【実施例】
【0038】
以下の非限定的な実施例は、当業者に本発明の実施形態の範囲内で状態を治療するための特異的な好ましい方法を提供するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0039】
実施例1‐慢性片頭痛に関連する頭痛のためのA型ボツリヌス毒素療法
同様に設計した多施設無作為化プラセボ対照第3相試験において、CMに罹患する1384人の成人をオナボツリヌス毒素A(onabotulinumtoxin A)(A型ボツリヌス毒素)(n=688)またはプラセボ(n=696)に無作為に割り付けた。両方の試験とも、28日間のベースラインスクリーニング期間(これ以降、ベースラインと称される)、24週間の二重盲検(DB)相(2回の注射サイクル)、および32週間の非盲検(OL)相(3回の治療サイクル)からなっていた。治験のための来院は4週間ごとに発生し、患者は、頭痛の症状および急性期鎮痛薬について報告するために、毎日、電話日記を使用した。参加者は、「複雑型片頭痛」を例外として、1ヶ月に15日以上頭痛が起こり、頭痛の日の少なくとも50%が片頭痛日または片頭痛の疑いのある日である、ICHD−II(2004)セクション1「片頭痛」に列挙される診断基準を満たす片頭痛の病歴のある18〜65才の年齢の男性または女性であった。
【0040】
A型ボツリヌス毒素は、疼痛の発生に関連する神経伝達物質の放出をブロックする。前臨床試験および臨床試験によって確認されたように、推定される頭痛予防のための機構は、中枢神経系への末梢シグナルをブロックし、中枢感作を阻害することによるものである。本明細書に開示される固定部位アプローチは、V1およびC2神経の神経支配分布における筋肉および皮膚へのA型ボツリヌス毒素の分布を標的とする。
【0041】
以前の治験で調査した投与パラダイムの安全性、忍容性、および有効性の分析に基づいて、本発明の注射パラダイムを開発した。この実施例で用いた特定のボツリヌス神経毒は、オナボツリヌス毒素A(BOTOX(登録商標)Allergan Inc.、Irvine CA)であった。注射標的は、以下の筋肉を含んでいた:
【0042】
前頭筋、皺眉筋、および鼻根筋:以前の治験において、患者は、頭痛の開始点および終了点として前頭/眉間領域を最も頻繁に報告した:これらおよび他の治験により、最大有効性のためには、3つ全ての筋肉への注射が必要であることが示された。
【0043】
側頭筋:以前の治験において、側頭筋領域は、頭痛が開始および終了すると2番目に頻繁に言及された位置であった。本開示の一態様に従って、合計で片側につき20単位の最低用量から追加の10単位までを(疼痛に沿ったストラテジー)この筋肉に投与した(5単位ずつ増分して片側または両側に投与)。
【0044】
頸部傍脊柱筋:以前の治験において、患者は、頭痛が後頭部(後頭筋および/または頸部)で頻繁に開始および/または終了すると指摘した。有効性を維持し、全体的な忍容性(頸部疼痛、頸部硬直、および頸部筋力低下の発生率低下)を向上するために、一態様において、本発明の注射パラダイムは、(a)頭蓋底の頸上部(頸部傍脊柱筋)に注射をすること、(b)頸部領域には疼痛に沿った注射法を用いないこと、(c)注射を表面に維持すること、および(d)固定部位で頸部領域に注射する合計用量を減少させること(この筋肉群には合計20単位の固定用量)(頭部の各側に10単位ずつ)の推奨を含む。その結果、以前の試験の10人と比較して、今回は1人の患者のみがソフトカラーを使用する必要があったことから、この用量の調節は良好および安全であることが示された。
【0045】
後頭筋:以前の治験において、後頭筋は、疼痛が3番目に頻繁に報告された位置であった。疼痛に沿ったストラテジーを研究した以前の試験において、後頭筋の用量は20単位(片側につき10単位)に固定されたのに対し、別の試験においてこの筋肉に許容された最高用量は30単位(片側につき15単位)であった。頸部に投与される合計用量を減少させ、そうすることで有効性を確保するのに十分な「後頭部」への用量が確実に存在するように、後頭筋に投与される最低用量は30単位(片側につき15単位)であった:頸部脱力のリスクを減少させるために、注射部位は、後頭隆起部の上方に標準化および位置決めした。任意選択的な10単位までの追加の疼痛に沿った投薬を許容した。
【0046】
僧帽筋:以前の治験において、約20%〜30%の患者が、僧帽筋で頭痛が開始および/または終了したと報告した。この筋肉群では疼痛に沿った任意選択的な注射が頻繁に行われた。一般的な安全性の問題ではないが、より高い用量では腕(肩)の疼痛の発生率が増加したため、僧帽筋に対する好ましい投与計画を最低用量30単位(片側に15単位)に標準化し、臨床的に必要な場合は、最大用量50単位までの任意選択的な疼痛に沿った注射を許容することを決定した。
【0047】
咬筋:驚くべきことに、咬筋への注射は片頭痛の治療に役立たなかったため、咬筋は、本パラダイムの注射の標的筋肉群として含まなかった。
【0048】
以前の治験の一態様において、評価した注射サイクル当たりの最も高い合計用量は260単位、最も低い用量は105単位であった(治験1)のに対し、第2の治験の用量群は、225単位、150単位、および75単位を含んでいた。この治験において忍容性のために用量反応を評価する際に、有効性および忍容性を最大化するために最適な合計用量は、>150〜<200単位の範囲内であると決定された。
【0049】
本実施例において、被験者をオナボツリヌス毒素A(BOTOX(登録商標))(155単位)またはプラセボに盲検様式で無作為化し(1:1)、7つの特定の頭/頸部筋肉領域(前頭筋、皺眉筋、鼻根筋、側頭筋、後頭筋、頸部傍脊柱筋、および僧帽筋)にわたる31固定部位に、固定用量の筋肉内(IM)注射として投与した(
図17):前頭筋†20単位(片側に2部位:合計4部位)、皺眉筋†10単位(片側に1部位:合計2部位)、鼻根筋5単位(1部位)、後頭筋†30単位(片側に3部位:合計6部位)、側頭筋†40単位(片側に4部位:合計8部位)、僧帽筋†30単位(片側に3部位:合計6部位)、頸部傍脊柱筋†20単位(片側に2部位:合計4部位)。合計用量範囲:155単位。各IM注射部位=0.1mL=5Uのオナボツリヌス毒素A(BOTOX(登録商標))。(†両側に分配された用量)
【0050】
プロトコルによって定義される疼痛に沿ったパラダイムを使用して、3つの筋肉群(後頭筋、側頭筋、または僧帽筋、合計8部位)の間で40単位までの追加のオナボツリヌス毒素Aまたはプラセボが投与することができた(
図17)。最大用量は、39部位で195単位であった。注射サイクル当たりの用量範囲は、5回のサイクルの間、12週ごとに155単位〜195単位までであった。
【0051】
この実施例を実行するにあたり、医療従事者は、以下に従って指示を与えられた:用量/投与:各100単位バイアルのオナボツリヌス毒素A(BOTOX(登録商標))またはプラセボを、保存剤を含まない通常の生理食塩水2mLで希釈し、5単位/0.1mLの濃度を得た。155単位〜195単位の用量またはプラセボを、部位当たり0.1mL(5単位)の注射液として、滅菌した30ゲージの0.5インチ針(ルアーロックを含む)を使用して筋肉内に投与した。厚みのある頸部筋肉を有する患者の場合、医師の判断により、頸部領域内に1インチ針を許容した。オナボツリヌス毒素Aの投与に関するガイドラインは、以下の通りであった:治療薬の投与中は手袋を着用すること;注射前には、筋肉内注射のための標準的技法に従って(例えば、アルコールを用いて)皮膚を洗浄すること;針は、約45度の角度で面取り部を上にして筋肉内に挿入すること;トルクおよび血液の逆流をそれぞれ防止するために、一旦挿入したら、針のハブを片手で保持し、他方の手でプランジャをやや引き戻すこと。血液が逆流した場合、針を筋肉内に再度挿入すること;各側に0.1mL(5単位)を投与するためにプランジャを押すべきであること。
