(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物が、請求項6に定義されている通りであり、組成物を、電子ビームまたは紫外線で30秒未満の時間にわたり照射することにより硬化する、請求項6に記載の方法。
組成物施用ステーションと、組成物を硬化するための照射源と、膜収集ステーションと、支持体を組成物施用ステーションから照射源そして膜収集ステーションへ移動させる手段とを含む製造ユニットにより、組成物を5m/分を超える速度で移動している支持体に連続的に施用する、請求項6又は7に記載の方法。
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー膜を1以上含む、電気透析もしくは逆電気透析ユニット、フロースルーキャパシター機器、電気脱イオンモジュール、連続電気脱イオンモジュール、燃料電池、拡散透析装置、膜蒸留モジュール、または膜電極アセンブリー。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書(その特許請求の範囲を含む)において、“含む”という動詞およびその活用形は、非限定的な意味において、その語に続く事項が包含されるが、具体的に挙げていない事項が除外されるわけではないことを意味するために用いられる。これに加えて、“1つの(a)”または“1つの(an)”という不定冠詞による要素への言及は、該要素が1つおよび1つだけ存在することが文脈上明らかに求められていない限り、該要素が1より多く存在する可能性を除外するものではない。したがって、“1つの(a)”または“1つの(an)”という不定冠詞は、通常“少なくとも1つの”を意味する。“(メタ)アクリル”という用語は、“メタクリルまたはアクリル”を意味する。(メタ)アクリルアミド基という用語は、“メタクリルアミドまたはアクリルアミド”を意味する。
【0012】
本明細書では、組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率を、しばしば“MF”と略する。MFは、以下のように計算することができる:
MF=(M
ポリ/M
全)
式中:
M
ポリは、組成物中に存在する少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル数であり;そして
M
全は、組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数である。
【0013】
例えば、0.3モルのビス(アクリロイルアミド)−2−メチルプロパン−2−スルホン酸(すなわち、0.3モルのM
ポリ)、0.2モルのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(すなわち、さらに0.2モルのM
ポリ)、および1.1モルの2−アクリロイルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(すなわち、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含まない硬化性化合物1.1モル)を含む組成物は、(0.3+0.2)/(0.3+0.2+1.1)=0.31のMFを有することになる。
【0014】
(メタ)アクリル基の例として、アクリル(H
2C=CHO−)およびメタクリル(H
2C=C(CH
3)CO−)基、特にアクリレート(H
2C=CHCO
2−)、メタクリレート(H
2C=C(CH
3)CO
2−)、アクリルアミド(H
2C=CHCONH−)およびメタクリルアミド(H
2C=C(CH
3)CONH−)基を挙げることができる。
【0015】
少なくとも2つの(メタ)アクリル基は、互いに同一であるか、互いに異なっているか、または、一部が互いに同じで、残りが異なっていることができる。例えば、少なくとも2つの(メタ)アクリル基は、すべてアクリル基であることができ(例えば、すべてがアクリレート基であるかすべてがアクリルアミド基であり、したがって、互いに同一である)、または、それらは、1つのメタクリル基および1つのアクリル基を含むことができる(すなわち、それらは互いに異なっている)。他の態様において、少なくとも2つの(メタ)アクリル基は、1以上の(メタ)アクリレート基および1以上の(メタ)アクリルアミド基を含む、すなわち、少なくとも2つは互いに異なっている。(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド基のさらなる並べ替え(permutation)も可能である。
【0016】
一態様において、少なくとも2つの(メタ)アクリル基は、1または2つのアクリルアミド基を含み、他の一態様において、少なくとも2つの(メタ)アクリル基は、すべて(メタ)アクリレート基であり、特にすべてアクリレート基である。
【0017】
成分(i)は、遊離酸の形にあるか、好ましくは部分的または完全に塩の形にある、1以上のスルホン酸基(1以上)を含む。好ましい塩は、リチウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、ならびにそれらの2以上を含む混合物である。
【0018】
成分(i)は、好ましくは2、3または4つの(メタ)アクリル基、より好ましくは2、3または4つのアクリル基、特に2つのアクリル基を有する。
成分(i)および(ii)(存在する場合)において、好ましい(メタ)アクリル基はアクリル基である。これは、それらがメタアクリル基より反応性が高く、したがって、アクリル基を用いるとより迅速に膜を得ることができるためである。好ましいアクリル基はアクリルアミド基である。これは、それらが加水分解に対しとりわけ安定であるためである。
【0019】
組成物が成分(ii)を含まない場合、成分(i)が、組成物中に存在する唯一の硬化性成分になることが可能である。そのような環境において、MFは1の値を有する。
成分(i)は、少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含む硬化性化合物を1または1より多く含むことができる。
【0020】
上記方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物は、とりわけ良好な選択透過性および低い電気抵抗を有する膜をもたらすことができる。成分(i)のMWは、好ましくは<(200+200n)、より好ましくは<(150+150n)である。これに関し、MWおよびnは先に定義した通りである。得られる膜においてより高い電荷密度(イオン交換容量)を実現することができるので、小さいMWが好ましい。
【0021】
少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含む硬化性化合物は、式(1)の化合物であることが好ましい:
【0023】
[式中:
R
1およびR
2は、それぞれ独立してHまたはメチルであり;
R
3およびR
4は、それぞれ独立してHまたはアルキルであるか、R
3およびR
4は、それらが付着しているN原子およびYと一緒になって、置換されていてもよい6または7員環を形成し;そして
Yは、置換されていてもよく遮断されていてもよいアルキレンまたはアリーレン基である];
但し、
式(1)の化合物は、1、2、3または4つのスルホン酸基を有するという条件が付き;そして
式(1)の化合物は、方程式:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、式(1)の化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、式(1)の化合物中に存在するスルホン酸基の数である]
を満たす分子量を有するという条件が付く。
【0024】
R
3またはR
4がアルキルである場合、それは、C
1−4−アルキルであることが好ましい。
R
3およびR
