(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凝縮器からの冷媒液が膨張弁を通過して気液二相流となった冷媒を蒸発器へ送られる冷媒液と圧縮機の中間圧部へ送られる冷媒ガスとに分離する冷凍機のエコノマイザであって、前記気液二相流冷媒を流入させる流入部と、前記流入部から流入した冷媒を旋回させることにより冷媒液と冷媒ガスに分離する遠心分離部と、分離された冷媒ガスを流出させる冷媒ガス流出部と、前記遠心分離部で分離された冷媒液の旋回を抑制する旋回抑制部と、分離された冷媒液を流出させる冷媒液流出部と、を備え、
前記旋回抑制部には、冷媒液の旋回方向と交差するように冷媒液旋回抑制板が配置され、
前記遠心分離部と前記旋回抑制部との間には、仕切り板が配置されていることを特徴とするエコノマイザ。
請求項1に記載のエコノマイザにおいて、冷媒液流出部の断面積は、前記冷媒液流出部から流出する前記冷媒液の質量流量を前記流入部から流入する前記気液二相流冷媒の質量流量で除した値を流入部の冷媒流れ方向に直交する断面積に乗じた値以上の大きさに設定されることを特徴とするエコノマイザ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について添付図面に基づいて詳細に説明する。本実施例は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを基本原理とした多段式(具体的には、二段式の)ターボ冷凍機に関するものである。
図1は本実施例に係るターボ冷凍機の構成を、
図2はp−h線図に基づいた冷凍サイクル線図を模式的に示したものである。
【0012】
このターボ冷凍機は、
図1のような二段遠心圧縮機を備えるものであり、以下の原理によって作動する。
図2に示すように、状態点S9において湿り蒸気である冷媒は蒸発器5にて被冷却物より熱を奪い状態点S1の飽和蒸気となる。飽和蒸気に状態変化した冷媒は遠心圧縮機1の一段目で断熱圧縮され内部エネルギーが増大し、過熱蒸気の状態点S2へ昇圧される。状態点S2における冷媒は一次膨張弁7で絞り膨張により発生し、エコノマイザ4にて分離されたフラッシュ蒸気(冷媒ガス)を取り入れ、状態点S3に至る。状態点S3の蒸気は圧縮機二段目によって圧力P4まで昇圧され更なる過熱度を持つ状態点S4となる。
【0013】
その後冷媒は凝縮器2を通過する過程で、輸送した熱量を冷却水へ受け渡し、冷却され、乾き飽和蒸気、湿り蒸気、飽和液と状態変化を経たのち、過冷却器3を経て、過冷却液である状態点S5へと達する。過冷却液となった冷媒は一次膨張弁7を通過し、二相流状態のS6でエコノマイザ4に流入する。エコノマイザ4では、一次膨張弁7での絞り膨張にて中間圧力Pecoまで一旦減圧された際に発生したフラッシュ蒸気(状態点S7)と、冷媒液(状態点S8)とに分離される。このうち冷媒液のみが蒸発圧力P1まで二次膨張弁8で絞り膨張され、湿り蒸気に戻り(状態点S9)、再度同様のサイクルを繰り返す。
【0014】
状態点S6、S7、S8でのエンタルピをh6、h7、h8とすると、エコノマイザ4内部での気液二相流冷媒の流量割合はエンタルピの比{(h7−h6)/(h7−h8)}となる。この割合は圧縮比や過冷却度で変化するが、大部分が液である。この一例では、液の割合は85%と冷媒全体の大部分を占めており、一部分(15%)はフラッシュして蒸発している状態となっている。エコノマイザ4では、この大部分の冷媒液をフラッシュ蒸気を混入させずに、蒸発器に送ることが重要な機能であり、更にフラッシュ蒸気を分離し、圧縮機に送る役割を果たしている。
【0015】