【0052】
以下は、本開示に従ったボツリヌス毒素の投与のために有用な注射の順序の一例である。解剖学的注射部位は、三叉神経第一枝および第二頸神経によって支配される分布および領域に従うものとする。
【0053】
例示的なパラダイムにおいて、医療従事者は、注射前に各筋肉(適切である場合は両側)を触診して筋肉描写を確認し、筋肉の圧通および/または追加の治療を必要とする疼痛の存在を確認する。皺眉筋(注射2回、片側につき1回)、鼻根筋(中線に注射1回)、前頭筋(注射4回、片側につき2回)、および側頭筋(注射8回、片側につき4回)にこの順序で注射する場合、患者は仰臥位であった(
図17)。後頭筋(注射6回、片側につき3回)、頸部傍脊柱筋(注射4回、片側につき2)、および僧帽筋(注射6回、片側につき3)にこの順序で注射する場合、患者は座位であった(
図17)。必要に応じて、任意選択的な疼痛に沿ったパラダイムを使用した側頭筋、後頭筋、および僧帽筋への追加の注射を許容した(
図17)。
【0054】
投与後は、治療後10〜15分間患者を観察し、24時間は患部を擦らないようにまたはマッサージしないよう患者に指示し、額に顕れるいずれの隆起も約2時間以内に消滅するはずであることを通知した。患者に、破綻的頭痛の場合は急性期鎮痛薬を使用する必要があるかもしれないことおよび使用するべきであること、4週間隔で再度来院すること、ならびに頭痛日記をつけることを助言した。
【0055】
プール解析は、二重盲検相の全ての時点で、24週目の頭痛日頻度のベースラインからの変化におけるプールした主要エンドポイントを含む複数の頭痛症状の指標にわたって、プラセボよりも本明細書に開示される155〜195単位の用量に有利な統計的有意差を示した(−8.4オナボツリヌス毒素A/−6.6プラセボ、p<0.001)
【0056】
本明細書に開示されるあらゆる特徴およびそのような特徴の2つ以上のあらゆる組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。
【0057】
実施例2−頭痛および薬物乱用頭痛障害の疑いに対するA型ボツリヌス毒素療法
【0058】
頭痛を訴えており、疼痛を制御するために頻繁に麻薬およびトリプタン等の急性期鎮痛薬を服用していた患者について臨床試験を実施した。0日目、90日目、および180日目に、ボツリヌス毒素(BOTOX(登録商標))を患者に投与した。3回の注射セッションの各々で、BOTOX(登録商標)を平均20回の別個の注射で各患者に筋肉内投与した。BOTOX(登録商標)は、7つまでの異なる筋肉に投与した。
【0059】
3回の注射セッションの各々で、105〜260単位のBOTOX(登録商標)を各患者に投与した。患者は、(a)そのような患者が経験する頭痛の回数(
図1)および(b)これらの患者の急性期頭痛薬の日常的使用(
図2)の両方の減少を経験したことが分かった。具体的には、ボツリヌス毒素は、これらの患者による麻薬性鎮痛剤の使用を減少させることができることが分かった(
図3)。
【0060】
また、疼痛緩和剤を乱用していた患者において、ボツリヌス毒素の使用が、そのような薬物の使用の著しい減少をもたらしたことも分かった(
図4を参照)。また、乱用患者におけるトリプタン薬の摂取に著しい減少が見られたことも分かった(
図5)。したがって、この臨床試験は、驚くべきことに、薬物乱用頭痛障害(MOU)を治療するためにボツリヌス毒素を使用できることを示した(
図6を参照)。
【0061】
また本試験は、いかなる薬物乱用の問題にも関わらず、同時頭痛予防治療を使用していた患者において、ボツリヌス毒素がより効果的であったことも実証した(
図7を参照)。
【0062】
さらに、同試験は、同時頭痛予防治療を使用せずに薬物を乱用していた患者において、ボツリヌス毒素がより効果的であったことを示した(
図8および9を参照)。このことは、患者がボツリヌス毒素単独療法による治療を受けているか、または患者が他の頭痛予防薬を用いて頭痛を治療されているかという事実を考慮することなく、急性期薬物を乱用する患者の頭痛を治療するためにボツリヌス毒素を使用することができるという我々の発見に加えての発見である。
【0063】
さらに、患者の急性期薬物の使用(乱用ではなく、あらゆる使用)に関して、本試験は、ボツリヌス毒素を用いた頭痛の治療が、これらの患者による麻薬の使用に著しい減少をもたらしたことを示した(例えば、
図10の210日目を参照)。
【0064】
最後に、また有意に、本試験は、ベースラインでトリプタン頭痛薬を乱用していた患者において、ボツリヌス毒素を用いた治療後に、トリプタン薬を乱用していなかった患者と比較して、頭痛頻度および急性期鎮痛薬を必要とした日数に大きな減少が見られたことも示した(
図11および12を参照)。これは、ボツリヌス毒素と併用した場合に、トリプタンがより効果的であることを示唆するものである。したがって、頭痛を治療するためにトリプタンの有効性を高めるための方法は、頭痛を治療するためにトリプタンとボツリヌス毒素を同時に使用することによって実施することができる。
【0065】
臨床的に、トリプタン薬の乱用は、通常のトリプタン使用によってもたらされ得る頭痛の緩和とは反対に、実際には頭痛の原因となるか、または頭痛を悪化させると考えられる。したがって、
図11および12によって示されるように、ボツリヌス毒素の投与が、頭痛を有する患者集団において、頭痛、より頻繁な頭痛、またはトリプタン薬乱用による頭痛を防止するのに役立つことを見出したことは、驚くべき発見であった。この発見は、ボツリヌス毒素投与後に、トリプタンMOU患者がより少ないトリプタン薬を必要としたことを示す試験結果および患者観察によって裏付けられる。
【0066】
実施例3−慢性頭痛のためのA型ボツリヌス毒素療法
【0067】
この試験では、成人の慢性連日性頭痛集団の頭痛予防におけるBOTOX(登録商標)の潜在的な利益を評価した。慢性連日性頭痛または慢性のほぼ連日性の頭痛という用語は、器質性または全身性疾患とは関係のない非常に頻度の高い頭痛(1ヶ月に16以上の頭痛日)を指して使用されてきた(Silberstein and Lipton、2001)。この試験に登録するための重要な要件は、病歴によると1ヶ月当たり≧16頭痛日のある、ベースラインの間に電子日記によって確認された原発性頭痛障害であった。頭痛疾患は、突発性/慢性の緊張型頭痛、前兆を伴うかまはた伴わない片頭痛、および/または片頭痛様頭痛の任意の組み合わせを含み得る(IHS基準によって定義される[Headache Classification Subcommittee of the IHS,1988,revised 2004]、および/またはSilberstein and Lipton,2001によって定義されるような慢性連日性頭痛)。
【0068】
慢性片頭痛集団における頭痛の予防的治療のために、Botox(登録商標)の複数回治療の多施設二重盲検無作為化プラセボ対照並行群を用いて試験を行った。各患者の試験の全期間は、11ヶ月であった。−60日目(ベースライン期間)に患者をスクリーニングした。この期間中、電子電話日記を使用して、30日間の頭痛発現の特定の特徴および頭痛薬使用について、毎日患者からデータを収集した。ベースライン期間後、患者は、プラセボ導入期間のために−30日目に再来院した(治療1)。この来院では、組み入れ/除外基準を満たす患者に一重盲検プラセボを注射し、再度、電子日記を使用して30日間の頭痛発現の特定の特徴を記録した。疼痛の位置および重症度に応じて、最低6つの筋肉領域、およびそれらの領域内の23〜58ヶ所の注射部位に治療1の注射を行った。治験責任医師は、患者が咬筋に疼痛を経験していた場合、該筋肉に注射を行う選択肢も有していた。