4が、それらが付着しているN原子およびYと一緒になって、置換されていてもよい6または7員環を形成している場合、それらは、置換されていてもよいピペラジン、ホモピペラジンまたはトリアジン環、特に、スルホン酸基およびその塩から選択される1以上の基を有するような環を形成していることが好ましい。
【0025】
Yに存在することができる所望による遮断物は、好ましくはエーテルであり、またはより好ましくはアミノ基である。
Yが、置換されていてもよいアルキレン基である場合、それは、式C
nH
2n−m(SO
3H)
mまたはその塩[式中、nは3〜8(特に3〜6)であり、mは1〜4である]であることが好ましい。
【0026】
Yが、置換されていてもよいアリーレン基である場合、それは、1、2、3または4つのスルホン酸置換基および所望により1以上の他の置換基(例えばC
1−4−アルキル基)を有するフェニレンであることが好ましい。
【0027】
スルホン酸基(1以上)は、典型的にはYにより表される基の一部であるか、−R
3−N−Y−N−R
4−(式中、Y、R
3およびR
4は先に定義した通りである)から形成することができる置換されていてもよい6または7員環の一部である。
【0028】
一態様において、成分(i)は、1または1より多く(例えば2〜5つ)の式(1)の化合物からなる。
式(1)の硬化性化合物は、商業的に、または任意の適した方法により、例えば、pH>8のハロゲン化アクリロイルを、スルホン酸基と2以上の求核基、例えば、ヒドロキシおよび/またはアミノ基とを有する化合物と縮合させることにより、得ることができる。
【0029】
式(1)の硬化性化合物の例としては、以下のものおよびその塩が挙げられる:
【0031】
組成物中の成分(i)の存在は、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有しスルホン酸基を有さない従来の硬化性化合物の使用に対し、成分(i)を用いると膜のイオン電荷密度またはイオン交換容量を希薄化することなく膜を調製することができるという点で、利点を有する。
【0032】
成分(i)は、組成物中に、好ましくは2〜80重量%、より好ましくは4〜70重量%、特に5〜68重量%の量で存在する。
誤解を避けるために、本明細書では、特記した場合を除き、重量%の数量は組成物の全重量に対するものである(例えば、(成分の重量/組成物の重量)×100%)。
【0033】
組成物が成分(i)および(ii)の両方を含む場合、比較的高い比の成分(i):(ii)を用いると、膜の選択透過性および電気抵抗に悪影響を及ぼすことなく、高度に架橋され膨潤度の低い膜を実現することができる。
【0034】
組成物中に存在する硬化性化合物の好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、特に少なくとも90重量%、さらに特に実質的にすべては、アニオン性基、特に、遊離酸または塩の形にあるスルホン酸基を持つ。
【0035】
成分(ii)中に存在するエチレン性不飽和基は、(メタ)アクリル基であることが好ましい。適した(メタ)アクリル基の例は、成分(i)に関し上記した通りである。エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリルアミド基であることが好ましい。これは、該基が、加水分解に対しとりわけ良好な耐性を有する膜をもたらすことができるためである。
【0036】
エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、ベータカルボキシエチルアクリレート、マレイン酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、ホスホノメチル化アクリルアミド、(2−カルボキシエチル)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ならびに前記のもののエステルおよびアミド、特に、C
1−4−アルキルエステル、非置換アミド、および1または2つのC
1−4−アルキル基を有するアミドが挙げられる。エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物は、アニオン性基(例えば、カルボキシレートまたはスルホネート基、すなわち、エステルまたはアミドではない)を含むことが好ましい。これは、そのような基が、得られる膜がイオン性種を識別するのを助けることができるためである。
【0037】
成分(ii)は、1より多くの化合物、例えば、1〜5つの化合物を含むことができる。例えば、成分(ii)は、エチレン性不飽和基1つと酸性基とを有する硬化性化合物と、エチレン性不飽和基を1つ有し酸性基を有さない硬化性化合物(例えば、上記エステルおよびアミドの1つであることができる)を含んでいてもよい。
【0038】
適した(メタ)アクリル基の例は、先に検討したものである。
もっとも好ましい成分(ii)は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩である。
【0039】
成分(ii)は、望ましい程度の可撓性を有する複合膜を結果としてもたらすことができ、これは、緊密に巻き付けられた膜を必要とする用途において、とりわけ有用である。成分(ii)がアニオン性基を有する場合、それはまた、異なる電荷のイオンを複合膜が識別するのを補助する。成分(ii)は、アニオン性基、特にアニオン性スルホン酸基を含むことが好ましい。
【0040】
成分(ii)は、組成物中に、好ましくは1〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%、特に20〜50重量%の量で存在する。
成分(ii)(存在する場合)に対する成分(i)のモル比は、好ましくは少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.15、特に少なくとも0.2、さらに特に少なくとも0.25である。成分(ii)に対する成分(i)のモル比は、少なくとも0.5、例えば少なくとも1であることもできる。
【0041】
組成物の全重量に対する成分(i)+(ii)の全重量%は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%、特に50〜75重量%、さらに特に58〜70重量%、例えば、約61重量%または約65重量%である。
【0042】
組成物はさらに、溶媒を含むことが好ましい。これは、溶媒が、組成物の粘度を下げ、組成物を高速連続製造プロセスでの硬化により適したものにすることができるためである。溶媒は硬化性ではなく、むしろ組成物の他の成分に関し非反応性希釈剤として働く。
【0043】
極性溶媒、特に水性溶媒が好ましい。これは、これらが、成分(i)およびイオン性基を有する他の成分を溶解するのにとりわけ適しているためである。溶媒の少なくとも半分が水で、残りが有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒は、組成物のすべての成分の均質溶液を提供するのに有用であることができる。有機溶媒を包含させることは、組成物の粘度および/または表面張力を低下させて、いくつかの点で膜の製造をより容易にするのにも有用である。溶媒は、好ましくは少なくとも60重量%の水、より好ましくは少なくとも80重量%の水を含む。
【0044】
組成物は、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは20〜65重量%、特に25〜60重量%、さらに特に25〜45重量%の溶媒、とりわけ25〜40重量%の溶媒を含む。
【0045】
溶媒は、水であるか、水と水混和性有機溶媒を含む混合物であることが好ましい。水混和性有機溶媒が存在することにより、水不混和性溶媒も、溶媒混合物全体が混和性になるような少量なら許容され得る。
【0046】
溶媒が水と有機溶媒を含む場合、水:有機溶媒の重量比は、好ましくは10:1〜1:2、より好ましくは4:1〜1:1、特に3:1〜2:1である。
有機溶媒は、所望により、単一の有機溶媒であるか、2以上の有機溶媒の組み合わせである。
【0047】
好ましい有機溶媒としては、C
