(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977798
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20160817BHJP
【FI】
A63B53/04 B
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-230210(P2014-230210)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-128575(P2015-128575A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2014年11月12日
(31)【優先権主張番号】102149290
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】511048409
【氏名又は名称】復盛應用科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(74)【代理人】
【識別番号】100186886
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 嗣畝子
(72)【発明者】
【氏名】利 建良
【審査官】
柴田 和雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−036029(JP,A)
【文献】
特開2002−301553(JP,A)
【文献】
特開平09−322953(JP,A)
【文献】
特表2008−515560(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0079345(US,A1)
【文献】
米国特許第04510987(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一個の坩堝コア(61)、一個の鋳造品コア(62)および一個の連接コア(63)を含む一個のワックスコア(6)を準備し、上記連接コア(63)の一端は上記坩堝コア(61)の環状周面に連接され、上記鋳造品コア(62)は上記連接コア(63)の他端に連接され、上記鋳造品コア(62)は内部が中空のろう殻からなる段階と、
上記ワックスコア(6)の表面において一個の被覆層(7)を形成する段階と、
上記ワックスコア(6)と被覆層(7)に対して加熱してワックスを熔け出す段階と、
上記脱ろうを完成した被覆層(7)を高温で焼結して一個の坩堝部(41)、一個のキャビティー部(42)および一個の連接部(43)を含むシェルモールド(4)を形成し、上記シェルモールド(4)の坩堝部(41)、キャビティー部(42)および連接部(43)を一体に互いに連接し、上記連接部(43)は上記坩堝部(41)とキャビティー部(42)を連通し、上記キャビティー部(42)の内部は一個のキャビティー(421)を含み、上記キャビティー(421)は互いに連通する一個のホーゼル成形ゾーン、一個のフェース板成形ゾーン、一個のヒール部成形ゾーン、一個のソール部成形ゾーンおよび一個のトウ部成形ゾーンを含む段階と、
上記シェルモールド(4)を一個の回転プラットフォーム(3)に位置決めして配置する段階と、
少なくとも一個の金属鋳塊(P)を上記シェルモールド(4)の坩堝部(41)に配置し、真空環境で上記金属鋳塊(P)を金属液体(N)になるように加熱して熔融する段階と、
上記回転プラットフォーム(3)を回転するように駆動することにより、熔融の金属液体(N)を遠心力によって上記キャビティー部(42)のキャビティー(421)に流入して一杯になるように充填する段階と、
熔融の金属液体(N)が冷却し凝固した後、上記回転プラットフォーム(3)の回転速度を停止するまで緩める段階と、
上記金属液体(N)が完全に凝固した後、上記シェルモールド(4)を破壊して一個の鋳造品を取得し、上記鋳造品は一個の鋳造部材を含む段階と、
上記鋳造部材を上記鋳造品から分離させ、少なくとも一個のウッドヘッド鑄造物を取得し、上記ウッドヘッド鋳造物は上記キャビティー(421)に対応して一個のホーゼル、一個のフェース板、一個のヒール部、一個のソール部および一個のトウ部を含み、上記ウッドヘッドの鋳造物の引張強度は1.65×109N/m2(240ksi)〜2.41×109N/m2(350ksi)で、かつ上記ウッドヘッド鋳造物のフェース板にスコアラインの深さを含まない最も薄い肉厚は1.4mm〜1.8mmである段階と
を含むことを特徴とする高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項2】
上記ウッドヘッド鋳造物の伸長率は4%〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項3】
上記ウッドヘッド鋳造物の反発係数は0.822〜0.870であることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項4】
上記鋳造品コア(62)は一個のホーゼル成形部(62a)、一個のフェース板成形部(62b)、一個のヒール部成形部(62c)、一個のソール部成形部(62d)および一個のトウ部成形部(62e)に分けられ、上記ホーゼル成形部(62a)、ヒール部成形部(62c)、ソール部成形部(62d)およびトウ部成形部(62e)は順次に互いに連接し、上記フェース板成形部(62b)は同時に上記ヒール部成形部(62c)、ソール部成形部(62d)およびトウ部成形部(62e)と互いに連接することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項5】
