特許第5977843号(P5977843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977843電気供給ネットに電流を給電するシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977843
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】電気供給ネットに電流を給電するシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20160817BHJP
   F03D 3/02 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H02J3/38 160
   F03D3/02 B
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-561383(P2014-561383)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-511808(P2015-511808A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】EP2013054794
(87)【国際公開番号】WO2013135592
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】102012204220.2
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ベークマン、アルフレート
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−077457(JP,A)
【文献】 特開平09−233705(JP,A)
【文献】 特開2006−248814(JP,A)
【文献】 特開2007−249341(JP,A)
【文献】 特開2011−103736(JP,A)
【文献】 特開2000−009021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
F03D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置(2)を有し、電気供給ネット(22)に電力を給電する給電システム(1)を制御する方法であって、以下の工程:
・前記風力発電装置(2)によって風から電力(P)を生成すること、
・前記生成電力(P)の第1部分(P)を前記電気供給ネット(22)に給電すること、
・前記生成電力(P)の第2部分(P)を、該生成電力(P)の当該供給される第2部分(P)を消費する電力消費装置(6)に供給すること、
前記給電システム(1)によって前記電気供給ネット(22)の少なくとも1つのネット状態及び/又は支配的な風の強さを監視すること、
・少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して及び/又は支配的な風の強さに依存して、前記電力消費装置(6)に供給される前記生成電力(P)の第2部分(P)が全体的に又は部分的に減少され、前記電気供給ネット(22)に給電される前記生成電力(P)の第1部分(P)が対応して増加されること
を含む方法。
【請求項2】
前記電力消費装置(6)は、前記電力(P)を他のエネルギ形態に変換する変換装置(6)であること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電力消費装置(6)は、ガスを生成する変換装置(6)であること
を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
・前記生成電力(P)の第3部分(P)が電気蓄積装置(8)に供給されること、
・前記少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、前記電気蓄積装置から電力が取り出され、前記電気供給ネット(22)に給電されるこ
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、前記電気蓄積装置(8)に供給される前記生成電力(P)の第3部分(P)が全体的に又は部分的に減少され、前記電気供給ネット(22)に給電される前記生成電力(P)の第1部分(P)が対応して増加されること
を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのネット状態の監視は、
・前記電気供給ネット(22)における周波数の監視、
・前記電気供給ネット(22)における電圧の監視、
・外部信号の評価、
・前記電気供給ネット(22)の電力の実際の需要の検出、又は、
・前記電気供給ネット(22)の前記周波数の変化の監視、又は、
・前記電気供給ネット(22)の電力の実際の需要の検出と前記電気供給ネット(22)の前記周波数の変化の監視の両方
を含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記電力消費装置(6)に供給される前記生成電力(P)の第2部分(P)が、完全に、前記電気供給ネット(22)に給電される前記生成電力(P)の第1部分(P)に補充付加されるこ
特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記生成電力(P)の第2部分(P)が前記第1部分(P)と一緒に前記電気供給ネット(22)に給電可能になるよう、当該第2部分(P)が切換工程によって伝送経路変更されるよう、該第2部分(P)が、完全に、該第1部分(P)に補充付加されること
を特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
気蓄積装置(8)に供給される前記生成電力(P)の第3部分(P)が、完全に、前記電気供給ネット(22)に給電される前記生成電力(P)の第1部分(P)に補充付加されるこ
特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記生成電力(P)の第3部分(P)が前記第1部分(P)と一緒に前記電気供給ネット(22)に給電可能になるよう、当該第3部分(P)が切換工程によって伝送経路変更されるように補充付加されるよう、該第3部分(P)が、完全に、該第1部分(P)に補充付加されること
を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記給電システム(1)は直流電圧中間回路を備えたインバータ(4)を有し、及び、前記生成電力(P)の第1部分(P及び/又は第2部分(Pは、該生成電力(P)が直接的に該直流電圧中間回路に供給されるよう、全体的に又は部分的に伝送経路変更されること
を特徴とする請求項8又は10に記載の方法。
【請求項12】
電気供給ネット(22)に電力を給電する給電システムであって、
・電力(P)を生成する風力発電装置(2)、
・前記風力発電装置(2)によって生成される電力(P)の少なくとも第1部分(P)を給電する給電手段(4)、
・前記風力発電装置(2)によって生成される電力(P)の少なくとも第2部分(P)を消費する電力消費装置(6)
・前記電気供給ネット(22)の少なくとも1つのネット状態及び/又は支配的な風の強さを監視する監視手段、及び