1−4−アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびプロパン−2−オール)、ジオール(例えば、エチレングリコールおよびプロピレングリコール)、トリオール(例えば、グリセロール)、カーボネート(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルジカーボネートおよびグリセリンカーボネート)、ジメチルホルムアミド、アセトン、N−メチル−2−ピロリジノン、およびそれらの2以上を含む混合物が挙げられる。とりわけ好ましい有機溶媒は、プロパン−2−オールである。
【0048】
硬化性組成物に最適な溶媒含量は、各組み合わせに関し、簡単な実験により決定することができる。
組成物はさらに、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含みスルホン酸基を含まない硬化性化合物を含んでいてもよい。本明細書において、われわれは、そのような化合物を成分(iii)とよぶ。成分(iii)として用いることができる化合物としては、イソホロンジアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス−アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス−アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(アクリルアミド)、N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビス(アミノプロピル)メチルアミンジアクリルアミドが挙げられる。成分(iii)として用いることができるとりわけ好ましい化合物としては、1,4−ジアクリロイルピペラジンおよび1,4−ビス(アクリロイル)ホモピペラジンが挙げられる。成分(iii)の分子量は、好ましくは500ダルトン未満、より好ましくは250ダルトン未満である。
【0049】
組成物は、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは0〜30重量%の成分(iii)を含む。一態様において、組成物は、2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%の成分(iii)を含む。他の態様において、組成物は成分(iii)を含まない。他の態様において、組成物は、成分(iii)がアニオン性基を含みスルホン酸基を含まないという条件で、最大50重量%の成分(iii)を含む。
【0050】
成分(iii)がアニオン性基を含まない場合、それは、得られる膜に存在する電荷の量を希薄化する。一態様において、組成物はそのような化合物(すなわち、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含みアニオン性基を含まない硬化性化合物)を含まないか、そのような化合物は、少量のみ、例えば、成分(i)の重量に対し約50重量%未満、より好ましくは30%未満、特に20%未満の重量比で存在することが好ましい。他の態様において、成分(iii)は、比較的多量に、例えば成分(i)より高い重量%で存在することができるが、この場合、多量の成分(ii)が存在し、該成分(ii)がアニオン性基を含むことが好ましい。
【0051】
成分(i)および(iii)(存在する場合)は、それぞれ少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、したがって、両者の量は、M
ポリの値を決定するときに考慮に入れられる。
【0052】
成分(ii)は、成分(i)(および存在する場合は成分(iii))と反応することができ、望ましい程度の可撓性を有する膜を結果としてもたらすことができる。これは、緊密に巻き付けられた膜が必要とされる用途において、とりわけ有用である。好ましいように、成分(ii)がイオン性基を有する場合、これはまた、膜がさまざまな電荷のイオンを識別するのを助けることができる。
【0053】
一態様において、組成物は、成分(i)および(ii)以外のエチレン性不飽和化合物を、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満含む。好ましい態様において、組成物は、成分(i)および(ii)以外のエチレン性不飽和化合物を含まない。
【0054】
一般に、成分(i)(および存在する場合は成分(iii))は膜に強度をもたらすが、可撓性を低下させる可能性がある。
とりわけ強い膜を作製するためには、MFが少なくとも0.30、より好ましくは少なくとも0.35であることが好ましい。
【0055】
望ましい程度の可撓性を実現するためには、MFが0.95未満、より好ましくは0.85未満であることが好ましい。
したがって、可撓性と強度の有益なバランスを有する膜を得るためには、組成物は、好ましくは0.30〜0.95、より好ましくは0.35〜0.85のMFを有する。
【0056】
組成物は、0〜11のpHを有することが好ましい。
組成物のpHは、スルホン酸基が遊離酸の形にあるか塩の形にあるかに、ある程度依存する。スルホン酸基が部分的に遊離酸の形にある場合、組成物は、好ましくは0.2〜5、より好ましくは0.5〜2.5、特に約1.5のpHを有する。スルホン酸基の少なくとも95%が塩の形にある場合、組成物は、好ましくは1〜10、より好ましくは1.5〜7のpHを有する。
【0057】
一態様において、組成物はラジカル開始剤を含まない。他の態様において、組成物は、ラジカル開始剤、例えば光開始剤を含む。
組成物が0%のラジカル開始剤を含有する場合、それは、電子ビーム放射を用いて硬化することができる。
【0058】
しかしながら、組成物は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、特に0.1〜2重量%のラジカル開始剤を含む。好ましいラジカル開始剤は光開始剤である。
【0059】
本明細書では、ラジカル開始剤をしばしば成分(iv)とよぶ。
硬化性組成物は、1または1より多くのラジカル開始剤を成分として含むことができる。
【0060】
組成物がアクリルアミド、ジアクリルアミド、または高級アクリルアミドを含む場合、タイプIの光開始剤が好ましい。タイプIの光開始剤の例は、本明細書中で参考として援用する国際公開WO2007/018425号、14頁、23行〜15頁、26行に記載されている通りである。特に好ましい光開始剤としては、アルファ−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、ならびに、アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシドおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0061】
ラジカル開始剤が組成物中に存在する場合、重合防止剤も包含されることが好ましい(例えば、2重量%未満の量で)。これは、例えば貯蔵中の組成物の早期硬化を妨げるのに有用である。適した防止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−t−ブチル−カテコール、フェノチアジン、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジノールオキシ、フリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジノールオキシ、フリーラジカル、2,6−ジニトロ−sec−ブチルフェノール、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩、Omnistab
TM IN 510、Genorad
TM重合防止剤、および前記のものの2以上を含む混合物が挙げられる。
【0062】
硬化性組成物は、他の成分、例えば、酸、pH調節剤、防腐剤、粘度調整剤、安定剤、分散剤、消泡剤、有機/無機塩、アニオン性、カチオン性、非イオン性および/または両性界面活性剤などを含有することができる。