上記鋳造品コア(62)は更に一個のクラウン部成形部(62f)を含み、上記クラウン部成形部(62f)は同時に上記ホーゼル成形部(62a)、フェース板成形部(62b)およびトウ部成形部(62e)と互いに連接し、かつ上記鋳造品コア(62)は上記クラウン部成形部(62f)の部位において一個の開口(621)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項6】
一個のヒーター(5)は上記シェルモールド(4)の坩堝部(41)の外周を取り囲み、真空環境下で上記坩堝部(41)を加熱して温度を上昇させることにより、上記坩堝部(41)中の金属鋳塊(P)を金属液体(N)に溶融することを特徴とする請求項1、2または3に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項7】
上記ヒーター(5)は一個の昇降制御器(L)によって連動されて上昇することにより、上記シェルモールド(4)の坩堝部(41)の外周を取り囲み、金属鋳塊(P)が全て金属液体(N)に熔融された後、上記昇降制御器(L)は再び上記ヒーター(5)を連動して降下することにより、上記ヒーター(5)は上記坩堝部(41)の外周を取り囲まなくなることを特徴とする請求項6に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項8】
上記回転プラットフォーム(3)の回転速度は200rpm〜700rpmで、熔融された金属液体(N)を上記キャビティー部(42)のキャビティー(421)に流入して一杯になるように充填し得ることを特徴とする請求項1、2または3に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項9】
上記回転プラットフォーム(3)は上記シェルモールド(4)の連接部(43)の中の金属液体(N)が冷却して固化するまで10秒〜30秒、200rpm〜700rpmの回転速度を維持し、固化した後上記回転プラットフォーム(3)の回転速度を緩めて停止することを特徴とする請求項8に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項10】
上記回転プラットフォーム(3)が回転を停止した後、上記回転プラットフォーム(3)から上記シェルモールド(4)を取り出し、上記シェルモールド(4)を静置し、金属液体(N)が完全に凝固した後、上記シェルモールド(4)を破壊することを特徴とする請求項9に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【請求項11】
上記回転プラットフォーム(3)が回転を停止した後、上記シェルモールド(4)は直接上記回転プラットフォーム(3)において温度が下がり続け、上記シェルモールド(4)の中の金属液体(N)が完全に凝固した後、上記回転プラットフォーム(3)から取り出して上記シェルモールド(4)を破壊することを特徴とする請求項9に記載の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフウッドヘッドの製造方法に関するもので、特に、薄型のフェース板を有するゴルフウッドヘッドを製造することができる高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、早期のゴルフウッドヘッドの多くはステンレスまたは炭素鋼の材質により製造されていた。近年、ゴルフクラブヘッドの効能性を高めるために各種の新しい鋼の鋳造材料が持続的に開発され、ゴルフウッドヘッドを製造するのに用いられている。例えば、コバルト、モリブデンまたはチタンを含む合金鋼では通常として「高強度(引張強度は1.72×10
9N/m
2(250ksi)より大きい)」特性を有する。仮に、これをゴルフウッドヘッドの製造に応用すると、薄型のゴルフウッドヘッドのフェース板に形成ることによってゴルフウッドヘッドの全体の重量を有効に低く抑えることができるため、ゴルフウッドヘッドの打球の性能を高めるのに役立てることができる。
【0003】
現在、ゴルフウッドヘッドの多くは、大気中で高周波誘導炉(High Frequency Induction Furnace)によって迅速に金属鋳塊を熔融し、それからスラグ生成、ガス抜きなどの精錬段階を経て金属液体中のスラグと気体を除去し、再び静態重力の鋳込みと合わせて行なうものである。
【0004】
しかしながら、ゴルフウッドヘッドの金属鋳塊に大気中の酸素と反応し易い活性金属(例えばコバルト、モリブデン、チタンなど)が常に含まれている場合、金属鋳塊を熔融する過程において酸素と劇烈な酸化反応を生じ易く、そのため、熔融の難度が高まるだけではなく、鋳込みの時に空気と反応して酸化によるクラックを発生して、鋳込みを行った後のゴルフウッドヘッド鋳造物にゴマ点や黒豆状などの外観的な欠陥が生じ、さらに反応気体によってゴルフウッドヘッド鋳造物に大量の屑穴や反応気孔を生じて、ゴルフウッドヘッド鋳造物の引張強度に影響を及ぼすため、ゴルフウッドヘッドのフェース板の肉厚について限制が生じてしまうという問題点があった。
【0005】
すなわち、ゴルフウッドヘッドのフェース板が一定基準の引張強度に到達し、さらに予定される強度および打撃の回数を受けても壊れないように確保するには、現在のところ、一体成形のゴルフウッドヘッドのフェース板の最も薄い肉厚は依然として厚過ぎである。表1は、大気中で重力式鋳込み方式で製造された各種の材質のゴルフウッドヘッドについて、そのフェース板の引張強度と最も薄い肉厚を表す表である。その中、「最薄肉厚」は、フェース板が50m/sの打撃強度で3000回の打撃回数を行っても壊れないフェース板の最も薄い肉厚(スコアラインの深さを含まない)として設定される。
