(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977943
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
H01M2/10 M
H01M2/10 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-287927(P2011-287927)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137918(P2013-137918A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年11月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】市川 喜章
【審査官】
井原 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−217989(JP,A)
【文献】
特開2011−008954(JP,A)
【文献】
特開2001−023589(JP,A)
【文献】
特開2002−134080(JP,A)
【文献】
特開昭63−010460(JP,A)
【文献】
特開平10−003899(JP,A)
【文献】
特開平10−064492(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0286137(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0066292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池から構成された電源回路と、前記電源回路の一対の遮断用端子を有する回路遮断用コネクタと、前記電源回路の一対の出力用端子を有する出力用コネクタとを備え、
前記出力用コネクタは、前記回路遮断用コネクタに嵌合可能なコネクタ形態とされた電池パックであり、
前記電池パックは、
車両の電源用コネクタに接続されるメイン電池パックと、
前記メイン電池パックに増設されるサブ電池パックと、から構成され、
前記メイン電池パックと前記サブ電池パックの前記回路遮断用コネクタと前記出力用コネクタは、嵌合可能なコネクタ形態に統一されており、
前記メイン電池パックは、該メイン電池パックの対向する面として設置された前面と後面を有し、
前記回路遮断用コネクタは前記後面に配置され、前記出力用コネクタは前記前面に配置され、
前記前面は、凹部を有し、
前記出力用コネクタは、前記一対の出力用端子を収容するハウジングを有し、該ハウジングは前記凹部から前記メイン電池パックの前方前面の方に突出しており、
前記一対の出力用端子の嵌合面は、前記メイン電池パックの前記前面に対向していることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池を収容した電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両には、電池パックが搭載される。電池パックの第1従来例が
図2(a)、(b)に示されている。この電池パック50は、複数の単電池51から構成された電源回路52と、電源回路52の一対の遮断用端子53を有するサービスプラグ用コネクタ54と、電源回路52の一対の出力用端子55と、電源回路52を収容するケース56とを備えている。一対の出力用端子55は、ボルト締め用の端子形態である。出力用端子55は、車両側の電源用端子70にボルト締めによって接続される。
【0003】
サービスプラグ用コネクタ54には、サービスプラググリップ57が装着されている。サービスプラググリップ57を取り外すことにより、電源回路52を遮断することができる。
【0004】
電池パックの第2従来例が
図3(a)、(b)に示されている。この電池パック60は、複数の単電池61から構成された電源回路62と、電源回路62の一対の遮断用端子63を有するサービスプラグ用コネクタ64と、電源回路62の一対の出力用端子65を有する一対の出力用コネクタ66と、電源回路62を収容するケース67とを備えている。出力用コネクタ66は、車両側の一対の電源用端子72を有する一対のコネクタ73に接続される。このコネクタ接続により、出力用端子65と電源用端子72が接続される。
【0005】
サービスプラグ用コネクタ64には、サービスプラググリップ68が装着されている。サービスプラググリップ68を取り外すことにより、電源回路62を遮断することができる。
【0006】
しかし、前記各従来例は、電池パック50,60の増設について配慮されていない。
【0007】
一方、電池容量の増大要請等に対処するため、電池パックの増設を行うことができる電池モジュールが従来より提案されている(特許文献1参照)。この第3従来例に係る電池モジュール80は、
図4及び
図5に示すように、メイン電池パック81とサブ電池パック90の二種類の電池パックから構成されている。メイン電池パック81は、複数の単電池82から構成された電源回路83と、電源回路83の一対の出力用端子84と、電源回路83への増設を行う複数の増設用端子85とを備えている。電源回路83は、ケース86内に収容されている。ケース86の両側面側には、凹状外壁部86aが設けられている。この凹状外壁部86aの表面に増設用端子85が設けられている。
