(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】栄養状態によるマウス肝臓(
図1A)のGDF15発現の制御を示す棒グラフである。
【
図1B】栄養状態によるマウス脂肪(
図1B)のGDF15発現の制御を示す棒グラフである。
【
図2A】PPARアゴニストによるマウス肝臓(
図2A)のGDF15発現の上方制御を示す棒グラフである。
【
図2B】PPARアゴニストによるマウス3T3−L脂肪細胞(
図2B)のGDF15発現の上方制御を示す棒グラフである。
【
図3A】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり血漿ブドウ糖値(
図3A)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、プロットである。
【
図3B】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり血漿ブドウ糖値(
図3A)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、棒グラフである。血漿インスリン値はAAV注射2週間後に測定した(
図3B)。
【
図3C】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり体重(
図3C)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、プロットである。
【
図3D】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり体重(
図3C)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、棒グラフである。平均1日食餌摂取量はAAV注射3週間後に測定した(
図3D)。
【
図3E】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり血漿ブドウ糖値(
図3A)および体重(
図3C)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、棒グラフである。総コレステロール(
図3E)はAAV注射2カ月後に測定された。
【
図3F】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり血漿ブドウ糖値(
図3A)および体重(
図3C)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、棒グラフである。NEFA(
図3F)はAAV注射2カ月後に測定された。
【
図3G】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり血漿ブドウ糖値(
図3A)および体重(
図3C)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、棒グラフである。トリグリセライド(
図3G)はAAV注射2カ月後に測定された。
【
図3H】マウスGDF15でのAAV介在処置後のレプチン欠損ob/obマウスの代謝特性の改良を示す、つまり血漿ブドウ糖値(
図3A)および体重(
図3C)におけるAAVマウスGDF15注射の効果を2カ月間測定した、棒グラフである。インスリン値(
図3H)はAAV注射2カ月後に測定された。
【
図4A】マウスGDF15でのob/obマウスのAAV介在処置のブドウ糖低下活性を示し、ブドウ糖低下効果が体重減少と無関係であることを実証する一連のプロットである。対飼養試験は3群の動物を含む:1群は対照AVVを注射し、かつ食餌を自由摂取させ、2群はAAV GDF15を注射し、かつ食餌を自由摂取させ、対照AVVを注射した3群は前日のGDF15 AAVを注射した群により消費された同量の食餌を与えられた。GDF15または対照AAVを注射したマウスの経時的な食餌摂取量と体重の比を
図4Aに示す。
【
図4B】マウスGDF15でのob/obマウスのAAV介在処置のブドウ糖低下活性を示し、ブドウ糖低下効果が体重減少と無関係であることを実証する一連のプロットである。対飼養試験は3群の動物を含む:1群は対照AVVを注射し、かつ食餌を自由摂取させ、2群はAAV GDF15を注射し、かつ食餌を自由摂取させ、対照AVVを注射した3群は前日のGDF15 AAVを注射した群により消費された同量の食餌を与えられた。
図4Bは、対照またはGDF15 AAVで処置した自由摂取のマウスの、および対照AAVを注射した対飼養されたマウスの経時的体重を示す。
【
図4C】マウスGDF15でのob/obマウスのAAV介在処置のブドウ糖低下活性を示し、ブドウ糖低下効果が体重減少と無関係であることを実証する棒グラフである。対飼養試験は3群の動物を含む:1群は対照AVVを注射し、かつ食餌を自由摂取させ、2群はAAV GDF15を注射し、かつ食餌を自由摂取させ、対照AVVを注射した3群は前日のGDF15 AAVを注射した群により消費された同量の食餌を与えられた。
図4Cは対飼養試験の終わりの血漿ブドウ糖値を示す。
【
図4D】マウスGDF15でのob/obマウスのAAV介在処置のブドウ糖低下活性を示し、ブドウ糖低下効果が体重減少と無関係であることを実証する棒グラフである。対飼養試験は3群の動物を含む:1群は対照AVVを注射し、かつ食餌を自由摂取させ、2群はAAV GDF15を注射し、かつ食餌を自由摂取させ、対照AVVを注射した3群は前日のGDF15 AAVを注射した群により消費された同量の食餌を与えられた。
図4Dは対飼養試験の終わりの体重を示す。
【
図5A】高脂肪食を与えたマウスの血漿ブドウ糖値(
図5A)におけるマウスGDF15AAVの効果を示すプロットである。
【
図5B】高脂肪食を与えたマウスの体重(
図5B)におけるマウスGDF15AAVの効果を示すプロットである。
【
図5C】高脂肪食を与えたマウスの食餌摂取量(
図5C)におけるマウスGDF15AAVの効果を示す棒グラフである。
【
図5D】通常の飼料を与えたマウスのもの(
図5D)におけるマウスGDF15AAVの効果を示すプロットである。
【
図5E】通常の飼料を与えたマウスのもの(
図5E)におけるマウスGDF15AAVの効果を示すプロットである。
【
図5F】通常の飼料を与えたマウスのもの(
図5F)におけるマウスGDF15AAVの効果を示す棒グラフである。
【
図6A】高脂肪食を与えたマウスのインスリン感受性およびブドウ糖耐性におけるマウスGDF15でのAAV介在処置の効果を示すプロットであり、
図6AはAAV注射3週間後のOGTT中に測定された血漿ブドウ糖値を示す。
【
図6B】高脂肪食を与えたマウスのインスリン感受性およびブドウ糖耐性におけるマウスGDF15でのAAV介在処置の効果を示すプロットであり、
図6BはAAV注射3週間後のOGTT中に測定された血漿インスリン値を示す。
【
図6C】高脂肪食を与えたマウスのインスリン感受性およびブドウ糖耐性におけるマウスGDF15でのAAV介在処置の効果を示すプロットであり、
図6CはAAV注射2週間後のITT中に測定された血漿ブドウ糖値を示す。
【
図6D】高脂肪食を与えたマウスのインスリン感受性およびブドウ糖耐性におけるマウスGDF15でのAAV介在処置の効果を示すプロットであり、
図6DはAAV注射2週間後のITT中に測定された血漿ブドウ糖/基準ブドウ糖値を示す。
【
図7A】ブドウ糖値(
図7A)におけるDIOマウスのAAV介在ヒトGDF15処置の効果を示すプロットである。
【
図7B】食餌摂取量(
図7B)におけるDIOマウスのAAV介在ヒトGDF15処置の効果を示す棒グラフである。
【
図7C】体重(
図7C)におけるDIOマウスのAAV介在ヒトGDF15処置の効果を示す棒グラフである。
【
図7D】DIOマウスに発現したヒトGDF15の量(
図7D)を示す棒グラフである。
【
図8A】KKAyマウスのブドウ糖不耐性の進行におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示すプロットであり、
図8AはOGTT中の血漿ブドウ糖値を示す。
【
図8B】KKAyマウスのブドウ糖不耐性の進行におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図8Bは、AAV注射3週間後および6週間後の体重を示す。
【
図8C】KKAyマウスのブドウ糖不耐性の進行におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図8CはAAV注射3週間後および6週間後のインスリン値を示す。
【
図9A】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Aは尿中ブドウ糖を示す。
【
図9B】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Bは尿量を示す。
【
図9C】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Cはブドウ糖の排出示す。
【
図9D】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示すの棒グラフであり、
図9Dは尿アルブミンを示す。
【
図9E】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Eはアルブミン排出を示す。
【
図9F】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Fは水分摂取量を示す。
【
図9G】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Gはインスリン値を示す。
【
図9H】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Hは血漿ブトウ糖値を示す。
【
図9I】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9IはヒトGDF15値を示す。
【
図9J】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Jは体重を示す。
【
図9K】3〜4週間にわたるKKAyマウスの糖尿におけるAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図9Kは食餌摂取量を示す。
【
図10A】DIOマウスの総体重(
図10A)におけるAAV介在マウスGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図10B】脂肪量(
図10B)におけるAAV介在マウスGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図10C】脂肪量/総体重(
図10C)におけるAAV介在マウスGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図10D】非脂肪量/総体重(
図10D)におけるAAV介在マウスGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図11A】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示すプロットであり、
図11Aは体重を示す。
【
図11B】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示すプロットであり、
図11Bは発現したヒトGDF15の量示す。
【
図11C】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図11Cは総体重を示す。
【
図11D】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図11Dは脂肪量を示す。
【
図11E】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図11Eは非脂肪量を示す。
【
図11F】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図11Fは骨塩密度を示す。
【
図11G】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図11Gは脂肪量/体重の割合を示す。
【
図11H】DIOマウスのAAV介在ヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図11Hは非脂肪量/総体重の割合を示す。
【
図12A】ob/obマウスのブトウ糖および食餌摂取量における組み換えマウスGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図12Aは血漿ブドウ糖値を示す。
【
図12B】ob/obマウスのブトウ糖および食餌摂取量における組み換えマウスGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図12Bは体重を示す。
【
図12C】ob/obマウスのブトウ糖および食餌摂取量における組み換えマウスGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図12CはビヒクルまたはマウスGDF15の注射後1日目および2日目の食餌摂取量を示す。
【
図13A】ob/obマウスの血漿ブドウ糖値における組み換えヒトGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図13B】ob/obマウスの食餌摂取量における組み換えヒトGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図13C】ob/obマウスの体重における組み換えヒトGDF15の効果を示す棒グラフである。
【
図14A】DIOマウスの組み換えヒトGDF15の効果を示すプロットであり、
図14Aはタンパク質注射3日後のOGTT中に測定された血漿ブドウ糖値を示す。
【
図14B】DIOマウスの組み換えヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図14Bは食餌摂取量を示す。
【
図14C】DIOマウスの組み換えヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図14Cは体重を示す。
【
図15A】経口脂質投与後のB6D2F1雄マウスの脂質代謝における組み換えヒトGDF15の効果を示すプロットであり、
図15Aは脂質耐性試験中の血漿トリグリセライド値を示す。
【
図15B】経口脂質投与後のB6D2F1雄マウスの脂質代謝における組み換えヒトGDF15の効果を示す棒グラフであり、
図15Bは組み換えヒトGDF15の血漿投与を示す。
【
図16A】AAV介在マウスGDF15投与後3週間に高脂肪食を与えたB6D21Fマウスの血液化学を示す棒グラフであり、
図16Aは血漿インスリン値を示す。
【