【0006】
【表1】
【0007】
表1から理解されるように、同じ打撃条件に到達するには、各種の材質のゴルフウッドヘッドのフェース板の引張強度と最薄肉厚は高度な関連性を有する。すなわち、フェース板の引張強度が高ければ、最薄肉厚を小さくすることができる。他に、上述した打撃条件で、現在の一体成形のゴルフウッドヘッドのフェース板のスコアラインの、深さを含まない最薄肉厚の平均値は、約2.59mmであり、その内、比較的高い強度(1.65×10
9N/m
2(240ksi)以上)のフェース板については、そのスコアラインの深さを含まない最薄肉厚は少なくとも2.0mm以上でなければならないため、現在のゴルフウッドヘッドでは全体的に重量を低く抑えることが難しいという問題点があった。
【0008】
一方、劇烈な酸化反応によって金属液体のシェルモールド内における流動性が低くなり、鋳込み不足によってゴルフウッドヘッド鋳造物の成形の歩留まりが低くなったり、または冷え止り(Cold Shut)が生じたりすることにより、ゴルフウッドヘッド鋳造物に隙間が生じてしまうため、同様にゴルフウッドヘッドの引張強度に対して影響を及ぼしてしまうという問題があった。
【0009】
また、静態重力式の鋳込み方式でゴルフウッドヘッドを鋳造すると、融液圧入効果を維持するために余分な材料を消耗する必要があり、そのため、ゴルフウッドヘッドの鋳造物の成形性を増やすことにより、融液圧入効果が不足して成形が悪くなってしまうことを避けることができる。しかしながら、それによって余分な材料を用意しなければならず、さらに熔融のためのエネルギーの浪費にもなるため、鋳造コストを下げ難いという要因になってしまう。重力の鋳込み方式の実施例として中華民国公告第I314467号の「ゴルフクラブヘッド」(特許文献1参照)に掲示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中華民国公告第I314467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みて発明されたものであって、その目的とするところは、金属鋳塊の熔融過程において大気と化学反応するのを減らすことにより、鋳造品の引張強度を高めることができ、それによりゴルフウッドヘッドのフェース板を薄肉化を得ることができる高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第二目的は、鋳造品の成形の歩留まりと品質を高めることができる高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第三目的は、融液圧入の効果を維持するための余分な材料を消耗を排除することにより、鋳造コストを低く抑えることができる高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、一個のシェルモールドを一個の回転プラットフォームに位置決めして配置し、上記シェルモールドは一個の坩堝部、一個のキャビティー部および一個の連接部を含み、上記連接部は上記坩堝部とキャビティー部を連通し、上記キャビティー部の内部は一個のキャビティーを含み、上記キャビティーは互いに連通する一個のホーゼル成形ゾーン、一個のフェース板成形ゾーン、一個のヒール部成形ゾーン、一個のソール部成形ゾーンおよび一個のトウ部成形ゾーンを含む段階と、少なくとも一個の金属鋳塊を上記シェルモールドの坩堝部に配置し、真空環境で上記金属鋳塊を金属液体になるように加熱して熔融する段階と、上記回転プラットフォームを回転するように駆動することにより、熔融した金属液体を遠心力によって上記キャビティー部のキャビティーに流入して一杯になるように充填する段階と、熔融した金属液体を冷却して凝固させた後、上記回転プラットフォームの回転速度を停止するまで緩める段階と、上記金属液体が完全に凝固した後、上記シェルモールドを破壊して一個の鋳造品を取得し、上記鋳造品は一個の鋳造部材を含む段階と、上記鋳造部材を上記鋳造品から分離させ、少なくとも一個のウッドヘッド鑄造物を取得し、上記ウッドヘッド鋳造物は上記キャビティーに対応して一個のホーゼル、一個のフェース板、一個のヒール部、一個のソール部および一個のトウ部を含み、上記ウッドヘッドの鋳造物の引張強度は1.65×10
9N/m
2(240ksi)〜2.41×10
9N/m
2(350ksi)で、かつ上記ウッドヘッド鋳造物のフェース板にスコアラインの深さを含まない最も薄い肉厚は1.4mm〜1.8mmである段階とを含む。
【0015】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、上記ウッドヘッド鋳造物の伸長率を4%〜20%にすることもでき、また、上記ウッドヘッド鋳造物の反発係数を0.822〜0.870にすることもできる。
【0016】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法では、上記シェルモールドの成形段階は、一個のワックスコアを準備し、上記ワックスコアに一個の坩堝コア、一個の鋳造品コアおよび一個の連接コアを含み、上記連接コアの一端を上記坩堝コアの環状周面に連接され、上記鋳造品コアは上記連接コアの他端に連接され、上記鋳造品コアは内部が中空のろう殻からなる段階と、上記ワックスコアの表面において一個の被覆層を形成する段階と、上記ワックスコアと被覆層に対して加熱してワックスを熔け出す段階と、上記脱ろうを完成した被覆層を高温で焼結して上記シェルモールドを形成し、上記シェルモールドの坩堝部、キャビティー部および連接部を一体に互いに連接する段階とを含むこともできる。