【0063】
硬化性組成物は、言うまでもなく、上記で具体的に言及または除外していない他の成分を含有することができる。
硬化速度は、硬化性組成物にアミン相乗剤を包含させることにより向上させることができる。適したアミン相乗剤は、例えば、トリエチルアミンまたはトリエタノールアミンなどの遊離アルキルアミン;2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンソエート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートなどの芳香族アミンのほか、ポリアリルアミンおよびその誘導体のようなポリマーアミンである。
【0064】
エチレン性不飽和アミン(例えばアクリル化アミン)などの硬化性アミン相乗剤が好ましい。これは、それらは硬化により膜内に組み込まれる能力を有するため、それらを用いると臭気がより少なくなるためである。
【0065】
アミン相乗剤を用いる場合、その量は、組成物中の重合性成分の全重量に基づき、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜3重量%である。
上記のことを考慮すると、組成物は、少なくとも0.25のMFを有し、以下を含むことが好ましい:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物を2〜80重量%:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物を1〜70重量%;
(iii)少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物を0〜40重量%;
(iv)ラジカル開始剤を0〜10重量%;および
(v)溶媒を15〜70重量%。
【0066】
他の態様において、組成物は、少なくとも0.25のMFを有し、以下を含むことが好ましい:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物を5〜75重量%:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物を0〜60重量%;
(iii)少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物を0〜30重量%;
(iv)ラジカル開始剤を0.1〜10重量%;および
(v)溶媒を20〜45重量%。
【0067】
とりわけ好ましい態様において、組成物は、少なくとも0.35のMFを有し、以下を含む:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物を4〜70重量%:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物を10〜60重量%;
(iii)少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物を0〜30重量%;
(iv)ラジカル開始剤を0.1〜10重量%;および
(v)水を含む溶媒、または水と水混和性有機溶媒とを含む混合物を含む溶媒を25〜45重量%。
【0068】
さらに、成分(I)は、先に定義したような式(1)の化合物を含むことが好ましい。
上記組成物は、本発明のさらなる特徴である。
組成物は、メタクリル化合物(例えば、メタクリレートおよびメタクリルアミド化合物)を含まないか実質的に含まない、すなわち、組成物は、1以上のメタクリル基を含む化合物を多くても10重量%しか含まないことが好ましい。
【0069】
組成物は、ジビニルベンゼンおよびその誘導体を含まないか、実質的に含まないことが好ましい。
組成物は、スチレンおよびその誘導体を含まないか、実質的に含まないことが好ましい。
【0070】
組成物は、染料および顔料を含まないか、実質的に含まないことが好ましい。これは、組成物中に染料または顔料を包含させる必要がないためである。
したがって、好ましい組成物は、ジビニルベンゼン、染料、顔料、スチレン、メタクリル化合物、およびテトラアルキル置換第四級アンモニウム基を有する化合物を含まないか、実質的に含まない。
【0071】
組成物中に式(1)の化合物が存在すると、以下の式(1’)の構造単位を含む膜がもたらされる:
【0073】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびYは、先に定義した通りであるが、式(1’)の構造単位は、1、2、3または4つのスルホン酸基を有するという条件が付く]。
上記構造単位を含む膜は、本発明の他の特徴である。膜中のそのような単位の濃度は、上記組成物中の他の硬化性成分の量に対する、膜を作製するために用いられる式(1)の化合物の濃度に依存する。そのような膜はさらに、成分(ii)の硬化から得られる構造単位を含むことが好ましい。
【0074】
本発明の第2の観点に従って、以下の段階を含む膜の調製方法を提供する:
a)組成物を支持体に施用する段階;および
b)該組成物を硬化して膜を形成する段階;
これに関し、該組成物は、本発明の第1の観点で定義した組成物である。
【0075】
これまで、膜は、多くの段階を有することが多い緩慢でエネルギー集約的な方法でしばしば作製されてきた。本発明により、長期間にわたり継続的に実施して比較的安価に膜を大量生産することができる簡単な方法での膜の製造が可能になる。
【0076】
該方法は、硬化した組成物と支持体を分離するさらなる段階を含んでいてもよい。しかしながら、望ましい場合このさらなる段階は省くことができ、これにより、硬化した組成物と多孔質支持体を含む複合膜が生じる。
【0077】
膜の厚さは、存在する場合は支持体を含めて、好ましくは250μm未満、より好ましくは10〜200μm、もっとも好ましくは20〜150μmである。
膜は、組成物の全乾燥重量に関し、好ましくは少なくとも0.1meq/g、より好ましくは少なくとも0.3meq/g、特に0.6meq/gを超え、さらに特に1.0meq/gを超え、とりわけ3.5meq/gを超える計算イオン交換容量(“IEC”)を有する。得られる膜の電気抵抗を低減するためには、これらの範囲の上限付近のIECが好ましい。得られるIECは、乾燥(すなわち、溶媒を含まない)組成物1グラムあたりのミリ当量(meq/g)で表される。したがって、組成物中に存在する溶媒は、該組成物を作製するために用いられる構成成分中に存在する非硬化性希釈剤または結晶水を含め、IECの計算から除外される。
【0078】
得られる膜の強度および頑健性を改善するために、膜は、高い計算架橋密度(“CD”)を有することが好ましい。組成物中に成分(i)を包含させることにより、高いIECと高いCDの組み合わせを実現することができる。
【0079】
mmol/gでのCDは、n個の異なる硬化性化合物を含む組成物の場合、以下のように計算することができる:
【0081】
[式中:
M
iは、グラムでのx
i個の硬化性基を有する化合物iの量であり;
MW
iは、1mmolあたりのgでの化合物iの分子量であり;そして
M
全は、グラムでの硬化性化合物の全量である]。
【0082】
上記決定は、膜のための支持体の非存在下で実施する。したがって、組成物中に存在する溶媒は、該組成物を作製するために用いられる構成成分中に存在する非硬化性希釈剤または結晶水を含め、CDの計算から除外される。
【0083】
例えば、55.3gのビス(アクリロイルアミド)−2−メチルプロパン−2−スルホン酸(276.31g/molのMWおよびn=2を有する)、46.3gのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(154.17g/molのMWおよびn=2を有する)および228gの2−アクリロイルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(207.24g/molのMWおよびn=1を有する)を含む組成物は、(55.3/0.27631)/329.5+(46.3/0.15417)/329.5=1.52mmol/gのCDを有することになる。