図16B】AAV介在マウスGDF15投与後3週間に高脂肪食を与えたB6D21Fマウスの血液化学を示す棒グラフであり、
図16Bは非エステル化脂肪酸(NEFA)値を示す。
【
図16C】AAV介在マウスGDF15投与後3週間に高脂肪食を与えたB6D21Fマウスの血液化学を示す棒グラフであり、
図16Cは総コレステロール値を示す。
【
図16D】AAV介在マウスGDF15投与後3週間に高脂肪食を与えたB6D21Fマウスの血液化学を示す棒グラフであり、
図16Dはトリグリセライド値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、それを必要とする対象に、治療有効量の単離されたヒトGDF15ポリペプチドを投与することにより、2型真性糖尿病(本明細書において「2型糖尿病」と互換可能に呼ばれる)、高血糖値、高インスリン値、脂質異常症、または肥満などの代謝障害を治療する方法を提供する。投与および送達方法も提供する。
【0013】
本明細書で使用され、実施例に含まれる組み換えポリペプチドおよび核酸方法は一般に、Sambrook et al.,
Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)および続版、または
Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds,Green Publishers Inc.およびWiley and Sons 1994)および続版に記載のものであり、これらはともに任意の目的で参照により本明細書に組み込まれる。
I. 一般定義
【0014】
本明細書に使用される、以下の慣例の不定冠詞「a」および「an」は、他に特に指示がない限り「1つ以上の」を意味する。
【0015】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」および「残基」は、互換可能であり、ペプチドまたはポリペプチドの文脈において使用されるときに、天然および合成アミノ酸の両方ならびにアミノ酸類似体、アミノ酸模倣体および天然のアミノ酸に化学的に類似する非天然のアミノ酸を指す。
【0016】
「天然のアミノ酸」は、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸ならびに合成後に修飾される、遺伝子コードによりコードされるこれらのアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合するα炭素を有する化合物である。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有することができるが、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。
【0017】
「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般化学構造と異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同様に機能する化学化合物である。例として、アミド、β、γ、δイミノ酸(例えば、ピペリジン−4−カルボン酸)などのメタクリロイルまたはアクリロイル誘導体がある。
【0018】
「非天然のアミノ酸」は、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造を有するが、翻訳複合体により、成長するポリペプチド鎖に組み込まれない化合物である。「非天然のアミノ酸」も、天然にコードされたアミノ酸(20個の共通のアミノ酸を含むがそれらに限定されない)の修飾(例えば、翻訳後修飾)により生じるが、翻訳複合体により、成長するポリペプチド鎖に天然にそれ自体が組み込まれないアミノ酸を含むがそれらに限定されない。ポリペプチド配列に挿入され、またはポリペプチド配列の野生型残基に置換されることができる非天然のアミノ酸の例の非限定リストとして、βアミノ酸、ホモアミノ酸、環状アミノ酸、および誘導体化された側鎖を有するアミノ酸がある。例として、(L体またはD体、括弧内に略語):シトルリン(Cit)、ホモシトルリン(hCit)、Nα−メチルシトルリン(NMeCit)、Nα−メチルホモシトルリン(Nα−MeHoCit)、オルニチン(Orn)、Nα−メチルオルニチン(Nα−MeOrnまたはNMeOrn)、サルコシン(Sar)、ホモリジン(hLysまたはhK)、ホモアルギニン(hArgまたはhR)、ホモグルタミン(hQ)、Nα−メチルアルギニン(NMeR)、Nα−メチルロイシン(Nα−MeLまたはNMeL)、N−メチルホモリジン(NMeHoK)、Nα−メチルグルタミン(NMeQ)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸(Oic)、3−(1−ナフチル)アラニン(1−Nal)、3−(2−ナフチル)アラニン(2−Nal)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、2−インダニルグリシン(IgI)、パラ−インドフェニルアラニン(pI−Phe)、パラ−アミノフェニルアラニン(4AmPまたは4−Amino−Phe)、4−グアニジノフェニルアラニン(Guf)、グリシルリジン(「K(Nε−グリシル)」もしくは「K(グリシル)」または「K(gly)」と略す)、ニトロフェニルアラニン(ニトロphe)、アミノフェニルアラニン(アミノpheまたはアミノ−Phe)、ベンジルフェニルアラニン(ベンジルphe)、γ−カルボキシグルタミン酸(γ−カルボキシglu)、ヒドロキシプロリン(ヒドロキシpro)、p−カルボキシル−フェニルアラニン(Cpa)、α−アミノアジピン酸(Aad)、Nα−メチルバリン(NMeVal)、N−α−メチルロイシン(NMeLeu)、Nα−メチルノルロイシン(NMeNle)、シクロペンチルグリシン(Cpg)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、アセチルアルギニン(アセチルarg)、α,β−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、α,γ−ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、4−メチル−フェニルアラニン(MePhe)、β,β−ジフェニル−アラニン(BiPhA)、アミノ酪酸(Abu)、4−フェニル−フェニルアラニン(またはビフェニルアラニン;4Bip)、α−アミノ−イソ酪酸(Aib)、ベータ−アラニン、ベータ−アミノプロピオン酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノピメリン酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、4−ヒドロキシプロリン(Hyp)、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、ω−メチルアルギニン、4−アミノ−O−フタル酸(4APA)、および他の類似のアミノ酸、ならびに特にリストされているもののいずれかの誘導体化された形態がある。
【0019】
用語「単離された核酸分子」は、ポリペプチド類の、ペプチド類の、脂質類の、炭水化物類の、ポリヌクレオチド類の、または全ての核酸が供給源の細胞から単離されるときに核酸が天然に見出される他の材料の、少なくとも約50パーセントから分離されている、5´から3´末端に読まれたデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド塩基の一本鎖もしくは二本鎖ポリマー(例えば、本明細書に提供されるGDF15核酸配列)またはその類似体を指す。好ましくは、単離された核酸分子は、他のコンタミネーションされている核酸分子、またはポリペプチド生成における使用または治療のための、診断のための、予防のための、もしくは研究のための使用を妨げるであろう、核酸の天然の環境で見出される他の分子を実質的に含まない。
【0020】
用語「単離されたポリペプチド」および「単離されたタンパク質」は互換可能に使用され、ポリペプチド類の、ペプチド類の、脂質類の、炭水化物類の、ポリヌクレオチド類の、またはポリペプチドが供給源の細胞から単離されるときに天然に見出される他の材料の、少なくとも約50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、または99パーセントから分離されているポリペプチド(例えば、本明細書で提供されるGDF15ポリペプチド)を指す。好ましくは、単離されたポリペプチドは、いずれの他のコンタミネーションされているポリペプチド、または治療のための、診断のための、予防のための、もしくは研究のための使用を妨げるであろう、天然の環境で見出される他の汚染物質も実質的に含まない。
【0021】
用語「コードする」は、1つ以上のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を指す。用語は、スタートまたはストップコドンを必要としない。アミノ酸配列は、ポリヌクレオチド配列により提供される6つの異なるリーディングフレームのいずれか1つにコードされることができる。
【0022】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一の」およびパーセント「同一性」は、同じである2つ以上の配列または下位配列を指す。「パーセント同一性」は、比較される分子内のアミノ酸間またはヌクレオチド間の同一の残基の割合を意味し、比較される分子の最小の大きさに基づき算出される。これらの計算において、(もしある場合)アライメントのギャップを、特定の算術的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)により処理することができる。整列した核酸またはポリペプチドの同一性を算出するために使用することができる方法は、例えば、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),(1988)New York: Oxford University Press、
Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press、
Computer Analysis of Sequence Data, Part I,(Griffin,A.M., and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press、von Heinje,G.,(1987)
Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press、
Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press、およびCarillo et al.,(1988)SIAM J.Applied Math.
48:1073に記載のものを含む。
【0023】
パーセント同一性を算出するときに、比較される配列を、配列間の最大の一致を与えるように配列する。パーセント同一性を決定するために使用されるコンピュータプログラムは、GAP(Devereux et al.,(1984)Nucl. Acid Res.
12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI)を含む、GCGプログラムパッケージである。コンピュータアルゴリズムGAPを使用して、パーセント配列同一性が決定される2個のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを配列させる。配列を、各アミノ酸またはヌクレオチドに最適なマッチング(アルゴリズムにより決定される「一致スパン」)に整列する。ギャップ開始ペナルティ(平均対角成分の3倍として算出され、「平均対角成分」は、使用される比較行列の対角成分の平均であり、「対角成分」は特定の比較行列によりそれぞれ完全なアミノ酸の一致に割り当てられたスコアまたは数である)、およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップ開始ペナルティの1/10)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較行列をアルゴリズムと併せて使用する。特定の実施形態において、標準的な比較行列(PAM250比較行列には、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure
5:345−352;BLOSUM62比較行列には、Henikoff et al.,(1992)Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.
89:10915−10919を参照)もアルゴリズムにより使用される。
【0024】
GAPプログラムを使用する、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列用のパーセント同一性を決定するために推奨されるパラメータは、以下のものである:
アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.
48:443−453、
比較行列:Henikoff et al.,1992、上記によるBLOSUM62、
ギャップペナルティ:12(しかし、末端ギャップに対するペナルティは含まない)
ギャップ長ペナルティ:4
類似性の閾値:0
【0025】
2つのアミノ酸配列を整列する特定のアライメントスキームは、2つの配列の短い領域のみのマッチングをもたらすことができ、この小さな整列された領域は、2つの全長配列との間に有意な関係はないけれども非常に高い配列同一性を有することができる。それに応じて、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続するアミノ酸に及ぶアライメントを生じるよう所望される場合には、選択されたアライメント法(例えば、GAPプログラム)を調節することができる。
【0026】
用語「GDF15ポリペプチド」および「GDF15タンパク質」は互換可能に使用され、哺乳類動物、例えば、ヒトまたはマウスに発現する天然の野生型ポリペプチドを意味する。この開示のために、用語「GDF15ポリペプチド」は、例えば、配列番号2の、308個のアミノ酸残基からなり、ヌクレオチド配列番号1によりコードされる(組み換え発現したときにストップコドンを含む必要はない)、いずれかの全長GDF15ポリペプチド;例えば、配列番号6の、279個のアミノ酸残基からなり、ヌクレオチド配列番号5によりコードされ(組み換え発現したときにストップコドンを含む必要はない)、全長GDF15ポリペプチドのアミノ酸末端で29個のアミノ酸残基(すなわち、シグナルペプチドを構成する)が除去されている、ポリペプチドの活性およびプロドメインを含むいずれかの形態;および例えば、配列番号10の、112個のアミノ酸残基からなり、ヌクレオチド配列番号9によりコードされ(組み換え発現したときにストップコドンを含む必要はない)、シグナル配列およびプロドメインが除去されている、プロドメインおよびシグナル配列が除去されている活性ドメインを含むポリペプチドのいずれかの形態を指すよう互換可能に使用することができる。GDF15ポリペプチドは、細菌の発現プロセスを遺伝子操作することにより、またはそのプロセスの結果として導入され得るアミノ末端メチオニンを含むことができるが、含まなくてもよい。