【0017】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法では、上記鋳造品コアは一個のホーゼル成形部、一個のフェース板成形部、一個のヒール部成形部、一個のソール部成形部および一個のトウ部成形部に分けられ、上記ホーゼル成形部、ヒール部成形部、ソール部成形部およびトウ部成形部は順序に従って互いに連接し、上記フェース板成形部は同時に上記ヒール部成形部、ソール部成形部およびトウ部成形部と互いに連接するように構成することもできる。また、上記鋳造品コアは更に一個のクラウン部成形部を含み、上記クラウン部成形部は同時に上記ホーゼル成形部、フェース板成形部およびトウ部成形部と互いに連接し、かつ上記鋳造品コアは上記クラウン部成形部の部位に一個の開口を設けることもできる。
【0018】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、一個のヒーターが上記シェルモールドの坩堝部の外周に取り囲まれ、真空環境で上記坩堝部を加熱して温度を上昇させることにより、上記坩堝部中の金属鋳塊を金属液体に溶融することもできる。
【0019】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、上記ヒーターが一個の昇降制御器によって連動されて上昇することにより、上記シェルモールドの坩堝部の外周に取り囲まれ、金属鋳塊が全て金属液体に熔融された後、上記昇降制御器は再び上記ヒーターを連動して降下することにより、上記ヒーターは上記坩堝部の外周に取り囲まれなくなることもできる。
【0020】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、上記回転プラットフォームの回転速度が200rpm〜700rpmで、熔融の金属液体を上記キャビティー部のキャビティーに流入して一杯になるように充填し得ることもできる。
【0021】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、上記回転プラットフォームは上記シェルモールドの連接部の中の金属液体が冷却して固化するまで10秒〜30秒、200rpm〜700rpmの回転速度を維持し、固化した後上記回転プラットフォームの回転速度を緩めて停止することもできる。
【0022】
また、本発明による高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法は、上記回転プラットフォームが回転を停止した後、上記回転プラットフォームから上記シェルモールドを取り出し、上記シェルモールドを静置し、金属液体が完全に凝固した後、上記シェルモールドを破壊することもできる。また、上記回転プラットフォームが回転を停止した後、上記シェルモールドは直接上記回転プラットフォームにおいて温度が下がり続け、上記シェルモールドの中の金属液体が完全に凝固した後、上記回転プラットフォームから取り出して上記シェルモールドを破壊するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、金属鋳塊が熔融の過程において大気との化学反応を減らすことにより、鋳造品の引張強度を高めることができるため、ゴルフウッドヘッドのフェース板の薄肉化を得ることができるという利点がある。
【0024】
本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、鋳造品の成形の歩留まりと品質を高めることができるという利点がある。
【0025】
本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、余分に材料を消耗して融液圧入の効果を維持する必要がないため、鋳造のコストを低く抑えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明で使用する真空遠心鋳造装置の構造の説明図である。
【
図2】
図2は、本発明で使用する真空遠心鋳造装置の局部の斜視分解図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例における金属鋳塊が熔融される前の説明図である。
【
図4】
図4は、本発明で使用する真空遠心鋳造装置のシェルモールドのワックスコアの構造の説明図である。
【
図5】
図5は、本発明で使用する真空遠心鋳造装置のシェルモール成形のプロセスの説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例における金属鋳塊が金属液体に熔融される段階の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例における金属液体がキャビティーに導入されて一杯に充填される段階の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、以下、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法において使用する真空遠心鋳造装置の構造の説明図である。
図1を参照すると、真空遠心鋳造装置には一個の真空炉1、一個の回転軸2、一個の回転プラットフォーム3、一個のシェルモールド4および一個のヒーター5が含まれる。回転軸2、回転プラットフォーム3、シェルモールド4およびヒーター5は全て真空炉1の中に設けられる。回転プラットフォーム3は回転軸2と連接し、さらに回転軸2と同期して回転する。シェルモールド4は回転プラットフォーム3に位置決めして配置され、ヒーター5はシェルモールド4に対して加熱を行うのに用いられる。