【0084】
CDは、好ましくは少なくとも1.3mmol/g、より好ましくは少なくとも1.5mmol/g、特に少なくとも1.75mmol/gである。
膜は、小さなカチオン(例えばNa
+)に関し、好ましくは80%を超え、より好ましくは85%を超え、特に90%を超え、さらに特に95%を超える選択透過性を有する。
【0085】
膜は、好ましくは5オーム.cm
2未満、もっとも好ましくは3オーム.cm
2未満の電気抵抗を有する。電気抵抗は、以下の実施例の節に記載する方法により決定することができる。
【0086】
膜は、99分間にわたり超音波処理して膜から取り除かれた部分を除去した場合、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満の重量損失%を示す。重量損失%は、例えば、適切な量の成分(ii)および(iii)を選択することにより、および硬化段階で適切なパラメーターを調整することにより、制御することができる。
【0087】
電気抵抗および選択透過性は、Djugolecki et alによりJ.of Membrane Science,319(2008)、217〜218頁に記載されている方法により測定することができる。
【0088】
典型的には、イオン交換膜は実質的に非孔質であり、例えば、細孔は、標準的走査電子顕微鏡(SEM)の検出限界より小さい。したがって、Jeol JSM−6335F電界放出型SEM(2kVの加速電圧を印加、作動距離4mm、絞り4、厚さ1.5nmのPtでコーティングした試料、倍率100000倍、傾斜視野3°)を用いると、平均細孔径は、一般に5nmより小さく、好ましくは2nmより小さい。
【0089】
得られる膜は、イオンは膜を通過することができるが水分子は膜を通過しないような、低い透水性を有することが好ましい。膜の透水性は、好ましくは1×10
−7m
3/m
2.s.kPa未満、より好ましくは1×10
−8m
3/m
2.s.kPa未満、もっとも好ましくは1×10
−9m
3/m
2.s.kPa未満、特に1×10
−10m
3/m
2.s.kPa未満である。透水性の要件は、膜の使用目的に依存する。
【0090】
望ましい場合、界面活性剤または界面活性剤の組み合わせを、湿潤剤として、または表面張力を調整するために、組成物中に包含させることができる。放射線硬化性界面活性剤を含む市販の界面活性剤を利用することができる。該組成物での使用に適した界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
好ましい界面活性剤は、本明細書中で参考として援用する国際公開WO2007/018425号、20頁、15行〜22頁、6行に記載されている通りである。フルオロ界面活性剤、特にZonyl(登録商標)FSN(E.I.Du Pontにより生産されている)が、とりわけ好ましい。
【0092】
組成物の成分は、硬化段階中に相分離が起こらないように選択することが好ましい。このようにして、得られる膜における多孔質構造の可能性を低減する。
膜の網状構造は、架橋剤(1以上)および硬化性化合物の素性(identity)ならびにそれらの官能性、例えば、それらが1分子あたりに含有する架橋性基の数により、かなりの程度まで決定される。
【0093】
組成物を支持体に施用している間に、組成物は支持体の上面上に層を形成することができ、または支持体の細孔中に完全または部分的に浸透し、これにより硬化後に含浸複合膜を形成することができる。組成物を支持体の両側に施用して、対称性を持つ複合膜を実現することもできる。好ましい態様では、支持体を組成物で飽和させ、飽和した支持体をEBまたはUV照射により硬化する。
【0094】
本発明の方法は、望ましい場合、例えば得られた膜を洗浄および/または乾燥する、さらなる段階を含有することができる。
組成物を支持体の表面に施用する前に、例えば支持体の湿潤性および付着力を向上させる目的で、支持体を、コロナ放電処理、プラズマグロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、化学的処理などに付すことができる。
【0095】
支持体を処理して、その表面エネルギーを例えば70mN/mを超える値に改変することもできる。
固定支持体を用いてバッチ式で膜を調製することが可能であるが、本発明の利益を十分に得るためには、移動支持体を用いて連続式で膜を調製することが、はるかに好ましい。支持体は、連続的にほどかれるロールの形にあることができ、または、支持体は、連続的に駆動されているベルト上に載っていることができる(または、これらの方法の組み合わせであってもよい)。そのような技術を用いると、組成物を連続式で支持体に施用することができ、または、大規模なバッチ式で施用することができる。
【0096】
組成物は、任意の適した方法、例えば、カーテンコーティング、ブレードコーティング、エアナイフコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、スライドコーティング、ニップロールコーティング、フォワードロールコーティング、リバースロールコーティング、マイクロロールコーティング、ディップコーティング、フーラード(foulard)コーティング、キスコーティング、ロッドバーコーティングまたはスプレーコーティングにより、支持体に施用することができる。多層のコーティングを同時または逐次的に行うことができる。多層の同時コーティングの場合、カーテンコーティング、スライドコーティングおよびスロットダイコーティングが好ましい。組成物は、支持体の一方の側面または支持体の両方の側面に施用することができる。
【0097】
一態様では、少なくとも2つの組成物を、支持体に、例えば同時または逐次的に施用する。組成物は、支持体の同じ側面または異なる側面に施用することができる。したがって、施用段階は、各施用の間に硬化を実施するか否かに関わらず、1回より多く実施することができる。異なる側面に施用する場合、得られる複合膜は対称的または非対称的であることができ、組成物の層は、同じまたは異なる厚さを有することができる。同じ側面に施用する場合、少なくとも1つの上層と、該上層より支持体に近い少なくとも1つの底層とを含む複合膜を形成することができる。この態様において、上層および底層は、任意の介在層と一緒になって膜を構成し、多孔質支持体は、得られる複合膜に強度を与える。
【0098】
したがって、好ましい方法において、組成物は、移動支持体に連続的に、より好ましくは、1以上の組成物施用ステーション(1以上)と、組成物を硬化するための1以上の照射源(1以上)と、膜収集ステーションと、支持体を組成物施用ステーション(1以上)から照射源(1以上)そして膜収集ステーションへ移動させる手段とを含む製造ユニットにより施用する。
【0099】
組成物施用ステーション(1以上)は照射源(1以上)に対し上流の位置に置くことができ、照射源(1以上)は膜収集ステーションに対し上流の位置に置く。
高速コーティング機による施用に十分な流動性を有する組成物を生産するために、組成物は、35℃で測定して5000mPa.s未満、より好ましくは、35℃で測定して1〜1500mPa.sの粘度を有することが好ましい。もっとも好ましくは、組成物の粘度は、35℃で測定して2〜500mPa.sである。スライドビードコーティングなどのコーティング方法の場合、好ましい粘度は、35℃で測定して2〜150mPa.sである。
【0100】
適したコーティング技術を用いて、組成物を、5m/分を超える、好ましくは10m/分を超える、より好ましくは15m/分を超える、例えば20m/分を上回る速度、または、60m/分、120m/分もしくは最高400m/分に達し得るようなさらに速い速度で移動している支持体に、施用することができる。
【0101】