【0069】
30日後(0日目)、患者は、治療2のために無作為化されるべく再来院した。無作為化の前に、プラセボ導入期間に収集された日記の情報を使用して、頭痛日が<16であるか、または頭痛日の頻度がベースラインから≧30%減少した場合に、その患者をプラセボ応答者として分類した。全ての他の患者は、プラセボ非応答者であると見なした。0日目にBOTOX(登録商標)またはプラセボのいずれかを投与されるように各層の患者(応答者、非応答者)を無作為化した。
【0070】
患者は、90日目(治療3)および180日目(治療4)に追加の治療を受けた。患者は、270日目まで、各治療後30日間隔で経過観察のために来院した。患者が270日目前のいずれかの来院時に試験を終了した場合、その来院時に全ての終了手順および評価が完結するものとした。治療2、3、および4では、治療1と同じ筋肉領域および部位に同じ用量および体積を使用して、患者にBOTOX(登録商標)またはプラセボを注射した。治験のための来院および測定のスケジュールを表2に示す。
【0071】
調査者および患者の偏りを最小限に抑えるために、試験を無作為化および二重盲検化した。治験薬のバイアルの外見の類似性によって、また他の試験に関与しない各試験機関の個人に、治験薬を再構成し、注射のために注射液に充填するよう要求することによって、盲検を確実にした。プラセボ対照並行群設計により、他の試験設計に固有の交絡効果の可能性を排除した。
【0072】
突発性片頭痛集団における以前の臨床試験で用いられた固定部位/固定用量治療アプローチとは対照的に、この試験に参加する医師は、患者の頭痛の位置に応じて、より個別化されたまたは患者に合わせた治療アプローチを用いることを許容された。具体的には、医師は、患者の頭痛の位置および重症度に応じて、頭部および頸部の特定の前部および後部筋肉領域に投与されるべくプロトコルによって指定された範囲内で、注射部位の数および用量を決定する機会を与えられた。より大きな後部頭蓋骨膜および頸部筋肉の注射の追加に起因して、この試験で許容された最大用量レベルは、以前の試験で用いられたものよりも高かった。
【0073】
以前の試験で見られた高いプラセボ反応率のために、本発明の試験にプラセボ導入期間を履行し、2つの群(プラセボ応答者およびプラセボ非応答者)に患者を層別化した。プラセボ導入期間中、患者にはBOTOX(登録商標)またはプラセボを注射するかどうかを知らせなかった。さらに、3回の二重盲検治療サイクルを含むように試験プロトコルを修正した。
【0074】
有効性基準は以下の通りであった。主要変数については、180日目の1ヶ月当たりの無頭痛日の頻度のベースラインからの平均変化におけるBOTOX(登録商標)とプラセボとの間の3無頭痛日の差を臨床的に有意であると見なした。
・この試験に登録した全ての患者は、少なくとも以下の組み入れ基準を満たしていた:18〜65歳の男性または女性。
・前兆を伴うかまはた伴わない片頭痛、突発性/慢性の緊張型頭痛、および/または片頭痛様頭痛(1988 IHS基準によって定義される)(Headache Classification Subcommittee of the IHS,1988)の任意の組み合わせを含み得る、病歴によると1ヶ月当たり≧16頭痛日がある、ベースラインの間に日記によって確認された、原発性頭痛障害。
・書面によるインフォームドコンセントを提出する意志があり、そうできること。
・病状が安定していること。
・−60日目直前の少なくとも3か月間の安定した慢性投薬(もしあれば、非急性の予防的片頭痛薬を含む)
・試験の過程において現在の投薬を続ける意志があり、そうできること。
・試験の全過程を終了する意志および日記電話システムを含む試験の指示に従う意志があり、そうできること。
【0075】
投与量が固定された後頭筋を除いて、各筋肉領域に注射される単位の用量範囲を定義した。各特定の筋肉領域(6〜7筋肉領域)内の注射部位の数(合計23〜58ヶ所の注射部位)および注射される用量(105U〜260U)は、特定の筋肉領域における疼痛分布パターンおよび疼痛の重症度に基づいて医師が決定した。表1および
図13に示されるように、患者は、前頭/眉間の筋肉、後頭筋、側頭筋、半棘筋、頭板状筋、および僧帽筋を含む最低6つの筋肉領域に注射されることとした。咬筋への注射は任意選択であった。治療1、2、3、および4と同じ筋肉領域ならびに部位に同じ用量を患者に注射した。可能な限りいつでも、各患者に対する治療は、試験を通して同じ医師が行った。
【0076】
表1−治験薬の用量および注射部位
【表1】
【0077】
BOTOX(登録商標)の各バイアルは、防腐剤を含まない滅菌真空乾燥形態で、100UのA型ボツリヌス毒素、0.5mgのアルブミン(ヒト)、および0.9mgの塩化ナトリウムを含んでいた。プラセボの各バイアルは、防腐剤を含まない滅菌真空乾燥形態で0.9mgの塩化ナトリウムを含んでいた。バイアルは、使用前に−20℃〜−5℃で冷凍庫内に保存した。希釈剤である0.9%無菌食塩水(防腐剤を含まない)を用いた注射用の再構成のための指示をプロトコル中に提供した。
【0078】
以前の試験で用いられた固定部位/固定用量治療アプローチとは対照的に、この試験では、医師は、より個別化されたまたは患者に合わせた治療アプローチを用いることを許容された。具体的には、各特定の筋肉領域(6〜7筋肉領域)内の注射部位の数(23〜58注射部位)および注射される用量(合計用量105〜260U)は、特定の筋肉領域における患者の通常の疼痛分布パターンおよび疼痛の重症度に基づいて医師が決定した。
【0079】
試験の経過中、合計で3回の治療サイクル(プラセボの導入後)を含むようにプロトコルを修正し、プラセボ非応答者層において主要エンドポイントを180日目に変更した。これらの修正が導入されるまでに、計画した120日目の時点で相当数の被験者が最初の試験を終了した。したがって、少なくとも90人のプラセボ非応答患者(治療群当たり45人)が第180日目の分析に確実に利用できるよう、登録を延長した。
【0080】
あらゆる併用薬(例えば、処方薬または植物性の生薬を含む市販薬)を、その薬物を服用した理由とともに患者のCRFに記録した。また、患者が−60日目の7日前以降に頭痛の治療のために服用した薬物も、適切な薬物CRFに記録した。試験中、患者は、電子電話日記を使用して、頭痛の治療のためのあらゆる併用薬物の使用を報告することとした。
【0081】
併用療法を受けていた患者は、特に、非急性の予防的片頭痛薬の使用に関して、試験中、安定した用量および投与計画を維持することとした。患者の福祉のために必要であると見なされた薬物は、調査者の判断で与えることができた。全ての薬物の投与は、CRFに報告することとした。
【0082】
有効性指標
【0083】
患者は、頭痛の開始/終了時刻、頭痛の最大および平均重症度、頭痛の位置と種類、身体的活動に対する影響、前兆の存在、頭痛に関連する症状(悪心、嘔吐、羞明/音声恐怖)の存在、ならびに使用した頭痛薬および用量を記録した。主要有効性指標は、30日間における無頭痛日の頻度のベースラインからの変化であった。有効性の判定のための初回来院は180日目であり、評価は、前述の30日間を反映するものであった。有効性指標のベースラインは、スクリーニング期間の最初の30日間の無頭痛日の頻度として定義した。180日目の30日間当たりの無頭痛日の頻度のベースラインからの平均変化におけるBOTOX(登録商標)とプラセボとの間の3無頭痛日の差を、臨床的に有意であると見なした。
【0084】