・給電システムを制御する制御装置(10)であって、請求項1〜11の何れかに記載の制御方法を実行するよう構成された該制御装置(10)
を含む給電システム。
【請求項13】
前記電力消費装置(6)は、前記電力(P)を他のエネルギ形態に変換する変換装置(6)であること
を特徴とする請求項12に記載の給電システム。
【請求項14】
前記電力消費装置(6)は、ガスを生成する変換装置(6)であること
を特徴とする請求項13に記載の給電システム。
【請求項15】
前記風力発電装置(2)によって生成される電力(P)の第3部分(P)を蓄積する電気蓄積装置(8)、及び/又は、前記電力(P)の第1部分(P)を前記電気供給ネット(22)に供給する、直流電圧中間回路を備えたインバータ(4)
を含む請求項12又は13に記載の給電システム。
【請求項16】
複数の風力発電装置と請求項1215の何れかに記載の給電システムを含むウインドパーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置を有し、電気供給ネットに電力ないし電気エネルギを給電する給電システムの制御方法に関する。更に、本発明は、そのような給電システムに関する。更に、本発明は、複数の風力発電装置と少なくとも1つの給電装置を有するウインドパークに関する。
【背景技術】
【0002】
風から電流を生成し、該電流を電気供給ネットに給電する風力発電装置は一般的に既知である。そのような風力発電装置の一例を図1に模式的に示す。そのため、そのような風力発電装置は、1つの風力発電装置を含む給電システムとして把握することも可能である。
【0003】
通常は、少なくとも有利には、風力発電装置(複数)は、いわゆる系統並列運転で運転されており、また運転されていた。このことは、一般的には、各風力発電装置が、夫々、支配的風のもとで可能な限り多くの電力を生成し、この電力を電気供給ネットに給電することとして理解されている。電気供給ネット(これは以下においては同義的にネットワークないしネットと称することもある)は、結果として生じる供給電力の変動を補償ないし吸収していた。
【0004】
しかしながら、そのような系統並列運転は、ネットにおける風力発電装置の電力の割合が増大しているネットにとっては問題である。風力発電装置(複数)も電気ネットを支援し、殊に電気ネットの電力需要に適応(対応)可能であるのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 6,984,898
【特許文献2】US 6,891,281
【特許文献3】US 7,462,946
【特許文献4】US 6,965,174
【特許文献5】US 7,525,208
【特許文献6】EP 2 411 669
【特許文献7】DE 10 2009 018 126 A1
【特許文献8】DE 10 2008 052 827 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この限りでは、風力発電装置(複数)をネット支援機能の負担を可能にする幾つかの解決策が既に知られている。例えば、US 6,984,898は、(1つの)風力発電装置がその給電電力をネット電圧に依存して調整する方法を開示している。また、出力がネットの電圧の周波数に依存して調整される方法が、US 6,891,281から知られている。また、US 7,462,946は、電気供給ネットにおける短絡を考慮することが可能な(1つの)風力発電装置によって電気供給ネットに電力を給電する方法を開示している。また、US 6,965,174は、ネットに給電する(1つの)風力発電装置がネット電圧に依存して位相角、従って給電電力の無効電力成分を調節し、それによってもネット支援に一定の寄与を提供する方法を提案している。ネットにおける短絡の考慮については、US 7,525,208も提案している。
【0007】
これらの方法はすべて、ネットの支援(サポート:Stuetzung)に1つの寄与を提供するものであるが、風力発電装置がその都度支配的な風条件によって許されるよりも多くの電力を風から生成することはできないという事実については何も変えることはできない。その限りで、とりわけ、振幅に関する出力増大に対しても、そのような出力増大の期間に対しても、狭い限界が与えられているといえる。
【0008】
風力発電装置の給電電力の増大も達成可能にするために、EP 2 411 669は、風力発電装置の回転しているロータの遠心質量(Schwungmasse)からの出力を利用することによって、ネットの支援のための短時間の出力増大を達成することを提案している。そのような出力増大に対しても、とりわけロータに最大に蓄えられる運動エネルギによって得られる狭い限界が与えられている。これに加えて、給電電力の所望の増大を実行するために、風力発電装置のロータの運動エネルギを電流に変換するための何らかの大がかりな機構も必要となる。
【0009】
なお、ドイツ特許商標庁は、本願の優先権の基礎出願において、以下の先行技術文献をサーチした:DE 10 2009 018 126 A1及びDE 10 2008 052 827 A1。
【0010】
それゆえ、本発明の課題は、上記の問題の少なくとも1つに取り組むことである。とりわけ、風力発電装置を使用する場合であっても電力の供給を増大可能にする方策を提供することが望まれる。この電力増大は、とりわけ、可及的に簡単に、可及的に迅速にかつ可及的に持続的に実行可能であることが望まれる。その際、有意な(著しい)出力増大、とりわけ、可能な限り少なくとも10%、20%又は可能であれば50%以上の出力増大を達成することも望まれる。少なくとも、代替的な方策の提案が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、請求項1の方法が提案される。即ち、上記の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、風力発電装置を有し、電気供給ネットに電力を給電する給電システムを制御する方法が提供される。この方法は、以下の工程:
・前記風力発電装置によって風から電力を生成すること、
・前記生成電力の第1部分を前記電気供給ネットに給電すること、
・前記生成電力の第2部分を、該生成電力の当該供給される第2部分を消費する電力消費装置に供給すること、
・前記給電システムによって前記電気供給ネットの少なくとも1つのネット状態及び/又は支配的な風の強さを監視すること、
・少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して及び/又は支配的な風の強さに依存して、前記電力消費装置に供給される前記生成電力の第2部分が全体的に又は部分的に減少され、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分が対応して増加されること
を含む(形態1・第1基本構成)。
(形態2)形態1の方法において、前記電力消費装置は、前記電力を他のエネルギ形態に変換する変換装置であることが好ましい。
(形態3)形態2の方法において、前記電力消費装置は、ガスを生成する変換装置であることが好ましい。
(形態4)形態1又は2の方法において、
・前記生成電力の第3部分が電気蓄積装置に供給されること、
・前記少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、前記電気蓄積装置から電力が取り出され、前記電気供給ネットに給電されることが好ましい。
