(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977877
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】回転式排出ピンを有するオイルフィルタアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20160817BHJP
B01D 35/30 20060101ALI20160817BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20160817BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20160817BHJP
B01D 24/44 20060101ALI20160817BHJP
B01D 29/94 20060101ALI20160817BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
B01D35/02 E
B01D35/30
B01D29/04 530B
B01D29/06 510A
B01D29/06 510D
B01D29/42 520
F01M11/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-222581(P2015-222581)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-93808(P2016-93808A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0158180
(32)【優先日】2014年11月13日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュン サンピル
(72)【発明者】
【氏名】パク ギウォン
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−232208(JP,A)
【文献】
特開2001−212412(JP,A)
【文献】
特開2001−149714(JP,A)
【文献】
特開2004−346929(JP,A)
【文献】
特表2003−512165(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0079269(KR,A)
【文献】
韓国特許第2010−1190220(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/02
B01D 24/44
B01D 29/01
B01D 29/07
B01D 29/94
B01D 35/30
F01M 11/03
F01M 11/04
F01M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端を有するケーシング(100)と、
上記ケーシング(100)内に取り付けられ、
側壁に複数の開口を有する筒状の支持フレームと、該支持フレームの外面を取り囲む濾紙(220)と、
上記支持フレームに結合されかつ上記濾紙(220)の上側端を覆うように構成された頂部支持板(230)と、上記支持フレームに結合されかつ上記濾紙(220)の下側端を覆うように構成された底部支持板(240)とを有するフィルタと、
上記ケーシング(100)の上記開口端を覆うように該ケーシング(100)にねじで結合されたキャップ(300)とを備え、該キャップ(300)は、該キャップ(300)のうち上記底部支持板(240)に対応する箇所から下方に突出しかつ内部に排出孔(312)が形成された排出ニップル(310)を有し、
上記排出ニップル(310)内に形成された上記排出孔(312)を開閉するように上記排出ニップル(310)に着脱可能に装着された排出ピン(400)をさらに備え、
上記底部支持板(240)の下側面に、上記ケーシング(100)の中心軸と一致する中心軸を有する環状の回転溝(242)が形成され、
上記排出孔(312)は、上記回転溝(242)に対応する位置に形成され、
上記排出ピン(400)は、該排出ピン(400)が上記排出ニップル(310)に結合されているとき、一端部で上記回転溝(242)の底部に収容されるように構成されている
ことを特徴とするオイルフィルタモジュール。
【請求項2】
請求項1において、
上記排出ピン(400)が、
上記排出孔(312)内に嵌合態様で挿入されるピン本体(410)と、
上記回転溝(242)の底部に収容され、上記キャップ(300)がねじ止めされる方向に回転するときに上記回転溝(242)に沿って摺動するように上記ピン本体(410)の第1長手方向端部にブロック状に形成された摺動ブロック(420)と、