【0027】
用語「GDF15ポリペプチド」はまた、天然のGDF15ポリペプチド配列(例えば、配列番号2、6、または10)が修飾されているGDF15ポリペプチドを包含する。このような修飾は、非天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸類体、およびアミノ酸模倣体との置換を含む、1つ以上のアミノ酸置換を含むが、それらに限定されない。
【0028】
種々の実施形態において、GDF15ポリペプチドは、天然GDF15ポリペプチド(例えば、配列番号2、6、または10)と少なくとも約85パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、GDF15ポリペプチドは、天然のGDF15ポリペプチドアミノ酸配列(例えば、配列番号2、6、または10)に少なくとも約90パーセント、もしくは約95、96、97、98、または99パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。このようなGDF15ポリペプチドは、好ましくは、しかしそうでなくてもよいが、野生型GDF15ポリペプチドの少なくとも1つの活性、例えば、血糖、インスリン、トリグリセライド、もしくはコレステロール値を低下させる能力、体重を低下させる能力、またはブドウ糖耐性、エネルギー消費、もしくはインスリン感受性を改良する能力を保有する。本発明はまた、このようなGDF15ポリペプチド配列をコードする核酸分子を包含する。
【0029】
本明細書に記載のように、GDF15ポリペプチドは、シグナル配列(配列番号2の残基1〜29)を含むことができ、またはシグナル配列を除去させることができる(配列番号6を提供)。他の実施形態において、ヒトGDF15ポリペプチドは、シグナル配列を除去させることができ、残基198で切断し、活性ドメインの主要配列からプロドメインの主要配列(配列番号2の残基30〜198)を分離することができる。天然の生物学的に活性形態のGDF15ポリペプチドは、プロセッシングされた成熟ペプチド(配列番号2の残基199〜308)のホモダイマーである。いくつかの例において、GDF15ポリペプチドは、対象と同じ種由来のGDF15ポリペプチドの成熟形態で、対象の代謝障害を治療し、または改善させるために使用することができる。
【0030】
GDF15ポリペプチドは、好ましくは生物学的に活性である。種々の各実施形態において、GDF15ポリペプチドは、シグナルペプチドが全長GDF15配列のN末端から除去されており、プロドメインが活性ドメインを切断している(しかし必ずしも除去する必要はない)成熟GDF15タンパク質の天然の形態の生物学的活性と等しい、それより大きい、またはそれ未満の生物学的活性を有する。生物学的活性の例として、血糖、インスリン、トリグリセライド、もしくはコレステロール値を低下させる能力、体重を低下させる能力、またはブドウ糖耐性、脂質耐性、もしくはインスリン感受性を改良する能力、尿糖およびタンパク質排出を低下させる能力がある。
【0031】
本明細書で使用される用語「治療有効用量」および「治療有効量」は、治療される疾患または障害の症状の緩和または改善を含む、研究者、内科医、または他の臨床医により求められている、組織系、動物、またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出すGDF15ポリペプチドの量、すなわち、1つ以上の所望の生物学的または医学的反応の観察可能な値、例えば、血糖、インスリン、トリグリセライド、もしくはコレステロール値を低下させること、体重を減少させること、またはブドウ糖耐性、エネルギー消費、もしくはインスリン感受性を改良することを支持するGDF15ポリペプチドの量を意味する。
II. GDF15ポリペプチドおよび核酸
【0032】
本明細書に開示されるように、本開示により記載されるGDF15ポリペプチドを、標準的な分子生物方法論を使用して操作し、かつ/または生成することができる。種々の実施例において、配列番号2、6、または10の全てまたは一部を含むことができる、GDF15をコードする核酸配列を適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ゲノムDNAまたはcDNAから単離し、かつ/または増幅することができる。プライマーを、標準的な(RT)−PCR増幅技法に従い、本明細書に提供される核酸配列およびアミノ酸配列に基づいて設計することができる。次いで、増幅されたGDF15核酸を適切なベクターにクローン化し、DNA配列分析により特徴づけすることができる。
【0033】
本明細書に提供されるGDF15配列の全てまたは一部を単離または増幅するときにプローブとして使用するオリゴヌクレオチドを、標準的な合成技法、例えば、自動DNA合成装置を使用して設計し、かつ生成することができ、またはより長いDNA配列から単離することができる。
II.A. 天然および変異体GDF15ポリペプチド配列およびポリヌクレオチド配列
【0034】
インビボにおいて、GDF15は、シグナル配列、プロドメイン、および活性ドメインを含む連続したアミノ酸配列として発現する。
全長ヒトGDF15の308個アミノ酸配列は(括弧内に任意のN末端メチオニンコドンとともに示され)、
(M)PGQELRTVNGSQMLLVLLVLSWLPHGGALSLAEASRASFPGPSELHSEDSRFRELRKRYEDLLTRLRANQSWEDSNTDLVPAPAVRILTPEVRLGSGGHLHLRISRAALPEGLPEASRLHRALFRLSPTASRSWDVTRPLRRQLSLARPQAPALHLRLSPPPSQSDQLLAESSSARPQLELHLRPQAARGRRRARARNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI(配列番号2)
であり、(括弧内に任意のN末端メチオニンコドン、および任意のストップコドンとともに示される)DNA配列によりコードされる:
(ATG)CCCGGGCAAGAACTCAGGACGGTGAATGGCTCTCAGATGCTCCTGGTGTTGCTGGTGCTCTCGTGGCTGCCGCATGGGGGCGCCCTGTCTCTGGCCGAGGCGAGCCGCGCAAGTTTCCCGGGACCCTCAGAGTTGCACTCCGAAGACTCCAGATTCCGAGAGTTGCGGAAACGCTACGAGGACCTGCTAACCAGGCTGCGGGCCAACCAGAGCTGGGAAGATTCGAACACCGACCTCGTCCCGGCCCCTGCAGTCCGGATACTCACGCCAGAAGTGCGGCTGGGATCCGGCGGCCACCTGCACCTGCGTATCTCTCGGGCCGCCCTTCCCGAGGGGCTCCCCGAGGCCTCCCGCCTTCACCGGGCTCTGTTCCGGCTGTCCCCGACGGCGTCAAGGTCGTGGGACGTGACACGACCGCTGCGGCGTCAGCTCAGCCTTGCAAGACCCCAGGCGCCCGCGCTGCACCTGCGACTGTCGCCGCCGCCGTCGCAGTCGGACCAACTGCTGGCAGAATCTTCGTCCGCACGGCCCCAGCTGGAGTTGCACTTGCGGCCGCAAGCCGCCAGGGGGCGCCGCAGAGCGCGTGCGCGCAACGGGGACCACTGTCCGCTCGGGCCCGGGCGTTGCTGCCGTCTGCACACGGTCCGCGCGTCGCTGGAAGACCTGGGCTGGGCCGATTGGGTGCTGTCGCCACGGGAGGTGCAAGTGACCATGTGCATCGGCGCGTGCCCGAGCCAGTTCCGGGCGGCAAACATGCACGCGCAGATCAAGACGAGCCTGCACCGCCTGAAGCCCGACACGGTGCCAGCGCCCTGCTGCGTGCCCGCCAGCTACAATCCCATGGTGCTCATTCAAAAGACCGACACCGGGGTGTCGCTCCAGACCTATGATGACTTGTTAGCCAAAGACTGCCACTGCATATGA
(配列番号1)。
全長マウスGDF15の303個のアミノ酸配列は(括弧内に任意のN末端メチオニンコドンとともに示され)、
(M)APPALQAQPPGGSQLRFLLFLLLLLLLLSWPSQGDALAMPEQRPSGPESQLNADELRGRFQDLLSRLHANQSREDSNSEPSPDPAVRILSPEVRLGSHGQLLLRVNRASLSQGLPEAYRVHRALLLLTPTARPWDITRPLKRALSLRGPRAPALRLRLTPPPDLAMLPSGGTQLELRLRVAAGRGRRSAHAHPRDSCPLGPGRCCHLETVQATLEDLGWSDWVLSPRQLQLSMCVGECPHLYRSANTHAQIKARLHGLQPDKVPAPCCVPSSYTPVVLMHRTDSGVSLQTYDDLVARGCHCA(配列番号4)
であり、(括弧内に任意のN末端メチオニンコドン、および任意のストップコドンとともに示される)DNA配列によりコードされる:
(ATG)GCCCCGCCCGCGCTCCAGGCCCAGCCTCCAGGCGGCTCTCAACTGAGGTTCCTGCTGTTCCTGCTGCTGTTGCTGCTGCTGCTGTCATGGCCATCGCAGGGGGACGCCCTGGCAATGCCTGAACAGCGACCCTCCGGCCCTGAGTCCCAACTCAACGCCGACGAGCTACGGGGTCGCTTCCAGGACCTGCTGAGCCGGCTGCATGCCAACCAGAGCCGAGAGGACTCGAACTCAGAACCAAGTCCTGACCCAGCTGTCCGGATACTCAGTCCAGAGGTGAGATTGGGGTCCCACGGCCAGCTGCTACTCCGCGTCAACCGGGCGTCGCTGAGTCAGGGTCTCCCCGAAGCCTACCGCGTGCACCGAGCGCTGCTCCTGCTGACGCCGACGGCCCGCCCCTGGGACATCACTAGGCCCCTGAAGCGTGCGCTCAGCCTCCGGGGACCCCGTGCTCCCGCATTACGCCTGCGCCTGACGCCGCCTCCGGACCTGGCTATGCTGCCCTCTGGCGGCACGCAGCTGGAACTGCGCTTACGGGTAGCCGCCGGCAGGGGGCGCCGAAGCGCGCATGCGCACCCAAGAGACTCGTGCCCACTGGGTCCGGGGCGCTGCTGTCACTTGGAGACTGTGCAGGCAACTCTTGAAGACTTGGGCTGGAGCGACTGGGTGCTGTCCCCGCGCCAGCTGCAGCTGAGCATGTGCGTGGGCGAGTGTCCCCACCTGTATCGCTCCGCGAACACGCATGCGCAGATCAAAGCACGCCTGCATGGCCTGCAGCCTGACAAGGTGCCTGCCCCGTGCTGTGTCCCCTCCAGCTACACCCCGGTGGTTCTTATGCACAGGACAGACAGTGGTGTGTCACTGCAGACTTATGATGACCTGGTGGCCCGGGGCTGCCACTGCGCTTGA
(配列番号3)。
29個の残基シグナル配列の切断後のヒトGDF15のアミノ酸配列は(括弧内に任意のN末端メチオニンコドンとともに示され):
(M)LSLAEASRASFPGPSELHSEDSRFRELRKRYEDLLTRLRANQSWEDSNTDLVPAPAVRILTPEVRLGSGGHLHLRISRAALPEGLPEASRLHRALFRLSPTASRSWDVTRPLRRQLSLARPQAPALHLRLSPPPSQSDQLLAESSSARPQLELHLRPQAARGRRRARARNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI(配列番号6)
であり、(括弧内に任意のN末端メチオニンコドン、および任意のストップコドンとともに示される)DNA配列によりコードされる:
(ATG)CTGTCTCTGGCCGAGGCGAGCCGCGCAAGTTTCCCGGGACCCTCAGAGTTGCACTCCGAAGACTCCAGATTCCGAGAGTTGCGGAAACGCTACGAGGACCTGCTAACCAGGCTGCGGGCCAACCAGAGCTGGGAAGATTCGAACACCGACCTCGTCCCGGCCCCTGCAGTCCGGATACTCACGCCAGAAGTGCGGCTGGGATCCGGCGGCCACCTGCACCTGCGTATCTCTCGGGCCGCCCTTCCCGAGGGGCTCCCCGAGGCCTCCCGCCTTCACCGGGCTCTGTTCCGGCTGTCCCCGACGGCGTCAAGGTCGTGGGACGTGACACGACCGCTGCGGCGTCAGCTCAGCCTTGCAAGACCCCAGGCGCCCGCGCTGCACCTGCGACTGTCGCCGCCGCCGTCGCAGTCGGACCAACTGCTGGCAGAATCTTCGTCCGCACGGCCCCAGCTGGAGTTGCACTTGCGGCCGCAAGCCGCCAGGGGGCGCCGCAGAGCGCGTGCGCGCAACGGGGACCACTGTCCGCTCGGGCCCGGGCGTTGCTGCCGTCTGCACACGGTCCGCGCGTCGCTGGAAGACCTGGGCTGGGCCGATTGGGTGCTGTCGCCACGGGAGGTGCAAGTGACCATGTGCATCGGCGCGTGCCCGAGCCAGTTCCGGGCGGCAAACATGCACGCGCAGATCAAGACGAGCCTGCACCGCCTGAAGCCCGACACGGTGCCAGCGCCCTGCTGCGTGCCCGCCAGCTACAATCCCATGGTGCTCATTCAAAAGACCGACACCGGGGTGTCGCTCCAGACCTATGATGACTTGTTAGCCAAAGACTGCCACTGCATATGA
(配列番号5)。
32個の残基シグナル配列の切断後のマウスGDF15のアミノ酸配列は(括弧内に任意のN末端メチオニンコドンとともに示され):
(M)SQGDALAMPEQRPSGPESQLNADELRGRFQDLLSRLHANQSREDSNSEPSPDPAVRILSPEVRLGSHGQLLLRVNRASLSQGLPEAYRVHRALLLLTPTARPWDITRPLKRALSLRGPRAPALRLRLTPPPDLAMLPSGGTQLELRLRVAAGRGRRSAHAHPRDSCPLGPGRCCHLETVQATLEDLGWSDWVLSPRQLQLSMCVGECPHLYRSANTHAQIKARLHGLQPDKVPAPCCVPSSYTPVVLMHRTDSGVSLQTYDDLVARGCHCA(配列番号8)
であり、(括弧内に任意のN末端メチオニンコドン、および任意のストップコドンとともに示される)DNA配列によりコードされる:
(ATG)TCGCAGGGGGACGCCCTGGCAATGCCTGAACAGCGACCCTCCGGCCCTGAGTCCCAACTCAACGCCGACGAGCTACGGGGTCGCTTCCAGGACCTGCTGAGCCGGCTGCATGCCAACCAGAGCCGAGAGGACTCGAACTCAGAACCAAGTCCTGACCCAGCTGTCCGGATACTCAGTCCAGAGGTGAGATTGGGGTCCCACGGCCAGCTGCTACTCCGCGTCAACCGGGCGTCGCTGAGTCAGGGTCTCCCCGAAGCCTACCGCGTGCACCGAGCGCTGCTCCTGCTGACGCCGACGGCCCGCCCCTGGGACATCACTAGGCCCCTGAAGCGTGCGCTCAGCCTCCGGGGACCCCGTGCTCCCGCATTACGCCTGCGCCTGACGCCGCCTCCGGACCTGGCTATGCTGCCCTCTGGCGGCACGCAGCTGGAACTGCGCTTACGGGTAGCCGCCGGCAGGGGGCGCCGAAGCGCGCATGCGCACCCAAGAGACTCGTGCCCACTGGGTCCGGGGCGCTGCTGTCACTTGGAGACTGTGCAGGCAACTCTTGAAGACTTGGGCTGGAGCGACTGGGTGCTGTCCCCGCGCCAGCTGCAGCTGAGCATGTGCGTGGGCGAGTGTCCCCACCTGTATCGCTCCGCGAACACGCATGCGCAGATCAAAGCACGCCTGCATGGCCTGCAGCCTGACAAGGTGCCTGCCCCGTGCTGTGTCCCCTCCAGCTACACCCCGGTGGTTCTTATGCACAGGACAGACAGTGGTGTGTCACTGCAGACTTATGATGACCTGGTGGCCCGGGGCTGCCACTGCGCTTGA
(配列番号7)。
【0035】
9個の分子間ジスルフィド結合を含むホモダイマーを含む、ヒトGDF15の組み換え活性形態のアミノ酸配列は(括弧内に任意のN末端メチオニン残基とともに示され):
(M)ARNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI(配列番号10)
であり、(括弧内に任意のN末端メチオニンコドン、および任意のストップコドンとともに示される)DNA配列によりコードされる:
(ATG)GCGCGCAACGGGGACCACTGTCCGCTCGGGCCCGGGCGTTGCTGCCGTCTGCACACGGTCCGCGCGTCGCTGGAAGACCTGGGCTGGGCCGATTGGGTGCTGTCGCCACGGGAGGTGCAAGTGACCATGTGCATCGGCGCGTGCCCGAGCCAGTTCCGGGCGGCAAACATGCACGCGCAGATCAAGACGAGCCTGCACCGCCTGAAGCCCGACACGGTGCCAGCGCCCTGCTGCGTGCCCGCCAGCTACAATCCCATGGTGCTCATTCAAAAGACCGACACCGGGGTGTCGCTCCAGACCTATGATGACTTGTTAGCCAAAGACTGCCACTGCATATAA
(配列番号9)。
【0036】
9個の分子間ジスルフィド結合を含むホモダイマーを含む、マウスGDF15の組み換え活性形態のアミノ酸配列は(括弧内に任意のN末端メチオニンコドンとともに示され):
(M)SAHAHPRDSCPLGPGRCCHLETVQATLEDLGWSDWVLSPRQLQLSMCVGECPHLYRSANTHAQIKARLHGLQPDKVPAPCCVPSSYTPVVLMHRTDSGVSLQTYDDLVARGCHCA(配列番号12)
であり、(括弧内に任意のN末端メチオニンコドン、および任意のストップコドンとともに示される)DNA配列によりコードされる:
(ATG)AGCGCGCATGCGCACCCAAGAGACTCGTGCCCACTGGGTCCGGGGCGCTGCTGTCACCTGGAGACTGTGCAGGCAACTCTTGAAGACTTGGGCTGGAGCGACTGGGTGTTGTCCCCGCGCCAGCTGCAGCTGAGCATGTGCGTGGGCGAGTGTCCCCACCTGTATCGCTCCGCGAACACGCATGCGCAGATCAAAGCACGCCTGCATGGCCTGCAGCCTGACAAGGTGCCTGCCCCGTGCTGTGTCCCCTCCAGCTACACCCCGGTGGTTCTTATGCACAGGACAGACAGTGGTGTGTCACTGCAGACTTATGATGACCTGGTGGCCCGGGGCTGCCACTGCGCTTGA(配列番号11)。
【0037】
本明細書に記載のように、用語「GDF15ポリペプチド」は、ヒトアミノ酸配列番号2、6、および10を含むGDFポリペプチドを指す。しかし、用語「GDF15ポリペプチド」はまた、1つ以上のアミノ酸によって、天然のGDFポリペプチド配列、例えば、配列番号2、6、および10のアミノ酸配列と異なり、その結果、配列が配列番号2、6、および10と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを包含する。GDFポリペプチドを、1つ以上のアミノ酸置換を保存的または非保存的のいずれかで導入することにより、および天然または非天然のアミノ酸をGDF15ポリペプチドの特定の位置で使用することにより生成することができる。
【0038】
「保存的アミノ酸置換」は、自然のアミノ酸残基(すなわち、野生型FGF21ポリペプチド配列の所与の位置に見出される残基)と、その位置のアミノ酸残基の極性または電荷にほとんどまたは全く影響しないような非自然の残基(すなわち、野生型FGF21ポリペプチド配列の同じ位置に見出されない残基)との置換を含むことができる。保存的アミノ酸置換はまた、生物系の合成によるものよりむしろ化学ペプチド合成により典型的に組み込まれる非天然のアミノ酸残基を包含する。これらは、ペプチド模倣体および他のアミノ酸部分の逆転つまり反転形態を含む。
【0039】
天然の残基を、共通の側鎖特性に基づき各クラスに分類することができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2) 中性親水性:Cys、Ser、Thr、
(3) 酸性:Asp、Glu、
(4) 塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg、
(5) 鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、および
(6) 芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0040】
アミノ酸のさらなる基も、例えば、Creighton (1984) PROTEINS:STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES (2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載の原理を使用して配合することができる。いくつかの例において、これは、2つ以上の上記の特徴に基づいた置換をさらに特徴づけるのに有用であり得る(例えば、Thr残基などの「小極性」残基との置換が、適切な文脈において高度な保存的置換を表すことができる)。
【0041】
保存的置換は、これらのクラスの1つの1メンバーを同じクラスの別のメンバーに置き換えることを含む。非保存的置換は、これらのクラスの1つの1メンバーを別のクラスからの1メンバーに置き換えることを含むことができる。
【0042】
上記の分類のものに類似の公知の生理化学特性を有する合成、希少、または修飾アミノ酸残基を、配列中の特定のアミノ酸残基の「保存的」置換物として使用することができる。例えば、D−Arg残基は、典型的なL−Arg残基の置換物として作用し得る。これはまた、特定の置換が上記のクラスの2つ以上の条件に記載され得る場合であり得る(例えば、小さく、かつ疎水性の残基との置換は、1個のアミノ酸を、上記のクラスと、もしくは両方の定義を満たす、このような残基に類似の生理化学特性を有することが当技術分野において知られている他の合成、希少、または修飾残基との両方に見出される残基(複数可)と置換することを意味する)。
【0043】
配列番号1、5、および9に縮重したもの、および配列番号2、6、および10のポリペプチド変異体をコードするものを含む、本明細書に提供されるGDF15ポリペプチドをコードする核酸配列は、本開示の他の態様を形成する。
II.B. GDF15ベクター
【0044】
本明細書に提供されるGDF15核酸配列を発現するために、適切なコード配列、例えば、配列番号1、5、または9を、適切なベクターにクローン化することができ、適切な宿主に導入後、配列を、当技術分野で公知の標準的なクローニングおよび発現技法に従い、コードされたポリペプチドを生成するよう発現させることができる(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F., and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989に記載)。本発明はまた、本発明の核酸配列を含むこのようなベクターに関する。
【0045】
「ベクター」は、(a)ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を促進し、(b)そこからポリペプチドの生成を促進し、(c)標的細胞の遺伝子導入/形質転換を促進し、(d)核酸配列の複製を促進し、(e)核酸の安定性を促進し、(f)核酸および/または形質転換した/遺伝子導入された細胞の検出を促進し、かつ/または(g)そうでなければ有利な生物学的および/または生理化学的機能を、ポリペプチドをコードする核酸に付与する送達ビヒクルを指す。ベクターは、染色体の、非染色体の、および合成核酸のベクター(適切な発現制御要素のセットを含む核酸配列)を含む任意の適切なベクターであってよい。このようなベクターの例として、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせ由来のベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターがある。
【0046】
組み換え発現ベクターを、原核生物の(例えば、大腸菌)、または真核生物の細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクターを使用する昆虫細胞、酵母細胞、または哺乳類動物細胞)内のGDF15タンパク質の発現用に設計することができる。代表的な宿主細胞は、大腸菌株のTOP10F´、TOP10、DH10B、DH5a、HB101、W3110、BL21(DE3)、およびBL21(DE3)pLysS、BLUESCRIPT(Stratagene)、哺乳類動物細胞株のCHO、CHO−K1、HEK293、293−EBNA pINベクター(Van Heeke&Schuster,J.Biol.Chem.264:5503−5509(1989)、pETベクター(Novagen,Madison Wis.)を含むクローニングおよび発現に典型的に使用されるこれらの宿主を含む。代替として、組み換え発現ベクターを、インビトロで、例えば、T7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼ、およびインビトロ翻訳システムを使用して転写および翻訳することができる。好ましくは、ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸配列を含有するクローニング部位のプロモーター上流を含有する。スイッチオンおよびオフすることができるプロモーターの例として、lacプロモーター、T7プロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、およびtrpプロモーターがある。
【0047】
それゆえ、本明細書において、組み換えGDF15の発現を促進するGDF15をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。種々の実施形態において、ベクターは、GDF15の発現を制御する操作可能に結合した核酸配列を含む。ベクターは、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進要素を含み、または関連し得る。このような要素の例として、強力な発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー、RSVプロモーター、SV40プロモーター、SL3−3プロモーター、MMTVプロモーター、またはHIV LTRプロモーター、EF1αプロモーター、CAGプロモーター)、有効なポリ(A)末端配列、大腸菌のプラスミド生成物の複製源、選択可能なマーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、および/または便利なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)がある。ベクターはまた、CMV IEなどの構成的プロモーターとは反対の誘導性プロモーターを含むことができる。一態様において、肝臓または膵臓組織などの代謝関連組織内の配列の発現を促進する組織特異的プロモーターに操作可能に結合するGDF15ポリペプチドをコードする配列を含む核酸を提供する。
II.C. 宿主細胞
【0048】
本開示の別の態様において、本明細書に開示されるGDF15核酸およびベクターを含む宿主細胞を提供する。種々の実施形態において、ベクターまたは核酸は、宿主細胞ゲノムに融合されるが、他の実施形態において、ベクターまたは核酸は過剰な染色体となる。
【0049】
このような核酸、ベクター、またはそのいずれかもしくは両方の組み合わせを含む酵母、細菌(例えば、大腸菌)、および哺乳類動物細胞(例えば、不死化哺乳類動物細胞)などの組み換え細胞を提供する。種々の実施形態において、GDF15ポリペプチドの発現をコードする配列を含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線形発現要素などの非融合核酸を含む細胞を提供する。
【0050】
本明細書に提供されるGDF15ポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターを、形質転換により、または遺伝子導入により宿主細胞に導入することができる。発現ベクターを用いて細胞を形質転換する方法は十分に公知である。
【0051】