(形態5)形態4の方法において、
前記少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、前記電気蓄積装置に供給される前記生成電力の第3部分が全体的に又は部分的に減少され、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分が対応して増加されることが好ましい。
(形態6)形態1又は2の方法において、
少なくとも1つのネット状態の監視は、
・前記電気供給ネットにおける周波数の監視、
・前記電気供給ネットにおける電圧の監視、
・外部信号の評価、
・前記電気供給ネットの電力の実際の需要の検出、又は、
・前記電気供給ネットの前記周波数の変化の監視、又は、
・前記電気供給ネットの電力の実際の需要の検出と前記電気供給ネットの前記周波数の変化の監視の両方
を含むことが好ましい。
(形態7)形態1又は2の方法において、
前記電力消費装置に供給される前記生成電力の第2部分が、完全に、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分に補充付加されることが好ましい。
(形態8)形態7の方法において、前記生成電力の第2部分が前記第1部分と一緒に前記電気供給ネットに給電可能になるよう、当該第2部分が切換工程によって伝送経路変更されるよう、該第2部分が、完全に、該第1部分に補充付加されることが好ましい。
(形態9)形態7又は8の方法において、
電気蓄積装置に供給される前記生成電力の第3部分が、完全に、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分に補充付加されることが好ましい。
(形態10)形態9の方法において、前記生成電力の第3部分が前記第1部分と一緒に前記電気供給ネットに給電可能になるよう、当該第3部分が切換工程によって伝送経路変更されるように補充付加されるよう、該第3部分が、完全に、該第1部分に補充付加されることが好ましい。
(形態11)形態8又は10の方法において、前記給電システムは直流電圧中間回路を備えたインバータを有し、及び、前記生成電力の第1部分及び/又は第2部分は、該生成電力が直接的に該直流電圧中間回路に供給されるよう、全体的に又は部分的に伝送経路変更されることが好ましい。
(形態12)上記の課題を解決するために、本発明の第2の視点により、電気供給ネットに電力を給電する給電システムが提供される。この給電システムは、
・電力を生成する風力発電装置、
・前記風力発電装置によって生成される電力の少なくとも第1部分を給電する給電手段、
・前記風力発電装置によって生成される電力の少なくとも第2部分を消費する電力消費装置、
・前記電気供給ネットの少なくとも1つのネット状態及び/又は支配的な風の強さを監視する監視手段、及び
・給電システムを制御する制御装置であって、形態1〜11の何れかの制御方法を実行するよう構成された制御装置
を含む(第2基本構成)。
(形態13)形態12の給電システムにおいて、前記電力消費装置は、前記電力を他のエネルギ形態に変換する変換装置であることが好ましい。
(形態14)形態13の給電システムにおいて、前記電力消費装置は、ガスを生成する変換装置であることが好ましい。
(形態15)形態12又は13の給電システムは、前記風力発電装置によって生成される電力の第3部分を蓄積する電気蓄積装置、及び/又は、前記電力の第1部分を前記電気供給ネットに供給する、直流電圧中間回路を備えたインバータを含むことが好ましい。
(形態16)複数の風力発電装置と形態12〜15の何れかの給電システムを含むウインドパークも有利に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の方法により、風力発電装置を有する給電システムが制御される。この制御は、風力発電装置が電力を生成するよう実行される。ここで、電力(電気的出力ないしパワー)の生成ないし電気エネルギの生成とは、他の形態の出力(パワー)ないしエネルギの電気的出力(パワー)ないし電気エネルギへの変換として理解されるべきであることに留意すべきである。従って、風力発電装置は、風のエネルギを電気エネルギに変換することによって電力を生成する。
【0013】
そのように生成されるこの電力のうち、第1部分が電気供給ネットに給電される。風力発電装置によって生成される第2部分は、その(当該第2部分の)消費のための電力消費装置に供給される。ここで、電力消費装置とは、電気的意味での消費装置、即ち電力を取り去る(消費する)消費装置として理解されるべきである。どのような仕方と態様で電力消費装置が電力を更に利用するかは、以下に説明するような好ましい消費装置が存在するが、差し当たり重要ではない。
【0014】
有利には、給電ネットの少なくとも1つのネット状態及び/又は風が監視ないし観察される。この場合、以下に説明するような様々なネット状態が問題(ないし対象)になる。尤も、ネット状態の監視は、少なくとも評価の際には、給電システムが何れにせよ考慮しなければならないもの、即ち、ネットにおける、とりわけ給電システムが電力を給電するネットの点(ポイント)であるネット給電点における、電圧の周波数、位相及び振幅より多くのものについて行われる。
【0015】
この少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して及び/又は風に依存して、電力消費装置に供給される生成電力の第2部分が全体的に(完全にないし全部)又は部分的に減少され、第1部分に付加される。従って、電力の第1部分はこの減少された部分だけ増大され、対応して、電気供給ネットに給電される電力は増大する。
【0016】
風に依存する減少は、給電電力が一定に維持されることによっても実現することができる。生成電力の第2部分は、この場合、全生成電力の変動に依存する。風についての情報は、この場合、生成電力についての情報に影響を及ぼす。
【0017】
とりわけ、ネット状態に依存する第2部分の減少が提案される。
【0018】
即ち、ネットに供給すべき電力を増大することが有利であることが、少なくとも1つの被監視ネット状態に基づいて、認識ないし推定ないし予期される場合、これは、電力消費装置に供給される電力の一部をネットへの給電のために伝送経路変更することによって、簡単に実現することができる。これは、とりわけ、追加の電力の迅速な調達が簡単に可能になるという利点を有する。場合によっては、電力消費装置について、突発的により少ない電力しか使用されない又は最早全く電力が使用されない事態を想定することが、必要になることもあり得る。このために、電力消費装置は、相応に構成(調整)されること又は選択されることができる。
【0019】
ネット状態の代わりに又はネット状態に加えて、風の状態とりわけ風の強さ(ないし風速:Windstaerke)を監視することが提案される。結局、給電電力即ち生成電力の第1部分を可及的に一定に維持することが提案されるが、但し、ネットのある状態によってこの給電電力の振幅を変更することが必要又は適切になる場合は除く。
【0020】