【0029】
さらに詳しく言えば、真空炉1の内部には一個の収容室11が含まれる。真空炉1には一個のエアダクト12が設けられ、エアダクト12と収容室11は互いに連通する。そして、一個の真空制御器(図示せず)が予定の数値に基づいてエアダクト12を通じて収容室11に対してエアの抽出を行うことにより、収容室11の真空度を制御することができる。この他に、真空炉1には一個の開口13が設けられ、開口13は使用者が収容室11に物品を入れたり取り出したりするのに用いられ、さらに開口13を開閉するための一個のカバー14が設けられる。
【0030】
図2は、本発明において使用する真空遠心鋳造装置の局部の斜視分解図である。
図1、2を参照すると、回転軸2は軸方向で回転自在に真空炉1の収容室11の中に設けられる。本実施例において、回転軸2は一個のモーターMの出力端と互いに連接し、さらにモーターMによって駆動されて回転することができる。また、モーターMは選択的に真空炉1の外部に設けられ、回転軸2の一端は真空炉1から突き出てモーターMと連接する。回転軸2は一個の軸受Bの中に設けられる。軸受Bは真空炉1に連接して位置決めされることにより、回転軸2の回転の安定性を高めるように補助することができるため、回転軸2が回転時に生じる偏り等の現象を防止することができる。
【0031】
その他に、回転軸2が収容室11の中に位置する部分は一個の本体21と一個の回転止め部22とに分けられている。本体21と回転止め部22の半径方向の断面形状は異なり、そして二者の境界において一個の当接部23が形成される。これにより、回転プラットフォーム3は回転止め部22に結合されて当接部23に当接されることにより、回転プラットフォーム3は回転軸2に従って同期して回転するように構成される。本実施例において、本体21の半径方向の断面は円形の態様に形成され、回転止め部22は回転軸2の端部に設けられ、そして回転止め部22の半径方向の断面は円形ではない態様に形成される。回転プラットフォーム3は回転止め部22に嵌設されて結合され、さらに当接部23に当接される。
【0032】
図3は本発明の実施例における金属鋳塊が熔融される前の説明図である。
図2、3を参照すると、回転プラットフォーム3はシェルモールド4を位置決めして配置する器具として用いられる。回転プラットフォーム3には互いに連接する一個の軸接合部31と一個の位置決め部32が設けられる。本実施例において、軸接合部31には一個の貫穿孔311が設けられ、貫穿孔311の半径方向の断面形態は、好ましくは回転軸2の回転止め部22の半径方向の断面形態と互いに対応するように形成される。これにより、回転プラットフォーム3は軸接合部31の貫穿孔311を通じて回転軸2の回転止め部22に嵌合して連接することができる。
【0033】
回転プラットフォーム3の位置決め部32は全体として一個の坩堝位置決め部32aと一個のキャビティー位置決め部32bとに分けられる。坩堝位置決め部32aは軸接合部31とキャビティー位置決め部32bの間に位置され、かつ軸接合部31、坩堝位置決め部32aおよびキャビティー位置決め部32bは回転軸2の半径方向に従って延伸して配列される。また、坩堝位置決め部32aには一個の配置孔321が設けられる。配置孔321はシェルモールド4の一部分をその中に穿設するのに用いられる。キャビティー位置決め部32bには一個の収容溝322が設けられ、シェルモールド4のその他の一部分を収容するのに用いることができる。
【0034】
再び
図2、3を参照すると、シェルモールド4には一個の坩堝部41、一個のキャビティー部42および一個の連接部43が含まれる。坩堝部41は全体として杯状に形成され、かつその内部には一個の収容空間411が形成される。収容空間411は加熱して熔融しようとする金属鋳塊を収容するのに用いることができる。キャビティー部42はゴルフウッドヘッドの部位を成形するのに用いられ、キャビティー部42の外形は特に制限されず、キャビティー部42の内部には少なくとも一個のキャビティー421が含まれることにより、毎回の鋳込み後に少なくとも一個のウッドヘッドの鋳造物を成形することができる。
【0035】
キャビティー421の形態は鋳造成形しようとするゴルフウッドヘッドに対応するように形成され、このウッドヘッドの鋳造物は上蓋(crown)を除いて全て一体成形の鋳造物からなる。即ち、ウッドヘッド鋳造物にはホーゼル部(hosel)、フェース板(face)、ヒール部(heel)、ソール部(sole)およびトウ部(toe)が含まれるため、キャビティー421には互いに対応して連通する一個のホーゼル成形ゾーン、一個のフェース板成形ゾーン、一個のヒール部成形ゾーン、一個のソール部成形ゾーンおよび一個のトウ部成形ゾーンが含まれる。
【0036】
連接部43は管状に形成され、この連接部43の一端は坩堝部41の環状周面に連接され、かつ収容空間411と連通する。連接部43の他端はキャビティー部42と連接してキャビティー421と連通するため、坩堝部41の収容空間411はキャビティー部42のキャビティー421と互いに連通することができる。
【0037】
シェルモールド4の坩堝部41は回転プラットフォーム3の坩堝位置決め部32aに位置決めして配置することができ、シェルモールド4のキャビティー部42は回転プラットフォーム3のキャビティー位置決め部32bに位置決めして配置することができる。シェルモールド4の坩堝部41はキャビティー部42よりさらに回転プラットフォーム3の軸接合部31に隣接するように形成されるため、回転プラットフォーム3が回転する時、坩堝部41の収容空間411に収容された物質は遠心力の作用によってキャビティー部42のキャビティー421の中に流入される。
【0038】
