(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の内視鏡処置システム(ESD処置システム)を示す全体図である。
図2は、同内視鏡処置システムにおける遠位部分の平面図である。
図3は、同内視鏡処置システムにおける遠位部分の斜視図である。
図4は、同内視鏡処置システムにおける第一ワイヤの構成を示す模式図である。
図5は、同内視鏡処置システムにおける第二ワイヤの構成を示す模式図である。
図6は、同内視鏡処置システムにおけるワイヤ操作部の構成を一部断面で示す斜視図である。
図7は、同内視鏡処置システムにおいて内視鏡装置とともに利用可能な内視鏡用処置具の遠位端部分の一部の構成を示す部分断面図である。
【0018】
図1に示す本実施形態のESD処置システム1は、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection,ESD)を行うために好適な構成を備えた内視鏡処置システムである。
図1に示すように、ESD処置システム1は、内視鏡装置10と、内視鏡用粘膜挙上具30と、内視鏡用切開具50とを備える。
【0019】
内視鏡装置10は、挿入部11と、操作部23と、ユニバーサルケーブル29とを備える。
【0020】
挿入部11は、体内に挿入可能な細長部材である。
挿入部11は、遠位硬質部12と、湾曲部17と、可撓管部18とを備える。
【0021】
遠位硬質部12は、挿入部11における最も遠位側に配されている。
遠位硬質部12は、処置対象部位を観察するための観察ユニット13と、処置対象部位に対して照明光を照射する照明部14と、処置具チャンネル19の遠位開口部16と、を有している。処置具チャンネル19の遠位開口部16は、内視鏡用切開具50等の内視鏡用処置具が前方へ突出される通路となる。
【0022】
観察ユニット13は、たとえばCCD(電荷結合素子)エリアイメージセンサ等の固体撮像素子及び光学系(いずれも不図示)を備える。本実施形態では、観察ユニット13は、挿入部11の前方に撮像視野が設定された所謂直視型の構成を有する。観察ユニット13の構成は特に限定されない。すなわち、公知の内視鏡に適用可能な撮像手段が撮像ユニットとして適宜選択して適用されてよい。
【0023】
照明部14は、ユニバーサルケーブル29を通じて接続された外部の光源から照明光を導光する光ファイバーと、光源から発せられた光を照明光として挿入部11の前方へ向かって照射する出光部15とを備える。なお、照明部14の構成は特に限定されない。すなわち、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、あるいは白熱電球などの光源(不図示)が遠位硬質部12に配されて照明光を発する構成であってもよい。
【0024】
処置具チャンネル19の遠位開口部16は、遠位硬質部12の遠位端面12aに開口されている。処置具チャンネル19は、遠位硬質部12の内部、湾曲部17の内部、及び可撓管部18の内部を通じて操作部23まで繋がっている。処置具チャンネル19は、近位開口部27を操作部23内に有している。本実施形態では、内視鏡用切開具50等の内視鏡用処置具が、後述する鉗子栓28を介して、処置具チャンネル19の近位開口部27へと挿入可能である。
【0025】
湾曲部17は、操作部23に配されたアングルノブ25の操作に応じて湾曲動作可能である。
【0026】
可撓管部18は、樹脂等によって構成された筒状部材である。可撓管部18の内部には、チャンネルチューブ20と、アングルワイヤ21と、配線22とが配されている。チャンネルチューブ20は、処置具チャンネル19を構成する。アングルワイヤ21は、湾曲部17を湾曲動作させるための力量を操作部23から伝達するために設けられている。配線22は、観察ユニット13および照明部14に対する電力や信号を伝達するために設けられている。
【0027】
操作部23は、操作者が把持する本体部24と、湾曲部17を湾曲動作させるためのアングルノブ25と、内視鏡装置10に対する各種の操作をするためのスイッチ類26と、処置具チャンネル19の近位開口部27と連通された鉗子栓28とを備える。
【0028】
次に、本実施形態に係る内視鏡用粘膜挙上具30の構成について説明する。
図1,
図2,及び
図3に示すように、内視鏡用粘膜挙上具30は、本実施形態の内視鏡装置10における挿入部11の遠位端11aの外周面11cに対して着脱可能であり、ESD手技において粘膜を挙上するために内視鏡装置10に取り付けて利用可能な器具である。
内視鏡用粘膜挙上具30は、キャップ31と、挙上ワイヤ36と、シース部43と、ワイヤ操作部44とを備える。
【0029】
キャップ31は、内視鏡装置10における挿入部11の遠位端11aに対して着脱可能な部材である。キャップ31は、
図2および
図3に示すように、筒部32と、第一案内部33と、を備える。
【0030】