有利には、電力消費装置は電力を他のエネルギ形態に変換する変換装置であり、とりわけ、電力消費装置は、エネルギ担体(キャリア)としてガス又は液体(流動体)を生成する変換装置である。例えば、電気分解によって水素を生成することができる。更にないし補充(補完)的に、メタン化プロセスによってメタンを生成し、ガスネット及び/又はガス貯蔵装置に供給することもできる。このために、この変換装置の寸法(容量)に応じて大量の電力を取り去る(消費する)ことが可能であると共に、その出力(パワー)を容易に減少することが可能な(電力)消費装置が存在する(設けられる)。そのような変換装置への入力が減少されると、該変換装置は対応してより少ないガスを生成するか、場合によっては全くガスを生成しない。この状態は、原理的に、任意の期間持続することができる。
【0021】
変換装置に供給される電力の減少は、ごく短時間で、例えば数ms以内に、実行することができる。ガス生産を抑制又は停止するために、変換装置がより長い時間を必要とする場合であっても、それに対し、相応の中間貯蔵装置を設けること(により対応すること)ができる。
【0022】
一実施形態に従って、風力発電装置の生成電力の第3部分が電気蓄積装置(蓄電装置)に供給されることが提案される。原理的には、この場合、第2部分が0の値をとることも可能であり、有利には、電力は、この実施形態に従って、夫々異なる値を有し得る複数の第3部分に分割されるべきである。この場合、第1部分は電気供給ネットに給電され、第2部分は(電力)消費装置のために、とりわけ変換装置のために、使用され、第3部分は電気蓄積装置の充電のために使用される。
【0023】
少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、とりわけ電気供給ネットの相応の需要(要求)がある場合又は当該需要(要求)が予期(期待)されるべき場合には、電気エネルギ蓄積装置(蓄電装置)から電力を取り出し、電気供給ネットに給電することができる。追加的に(付加的に)又は代替的に、(電気)エネルギ蓄積装置の充電のために使用される第3電力部分も、1又は複数の被検出関連ネット状態に依存して、電気供給ネットへの給電のために変化される。そのため、非常に短時間のうちに、給電電力は、第2部分及び第3部分の分だけ増大することができ、その結果、1つの風力発電装置によって又は複数の風力発電装置によって生成される全電力が給電ネットに給電されるよう、スイッチング(Umschaltung)は、非常に短時間のうちに、実行することができる。更に、給電の際に出力増大を少なくとも短時間で達成するために、電気蓄積装置に中間蓄積された電気エネルギを使用して、1又は複数の風力発電装置によってその都度実際に供給可能な出力を超えて給電電力をなお増大することができる。
【0024】
かかる場合、とりわけ短時間の例外的(異常)状態として生じ得る。そのような例外的状態は、ネットにおける(複数の)測定(値)から生じることがあり得、また、ある状態は、例えば工業装置が大型消費装置を既知の時点にスイッチオンし、それによって短時間の電力需要ピークが生成される場合、予め既知でもあり得る。
【0025】
生成電力の第3部分の電気蓄積装置への供給を高出力で持続的に実行することができないことは明らかである。有利には、可及的に多くの予備電力を利用可能にするために、電気蓄積装置が常時フル充電されているように、電気エネルギ蓄積装置が制御され又は生成電力の第3部分が調節される。尤も、電気エネルギ蓄積装置は、そのエネルギを例外的状態の際に提供するためだけではなく、ごく一般的にネット需要の変動に応答するため又は風の変動を補償するために使用されることも可能である。
【0026】
(生成)電力の第2部分又はその一部を給電のために伝送経路変更することは、とりわけ、急激な電力需要に応答するための、更には、系統事故(障害)の際に、そのような系統事故に対し給電電力の増大に遭遇する(必要とする)場合には、ネット支援的に(netzstuetzend)作用するための迅速な手段を提供する。(生成)電力の第2部分のこの伝送経路変更は、必要な電力が既に電気エネルギとして用意されているため、とりわけ迅速に実行することができる。
【0027】
同時に、この第2部分の伝送経路変更は、ネットへの電力の給電が安定化(Verstetigung)されるよう、可変的に実行することも可能である。換言すれば、風が変動しても電気供給ネットに一定の電力が給電されることを達成することができる。かくして、給電の安定化が可能になる。給電が一様に実行され、それによって、予期せぬ変動も回避されるため、既にそのような安定化は、ネット安定性に対し有利に影響を及ぼすことができる。換言すれば、非常に多くの風力発電装置が突然非統制的に同時により少ない電力を又は同時により多くの電力を給電し、それにより極端な場合にはネット崩壊に至るという理論上の危険が存在するため、風力発電装置(複数)にネット安定性に対する問題が認められるというような懸念に遭遇することがあり得る。このような懸念は−使用される風力発電装置によっては−根拠がないというべきであり、少なくとも、しばしば見られるように大きな問題を表し得るものではないにも拘らず、提案した安定化(恒常化)はそのような懸念を除去することができる。
【0028】
電気蓄積装置の使用は、同様に、そのような安定化(恒常化)を促進(支援)することができ、更に、支配的風力出力(優勢な風速条件における風力発電出力:vorherrschende Windleistung)を超えて、従って、原理的に、関係する1又は複数の風力発電装置の定格出力を超えて、給電可能電力を増大することができる。
【0029】
少なくとも1つのネット状態の監視は、電気供給ネットにおける周波数の監視であること又は当該監視を含むことができる。電気供給ネットにおける周波数は、とりわけ、ネットにおける電力需要の指標となることができる。周波数が定格周波数、即ち例えば欧州ネットでは50Hz、米国ネットでは60Hz、に対し上昇する場合、これは、ネットにおける電力の過大供給の指標をなす。他方、周波数が、とりわけ、(ネットの)公称周波数とりわけネットの定格周波数を下回る場合、これは、ネットにおける電力の過大需要の指標をなす。従って、有利には、予め設定される閾値を下回るネットの周波数の低下に依存して、(生成)電力の第2部分及び/又は第3部分を全体的に(完全にないし全部)又は部分的に給電のために伝送経路変更することが提案される。
【0030】
有利には又は補充(補完)的に、電気供給ネットにおける電圧を、詳しくはその振幅に応じて、監視することも可能である。とりわけ、この場合、電圧の実効値の振幅又は電圧の同様に代表する値が使用される。とりわけ、(生成)電力の第2部分及び/又は第3部分の上述の全体的又は部分的伝送経路変更は、電気供給ネットにおける電圧が予め設定される電圧閾値を下回るか否かに依存させることができる。
【0031】
上述の伝送経路変更は被監視ネット状態に量的に依存することも可能である。有利には、電気供給ネットにおける周波数即ちいわゆるネット周波数が予め設定される閾値を下回る程度が大きい程、一層多くの電力が給電のために伝送経路変更される。更に有利には、電気供給ネットにおける電圧即ちいわゆるネット電圧が予め設定される閾値を下回る程度が大きい程、一層多くの電力が給電のために伝送経路変更される。上述の周波数依存の提案(方策)の場合だけではなく、上述の電圧依存の提案(方策)の場合にも、電力の伝送経路変更(による給電)は、更に低下する周波数ないし更に低下する電圧に対し線形的に(比例的に)、所定の閾値に至るまで、増大する。
【0032】