上記ピン本体(410)の第2長手方向端部に設けられかつ上記排出ニップル(310)の外部に露出する取っ手(430)と、
上記ピン本体(410)の外面を取り囲むように設けられたシール要素(412)とを有している
ことを特徴とするオイルフィルタモジュール。
【請求項3】
請求項2において、
上記回転溝(242)は、該回転溝(242)の入口幅の方が該回転溝(242)の底面幅よりも狭くなるように形成され、
上記摺動ブロック(420)の長手方向長さが、上記回転溝(242)の上記入口幅よりも長く、
上記摺動ブロック(420)の幅方向長さが、上記回転溝(242)の上記入口幅よりも短い
ことを特徴とするオイルフィルタモジュール。
【請求項4】
請求項3において、
上記摺動ブロック(420)が、合成樹脂で作られ、
上記摺動ブロック(420)の長手方向が上記回転溝(242)の径方向に一致するように上記排出ピン(400)が向けられたとき、上記摺動ブロック(420)の長手方向端部が上記回転溝(242)の内部側壁と接触するように構成されている
ことを特徴とするオイルフィルタモジュール。
【請求項5】
請求項4において、
上記摺動ブロック(420)の長手方向端部が、上記回転溝(242)の上記内部側壁の湾曲に対応する湾曲形状を有している
ことを特徴とするオイルフィルタモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンオイルを濾過するために用いられるオイルフィルタアセンブリに関するものであり、特に、オイルフィルタアセンブリがエンジンオイルを排出するために用いられる回転排出ピンをオイルフィルタ上に備えることを開示する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、エンジンが駆動されるとき、エンジンの摩擦部品を潤滑しかつ冷却するために、当該摩擦部品にエンジンオイルが供給される。エンジンが作動し続けるのにしたがって、エンジンオイルは、酸化物や金属粒子、カーボン粒子、およびエンジンオイルが酸化するときに生成される様々な不純物によって汚染される。エンジンオイルが汚染された状態でエンジンが作動し続けると、例えばクランクシャフトやオイルシリンダのような回転摩擦部品が徐々に摩耗して損傷する。状態がさらに悪化すると、これらの部品が焼けて安全事故のリスクが生じる。
【0003】
上述したように、エンジンオイルの純度がエンジンの耐用年数および性能に直接影響するため、エンジンオイルを清浄に保ち続けることが非常に重要である。したがって、エンジンオイルを清浄に保ち続けるために、エンジンオイルの循環路にオイルフィルタアセンブリを設けることが必要である。
【0004】
以下、既存のオイルフィルタアセンブリについて図面を参照して詳細に説明する。
【0005】
図1は既存のオイルフィルタアセンブリの分解斜視図であり、
図2は既存のオイルフィルタアセンブリのキャップに取り付けられた排出ボルトの構造を示している。
【0006】
既存のオイルフィルタアセンブリは、ケーシング(10)と、このケーシング(10)内に設けられた交換可能なオイルフィルタ(20)と、ケーシング(10)の開口部(15)に結合される着脱可能なキャップ(30)とを備えている。第1取付部(11)および第2取付部(12)がケーシング(10)の異なる側面に形成されている。第1取付部(11)は、複数の接続部品によってエンジン側(図示せず)に取り付けられ、一方、第2取付部(12)は、複数の接続備品によってエンジンオイル冷却器(5)側に取り付けられている。加えて、エンジン(図示せず)に接続された第1オイル戻し穴(11a)および排出孔(11b)が第1取付部(11)に形成され、一方、エンジンオイル冷却器(5)に接続された第2オイル戻し穴(12a)およびオイル入口穴(12b)が第2取付部(12)に形成されている。したがって、エンジン(図示せず)における内部循環において汚染されたエンジンオイルが、エンジンオイル冷却器(5)内へ向かって第1オイル戻し穴(11a)および第2オイル戻し穴(12a)を通って流れ、そして汚染されたエンジンオイルがエンジンオイル冷却器(5)において冷却される。エンジンオイルは、エンジンオイル冷却器(5)で冷却された後にケーシング(10)内へ向かってオイル入口穴(12b)を通って流れてケーシング(10)内のフィルタ(20)によって濾過され、そして排出孔(11b)を通ってエンジン側(図示せず)へ供給される。
【0007】
フィルタ(20)は、外周に沿って波形がつけられた濾紙(21)と、この濾紙(21)を支持する支持部とを有している。加えて、頂部支持板(22a)および底部支持板(22b)が、濾紙(21)の頂部および底部を支持するために、支持部の頂部および底部にそれぞれ設けられており、エンジンオイルが通過する流路(23)が支持部の中心部に沿って形成されている。
