(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の糸固定システムの全体図である。
【
図3】同糸固定システムにおける糸固定具の他の構成例を示す断面図である。
【
図4】同糸固定システムにおける係止部の他の構成例を示す部分断面図である。
【
図5】同糸固定システムとともに使用される縫合器の一例を示す模式図である。
【
図6】同縫合器に代えて使用可能な医療器具の一例を示す模式図である。
【
図7】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図8】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図9】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図10】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図11】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図12】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図13】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図14】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図15】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図16】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図17】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図18】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図19】同糸固定システムの変形例の構成を示す断面図である。
【
図20】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図21】本発明の第2実施形態の糸固定システムの一部を示す部分断面図である。
【
図22】同糸固定システムの糸固定具を示す断面図である。
【
図23】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図24】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図25】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図26】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図27】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図28】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図29】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図30】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図31】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図32】同糸固定システムの変形例の構成を示す断面図である。
【
図33】同糸固定システムの作用を説明するための図である。
【
図34】同糸固定システムの他の変形例の構成を示す断面図である。
【
図35】同変形例における他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の糸固定システムの全体図である。
図2は、同糸固定システムの断面図である。
図3は、同糸固定システムにおける糸固定具の他の構成例を示す断面図である。
図4は、同糸固定システムにおける係止部の他の構成例を示す部分断面図である。
図5は、同糸固定システムとともに使用される縫合器の一例を示す模式図である。
図6は、同縫合器に代えて使用可能な医療器具の一例を示す模式図である。
【0016】
図1に示す本実施形態の糸固定システム1は、たとえば
図7に示す内視鏡50とともに使用可能な医療用のシステムである。
本実施形態では、糸固定システム1とともに使用される内視鏡50は、たとえば、2つの処置具チャンネル52を備えた直視型の軟性内視鏡である。なお、内視鏡50の構成は、後述する外シース2を処置対象部位に案内可能な構成(たとえば処置具チャンネル52)を備えていれば他は特に限定されない。