GDF15をコードする核酸を、ウイルスベクターを介して宿主細胞または宿主動物に位置付けし、かつ/または送達することができる。任意の適切なウイルスベクターをこのキャパシティで使用することができる。ウイルスベクターは、所望の宿主細胞内での本発明の核酸の送達、複製、および/または発現を促進する、任意の数のウイルスポリヌクレオチドを単独または1つ以上のウイルスタンパク質と組み合わせたものを含むことができる。ウイルスベクターは、ウイルス核酸およびGDF15ポリペプチドをコードする核酸を含む、ウイルスゲノム、ウイルスタンパク質/核酸抱合体、ウイルス様粒子(VLP)または無傷のウイルス粒子の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドであってよい。ウイルス粒子ウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子または修飾ウイルス粒子を含むことができる。ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターアンプリコンなどの、複製および/または発現のために別のベクターまたは野生型ウイルスの存在を必要とするベクターであってよい(例えば、ウイルスベクターは、ヘルパー依存型ウイルスであってよい)。典型的に、このようなウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子、または導入遺伝子のキャパシティを増大させ、もしくは核酸の遺伝子導入および/または発現を補助する、タンパク質および/または核酸含量を改変したウイルス粒子からなる(このようなベクターの例として、ヘルペスウイルス/AAVアンプリコンがある)。典型的に、ウイルスベクターは、通常ヒトに感染するウイルスと同様であり、かつ/またはそれに由来する。この点において、適切なウイルスベクター粒子は、例えば、アデノウイルスベクター粒子(アデノウイルス科の任意のウイルスまたはそのウイルス由来を含む)、アデノ随伴ウイルスベクター粒子(AAVベクター粒子)、または他のパルボウイルスおよびパルボウイルスベクター粒子、パピローマウイルスベクター粒子、フラビウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ならびにレンチウイルスベクターを含む。
II.D. GDF15ポリペプチドの単離
【0052】
本明細書に記載のように発現したGDF15ポリペプチドを、標準的なタンパク質精製方法を使用して単離することができる。GDF15ポリペプチドを、天然に発現する細胞から単離することができ、またはGDF15を発現するよう遺伝子操作されている細胞、例えば、天然にGDF15を発現しない細胞から単離することができる。
【0053】
GDF15ポリペプチドを単離するために使用することができるタンパク質精製方法、ならびに関連の材料および試薬は当技術分野で公知である。GDF15ポリペプチドを精製する例示的方法は、以下の本明細書の実施例に記載される。GDF15ポリペプチドを単離するために有用であり得るさらなる精製方法を、Bootcov MR,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11514−9,Fairlie WD,2000,Gene 254:67−76などの参照文献に見出すことができる。
III. GDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物
【0054】
GDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。このようなGDF15ポリペプチド薬学的組成物は、投与形態の適切性において選択された薬学的に、または生理学的に許容される配合剤と混合した治療有効量のGDF15ポリペプチドを含むことができる。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」は、ヒトまたは非ヒト対象の体内へのGDF15ポリペプチドの送達を達成し、または強化するために適した1つ以上の配合剤を指す。この用語は、生理学的に相溶性である、任意および全ての溶剤、分散媒体、被覆物、抗菌性および抗真菌性薬剤、等張性および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例として、1種以上の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせを含む。いくつかの例において、等張性剤、例えば、薬学的組成物中にマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムなどの糖つまり多価アルコールを含むことが好ましいだろう。GDF15ポリペプチドの貯蔵寿命または効力を強化する、湿潤剤などの薬学的に許容される物質、または湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤もしくは緩衝液などの少量の補助物質はまた、担体として作用し、またはその構成要素を形成することができる。許容される薬学的に許容される担体は、使用される用量および濃度にてレシピエントに非毒性であることが好ましい。
【0055】
薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭い、滅菌、安定性、溶解もしくは放出の割合、吸着、または浸透を改変、維持、または保存するための配合剤(複数可)を含有することができる。適切な配合剤は、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン)、抗菌剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝液(例えば、ホウ酸、重炭酸、Tris−HCl、クエン酸、リン酸、または他の有機酸)、嵩高剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン)、充填剤、単糖類、二糖類、および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン)、着色剤、香料、および希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素)、溶剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁剤、界面活性剤、または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20もしくはポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、またはチロキサパル)、安定性増強剤(例えば、スクロースまたはソルビトール)、張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物−好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム−またはマンニトールソルビトール)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤、および/または薬学的補助剤を含むがそれらに限定されない(例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,19th edition,(1995)、Berge et al.,J.Pharm.Sci.,6661),1−19(1977)を参照のこと。さらなる関連の原理、方法、および物質は、例えば、Lieberman et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS−DISPERSE SYSTEMS(2nd ed.,vol.3,1998)、Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS&DRUG DELIVERY SYSTEMS(7th ed.2000)、Martindale,THE EXTRA PHARMACOPEIA(31st edition),Remington’s PHARMACEUTICAL SCIENCES(16th−20
th and subsequent editions)、The Pharmacological Basis Of Therapeutics,Goodman and Gilman,Eds.(9th ed.−−1996)、Wilson and Gisvolds’TEXTBOOK OF ORGANIC MEDICINAL AND PHARMACEUTICAL CHEMISTRY,Delgado and Remers,Eds.(10th ed.,1998)に記載されている。薬学的に許容される組成物を配合する原理も、任意の目的のため参照により本明細書に組み込まれる、例えば、Aulton,PHARMACEUTICS:THE SCIENCE OF DOSAGE FORM DESIGN,Churchill Livingstone(New York)(1988)、EXTEMPORANEOUS ORAL LIQUID DOSAGE PREPARATIONS,CSHP(1998))に記載されている。
【0056】
最適な薬学的組成物は、例えば、目的の投与経路、送達形式、および所望の用量に応じて当業者により決定される(例えば、Remington’s PHARMACEUTICAL SCIENCES、上記を参照のこと)。このような組成物は、GDF15ポリペプチドの物理状態、安定性、インビボ放出の割合、およびインビボクリアランスの割合に影響を及ぼし得る。
【0057】
薬学的組成物の主要なビヒクルまたは担体は本来、水性または非水性のいずれかであってよい。例えば、注射に適したビヒクルまたは担体は、非経口投与の組成物に共通の他の材料とともに補充することができる、水、生理学的食塩溶液、または人工脊髄液であってよい。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらに例示的なビヒクルである。他の例示的薬学的組成物は、約pH7.0〜8.5のTris緩衝液または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、これはソルビトールまたは適切な置換物をさらに含むことができる。本発明の一実施形態において、FGF21ポリペプチド突然変異体組成物を、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、所望の純度を有する選択された組成物と、最適な配合剤を混合することにより保存用に調製することができる(Remington’s PHARMACEUTICAL SCIENCES、上記)。さらに、GDF15ポリペプチド生成物を、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として配合することができる。
【0058】
GDF15ポリペプチド薬学的組成物を、非経口送達用に選択することができる。代替として、組成物を、吸入用または経口などの消化管を通した送達用に選択することができる。このような薬学的に許容される組成物の調製は、当技術分野の技能の範囲内である。
【0059】
配合物構成要素は、投与部位に許容される濃度で存在する。例えば、緩衝液を使用し、組成物を生理学的pHまたはわずかに低いpH、典型的に約5〜約8のpHの範囲内で維持する。
【0060】
非経口投与を考慮するときに、本発明に使用する治療組成物は、薬学的に許容されるビヒクル中に所望のGDF15ポリペプチドを含む、パイロジェンフリーの、非経口に許容される水溶液の形態であってよい。非経口注射に特に適切なビヒクルは、GDF15ポリペプチドが適切に保存された滅菌、等張性溶液として配合される滅菌蒸留水である。さらに別の調製は、所望の分子と、後にデポ注射を介して送達することができる生成物を徐放性または持続性放出する、注射可能なマイクロスフィア、生浸食性粒子、ポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸またはポリグリコール酸)、ビーズ、またはリポソームなどの物質との配合を含むことができる。ヒアルロン酸も使用することができ、これは、血液循環の持続時間を促進する効果を有し得る。所望の分子を導入するための他の適切な手段は、埋め込み可能な薬物送達デバイスを含む。
【0061】
一実施形態において、薬学的組成物を吸入用に配合することができる。例えば、GDF15ポリペプチドを吸入用乾燥粉末として配合することができる。GDF15ポリペプチド吸入溶液もエアロゾル送達用の噴射剤とともに配合することができる。さらに別の実施形態において、溶液を霧状にすることができる。肺内投与は、国際公開WO94/20069号にさらに記載されており、これは化学的に修飾されたタンパク質の肺内送達について記載している。
【0062】
特定の配合物を経口投与することができることも考慮されている。本発明の一実施形態において、この様式で投与されるGDF15ポリペプチドを、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の化合時に慣習的に使用されるこれらの担体を用いてまたは用いずに配合することができる。例えば、カプセルを、バイオアベイラビリティが最大となり、全身循環前の分解が最小であるときに消化管の地点で配合物の活性部分が放出されるよう設計することができる。さらなる物質をGDF15ポリペプチドの吸収を促進するために含むことができる。希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤も使用することができる。
【0063】
別の薬学的組成物は、錠剤の製造に適した非毒性賦形剤との混合物中に有効量のGDF15ポリペプチドを含むことができる。滅菌水または別の適切なビヒクルに錠剤を溶解させることにより、溶液を単位剤形に調製することができる。適切な賦形剤は、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、もしくは重炭酸、ラクトース、またはリン酸カルシウム;または結合剤、例えば、スターチ、ゼラチン、またはアカシア;あるいは潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクを含むが、それらに限定されない。
【0064】
持続性または徐放性送達配合物にGDF15ポリペプチドを含む配合物を含む、さらなるGDF15ポリペプチド薬学的組成物は、当業者に明らかである。種々の他の持続性または徐放性送達手段、例えば、リポソーム担体、生浸食性マイクロ粒子、または多孔質ビーズ、およびデポ注射液を配合する技法も、当業者に公知である(例えば、薬学的組成物の送達用の多孔質ポリマーマイクロ粒子の徐放性放出について記載している、国際公開WO93/15722号、ならびにマイクロスフィア/マイクロ粒子の調製および使用について考察している、Wischke&Schwendeman,2008,Int.J.Pharm.364:298−327、およびFreiberg&Zhu,2004,Int.J.Pharm.282:1−18を参照のこと)。本明細書に記載のように、ヒドロゲルは、持続性または徐放性送達配合物の一例である。
【0065】