筒部32は、内視鏡装置10における挿入部11の遠位端11aの外径と略等しい内径を有する円筒状の部材である。筒部32は、内視鏡装置10の遠位端11aの外周面11cとの間の摩擦や、図示しない粘着テープ等によって、内視鏡装置10の遠位端11aに取り付け可能である。本実施形態における筒部32の中心線は、内視鏡装置10における挿入部11の中心線と一致している。本実施形態における筒部32の中心線は、キャップ31の中心線L1である。
【0031】
第一案内部33は、挙上ワイヤ36における後述する第一ワイヤ37が挿通された第一貫通孔部34と、挙上ワイヤ36における後述する第二ワイヤ40が挿通された第二貫通孔部35とを有する。
【0032】
第一貫通孔部34は、キャップ31の中心線L1と平行であって互いに離間する一対の貫通孔がキャップ31の外壁部分に形成されている。第一貫通孔部34の各貫通孔の内径は、第一ワイヤ37が進退自在となるように第一ワイヤ37の外径より大きい。
【0033】
第二貫通孔部35は、キャップ31の中心線L1と平行であって互いに離間する一対の貫通孔がキャップ31の外壁部分に形成されている。第二貫通孔部35の各貫通孔の間に第一貫通孔部34が配されている。第二貫通孔部35の各貫通孔の内径は、第二ワイヤ40が進退自在となるように第二ワイヤ40の外径よりも大きい。
【0034】
挙上ワイヤ36は、本実施形態に係る内視鏡用粘膜挙上具30において粘膜を挙上するために粘膜に接触する部材である。
挙上ワイヤ36は、第一ワイヤ37と、第二ワイヤ40とを備える。第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40は、所定の形状への復元力が高い材質であることが好ましい。たとえば、第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40は、超弾性合金、たとえばNiTi合金からなる。
【0035】
図2,
図3,及び
図4に示すように、第一ワイヤ37は、U字部(第一U字部38)と、第一近位ワイヤ部39とを有する。第一U字部38は、キャップ31の遠位端側から延出された部分である。第一近位ワイヤ部39は、第一U字部38に繋がり第一U字部38の近位側へ延びる。
【0036】
第一U字部38は、遠位部38aと、傾斜部38bとを有している。遠位部38aは、第一U字部38の遠位端部分であってワイヤが円弧状に180°折り返されている。傾斜部38bは、第一近位ワイヤ部39に対して、外力がかかっていない状態において傾斜してつながっている。本実施形態における傾斜部38bは、外力がかかっていない状態において、第一近位ワイヤ部39に対して所定の傾斜角度を有して屈曲されている。第一ワイヤ37が第一貫通孔部34に取り付けられた状態において、第一U字部38は、第一貫通孔部34の遠位端から繰り出されたときに、近位側から遠位側に行くに従って漸次キャップ31の中心線L1に近づくように傾斜している。
【0037】
第一近位ワイヤ部39は、第一貫通孔部34及び後述する第一シース部43aの内部に挿入され、ワイヤ操作部44まで延びている。第一近位ワイヤ部39の近位端がワイヤ操作部44において移動されることにより、第一U字部38が第一貫通孔部34に対して突没する。
【0038】
図2,
図3,及び
図5に示すように、第二ワイヤ40は、キャップ31の遠位端側から延出された部分であるU字部(第二U字部41)と、第二U字部41に繋がり第二U字部41の近位側へ延びる第二近位ワイヤ部42とを有する。
【0039】
第二U字部41は、遠位部41aと、接続部41bとを有している。遠位部41aは、第二U字部41の遠位端部分であってワイヤが円弧状に180°折り返されている。接続部41bは、第二近位ワイヤ部42に繋がっている。
第二U字部41における遠位部41aの曲率半径は、第一U字部38の遠位端部38aの曲率半径よりも大きい。
本実施形態では、第一U字部38の遠位端部38aは、比較的小さな開口に挿入しやすく、第二U字部41の遠位端部41aは、粘膜層を広い範囲で挙上しやすいように形成されている。
【0040】
本実施形態における接続部41bは、外力がかかっていない状態において、第二近位ワイヤ部42の中心線が延びる方向に延びる直線状をなして第二近位ワイヤ部42に繋がっている。第二ワイヤ40が第二貫通孔部35に取り付けられた状態において、第二U字部41は、第二貫通孔部35の遠位端から繰り出されたときに、第二貫通孔部35の各貫通孔の中心線方向に延び、遠位端において180°折り返された形状を有する。
第二近位ワイヤ部42は、第二貫通孔部35及び後述する第二シース部43bの内部に挿入され、ワイヤ操作部44まで延びている。第二近位ワイヤ部42の近位端がワイヤ操作部44において移動されることにより、第二U字部41が第二貫通孔部35に対して突没する。
【0041】
シース部43は、第一ワイヤ37が挿通される一対の第一シース部43aと、第二ワイヤ40が挿通される一対の第二シース部43bとを有する。
第一シース部43aは、第一ワイヤ37における2本の第一近位ワイヤ部39に対応したマルチルーメンチューブである。第一シース部43aは、筒部32に形成された第一貫通孔部34の各貫通孔の近位端に近接した位置において、筒部32に固定されている。