【0017】
糸固定システム1は、外シース2と、糸固定具3と、引き込み具10と、係止部11と、プッシャ13とを備える。
【0018】
外シース2は、
図7に示す内視鏡50の処置具チャンネル52を通じて体内に挿入可能な柔軟な筒状部材である。外シース2の外径の大きさは、処置具チャンネル52の構成に対応して、処置具チャンネル52の内部において外シース2が移動可能な大きさである。
【0019】
図2に示すように、糸固定具3は、外シース2の遠位端部分に配されている。糸固定具3は、外シース2の内部に挿入可能な外径を有する筒状部材である。糸固定具3には、遠位側の第一開口4と近位側の第二開口5とが形成されている。第一開口4と第二開口5とは、引き込み具10及び係止部11を通すことができる通路6によって互いに連通されている。
糸固定具3の通路6の内径は、後述する縫合糸30が通路6の内面に対して仮固定できる摩擦力を生じる程度の大きさとする。糸固定具3の通路6の内径は、縫合糸30の構成(たとえば、材質、太さ等)に対応して設定することができる。本実施形態の糸固定具3は、円筒状である。糸固定具3の材質は、塑性変形することによって通路6の内径を縮小させることが可能な材質である。たとえば、糸固定具3は、生体適合性を有する金属によって構成されている。
通路6の内径を縮小させる他の構成として、
図3に示すように、通路6に対して縫合糸30が一方向のみに移動可能となるように通路6の内面に形成されたフラップ7を糸固定具3がしていてもよい。
【0020】
図2に示す引き込み具10は、可撓性を有する線状部材である。引き込み具10は、外シース2の内部に、外シース2の内部を移動可能となるように配されている。さらに、引き込み具10は、糸固定具3が外シース2に取り付けられている状態においては、糸固定具3の通路6内に挿通され、外シース2の内部における糸固定具3よりも近位側に延ばされている。引き込み具10の近位端は、糸固定システム1を使用する使用者が引き込み具10を外シース2に対して進退移動させるための操作部として使用可能である。引き込み具10の材質は、可撓性を有する線状形状に成形可能な公知の材質から適宜選択されてよい。引き込み具10の材質は、たとえば、金属や樹脂などを採用することができる。
【0021】
図2に示すように、係止部11は、引き込み具10の遠位端に配されている。本実施形態では、係止部11は、囲み領域(encircled area)12を内側に形成する閉ループ状の環部を有する線状部材からなる。係止部11は、糸固定具3の通路6を通過することができるように変形可能である。係止部11の環部は、外力がかかっていない状態では、少なくとも縫合糸30の一部を挿通できる大きさの囲み領域12が内側に形成される復元状態となる。係止部11の材質は、可撓性を有する線状形状に成形可能な公知の材質から適宜選択されてよい。係止部11の材質は、たとえば、金属や樹脂などを採用することができる。
係止部11は、引き込み具10に対してカシメ等の方法により連結されてもよいし、引き込み具10とともに一体成型されてもよい。
係止部11の形状は、少なくとも縫合糸30の一部を挿通できる大きさの囲み領域12が形成できれば、閉ループ状の環部を有する形状には限られない。たとえば、
図4に示すように、係止部11は、全体としてJ字状をなし、糸固定具3における遠位端側の第一開口4から延出する部分がU字状となるように形成されていてもよい。この場合、糸固定具3の遠位端と、係止部11のU字状部分とによって、縫合糸30を通すことができる囲み領域12が形成される。
【0022】
図1及び
図2に示すように、プッシャ13は筒状部材である。プッシャ13の内部には、引き込み具10が進退可能に挿通される。プッシャ13は、外シース2の内部において、外シース2に対して移動可能に挿入されている。プッシャ13の近位端は、糸固定システム1を使用する使用者がプッシャ13を外シース2に対して進退移動させるための操作部として使用可能である。糸固定具3が外シース2に取り付けられている状態において、プッシャ13は、糸固定具3より近位側に配されている。プッシャ13は、外シース2の中心線に沿って外シース2に対する遠位側に移動されると、糸固定具3の近位端面に当接する。プッシャ13は、さらに外シース2に対する遠位側に移動されることによって、糸固定具3を外シース2の遠位端から外シース2の外へ押し出すことができる。プッシャ13の材質は、可撓性を有する筒状形状に成形可能な公知の材質から適宜選択されてよい。プッシャ13の材質は、たとえば、金属や樹脂などを採用することができる。
【0023】
次に、本実施形態の糸固定システム1とともに使用される医療器具である縫合器20の一例について説明する。