持続放出性調製物のさらなる例として、形状物、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態の半透性ポリマーマトリクスがある。持続放出性マトリクスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3773919号および欧州特許第0058481号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al.,1983,Biopolymers 22:547−56)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)(Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167−277、およびLanger,1982,Chem.Tech.12:98−105)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,上記)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第0133988号)を含むことができる。持続放出性組成物もリポソームを含むことができ、これは当技術分野で公知のいつくかの方法のいずれかにより調製することができる。例えば、Epstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688−92、ならびに欧州特許第0036676号、同第0088046号、および同第0143949号を参照のこと。
【0066】
インビボの投与に使用されるGDF15ポリペプチド薬学的組成物は、典型的に滅菌する必要がある。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によりなされ得る。組成物を凍結乾燥させる場合、この方法を使用する滅菌を、凍結乾燥および再構築の前または後のいずれかで行うことができる。非経口投与の組成物を凍結乾燥形態または溶液で保存することができる。さらに、非経口組成物は一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静注用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0067】
一旦、薬学的組成物が配合されると、溶液、懸濁液、ゲル、乳液、固体として、または脱水もしくは凍結乾燥させた粉末として滅菌バイアルに保存することができる。このような配合物をすぐに使える形態または投与前の再構築を必要とする形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存することができる。
【0068】
具体的な実施形態において、本発明は、単回用量の投与単位を生成するためのキットに関する。キットはそれぞれ、乾燥タンパク質を有する第1の容器および水性配合物を有する第2の容器の両方を含有することができる。単一および多数に区切られた充填前シリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ)を含有するキットも本発明の範囲内に含まれる。
【0069】
治療として使用されるGDF15ポリペプチド薬学的組成物の有効量は、例えば、治療内容および目的による。それゆえ、当業者であれば、治療の適切な用量値が部分的に、送達される分子、GDF15ポリペプチドが使用される適応症、投与経路、および患者の体格(体重、体表面、または器官の大きさ)および状態(年齢および一般的健康)に応じて異なることが明らかであるだろう。それに応じて、臨床医は、最適な治療効果を得るために用量を設定し、投与経路を変更することができる。典型的な用量は、上記の因子に応じて約0.1μg/kg〜約100mg/kg以上までの範囲となり得る。他の実施形態において、用量は、0.1μg/kg〜約100mg/kg、または1μg/kg〜約100mg/kg、あるいは5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg〜約100mg/kgの範囲となり得る。さらに他の実施形態において、用量は、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、2000μg/kg、3000μg/kg、4000μg/kg、5000μg/kg、6000μg/kg、7000μg/kg、8000μg/kg、9000μg/kg、または10mg/kgであってよい。
【0070】
用量の回数は、使用される配合物中のGDF15ポリペプチドの薬物動態パラメータによる。典型的に、臨床医は、所望の効果を得る用量に達するまで組成物を投与する。したがって、組成物を単回投与として、時間をかけて2回以上の投与(同量の所望の分子を含有し、または含有しない)として、または埋め込みデバイスもしくはカテーテルを介して連続注入として投与することができる。適切な用量のさらなる微調整は、当業者により定期的に行われ、かつ定期的に行われる仕事の範囲内になる。適切な用量は、適切な用量反応データの使用を通して確定され得る。
【0071】
薬学的組成物の投与経路は、例えば、経口による;静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病変内経路による注射を通して;持続性放出系(注射も可能である)による;または埋め込みデバイスによる公知の方法に従う。所望の場合、組成物を、ボーラス注射により、もしくは注入により連続して、または埋め込みデバイスにより投与することができる。
【0072】
代替または追加として、組成物を、膜、スポンジまたは所望の分子を吸収もしくは封入した他の適切な材料の埋め込みを介して局所的に投与することができる。埋め込みデバイスを使用する場合、デバイスを任意の適切な組織または器官に埋め込むことができ、所望の分子の送達は、拡散、時限放出型のボーラス、または連続投与を介してなされ得る。
【0073】
薬物、例えば、GDF15ポリペプチドを、薬物濃度を長期間にわたり所望の治療有効レベルに維持することができるような所定の割合で送達するため、種々の異なる手法を使用することができる。一例において、ゼラチン(例えば、ウシゼラチン、ヒトゼラチン、または別の供給源由来のゼラチン)などのポリマーを含むヒドロゲル、または天然の、もしくは合成して生成されたポリマーを使用することができる。ポリマー(例えば、ゼラチン)の任意の割合は、ヒドロゲル中、5、10、15、または20%で使用することができる。適切な濃度の選択は、所望の治療特性および治療分子の薬物動態特性などの種々の因子により得る。
【0074】
ヒドロゲルに組み込まれることができるポリマーの例として、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド、co−ポリエチレンオキシドブロックもしくはランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、ヘパリン、ポリサッカライド、ポリエーテルなどがある。
【0075】
ヒドロゲル配合物を生成するときに考慮される得る別の因子は、ヒドロゲルおよび架橋剤の架橋度である。一実施形態において、架橋は、メタクリル酸無水物を含むメタクリル化反応を介して得ることができる。いくつかの状況において、高い架橋度は望ましいが、他の状況において、低い架橋度が好ましい。いくつかの例において、高い架橋度は、より長い持続性放出をもたらす。高い架橋度は、より硬いヒドロゲルと、薬物が送達されるより長い時間をもたらし得る。
【0076】
ポリマーと架橋剤(例えば、メタクリル酸無水物)の任意の比を使用して、所望の特性を有するヒドロゲルを生成することができる。例えば、ポリマーと架橋剤の比は、例えば、8:1、16:1、24:1、または32:1であってよい。例えば、ヒドロゲルポリマーがゼラチンであり、架橋剤がメタクリル酸であるときに、8:1、16:1、24:1、または32:1のメタクリル酸無水物:ゼラチンの割合を使用することができる。
V. GDF15タンパク質および核酸の治療による使用
【0077】
GDF15ポリペプチドを代謝状態または障害を治療、診断、または改善するために使用することができる。一実施形態において、治療される代謝障害は、糖尿病、例えば、2型真性糖尿病である。別の実施形態において、代謝状態または障害は肥満である。他の実施形態において、代謝状態または障害は脂質異常症、高血糖値、高インスリン値、または糖尿病性腎症である。例えば、GDF15ポリペプチドを使用して治療または改善することができる代謝状態または障害は、ヒト対象が100mg/dL以上、例えば、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、または200mg/dLを超える空腹時血糖値を有する状態を含む。血糖値は、摂取もしくは絶食状態、または任意に決定することができる。代謝状態または障害も、対象が代謝状態を進行させる危険が増大している状態である状態を含むことができる。ヒト対象において、このような状態は、100mg/dLの空腹時血糖値を含む。GDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物を使用して治療することができる状態はまた、関連参照文献、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、American Diabetes Association Standards of Medical Care in Diabetes Care−2011,American Diabetes Association,Diabetes Care Vol.34,No.Supplement1,S11−S61,2010に見出すことができる。
【0078】
適応において、2型糖尿病、高血糖値、高インスリン値、脂質異常症、肥満、または糖尿病性腎症などの代謝障害または状態を、治療有効量のGDF15ポリペプチド、例えば、配列番号2、6、または10などのヒトGDF15ポリペプチドを、それを必要とする患者に投与することにより治療することができる。投与は、本明細書に記載のように、例えば、IV注射、腹腔(IP)注射、皮下注射、筋肉内注射により、または錠剤もしくは液体配合物の形態の経口により行われることができる。一部の状況において、治療有効の、または好ましい用量のGDF15ポリペプチドは臨床医により決定されることができる。治療有効用量のGDF15ポリペプチドは、特に投与スケジュール、投与される物質の単位用量、GDF15ポリペプチドを他の治療剤と組み合わせて投与するかどうか、免疫状態、およびレシピエントの健康による。本明細書で使用される用語「治療有効用量」は、治療される疾患または障害の症状の緩和または改善を含む、研究者、医師、または他の臨床医により求められている、組織系、動物、またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出すGDF15ポリペプチドの量、すなわち、1つ以上の所望の生物学的または医学的反応の観察可能な値、例えば、血糖、インスリン、トリグリセライド、もしくはコレステロール値を低下させること、体重を減少させること、またはブドウ糖耐性、エネルギー消費、もしくはインスリン感受性を改良することを支持するGDF15ポリペプチドの量を意味する。
【0079】
GDF15ポリペプチドの治療有効用量も所望の結果とともに異なり得ることを記載しておく。したがって、例えば、低い血糖値を示す状況において、GDF15の用量は、比較的低い血糖値が望まれる用量より相応して多くなる。反対に、高い血糖値を示す状況において、GDF15の用量は、比較的高い血糖値が望まれる用量より相応して少なくなる。
【0080】
種々の実施形態において、対象は、GDF15ポリペプチドで治療することができる100mg/dL以上の血糖値を有するヒトである。
【0081】
一実施形態において、本開示の方法は、対象のブドウ糖、インスリン、コレステロール、脂質などの1つ以上の代謝関連化合物の基準値を最初に測定することを含む。次いで、GDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物を対象に投与する。所望の期間の後、対象の1つ以上の代謝関連化合物(例えば、血糖、インスリン、コレステロール、脂質)の値を再度測定する。次いで、対象の代謝関連化合物の相対的変化を決定するため、2つの値を比較することができる。その比較の結果に応じて、GDF15分子を含む薬学的組成物の別の用量を投与し、1つ以上の代謝関連化合物の所望の値を得ることができる。
【0082】
GDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物を別の化合物と共投与することができることを記載しておく。GDF15ポリペプチドと共投与される化合物の識別および特性は、治療または改善される状態の性質による。GDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物と組み合わせて投与することができる化合物の例の非限定的リストは、ロシグリチゾン、ピオグリチゾン、レパグリニド、ナテグリチニド、メトホルミン、エクセナチド、スチアグリプチン、プラムリンチド、グリピジド、グリメプリリドアカルボース、およびミグリトールを含む。
VI. キット
【0083】
開示される方法を実施するためのキットも提供する。このようなキットは、本明細書に記載のものを含む薬学的組成物を含むことができ、本明細書に提供されるペプチドまたはタンパク質をコードする核酸、このような核酸を含むベクターおよび細胞、およびこのような核酸含有化合物を含む薬学的組成物を含み、これらは滅菌容器において提供され得る。任意に、代謝障害の治療において提供された薬学的組成物を使用する方法の取扱説明書も含まれることができ、または患者もしくは医療提供者に利用可能となり得る。
【0084】
一態様において、キットは、(a)治療有効量のGDF15ポリペプチドを含む薬学的組成物、および(b)薬学的組成物のための1つ以上の容器を含む。このようなキットはまた、その使用のための取扱説明書を含むことができ、取扱説明書は、治療されるまさにその代謝障害に応じて作成することができる。取扱説明書は、キットに提供される材料の使用および性質を記載することができる。特定の実施形態において、キットは、代謝障害、例えば、高血糖値、高インスリン値、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、または糖尿病性腎症を治療するために投与を行う患者のための取扱説明書を含む。
【0085】
取扱説明書は、紙またはプラスチックなどの基材に印刷することができ、添付文書としてキット内に、キットの容器またはその構成要素(例えば、包装に関連)の表示内などにあってよい。他の実施形態において、取扱説明書は、適切なコンピュータ読み取り可能保存媒体、例えば、CD−ROM、ディスケットなどに存在する電子保存データファイルとして存在する。さらに他の実施形態において、実際の取扱説明書はキット内に存在しないが、インターネット上などの遠隔発信源から取扱説明書を得る手段を提供する。この実施形態の例は、取扱説明書を閲覧することができ、かつ/または取扱説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。
【0086】
多くの場合、キットの一部または全ての構成要素を、滅菌を維持するために適切な包装容器に包装する。キットの構成要素を単一の、取り扱いが容易な一式を作製するためにキット格納要素に包装することができ、この場合、キット格納要素、例えば、箱または類似の構造は、例えば、キットの構成要素の一部または全ての滅菌性をさらに保存するために気密容器であってよく、またはなくてもよい。