硬化は、ラジカル重合により、好ましくは電磁線を用いて実施することが好ましい。放射線源は、組成物を硬化するのに必要な放射線の波長および強度をもたらす任意の放射線源であることができる。硬化のためのUV光源の典型例は、Fusion UV Systemsにより供給されている出力600ワット/インチ(240W/cm)のDバルブである。代替手段は、同供給者からのVバルブおよびHバルブである。
【0102】
組成物に光開始剤が包含されていない場合、組成物を、電子ビーム暴露により、例えば50〜300keVの暴露を用いて硬化することができる。硬化は、プラズマまたはコロナ暴露により実現することもできる。
【0103】
硬化中に、成分(i)および(ii)(存在する場合)が重合してポリマー膜を形成する。硬化は、任意の適した手段、例えば照射および/または加熱により、もたらすことができる。硬化は、膜が30秒以内に形成するのに十分迅速に生じることが好ましい。望ましい場合、続いてさらなる硬化を施用して完了させることができるが、一般にこれは必要ではない。
【0104】
硬化は、好ましくは熱的に(例えば、赤外線で照射することにより)、または、より好ましくは、組成物を紫外線もしくは電子ビームで照射することにより実現する。
熱硬化の場合、組成物は1以上の熱反応性ラジカル開始剤を含むことが好ましく、該開始剤は、硬化性組成物100部あたり0.01〜5部の量で存在することが好ましい。これに関し、部はすべて重量に基づく。
【0105】
熱反応性ラジカル開始剤の例としては、有機過酸化物、例えば、エチルペルオキシドおよび/またはベンジルペルオキシド;ヒドロペルオキシド、例えばメチルヒドロペルオキシド、アシロイン、例えばベンゾイン;ある種のアゾ化合物、例えばα,α’−アゾビスイソブチロニトリルおよび/またはγ,γ’−アゾビス(γ−シアノ吉草酸);ペルスルフェート;ペルアセテート、例えば、過酢酸メチルおよび/または過酢酸tert−ブチル;ペルオキサレート、例えば、過シュウ酸ジメチルおよび/または過シュウ酸ジ(tert−ブチル);ジスルフィド、例えばジメチルチウラムジスルフィド、およびケトンペルオキシド、例えばメチルエチルケトンペルオキシドが挙げられる。約30℃〜約150℃の範囲の温度が赤外線硬化で一般に採用される。約40℃〜約110℃の範囲の温度が、より多く用いられる。
【0106】
組成物の硬化は、組成物を支持体に施用した後、好ましくは3分以内、より好ましくは60秒以内に開始する。
硬化は、組成物を好ましくは30秒未満、より好ましくは10秒未満、特に3秒未満、さらに特に2秒未満にわたり照射することにより達成される。連続的方法では、照射は連続的に行われ、組成物が照射ビームを通って移動する速度が、硬化の時間を決定する主因である。
【0107】
硬化では紫外線を用いることが好ましい。適した波長は、硬化性組成物に包含される任意の光開始剤の吸収波長と波長が合っているという条件で、例えばUV−A(390〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)、およびUV−V(445〜395nm)である。
【0108】
適した紫外線源は、水銀アークランプ、炭素アークランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、旋回流プラズマアークランプ、金属ハロゲン化物ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、レーザーおよび紫外線発光ダイオードである。中圧または高圧水銀蒸気タイプの紫外線発光ランプがとりわけ好ましい。ほとんどの場合、200〜450nmに発光極大を有するランプがとりわけ適している。
【0109】
照射源のエネルギー出力は、好ましくは20〜1000W/cm、好ましくは40〜500W/cmであるが、望ましい暴露線量を実現することができるならばこれより高くても低くてもよい。暴露強度は、膜の最終構造に影響を及ぼす硬化の程度を制御するために用いることができるパラメーターの1つである。暴露線量は、高エネルギーUVラジオメーター(EIT,IncからのUV PowerMap
TM)により、該装置で示されたUV−AおよびUV−B範囲で測定して、好ましくは少なくとも40mJ/cm
2、より好ましくは40〜1500mJ/cm
2、もっとも好ましくは70〜900mJ/cm
2である。暴露時間は自由に選ぶことができるが、短いことが好ましく、典型的には10秒未満、より好ましくは5秒未満、特に3秒未満、さらに特に2秒未満、例えば0.1〜1秒である。
【0110】
高コーティング速度において望ましい暴露線量に達するために、組成物が1回より多く照射されるように、1より多くのUVランプを用いることができる。2以上のランプを用いる場合、すべてのランプが同等の線量を与えることができ、または各ランプが個々の設定を有することができる。例えば、第1のランプは第2およびそれに続くランプより高い線量を与えることができ、または、第1のランプの暴露強度はより低くてもよい。各ランプの暴露線量を変動させると、ポリマーマトリックス構造および最終架橋密度に影響を与えることができる。好ましい態様では、組成物を、2以上の照射源、例えば2つのランプを用いて相対する側(各側に1つ)から同時に照射することにより硬化する。2以上の照射源は、互いに同じ強度で組成物を照射することが好ましい。この対称的な配置を用いることにより、より高い架橋効率を達成することができ、膜のカールを低減または防止することができる。
【0111】
上記のように、光開始剤を組成物に包含させることができ、これは、通常、硬化でUVまたは可視光線が用いられる場合必要とされる。適した光開始剤は当分野で公知のものである。
【0112】
硬化は、20〜60℃で実施することが好ましい。より高い温度を用いることもできるが、製造コストがより高くなる可能性があるため好ましくない。
好ましい支持体は多孔質であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらのコポリマーなどの織物状または不織布状合成ファブリックであるか、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびそれらのコポリマーなどに基づく多孔質膜であることができる。
【0113】
市販の多孔質支持体は、いくつかの供給源、例えば、Freudenberg Filtration Technologies(Novatexx材料)およびSefar AGから入手可能である。
【0114】
本発明の方法により、過度の可撓性または過度の剛性を示すことなく、望ましい程度の可撓性を有する膜の調製が可能になる。該組成物は、欠陥の数が少なく、カールする傾向が低く、そして使用中に良好な耐久性を保持する薄膜をもたらすことができる。
【0115】
本発明の第3の観点に従って、本発明の第2の観点に従った方法により得られる膜を提供する。
本発明の第3の観点に従った膜は、アニオン性基を有する膜を必要とする他の用途にも用いることができる。
【0116】
本発明の第3の観点に従った膜は、本発明の第2の観点に関し上記した特性を有することが好ましい。
本発明の第4の観点に従って、液体、蒸気またはガスの分離または精製のための、本発明の第1または第3の観点に従った膜の使用を提供する。
【0117】
本発明の膜は、例えばED、(C)EDI、EDR、FTC、ZLD、ZDDまたはREDにおいて、浄水、発電などにとりわけ有用であるが、他の目的に用いることもできる。
本発明の第4の観点に従って、本発明に従ったポリマー膜を1以上含む、電気透析もしくは逆電気透析ユニット、フロースルーキャパシター機器、電気脱イオンモジュール、連続電気脱イオンモジュール、燃料電池、拡散透析装置、膜蒸留モジュール、または膜電極アセンブリーを提供する。
【0118】
電気透析もしくは逆電気透析ユニットまたは電気脱イオンモジュールまたはフロースルーキャパシターは、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソードと、1枚以上の本発明の第1または第3の観点に従った膜とを含むことが好ましい。さらに、該ユニットは、比較的高い塩分を有する水の流れを本発明に従った膜の第1の側面に沿って提供する入口と、比較的低い塩分を有する水の流れを該膜の第2の側面に沿って提供する入口とを含み、その結果、イオンが該膜の第1の側面から第2の側面へ進むことが好ましい。該ユニットの1枚以上の膜が、アニオン性基を有する本発明の第1または第3の観点に従った膜と、カチオン性基を有するさらなる膜とを含むことが好ましい。