【0042】
第二シース部43bは、第二ワイヤ40における2本の第二近位ワイヤ部42に対応してマルチルーメンチューブとなっている。第二シース部43bは、筒部32に形成された第二貫通孔部35の各貫通孔の近位端に近接した位置において、筒部32に固定されている。
本実施形態では、第一シース部43aと第二シース部42bとは、4つのルーメンが形成されたマルチルーメンチューブとして一体成型されている。
【0043】
第一シース部43a及び第二シース部43bは、たとえば樹脂製のバンドなどの取付部材43cを用いて、内視鏡装置の可撓管部18に連結可能である。
【0044】
図1及び
図6に示すように、ワイヤ操作部44は、シース部43の近位端に連結された軸部45と、軸部45に対して移動可能に取り付けられたスライダ部46とを有する。
軸部45は、第一ワイヤ37と第二ワイヤ40とがそれぞれ内部に挿通された棒状部材である。
【0045】
スライダ部46は、第一スライダ47と、第二スライダ48とを有する。第一スライダ47は、第一ワイヤ37における2本の第一近位ワイヤ部39の各近位端に固定されている。第二スライダ48は、第二ワイヤ40における2本の第二近位ワイヤ部42の各近位端に固定されている。
第一スライダ47と第二スライダ48とは、互いに独立して軸部45に対して軸部45の中心線方向に進退させることができる。
【0046】
第一スライダ47を軸部45の遠位側へ移動させると、第一スライダ47に固定された第一ワイヤ37は遠位側へと移動される。また、第一スライダ47を軸部45の近位側へ移動させると、第一スライダ47に固定された第一ワイヤ37は近位側へと移動される。第一スライダ47は、
図3に示すキャップ31の筒部32に配された第一貫通孔部34からの第一ワイヤ37の突没を操作可能である。
【0047】
第二スライダ48を軸部45の遠位側へ移動させると、第二スライダ48に固定された第二ワイヤ40は遠位側へと移動される。また、第二スライダ48を軸部45の近位側へ移動させると、第二スライダ48に固定された第二ワイヤ40は近位側へと移動される。第二スライダ48は、キャップ31の筒部32に配された第二貫通孔部35からの第二ワイヤ40の突没を操作可能である。
【0048】
なお、軸部45及びスライダ部46には、必要に応じて、操作者が操作しやすいような公知の指掛け構造が設けられていてよい。
【0049】
次に、本実施形態の内視鏡装置10に取り付けられる内視鏡用切開具50の構成について説明する。
図1に示す内視鏡用切開具50は、生体組織を切開する処置具である。本実施形態では、公知の内視鏡用切開具が適宜選択して本実施形態の内視鏡用切開具50として適用されてよい。たとえば、内視鏡用切開具50として、高周波電源装置から高周波電流の供給を受けて生体組織を焼灼により切開する高周波ナイフが適用される。
【0050】
図1及び
図7に示すように、本実施形態の内視鏡用切開具50(高周波ナイフ50)は、処置具挿入部51と、処置具操作部55と、不図示の対極板とを備えている。
【0051】
処置具挿入部51は、シース52と、切開電極53と、給電ワイヤ54とを備える。
【0052】
シース52は、可撓性を有する筒状部材であり、絶縁性を有する。シース52の内部には給電ワイヤ54が進退可能に配されている。
【0053】
図7に示す切開電極53は、給電ワイヤ54の遠位端54aに固定された電極であり、高周波電流が通電された状態で生体組織に接触させることにより生体組織を焼灼・切開する。
切開電極53は、給電ワイヤ54が
図1及び
図7に示すシース52の遠位端52a側から近位端52b側へと移動されることによって、シース52の遠位端52aの開口からシース52の内部に完全に収容される。また、切開電極53は、給電ワイヤ54がシース52の遠位端52a側へと移動されることによって、シース52の遠位端52aの開口から突出する。
【0054】
給電ワイヤ54は、切開電極53に対して高周波電流を供給するための導電性部材である。給電ワイヤ54の遠位端54aは切開電極53に固定されている。給電ワイヤ54の近位端54bは処置具操作部55に配されている。給電ワイヤ54の近位端54bは、後述するスライダ58に固定されている。給電ワイヤ54は、スライダ58の操作によってシース52内を進退動作される。
【0055】
処置具操作部55は、
図1に示すように、シース52の近位端52bに固定された棒状の操作部本体56と、操作部本体56に対して操作部本体56の長手方向にスライド可能に設けられたスライダ58とを備えている。
【0056】
操作部本体56の近位端56bは、指掛け用のリング57を備えている。
【0057】
スライダ58は、操作部本体56の長手方向に進退移動可能となるように操作部本体56に連結されている。スライダ58は、給電ワイヤ54の近位端54に固定されたコネクタ59と、指掛け用のリング60とを備えている。
【0058】
スライダ58に設けられたコネクタ59は、不図示の高周波電源装置に接続可能である。高周波電源装置が発する高周波電流は、高周波電源装置からコネクタ59(