実施例
【0087】
行われた実験および得られた結果を含む以下の実施例は、図示目的にのみ提供され、本発明を限定するとして解釈されない。
実施例1
GDF15ポリペプチドの調製
【0088】
アフィニティタグとともに構築されたGDF15発現ベクターを用いて形質転換された大腸菌を600nmで光学密度9に成長させた後、6時間後に遠心分離により光学密度63にて誘導し、採取した。冷凍の細胞ペーストを解凍し、スラリーが均質になるまで低せん断ホモジナイザーを用いて緩衝液に15%(重量/容積)で再懸濁させた。次いで、細胞を高せん断ホモジナイズして破壊し、生成物含有封入体を放出させた。次いで、得られたホモジネートを5Cにて1時間5000xgで遠心分離し、廃棄した上清中に細胞質汚染物質を残して、ペレットとして封入体を採取した。冷水および低せん断ホモジナイザーを使用して元のホモジネート容積にペレットを均質に再懸濁させることにより、残りの細胞質を封入体から洗浄し、その後、前述同様に遠心分離した。次いで、得られたペレット、つまり洗浄した封入体(WIBS)を−80Cにて凍結させた。
【0089】
還元−可溶化において、十分な量のWIBSおよび塩酸グアニジン(GnHCl)をpH8.5にて使用し、およそ25mg/mlの還元生成物および6M GnHCl最終濃度を得た。次いで、可溶化物を、アルカリpHにてレドックス試薬、カオトロープ、および共溶剤を含有するリフォールディング緩衝液に撹拌しながら急速に25倍希釈した。リフォールド溶液をゆっくり撹拌し、72時間6Cにて、または溶液がエルマン試薬に陰性になるまで空気酸化させた。次いで、5Cのリフォールド溶液を、深層濾過により清澄させ、10倍の限外濾過濃度にし、続いて50mMリン酸ナトリウムを含有する緩衝液に透析濾過させ、pH8.5の低カオトロープ濃度にした。続く残留物を25Cに加温後、pHを酸性範囲に下げ、汚染物質を析出した。析出物を25C、5000xgで30分間の遠心分離により除去し、得られた上清を0.45μmの濾過によりさらに清澄させた。次いで、濾過物(AP)をpH8.5および固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)を含む精製の第1のステップを可能にする低塩濃度に調節した。
【0090】
タンパク質フォールディングおよびAPの後、GDF15を、2ステップのクロマトグラフィートレインを使用して精製した。調節したAPを、pH8.5の低塩濃度を含有するカオトロープ緩衝液で平衡させたIMACカラムに適用した。カラムを次に、基準紫外線(UV)レベルを得るまで平衡緩衝液で洗浄した。生成物および汚染物質を、ディスプレーサーの濃度を段階的に増加させることにより溶出し、溶出液を回収し、続いてクーマシー染色SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)により分析し、どの溶出分画が、予測分子量で移動するGDF15のポリペプチドを含有するかを同定した。IMACを完了後、プールした分画含有生成物を25CにてpH7.2および5mM EDTAに調節する。生成物を、アフィニティタグを切断する低濃度の酵素を添加することにより、25C、数時間で成熟長のGDF15に変換させた。切断反応混合物を、酢酸および有機溶剤の添加による有機改質剤および酸性pHを用いて調節した。これは、25Cで行われた逆相カラムからの生成物の直線勾配溶出からなる最終クロマトグラフィーのステップを可能にした。クロマトグラフィーからの溶出物を分画として回収後、SDS−PAGEにより分析し、均質な生成物にプールするために適切な分画を決定した。得られたプールは、弱酸性緩衝液に透析濾過することにより交換され、限外濾過により濃縮され、滅菌濾過され、5C、または凍結して保存された緩衝液であった。
実施例2
肝臓および精巣上体組織におけるマウスGDF15の制御
【0091】
肝臓および脂肪組織は、哺乳類動物の主要な代謝器官である。代謝障害の治療のための潜在的な新規の治療標的を同定するため、マイクロアレイ試験を行い、摂取または絶食させた野生型または肥満ob/obマウスの肝臓および脂肪組織の遺伝子発現パターンを比較した。肝臓または精巣上体脂肪組織を、RNA抽出のために、食餌に自由摂取(「摂取」)させ、または24時間絶食(「絶食」)させた週齢を一致させたC57Bl6またはob/ob雄マウス(Jackson Labs)から採取した。cRNAサンプルをハイブリダイズし、マイクロアレイチップ(Agilent)を特別に作製した。データを分析し、野生型およびob/obマウス間ならびに摂取および絶食マウス間の遺伝子発現パターンを比較した。マウスGDF15(配列番号4、NCBI受託番号BC067248.1)を、肝臓および脂肪組織の摂取/絶食により制御され、かつ野生型およびob/obマウスにおいて差次的に発現する標的遺伝子として同定した。
【0092】
図1Aおよび1Bは、肝臓および脂肪組織それぞれのGDF15のシグナル強度の変化を示す。GDF15発現レベルが、C57Bl/6マウスよりob/obマウス由来の肝臓組織においてかなり高くなったことを記載しておく。GDF15発現レベルは、C57Bl/6マウスおよびob/obマウス両方の肝臓において絶食により下方制御されていることが観察された。GDF15発現レベルはまた、C57Bl/6マウスよりob/obマウス由来の脂肪組織においてかなり高くなった。絶食は、C57Bl/6マウスおよびob/obマウス両方のGDF15遺伝子発現レベルを増加させた。しかし、フォールディング誘導は、ob/obマウスにおいてあまり強固ではなかった。これらのデータは、GDF15が新規の代謝制御因子となり得ることを示唆する。
実施例3
PPARアゴニストによるGDF15の導入
【0093】
PPARαは、肝臓の代謝を制御する核レセプターであり、代謝障害の主要な治療標的である。PPARαは、肝臓の絶食誘発性FGF21上方制御を介在する主要な制御因子であると報告されている(Inagaki T 2007 Cell Metab 5:415−25)。雄C57Bl6マウス(Jackson)を、PPARαアゴニストのクロフィブラート(500mg/kg)で処置し、肝臓組織をRNA抽出のための処置の後1日目に採取した。cRNAサンプルをマウス10Kマイクロアレイ(Motorola)にハイブリダイズした。データを分析し、マウス肝臓のPPARα標的遺伝子を同定した。
図2Aは、GDF15発現がマウス肝臓においてクロフィブラート処置によりかなり誘発されることを示し、GDF15が肝臓のPPARαの下流の標的遺伝子であることを実証した。
【0094】
PPARγは、脂肪組織の遺伝子発現の主要制御因子であり、PPARγアゴニストは、糖尿病治療に臨床的に承認され、または開発中である。脂肪組織内のアディポネクチン、アディポカインなどの一部のPPARγ標的遺伝子およびPPARγ標的遺伝子(Maeda N 2001 Diabetes 50:2094−9)も、2型糖尿病の治療のための治療標的として考慮される。ビヒクルまたはPPARγアゴニストBRL49653で処置した3T3−L1脂肪細胞の遺伝子発現パターンを比較し、マウスGDF15が脂肪細胞の標的遺伝子誘発性PPARγアゴニスト治療として同定された。分化した3T3−L1脂肪細胞を10μM BRL49653で24時間処置した。RNAサンプルを単離し、cRNAサンプルをマウス10Kマイクロアレイ(Motorola)にハイブリダイズした。データを分析し、3T3−L1脂肪細胞のPPARγ遺伝子を同定した。
図2Bは、GDF15発現が3T3−L1マウス脂肪細胞のBRL49653処置によりかなり誘発されることを示し、GDF15が脂肪細胞のPPARγの下流の標的遺伝子であることを実証し、GDF15が糖尿病治療の治療的標的になる可能性を有することを示唆した。
実施例4
マウスGDF15は、Ob/Obマウスの食餌摂取量、体重増加、血中インスリン値、血糖値、および血中脂質値を低下させる
【0095】
GDF15は、代謝変化または代謝を制御する主要経路を活性化させる薬理学的な処置により確実に制御されたことから、インビボのGDF15の過剰発現が肥満および糖尿病ob/obマウスの代謝表現型を生じるかどうかを調べた(Coleman DL 1973 Diabetologia 9:287−93)。2つの主な利点のために、インビボ過剰発現を得るためアデノ随伴ウイルス(AAV)を使用した。1つ目に、導入遺伝子と異なり、AAVは成体動物に適用することができ、胎児発達に干渉しない。2つ目に、インビボ遺伝子過剰発現に使用される他のウイルス型と異なり、ヘルパーフリーシステムを用いて生成されたAAVは、複製欠損性であり、病原性ではない(Matsushita T 1998 Gene Therapy 5:938−45)。muGDF15全長cDNA(配列番号3)をEF1aプロモーターおよびbGHポリAを用いてAAVベクターにクローン化した。AAVを、ヘルパーフリーシステムを用いて生成し、クロマトグラフィーおよび勾配遠心分離により精製した。7週齢の雄ob/obマウス(Jackson Labs)に、8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−muGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0096】
ブドウ糖値および体重を10、17、24、および63日目に調べた(それぞれ
図3Aおよび3C)。食餌摂取量を3日目〜24日目に毎週測定した(
図3D)。血中インスリンも17日目に測定した(
図3B)。総コレステロール(
図3E)、遊離脂肪酸(
図3F)、トリグリセライド(
図3G)、およびインスリン値(
図3H)を63日目に測定した。
【0097】
対照ウイルス処置群と比較して低いAAV−muGDF15群の体重、食餌摂取量、血糖、インスリン、トリグリセライド、およびコレステロール値は、muGDF15のAAV介在インビボ過剰発現が過食症、肥満、高血糖症、高インスリン血症、および脂質異常症を含む、ob/obマウスの代謝異常をかなり補正したことを実証した。このデータは、GDF15が体内代謝を制御し、かつ肥満、糖尿病、および脂質異常症などの代謝障害の治療の潜在的な治療標的であり得るという仮説を確かにした。
実施例5
マウスGDF15が食餌摂取量の低下および体重の増加なしとは無関係にOb/Obマウスの高血糖症を改良する
【0098】
GDF15は、ob/obマウスの過剰な食餌摂取量および体重増加を大きく低下させ、高血糖症の改良が食餌摂取量の低下および体重増加の低下の次にあるかという疑問が生じた。対飼養試験を、GDF15が食餌摂取量の低下および体重の増加なしと無関係に高血糖症を改良することができるかについて決定するため行った。7週齢の雄ob/obマウス(Jackson Labs)に、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−muGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0099】
対照ウイルス注射マウス(対飼養群)の1群に、食餌摂取を制限した。対飼養群に与えた食餌量(グラム食餌摂取量/グラム体重)を、体重による正規化の後、前日のAAV−muGDF15注射マウスにより消費された食餌量(グラム食餌摂取量/グラム体重)と等しくなるように算出した。体重および食餌摂取量を毎日モニタリングし、これらのパラメータのGDF15の効果を
図4Aおよび4Bそれぞれに示す。ブドウ糖値および体重を試験の終わりに測定し、これらのパラメータのGDF15の効果を
図4Cおよび4Dそれぞれに示す。
【0100】
17日の対飼養試験の過程を通して、GDF15群は、対照ウイルス群に比べ、食餌摂取量および体重増加を低下させ、対飼養群は、GDF15群と同様な体重を維持した(
図4Aおよび4B)。しかし、GDF15群は、対照群および対飼養群の両方より、有意に低いブドウ糖値であり、GDF15が食餌摂取量または体重と無関係に高血糖症ob/obマウスのブドウ糖管理を改良することができることを示唆した。
実施例6
マウスGDF15の効果は、通常の飼料摂取モデルにおいてより、高脂肪食誘発性肥満(DIO)モデルにおいて、より強固なものである
【0101】
次に、糖尿病治療の効果を調べるため、別のげっ歯類モデルである、高脂肪食のB6D2F1マウスのAAV介在GDF15過剰発現の効果を調べた(Karasawa H 2009 Metab Clin Exp 58:296−33)。比較のため、正常な飼料を摂取させたマウスも本試験に含んだ。4週齢の雄B6D2F1マウス(Harlan Labs)に60%高脂肪食または通常の飼料を3週間与えた。続いてこれらに、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/マウスAAV−muGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0102】
グルコメーターによりブドウ糖値および体重を7、13、および28日目に測定し、結果を
図5Aおよび5Bそれぞれに示す。食餌摂取量を4週間毎週測定し、結果を
図5Cに示す。通常の飼料食を摂取させた対照動物の結果を
図5D〜5Fに示す。AAV−muGDF15は、高脂肪食のマウスの血糖値および体重を大きく減少させた。対照に、正常の血糖値の一般の飼料のマウスにおいて、効果はかなり軽度であった。
【0103】
これらの結果は、GDF15が疾患モデルにおいて選択的に効果がある代謝制御因子であり、一部の糖尿病治療と異なり、高血糖症をおそらく生じないことを示す。
実施例7
マウスGDF15は、DIOマウスのインスリン感受性およびブドウ糖耐性を改良する
【0104】
糖尿病は、インスリン耐性およびインスリン欠乏の代謝疾患である。糖尿病治療のためのGDF15の可能性をさらに理解するために、AAV−muGDF15または対照ウイルスを投与されていた、処置済みの高脂肪食を摂取させたマウスのブドウ糖耐性およびインスリン感受性を試験した。雄B6D2F1マウス(Harlan Labs)に3週間60%高脂肪食を摂取させた後、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−muGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0105】
ブドウ糖耐性試験(GTT)をAAV注射の3週間後に行った。GTTを以下のように行った:動物を4時間絶食させた。体重および(グルコメーターにより)ブドウ糖値を測定し、インスリン測定用に採血後、20%ブドウ糖水溶液を10ml/kgにて経口投与した。ブドウ糖投与後15、30、60、120分でブドウ糖値をグルコメーターにより測定した。血液サンプルを血清インスリン値の測定のために15、30、60分にて回収した。
図6Aおよび6Bは、GTT中のブドウ糖曲線およびインスリン曲線をそれぞれ示す。GTT試験において、GDF15群は、対照群に比べ全ての時点で低いブドウ糖値であり(
図6A)、GDF15処置動物は、ブドウ糖耐性を改良したことを示した。ブドウ糖誘発性インスリン分泌(GSIS)も全ての時点で低く(
