は、前記実施例1の近赤外線吸収性繊維とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0071】
図7に示すように、本実施例に係る近赤外線吸収性繊維10Fにおける該繊維10Fの長手軸と直交する断面は、X字形を呈する。
【0072】
(比較例1)
本比較例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0073】
本比較例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0074】
近赤外線吸収性マスターバッチの製造において、本比較例における近赤外線吸収性粒子は、炭化ジルコニウム(John Young Enterprise Co., Ltd.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、800ナノメートルないし950ナノメートルである。前記粒子は、波長が1.2ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.86である遠赤外線放射性を有する。
【0075】
(比較例2)
本比較例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0076】
本比較例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0077】
近赤外線吸収性マスターバッチの製造において、本比較例における近赤外線吸収性粒子は、二酸化スズ(John Young Enterprise Co., Ltd.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、300ナノメートルないし500ナノメートルである。前記粒子は、波長が1.2ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.86である遠赤外線放射性を有する。
【0078】
(比較例3)
本比較例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0079】
本比較例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0080】
近赤外線吸収性マスターバッチの製造において、本比較例における近赤外線吸収性粒子は、二酸化ジルコニウム(Sigma−Aldrich Co.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、800ナノメートルないし900ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.93である遠赤外線放射性を有する。
【0081】
(比較例4)
本比較例は、遠赤外線放射性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0082】
本比較例は、前記実施例1とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。本比較例において、遠赤外線放射性マスターバッチ、繊維、および織物を製造するために、遠赤外線放射性粒子が用いられる。すなわち、前記実施例1と比べ、本比較例では、遠赤外線放射性粒子が前記実施例1に係る近赤外線吸収性の代わりに用いられる。
【0083】
また、本比較例に係る遠赤外線放射性マスターバッチの製造に用いられる遠赤外線放射性粒子は、麦飯石(John Young Enterprise Co., Ltd.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、800ナノメートルないし1000ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.91である遠赤外線放射性を有する。
【0084】
(比較例5)
本比較例は、近赤外線吸収性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0085】
本比較例は、前記実施例7とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0086】
近赤外線吸収性マスターバッチの製造において、本比較例における近赤外線吸収性粒子は、比較例1で用いられる炭化ジルコニウムである。
【0087】
(比較例6)
本比較例は、遠赤外線放射性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0088】
本比較例は、前記実施例7とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。本比較例において、遠赤外線放射性マスターバッチ、繊維、および織物を製造するために、遠赤外線放射性粒子が用いられる。すなわち、前記実施例7と比べ、本比較例では、遠赤外線放射性粒子が前記実施例1に係る近赤外線吸収性の代わりに用いられる。
【0089】
また、本比較例に係る遠赤外線放射性マスターバッチの製造に用いられる遠赤外線放射性粒子は、竹炭(Jiangshan Luyi Bamboo Charcoal Co., Ltd.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、300ナノメートルないし400ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.93である遠赤外線放射性を有する。
【0090】
(比較例7)
本比較例は、遠赤外線放射性マスターバッチ、繊維、および織物の製造に関する。
【0091】