【0008】
キャップ(30)はケーシング(10)の開口部(15)に着脱可能に結合され、外側ねじ部(30a)がキャップ(30)の頂部の外周面に形成され、外側ねじ部(30a)は開口部(15)の内周面に形成された内側ねじ部と結合する。加えて、シール要素(16)がキャップ(30)とケーシング(10)との間に設けられ、キャップ(30)とケーシング(10)とはシールされた態様で結合される。バイパス弁(40)が、支持部の流路(23)の底部に形成されていて、キャップ(30)の中心部の内側に結合されている。
【0009】
加えて、キャップ(30)の底部の中心部におけるナットボス(35)が下方へ突出しており、金属製の排出ボルト(50)がナットボス(35)内の排出孔(33)に着脱可能に結合され得る。金属製のナット継ぎ手(34)が挿入によって排出孔(33)の内周面に一体化され、内側ねじ部(34a)がナット継ぎ手(34)の内周面に形成されている。次に、金属製の排出ボルト(50)の外側ねじ部(50a)がナット継ぎ手(34)の内側ねじ部(34a)とねじ止め接続態様で着脱可能に結合されると、排出ボルト(50)がキャップ(30)の排出孔(33)側に堅固に固定され得る。さらに、シール要素(55)が、排出ボルト(50)とナット継ぎ手(34)との間の締まりを確実にするために、排出ボルト(50)の外周面とナット継ぎ手(34)の内周面との間に設けられる。
【0010】
レンチが挿入され得る接続溝(52)が排出ボルト(50)の頭部(51)の中心部に形成され、外側ねじ部(50a)が排出ボルト(50)の外周面に形成されている。上述したように、外側ねじ部(50a)は排出孔(33)の内側ねじ部(34a)に着脱可能に結合され得る。したがって、作業者がキャップ(30)から排出ボルト(50)を取り外すために当該排出ボルト(50)を回すと、キャップ(30)の排出孔(33)が開かれて上記オイルフィルタアセンブリ内のエンジンオイルが排出孔(33)を通って排出される。
【0011】
しかしながら、上述したように、排出ボルト(50)がねじ止め接続態様で排出孔(33)に結合されていると、当該排出ボルト(50)が取り外されたときに、エンジンオイルがキャップ(30)から流れ出て、排出ボルト(50)、作業工具、および作業者の手がエンジンオイルで汚れる。加えて、排出ボルト(50)を取り外すのには長い時間を要し、また外力の作用によって排出ボルト(50)が多少ゆるまるとエンジンオイルが漏れる。これらは全て既存のオイルフィルタアセンブリの欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国特許第10−1190220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の問題を解決するために、本発明は、作業者が望まない分離が生じない排出ピンおよびフィルタを備えたオイルフィルタアセンブリを提供することを目的とする。当該排出ピンは、作業効率を向上させるために素早く取り外すことが可能であり、排出ボルトまたは工具がエンジンオイルで汚れることが防止される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、本発明に係るオイルフィルタアセンブリは、開口端を有するケーシングと、このケーシングに挿入され、側壁に複数の開口を有する筒状の支持部と、この支持部の外周面を取り囲む濾紙と、支持部に結合されかつ濾紙の頂部を覆い得る頂部支持板と、支持部に結合されかつ濾紙の底部を覆い得る底部支持板とを有するフィルタと、ケーシングにねじ止め接続態様で結合されてケーシングの開口端を覆い得、底部支持板に対応する箇所から下方に突出しかつ排出孔を有する排出ニップルを含むキャップと、排出ニップル内の排出孔を開閉するように排出ニップルに着脱可能に装着された排出ピンとを備えている。加えて、その中心軸がケーシングの中心軸に一致する環状の回転溝が底部支持板の底面に形成され、排出孔は回転溝に対応する位置に形成されている。排出ピンが排出ニップルに結合されるとき、回転溝の底面に排出ピンの一端が配置される。
【0015】
排出ピンは、排出孔に嵌合態様で挿入される本体と、この本体の一方の長手方向端部に配設されかつ回転溝の底面に配置され、キャップがねじ止め接続方向に回転するときに回転溝に沿って摺動し得る摺動ブロックと、本体の他方の長手方向端部に配設されかつ排出ニップルの外部に露出する取っ手と、本体の外周面を取り囲むシール要素とを有している。
【0016】
回転溝の入口幅は底面幅よりも狭く、摺動ブロックの
長手方向長さは回転溝の入口幅よりも長く、摺動ブロックの
幅方向長さは回転溝の入口幅よりも短い。
【0017】