図1参照)および給電ワイヤ54(
図7参照)を通じて切開電極53(
図7参照)へと通電される。
【0059】
操作部本体56に設けられたリング57とスライダ58に設けられたリング60との各々に操作者が指をかけて手を開閉動作させることにより、操作部本体56に対してスライダ58を進退移動させることができる。
【0060】
次に、本実施形態のESD処置システム1の作用について説明する。
図8から
図10は、ESD処置システム1(内視鏡処置システム)の使用時における内視鏡画像の一例を示す模式図である。
以下では、本実施形態のESD処置システム1を用いて体腔内の粘膜切除を行なう際の動作を例示する。
【0061】
ESD処置システム1の使用前に、高周波ナイフ50の対極板が患者に装着される。さらに、ESD処置システム1の使用前に、本実施形態の内視鏡用粘膜挙上具30の筒部32が挿入部11の遠位端11aに取り付けられ、必要に応じてシース部43が可撓管部18に取り付けられる。
【0062】
図1に示すESD処置システム1に内視鏡用粘膜挙上具30が取り付けられた状態では、内視鏡装置10の体内への挿入前に、ワイヤ操作部44の第一スライダ47及び第二スライダ48が近位側へ移動される。これにより、第一U字部38及び第二U字部41の各遠位端は筒部32の遠位端面にほぼ接する程度まで筒部32に近接した状態(たとえば
図3参照)となる。すなわち、第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40は、それぞれ第一貫通孔部34及び第二貫通孔部35内に収納される。第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40がそれぞれ第一貫通孔部34及び第二貫通孔部35内に収納された状態は、筒部32を介して見たときの内視鏡装置10による視野が第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40により妨げられない位置まで第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40が退避した状態である。
【0063】
図1に示すESD処置システム1の操作者は、公知の手技により、内視鏡装置10の挿入部11の遠位端11aをたとえば口から消化管内へと導入し、処置対象部位まで挿入部11の遠位端11aを案内する。このとき、必要に応じてアングルノブ25を操作して湾曲部17を湾曲させながら、切除対象部位である病変粘膜部分P1が内視鏡装置10の視野に入るように、挿入部11の遠位端11aの位置を調整する。
【0064】
患者に対する挿入部11の遠位端11aの位置を操作者が保持した状態で、操作者は、
図1に示す内視鏡装置10の鉗子栓28および処置具チャンネル19を通じて、不図示の注射針を消化管内に導入する。消化管内に導入された注射針を用いて、操作者は、病変粘膜部分P1の粘膜下層に生理食塩水を注入して、病変粘膜部分P1を隆起させる。病変粘膜部分P1が隆起したら、操作者は、注射針を処置具チャンネル19から引き抜く。
【0065】
次に、操作者は、
図1に示すように、処置具チャンネル19に高周波ナイフ50を挿入する。高周波ナイフ50は、シース52内に切開電極53が収容された状態で準備されている。また、高周波ナイフ50は、高周波ナイフ50のコネクタ59が高周波電源装置に接続された状態で準備されている。
【0066】
操作者は、高周波ナイフ50の処置具挿入部51を、鉗子栓28を通じて処置具チャンネル19内に導入する。操作者は、挿入部11の遠位端11aから処置具挿入部51が突出したところで処置具挿入部51を停止させる。
【0067】
図8に示すように、内視鏡装置10の観察ユニット13(
図1参照)を用いて取得された内視鏡画像により、シース52の遠位端52aが配された状態が、第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40に遮られることなく視認可能である。
【0068】
操作者は、
図1に示す処置具操作部55のスライダ58を操作部本体56に対して移動させ、高周波ナイフ50のシース52から、
図8に示すように切開電極53を突出させる。必要に応じて、操作者は、
図1に示す内視鏡装置10の湾曲部17を湾曲動作させることによって内視鏡装置10の遠位硬質部12を移動させ、切開電極53の位置が切除予定位置に達するように位置調整を行う。続いて、操作者による不図示のスイッチ操作によって高周波電源装置に高周波電流を操作者が発生させ、コネクタ59(
図1参照)および給電ワイヤ54(
図8参照)を通じて切開電極53に高周波電流を通電させる。さらに、操作者は、高周波電流が通電された状態の切開電極53を切除予定位置の組織に接触させて、
図8に示すように、所定の切開予定線に沿って組織を切開する。
【0069】
これにより、