【0119】
好ましい態様において、該ユニットは、本発明の第1または第3の観点に従った膜を、少なくとも3枚、より好ましくは少なくとも5枚、例えば、36枚、64枚または最高500枚、さらには1000枚含み、膜の数は用途に依存する。該膜は、例えば、プレート・アンド・フレーム(plate-and-frame)もしくは積層ディスク配置、またはスパイラル巻き(spiral-wound)設計で用いることができる。あるいは、アニオン性基を有する本発明に従った連続的な第1の膜を、コンサーティーナ形状(concertina)(またはジグザグ)様式で折り畳むことができ、カチオン性基(すなわち、第1の膜と相対する電荷のもの)を有する第2の膜を折り目の間に挿入して、複数の溝を形成することができる。これに関し、該溝に沿って流体は進むことができ、該溝は、側壁としてアニオン性膜およびカチオン性膜を交互に有する。
【実施例】
【0120】
ここで、本発明を非限定的な実施例で例示する。これに関し、特記しない限り、部および百分率はすべて重量に基づく。
実施例では、以下の特性を、下記の方法により測定した。
一般的試験方法
選択透過性(“PS”)は、静止膜電位測定を用いることにより測定した。2つのセルを、検討中の膜により分離した。測定前に、膜を0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間にわたり平衡化した。異なるNaCl濃度を有する2つの流れを、検討中の膜の相対する側でセルに通した。一方の流れは0.1MのNaCl(Sigma Aldrichからのもの、最低純度99.5%)濃度を有し、もう一方の流れは0.5M NaClであった。両方の流れの流速は、0.90dm
3/分であった。2つのカロメル参照電極(スイスのMetrohm AGからのもの)を、各セルに挿入したHaber−Lugginキャピラリー管に接続し、膜を介した電位差を測定するのに用いた。有効膜面積は3.14cm
2であり、温度は21℃であった。
【0121】
定常状態に到達したとき、膜電位を測定した(ΔV
測定値)。
膜の選択透過性(α(%))を以下の式に従って計算した:
α(%)=ΔV
測定値/ΔV
理論値×100%。
【0122】
理論上の膜電位(ΔV
理論値)は、ネルンストの式を用いて計算した100%選択透過性膜に関する電位である。
すべてのα(%)測定において日常的な測定の変動を補うために、内部標準を包含させ、これを、結果を標準化するために用いた。用いた内部標準は、Tokuyama SodaからのCMX膜であった;そのα(%)値を98%と決定した。
【0123】
電気抵抗(“ER”)(オーム.cm
2)は、Djugolecki et alによりJ.of Membrane Science,319(2008)の217〜218頁に記載されている方法により、以下を変更して測定した:
・補助膜は、日本のTokuyama SodaからのCMXおよびAMXであった;
・easy load IIモデル77200−62ギアポンプを備えたCole Parmer masterflexコンソールドライブ(77521−47)を、すべての区画に用いた;
・各流れの流速は、Porter Instrument流量計(タイプ150AV−B250−4RVS)およびCole Parmer流量計(タイプG−30217−90)により制御して、475mL/分であった;
・膜の有効面積は3.14cm
2であった。
【0124】
膜強度は、以下の方法により、超音波処理の結果取り除かれた膜の量を測定して決定した。Milliporeからの乾燥した0.45μmフィルターを周囲条件に1時間順応させた後、重量を正確に測定した(W1)。試験用の乾燥膜(800cm
2)を周囲条件に1時間順応させた後、重量を測定してW
膜を得、これを断片に切り分け、水(200cm
3)が入っているビーカーに入れ、該ビーカーをBranson 8210超音波浴の中に99分間置いた。この処理の後、断片から水をデカントし、上記フィルターに通して濾過した。断片を40℃の水で慎重にすすいで、超音波処理により取り除かれた膜片を除去し、無傷の膜がビーカーに保持されるように気を付けて洗液も濾過した。フィルター(取り除かれた膜片を含む)を30℃の真空オーブンで一晩乾燥した後、濾過前にフィルターを順応させた条件と同じ条件で1時間順応させた後、重量を測定した(W2)。超音波処理に起因する重量損失%(これは、膜強度に反比例する)を、以下のように計算した:
重量損失%=100%×(W2−W1)/W
膜
少ない重量損失は膜が強いことを示し、多い重量損失は膜が弱いことを示す。
【0125】
pH測定は、pH4および7の標準緩衝液を用いて20℃で校正したMetrohm 6.0228.000電極を備えるMetrohm 691 pHメーターを用いて実施した。
【0126】
CDは、mmol/gでの計算架橋密度であり、IECは、meq/gでの計算イオン交換容量である(両方とも上記のように計算した)。
MFは、組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率である(上記のように計算した)。
構成成分
BAMPS−これは、米国特許公報第4034001号に記載されている通りに合成した1,1−ビス(アクリロイルアミド)−2−メチルプロパン−2−スルホン酸(少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含む硬化性化合物)であり、276.3の分子量を有する。
MBA−これは、Sigma AldrichからのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物)であり、154.2の分子量を有する。
AMPS−これは、Hang−Zhou(中国)からの2−アクリロイルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物)であり、207.2の分子量を有する。
BAHP−これは、国際公開第2010/106356号に記載されている通りに合成した1,4−ビス(アクリロイル)ホモピペラジン(少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物)であり、208の分子量を有する。
IPA−これは、Shellからの2−プロパノールである。
Genorad
TM−これは、重合防止剤である。
Darocur
TM 1173−これは、光開始剤である。
Novatexx
TM 2226−14E−これは、Freudenberg Filtration Technologiesからの不織ポリプロピレン/ポリエチレン材料である。
実施例1〜7および比較例1〜7
組成物Ex1〜Ex7および比較組成物CE1〜CE7を、表1および2に重量%で表して示した構成成分を混合することにより調製した。
【0127】
得られた組成物を、150μm巻線バーを約5m/分の速度で用いてアルミニウム製地下用キャリヤー(underground carrier)に手動で施用した後、4マイクロメートルの巻線ロッドコーターを用いてレベリングした不織支持体(Novatexx
TM 2226−14E)に施用した。組成物の温度は20〜60℃であった。
【0128】
コーティングした支持体を、D−バルブを取り付けたFusion UV SystemsからのLight Hammer LH6を強度100%で作動させて用い、30m/分の速度で硬化することにより、膜を調製した(シングルパス)。暴露時間は0.47秒であった。
【0129】
硬化後、膜を0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間にわたり貯蔵した。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