摺動ブロックは、基準値を上回る弾性を有する材料で作られている。摺動ブロックが回転溝の径方向に対して横向きに並ぶように排出ピンが回転するとき、摺動ブロックの側方端部が回転溝の内部側壁に接触する。
【0018】
摺動ブロックの側方端部は湾曲形状であって、その曲率は回転溝の内部側壁の曲率と等しい。
【0019】
標識溝が排出ニップルの突出端に径方向において形成され、取っ手は下方に延びかつ板形状に形成され、摺動ブロックが回転溝の径方向に対して横向きに並ぶように排出ピンが回転するとき、取っ手の幅方向の両端部が標識溝に合致する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るオイルフィルタアセンブリは、作業者が望まない排出ピンの分離が起こらないように排出ピンとフィルタとを一体化しており、当該排出ピンは作業効率を高めるために素早く取り外すことが可能であり、排出ボルトまたは工具がエンジンオイルで汚れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、既存のオイルフィルタアセンブリの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、既存のオイルフィルタアセンブリのキャップに取り付けられる排出ボルトの構造を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るオイルフィルタアセンブリの縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係るオイルフィルタアセンブリのキャップの底面斜視図である。
【
図5】
図5は、結合された排出ピンおよびフィルタの底面斜視図である。
【
図7】
図7は、キャップがねじ止め接続態様でケーシングに結合されるときに回転溝に沿って摺動する排出ピンの斜視図である。
【
図8】
図8は、回転溝に取り付けられた摺動ブロックの水平断面図である。
【
図9】
図9は、本発明に係るオイルフィルタアセンブリの手入れの状態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明に係るオイルフィルタアセンブリの手入れの状態を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態に係る、追加的な安全ピンを備えたオイルフィルタアセンブリを示す図である。
【
図12】
図12は、安全ピンのための貫通孔を有する排出ピンを示す図である。
【
図13】
図13は、適当な安全ピンの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るオイルフィルタアセンブリの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図3は本発明に係るオイルフィルタアセンブリの縦断面図であり、
図4は本発明に係るオイルフィルタアセンブリのキャップの底面斜視図であり、
図5は結合された排出ピンおよびフィルタの底面斜視図である。
【0024】
本発明に係るオイルフィルタアセンブリは、乗り物のエンジンに供給されるエンジンオイルを濾過し、そして濾過されたオイルを再びエンジンに供給する装置である。オイルフィルタアセンブリは、開口端(
図1で下側端)を有するケーシング(100)と、このケーシング(100)内に挿入されたフィルタ(200)と、底部支持板(240)に対応する位置から下方に突出して排出孔(312)を含む排出ニップル(310)を有し、ケーシング(100)にねじ止め接続態様で結合されてケーシング(100)の開口端を覆い得るキャップ(300)と、排出ニップル(310)内の排出孔(312)を開閉するために排出ニップル(310)に着脱可能に装着される排出ピン(400)とを備えている。
【0025】
排出孔(312)は、キャップ(300)の底面に形成されている。ケーシング(100)およびキャップ(300)がエンジンオイルで満たされると、ケーシング(100)およびキャップ(300)内に収容されたエンジンオイルは、排出ピン(400)が取り外されて排出孔(312)が開いたときに、排出孔(312)を通って排出されるだろう。逆に、
図3に示すように、排出ニップル(310)内に排出ピン(400)が挿入されると、ケーシング(100)およびキャップ(300)に流れ込むエンジンオイルは排出孔(312)が閉じていると漏れることがなく、そしてフィルタ(200)によって濾過されたエンジンオイルがエンジンへ再供給される。ケーシング(100)およびキャップ(300)に流れ込むエンジンオイルがフィルタ(200)を通過してエンジンに再供給されるとき、エンジンオイルの流路は既存のオイルフィルタアセンブリの流路と同じである。したがって、濾過の原理やエンジンオイルの流路に関する詳細な説明は、ここでは省略する。