図5に示すように、縫合器20は、端部に縫合針31が固定された縫合糸30を用いて組織を縫合するための医療器具である。縫合器20は、一対の受け渡し部材21と、長尺部材24と、手元操作部25とを有する。
一対の受け渡し部材21は、開閉動作可能である。
長尺部材24は、一対の受け渡し部材21を縫合対象部位Tまで案内するために内視鏡50の処置具チャンネル52に挿通可能である。
手元操作部25は、一対の受け渡し部材21を開閉させるために長尺部材24の近位端に配される。
【0024】
本実施形態の縫合器20は、一対の受け渡し部材21における第一受け渡し部材22と第二受け渡し部材23が、手元操作部25による操作に対応して開閉動作する。縫合器20は、この開閉動作に連動して第一受け渡し部材22から第二受け渡し部材23へ、また逆に第二受け渡し部材23から第一受け渡し部材22へと、縫合針31の受け渡しが可能である。このため、本実施形態では、一対の受け渡し部材21の開閉動作の過程で、縫合対象となる組織に縫合針31を通過させて縫合糸30を組織に係止することができる。
【0025】
縫合器20は、端部に縫合針31が固定された縫合糸30を用いることに代えて、
図6に示すように一対の受け渡し部材21が組織に対する穿刺針構造21Aをそれぞれ有していてもよい。この縫合器20では、穿刺針構造21Aが縫合糸30を保持した状態で組織に穿刺されることによって、組織に縫合糸30を通過させるようになっていてもよい。この場合、一対の受け渡し部材21における各受け渡し部材21の間で縫合糸30の受け渡しが行われる。さらに、この場合、縫合糸30の一端または両端に、一対の受け渡し部材21に対する連結具31Aが取り付けられていてもよい。
【0026】
糸固定システム1を用いた糸固定具3の縫合糸30への固定の過程では、上記の縫合器20に代えて、縫合糸の受け渡しの機能を有し組織に縫合糸を通す機能を有していない一対の受け渡し部材を備えた受け渡し器具が使用されてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の糸固定システム1の作用について説明する。
図7から
図18までは、本実施形態の糸固定システム1の作用を説明するための図である。
糸固定システム1を使用した組織の縫合においては、たとえば、
図7に示すように、内視鏡50を縫合対象部位Tまで案内し、続いて、内視鏡50の処置具チャンネル52を通じて縫合器20を縫合対象部位Tまで案内する。
糸固定システム1は、内視鏡50の挿入部51において、縫合器20が取り付けられた処置具チャンネル52とは異なる処置具チャンネル52を通じて、縫合対象部位Tの近傍に案内される。このとき、糸固定システム1の外シース2の遠位端の内部には糸固定具3が配されている。糸固定具3における遠位端側の第一開口4からは、係止部11が延出している。第一開口4からの係止部11の延出量は、縫合器20を用いた縫合の邪魔にならない程度とされてもよい。
【0028】
糸固定システム1の使用時には、必要に応じて、糸固定システム1の全体を処置具チャンネル52の内部に収納しておくことによって、広い術場を確保してもよい。
第一開口4からの係止部11の延出方向が、縫合器20を用いた縫合の邪魔になる向きである場合には、処置具チャンネル52の中心線を回動中心として糸固定システム1全体を回動させるとよい。この場合、係止部11が縫合の邪魔にならない位置まで係止部11を移動させることができる。
【0029】
縫合器20を用いた縫合は、たとえば、
図7に示すように縫合開始部分Tsから組織に縫合糸30を何針分か通した後に、縫合糸30を牽引して縫合部位に弛みがない状態とする。縫合部位の弛みを解消するためには、たとえば内視鏡50を縫合器20とともに、内視鏡50を体外へ抜去する方向に向かって移動させる。
あるいは、内視鏡50の処置具チャンネル52から縫合器20を抜去する方向へ処置具チャンネル52に対して縫合器20を移動させても、同様に縫合部位の弛みを解消できる。
【0030】
縫合器20によって縫合された部位では、縫合の終わり部分が組織から抜けないようにするために、縫合の終わり部分に糸固定具3を配置して、糸固定具3を縫合糸30に固定する。
【0031】
糸固定具3を縫合糸30に固定するためには、まず、糸固定具3の通路6に縫合糸30を通す。具体的には、
図8に示すように、まず、糸固定具3における遠位側の第一開口4から延出された係止部11が形成する囲み領域12に、一対の受け渡し部材21のうち縫合針31が連結されている方(たとえば第一受け渡し部材22)を挿入する。
続いて、
図9及び
図10に示すように、一対の受け渡し部材21を閉じてから再び開くことで、一対の受け渡し部材21の一方から他方へ(たとえばこの場合には第一受け渡し部材22から第二受け渡し部材23へ)縫合針31を受け渡す。一対の受け渡し部材21の上記の開閉動作によって、囲み領域12を縫合針31が通過する。このとき、縫合針31とともに縫合糸30の一部も囲み領域12を通過する。