図6B)、経口ブドウ糖負荷後のブドウ糖消失に、あまりインスリンを必要としないことを示し、これはGDF15処置がこれらのマウスのインスリン感受性を改良したことを示唆した。
【0106】
これらのマウスのインスリン感受性を直接試験するために、インスリン感受性試験(IST)を、4時間絶食させたマウスにAAV注射の2週間後に行い、0.5μ/kgのインスリンのi.p.投与を使用した。インスリン感受性試験(IST)を以下のように行った:動物を4時間絶食させた。体重およびグルコメーターによりブドウ糖値を測定後、動物に、0.5μ/10mlのノボリン溶液10ml/kgをi.p.投与した。ブドウ糖投与15、30、60、120分後のブドウ糖値をグルコメーターにより測定した。
図6Cは、IST中のブドウ糖曲線を示す。GDF15処置群は、対照群に比べ全ての時点で低いブドウ糖であった。
図6Dは、基準ブドウ糖に正規化したブドウ糖値を示し、GDF15処置群は対照群に比べ30、60、90分にて低いブドウ糖/基準ブドウ糖の比であり、GDF15処置動物における改良されたインスリン感受性を強く示した。
実施例8
ヒトGDF15はDIOマウスにおけるブドウ糖耐性を改良する
【0107】
マウスGDF15成熟ペプチドおよびヒトGDF15成熟ペプチドは、68.7%の相同性を共有する。ヒトGDF15がマウスモデルにおいて機能的であるかを調べるため、グルコース耐性を、AAV−huGDF15または対照ウイルスで処置したB6D2F1 DIOマウスにおいて試験した。雄B6D2F1マウス(Harlan Labs)に、5カ月間60%高脂肪食を与えた後、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−huGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0108】
ブドウ糖耐性試験を実施例7に記載のように、4時間絶食させたマウスにAAV注射の2週間後に行い、2g/kgの経口ブドウ糖投与を使用した。
図7Aは、GTTの結果を示す。食餌摂取量を12日間3日毎に測定した。
図7Bは、12日間にわたる食餌摂取量の測定の結果を示す。
【0109】
体重を、ブドウ糖耐性試験を行う前に2週間の時点にて測定した。
図7Cは、2週間の時点の体重測定の結果を示す。
【0110】
最後に、2週間の時点の血漿GDF15値を、huGDF15 ELISA法(R&D systems)により測定した。
図7Dは、検出されたhuGDF15の量を示す。げっ歯類の血液循環GDF15値は、検出方法の欠如により明らかではない。正常のヒトにおいて、血液循環GDF15値は、数百pg/mlであると報告されている(Moore AG,2000 J Clin Endocrinol Metab 85:4781−8)。本データは、AAV−hGDF15処置群が血液循環中、数ナノグラムのhuGDF15であったことを示す(
図7D)。
【0111】
まとめると、本データは、マウスGDF15に類似して、ヒトGDF15がマウスモデルにおいて有効であり、68.7%の配列相同性を共有するのみであっても、その機能は2つのホモログ間で十分に保存されたことを実証する。
実施例9
ヒトGDF15はKK−Ayマウスにおけるインスリン感受性およびブドウ糖耐性の悪化を防ぐ
【0112】
ob/obマウスおよびDIOマウスと異なる病因および症状を有する肥満−糖尿病げっ歯類モデルのKK−AyマウスのGDF15の効果をさらに試験した(Iwatsuka H 1970 Endocrinol Jpn 17:23−35)。17週齢の雄KK.Cg−Ayマウス(Jackson Labs)に、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−huGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0113】
ブドウ糖耐性試験を、AAV注射後、3週間および6週間の時点で4時間絶食させたマウスに行い、2g/kgの経口ブドウ糖投与を使用した。対照群は、動物が成長するにつれて6週でさらにブドウ糖不耐性となり疾患が進行したが、GDF15群は、AAV注射の6週間および3週間後、同様なブドウ糖耐性を維持し(
図8A)、GDF15処置がこれらの動物の疾患の進行を防いだことを示唆した。マウスの体重および血中インスリン値は、ブドウ糖投与前に調べた。体重および血中インスリンにおけるAAV注射の効果を
図8Bおよび8Cにそれぞれ示す。対照群およびGDF15群はともに注射3週間後にわずかに高インスリン血症であった(
図8C)。対照群は、6週間でさらに高インスリン血症となり、GDF15群は、高インスリン血症の改善の傾向を示し(
図8C)、B6D2F1高脂肪食マウスに観察されたものと同様に、GDF15処置は、インスリン感受性の向上を通して、KK−Ayマウスのブドウ糖耐性を改良したことを示唆した。
【0114】
これらのデータは、GDF15が試験した全ての糖尿病疾患マウスモデルのブドウ糖耐性を改良したことを意味する。
実施例10
ヒトGDF15はKKAyマウスの糖尿およびタンパク尿を改良する
【0115】
KK−Ayマウスのかなり十分に立証された糖尿病表現型は、糖尿およびタンパク尿を含む腎合併症である(Reddi AS 1988 Adv Exp Med Biol 246:7−15)。GDF15処置後のKK−Ayマウスのブドウ糖およびアルブミン排出も調べた。17週齢の雄KK.Cg−Ayマウス(Jackson Labs)に、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−huGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0116】
AAV注射3週間後、尿中ブドウ糖値、尿中アルブミン値、尿量、1日の水分摂取量、血清インスリン値、血中ブドウ糖値、血清huGDF15値、体重、および食餌摂取量を調べた。結果を
図9A〜9K(
図9Aは尿中ブドウ糖値を示し、9Bは尿量を示し、9Cはブドウ糖排出、9Dは尿中アルブミン、9Eはアルブミン排出、9Fは水分摂取量、9Gはインスリン値、9Hはブドウ糖値、9Iは体重、および9Jは食餌摂取量、ならびに9KはhuGDF15値を示す。GDF15群は、対照群に比べ、尿糖が有意に改善し、尿中ブドウ糖値(
図9A)、尿量(
図9B)、および総ブドウ糖排出(9C)の低下とともに実証した。同様に、GDF15群は、低下した尿中アルブミン値(
図9D)、尿量(
図9B)、および総尿中アルブミン排出(
図9E)により実証されたように、タンパク尿も有意に改良した。GDF15群は、約6ml/日/動物に水分摂取量も低下し、これは正常な動物の水分摂取量と類似するが、対照群の水分摂取量は約19ml/日/動物であった。
【0117】
これらの結果は、GDF15が尿中のブドウ糖およびアルブミン排出を有意に改良し、糖尿病性腎症のさらなる有益な効果を有し得ることを示す。
実施例11
マウスGDF15は、DIOモデルの脂肪質量および脂肪質量/総体脂肪量の比を低下させる
【0118】
GDF15がob/obおよびB6D2F1 DIOマウスの食餌摂取量および体重増加を確実に低下させたことから、体重および脂肪量を、GDF15がおもに体脂肪量を低下させ、かつ肥満治療として有用であり得、または望ましくないがおもに除脂肪体重を低下させるかどうかを決定するため、AAV−muGDF15注射後のB6D2F1 DIOマウスにおいて測定した。4週齢の雄B6D2F1マウス(Harlan)に、3週間60%高脂肪食または通常の飼料を与えた後、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−muGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0119】
AAV注射の5カ月後、総体重および脂肪量をDEXAスキャン(PIXImus II、GE)により測定した。結果を
図10A(総体重)および10B(脂肪量)に示す。脂肪量/総体重の比および非脂肪量/総体重の比も算出した(それぞれ
図10Cおよび10D)。5カ月後、外部からのGDF15を投与していない高脂肪食マウス(対照群)は、かなり体重が増加し、過度に肥満であったが、GDF15群は、痩身および若年動物と同様の正常体重を維持した(
図10A)。GDF15群はまた、かなり低い体脂肪量(10B)および体脂肪量/総量の比(
図10C)であった。対照に、非脂肪量/総量の比は、GDF15群で増加した(
図10D)。このデータは、GDF15処置がおもに体脂肪量を低下させ、肥満の治療として考慮され得ることを示唆する。
実施例12
ヒトGDF15は、DIOモデルの脂肪量および脂肪量/総体重の比を低下させる
【0120】
実施例12に概要されたものと同様の理由のため、体重および脂肪量を、AAV−huGDF15注射後のB6D2F1 DIOマウスにおいて測定した。雄B6D2F1マウス(Harlan Labs)に、5カ月間60%高脂肪食を与えた後、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−huGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。
【0121】
AAV注射1年後に、AAV−hGDF15処置群の体重がおよそ30gに維持され(
図11A)、huGDF15血漿値はおよそ5ng/mlに維持された(
図11B)。総体重(
図11C)、脂肪量(
図11D)、および骨塩密度(
図11E)をDEXAスキャン(PIXImus II、GE)により測定した。脂肪量/総体重の比および非脂肪量/総量比の比も算出した(それぞれ11Gおよび11H)。通常の飼料の12週齢の雄B6D2F1マウスの群は、比較としてDEXAスキャンに含まれた。
【0122】
この実験は、ヒトGDF15が脂肪量を減少させ、非脂肪量/総体重の比を増加させることにより抗肥満特性を呈することを実証する。
実施例13
組み換えマウスGDF15タンパク質はレプチン欠損Ob/Obマウスの高血糖症および過食症を改良する
【0123】
AAV介在インビボ発現を通して、異なるマウスモデルのマウスおよびヒトGDF15の強力な代謝効果を実証した。次に、ob/obマウスの組み換えマウスGDF15タンパク質の効果を試験した。6週齢の雄ob/obマウス(Jackson Labs)に1日2回、5mg/kg rmGDF15タンパク質またはビヒクル緩衝液を皮下投与した。つまり、ob/ob雄マウスを、食餌摂取量、体重、およびブドウ糖値によりビヒクルおよび処置群に無作為に分けた。動物に、1日2回の5mg/kg組み換えmuGDF15タンパク質またはビヒクル緩衝液を2日間皮下投与した。
【0124】
注射前ならびに1日目および2日目にブドウ糖、体重、食餌摂取量を測定した。全ての時点における、ブドウ糖値を
図12Aに示し、体重を
図12Bに示し、食餌摂取量を
図12Cに示す。
【0125】
これらの結果は、AAV−muGDF15と同様、外部から投与された組み換えマウスGDF15タンパク質がob/obマウスにおいて有効であることを実証する。
実施例14
組み換えヒトGDF15タンパク質は、レプチン欠損Ob/Obマウスの高血糖症および過食症を改良する
【0126】
組み換えヒトGDF15タンパク質の効果もob/obマウスにおいて試験した。7週齢の雄ob/obマウス(Jackson Labs)に単回注射により5、1.5、0.5、0.15mg/kgのrhGDF15タンパク質またはビヒクル緩衝液を皮下投与した。動物を実施例13に記載のように無作為に分けた。
【0127】
ブドウ糖、体重、食餌摂取量を処置16〜17時間後に測定した。ブドウ糖値を
図13Aに示し、食餌摂取量を
図13Bに示し、体重を
図13Cに示す。
【0128】
データは、外部から投与された組み換えヒトGDF15タンパク質がob/obマウスの過食症および高血糖を急激に改良し、効果は用量依存であったことを示す。
実施例15
組み換えヒトGDF15タンパク質はDIOマウスのブドウ糖耐性を改良する
【0129】
DIOモデルの組み換えヒトGDF15タンパク質の効果をさらに試験した。6カ月間の60%高脂肪食の雄B6D2F1マウス(Harlan Labs)に、単回投与により5mg/kg rhGDF15タンパク質またはビヒクル緩衝液を皮下投与し、動物を実施例13に記載のように、無作為に分けた。
【0130】
ブドウ糖耐性試験(GTT)を、4時間絶食させたマウスに投与の3日後に行った。1g/kgの経口ブドウ糖投与を使用した。GTTの結果を
図14Aに示す。食餌摂取量を毎日測定し、
図14Bに示す。体重を、GTTを行う前に測定し、
図14Cに示す。
【0131】
まとめると、これらの結果は、組み換えヒトGDF15タンパク質がDIOマウスモデルに有効であることを示す。
実施例16
組み換えヒトGDF15は脂質耐性を改良する
【0132】
発見したGDF15の別の興味深い代謝活性は、GDF15がマウスの脂質耐性を急激に改良することである。2カ月間の60%高脂肪食の雄B6D2F1マウス(Harlan Labs)に、5mg/kgのrhGDF15タンパク質またはビヒクル緩衝液を皮下投与した。4時間後、マウスに、20ml/kgの20%Intralipid(登録商標)を経口投与した。血清トリグリセライド値を、比色分析法(Sigma)により脂質投与0、60、90、120、180分後に測定した。測定した血清トリグリセライド値は、
図15Aに示す。180分の血清rhGDF15値を、huGDF15 ELISA法(R&D Systems)により測定し、
図15Bに示す。
【0133】
血清トリグリセライド値は、GDF15およびビヒクル処置動物の両方において、経口イントラリピッド投与30、60、90分後に増加した(
図15A)。しかし、60分および90分のトリグリセライド値は、処置群において有意に低下し、GDF15がこれらの動物の脂質耐性を急激に改良したことを示す(
図15A)。高トリグリセライド血症を含む脂質異常症は、心血管疾患のおもな危険因子であり、導かれる転帰は、糖尿病患者の死亡を引き起こす(Hokanson JE 1996 J.Cardiovasc. Risk 3:213−219)。GDF15による脂質耐性の急激な改良は、GDF15が糖尿病性脂質異常症、特に食後脂質異常症に有益な効果をもたらし得ることを示唆する。
実施例17
マウスGDF15はDIOモデルのインスリンおよび脂質特性を改良する
【0134】
GDF15が脂質耐性を急激に改良することから、長期的に、GDF15が血中脂質特性を改良するかどうかも調べた。B6D2F1マウス(Harlan Labs)に、60%高脂肪食を与え、実施例4に記載のように8×10
12個の遺伝子コピー/動物AAV−muGDF15または対照ウイルスを、尾静脈を介して注射した。血中インスリン、総コレステロール、NEFA、およびトリグリセライド値を、AAV注射の3週間後に測定した。結果を
図16に示し、
図16Aはインスリン値を示し、
図16BはNEFA値、
図16Cは総コレステロール値、および
図16Dはトリグリセライド値。GDF15群は、対照群に比べ、低いコレステロール値(
図16C)およびトリグリセライド値であり、GDF15が長期的に脂質特性を改良することを実証した。このデータは、GDF15処置が糖尿病性脂質異常症に有益な効果をもたらし得ることをさらに示す。