図8に示すように、病変粘膜部分P1の粘膜層P2に開口P3が形成される。開口P3の大きさは特に限定されない。たとえば、開口P3の形成により病変粘膜部分P1が全周に亘って切開されるように開口P3が形成されてもよい。この場合、開口P3を形成する過程における切開予定位置を視認しやすくする目的で本実施形態の内視鏡用粘膜挙上具30を利用してもよい。
【0070】
開口P3が形成された後、操作者は、切開電極53をシース52内に収容し、シース52を
図1に示す処置具チャンネル19内に引き戻す。
【0071】
続いて、操作者は、
図1及び
図6に示す第一スライダ47をワイヤ操作部44の遠位側へ移動させることにより、筒部32の第一貫通孔部34の遠位端から第一ワイヤ37の第一U字部38を突出させる。
図1及び
図9に示すように、第一U字部38は、キャップ31の中心線L1に対して傾斜した角度を有して筒部32の遠位端から突出される。
【0072】
操作者は、第一U字部38の遠位端が開口P3に挿入されるように、内視鏡装置10の挿入部11を移動させる(
図9参照)。
【0073】
これにより、粘膜下層P5と筋層P6との間に第一U字部38がその遠位端から導入される。このとき、第一U字部38は、開口P3へと挿入されるにしたがって粘膜下層P5を筋層P6に対して漸次離間させるように粘膜下層P5を筋層P6に対して移動させる。これにより、粘膜下層P5と筋層P6との間が内視鏡装置10(
図1参照)によって好適に観察可能となる。粘膜下層P5と筋層P6との間が内視鏡装置10によって好適に観察可能であると、病変粘膜部分P1を切除するための粘膜層P2の切開予定位置が見やすい。操作者は、粘膜下層P5と筋層P6との隙間から切開予定位置を内視鏡画像により把握しながら、切開予定位置が良く見える位置において切開予定位置に沿って切開を行う。さらに、操作者は、粘膜下層P5と筋層P6との隙間において、次に切開をするべき予定位置が良く見えるところまで内視鏡用粘膜挙上具30を移動させ、粘膜層P2の切開を行う。操作者は、粘膜層P2の切開と内視鏡用粘膜挙上具30の移動とを繰り返すことにより、開口P3を徐々に広げることで、開口P3を大きく、深くする。
【0074】
第一U字部38が開口P3からさらに挿入されると、キャップ31の筒部32が開口P3に挿入される。キャップ31の筒部32が開口P3に挿入された後、操作者は、
図6に示す第二スライダ48をワイヤ操作部44の遠位側へと移動させ、
図10に示すように、第二ワイヤ40を筒部32の第二貫通孔部35から遠位側へと突出させる。第二ワイヤ40の第二U字部41は、筒部32の中心線(キャップ31の中心線L1,
図1参照)と平行な方向に沿って遠位側へ向かって移動することにより、第一U字部38によって押圧されていた粘膜下層P5を、筋層P6からさらに離間するように移動させる。これにより、粘膜下層P5と筋層P6との間にさらに大きな空間が生じる。必要に応じて、操作者は、第一U字部38を近位側へ引き戻して、内視鏡装置10の視野を遮る第一ワイヤ37を内視鏡装置10の視野外まで移動させてもよい。
図10に示すように、第二U字部41によって粘膜下層P5と筋層P6との間に空間が生じている状態で、操作者は、高周波ナイフ50を再び処置具チャンネル19(
図1参照)から突出させる。操作者は、切開電極53をシース52から突出させたのちに切開電極53に高周波電流を通電させて病変粘膜部分P1を切除する。
【0075】
病変粘膜部分P1の切除の終了後、操作者は、高周波ナイフ50及び内視鏡装置10を消化管から抜去する。内視鏡装置10の挿入部11に取り付けられた内視鏡用粘膜挙上具30は、内視鏡装置10の抜去によって内視鏡装置10とともに消化管から抜去される。
【0076】
以上に説明したように、本実施形態に係るESD処置システム1の内視鏡用粘膜挙上具30は、キャップ31の中心線L1に向かうように筒部32の外壁部分から傾斜して延びる第一U字部38を有する第一ワイヤ37によって、粘膜層P2に形成された開口P3に容易に第一U字部38の遠位端を挿入することができる。つまり、第一U字部38は、内視鏡用粘膜挙上具30が内視鏡装置10の挿入部11の遠位端11aに取り付けられた状態で、挿入部11の遠位端11aの外周面から挿入部11の中心線に近づく方向に傾斜して突出し、内視鏡装置10の視野の中央近傍にて開口P3に挿入可能である。
【0077】
また、内視鏡用粘膜挙上具30には、第一U字部38に対して曲率半径が大きな第二U字部41が設けられているので、第一U字部38によって粘膜下層P5が筋層P6から離間した状態から、さらに広い領域において粘膜下層P5を筋層P6から離間した状態となるように粘膜下層P5を第二U字部41によって移動させることができる。
【0078】
このように、本実施形態に係るESD処置システム1の内視鏡用粘膜挙上具30は、粘膜層P2に形成する開口P3を通じてキャップ31を容易に粘膜下層P5と筋層P6との間に潜り込ませやすく、さらに、粘膜下層P5と筋層P6との間に、病変粘膜部分P1の除去のために十分に広い術場(作業空間)を生じさせることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態の変形例を以下に示す。
【0080】
(変形例1)