【0032】
続いて、
図11及び
図12に示すように、一対の受け渡し部材21を処置具チャンネル52の中に引き込むことによって、縫合糸30によって縫合対象部位Tが弛みなく縫合されるように、縫合糸30を牽引する。
【0033】
続いて、
図13及び
図14に示すように、一対の受け渡し部材21によって縫合針31が保持されている状態で、たとえば使用者の手作業により、引き込み具10が外シース2の遠位端から近位端へ向かって移動される。引き込み具10が使用者によって移動されると、引き込み具10の遠位端に配された係止部11は引き込み具10と一体に近位側へと移動する。係止部11は、糸固定具3の遠位側の第一開口4から、通路6の内部を通って、糸固定具3の近位側の第二開口5へ向かって移動する。係止部11が形成する囲み領域12には縫合糸30が通されているので、縫合糸30は係止部11に係止された状態にある。縫合糸30は係止部11とともに糸固定具3の遠位側の第一開口4から通路6を通って糸固定具3の近位側の第二開口5へと移動される。
【0034】
次に、糸固定具3の近位側の第二開口5から縫合糸30が出たあと、係止部11をさらに近位側へ移動させることによって、処置具チャンネル52の近位端にある処置具挿入口53(
図7参照)から縫合糸30を引き出す。縫合糸30が十分に長ければ、縫合針31が処置具チャンネル52内に引き込まれることなく、縫合糸30を処置具挿入口53から内視鏡50の外へ引き出せる。
【0035】
次に、
図15に示すように、プッシャ13を、外シース2の遠位側へ向かって移動させて、外シース2の遠位端から糸固定具3を外シース2の外部へと押し出す。プッシャ13は、使用者がたとえば手作業などによって移動させることができる。
糸固定具3の通路6には縫合糸30が仮固定程度の摩擦力で係止されている。糸固定具3がプッシャ13によって遠位側に押されると、糸固定具3は縫合糸30に沿って、組織における縫合終わり部分Teまで導入される。
【0036】
組織における縫合終わり部分Teに糸固定具3が達したら、不図示の鋏鉗子等によって、不要な縫合糸30を切り離して体外へ取り出す(
図16参照)。さらに、
図17に示すように、把持鉗子等を用いて、糸固定具3の通路6(
図2参照)をつぶすように糸固定具3を塑性変形させる。
たとえば、2つの処置具チャンネル52が内視鏡50に設けられている場合、2つの処置具チャンネル52のうち糸固定システム1が取り付けられていない方の処置具チャンネル52に糸固定具3を塑性変形させる把持鉗子等が取り付けられてもよい。この場合、処置具チャンネル52に取り付けられた把持鉗子等によって糸固定具3を塑性変形させることができる。
糸固定具3を塑性変形させる把持鉗子等は、使用時に糸固定システム1が取り付けられた処置具チャンネル52に挿入されてもよい。この場合、把持鉗子等を挿入する前に、縫合糸30を処置具チャンネル52内に残して、外シース2、引き込み具10及び係止部11、並びにプッシャ13を処置具チャンネル52から抜去する。把持鉗子等は、縫合糸30のみを残した処置具チャンネル52内に挿入して、糸固定具3まで延出させることによって糸固定具3を塑性変形させることができる。
糸固定具3を塑性変形させることにより、糸固定具3の通路6の内面は縫合糸30の外面に密着し、
図18に示すように、糸固定具3に対して縫合糸30が固定される。
【0037】
このように、本実施形態の糸固定システム1によれば、組織の縫合のために組織に縫合糸30を係止したあと、縫合糸30の弛みをとるように縫合糸30を張った状態で糸固定具3の内部に容易に縫合糸30を引き込むことができる。かつ、本実施形態の糸固定システム1によれば、縫合糸30の弛みをとるように縫合糸30を張ったままでも糸固定具3を縫合終わり部分Teに取り付けることができる。
このようにして、本実施形態の糸固定システム1によれば、組織の縫合における縫合糸30の固定が容易となる。
【0038】
さらに、本実施形態の糸固定システム1によれば、プッシャ13が筒状であるので、プッシャ13の内部に縫合糸30が挿通された状態で糸固定具3を縫合糸30に沿って遠位側へ押しだすことができる。このため、本実施形態の糸固定システム1によれば、糸固定具3を縫合終わり部分Teまで容易に移動させることができる。
【0039】
(変形例)
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
図19は、本変形例の構成を示す断面図である。
図20は、本変形例の糸固定システムの作用を説明するための図である。
図19及び
図20に示すように、本変形例では、糸固定具3が、通路6に連通し糸固定具3の側面に開口された側面開口8を有している。側面開口8は、上記第1実施形態で説明した第一開口4と第二開口5の間であって、遠位側の第一開口4寄りの側面に形成されている。本変形例の側面開口8は、上記第1実施形態の第一開口4に代えて用いられる。