図4は本発明で使用する真空遠心鋳造装置のシェルモールドのワックスコアの構造の説明図で、
図5は本発明で使用する真空遠心鋳造装置のシェルモール成形のプロセスの説明図である。
図4、5を参照すると、シェルモールド4の坩堝部41、連接部43およびキャビティー部42は一体に連接するような形態に形成される。シェルモールド4の成形の段階は、一個のワックスコア6を準備する。ワックスコア6は一個の坩堝コア61、一個の鋳造品コア62および一個の連接コア63を含み、坩堝コア61と連接コア63は固い塊からなり、連接コア63の一端は坩堝コア61の環状周面に連接される。
【0039】
鋳造品コア62は内部が中空のろう殻からなり、鋳造品コア62は連接コア63の他端に連接される。鋳造品コア62は全体として一個のホーゼル成形部62a、一個のフェース板成形部62b、一個のヒール部成形部62c、一個のソール部成形部62dおよび一個のトウ部成形部62eに分けられる。ホーゼル成形部62a、ヒール部成形部62c、ソール部成形部62dおよびトウ部成形部62eは順次に互いに連接する。フェース板成形部62bは同時にヒール部成形部62c、ソール部成形部62dおよびトウ部成形部62eと互いに連接する。
【0040】
この他に、本実施例においては、鋳造品コア62に更に一個のクラウン部成形部62fが含まれる。クラウン部成形部62fは同時にホーゼル成形部62a、フェース板成形部62bおよびトウ部成形部62eと互いに連接し、かつ鋳造品コア62はクラウン部成形部62fの部位において一個の開口621が設けられることにより、最終的に鋳造し終えた鋳造品はクラウン部成形部62fに対応する部位において一個の環状周縁が形成されるため、上蓋によって結合することができる。また、他の実施形態においては、鋳造品コア62には前述した不クラウン部成形部62fを設置せず、鋳造品コア62には更に大きい開口が形成され、かつ最終的に鋳造し終えた鋳造品にも対応するように大きな開口が形成されることにより、スカートを有する上蓋が結合するように用いることができる。
【0041】
また、鋳造品コア62は選択的に任意な部位で連接コア63と連接することができ(即ち、任意な部位を鋳込口とする)、かつ鋳造品コア62が連接コア63に連接する部位は単一ではなく、「鋳造品成形の歩留まりを高めることができる流路の設計」に基づいて対応するように変化させることができることは、本発明に所属する技術分野で通常の知識を有するものには容易に理解できるものである。即ち、本発明の図式では「ホーゼル成形部62aは連接コア63の他端に連接される」と説明されているが、この限りではない。
【0042】
次に、ワックスコア6に対してつけ塗り、砂かけ、砂つけなどのプロセスを行ってワックスコア6の表面に一層の被覆層7を形成させる。そして、ワックスコア6と被覆層7に対して加熱を行うことにより、ワックスが熔け出す。一例を挙げて言えば、ワックスコア6と被覆層7を一緒に一個の蒸氣釜の中に入れて加熱することにより、ワックスコア6は熔けて被覆層7の中から排出される。脱ろうを完成した被覆層7を高温で焼結してシェルモールド4を形成し、さらにシェルモールド4の坩堝部41、連接部43およびキャビティー部42を一体に連接する。
【0043】
また、シェルモールド4の表面層材料は選択的にケイ酸ジルコニウム、酸化イットリウム、安定化ジルコニアまたは酸化アルミニウムなどの耐火材料からなることができる。シェルモールド4の背面層材料は選択的にムル石(3Al
2O
3-2SiO
2)または二酸化ケイ素を耐火材料とすることができる。また、背面層材料は選択的にムル石の混合物からなる場合、その酸化アルミニウムの含有量は好ましくは45%〜60%であり、二酸化ケイ素の含有量は好ましくは55%〜40%である。さらに、背面層材料は選択的に二酸化ケイ素の混合物からなる場合、その二酸化ケイ素の含有量は好ましくは95%以上に達することができる。
【0044】
再び
図1、3を参照すると、ヒーター5は真空炉1の収容室11の中に設けられ、シェルモールド4の坩堝部41に対して加熱を行うのに用いられる。本実施例において、ヒーター5は選択的に一個の高周波コイルからなり、かつ一個の昇降制御器Lによってヒーター5を連動して収容室11の中において移動することができる。シェルモールド4の坩堝部41を加熱しなければならない時、ヒーター5は連動されて一個の予定された位置まで上昇されることにより、坩堝部41の外周を取り囲むように位置され、さらにヒーター5を起動することにより、坩堝部41は加熱されて温度が上昇させる。加熱を終えた後、ヒーター5は昇降制御器Lによって降下するように連動され、ヒーター5は坩堝部41の外周を取り囲まなくなるため、シェルモールド4が回転プラットフォーム3と回転軸2に従って回転して作動することを邪魔してしまうのを避けることができる。
【0045】
上述した真空遠心鋳造装置によれば、本発明においては一種の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法を実施することができ、その方法は全体として下記の段階を含む。
【0046】
再び
図1、2、3を参照すると、一個のシェルモールド4を一個の回転プラットフォーム3に位置決めして配置し、かつ回転プラットフォーム3は軸方向で回転自在な回転軸2に連接される。さらに詳しく言えば、回転プラットフォーム3は一個の真空炉1の中に設けられることにより、シェルモールド4が位置する空間の真空度を制御するのに役立てることができる。
【0047】