【0026】
この場合、排出孔(312)が形成された部分が薄く作られていたら、次の問題が生じる。すなわち、排出ピン(400)が挿入されて排出孔(312)が塞がれた後に、当該排出ピン(400)が片側に傾斜して排出孔(312)に容易に落ちるかも知れない。したがって、実施形態に示すように、キャップ(300)の底面における排出孔(312)が形成される部分は、好ましくは、排出ピン(400)と接触する領域が大きくなるように、下方に延びる筒状に形成される。
【0027】
排出ピン(400)の排出孔(312)からの望ましくない落下を防止するために、
図3および
図11〜13に示すように、安全ピン(700)が設けられてもよい。安全ピン(700)はプラスチック、特に一体成形のプラスチック要素として作られていて、貫通孔(600)に挿入されて排出ニップル(310)を貫通している。安全ピン(700)は、また、排出ピン(400)がねじれるのを防止し、そのため摺動ブロック(420)が回転溝(242)内に固定される。貫通孔(600)はシール要素(412)の下で安全ピン(700)と交差しており、そのためシール要素(412)のシール効果は影響を受けない。
【0028】
図13に示すように、安全ピン(700)は、当該安全ピン(700)が貫通孔(600)に完全に挿入されたときに貫通孔(600)の端部の後ろに係合する弾性要素(800)を有しており、この弾性要素(800)は安全ピン(700)が貫通孔(600)から引き抜かれるのを抑止する。安全ピン(700)をつかむために、安全ピン(700)は取っ手(900)を有している。貫通孔(600)は、安全ピン(700)ならびに排出ニップル(310)の壁部を貫通している。安全ピン(700)は、当該安全ピン(700)および全体のオイルフィルタ(200)が正しい態様で組み付けられている場合にのみ安全ピン(700)が貫通孔(600)に挿入され得るため、誤った組み付けをまた防止する。
【0029】
さらに、
図1および
図2に示す既存のオイルフィルタアセンブリにおける、ねじ止め接続態様でキャップ(30)に結合される排出ボルト(50)に比べて、排出孔(312)を開閉する排出ピン(400)は、本発明に係るオイルフィルタアセンブリにおいて嵌合態様で排出ニップル(310)に結合され、よって排出孔(312)の締まりが弱くなるかも知れない。したがって、排出ピン(400)の外周面に、好ましくは、Oリングシール要素(412)が設けられている。この場合、排出孔(312)が形成された部分が薄いと、排出ピン(400)の挿入長さによってはシール要素(412)が排出孔(312)の内周面から離れるかも知れず、そのために排出孔(312)が開くかも知れないが、それは作業者にとって望ましくない。しかしながら、本発明の実施形態に示すように、排出孔(312)が排出ニップル(310)内に形成されていると、排出ピン(400)と排出ニップル(310)との間の接触距離が長くなる。よって、排出ピン(400)の挿入長さが多少変わったとしても、シール要素(412)は排出孔(312)の内周面に留まったままであり、排出孔(312)の締まりの確実性が高められる。
【0030】
さらに、本発明に係るオイルフィルタアセンブリでは、排出ピン(400)は、ねじ止め接続態様の代わりに嵌合態様で排出ニップル(310)に挿入され、したがって排出孔(312)の開閉のために必要な時間が大幅に短縮され得る。さらに、既存の排出ボルト(50)を取り外す前には複数回既存の排出ボルト(50)を回転させる必要があり、したがって、当該排出ボルト(50)を取り外すときには、エンジンオイルが流れ出て当該排出ボルト(50)、作業工具、または作業者の手を汚すだろう。しかしながら、本発明では、排出ピン(400)が下方へ引っ張られると、当該排出ピン(400)は排出ニップル(310)から即座に分離され、したがって、エンジンオイルが排出孔(312)から流れ出て排出ピン(400)または作業者の手を汚すことがないだろう。
【0031】
さらに、フィルタ(200)は、側壁に複数の開口を有する筒状の支持部(210)と、この支持部(210)の外周面を取り囲む濾紙(220)と、支持部(210)に結合されかつ濾紙(220)の頂部を覆い得る頂部支持板(230)と、支持部(210)に結合されかつ濾紙(220)の底部を覆い得る底部支持板(240)とを備えている。さらに、支持部(210)の内部流路の底部にはバイパス弁(500)が設けられており、すなわち、濾紙(220)の耐用年数が経過してエンジンオイルを正常に濾過できなくなったとき、ケーシング(100)の内部に供給されたエンジンオイルは、支持部(210)の内部流路を経由した迂回路を通ってケーシング(100)の外部へ移動する。この場合、ケーシング(100)、支持部(210)、濾紙(220)、頂部支持板(230)、およびバイパス弁(500)は、既存のオイルフィルタアセンブリのそれらと基本的に同じである。これらの構造体の詳細な説明は、ここでは省略する。