副次的有効性指標は、180日目の30日間当たりの頭痛日の頻度のベースラインから50%以上の減少が見られた患者の比率であった。他の有効性変数は、以下を含んでいた:
・30日間当たりの頭痛頻度のベースラインから50%以上の減少が見られた患者の比率
・あらゆる重症度の頭痛の頻度(30日間当たり)
・あらゆる重症度の片頭痛の頻度(30日間当たり)
・30日間当たりの片頭痛の頻度のベースラインから50%以上の減少が見られた患者の比率
・30日間当たりの片頭痛のベースラインから2以上の減少が見られた患者の比率
・中程度から重度の片頭痛の頻度(30日間当たり)
・ベースラインからの治療に対する患者の応答の全体的評価は以下の通りである:
−4 = 非常に顕著な悪化(約100%またはそれより高い悪化)
−3 = 顕著な悪化(約75%の悪化)
−2 = 中程度の悪化(約50%の悪化)
−1 = 軽度の悪化(約25%の悪化)
0 = 変化無し
+1 = 軽度の改善(約25%の改善)
+2 = 中程度の改善(約50%の改善)
+3 = 顕著な改善(約75%の改善)
+4 = 兆候および症状の解消(約100%の改善)
・30日間当たりの非片頭痛性頭痛の日数
・最大および平均頭痛重症度(無し、経度、中程度、重度)
・試験中に急性期頭痛薬を使用した日数、および
・試験中に急性期頭痛薬を使用した(服用)回数。
【0085】
評価スケジュール
【0086】
治験のための来院および測定の頻度およびタイミングを下の表2にまとめた。
【0087】
表2−評価スケジュール
【表2-1】
【表2-2】
【0088】
主要有効性変数は、30日のベースライン期間(−60日目〜−31日目)からの無頭痛日の頻度の変化であった。各30日間における無頭痛日は、電子電話日記に記録されたデータから決定した。日記に記録されたデータは、頭痛開始日および時間ならびに頭痛終了日および時間、そして以下の頭痛の特徴を含んでいた:通常の頭痛(軽度、中程度、重度)、最悪の頭痛(軽度、中程度、重度)、頭痛のあった側(片側/両側)、疼痛の種類(脈動性/拍動性または圧迫される/締め付けられる)、および身体活動が疼痛に与える影響(悪化、悪化せず)。また、データは、以下の頭痛症状も含んでいた:前兆(有りまたは無し)、活動の妨害(有りまたは無し)、および他の症状(悪心、嘔吐、光に対する感受性[羞明]、雑音に対する感受性[音声恐怖])。日記データは、頭痛のために服用した急性期薬物(有りまたは無し)ならびに薬物の名称および用量も含んでいた。
【0089】
−60日目〜−30日目のベースライン期間にわたってスクリーニングおよび評価した571人の患者のうち、355人を0日目に登録/無作為化した。導入期間終了時(0日目)に、279人の患者をプラセボ非応答者として、76人の患者をプラセボ応答者として分類した。続いて、BOTOX(登録商標)またはプラセボ治療のいずれかを受けるように、患者を各層(プラセボ非応答者およびプラセボ応答者)内で無作為化した。プラセボ非応答者層内では、134人の患者にBOTOX(登録商標)を投与し、145人の患者にプラセボを投与した。プラセボ応答者層内では、39人の患者にBOTOX(登録商標)を投与し、37人の患者にプラセボを投与した。無作為化後の治療を1回のみ必要とする最初のプロトコルを完了した132人の患者を含む、合計76.9%の患者(273/355人)が試験を完了した。初期に中断した患者(22.8%[81/355人])のうち、有効性の欠如が5.1%(18/355人)、有害事象が1.4%(5/355人)、試験の指示に従うことができなかった患者が0.3%(1/355人)、個人的理由が1.1%(4/355人)、および追跡不能が2.8%(10/355人)であった。
【0090】
人口学的特性に治療群間で有意差は見られなかった。全体として、患者の年齢は19〜65歳であり(平均年齢43.5歳)、84.5%(300/355人)が女性であり、87.9%(312/355人)が白人であった。
【0091】
ベースライン特性に治療群間で有意差は見られなかった(表3)。
【0092】
表3−ベースライン特性(治療を受けた集団ごと)
【表3】
【0093】
ベースラインで患者によって報告された病歴的に頭痛が開始および終了する最も一般的な位置を表4に示す。
【0094】
表4−ベースラインで報告された病歴的に頭痛が開始および終了する位置(患者の数(%))
【表4】
【0095】
30日間当たりの頭痛頻度の分析において、プラセボ非応答者では30、60、150、180、210、および240日目に、プラセボ応答者では180日目に、30日間当たりの頭痛頻度の統計的に有意な変化が観察された(表5)。
図14は、プラセボ非応答者およびプラセボ応答者の30日間当たりの頭痛頻度の平均ベースラインとベースラインからの平均変化を示す。
【0096】
表5−プラセボ非応答者およびプラセボ応答者の30日間当たりの頭痛頻度のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化
【表5】
【0097】
他のプロトコルによって指定された有効性変数の分析において、プラセボ非応答者群およびプラセボ応答者群でBOTOX(登録商標)とプラセボとの間に統計的有意差が見られた。また、プラセボよりもBOTOX(登録商標)に対する応答が一貫して良好であった患者のサブグループが同定された。
【0098】
頭痛頻度、プールした集団
複数の時点(30、60、150、180、210、および240日目)で、30日間当たりの頭痛頻度に統計的に有意な変化が観察された(表6)。
図15は、30日間当たりの頭痛頻度の平均ベースラインとベースラインからの平均変化を示す。頭痛頻度の分析により、BOTOX(登録商標)とプラセボとの間で、BOTOX(登録商標)に有利な統計的有意差が示された。
【0099】
表6−30日間当たりの頭痛頻度のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化(プールした集団)
【表6】
【0100】
表6および
図15に見られるように、30日間当たりの頭痛頻度に治療群間での統計的有意差が最初の見られた時は、プラセボ導入後の最初の治療から30日後であった。この時点で、BOTOX(登録商標)とプラセボとの間に急速な効果の発現を立証する有意差(p=0.021)が見られた。ベースラインからの平均変化は、BOTOX(登録商標)で−4.1、プラセボで−2.7であった。
【0101】
表7−30日間当たりのベースラインから50%以上の減少が見られた患者の数(%)(プールした集団)
【表7】
【0102】
表8は、プラセボ導入期間後に2回および3回の治療サイクルを完了した患者の30日間当たりの頭痛頻度の平均ベースラインとベースラインからの平均変化を示す。3回の治療サイクルを完了した138人の患者(BOTOX(登録商標)69人、プラセボ69人)は、治療に対して持続性応答を有した。270日の治療期間にわたって、BOTOX(登録商標)を用いた治療に対する応答が概して改善し続けたのに対し、プラセボを用いた治療は比較的安定したままであった。
【0103】
表8−プラセボ導入期間後に2回および3回の注射サイクルを完了した患者の30日間当たりの頭痛頻度のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化(プールした集団)
【表8】
【0104】
表9は、30日間当たりの持続時間が≧4時間および<4時間であった頭痛の回数の平均ベースラインとベースラインからの平均変化を示す。270日の治療期間にわたって、持続時間≧4時間の頭痛のベースラインの頭痛総数からの変化は、全ての再来院でプラセボよりもBOTOX(登録商標)で有意に大きかった(p≦0.044、表14.5−325)。持続時間<4時間では、いずれの再来院においても群間の有意差は見られなかった。