有利にはないし補充(補完)的に、ネット状態は、外部の信号(外部信号)が評価されることによって監視される。そのような外部信号は、とりわけ、電気供給ネットの運用者いわゆるネット運用者が送信する信号である。これによって、例えば、ネットにおける異なる発電装置(発電者)の異なる挙動を一緒に考慮することができる。かくして、とりわけ、ネットにおける複数の発電装置は、それらの給電装置(給電システム)が1つの発電装置を構成し得るが、それらの制御について互いに相反的に作動することの回避が可能になる。更に、ネット運用者の信号を考慮することによって、例えば発電装置又は消費者ないし需要家(消費装置)の計画された接続又は分離のような、将来の事象が考慮可能になる。
【0033】
更に有利にはないし補充(補完)的に、少なくとも1つのネット状態を監視するために、電気供給ネットの電力の実際の需要、とりわけ過大需要(の状態)即ち発電装置(複数)によって電気供給ネットにその都度まさに供給されるよりもより多くの需要、を検出する(導出ないし決定する)ことが提案される。上述のとおり、これは、周波数の監視によって実行することができる。更なる可能性(手段)は、完全に又は部分的に消費装置自身によって実行可能な具体的消費(量)測定を実行することである。とりわけ、これについては、将来的にネットの消費装置(消費者)及び発電装置(発電者)がより強く情報技術的に相互接続されることができ、それに応じてその需要ないしその供給を計画し、相互連絡する可能性(手段)も考慮される。そのような情報は、給電装置(給電システム)によって評価することが可能である。尤も、有利には、複数の消費装置群又はすべての消費装置に対し(1つの)事前評価(Vorauswertung)が実行され、そのような評価の結果のみが需要(要求)として給電装置(給電システム)に伝送され、相応に(1つの)ネット状態として考慮可能であることが前提(出発点)となる。
【0034】
更に有利には、ネット状態として電気供給ネットの周波数の変化即ちネット周波数の変化を監視することが提案される。とりわけネット周波数の急速ないし不所望に急速な変化は、過大需要又は過大供給の指標であり得るのみならず、警戒を要するクリティカルな(緊急対応を要する)ネット状態の指標でもあり得る。例えば、急速に低下するネット周波数は、ネットにおける警告を発する電力需要増大の指標であり得る。とりわけネット周波数の急速な低下は、給電のための電力の急速な伝送経路変更(Umleiten)を必要にし得る。例えば、伝送経路変更によって、生成電力の第2部分及び/又は生成電力の第3部分が即座かつ完全に給電のために利用可能になる。かくして、極めて短時間のうちに、追加の電力の大部分を給電のために利用することが可能になり、しかも持続的に供給することができる。
【0035】
有利には、閾値(ないし限界値:Grenzwert)は周波数変化のために(予め)設定され、周波数の負(ネガティブ)の変化即ち周波数低下がこの閾値を下回る場合即ちその(低下の)大きさ(Betrag)が閾値の大きさを上回る場合、生成電力の第2部分及び/又は第3部分の伝送経路変更が給電のために電気供給ネットに導入されることが提案される。
【0036】
有利には、上記各提案(但しこれらで終わりではない)の2以上をネット状態の監視のために組み合わせることも可能である。例えば、周波数の絶対値が未だ大きい場合、とりわけ公称値を超えている、とりわけ定格周波数を超えている場合、所定の周波数低下が許容され得ることが提案される。尤も、ネット周波数がこの公称値とりわけ定格周波数である場合又はそれより低い場合、同じ周波数低下(量)によって、給電のための上述の電力の伝送経路変更が作動されることも可能である。同様に、ネット電圧の評価及び/又はネット周波数の評価及び/又はネット周波数変化の評価が、例えばネット運用者が1つの信号を介して、既に、誤って認識された問題を既に除去している相応の対策を通知(指令)しているか否かに依存して、電力の伝送経路変更のための種々異なる結果に至ることも可能である。認識された問題の増大にこれから至るかもしれない信号をネット運用者が伝送する場合、評価は異なる結果になり得る。同様に、とりわけ消費者(消費装置)の実際の需要分析を考慮することにより、ネット状態の評価の結果に影響することができる。例えば、大きな消費者(消費装置)がネットから切断されることが分かっている場合、これからまずもって、電力の追加の給電を見合わせることも可能である。
【0037】
本発明の一実施形態は、電力消費装置に供給される生成電力の第2部分が、完全に、電気供給ネットに給電される生成電力の第1部分に補充付加(ergaenzt)されること、とりわけ生成電力の第2部分が該第1部分と一緒に電気供給ネットに給電可能になるよう、当該第2部分が切換工程によって伝送経路変更されるように補充付加されること、を提案する。追加的に又は代替的に、電力消費装置に供給される生成電力の第3部分が、完全に、電気供給ネットに給電される生成電力の第1部分に補充付加されることも可能である。
【0038】
有利には、(生成)電力の第2部分及び/又は第3部分の全体的(完全なないし全部の)又は部分的伝送経路変更は、基本的に電気供給ネットへの給電を実行するインバータの直流電圧中間回路に電力が供給されるよう、実行される。そのために、有利には、給電装置(給電システム)は、風力発電装置が電力を生成し、これを整流し、直流電圧として提供するよう基本的に構成される。この直流電圧から、まず、(生成)電力の第1部分、第2部分及び/又は第3部分への分割(ないし分配)が実行される。(生成)電力の第1部分は、この形態で即ち直流電圧として直流電圧中間回路に供給され、インバータは、給電されるべき電力を周波数、位相及び振幅に従って相応に生成する。
【0039】
(生成)電力の第2部分及び/又は第3部分が給電のために伝送経路変更されると、これは、基本的に、夫々の部分が、直流電圧として利用可能な風力発電装置の全電力から最早又は最早完全には取り出されず、そのため、直流電圧中間回路に直接供給され、給電され得るように、実行される。換言すれば、本発明の一実施形態は、この第2及び第3部分が最早取り出されず、寧ろ、風力発電装置によって提供される全電力が直接完全に直流電圧中間回路に流入し、給電に供されることによって、(生成)電力の第2部分及び/又は第3部分の伝送経路変更が簡単に行われることを提案するものである。
【0040】
かくして、給電を行うインバータが通常更に作動し、直ちにより多くの電力を給電のために供給するため、給電電力の増大は自発的(spontan;即ち、本発明の装置により自ら)かつ簡単に実行可能であることも明確である。その限りにおいて、有利には直流電圧中間回路に接続されている複数の個別インバータから構成されることも可能なインバータは1又は複数の風力発電装置によって最大に生成可能な全電力の給電に適するよう構成される必要があるが、これに対する対策を図るだけでよい。
【0041】
更に、請求項7に応じた電気供給ネットに電力を給電するための給電システムが提案される。この給電システムは、電力を生成するための少なくとも1つの風力発電装置と、風力発電装置によって生成される電力の少なくとも第1部分を給電するための少なくとも1つの給電手段、とりわけインバータと、風力発電装置によって生成される電力の少なくとも第2部分を消費するための電力消費装置と、給電システムを制御するための、とりわけ電力流(ないし潮流:Leistungsfluss)を制御するための、制御装置、を含む。
【0042】