上記第1実施形態で説明した係止部11は、糸固定具3の側面開口8から通路6へと引き込まれさらに近位側の第二開口5まで引き込まれることによって、上記第1実施形態と同様に縫合糸30を糸固定具3に通すことができる。
【0040】
本変形例の側面開口8は、糸固定具3の通路6の中心線に直交する面方向に糸固定具3の外壁部分に切欠きを形成した形状をなすスリットによって形成されている。スリット(側面開口8)は、糸固定具3の通路6の中心線方向において、遠位側の壁面8aと近位側の壁面8bとを有している。
スリット(側面開口8)に係止部11を所定の姿勢で保持させると、上記第1実施形態で説明したように縫合器20を用いて縫合糸30を囲み領域12内に通す際に、容易に縫合糸30を通せる向きに係止部11を保持することができる。
たとえば、スリット(側面開口8)における遠位側の壁面8aに係止部11が接するように係止部11を保持させる。この場合、係止部11がL字状に屈曲して糸固定具3の側方に突出するため、糸固定具3の側方において縫合糸30を容易に通すことができる。
たとえば、スリットにおける各壁面8a,8bに係止部11が接するように係止部11を保持させる。各壁面8a,8bは、糸固定具3の通路6の中心線に直交する面方向に沿って、遠位側と近位側とにおいて延びている。この場合、係止部11が形成する囲み領域12は、糸固定具3の側方において、糸固定具3の周方向に開口する。このため、縫合器20を用いて縫合糸30を糸固定具3の側方において周方向に移動して囲み領域12内に通すことができる。
【0041】
また、糸固定具3に縫合糸30を通した後に上記実施形態と同様に縫合終わり部分Teに糸固定具3を配置して糸固定具3を縫合糸30に固定できる。
【0042】
上記実施形態においては係止部11が処置具チャンネル52の中心線方向に進退する。これに対して、本変形例では、係止部11が側面開口8に挿通されるため、係止部11は処置具チャンネル52の中心線に対して傾斜する方向に進退する。このため、たとえば2つの処置具チャンネル52を並べて有する内視鏡50において一方の処置具チャンネル52に糸固定システム1を装着し他方の処置具チャンネル52に縫合器20を装着して使用する場合、たとえば処置具チャンネル52の中心線を回動中心として外シース2を回動させることによって、縫合器20の一対の受け渡し部材21へ向けて係止部11を移動させることができる。したがって、本変形例では、縫合器20の一対の受け渡し部材21を囲み領域12に通しやすい位置に、係止部11を容易に配置することができる。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図21は、本発明の第2実施形態の糸固定システムの一部を示す部分断面図である。
図22は、同糸固定システムの糸固定具を示す断面図である。
図21及び
図22に示すように、本実施形態では、公知の内視鏡50における挿入部51の遠位端に取り付け可能なキャップ40が上記第1実施形態で説明した糸固定システム1の外シース2に代えて設けられている。
本実施形態では、上記第1実施形態で説明した係止部11に代えて、糸固定具3に固定された係止部43を有している。
本実施形態では、上記第1実施形態で説明した引き込み具10は、糸固定システム1の使用前に、内視鏡50の処置具チャンネル52内に挿通される。
【0044】
キャップ40は、内視鏡50の挿入部51の遠位端が挿入可能な筒状の本体部41と、糸固定具3を本体部41に保持するための保持部42とを有する。
【0045】
本体部41は、内視鏡50の撮像視野の邪魔にならないように、たとえば透明である。
本体部41の遠位側の開口の大きさ及び形状は、内視鏡50の処置具チャンネル52から延出する医療器具等の使用の邪魔にならないように構成されている。
【0046】
保持部42には、上記第1実施形態で説明した糸固定具3が挿入される。保持部42は、糸固定具3の外面を摩擦によって係止することによって糸固定具3を保持する。
【0047】
係止部43は、可撓性を有する線状部材である。係止部43は、一端が糸固定具3に固定され、他端が引き込み具10に繋がる。本実施形態では係止部43と引き込み具10とは一体成型されている。
すなわち、本実施形態において、係止部43及び引き込み具10は、一端が糸固定具3に固定され他端が処置具チャンネル52を通じて内視鏡50の外へ引き出される一続きの線状部材によって構成されている。
【0048】
図22に、糸固定具3に対する係止部43の取り付け状態を示す。