【0105】
表9−30日間当たりの持続時間が≧4時間および<4時間であった頭痛の頭痛頻度の平均ベースラインとベースラインからの変化
【表9】
【0106】
このサブ集団のサブグループにおいて、BOTOX(登録商標)とプラセボとの間で臨床的に重要な差が見られた有効性変数は以下を含んでいた:30日間当たりの頭痛頻度のベースラインからの50%の減少、30日間当たりの頭痛頻度のベースラインからの30%の減少、30日間当たりの片頭痛または片頭痛の疑いの頻度、ならびに30日間当たりの急性期頭痛沈痛薬の使用日数および使用回数。
【0107】
表10−ベースラインで予防的頭痛薬を使用したおよび使用しなかった患者のベースライン特性(プールした集団)
【表10】
【0108】
ベースラインで予防的頭痛薬を使用したおよび使用しなかった患者の集団について、30日間当たりの頭痛日の頻度の平均ベースラインおよびベースラインから各評価時点までの平均変化を表11および
図16に示す。ベースラインで使用された予防的頭痛薬の種類は、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、抗痙攣薬、および抗うつ薬を含んでいた(このクラスの頭痛について、いずれの効果の証拠も見られなかったため、セロトニン取り込み阻害剤[例えばPROSAC(登録商標)]は除外した)。
【0109】
表11−ベースラインでの予防的頭痛薬の使用による30日間当たりの頭痛頻度のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化(プールした集団)
【表11】
【0110】
ベースラインで抗うつ薬を使用した患者(BOTOX(登録商標)で31人、プラセボで43人)の場合、210日(p=0.048)を除いて、30日間当たりの頭痛頻度のベースラインからの変化に治療群間で統計的有意差は見られなかった。120日目〜270日目に、ベースラインからの平均減少が、30日間当たり1.6〜3.7頭痛分BOTOX(登録商標)が大きかった。ベースラインで抗うつ薬を使用しなかった患者の場合、60日目〜270日目に、ベースラインからの平均減少が30日間当たり1.7〜3.6頭痛分BOTOX(登録商標)が大きかった。ベースラインからの変化は、30、60、および180日目にBOTOX(登録商標)で有意に大きかった(p≦0.020)。
【0111】
ベースラインで予防的頭痛薬を使用したおよび使用しなかった患者について、30日間当たりの頭痛頻度のベースラインから少なくとも50%の減少が見られた各評価時点での患者(応答者として定義される)の割合を表12に示す。
【0112】
ベースラインで予防的頭痛薬を使用した患者の場合、BOTOX(登録商標)とプラセボとの間に統計的有意差は見られなかった。ベースラインで予防的頭痛薬を使用しなかった患者の場合、150日目〜270日目にはBOTOX(登録商標)治療を受けた患者のうちの少なくとも50%が応答者であった。BOTOX(登録商標)とプラセボとの差は、150日目〜210日目に、統計的に有意であった。これらの時点では、BOTOX(登録商標)に対する応答率は、プラセボに対する応答率よりも少なくとも20%高かった。
【0113】
表12−ベースラインでの予防的頭痛薬の使用により、30日間当たりのベースラインから50%以上の頭痛の減少が見られた患者の数(割合)(プールした集団)
【表12】
【0114】
ベースラインで予防的頭痛薬を使用したおよび使用しなかった患者について、30日間当たりの頭痛頻度のベースラインから少なくとも30%の減少が見られた各評価時点での患者の割合を表13に示す。
【0115】
ベースラインで予防的頭痛薬を使用した患者の場合、BOTOX(登録商標)とプラセボとの間に統計的有意差は見られなかった。ベースラインで予防的頭痛薬を使用しなかった患者の場合、30日目〜270日目に、BOTOX(登録商標)治療を受けた患者のうちの少なくとも50%が、30日間当たりの頭痛頻度に少なくとも30%の減少を示した。BOTOX(登録商標)とプラセボとの差は、30、60、150、180、および210日目に統計的に有意であった。これらの時点で、BOTOX(登録商標)に対する応答率は、プラセボに対する応答率よりも16.4〜26.2%高かった。
【0116】
表13−ベースラインでの予防的頭痛薬の使用により、30日間当たりのベースラインから30%以上の頭痛の減少が見られた患者の数(%)(プールした集団)
【表13】
【0117】
疾患発症から10〜20年および>20年の患者について、30日間当たりの頭痛頻度の分析を表14に示す。180日目のみに統計的有意差を示した疾患発症10〜20年の患者、ならびに30、60、および210日目に統計的有意差を示した疾患発症>20年の患者の治療期間全体にわたって、BOTOX(登録商標)に対する応答は、プラセボに対する応答よりも一貫して良好であった。注目すべきなのは、>20年の患者のサブループでは、10〜20年の患者のサブグループの治療に対する応答と比較して、プラセボ治療に対する応答が、一貫してかつ大幅に低かったという観察である。
【0118】
表14−疾患発症後の時間(10〜20年および>20年)ごとの、30日間当たりの頭痛頻度の平均ベースライン(標準偏差)およびベースラインからの変化(プールした集団)
【表14】
【0119】
ベースラインの頭痛日頻度(20〜24および25〜30頭痛日)による30日間当たりの頭痛頻度の分析を表15にまとめる。60日目および180日目に統計的有意差が見られたベースラインの頭痛日頻度が20〜24日の患者、ならびに30、60、および180日目に統計的有意差が見られたベースラインの頭痛日頻度が25〜30日の患者の治療期間全体にわたって、BOTOX(登録商標)に対する応答が、プラセボに対する応答よりも一貫して良好であった。各時点でのBOTOX(登録商標)とプラセボとの間の平均変化の差は、ベースラインの頭痛日頻度が25〜30日の患者のほうが大きかった。
【0120】
表15−ベースラインの頭痛日頻度が20〜24日および25〜30日である患者の30日間当たりの頭痛頻度のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化(プールした集団)
【表15】
【0121】
ベースラインでの鎮痛性急性期頭痛薬乱用による頭痛頻度
薬物乱用は、≧15日および≧2日/週のあらゆる急性期鎮痛薬の使用として定義した。この定義に基づいて、ベースラインで急性期鎮痛薬の乱用がなかった患者では、いずれの時点でも、30日間当たりの頭痛頻度のベースラインからの変化にBOTOX(登録商標)とプラセボとの間に統計的有意差は見られなかった(表16)。ベースラインで急性期鎮痛薬の乱用があった患者については、90日目を除いて、ベースラインからの減少における差は、プラセボよりもBOTOX(登録商標)で有意に大きかった。ベースラインからの平均減少は、90日目を除く全ての時点で、2.0〜5.6倍の頭痛分BOTOX(登録商標)が大きかった(表16)。
【0122】
表16−ベースラインで急性期頭痛沈痛薬の乱用(無し、有り)患者についての30日間当たりの頭痛頻度のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化(プールした集団)
【表16】
【0123】
頭痛の種類
各頭痛を片頭痛(ICHD1)または非片頭痛性頭痛(ICHD2、例えば緊張型頭痛)に分類した。全ての患者が、ベースライン期間中に少なくとも1回の片頭痛を経験し、たとえ、調査者が全ての患者についてこの診断を認識していないとしても、全ての患者が実際に片頭痛の診断を有する可能性があることを示唆した。試験中、患者は、片頭痛性および非片頭痛性の両方の頭痛を経験した。両方の治療群において、頭痛の大半が片頭痛として分類された(ICHD基準による)。