制御装置は、上述の実施形態の少なくとも1つに従った方法を実行するよう構成される。その制御方法を実行するためのそのような構成は、制御装置がインバータ及び切換又は伝送経路変更装置に接続される構成とすることができる。とりわけ、制御装置は、選択的に、生成電力の第2部分が全体的に(完全にないし全部)又は部分的に少なくとも1つの風力発電装置からきて電力消費装置又はインバータに供給されるよう、切換ないしは伝送経路変更装置を制御することができる。有利には、制御装置は、全体的に又は部分的に共通の制御プログラムの一部として構成されることができ、少なくとも1つのネット状態の評価を相応に実行する相応の評価ユニットを有する。
【0043】
有利には、電力消費装置は、電力即ちそれ自身に供給される(生成)電力の第2部分を他のエネルギ形態に変換するための変換装置である。とりわけ、この電力消費装置として、それ自身に供給される電力を利用して水素及び/又はメタンのようなガス又は液体(流動体)を生成する変換装置が提案される。
【0044】
更なる一実施形態に従って、給電システムが風力発電装置により生成される電力の第3部分を蓄積するための電気蓄積装置を有すること、及び/又は、給電システムが電力の第1部分の、場合によっては風力発電装置によって生成される全電力の給電ネットへの給電を実質的に実行する、直流電圧中間回路を備えたインバータを有することが提案される。尤も、給電のために、当業者に知られている、例えばネットインダクタ(Netzdrossel)のような更なる構成要素を設けることが可能であることは明らかである。
【0045】
更に、複数の風力発電装置及び上述の実施形態の何れかに従って構成されるような給電システムを含むウインドパークが提案される。従って、ウインドパークは、複数の風力発電装置、少なくとも1つの給電手段(例えば、インバータ)及び少なくとも1つの(電力)消費装置(とりわけ変換装置:Umwandlungsvorrichtung)を含む。かくして、このウインドパークによって、大量の電力を生成することができる。風力発電装置の個数及び寸法(規模)に応じて、ウインドパークは、全体としてみれば、(発電)等級(レベル)上、大規模発電所として把握することさえ可能である。これは、有利には、生成電力の大きな割合、好ましくはウインドパークの定格出力の5%超、10%超、20%超又は有利にはウインドパークの定格出力の50%超をとりわけ水素又はメタンのようなガスの生産のために取り出すことが可能な相応に大きな(電力)消費装置、とりわけ変換装置と組み合わせて運転される。
【0046】
提案したウインドパークとの関係においても、ただ一つ又は少数の風力発電装置との関係においても留意すべきことは、変換装置が供給される生成電力の第2部分を可及的に損失なく他のエネルギ担体(ないしキャリア、水又はメタン等)に変換することは重要なことではあるが、本願発明の基本思想はそのことに依存するものではない(拘らない)ということである。これに関し、現在ではネット安定性は生成電力のある程度の損失を正当化するに足る十分大きな地位ないし価値(即ち重要性:Stellenwert)を有することを顧慮すべきである。更に、変換装置は、とりわけ、ネットにおける電力の需要が小さいときに即ち例えば夜中に運転される。尤も、そのように電力需要が小さい場合、通常、電気料金(売電代金)もより低くなる。それにも拘わらず、電気料金が低い時間における低効率の変換は、他のエネルギ形態への再変換(復帰変換)が需要が大きい時間従って電気料金が大きい時点に行われれば、全体としてポジティブな結果をもたらすことができる。また、エネルギが再び高価格の時に供給されれば、場合により生じ得る低効率による損失は低減され、最適な場合には生じない。
【0047】
尤も、とりわけ重要なことは、ネットにおける電力需要の増大の場合、とりわけネットにおける電力需要の急速な、更には突発的な増大の場合、本発明は、供給電力の迅速な増大の可能性(手段)を実現することである。
【0048】
ここに、本発明の好ましい態様を示す。
(態様1)風力発電装置を有し、電気供給ネットに電力を給電する給電システムを制御する方法が提供される。この方法は、以下の工程:
・前記風力発電装置によって風から電力を生成すること、
・前記生成電力の第1部分を前記電気供給ネットに給電すること、
・前記生成電力の第2部分を、該生成電力の当該供給される第2部分を消費する電力消費装置に供給すること、
・少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して及び/又は支配的(vorherrschend)な風(即ち優勢な風速条件における風の状態)に依存して、前記電力消費装置に供給される前記生成電力の第2部分が全体的に又は部分的に減少され、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分が対応して増加されること
を含む。
(態様2)上記態様1の方法において、前記電力消費装置は、前記電力を他のエネルギ形態に変換する、とりわけガスを生成する、変換装置であることが好ましい。
(態様3)上記態様1又は2の方法において、
・前記生成電力の第3部分が電気蓄積装置に供給されること、
・前記少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、前記電気蓄積装置から電力が取り出され、前記電気供給ネットに給電されること、及び/又は
・前記少なくとも1つの被監視ネット状態に依存して、前記電気蓄積装置に供給される前記生成電力の第3部分が全体的に又は部分的に減少され、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分が対応して増加されることが好ましい。
(態様4)上記態様1〜3の何れかの方法において、少なくとも1つのネット状態の監視は、
・前記電気供給ネットにおける周波数の監視、
・前記電気供給ネットにおける電圧の監視、
・外部信号の、とりわけ前記電気供給ネットの運用者から送信される外部信号の、評価、
・前記電気供給ネットの電力の実際の需要の検出、及び/又は、
・前記電気供給ネットの前記周波数の変化の監視
を含むことが好ましい。
(態様5)上記態様1〜4の何れかの方法において、
・前記電力消費装置に供給される前記生成電力の第2部分が、完全に、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分に補充付加されること、とりわけ前記生成電力の第2部分が該第1部分と一緒に前記電気供給ネットに給電可能になるよう、当該第2部分が切換工程によって伝送経路変更されるように補充付加されること、及び/又は
・前記生成電力の第3部分又は前記ないし所定の電気蓄積装置に供給される前記生成電力の第3部分が、完全に、前記電気供給ネットに給電される前記生成電力の第1部分に補充付加されること、とりわけ前記生成電力の第3部分が該第1部分と一緒に前記電気供給ネットに給電可能になるよう、当該第3部分が切換工程によって伝送経路変更されるように補充付加されることが好ましい。
(態様6)上記態様1〜5の何れかの方法において、前記給電システムは直流電圧中間回路を備えたインバータを有し、及び、前記生成電力の第1部分及び/又は第2部分は、該生成電力が直接的に該直流電圧中間回路に供給されるよう、全体的に又は部分的に伝送経路変更されることが好ましい。
(態様7)電気供給ネットに電力を給電する給電システムであって、
・電力を生成する風力発電装置、
・前記風力発電装置によって生成される電力の少なくとも第1部分を給電する給電手段、