【0032】
図6は排出ピン(400)の斜視図であり、
図7はキャップ(300)がねじ止め接続態様でケーシング(100)に結合されるときに回転溝(242)に沿って摺動する排出ピン(400)の斜視図であり、
図8は回転溝(242)に取り付けられた摺動ブロック(420)の水平断面図である。
【0033】
排出ピン(400)が排出ニップル(310)内に挿入された後には、排出ピン(400)は、当該排出ピン(400)の頂部が底部支持板(240)の底面に密に接触するように持ち上げられ得る。乗り物が走行しているときに排出ピン(400)が排出ニップル(310)から分離しないようにするために、すなわち、排出ピン(400)が落下するのを防止するために、排出ピン(400)の頂部が底部支持板(240)にはまっていることは構造的に最適である。すなわち、排出ピン(400)が排出ニップル(310)内に挿入されているとき、排出ピン(400)の頂部はその回転角度に応じて底部支持板(240)から吊り下がっているかまたは解放されている。
【0034】
上述した結合を実現するために、底部支持板(240)の底面に、その中心軸をケーシング(100)の中心軸と同じくして環状の回転溝(242)が形成されており、当該回転溝(242)が作製されるとき、その入口は当該底面よりも幅が狭い。この場合、エンジンオイルが円滑に流れるようにするために、回転溝(242)の外周壁に貫通孔(244)が形成されてもよい。さらに、排出ピン(400)は、嵌合態様で排出孔(312)に挿入される本体(410)と、この本体(410)の一方の長手方向端(実施形態では頂部端)に配設されかつ回転溝(242)の底面に配置され、キャップ(300)がねじ止め接続方向に回転するときに回転溝(242)に沿って摺動し得る摺動ブロック(420)と、本体(410)の他方の長手方向端(実施形態では底部端)に配設され、本体(410)が排出ニップル(310)に挿入されたときに当該排出ニップル(310)の外部に露出する取っ手(430)とを有している。
【0035】
この場合、摺動ブロック(420)の
長手方向長さは回転溝(242)の入口幅よりも長く、摺動ブロック(420)の
幅方向長さは回転溝(242)の入口幅よりも短い。したがって、摺動ブロック(420)が回転溝(242)の径方向に沿って横向きに並んだとき(
図9を参照)、摺動ブロック(420)は回転溝(242)から分離せず当該回転溝(242)内に挿入されたままになるだろう。一方、摺動ブロック(420)が回転溝(242)の接線方向に沿って横向きに並んだとき(
図10を参照)、摺動ブロック(420)は回転溝(242)に挿入され得るし回転溝(242)から取り外され得る。
【0036】
加えて、排出ピン(400)の摺動ブロック(420)が底部支持板(240)の回転溝(242)内に挿入されて組立工場に供給されたとき、組立工は、本体(410)の下側端部が排出孔(312)内に挿入された状態で、キャップ(300)を回して当該キャップ(300)をねじ止め接続態様でケーシング(100)に結合させなければならない。しかしながら、回転溝(242)が単一の凹溝として作られている場合、排出ピン(400)およびキャップ(300)を一緒に回転させることは不可能である。もちろん、排出ピン(400)がキャップ(300)の回転軸に取り付けられていたら、回転溝(242)が単一の凹溝として作られている場合であってもキャップ(300)を回転させることができる。この場合、しかしながら、排出ピン(400)とバイパス弁(500)とが互いに干渉し、よってキャップ(300)を上下方向に伸長した態様で作製しなければならない。
【0037】
本発明に係るオイルフィルタアセンブリでは、キャップ(300)の回転軸から一定の距離をおいて排出ピン(400)が配置された場合であっても、キャップ(300)が回転する間当該キャップ(300)と共に排出ピン(400)が回転するように、回転溝(242)が、好ましくは、キャップ(300)の回転軸と一致する中心軸を有する環状溝として作製される。上述したように、回転溝(242)が環状溝として作製されている場合、摺動ブロック(420)が回転溝(242)の径方向に対して横向きに並べられ、すなわち、摺動ブロック(420)が回転溝(242)の入口に吊り下がったままとなり、したがって摺動ブロック(420)は中心軸であるキャップ(300)の回転軸回りに回転可能であり、キャップ(300)は排出ピン(400)による干渉なくして回転できる。
【0038】