【0124】
片頭痛
30日間当たりの片頭痛(ICHD1.1もしくは1.2)または片頭痛の疑い(ICHD1.5.1)の頻度の平均ベースラインおよびベースラインからの変化を表17に示す。ベースラインからの減少は、全ての時点で、プラセボと比較してBOTOX(登録商標)のほうが大きく、また120、180、および210日目に有意により高かった(p≦0.048)。これらの時点では、ベースラインからの減少は、BOTOX(登録商標)のほうが1.6〜2.8頭痛分大きかった。
【0125】
表17−30日間当たりの片頭痛および片頭痛の疑いの頻度のベースラインの平均(標準偏差)およびベースラインからの変化(プールした集団)
【表17】
【0126】
非片頭痛性頭痛
ベースラインの30日間当たりの非片頭痛性頭痛の平均頻度は、BOTOX(登録商標)およびプラセボ群で、それぞれ2.3および1.8であった。90日目(p=0.034)を除く全ての時点で、30日間当たりの非片頭痛性頭痛の頻度のベースラインからの変化にBOTOX(登録商標)とプラセボとの間で統計的有意差(p≧0.065)は見られなかった。ベースラインからの平均減少は、導入期間後の全ての時点で、BOTOX(登録商標)のほうが0.3〜1.0非片頭痛性頭痛分大きかった。90日目の平均減少は、BOTOX(登録商標)で1.0、プラセボで0.2であった。
【0127】
MOU
いかなる30日の治療期間中も、いずれの急性期頭痛薬(例えば、トリプタン、オピオイド等)の使用にも治療群間で統計的有意差はほとんど見られなかった。また、個々の薬物のカテゴリー、すなわち、エルゴタミン、トリプタン、単純な鎮痛薬、または抗嘔吐薬についても、統計的に有意な群間差は見られなかった。オピオイドでは210日目(11.4%[8/70]、BOTOX(登録商標)24.7%[19/77]プラセボ、p=0.038)、そして併用療法では210日目(34.3%[24/70]BOTOX(登録商標)、18.2%[14/77]プラセボ、p=0.026)および240日目に(32.9%[23/70]BOTOX(登録商標)、18.3%[13/71]プラセボ、p=0.048)に、治療群間で有意差が見られた。
【0128】
ベースラインで急性期頭痛沈痛薬を乱用したおよび乱用しなかった患者のベースライン特性を表18にまとめる。急性期頭痛沈痛薬を乱用した患者は、ベースラインでの年齢が有意により高かったが(平均年齢45.6歳対41.6歳、p=0.001)、それ以外は、ベースラインでの急性期頭痛沈痛薬の乱用者および非乱用者の人口学的特性の間に統計的有意差は見られなかった。
【0129】
表18−ベースラインで頭痛鎮痛薬の乱用のあったおよびなかった患者のベースライン特性(プールした集団)
【表18】
【0130】
ベースライン後の全ての時点で、BOTOX(登録商標)の急性期頭痛沈痛薬の使用回数にプラセボ群と比較してより大きな減少が見られ、90および210日目に統計的有意差(p≦0.047)が見られた。これは、急性期頭痛沈痛薬を使用した平均日数の分析においても観察され、90、180、210、および240日目に統計的有意差(p≦0.033)が見られた。
【0131】
表19−ベースラインで予防的頭痛薬を使用しなかった患者の30日間当たりの急性期頭痛沈痛薬の使用回数および使用日数のベースラインの平均(標準偏差)とベースラインからの変化(プールした集団)
【表19】
【0132】
全体として、患者の97.7%(347/355)が急性期頭痛薬を服用し、本試験では各治療群で同様の比率であった:BOTOX(登録商標)群で患者の98.3%(170/173)、プラセボ群で97.3%(177/182)。
【0133】
全体として、患者の87.6%(311/355)が併用薬(急性期頭痛薬以外)を服用し、各治療群で同様の比率であった:BOTOX(登録商標)群で患者の90.2%(156/173)、プラセボ群で85.2%(155/182)。
【0134】
合計で患者の35.8%(127/355)が、ベースラインの間に頭痛予防薬を服用していた。これらは、β遮断薬10.4%(37/355)、カルシウムチャネル遮断薬7.6%(27/355)、抗痙攣薬14.1%(50/355)、および抗うつ薬20.8%(74/355)を含んでいた。上記頭痛予防薬のうちのいずれかを使用した患者数に、BOTOXプロゲストゲン群とプラセボ群との間で統計的有意差は見られなかった。
【0135】
プラセボ導入期間中(最初の治療サイクル1、−30日目〜0日目)、−30日目に全ての患者にプラセボを投与した。0日目に、BOTOX(登録商標)またはプラセボの筋肉内注射の治療サイクルを3回受けるよう患者を無作為化した。試験に登録した355人の患者のうち、173人に105U〜260UのBOTOX(登録商標)を投与し、182人にプラセボを投与した。プロトコルに従って患者に投与することができたBOTOX(登録商標)の最大用量は、3回の治療サイクルの各々の治療サイクル当たり260Uであり、累積曝露は780Uであった。
【0136】
用量
第2、第3、および第4回目の治療サイクルのBOTOX(登録商標)の平均合計用量(中央値)は、それぞれ、190.8U(200U)、190.9U(200U)、および190.5(200U)であった。第2、第3、および第4回目の治療サイクルで各筋肉群に注射したBOTOX(登録商標)の平均および中央値の用量を表20に示す。注目すべきは、BOTOX(登録商標)群およびプラセボ群の両方で、患者の半数未満に咬筋の任意選択的な注射が投与されたという観察である。
【0137】
表20−治療当たりに各筋肉群に注射したBOTOX(登録商標)の平均用量(中央値)
【表20】
【0138】
第1、第2、および第3回目の注射について、筋肉群当たりのBOTOX(登録商標)を注射した部位の平均数(中央値)を表21に示す。
【0139】
表21−治療サイクル当たりの筋肉群当たりのBOTOX(登録商標)注射部位の平均数(中央値)
【表21】
【0140】
30日間当たりの頭痛頻度のベースラインからの変化に、プラセボよりもBOTOX(登録商標)に有利な有意かつ一貫した有効性が観察された。これらの変化は、プラセボ非応答者およびプラセボ応答者層(プールしたデータ)の、ベースラインで頭痛の予防的治療を受けなかった患者のサブグループに観察された。頭痛頻度の変化は、片頭痛の治験における好ましい主要エンドポイントである(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products,2003)。最近、米国FDAは、同様に頭痛頻度の変化を測定することによって有効性が確立された片頭痛の予防的治療を承認した(Depakote添付文書、2003)。
【0141】
180日目(54.2%対38.0%、p=0.046)および210日目(57.1%対36.4%、p=0.012)の頭痛の回数において30日間当たりに少なくとも50%以上のベースラインからの減少があった患者の割合に、BOTOX(登録商標)に有利な群間有意差が見られた。また、30日間当たりの頭痛に50%以上の減少があった患者の割合は、BOTOX(登録商標)群では150、180、210、240、および270日目に患者の50%であったが、プラセボ群では、270日目にこのレベルに到達したのみであった。
【0142】
実施例4−慢性片頭痛を治療するためのA型ボツリヌス毒素注射パラダイム