・前記風力発電装置によって生成される電力の少なくとも第2部分を消費する電力消費装置、及び
・給電システムを制御する、とりわけ電力流(Leistungsfluss)を制御する、制御装置であって、上記形態1〜6の何れかの制御方法を実行するよう構成された該制御装置
を含む給電システムが提供される。
(態様8)上記態様7の給電システムにおいて、前記電力消費装置は、前記電力を他のエネルギ形態に変換する、とりわけガスを生成する、変換装置であることが好ましい。
(態様9)上記態様7又は8の給電システムにおいて、
前記風力発電装置によって生成される電力の第3部分を蓄積する電気蓄積装置、及び/又は、前記電力の第1部分を前記電気供給ネットに供給する、直流電圧中間回路を備えたインバータ
を含むことが好ましい。
(態様10)複数の風力発電装置と上記態様7〜9の何れかの給電システムを含むウインドパークも好ましい。
以下に、本発明の実施例を例示的に添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】風力発電装置の一例の模式図。
図2】給電システムの一例の単純化した模式的概観図。
図3】電力分割の一例を示すグラフ。
【実施例】
【0050】
図1は、タワー102とナセル(ゴンドラ)104とを有する風力発電装置100の一例を示す。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110とを有するロータ106が配されている。ロータ106は運転時風によって回転運動し、それによって、ナセル104内の発電機を駆動する。
【0051】
図2は、風力発電装置2と、給電手段4と、電力消費装置6(これはこの実施例では変換装置6として構成されている)と、電気蓄積装置(蓄電装置)8と、制御装置10(これはこの実施例ではマイクロコントローラ10として示されている)とを有する給電システム1の一例を示す。
【0052】
風が十分に存在する場合の運転モードに従った運転時、風力発電装置2は、空気力学的ロータ14を介して風によって駆動される発電機12によって、交流電圧を生成する。この生成交流電圧は整流器16に供給され、(AC/DC)整流器16はその交流電圧から直流電圧を生成し、該直流電圧は分割(ないし分配)ブロック18に供給される。この分割ブロック18は、ここでは、とりわけ後述する電力分割を象徴的に説明するものとして理解されるべきである。実際の実施(応用)においては、この分割ブロック18によって表わされている電力分割(分配)は、そのような分割ブロック18を物体的に構成することなく、実現することも可能である。
【0053】
図2が何れにせよ分割ブロック18によって示していることは、風力発電装置2によって生成される全電力は、まず、分割ブロック18に供給されることである。可能性としての損失は、これは例えば整流器16において生じ得るが、この実施例では、無視する。かくして、分割入力部20において、風力発電装置2の全生成電力Pが利用可能である。この全電力Pは、第1部分ないし第1部分電力Pと、第2部分ないし第2部分電力Pと、第3部分ないし第3部分電力Pとに分割される。これに応じて、式P=P+P+Pが成り立つ。まず、第1、第2、第3部分P、P、Pは夫々0ではなく、これに応じて、象徴的に図示された各部分電力に割り当てられる第1、第2、第3部分スイッチS、S、Sは閉じられているとする。
【0054】
かくして、第1部分電力Pは給電手段4即ちインバータ4に供給される。インバータ4は相応の交流電流を生成し、電気供給ネット22(これは以下においてネット22と称することもある)に給電する。図2の実施例では、更に、変圧器24が記載されているが、これは、例えば中圧ネットに給電する場合、インバータ4によって生成される交流電圧をより大きな電圧値に変換することができる。この変圧器24は本質的(不可欠)ではないが、給電システム1従って風力発電装置2が、通常小規模な(狭い範囲の)ネットである低圧ネットに給電できるだけではなく、例えば中圧ネット従って相応に大規模なネットにも給電できることを示している。尤も、とりわけ大きな出力を有するウインドパークが設けられる場合、更に設置箇所において見出されるネットの類型に依存して、原理的には、高圧ネットへの給電も可能である。
【0055】
第2部分電力Pは変換装置6に供給される。変換装置6は該電力を用いてガスを生成ないし変換することができ、このガスはガスネット又は類似のものに供給されることができる。このことを示すために、図においては、ガスネットないしガスパイプライン26はGAS−Lで表され、ガス貯蔵装置ないしガスタンク28はGAS−Tで表されている。原理的には、1つのガス貯蔵装置28ないし多数のガス貯蔵装置は、ガスネット26の一部を構成し得る。
【0056】
第3部分電力Pは電気蓄積装置8に供給され、これを充電する。電気蓄積装置8は、この実施例では、複数の蓄電池バンクを有し得る蓄電池式蓄積装置として図示されている。尤も、例えば複数の(一群の)キャパシタ(コンデンサ)バンクのような他のタイプの蓄積装置を利用することも可能であり、これらは少なくとも補完的に設けることが可能である。第3部分電力Pは、電気蓄積装置8からエネルギが取り出されるという意味で、原理的には、マイナス(の値)にもなり得る。このことは両矢印30で表されている。これに対し、第1電力P及び第2電力Pのための単矢印32は、電力が夫々インバータ4の方向にのみないし変換装置6の方向にのみ流れることを表している。尤も、変換装置6は、原理的には、両方向において作動することができる。
【0057】
インバータ4は、更に、有利には、FACTSとして作動することができ及び/又はSTATCOMの機能を実行することができる。
FACTS:Flexible AC-Transmission-System(フレキシブル交流送電システム)
STATCOM:Static Synchronous Compensator(静止型無効電力補償装置)
【0058】
かくして、インバータ4は、電力を電気供給ネット22に給電するだけではなく、とりわけ給電電力の位相角に対する影響によって、質的に影響を及ぼすよう構成されている。ここで更に言及すべきことは、本発明は、原理的に、孤島(孤立)ネットではない電気供給ネットを前提としていることである。孤島ネットについては、とりわけ周波数設定値及び指標並びにネット安定性に関する介入可能性に関し、特別な条件がある。
【0059】
インバータ4、変換装置6、電気蓄積装置8及び分割ブロック18ないしその機能性の制御のために、制御装置10が設けられている。この場合、制御装置10は、とりわけ電力(パワー)分割に関し、とりわけインバータ4、変換装置6及び電気蓄積装置8の上位に位置付けられる調整ないし制御目的(目標)を設定する上位制御を提供する。とりわけ第1部分電力P、第2部分電力P及び第3部分電力Pの具体的な値は、夫々、インバータ4、変換装置6及び電気蓄積装置8の内部制御又は調整によって変換することができる。分割ブロック18は、場合によっては、3つのスイッチS、S及びSのスイッチ状態を制御することができる。
【0060】
この上位制御のために、制御装置10は、制御ライン34又は36の一方を使用することができる。図2の場合、第1制御ライン34は分割ブロック18に接続しており、他方、第2制御ライン36はインバータ4に接続し、そこから更に延長して、変換装置6と電気蓄積装置8とに接続している。制御ラインの具体的形態(Typologie)は原理的に任意のものが可能であり、そのほかに既知の方法で既知の形態(Typologie)を用いて変えることができる。