注釈:10を超えるER値は、ほとんどの用途に関し大きすぎると考えられる;ERは、5オーム.cm
2未満であることが好ましい。
本発明は以下の態様を含む。
[1] 以下を含む組成物の硬化により得ることができる膜:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
および、所望により(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物;
これに関し、該組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率は、少なくとも0.25である。
[2] 組成物がさらにラジカル開始剤を含む、[1]に記載の膜。
[3] 組成物がさらに、水を含むか、水と水混和性有機溶媒を含む混合物を含む、[1]〜[2]のいずれか一項に記載の膜。
[4] 成分(i)の(メタ)アクリル基が(メタ)アクリルアミド基である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の膜。
[5] 成分(ii)がさらにアニオン性基を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の膜。
[6] 成分(i)が式(1)の化合物を含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の膜:
【化4】
[式中:
R1およびR2は、それぞれ独立してHまたはメチルであり;
R3およびR4は、それぞれ独立してHまたはアルキルであるか、または、R3およびR4は、それらが付着しているN原子およびYと一緒になって、置換されていてもよい6または7員環を形成し;そして
Yは、置換されていてもよく遮断されていてもよいアルキレンまたはアリーレン基である];
但し、
式(1)の化合物は、1、2、3または4つのスルホン酸基を有するという条件が付き;そして
式(1)の化合物は、方程式:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、式(1)の化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、式(1)の化合物中に存在するスルホン酸基の数である]
を満たす分子量を有するという条件が付く。
[7] 式(1’)の構造単位を含む膜:
【化5】
[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立してHまたはメチルであり;
R3およびR4は、それぞれ独立してHまたはアルキルであるか、または、R3およびR4は、それらが付着しているN原子およびYと一緒になって、置換されていてもよい6または7員環を形成し;そして
Yは、置換されていてもよく遮断されていてもよいアルキレンまたはアリーレン基である];
但し、
式(1’)の構造単位は、1、2、3または4つのスルホン酸基を有するという条件が付く。
[8] 組成物の全乾燥重量に関し少なくとも3.5meq/gのIECを有する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の膜。
[9] 以下を含む組成物:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物を2〜80重量%:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物を1〜70重量%;
(iii)少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物を0〜40重量%;
(iv)ラジカル開始剤を0〜10重量%;および
(v)溶媒を15〜70重量%
これに関し、該組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率は、少なくとも0.25である。
[10] 以下を含む、[9]に記載の組成物:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物を4〜70重量%:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物を10〜60重量%;
(iii)少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物を0〜30重量%;
(iv)ラジカル開始剤を0.1〜10重量%;および
(v)水を含む溶媒、または水と水混和性有機溶媒とを含む混合物を含む溶媒を25〜45重量%;
これに関し、該組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率は、少なくとも0.35である。
[11] 成分(ii)がさらにアニオン性基を含む、[9]または[10]に記載の組成物。
[12] 以下を含む組成物:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物を5〜75重量%:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物を0〜60重量%;
(iii)少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含み、スルホン酸基を含まない硬化性化合物を0〜30重量%;
(iv)ラジカル開始剤を0.1〜10重量%;および
(v)溶媒を20〜45重量%;
これに関し、該組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率は、少なくとも0.25である。
[13] 以下の段階を含む、膜の調製方法:
a)組成物を支持体に施用する段階;および
b)該組成物を硬化して膜を形成する段階;
これに関し、該組成物は、以下を含む:
(i)少なくとも2つの(メタ)アクリル基とスルホン酸基とを含み、以下の方程式を満たす分子量を有する硬化性化合物:
MW<(300+300n)
[式中:
MWは、前記硬化性化合物の分子量であり;そして
nは、1、2、3または4の値を有し、前記硬化性化合物中に存在するスルホン酸基の数である];
および、所望により(ii)エチレン性不飽和基を1つ有する硬化性化合物;
これに関し、該組成物中に存在する硬化性化合物の全モル数に対する、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む硬化性化合物のモル分率は、少なくとも0.25である。
[14] 組成物が、[9]、[10]、[11]または[12]に定義されている通りである、[13]に記載の方法。
[15] 硬化を、電子ビームまたは紫外放射線を用いて実施する、[13]または[14]に記載の方法。
[16] 組成物を、電子ビームまたは紫外線で30秒未満の時間にわたり照射することにより硬化する、任意の[15]に記載の方法。
[17] 組成物施用ステーションと、組成物を硬化するための照射源と、膜収集ステーションと、支持体を組成物施用ステーションから照射源そして膜収集ステーションへ移動させる手段とを含む製造ユニットにより、組成物を移動支持体に連続的に施用する、[13]〜[16]のいずれか一項に記載の方法。
[18] 硬化性組成物を、5m/分を超える速度で移動している支持体に施用する、[13]〜[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19] 液体、蒸気またはガスの分離または精製のための、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の膜の使用。
[20] [1]〜[8]のいずれか一項に記載のポリマー膜を1以上含む、電気透析もしくは逆電気透析ユニット、フロースルーキャパシター機器、電気脱イオンモジュール、連続電気脱イオンモジュール、燃料電池、拡散透析装置、膜蒸留モジュール、または膜電極アセンブリー。