片頭痛、特に慢性片頭痛の治療において有用なボツリヌス毒素の投与のための投与および注射パラダイムを開発および最適化するために、臨床試験を実施した。この試験は、新しい方法および注射される筋肉の選択を開発した:この試験では、筋肉当たりの最低および最大最適用量ならびに注射部位の数を特定した。この試験において、我々は、好ましいボツリヌス毒素製剤(BOTOX(登録商標))を使用した。本明細書の注射パラダイムは、28日間の間に15日以上の頭痛日がある片頭痛患者を治療するために特に有用である。一態様(二重盲検相)において、本試験は、この注射および投与パラダイムに従って、4週間当たりに15日以上の頭痛日がある片頭痛患者のための頭痛予防治療として、ボツリヌス毒素投与をプラセボと比較した。
【0143】
我々は、好ましい実施形態において、後に詳述する最低31〜最高39ヶ所の注射部位、最低用量155〜195単位までの最大投与量のA型ボツリヌス毒素(本明細書ではBOTOX(登録商標))注射の注射パラダイムが、治療した患者に非常に有益かつ効果的な臨床結果を提供したことを発見した。
【0144】
実施例3で用いた投与パラダイムの一実施形態において、治療サイクル当たり155単位〜195単位(31〜39ヶ所の注射部位に)の投与を12週ごとに最高5回の注射サイクルまで繰り返した。一実施形態において、この注射パラダイムは、7つの頭/頸部筋肉にわたる31部位への固定部位、固定用量の注射法を用いて最低用量155Uを必要とする。個々の患者の必要性に対応するために、疼痛に沿った方式を用いた40Uまで(8部位まで)の任意選択的な追加用量のボツリヌス毒素により、3つの筋肉(側頭筋、後頭筋、および僧帽筋)の筋肉当たりの投与量における柔軟性を提供した。これらの3つの筋肉(側頭筋、後頭筋、および僧帽筋)に対するこの新しい注射パラダイムの任意選択的な追加の疼痛に沿った方式部分を用いる際に、特定の頭/頸部筋肉領域のうちの1つまたは3つまで(側頭筋および/または後頭筋および/または僧帽筋)の片側または両側のいずれかに任意選択的および追加のボツリヌス毒素を投与した。
【0145】
図17を参照すると、注射パラダイムの一態様に従ってボツリヌス毒素の用量を患者に投与した固定位置の例(例えば、ここでは仰臥位および座位に投与した)が示されている。
図17では、示される各部位に、0.1mL=5UのA型ボツリヌス毒素を投与した。
図17で用いた略語(名前を挙げた筋肉の各々)、平均FSFD=固定部位、固定用量;FTP=任意選択的な疼痛に沿った場合(注射パラダイムの任意選択的な疼痛に沿った部分を用いた場合の、投与したボツリヌス毒素の位置および量を以下に詳述する)。
【0146】
我々は、前頭/眉間領域が最も頻繁に頭痛が開始および終了する位置であると断定した。治療の有効性、一貫性、および標準化を確実にするために、我々は、実施例2の注射パラダイムの31ヶ所の固定部位および固定投与量を注射する筋肉の一部として含まれるように3つの筋肉(前頭筋、皺眉筋、および鼻根筋)を選択することを決定した。眼瞼下垂等の局所的な有害事象の可能性を減少させるために、合計用量35Uが最も有利であると断定した。さらに、最適な忍容性を確保し、特に眼瞼下垂を最小限に抑えるために、これらの筋肉への注射の正確な数および位置を特定した。実際に、二重盲検プラセボ対照相でBOTOX(登録商標)治療を受けた患者の全体的な眼瞼下垂の割合を含む複数の頭痛症状指標にわたって、プラセボから統計的に有意な差異が認められたため、これらの筋肉において特定した注射方法は、これらの目的を達成した。
【0147】
これらの浅い筋肉に注射する際、骨膜にぶつからないように、好ましくは針を表面に維持した。一態様において、額の各側に1回ずつ、合計2回の注射を皺眉筋に対して行った(
図17、A)。注射部位は、眼窩突起(骨標識点)の内側上端部の約1.5cm(指1本分)上に位置する。皺眉筋の下に親指を配置し、眼瞼の下垂を防止するために、眼から離して上方に(額に向かって)針を斜めにして注射を行う。別の態様において、鼻根筋は、額の約1.5cm上の正中線上にあり、かつ各眼の眼窩突起(骨標識点)の内側上面に対して正中線側にある1ヶ所の注射部位を有することができる(
図17、B)。この注射部位は、実質的に2ヶ所の皺眉筋注射の中間である。前頭筋に注射する際、これらの注射の場合、針を上向きに方向付ける必要はなかった。前頭筋には合計4回の注射(左側に2回、右側に2回)を行った。2ヶ所の内側注射部位については、皺眉筋注射部位から約1.5cm(指1本分)にある眉毛の内側端部からの想像上の線が、針の配置を決定するための有用な方法である(
図17、C)。外側注射部位は平行であり、内側注射部位の約1.5cm外側である。
【0148】
側頭筋を参照して、我々は、側頭筋領域が2番目に頻繁に頭痛が開始および終了する位置であると断定した。本発明の注射パラダイムにおいて、この筋肉のための固定部位、固定用量法を用いた。この筋肉は、多くの患者にとって支配的な疼痛が非常によく見られた位置であるため、片側につき20単位の最低用量(合計で最低40単位)を決定し、疼痛に沿ったストラテジーを使用して合計で追加の10単位まで(5単位ずつ増分して片側または両側に投与)をこの筋肉群に許容した。
【0149】
側頭領域には、各側に4回ずつ、最低で合計8回の注射を行った(
図17、D)。また、任意選択的な疼痛に沿ったパラダイムを使用した2回までの追加の注射を用いた。いずれの注射の前にも、頭部の両側の筋肉を圧痛および疼痛について触診した。側頭筋の前面を特定する際に、患者が歯を食いしばることによって医師の補助とし、その後触診を行った。第1の注射は、生え際の後ろに留まるよう努力を払いながら、この点のすぐ後に行った。第2の注射は、筋肉の内側面で第1の注射の約0.5cm上かつ1.5cm後ろであった。第3の注射部位は、平行であり、第2の注射の約1.5cm後ろであった。第4の固定部位注射は、筋肉の内側面で第2の注射の1.5cm下であり、それに対して垂直であった。ボツリヌス毒素の追加の注射(実施例2の注射パラダイムの疼痛に沿った態様を用いて)を使用した場合、追加の部位で注射を行った(固定された4部位に対する注射容積を増加させるのではなく)。
【0150】
頸部傍脊柱筋群(頸部筋肉)を参照して、我々は、頭痛が後頭部(後頭筋および/または頸部のいずれか)で頻繁に開始および/または終了すると断定した。したがって、この実施例で用いた注射パラダイムでは、頸中部ではなくむしろ頭蓋底の頸上部(後頭部の隆起の上の頸部傍脊柱筋)に注射を行うことを決定し(頸部疼痛および頸部頸部硬直を回避するため)、よって、頸部領域には疼痛に沿った注射法を許容せず、注射は、頸部筋肉内に深く挿入するのではなく、より表面的であり(好ましい一実施形態において、注射針の長さおよびゲージをそれぞれ0.5インチおよび30ゲージに標準化した)、頸部領域に注射される合計用量を減少させた。したがって、頸部傍脊柱筋群への全体的な用量は、この筋肉群の場合、固定部位に合計20Uの固定用量であった(4部位の間で分割された頭部の各側に10Uずつ(部位当たり5U、
図17、F))。我々は、有効性の観点からこの用量が十分であると断定し、この特定の頸部用量は、頸部疼痛の軽減または解消、頸部硬直の軽減または解消、および過剰な頸部筋力低下の危険性の軽減をもたらし、有効性を維持する一方で、全体的な忍容性プロファイルを向上させた。左側から始めて、頸椎を触診することにより頸部傍脊柱筋群の注射部位を特定した:頸部傍脊柱筋および僧帽筋内に注射を深く挿入し過ぎないことが好ましかった(0.5インチ針のハブが、比較的正確な「深さ」のガイドとしての役割を果たす)。第1の注射は、中線の外側、後頭隆起部の約3〜5センチメートル下に投与した。第2の注射は、同じ側の、第1の注射の1cm外側かつ上に(第1の注射から耳に向かって斜めに)投与した。合計4回の注射分(固定部位)、対側で対照的にこの手技を繰り返した。
【0151】