ここで、遠心分離方式のエコノマイザ4の特異性について説明する。気液分離器で互いに分離される二つの成分は、気液分離器が組み込まれる装置の本質的な機能に照らして優先順位を付けることができる。便宜上この優先順位の高い方を主たる成分とし、優先順位の低い方を従たる成分とするならば、一般的な気液分離器は、気液分離器の上方から流出する気体が主たる成分であり、下方から流出する液体が従たる成分となっている。例えば冷媒ガスと冷凍機油とを分離する油分離器の場合には、主たる成分が気体の冷媒ガスであり、従たる成分が液体の冷凍機油である。また、圧縮機の上流側に配置される気液分離器の場合には、圧縮機に液冷媒が吸入されるのを防止するのが本質的な機能であることから、主たる成分が気体の冷媒ガスであり、従たる成分が液体の冷媒液である。そして、このような一般的な気液分離器では、気液分離器の上方から流出する主たる成分について配慮されるが、気液分離器の下方から流出する従たる成分については特に配慮されないものである。一方で、エコノマイザ4は、主たる成分が気液分離器の下方から流出する冷媒液であり、従たる成分が気液分離器の上方から流出する冷媒ガスであり、上述のような一般的な気液分離器とは、主従の関係が逆転したものである。従って、エコノマイザ4は、分離対象が同一物質の二相流体であり、主たる成分としての冷媒液が質量流量基準で圧倒的に多く、気液分離器の下方から良好に流出するようにとの配慮がなされているところが一般的な気液分離器とは異なる点である。
【0016】
図3は、本実施例のエコノマイザ4における構成図の例である。なお、エコノマイザ4はエコノマイザ本体29と、液面検知部104とに大別される。また、エコノマイザ本体29は、液滴除去部101、遠心分離部102、旋回抑制部103に分かれる。
【0017】
エコノマイザ本体29は、外筒15と外筒15の内部に配置される内筒14を有する。外筒15は円筒状の容器であり、二相流冷媒流入部11を溶接等により固定をするための穴が設けられている。外筒15の上下には管板22が溶接等により固定してある。なお、上の管板22にはフラッシュ蒸気が流れる冷媒ガス出口部12用の配管が溶接等により固定してあり、下の管板22には冷媒液が流出する冷媒液出口部13用の配管が溶接等により固定してある。
【0018】
液滴除去部101には、デミスタ16が設置してあり、二枚の固定板20にて上下を固定されている。なお、デミスタ16はステンレス製ワイヤーを不均一に絡ませたシートを積層させたものである。その不均一に絡んだワイヤーで冷媒液滴を捕捉することにより、フラッシュ蒸気内部に存在する微細な液滴を除去する能力を有している。
【0019】
液滴除去部101と遠心分離部102とは、固定板21によって区画される。
【0020】
遠心分離部102では円筒状の内筒14が固定板21にて、中心軸が外筒15の中心軸と一致するように溶接等により固定されている。そして、内筒14の内壁部には十字に組まれた冷媒ガス整流板17が溶接等により固定されている。
【0021】
遠心分離部102の下方には、冷媒液の旋回を抑制する旋回抑制部103が設けられている。
【0022】
旋回抑制部103には、外筒15の内壁に接するように、冷媒液旋回抑制板19が90°間隔(計4枚)に設置してある。遠心分離部102と旋回抑制部103の間には、仕切り板18が溶接等により固定されており、冷媒液旋回抑制板19が支柱の役目を兼ねている。冷媒液旋回抑制板19は、旋回抑制部103の径方向外方から内方に向かって設けられており、具体的には、壁面から径方向中間位置にかけて設けられている。また、旋回抑制部103は、冷媒液液面高さを可及的に平らに維持するために冷媒液を貯留する部分としても機能し、冷媒液出口部13から流出しないようにする役割を果たしている。
【0023】