係止部43は、糸固定具3の近位側の第二開口5から糸固定具3の通路6に挿入される。係止部43は、糸固定具3の遠位側の第一開口4から遠位側に延出する。さらに係止部43は、糸固定具3の遠位部分において折り返されて再び糸固定具3の遠位側の第一開口4から糸固定具3の通路6内に挿入される。さらに係止部43は、糸固定具3の近位側の第二開口5から近位側へ延出される。
係止部43において糸固定具3の遠位側の開口(第一開口4)から延出された部分(以下、係止部43の遠位側延出部という)は、本体部41の外周に掛けることができる程度の大きさの囲み領域12を形成する。係止部43の遠位側延出部は、本体部41に取り付けられている。このため、本実施形態では、囲み領域12を形成する部分の係止部43は内視鏡50による撮像視野の邪魔にならない位置に配置されている。
【0049】
係止部43の遠位側延出部は、
図21に示すように本体部41の外周に掛けることができる程度の大きさの囲み領域12を形成して本体部41に取り付けられている。このため、処置具チャンネル52から延出されて使用される医療器具は、遠位側延出部に引っ掛かることなく囲み領域12を通る。
【0050】
本実施形態の糸固定システム1の作用について説明する。
図23から
図31までは、本実施形態の糸固定システム1の作用を説明するための図である。
本実施形態では、たとえば内視鏡50の処置具チャンネル52に上記第1実施形態で説明した縫合器20が取り付けられて縫合対象部位Tの縫合が行われる場合、
図23に示すように、縫合器20は、係止部43が形成する囲み領域12を近位側から遠位側へ通過して縫合対象部位Tに案内される。縫合器20は、組織への縫合糸30の係止後には、逆に囲み領域12を遠位側から近位側に通過して戻される。
縫合糸30が組織に係止された後に、縫合器20を近位側に移動すると、縫合器20の一対の受け渡し部材21が処置具チャンネル52内に引き込まれる。このとき、縫合糸30は縫合器20によって牽引状態とされているので、組織の縫合部位は弛みなく保持されている。
【0051】
本実施形態においては、糸固定具3を用いて縫合糸30の固定をする場合、糸固定システム1の使用者(以下、単に、使用者という)は、
図24及び
図25に示すように、糸固定具3が組織の縫合終わり部分Teに位置するように、内視鏡50の挿入部51を移動させる。使用者は、たとえば、糸固定具3の遠位側の第一開口4が組織の縫合終わり部分Teに接するように、内視鏡50の挿入部51を移動させる。
縫合糸30が縫合器20によって牽引された状態で糸固定具3が組織の縫合終わり部分Teに配置されると、糸固定具3は、縫合部位に弛みがない状態で組織の縫合終わり部分Teに近接した位置関係にある。
【0052】
縫合糸30は係止部43が形成する囲み領域12を遠位側から近位側へ通過したあと、糸固定具3が組織の縫合終わり部分Teに近接した位置関係において、使用者は引き込み具10を処置具チャンネル52の近位側へ向かって牽引する。
図24及び
図25に示すように、使用者が引き込み具10を処置具チャンネル52の近位側へ向かって牽引すると、係止部43が形成する囲み領域12は縮小する。
さらに、
図26及び
図27に示すように、囲み領域12を形成する係止部43は、糸固定具3の遠位側の第一開口4から通路6内へと引き込まれる。通路6内に引き込まれる係止部43は、縫合糸30を糸固定具3の遠位側の第一開口4から通路6内へと移動させる。
係止部43は、引き込み具10が近位側へ移動されることによって、通路6を通過する。係止部43は、糸固定具3の近位側の第二開口5から、縫合糸30とともに引き出される。
【0053】
糸固定具3の内部に縫合糸30が配置されている状態では、上記第1実施形態と同様に、縫合糸30は糸固定具3に対して仮固定されている。使用者は、不図示の鋏鉗子等を利用して、
図28に示すように処置具チャンネル52内にある引き込み具10又は係止部43を、
図29に示すように切断する。
引き込み具10又は係止部43が切断されると、キャップ40及び内視鏡50を近位側に移動することによって、糸固定具3はキャップ40から外れる。糸固定具3は、組織の縫合終わり部分Teに留置される。
その後、
図30に示すように、上記第1実施形態と同様に把持鉗子等を用いて糸固定具3を塑性変形させることによって、
図31に示すように糸固定具3を縫合糸30に固定する。
【0054】
本実施形態の糸固定システム1は上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の糸固定システム1は、処置具チャンネル52内に配される部材が引き込み具10のみである。このため、上記第1実施形態で説明した糸固定システム1を挿入できない程度に処置具チャンネル52が細くても、縫合糸30に糸固定具3を固定することができる。
【0055】
(変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。
図32は、本変形例の糸固定システムの構成を示す断面図である。