上記実施形態の第一の変形例について説明する。
図11Aは、本変形例の構成を示す斜視図である。
図11Bは、本変形例の構成を示す平面図である。
図11Cは、本変形例の構成を示す平面図である。
図11Aに示すように、本変形例では、キャップ31の遠位端からさらに遠位側に延びて設けられた一対の突起部70がキャップ31に設けられている。
一対の突起部70は、キャップ31の中心線L1を間に挟んで互いに離間して配された第一突起71及び第二突起72を有する。第一突起71及び第二突起72は、いずれも、遠位側に行くに従って漸次細くなるように形成されている。
なお、一対の突起部70が設けられていることは必須ではない。
また、一対の突起部70は、内視鏡装置10の挿入時に患者の組織に対する侵襲性を低く抑える目的で、
図11Bに示すように内視鏡装置10の挿入部11の径方向内側へ向かって一対の突起部70の遠位側が湾曲していたり、
図11Cに示すように一対の突起部70の遠位端の角が丸く加工されていたりしていてもよい。
【0081】
本変形例では、一対の突起部70における第一突起71及び第二突起72の遠位端が、粘膜下層P5と筋層P6との間(
図10参照)に挿入可能である。これにより、第一突起71及び第二突起72が筋層P6に対して粘膜下層P5を押し上げることができる。その結果、本変形例では、粘膜下層P5と筋層P6との間に配された挙上ワイヤ36が粘膜下層P5または筋層P6に押圧されて湾曲した場合に、粘膜下層P5と筋層P6とが離間した状態となるように、第一突起71及び第二突起72が筋層P6に対して粘膜下層P5を支えることができる。
本変形例では、第一突起71と第二突起72との間に粘膜下層P5がたるんで入り込もうとするのを第一U字部38が防止するので、粘膜下層P5が第一突起71と第二突起72との間に入り込むことにより視野が遮られることを防ぐことができる。
【0082】
(変形例2)
上記実施形態の第二の変形例について説明する。
図12は本変形例の構成を示す側面図である。
図12に示すように、本変形例では、第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40に対してキャップ31の径方向に対向する位置に、第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40と同様の形状を有する第三ワイヤ80及び第四ワイヤ82が配されている。また、キャップ31には、第三ワイヤ80と第四ワイヤ82とをそれぞれ案内するための第二案内部84(不図示)が形成されている。第三ワイヤ80及び第四ワイヤ82は、第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40と同様に所定の形状への復元力が高い材質であることが好ましい。たとえば、第三ワイヤ80及び第四ワイヤ82は、超弾性合金、たとえばNiTi合金からなる。
【0083】
第二案内部84は、キャップ31の中心線L1を対称軸として上記実施形態の第一案内部33に対して対称形である。
さらに、ワイヤ操作部44は、第三ワイヤ80及び第四ワイヤ82をそれぞれ操作するための各スライダを有する。
【0084】
第三ワイヤ80は、キャップ31の中心線L1を対称軸として第一ワイヤ37に対して対称形である。第三ワイヤ80は、第一ワイヤ37の第一U字部38と同様の形状をなすU字部(第三U字部81)を有している。
第四ワイヤ82は、キャップ31の中心線L1を対称軸として第二ワイヤ40に対して対称形である。第四ワイヤ82は、第二ワイヤ40の第二U字部41と同様の形状をなすU字部(第四U字部83)を有している。
【0085】
図13及び
図14は、本変形例における第一ワイヤ37及び第三ワイヤ80の作用を示す図である。
図15及び
図16は、本変形例における第二ワイヤ40及び第四ワイヤ82の作用を示す図である。
本変形例では、
図13に示すように第一ワイヤ37と第三ワイヤ80とをキャップ31から突出させて用いた場合、
図14に示すように開口P3にキャップ31の遠位部分を潜り込ませ始めるときに容易に第一ワイヤ37と第三ワイヤ80とを粘膜下層P5と筋層P6との隙間に挿入できる。
【0086】
キャップ31の遠位部分が粘膜下層P5と筋層P6との間に挿入され、切開を進めて粘膜下層P5と筋層P6との間に潜り込んだ後、
図15に示すように、操作者が第一ワイヤ37と第三ワイヤ80とを収納し、第二ワイヤ40と第四ワイヤ82とを遠位側へと突出させる。第二ワイヤ40と第四ワイヤ82とがキャップ31の遠位端から遠位側に突出している状態では、
図16に示すように、第二U字部41の遠位端と第四U字部83の遠位端とが粘膜下層P5と筋層P6とを押し広げる。このため、第一ワイヤ37と第三ワイヤ80とを用いて粘膜下層P5と筋層P6とを広げる場合と比較して、本変形例では粘膜下層P5と筋層P6とをより広く広げることができる。
本変形例においても、上記変形例1と同様の効果を奏する。また、第三U字部81は、筋層P6が内視鏡装置10の視野を遮るほどに入り込むのを防ぐことができる。
【0087】