この他に、シェルモールド4には互いに連通する一個の坩堝部41、一個のキャビティー部42および一個の連接部43が含まれる。連接部43の両端はそれぞれ坩堝部41およびキャビティー部42と連接することにより、坩堝部41の収容空間411はキャビティー部42のキャビティー421と互いに連通することができる。シェルモールド4は坩堝部41から回転プラットフォーム3の配置孔321の中に穿設され、さらに連接部43は回転プラットフォーム3に当接され、シェルモールド4のキャビティー部42が回転プラットフォーム3の収容溝322に配置される。これにより、シェルモールド4は回転プラットフォーム3の上の予定された位置に安定して位置決めすることができる。
【0048】
さらに、少なくとも一個の金属鋳塊Pをシェルモールド4の坩堝部41の収容空間411の中に配置する。金属鋳塊Pの数が選択的に一個からなる場合、金属鋳塊Pは即ち高強度な合金鋼からなり、かつ金属鋳塊Pの成分の組成は製造しようとするゴルフウッドヘッドの成分組成と一致する。また、金属鋳塊Pの数が選択的に複数個からなる場合、複数個の金属鋳塊Pが熔融された後の金属液体の成分組成は製造しようとするゴルフウッドヘッドの成分組成と一致する。例を挙げると、下記の表2は本発明の製造方法を実施する三種類の高強度な合金鋼(即ち、上記の金属鋳塊P)であるが、これに限定されるものではない。
【0050】
表2から知ることができるように、実施例一〜四には全てコバルト(Co)またはモリブデン(Mo)またはチタン(Ti)を含む鉄系の材料からなり、その鉄の含量は50%より大きく、密度は7.8g/cm
3で引張強度が1.72×10
9N/m
2(250ksi)〜2.41×10
9N/m
2(350ksi)で、高強度(引張強度が1.65×10
9N/m
2(240ksi)より大きい)の特性を有する合金鋼材料に属する。
【0051】
図6は本発明の金属鋳塊が金属液体に熔融された実施例の説明図である。
図1、6を参照すると、真空環境で金属鋳塊Pを金属液体Nになるように加熱して熔融する。さらに詳しく言えば、シェルモールド4を配置して位置決めした後、ヒーター5は連動されて一個の予定された位置まで上昇されることにより、坩堝部41の外周を取り囲むように位置される。また、真空炉1のエアダクト12は収容室11に対してエアの抽出を行うことにより、収容室11の真空度を制御することができる。
【0052】
上記真空度が予定された数値(例えば真空度が0.3hPaより小さい)に達した後、ヒーター5を起動することができるため、シェルモールド4の坩堝部41は加熱されて温度が上昇することにより、坩堝部41の中の金属鋳塊Pは金属液体Nに熔融することができる。また、ヒーター5が作動する時、その電源装置の周波数は例えば4kHz〜30kHzで、電力は5kW〜100kWである。金属鋳塊Pが全て金属液体Nに熔融された後、ヒーター5は作動を停止し、さらに迅速に降下するように連動されることにより、ヒーター5は上記坩堝部41の外周を取り囲まなくなる。
【0053】
図7は本発明の金属液体がキャビティーに導入されて一杯に充填された実施例の説明図である。
図1、7を参照すると、回転軸2を駆動して回転プラットフォーム3を連動して回転させることにより、熔融した金属液体Nを遠心力によってシェルモールド4のキャビティー部42のキャビティー421の中に流入させる。さらに詳しく言えば、回転軸2はモーターMの駆動によって軸方向の回転が生じられ、その回転速度は約200rpm〜700rpmであるため、回転プラットフォーム3を連動して同期に回転することができる。この回転速度は鋳造品の肉厚(すなわちキャビティー421の空間の大きさ)に基づいて調整を行うことができる。
【0054】
回転プラットフォーム3が連動して回転軸2を軸心として回転される時、回転過程において金属液体Nは、遠心力の作用を受けてシェルモールド4の坩堝部41の内側壁面に沿って、連接部43を通過してキャビティー部42のキャビティー421の中に流入して鋳込み作業が行われ、さらに金属液体Nが一杯になるようにキャビティー421を充填することができる。
【0055】
鋳込みを完成した後、回転軸2は引き続き上記回転プラットフォーム3が回転するように連動する。本実施例において、例えば回転プラットフォーム3は鋳込口の部位(全体シェルモールド4の連接部43の内部)の金属液体Nが冷却して固化するまで10秒〜30秒、200rpm〜700rpmの回転速度を維持し、固化した後、回転プラットフォーム3の回転速度を緩めて停止することができる。これにより、本発明では金属液体Nが冷却して固化する成形の過程において、遠心力によって融液圧入を提供するという効果を続けることにより、ウッドヘッド鋳造物の成形性を増やすことができる。
【0056】
熔融された金属液体Nが完全に凝固した後、シェルモールド4を破壊して鋳造品を取得することができる。その内、選択的に回転プラットフォーム3が回転を停止した後、回転プラットフォーム3からシェルモールド4を取り出し、シェルモールド4を静置し、金属液体Nが完全に凝固した後、シェルモールド4を破壊することができる。このようにして、シェルモールド4が温度を下げる過程において、同時にもう一個のシェルモールド4の鋳込みを行なうことができるため、製造効率のアップに役立つことができる。また、選択的に回転プラットフォーム3が回転を停止した後、シェルモールド4は直接回転プラットフォーム3において温度が下がり続け、シェルモールド4の中の金属液体Nが完全に凝固した後、回転プラットフォーム3から取り出してシェルモールド4を破壊することにより、キャビティー421の中の金属液体Nは外から内へ均一な降温を維持することができる。
【0057】
また、上記の鋳造品には一個の鋳造部材が含まれ、鋳造部材を鋳造品から分離させることにより(例えば、刃具で切断したり、または振動による断裂を利用して分離させたりする)、少なくとも一個のウッドヘッドの鋳造物を取得する。このウッドヘッド鋳造物はキャビティー421に対応して一個のホーゼル、一個のフェース板、一個のヒール部、一個のソール部および一個のトウ部が含まれる。