図33は、同糸固定システムの作用を説明するための図である。
図32に示すように、本変形例では、保持部42が外部シース45を有する。外部ソース45は、上記第1実施形態で説明したプッシャ13を、移動可能に保持する。ただし、本変形例においてプッシャ13が筒状である必要はない。
【0056】
外部シース45は、可撓性の筒状部材である。外部シース45は、筒状のスリーブ46を介して、内視鏡50の挿入部51の外面に、取り付け可能である。挿入部51の外面に対して外部シース45を固定するには、たとえば、結束バンドやテープなどを用いてもよい。
外部シース45は、保持部42の内部に移動可能に挿入されている。外部シース45の遠位端の内部には、糸固定具3が取り付けられている。
【0057】
図32及び
図33に示すように、外部シース45は、糸固定具3を組織の縫合終わり部分Teに配置するために、内視鏡50の遠位側へ向かってスリーブ46および保持部42内を移動可能である。このため、外部シース45は、囲み領域12内を縫合糸30が通過した状態において縫合器20を用いて縫合糸30を牽引しつつ外部シース45を遠位側へ移動させることができる。このようにして、外部シース45が遠位側に移動されると、外部シース45の遠位端に取り付けられた糸固定具3も組織の縫合終わり部分Teまで案内される。
この状態から、さらに、第1実施形態と同様にプッシャ13を用いることによって、外部シース45から糸固定具3が放出される。
【0058】
本変形例では第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を奏する。
本変形例では、第2実施形態と比較して、組織の縫合終わり部分Teまでさらに容易に糸固定具3を移動させることができる。
本変形例では、糸固定具3の遠位側の第一開口4を組織の縫合終わり部分Teに接触させる力を外部シース45によって糸固定具3に作用させることができる。このため、本変形例では上記第2実施形態よりもさらに縫合糸30が弛みにくい。
本変形例では、外部シース45の内部に配されたプッシャ13は簡単な操作で糸固定具3を外部シース45から放出することを可能とする。
【0059】
(変形例)
上記第2実施形態の他の変形例について説明する。
図34は、本変形例の糸固定システムの構成を示す断面図である。
図35は、本変形例における他の構成例を示す断面図である。
図34に示すように、本変形例では、キャップ40の本体部41の内部に、係止部43を一時的に取り付けるための収容部47が設けられている。
【0060】
収容部47は、たとえば、キャップ40の周方向に沿って延びる窪み形状を有する。収容部47は、係止部43がキャップ40の内周面に沿う囲み領域12を形成した状態でキャップ40の内部に入り込んだときに、環状の係止部43を窪み形状に沿って一時的に取り付けることができる。このようにして、係止部43が収容部47に保持される。このとき、収容部47に保持された係止部43の内側には、キャップ40の内周面に沿う形状の囲み領域12が形成される。
本変形例では、たとえば、係止部43が、係止部43自身の復元力によって環状に戻って囲み領域12を形成する場合、係止部43の復元力によって係止部43が収容部47に係止されるようになっていてもよい。
本変形例では、収容部47の内面と、囲み領域12を形成する係止部43の外面とが摩擦係合することで収容部47が係止部43を保持してもよい。
【0061】
本変形例では、収容部47は、上記の説明とは異なる構成でもよい。
たとえば、
図35に示すように、収容部47は、囲み領域12を形成する係止部43の一部を本体部41の内面付近に保持する引掛け部材であってもよい。収容部47を構成する引掛け部材は、引き込み具10を用いて係止部43を牽引する力量によって係止部43が外れる程度の保持力を備える。
【0062】
本変形例では、囲み領域12は、本体部41の内部で本体部41の内面に沿って配置される係止部43によって形成される。このため、上記第2実施形態と同様に縫合器20等の医療器具を用いて囲み領域12に縫合糸30を通すことができる。
本変形例は、本体部41の外部に係止部43を保持することによって囲み領域12を形成する場合と比較して、本体部41に係止部43が引っかかりにくい。このため、囲み領域12の縮小が容易である。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態及びその変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
たとえば、上記各実施形態及びその各変形例において糸固定システム1とともに使用される内視鏡50において処置具チャンネル52が不足している場合には適宜追加の外付けチャンネルを内視鏡50に取り付けて糸固定システム1を使用可能である。