(変形例3)
次に、上記実施形態の第三の変形例について説明する。
図17は、本変形例の構成を示す側面図である。
図18は、本変形例における他の構成例を示す側面図である。
図19は、本変形例におけるさらに他の構成例を示す斜視図である。
【0088】
図17に示すように、本変形例では、第1実施形態で説明したキャップ31に、上記第2の変形例にて説明した第四ワイヤ80を通すための案内部(貫通孔)が形成されている。
本変形例では、第四ワイヤ80を用いて、第1実施形態と比較してさらに広く粘膜下層P5と筋層P6とを押し広げられる。
【0089】
また、
図18に示すように、本変形例において、上記の第一の変形例で説明した一対の突起部70と同様の突起部73を有していてもよい。
【0090】
また、
図19に示すように、第四ワイヤ80を備えることに代えて、正面視(キャップ31の中心線L1方向から見た場合)で円弧状をなし側面視(キャップ31の中心線L1に直交する方向から見た場合)でキャップ31の中心線に交差する斜面を有する突起部74を有していてもよい。
本変形例では、内視鏡装置10の処置具チャンネルの配置に応じて広い術場が求められている場合に好適な広さの術場を確保することができる。
【0091】
(変形例4)
次に、上記実施形態の第四の変形例について説明する。
図20は、本変形例の構成を示す斜視図である。
図20に示すように、本変形例では、第一ワイヤ37が、第一U字部38に繋がり近位側へ延びる粘膜支持部85を有している。また、キャップ31には、粘膜支持部85を通すための貫通孔が形成されている。
第一ワイヤ37の第一近位ワイヤ部39は、キャップ31の近位端とシース部43の遠位端との間において、一本にまとめられている。また、粘膜支持部85の近位端は第一近位ワイヤ部39とともに一本にまとめられている。
【0092】
本変形例では、シース部43において第一近位ワイヤ部39を挿通する第一シース部43aは、第一近位ワイヤ部39が一本にまとめられていることに対応して1つの貫通孔を有する。
本変形例では、第一ワイヤ37がU字状をなしている領域の内側に粘膜下層P5(
図9参照)が落ち込もうとする場合に粘膜支持部85が粘膜下層P5を支える。このため、粘膜下層P5と筋層P6との間に広い術場及び良好な視野を生じさせることができる。
本変形例では、粘膜下層P5が粘膜支持部85によって支持されるので、粘膜下層P5が第一U字部38を構成するワイヤの隙間に入り込みにくく、内視鏡装置10による視野が広く確保される。
【0093】
(変形例5)
次に、上記実施形態の第五の変形例について説明する。
図21は、本変形例の構成を示す平面図である。
図22は、本変形例におけるシース部及び変換部を平面視においてその中心線を通る断面で切断して示す断面図である。
図23は、
図21のXXIII-XXIII線における断面図である。
図24は、
図21のXXIV-XXIV線における断面図である。
図25は、本変形例における操作部の構成を一部断面で示す斜視図である。
図26は、本変形例の他の構成例を示す図で、操作部を一部断面で示す平面図である。
【0094】
図21から
図24に示すように、本変形例では、2本の第一近位ワイヤ部39を1本にまとめ、2本の第二近位ワイヤ部42を1本にまとめる変換部90をシース部43が有する。
【0095】
変換部90は、シース部43の中間部に配されている。変換部90は、筒体91と、第一コネクタ92と、第二コネクタ94とを有する。筒体91は、シース部43の中間部に介在されている。第一コネクタ92は、第一近位ワイヤ部39を後述する第一連結ワイヤ部93に接続する。第二コネクタ94は、第二近位ワイヤ部42を後述する第二連結ワイヤ部95に接続する。
【0096】
図25に示すように、第一連結ワイヤ部93及び第二連結ワイヤ部95は、シース部43において変換部90の近位側に位置する領域の内部を通じて操作部44まで延びている。シース部43のうち変換部90と操作部44との間の領域は、第一連結ワイヤ部93及び第二連結ワイヤ部95の数に対応したダブルルーメンチューブとなっている。
操作部44において、第一連結ワイヤ部93の近位端は第一スライダ47に固定され、第二連結ワイヤ部95の近位端は第二スライダ48に固定されている。
【0097】
本変形例では、操作部44において第一ワイヤ37を操作するための力量は、第一スライダ47から第一連結ワイヤ部93を介して第一ワイヤ37に伝わる。また、操作部44において第二ワイヤ40を操作するための力量は、第二スライダ48から第二連結ワイヤ部94を介して第二ワイヤ40に伝わる。
本変形例では、4本のワイヤをシース部43の遠位端から近位端まで引き回す場合と比較して、変換部90より近位側の領域ではシース部43を細径化することができる。
さらに、本変形例では、4本のワイヤをシース部43の遠位端から近位端まで引き回す場合と比較して、シース部43の可撓性の向上が見込まれる。
なお、
図26に示すように、変換部90が操作部44に設けられていてもよい。
【0098】
(変形例6)
次に、上記実施形態の第六の変形例について説明する。