僧帽筋に関して、我々は、頭痛が僧帽筋で頻繁に開始および/または終了すると断定した。したがって、僧帽筋の投与計画を最低用量30Uに標準化し(各側に15Uずつ)(腕(肩)の疼痛を回避する/最小限に抑えるため)、臨床的に必要である場合は、最大用量50U(即ち、追加の20単位、全体で10部位まで)の追加の疼痛に沿った治療の選択肢を設けた。
【0152】
それに応じて、僧帽筋の上部を触診し、圧痛および/または疼痛の領域を同定した。左側から始めて、筋肉を視覚的に3つのセクションに分割した。一実施形態において、僧帽筋への第1の注射は、筋肉の外側面に投与した。内側に移動して、僧帽筋の中間部に第2の注射を投与し、第3の注射は、筋肉の第3のセクション内の中心かつ上部に投与した。合計6回の注射分(固定部位)、対側で対照的にこの手技を繰り返した(
図17、G)。疼痛に沿った任意選択的な投与パラダイムの一態様に従って、必要に応じて、追加の4回の注射を、最大の圧痛を有すると同定された領域内で右僧帽筋と左僧帽筋との間で分配した。頸部脱力の可能性を制限するために僧帽筋の下内側部は避けた。
【0153】
後頭筋に関して、我々は、後頭筋が3番目に頻繁に頭痛が開始および終了する位置であると断定した。我々の新しい注射および投与パラダイムの一態様に従って後頭筋に投与した最低用量は、主として後頭隆起部の上に位置する後頭筋への注射のための6部位に30Uであり、頸部脱力の危険性を減少させた。また我々は、後頭部に起こり得る疼痛の主訴に対応するために、後頭筋への追加の疼痛に沿った投薬を許容した。
【0154】
後頭領域に注射を行う前に、左側および右側の両方を触診して圧痛および/または疼痛の領域を同定した。後頭筋注射部位を特定するために、外側後頭隆起を触診した。部位は、この隆起のいずれかの側の上項部隆起の上である。一実施形態において、右後頭筋および左後頭筋に注射を3回、合計で6回の注射を投与した(
図17、E)。一例として、上項部隆起に沿って後頭隆起のすぐ上、および外側後頭隆起の約1cm左/右(側に応じて)に第1の注射を行った。第2の注射は、第1の注射の約1cm左/右、かつ約1cm上に行った。第3の注射は、第1の注射部位の1cm内側かつ1cm上に行った。実施形態の一態様に従って、または一態様において、疼痛に沿った任意選択的な投与パラダイム、必要に応じて、追加の2回の注射を、最大の圧痛を有すると同定された領域内で右後頭筋と左後頭筋の間で分配した(各側に1回の注射、または片側に2回の注射)。
【0155】
我々の発明の実施形態において、咬筋は、用いた本発明の注射/投与パラダイムにおける注射の標的筋肉群として含まれなかった。意外なことに、我々は、慢性片頭痛症状の一環として咬筋領域に疼痛を有した患者もあったが、咬筋へのボツリヌス毒素の注射は、頭痛患者にとって有益な臨床結果を得るために必ずしも必要ではないと断定した。
【0156】
したがって、ボツリヌス毒素の投与に固定部位と疼痛に沿った部位との組み合わせを用いるこのパラダイムは、個々の患者の症状に基づいて、A型ボツリヌス毒素等のボツリヌス毒素の最適な分布を提供する。
【0157】
よって、一実施形態において、7つの特定の頭部および頸部の筋肉にわたって分割された固定最低用量155Uおよび固定注射部位数(31部位)(固定部位、固定用量法と称される)(表23)について調べた。興味深いことに、このプロトコルも、3つの特定の筋肉にわたって分割された追加の40Uまでの、修正され、概説した疼痛に沿った方式を許容した:側頭筋(追加の2部位までに合計で追加の10Uまで)、後頭筋(追加の2部位までに合計で追加の10Uまで)、および僧帽筋(追加の4部位までに合計で追加の20Uまで)(表24)。下に示すように、疼痛に沿った部分の方式は必要ではなく、また、ある注射サイクルから別の注射サイクルに疼痛に沿った方式の使用を標準化する必要もなかった(毒素は12週ごとに投与した)。
【0158】
全体としての試験は、非多盲検延長相を含む施設二重盲検無作為化プラセボ対照並行群間臨床試験であり、60週間実施した(4週間のベースライン相、その後の32週目に患者が登録するまでの24週間の二重盲検治療相、非盲検延長相を含む)。4週間のベースライン相の後に患者を無作為化/層別化し、そうすることにより、組み入れ/除外基準を満たす患者に、集中電話無作為化システムによって提供される無作為化番号を割り当てた。患者がこれらのカテゴリーの1つ以上を満たす場合は、薬物乱用(「有り」)として分類した。
【0159】
表22−乱用基準
【表22】
【0160】
各層内で、ボツリヌス毒素またはプラセボのいずれかを1:1の比率で投与するように患者を無作為に割り付けた。投与量および投与計画については、二重盲検相で2回の治療セッション、非盲検延長試験で3回の治療セッションを実施した。二重盲検相において、表23に列挙した7つの特定の頭/頸部筋肉領域にわたる31ヶ所の固定部位、固定用量として投与される最低用量155Uのボツリヌス毒素またはプラセボを全ての患者に投与した。また、医療従事者の判断により、3ヶ所までの特定の頭/頸部筋肉領域(側頭筋、後頭筋、および/または僧帽筋)における疼痛に沿ったパラダイムを使用して、ボツリヌス毒素またはプラセボの追加注射を片側または両側に投与した。一実施形態に従って、用量および可能な注射部位の数を表形態に記載する。
【0161】
表23−固定部位、固定用量注射を用いた場合に必要な用量
【表23】
【0162】
用量おまたは注射部位の数に関して、任意選択的な追加の注射(すなわち、表23に詳述するもの以外)は、治療のための来院を通して一定である必要はなかった(それらは個々の事例に応じて、および医療従事者の判断によって投与されたが、許容される最大用量(すなわち195単位)を超えることはなかったため)。我々は、特定の筋肉領域(例えば、側頭筋および/または後頭筋および/または僧帽筋)への固定最大量を超えてどれくらい多くの追加単位を注射するかを決定する際に、医療従事者は、患者が報告する主な疼痛の通常の位置、注射前に筋肉を触診する際の筋肉圧痛の重症度、および特定の筋肉(例えば、サイズの大きい筋肉)への追加用量について考えられる利益に関する医療従事者の最良の判断を考慮に入れることを決定した。したがって、一例において、合計最低用量は、31ヶ所の頭/頸部注射で155Uであり、合計最大用量は、39ヶ所の頭/頸部注射で195Uであった。
【0163】
表24−疼痛に沿った注射パラダイムを用いた任意選択的な追加の用量
【表24】
a 1 注射部位=0.1mL=5UのA型ボツリヌス毒素群または0Uのプラセボ群
b 片側にまたは両側に分配された最大追加用量は次の通りである: 後頭筋=10U、側頭筋=10U、僧帽筋=20U。
【0164】
この実施例のベースライン相の間(4週目〜0日目)、患者は、少なくとも15頭痛日および最低持続時間が4時間である少なくとも4回の任意の種類の頭痛の発現を有した。これらの頭痛の発現のうちの少なくとも50%は、片頭痛(ICHD−II 1.1もしくは1.2)または片頭痛の疑い(ICHD−II 1.6)として分類された。4週間のベースライン相の後、見込みのある患者は、24週間の二重盲検治療相に参加する資格を得るために調査者のオフィスを再訪した。妊娠の可能性がある女性は、4週間のベースライン相に参加する前、および0日目の第1回目の治験薬注射の前にも、尿妊娠検査が陰性であった。
【0165】
このようにして、また一例として、最低用量のボツリヌス毒素が投与される最低数の頭部、頸部、肩領域を、追加のボツリヌス毒素(添付文書または処方情報に列挙される最大投与量等の記載された最大投与量まで)を投与することができるこれらの頭部、頸部、肩領域のサブセットとともに有する、ボツリヌス毒素の用量および投与部位の固定部位と疼痛に沿った方式とを組み合わせたパラダイムを開示する。