【0008】
サブ電池パック90は、複数の単電池91から構成された増設用電源回路92と、増設用電源回路92の複数の増設用端子(出力用端子)93とを備えている。増設用電源回路92は、ケース94内に収容されている。ケース94の一方の側面側には凸状外壁部94aが、他方の側面側には凹状外壁部94bがそれぞれ設けられている。凸状外壁部84aと凹状外壁部94bに増設用端子93が設けられている。
【0009】
メイン電離パック81の凹状外壁部86aにサブ電池パック90の凸状外壁部94aを嵌合すると、メイン電池パック81とサブ電池パック90の双方の増設用端子85,93が接続される。又、サブ電池パック90の凹状外壁部94bに他のサブ電池パック90の凸状外壁部94aを嵌合すると、双方のサブ電池パック90,90間の増設用端子93,93間が接続される。このようにしてサブ電池パック90を増設できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−66093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記第3従来例では、サブ電池パック90を増設するには、ケース86,94の凹状外壁部86a(又は94b)と凸状外壁部94a間を嵌合させる必要があるため、サブ電池パック90の増設作業が面倒である。又、増設用端子85,93は、ケース86,94の凹状外壁部86a(又は94b)や凸状外壁部94aに露出されているため、増設作業時にショート事故を起こさないように注意して行う必要がある。電池パック81,90の取外し作業でも同様である。
【0012】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、電池パックの増設・取外し作業が容易に、且つ、安全に行うことができる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数の単電池から構成された電源回路と、前記電源回路の
一対の遮断用端子を有する回路遮断用コネクタと、前記電源回路の
一対の出力用端子を有する出力用コネクタとを備え、前記出力用コネクタは、前記回路遮断用コネクタに嵌合可能なコネクタ形態とされた電池パックであり、前記電池パックは、車両の電源用コネクタに接続されるメイン電池パックと、前記メイン電池パックに増設されるサブ電池パックと、から構成され、前記メイン電池パックと前記サブ電池パックの前記回路遮断用コネクタと前記出力用コネクタは、嵌合可能なコネクタ形態に統一されて
おり、前記メイン電池パックは、該メイン電池パックの対向する面として設置された前面と後面を有し、前記回路遮断用コネクタは前記後面に配置され、前記出力用コネクタは前記前面に配置され、前記前面は、凹部を有し、前記出力用コネクタは、前記一対の出力用端子を収容するハウジングを有し、該ハウジングは前記凹部から前記メイン電池パックの前方前面の方に突出しており、前記一対の出力用端子の嵌合面は、前記メイン電池パックの前記前面に対向していることを特徴とする電池パックである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池パックの増設・取り外しは、回路遮断用コネクタと出力用コネクタ間を接続したり、取り外したりすることで行うことができる。従って、電池パックの増設・取外し作業が容易に、且つ、安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を示し、(a)はメイン電池パックにサブ電池パックを増設する過程を説明する斜視図、(b)は、メイン電池パックにサブ電池パックを増設した場合の回路図である。
【
図2】第1従来例を示し、(a)は電池パックの斜視図、(b)は電池パックの回路図である。
【
図3】第2従来例を示し、(a)は電池パックの斜視図、(b)は電池パックの回路図である。
【
図4】第3従来例を示し、電池モジュールの増設前の斜視図である。
【
図5】第3従来例を示し、(a)はメイン電池パックの回路図、(b)はサブ電池パックの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1(a)、(b)は本発明の一実施形態を示す。
図1(a)、(b)に示すように、メイン電池パック1は、複数の単電池2から構成された電源回路3と、電源回路3の一対の遮断用端子4を有する回路遮断用コネクタであるサービスプラグ用コネクタ5と、電源回路3の一対の出力用端子6を有する出力用コネクタ7と、電源回路3を収容するケース8とを備えている。
【0019】
電源回路3は、複数の単電池2を全て直列接続して構成されている。
【0020】
サービスプラグ用コネクタ5は、ケース8の背面のコネクタ開口穴8a内に配置されている。サービスプラグ用コネクタ5は、一対の遮断用端子4を内部に収容するコネクタハウジング5aを有する。サービスプラグ用コネクタ5には、サブ電池パック10を増設しない場合には、サービスプラググリップ9が装着されている。サービスプラググリップ9は、互いに導通している一対の短絡端子9aを有する。サービスプラググリップ9の装着時には、一対の遮断用端子4間が一対の短絡端子9aを介して導通し、電源回路3が閉状態とされる。サービスプラググリップ9の非装着時には、一対の遮断用端子4間が非導通状態となり、電源回路3が遮断される。