図27は、本変形例の構成を示す平面図である。
図28は、
図27におけるXXVII方向から見た正面図である。
図27及び
図28に示すように、本変形例では、第1実施形態で説明した第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40に代えて、J字状をなす第一ワイヤ96及び第二ワイヤ100を有する。第一ワイヤ96及び第二ワイヤ100は、上記実施形態の第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40と同様に所定の形状への復元力が高い材質であることが好ましい。たとえば、第一ワイヤ96及び第二ワイヤ100は、超弾性合金、たとえばNiTi合金からなる。
また、シース部43は、ダブルルーメンチューブである。シース部43は、第一ワイヤ96におけるキャップ31の近位側領域が1本であることと、第二ワイヤ100におけるキャップ31の近位側領域が1本であることとに対応している(
図28参照)。
【0099】
第一ワイヤ96においてJ字をなして折り返された端部のうち遠位側に位置する端(第一ワイヤ96の遠位端97)は、キャップ31に固定されている。第一ワイヤ96は、第1実施形態で説明した第一ワイヤ37の第一U字部38と同様の曲率で180°曲げられた第一U字部98を有する。
【0100】
第二ワイヤ100においてJ字をなして折り返された端部のうち遠位側に位置する端(第二ワイヤ100の遠位端101)は、キャップ31に固定されている。第二ワイヤ100は第1実施形態で説明した第二ワイヤ40の第二U字部41と同様の曲率で180°曲げられた第二U字部102を有する。
【0101】
図28に示すように、キャップ31の正面視(キャップ31の中心線L1方向に見た場合)には、第一ワイヤ96と第二ワイヤ100との位置関係は第1実施形態と同様である。
【0102】
本変形例では、第一ワイヤ96及び第二ワイヤ100において挿入部11の近位側に向かって延びるそれぞれのワイヤ部分を操作部44(たとえば
図25参照)を用いて操作することができる。このような構成であっても上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記変形例5と同様にシース部43の細径化及び可撓性の向上が見込まれる。
【0103】
(変形例7)
次に、上記実施形態の第七の変形例について説明する。
図29は、本変形例の構成を示す平面図である。
図30は、
図29におけるXXIX方向から見た正面図である。
図31は、
図29におけるXXXI-XXXI線における断面図である。
図32は、
図29におけるXXXII-XXXII線における断面図である。
図33は、
図32におけるXXXIII-XXXIII線における断面図である。
【0104】
図29から
図33に示すように、本変形例では、上記第六の変形例で説明した第一ワイヤ96及び第二ワイヤ100に加えて、
図30に示すキャップ31の中心線L1を中心軸として第一ワイヤ96及び第二ワイヤ100に対して180°回転対称となる位置に、第三ワイヤ104と第四ワイヤ106とを有する。第三ワイヤ104と第四ワイヤ106とは、いずれも、上記第1実施形態で説明した第一ワイヤ37及び第二ワイヤ40と同様に所定の形状への復元力の高い材質であることが好ましい。たとえば、第三ワイヤ104及び第四ワイヤ106は、超弾性合金、たとえばNiTi合金からなる。
【0105】
第三ワイヤ104は、キャップ31の中心線L1を中心軸として第一ワイヤ96に対して180°回転対称であり、第一ワイヤ96の第一U字部98と同様の曲率で180°曲げられた第三U字部105を有する。
【0106】
第四ワイヤ106は、キャップ31の中心線L1を中心軸として第二ワイヤ100に対して180°回転対称であり、第二ワイヤ100の第二U字部102と同様の曲率で180°曲げられた第三U字部107を有する。
【0107】
また、シース部43は、延長チューブ43Aを有する。延長チューブ43Aは、キャップ31の中心線L1を中心軸としてシース部43に対して180°回転対称となる位置まで第三ワイヤ104及び第四ワイヤ106を案内する。延長チューブ43Aは、挿入部11外面に沿ってシース部43の遠位部分を構成し、キャップ31の近位端に固定されている。
また、シース部43は、マルチルーメンチューブである。シース部43の4つのルーメンは、第一ワイヤ96、第二ワイヤ100、第三ワイヤ104、及び第四ワイヤ106がそれぞれ挿通されることに対応している。なお、本実施形態において上記第五の変形例で説明した変換部90が適宜適用されてもよい。
このような構成であっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0108】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。本発明は前述した説明に限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。