加えて、摺動ブロック(420)が回転溝(242)に沿って摺動するとき、摺動ブロック(420)は、好ましくは、当該摺動ブロック(420)が常に回転溝(242)の径方向に対して横向きに並び、かつ摺動ブロック(420)の一方の側方端部(422)が回転溝(242)の内部側壁と接触するように、多角形縁部を有する構造に作製されている。
図8に示すように、摺動ブロック(420)の一方の側方端部(422)が回転溝(242)の内部側壁に接触していると、摺動ブロック(420)に矢印で示す方向に外力が加わった場合でも当該摺動ブロック(420)は回転せず、回転溝(242)の径方向に対して横向きに並んだままキャップ(300)の回転軸回りに回る。
【0039】
さらに、摺動ブロック(420)の一方の側方端部(422)が回転溝(242)の内部側壁と完全に接触するようにするために、摺動ブロック(420)の当該側方端部(422)を、その曲率が回転溝(242)の内部側壁の曲率と等しい湾曲形状に作製してもよい。上述したように、摺動ブロック(420)の側方端部(422)が湾曲形状に作製されると、摺動ブロック(420)は
図8に矢印で示す方向に全く回転せず、よって摺動ブロック(420)と回転溝(242)との結合の信頼性がより一層向上され得る。
【0040】
排出ピン(400)を取り外すときには、当該排出ピン(400)を回転させなければならない。この場合、摺動ブロック(420)が例えば金属のようなほとんど弾性を有しない材料で作られていると、摺動ブロック(420)の端部が回転溝(242)の内部側壁にはまっているために排出ピン(400)を回転させることができない。したがって、摺動ブロック(420)は例えば合成樹脂のような基準値以上の弾性を有する材料で作られるべきであり、それにより力が加わったときに摺動ブロック(420)の端部が回転溝(242)の内部側壁を横切ることが可能となり、一方で摺動ブロック(420)はエンジンの振動動作によっては回転しないだろう。
【0041】
図9および
図10は、本発明に係るオイルフィルタアセンブリの手入れの状態を示している。
【0042】
図9に示すように、排出ピン(400)の摺動ブロック(420)が回転溝(242)から分離するのを防止するためには、摺動ブロック(420)の
長手方向(より長い長さを有する方向)を回転溝(242)の径方向に対して並べるべきである。
【0043】
逆に、
図10に示すように、排出ピン(400)の摺動ブロック(420)を回転溝(242)から分離するためには、摺動ブロック(420)を回転させて
長手方向(より長い長さを有する方向)を回転溝(242)の接線方向に対して並べるべきである。しかしながら、摺動ブロック(420)はキャップ(300)によって塞がれていて並びを視覚的に確認できないため、排出ピン(400)を正しい角度に回転させることは作業者にとって難しいかも知れない。
【0044】
このため、排出ニップル(310)の突出端に当該排出ニップル(310)の径方向における標識溝(314)が形成されており、取っ手(430)は下方に延びる板状に作製されている。摺動ブロック(420)の
長手方向が回転溝(242)の径方向に対して並ぶように排出ピン(400)を回転させるときには、
図9に示すように、取っ手(430)の幅方向の両端部を標識溝(314)に対して回転方向に例えば90°ずれた位置に配置すればよい。これに対し、摺動ブロック(420)の
長手方向が回転溝(242)の接線方向に対して並ぶように排出ピン(400)を回転させるときには、
図10に示すように、取っ手(430)の幅方向の両端部を一対の標識溝(314)の間に配置すればよい。
【0045】
上述したように、排出ニップル(310)に標識溝(314)が形成されていると、取っ手(430)の向きと標識溝(314)の位置とを確認することにより作業者が排出ピン(400)を正しい角度に回転させることができ、そしてエンジンオイルを排出するために排出ピン(400)を容易に分離することができる。
【0046】
本発明は、本発明の好ましい実施形態を参照して詳しく上述された。本発明の範囲は特定の実施形態に制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲に従って明確にされるべきものである。さらに、当業者であれば、さまざまな変形物および変形例が本発明の範囲を逸脱することなく作られ得ることを理解するだろう。
【符号の説明】
【0047】
100 ケーシング
200 オイルフィルタ
210 支持部
220 濾紙
230 頂部支持板
240 底部支持板
242 回転溝
244 貫通孔
300 キャップ
310 排出ニップル
312 排出孔
314 標識溝
400 排出ピン
410 本体
412 シール要素
420 摺動ブロック
422 側方端部
430 取っ手
500 バイパス弁
600 貫通孔
700 安全ピン
800 弾性要素
900 取っ手