仕切り板18は、その上方での旋回流がその下方の冷媒液に影響を与えて、冷媒液の旋回を助長したり冷媒液を巻き上げたりすることの無いように空間を仕切るものである。仕切り板18と外筒15の間には隙間18aが設けられており、外筒15の内面に沿って旋回している冷媒液が、旋回抑制部103に流入する。冷媒液旋回抑制板19の上部には、冷媒液流入促進を目的に切り欠き19aが設けられている。
【0024】
また、旋回抑制部103の中央には、冷媒液液面調整空間23が設けられている。旋回抑制部103の内部空間を冷媒液旋回抑制板19で周方向に仕切った場合には、仕切られた各空間によって冷媒液液面高さの不均一が生じ得るが、冷媒液液面調整空間23が存在することにより、この不均一を抑制し、冷媒液が遠心分離部102に再流入するのを防止する効果を有する。また、冷媒液旋回抑制板19が旋回抑制部103中央部の冷媒液出口部13用の配管開口部にかからないように構成しているので、冷媒液の流出抵抗になることがない。
【0025】
液面検知部104は、外筒27と上下の管板26からなり、外筒27には液面検知用センサ28を取付けるための穴27aが空けられている。外筒27の上下には管板26が溶接等で固定してある。
【0026】
液面検知部104の上部と、エコノマイザ本体29の上部(具体的には、液滴除去部101)は、気相連通配管25で接続されており、液面検知部104の下部と、エコノマイザ本体29の下部(具体的には、旋回抑制部103)は液相連通配管24で接続されている。なお、液相連通配管24を接続するために、エコノマイザ本体29の管板22に取付け穴24aと、液面検知部104の管板26に取付け穴24bが空けられている。同様に、気相連通配管25を接続するために、エコノマイザ本体29の管板22に取付け穴25a、液面検知部104の管板26に取付け穴25bが空けられている。
【0027】
次に、二相流冷媒流入部11、冷媒液出口部13における断面積の関係について説明する。冷媒液出口部13の流路断面積は、冷媒液出口部13での質量流量を、二相流冷媒流入部での質量流量で除した値(比率)を、二相流冷媒流入部11の流路断面積に乗じた値以上とする。なお、二相流冷媒流入部11の流路断面積は、流入部の冷媒流れ方向に直交する断面11aの面積であり、冷媒液出口部13の流路断面積は、流出部の冷媒流れ方向に直交する断面の面積である。好ましくは、旋回抑制部103における貯留量が過剰になることを防止するために、冷媒液出口部13の流路断面積が二相流冷媒流入部11の流路断面積以上になるように、余裕を持って配管を選定する。
【0028】
配管の選定の一例を説明すると、冷媒液出口部13から流出する冷媒の質量流量の比率が二相流冷媒流入部11から流入する冷媒の85%として、入口の配管の内径が50mmである場合、出口の配管には内径が46.1mm(=50×√0.85)か、あるいはこれ以上の寸法のものを採用することが好ましい。具体的には、出口の配管には、入口の配管と同径の50mmのものか、あるいはさらに大きい径のものを選定すると良い。
【0029】
次に、エコノマイザ4の作用について、冷媒の流れに沿って説明する。一次膨張弁7からの二相流冷媒の流れは、二相流冷媒流入部11からエコノマイザ4へ流入する。流入した二相流冷媒は外筒15の内壁に沿って旋回流を形成し、遠心分離作用によって中央側を流れる冷媒ガスと壁面側を流れる冷媒液とに分離される。
【0030】
分離された冷媒ガスは、内筒14、冷媒ガス整流板17、デミスタ16の順番で通過する。冷媒ガスは更に冷媒ガス出口部12を経て、遠心圧縮機1の二段目入口へ流入する。
【0031】
分離された冷媒液は、外筒15の内壁に沿って旋回流を形成し仕切り板18下部の旋回抑制部103に流入する。流入した冷媒液は、冷媒液旋回抑制板19に衝突し、旋回流が抑制された状態で冷媒液出口部13を経て、蒸発器5に至る。