本比較例は、前記実施例7とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。本比較例において、遠赤外線放射性マスターバッチ、繊維、および織物を製造するために、遠赤外線放射性粒子が用いられる。すなわち、前記実施例7と比べ、本比較例では、遠赤外線放射性粒子が前記実施例1に係る近赤外線吸収性の代わりに用いられる。
【0092】
また、本比較例に係る遠赤外線放射性マスターバッチの製造に用いられる遠赤外線放射性粒子は、酸化アルミニウム(Sigma−Aldrich Co.から購入)である。前記粒子の二次粒径は、800ナノメートルないし900ナノメートルである。前記粒子は、波長が0.7ミクロメートルないし2ミクロメートルである領域のスペクトルにおける近赤外線吸収性を有する。また、前記粒子は、放射率が0.94である遠赤外線放射性を有する。
【0093】
(実験例1)
本実験例は、昇温性の実験に関する。
【0094】
500ワット型ハロゲンランプが被験織物の上方に位置させられ、該ハロゲンランプから該被験織物の表面までの距離は100センチメートルである。該ハロゲンランプの照射方向と該被験織物の表面との角度は45度である。該ハロゲンランプの照射を受けてから、該被験織物の表面温度が温度計測器(NEC(登録商標) Co.から購入)で測定される。
【0095】
昇温性は、被験織物で計測された表面温度と基準織物で計測された表面温度との温度差で算出される。該温度差は、符号「ΔT」で表示される。昇温性が高い織物は昇温性が低い織物より内層の衣服に好適である。
【0096】
被験織物として実施例1ないし実施例6に係る近赤外線吸収性織物、比較例1ないし比較例3に係る近赤外線吸収性織物、または比較例4に係る遠赤外線放射性織物が用いられる場合、基準織物としてポリアミド6樹脂からなる織物が用いられる。
【0097】
被験織物として実施例7および8に係る近赤外線吸収性織物、比較例5に係る近赤外線吸収性織物、または比較例6および比較例7に係る遠赤外線放射性織物が用いられる場合、基準織物としてポリエチレンテレフタレート樹脂からなる織物が用いられる。
【0098】
前記実験の結果は表1ないし表6に示す。
【0099】
(実験例2)
本実験例は、太陽光吸収性の実験に関する。
【0100】
前記各実施例および比較例に係る織物は、被験織物として、ソーラシミュレータ(All Real Technology Co. Ltd.から購入される「APOLLO」型ソーラシミュレータ)から12メートル離れた場所に設置される。該被験織物は、該ソーラシミュレータにより500ワット/平方メートルのエネルギーで10分間照射される。該被験織物における照射前後の表面温度が温度計測器で測定される。
【0101】
太陽光吸収性は、被験織物におけるソーラシミュレータ照射前後の表面温度の温度差(ΔT)で算出される。ΔTが高い織物は太陽光吸収性に優れているものとされる。
【0102】
また、織物の蓄熱性および室外における保温効果はΔTに依存する。ΔTが高い織物は有効に蓄熱すると共に、室外で人体の温度を保つことができる。即ち、太陽光吸収性に優れている織物は、有効に蓄熱することができると共に、室外で人体の温度を保つことができる。
【0103】
前記実験の結果は表1ないし表6に示す。
【0104】
(実験例3)
本実験例は、遠赤外線放射性の実験に関する。
【0105】
前記各実施例および比較例に係る織物は、被験織物として、セ氏25度で遠赤外線分光計(Bruker Co.から購入される「VERTEX 70」型遠赤外線分光計)により、遠赤外線放射性の測定をされる。前記実験の結果は表1ないし表6に示す。放射される遠赤外線は、2ミクロメートルないし22ミクロメートルの波長を有するものである。
【0106】
(実験例4)
本実験例は、紫外可視近赤外(UV−Vis−NIR)領域のスペクトルにおける吸収性の実験に関する。
【0107】
実施例1に係る近赤外線吸収性粒子と、臭化カリウムとからなる混合物をメノウ乳鉢で粉砕、混合することにより、細粉を得る。該細粉を錠剤機で圧縮することにより、サンプルを作成する。
該サンプルにおける波長が300ナノメートルないし2000ナノメートルである領域の吸収スペクトルが紫外可視近赤外分光計(Hitachi(登録商標)から購入される「U−4100」型紫外可視近赤外分光計)で測定される。該サンプルの吸収スペクトルを実施例1に係る近赤外線吸収性粒子の吸収スペクトルとする。
【0108】
比較例2に係る近赤外線吸収性粒子の吸収スペクトルは、実施例1に係る近赤外線吸収性粒子に施される上述の方法により測定される。
【0109】
前記実験の結果は図8に示す。
【0110】
表1は、実施例1ないし実施例3に係る近赤外線吸収性粒子の種類、近赤外線吸収性マスターバッチおよび繊維における前記粒子の濃度、近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示すように、実施例1ないし実施例3に係る近赤外線吸収性粒子の種類はアンチモンドープ酸化スズである。近赤外線吸収性繊維および繊物における前記粒子の濃度は同様である。近赤外線吸収性マスターバッチにおける前記粒子の濃度は、前記近赤外線吸収性繊維および繊物における前記粒子の濃度と異なるが、同様のΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を有する。
すなわち、実施例1ないし実施例3に係る近赤外線吸収性繊維および繊物は、同様の昇温性、太陽光吸収性および遠赤外線放射性を有する。
【0113】
表2は、実施例1、実施例4および実施例5に係る近赤外線吸収性粒子の種類、近赤外線吸収性マスターバッチおよび繊維における前記粒子の濃度、近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を示す。
【0114】
【表2】
【0115】
表2に示すように、実施例1、実施例4および実施例5に係る近赤外線吸収性粒子の種類はアンチモンドープ酸化スズである。表2に示される結果によれば、近赤外線吸収性繊維における近赤外線吸収性粒子の濃度が増大する場合、前記繊維からなる近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性が増大することがわかる。