【0058】
上記のウッドヘッドの鋳造物の引張強度は約1.65×10
9N/m
2(240ksi)〜2.41×10
9N/m
2(350ksi)、伸長率は4%〜20%、反発係数は約0.822〜0.870であり、かつ50m/sの打撃強度で3000回の打撃回数を行った時、ウッドヘッドのフェース板のスコアラインの深さを含まない最も薄い肉厚は約1.4mm〜1.8mm位に達することができるため、ウッドヘッド全体の重量を減らすのに役立つできるとともに、そのフェース板を軽量化することができる。また、上記のウッドヘッドのフェース板は同じ肉厚または異なる肉厚の形態に形成することができるため、本発明においては制限を設けない。また、フェース板が異なる肉厚の形態に形成される場合、上記の「最も薄い肉厚は1.4mmから1.8mm」は、フェース板における最も薄い部位の肉厚を指すものであるため、フェース板にける比較的厚い部位の肉厚は1.8mmを超えることができる。
【0059】
上述したように、本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、殆ど真空の環境下で鋳造を行うことにより、金属鋳塊Pが熔融過程において大気との化学反応を起こすことを減らすことができるため、金属鋳塊Pは比較的スムースかつ均一に熔融することができ、また、金属液体Nがシェルモールド4の坩堝部41からキャビティー部42に流れ込む過程において空気と反応することにより、酸化によるクラックが生じるのを避けることができ、製造されるウッドヘッド鋳造物においてゴマ状や黒豆状などの外観的な欠陥は生じ難くなり、さらに反応気体によって大量な屑穴または反応気孔などの鋳造上の欠点も生じ易く難くなるため、ウッドヘッド鋳造物の引張強度を高めることができる。
【0060】
一方、金属液体Nと大気の化学反応を減らすことにより、金属液体Nがシェルモールド4の中における流動性を高めることもでき、さらに本発明では熔融の金属液体Nが再び凝固する前に、遠心力を利用して金属液体Nを確実にシェルモールド4のキャビティー421に鋳込んで充填することにより、一部分の金属液体Nが坩堝部41の中に凝固して凝固殻になってしまう金属鋳塊の浪費を避けることができるだけではなく、金属液体Nがシェルモールド4のキャビティー部42に流れ込んだ後、キャビティー部42を十分に充満するように充填することができるため、ウッドヘッド鋳造物の成形歩留まりを高めることができる。さらに、冷え止りが生じることによってウッドヘッド鋳造物に隙間が生じる確率を低く抑えることができ、ウッドヘッド鋳造物の引張強度を高めることができる。
【0061】
このように、本発明によれば、高強度の特性を有するウッドヘッドを製造することができ、さらに後続において上蓋と結合して研磨の加工を終えた後、高強度鋼のゴルフウッドヘッドの完成品を製造することができる。また、高強度鋼の鋳塊を使用し、真空遠心鋳造の技術と合せて使用することにより、高強度鋼のゴルフウッドヘッドのフェース板の肉厚を有効に薄肉化にすることができ、そして例え上記高強度鋼のゴルフウッドヘッドは最も薄い肉厚が約1.4mm〜1.8mm位の薄型フェース板を有しても、依然としてそのフェース板は高強度かつ良好な伸長率を有するように確保することができるため、上記フェース板の打撃に耐える回数を高めることができ、さらに上記高強度のゴルフウッドヘッドは高い反発係数などの良好な打球性能を有するだけではなく、その使用寿命を延ばすことができる。
【0062】
総合すると、本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、金属鋳塊が熔融の過程において大気と化学反応するのを減らすことにより、鋳造品の引張強度を高めることができるため、ゴルフウッドヘッドのフェース板を薄肉化を得ることができる。
【0063】
また、本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、鋳造品の成形の歩留まりと品質を高めることができる。
【0064】
本発明の高強度鋼のゴルフウッドヘッドの製造方法によれば、遠心の鋳込みによって金属液体が固化成形の過程において、遠心力によって引き続き融液圧入の効果を提供することができるため、余分に材料を消耗して融液圧入の効果を維持する必要がないため、鋳造のコストを低く抑えるのに役立つことができる。
【0065】
本発明は、その精神および必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。従って、本明細書に記載した好ましい実施形態は例示のなものであり、限定を意図するものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 真空炉
11 収容室
12 エアダクト
13 開口
14 カバー
2 回転軸
21 本体
22 回転止め部
23 当接部
3 回転プラットフォーム
31 軸接合部
311 貫穿孔
32 位置決め部
32a 坩堝位置決め部
32b キャビティー位置決め部
321 配置孔
322 収容溝
4 シェルモールド
41 坩堝部
411 収容空間
42 キャビティー部
421 キャビティー
43 連接部
5 ヒーター
6 ワックスコア
61 坩堝コア
62 鋳造品コア
62a ホーゼル成形部
62b フェース板成形部
62c ヒール部成形部
62d ソール部成形部
62e トウ部成形部
62f クラウン部成形部
621 開口
63 連接コア
7 被覆層
M モーター
B 軸受
L 昇降制御器
P 金属鋳塊
N 金属液体