【0061】
更に、電気供給ネット22の少なくとも1つのネット状態を検出するために、ネットデータライン38が設けられているが、このネットデータライン38を介して、制御装置は、例えばネット22の周波数及びネット電圧振幅のような情報を獲得する。入力データライン40を介して、更なるデータを、とりわけ例えばネット運用者又は実際の消費者要求(需要)の評価のための中央評価ユニットのような外部ユニットのデータを、制御装置10に供給することができる。そのような及び更なる外部評価ユニットを表すために、ブロック42が図示されており、このブロック42には、外部ユニットを表すために記号EXTが付記されている。
【0062】
原理的には、第1及び第2制御ライン34、36、ネットデータライン38及び入力データライン40は異なる信号を伝送することができ、制御装置10はこれによって信号の受信も送信もすることができる。この場合、第1及び第2制御ライン34、36の一次情報方向は、制御装置10から夫々接続される装置、即ちインバータ4、変換装置6、電気蓄積装置8及び分割ブロック18への方向である。ネットデータライン38及び入力データライン40の場合、情報方向はとりわけ制御装置10への方向である。尤も、例えばインバータ4からの情報も制御装置10に供給することができる。これらの情報は、インバータ4の具体的状態を表すことが可能であり、完全を期すために言えば、場合によっては、即ちインバータ4自体がネット状態のための相応の測定手段を有する場合、ネット情報を含むことも可能である。
【0063】
制御装置10が電力の伝送経路変更即ち部分電力P、P及びPの電力配分の変更の必要があることを検出する場合、まず、この情報ないし相応の制御命令を関係するユニット、即ちとりわけインバータ4、変換装置6、電気蓄積装置8及び分割ブロック18に供給する措置を取ることができる。これに応じて、変換装置6は、第2部分電力Pが低減されるよう、場合によっては0に低減されるよう、その電力を低減することができる。相応に、電気蓄積装置8は、その電力蓄積量を低減すること、即ち、第3部分電力Pの受容を低減し、場合によっては電気蓄積装置が電力を放出するよう反転することができる。
【0064】
他の又は補完的な一変形態様(ないしモード)では、分割ブロック18は第2スイッチSを開き、次いで直ちに第2部分電力Pを0に低減する。同様に、電気蓄積装置8に供給される電力を同様に直ちに0に低減するために、第3スイッチSを開くことも可能である。なお、言うまでもないが、この場合、第1スイッチSが閉じられている。
【0065】
電気蓄積装置8からの追加エネルギを給電可能にするために、第3スイッチSを再び閉じることも可能である。電気蓄積装置について言及すべきことは、電気蓄積装置は、原理的に持続的な運転時には変換装置6とは対照的に、原理的に持続(連続)運転(Dauerbetrieb)で電力を全く又は殆ど受容せず、最終的に、電気蓄積装置は、その最大限に充電されるまでに限り、電力を受容できるに過ぎないことである。
【0066】
そのため、電気変換装置6は電気蓄積装置8とは異なる意義を有し、従って、相応の取り扱い(運用)が提案される。これに応じ、その機能は、原理的に、初めのうち電気蓄積装置8を無視する(考慮しない)という1つのコンセプトにおいて説明することができる。この場合、第3スイッチSは開かれ、第3部分電力Pは0になるであろう。
【0067】
変換装置6は有利には持続(連続)運転で作動し、その際、変換装置6は、例えば風力発電装置2によって生成される電力の凡そ50%を持続(連続)運転で必要とし、連続的にガス又はその他のエネルギキャリア(運搬媒体)を生成する。従って、この例では、第2部分電力Pは、生成される全電力Pの50%となる。相応に、この場合、第1部分電力Pも全電力Pの50%となる。たとえ風力発電装置2の設置箇所によってはレアケースであったとしても、単純化して、定格風速従って定格出力を前提とすると、例えば2MWの風力発電装置2は2MWの電力をPとして生成することができ、そのうちの1MWが第1部分電力Pとしてインバータ4からネット22に給電される。同時に、変換装置は、ガスの生成のために1MWを受け取る。従って、電気供給ネット22からみると、ネットに給電する1MWの風力発電装置があるようにみえる。
【0068】
ここで、ネット22における電力の需要が突然又は徐々に大きくなれば、この1MWの電流源はその出力を増加する、即ち例えば2MWに増加する。尤も、実際には、出力(発電電力)の増加は行われない。なぜなら、風力発電装置はもともと2MWの電力を生成しており、単に、ネットからみれば、出力増加が行われたように見えるに過ぎないからである。この出力増加は、数秒であれ、数分であれ、数時間であれ、数日であれ、数週間であれ、持続的に実行することができる。なぜなら、この場合、変換装置6は、ガス生産又はその他の生産を何時でも中止できるように又はそれらを何時でも低減できるように構成されるからである。
【0069】
更に、インバータ4は、風速が低下する場合であっても、引き続き、上に例示した1MWをネット22に給電することができる。上述の例では、風速は、風力発電装置2が定格出力の半分即ち1MWしか生成しない程度にまで低下することが可能である。この場合、依然として1MWの電力がインバータ4からネット22に給電されることができるが、この場合、従って、変換装置6には最早電力は供給されない。
【0070】
更に、補完的に、比較的短い期間に蓄積容量の大きさに応じて電力を付加的に給電に利用するためにとりわけ適合された電気蓄積装置8を使用することができる。
【0071】
上述のコンセプトは、電力分配即ち直流電圧平面における全電力Pの第1、第2及び第3部分電力P、P及びPへの分割を実行することによって、とりわけインバータ4に直接的にその直流電圧中間回路に与える(付加する)ことによって、とりわけ簡単に実施することができる。インバータ4の直流電圧中間回路に直接的に流入する第1部分電力Pの変化は、基本的に、直流電圧中間回路に流入する電流が増加することによってのみ、(その効果が)顕著に現れる。直流電圧中間回路の電圧は実質的に一定に(同一に)維持可能である。
【0072】
図3のグラフは、時間tに対する電力推移の一具体例を示す。この場合、一例として、(1つの)風力エネルギ(風力発電)装置WEAと(1つの)消費装置即ちメタンを生成するための変換装置を含む給電装置を前提とする。電気蓄積装置は、この実施例では、設けられていないか、又は、考慮されない。
【0073】
図示のグラフは、風力エネルギ装置実質的に一定の電力PWEAを生成している状況から出発する。この電力PWEAから、まず、第1部分がPNetとして電気供給ネットに給電され、残りの第2部分PMethが変換装置に供給される。この例では、損失は無視する。時点tにおいて、突然、給電されるべき電力PNetに対しより大きな需要が生じると、これに対し、第2部分PMethが低減される、即ち、図示の例では0に低減され、そのため、この(第2)部分が給電電力PNetに付加されることができる。これに応じて、PNetは増大し、生成電力PWEAの値まで増加する。その結果、給電電力PNetは(本発明により)提案される方法によって飛躍的に(急速に)このより大きな値に上昇されることができる。この増大した電力PNetは、十分な風がある限り、より長期間維持することもできる。
図1
図2
図3