【0021】
一対の出力用端子6は、電源回路3の総±端子である。出力用コネクタ7は、ケース8の前面の凹部8bに配置されている。出力用コネクタ7は、一対の出力用端子6を内部に収容するコネクタハウジング7aを有する。出力用コネクタ7は、サービスプラグ用コネクタ5に嵌合可能なコネクタ形態である。出力用コネクタ7は、車両の電源用端子30を有する電源用コネクタ31にコネクタ接続される。つまり、車両の電源用コネクタ31は、サービスプラグ用コネクタ5と同一構造に構成されている。車両の電源用端子30は、インバータ回路に接続されている。
【0022】
サブ電池パック10は、複数の単電池12から構成された電源回路13と、電源回路13の一対の遮断用端子14を有する回路遮断用コネクタであるサービスプラグ用コネクタ15と、電源回路13の一対の出力用端子である増設用端子16を有する出力用コネクタである増設用コネクタ17と、電源回路13を収容するケース18とを備えている。
【0023】
電源回路13は、複数の単電池12を全て直列接続して構成されている。
【0024】
サービスプラグ用コネクタ15は、ケース18の背面のコネクタ開口穴18a内に配置されている。サービスプラグ用コネクタ15は、一対の遮断用端子14と、この一対の遮断用端子14を内部に収容するコネクタハウジング15aとを有する。サービスプラグ用コネクタ15には、別のサブ電池パックを増設しない場合には、サービスプラググリップ19が装着されている。サービスプラググリップ19は、互いに導通している一対の短絡端子19aを有する。サービスプラググリップ19の装着時には、一対の遮断用端子14間が一対の短絡端子14を介して導通し、電源回路13が閉状態とされる。サービスプラググリップ19の非装着時には、一対の遮断用端子14間が非導通状態となり、電源回路13が遮断される。
【0025】
増設用コネクタ17は、ケース18の前面側に配置されている。増設用コネクタ17は、一対の増設用端子16と、この一対の増設用端子16を内部に収容するコネクタハウジング17aとを有する。増設用コネクタ17は、サービスプラグ用コネクタ15に嵌合可能なコネクタ形態である。つまり、メイン電池パック1とサブ電池パック10のサービスプラグ用コネクタ5,15と出力用コネクタ7(増設用コネクタ17)は、コネクタ形態が統一されて同じである。
【0026】
次に、メイン電池パック1の車両側への接続、及び、サブ電池パック10の増設作業を説明する。車両の電源用コネクタ31にメイン電池パック1の出力用コネクタ7を嵌合する。これで、メイン電池パック1の接続が完了する。
【0027】
サブ電池パック10を増設する場合には、メイン電池パック1のサービスプラググリップ9を取り外す。次に、メイン電池パック1のサービスプラグ用コネクタ5にサブ電池パック10の増設用コネクタ17を嵌合する。サブ電池パック10のサービスプラグ用コネクタ15にサービスプラググリップ19が装着されていない場合には、メイン電池パック1から取り外したサービスプラググリップ9をサブ電池パック10のサービスプラグ用コネクタ15に装着する。1台のサブ電池パック10を増設する場合には、これで完了する。更にサブ電池パック10を増設する場合には、上記した増設作業を繰り返せば良い。
【0028】
また、サブ電池パック10等の取り外しは、上記と逆の作業を行えば良い。
【0029】
以上説明したように、サブ電池パック10は、電源回路13の一対の遮断用端子14を有するサービスプラグ用コネクタ15と、電源回路13の一対の増設用端子16を有する増設用コネクタ17とを備え、増設用コネクタ17は、サービスプラグ用コネクタ15に嵌合可能なコネクタ形態である。従って、サブ電池パック10の増設・取り外しは、サービスプラグ用コネクタ5(15)と増設用コネクタ17間を接続したり、取り外したりすることで行うことができる。以上より、電池パック1,10の増設・取外し作業がコネクタ接続、コネクタ取り外しのため、容易に、且つ、安全に行うことができる。
【0030】
車両の電源用コネクタ31に接続されるメイン電池パック1と、メイン電池パック1に増設されるサブ電池パック10にあって、メイン電池パック1とサブ電池パック10のサービスプラグ用コネクタ5と増設用コネクタ17(出力用コネクタ)は、嵌合可能なコネクタ形態に統一されている。具体的には、車両の電源用コネクタ31、メイン電池パック1及びサブ電池パック10の双方のサービスプラグ用コネクタ5,15は、同一構造のコネクタ形態(メスコネクタハウジング)であり、メイン電池パック1の出力用コネクタ7及びサブ電池パック10の増設用コネクタ17は、同一構造のコネクタ形態(オスコネクタハウジング)である。従って、車両の電源系接続で使用されるコネクタ形態が雄雌一種類とされるため、容量の異なる電池パック1,10への交換を容易に行える。
【符号の説明】
【0031】
1 メイン電池パック(電池パック)
2,12 単電池
3,13 電源回路
4,14 遮断用端子
5,15 サービスプラグ用コネクタ(回路遮断用コネクタ)
6 出力用端子
7 出力用コネクタ
10 サブ電池パック(電池パック)
16 増設用端子(出力用端子)
17 増設用コネクタ(出力用コネクタ)
31 車両の電源用コネクタ