すなわち、近赤外線吸収性繊維における近赤外線吸収性粒子の濃度の増大は、前記繊維からなる近赤外線吸収性織物における昇温性、太陽光吸収性および遠赤外線放射性の増大に繋がる。
【0116】
表3は、実施例1、実施例6、比較例1ないし比較例3に係る近赤外線吸収性粒子の種類、近赤外線吸収性繊維における前記粒子の濃度、近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を示す。
【0117】
【表3】
【0118】
表4は、比較例4に係る近赤外線吸収性粒子の種類、近赤外線吸収性繊維における前記粒子の濃度、近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を示す。
【0119】
【表4】
【0120】
表3および表4に示すように、実施例1および実施例6に係る近赤外線吸収性粒子の種類はアンチモンドープ酸化スズおよびアンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタンであり、また、アンチモンドープ酸化スズおよびアンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタンを用いることにより、実施例1および実施例6に係る織物は、比較例1ないし比較例4に係る織物より、ΔT、ΔT、および遠赤外線放射性が増大することがわかる。
すなわち、実施例1および実施例6に係る織物は、昇温性および太陽光吸収性に優れたものである。また、実施例1および実施例6に係る近赤外線吸収性織物は、室外にでも有効に体の温度を保つ保温効果を発揮することができる。
【0121】
図8に示すように、実施例1に係る近赤外線吸収性粒子であるアンチモンドープ酸化スズには、波長が700ナノメートルにイコールまたはより大きい領域のスペクトルに対する近赤外線吸収性が見られる。それに対して、比較例2に係る近赤外線吸収性粒子とされる二酸化スズの近赤外線吸収性は、波長が1200ナノメートルにイコールまたはより大きい領域のスペクトルに対するものである。
また、波長が700ナノメートルにイコールまたはより大きい領域のスペクトルに対する酸化スズの近赤外線吸収性は、アンチモンドープ酸化スズの近赤外線吸収性より低下するものである。これにより、比較例2と比べ、波長が700ナノメートルにイコールまたはより大きい領域のスペクトルに対し、実施例2に係る近赤外線吸収性粒子が著しく近赤外線吸収性に優れたことが明らかである。
【0122】
表3及び図8に示すように、波長が700ナノメートルにイコールまたはより大きい領域のスペクトルに対する近赤外線吸収性に優れた近赤外線吸収性粒子を使用するので、実施例1に係る近赤外線吸収性織物は、比較例2を上回る太陽光吸収性(ΔT)を有する。また、実施例1に係る近赤外線吸収性織物は、比較例2より、室外でも有効に体の温度を保つ保温効果を発揮することができる。
【0123】
表5は、実施例7、実施例8、および比較例5に係る近赤外線吸収性粒子の種類、近赤外線吸収性繊維における前記粒子の濃度、近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を示す。
【0124】
【表5】
【0125】
表6は、比較例6および比較例7に係る近赤外線吸収性粒子の種類、近赤外線吸収性繊維における前記粒子の濃度、近赤外線吸収性織物におけるΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を示す。
【0126】
【表6】
【0127】
表5および表6に示すように、実施例7および実施例8に係る近赤外線吸収性粒子の種類はアンチモンドープ酸化スズおよびフッ素ドープ酸化スズである。アンチモンドープ酸化スズおよびフッ素ドープ酸化スズを用いることにより、実施例7および実施例8に係る織物は、比較例5ないし比較例7に係る織物より優れたΔT、ΔT、および遠赤外線放射性を有することがわかる。
すなわち、実施例7および実施例8に係る織物は、昇温性および太陽光吸収性に優れたものである。また、実施例7および実施例8に係る近赤外線吸収性織物は、室外にでも有効に体の温度を保つ保温効果を発揮することができる。
【0128】
さらに、表4に示すように、比較例5に係る近赤外線吸収性織物の温度を上げるためには、太陽光を吸収することが好適である。また、比較例6および比較例7に係る遠赤外線放射性織物の温度を上げるためには、遠赤外線を放射させることが好適である。
太陽光の吸収および遠赤外線の放射を行うことは、実施例7および実施例8に係る近赤外線吸収性織物に対して、共に好適である。
【0129】
上述したように、波長が2ミクロメートルないし22ミクロメートルである領域のスペクトルにおける放射率が0.85にイコールまたはより大きい遠赤外線放射性を有するアンチモンドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズに被包される二酸化チタン、またはフッ素ドープ酸化スズを近赤外線吸収性粒子として採用するので、この近赤外線吸収性粒子からなる実施例1ないし実施例8に係る近赤外線吸収性マスターバッチで融解紡糸を行うことにより作製される近赤外線吸収性繊維は、太陽光吸収性および遠赤外線放射性に優れた織物の製造に好適である。
すなわち、前記近赤外線吸収性繊維よりなる蓄熱性製品は、室内外でも好適に使用することができるものである。
【符号の説明】
【0130】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 近赤外線吸収性繊維
11A、11B 芯部
12A、12B 乃至
20、20A 近赤外線吸収性粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8