【0032】
二相流冷媒流入部11と冷媒液出口部13の流路断面積の比率を、二相流冷媒流入口から流入する二相流冷媒液に対する、分離後における冷媒液の比率に応じた値に設定しているので、出口での管内流速増加による圧力損失増加を防ぎ、流入した二相流冷媒から分離された冷媒液をエコノマイザに過剰に溜めることなく、良好に流すことができるという作用がある。
【0033】
また、液滴除去部101、及び旋回抑制部103各々と連通する液面検知部104を設置し、液面検知用センサ28からの信号にて、二次膨張弁8を動作させることにより、エコノマイザ4内部の冷媒液液面を制御可能としている。
【0034】
次に、エコノマイザ4の効果について気液分離の過程に沿って説明する。一次膨張弁7からの二相流冷媒の流れは、二相流冷媒流入部11からエコノマイザ4へ流入する。流入した二相流冷媒は外筒15の内壁に沿って旋回流を形成し、遠心分離作用にて液滴を若干含んだ冷媒ガスの流れと、冷媒液の流れに分離される。
【0035】
分離された液滴を若干含んだ冷媒ガスは、次に冷媒ガス整流板17を通過し、デミスタ16に流入する。冷媒ガス整流板17は、旋回流によりガスの流れに液滴が同伴するのを防止する効果がある。更にデミスタ16の液滴分離作用により、冷媒ガスに若干含まれた液滴は除去され、冷媒ガスは液滴を含まない状態で冷媒ガス出口部12を経て、遠心圧縮機1の二段目入口へ流入する。分離された冷媒液の流れは、外筒15の内壁に沿って旋回流を形成し、仕切り板18下部に流入する。なお、仕切り板18下部に設置した冷媒液旋回抑制板19の上部に切り欠き形状を配したことにより、仕切り板18下部への冷媒液の流入を促進するとともに、衝撃により飛散した液が仕切り板18上部に流入するのを防止する効果がある。
【0036】
仕切り板18は、冷媒液旋回抑制板19に衝突した冷媒液が仕切り板18の上面に飛散するのを防ぐ効果があり、衝突にて発生した液滴が遠心分離部102の冷媒ガスの旋回流に巻き上げられて液滴除去部101へ浸入し、気液分離性能が低下するのを防止する効果がある。
【0037】
仕切り板18下部に流入した冷媒液は、冷媒液旋回抑制板19にて旋回流が抑制されるので、冷媒液出口部13から流出する冷媒液への冷媒ガスの巻き込みが防止される。また、旋回流の発生を抑制できるため、冷媒液液面高さが中央部では低くなり、壁面近傍ではせり上がることによる不具合を防止することができる。即ち、冷媒液の旋回流を抑制しなければ、旋回流により中央部の冷媒液液面高さが低下し、押込みヘッド不足により冷媒液の排出が悪化するおそれがあり、場合によっては、冷媒液出口部13が冷媒ガスの空間と連通してしまい、冷媒液出口部13から冷媒ガスが流出するおそれがある。仮に旋回抑制部103を設けない場合には、全体での冷媒液液面高さを高くする必要がある。加えて、旋回抑制部103における壁面近傍の冷媒液液面が、仕切り板18より高くなり、遠心分離部102に冷媒液が流入することで、気液分離性能が低下するおそれがある。この点、本実施例では、旋回抑制部103を設けることにより、旋回流を抑制し、冷媒液液面高さの不均一を抑制することにより、気液分離性能を向上できる効果がある。
【0038】
また、冷媒液旋回抑制板19によって周方向に仕切られた各空間にて冷媒液の高さに不均一が生じた場合には、一部の液面が仕切り板18の上部に達し、気液分離性能を低下させるおそれがある。この点、本実施例では、冷媒液旋回抑制板19は旋回抑制部103の中央部までは延びておらず、旋回抑制部103全体の液面の不均一を良好に防止することができるため、延いては、旋回抑制部103における冷媒液が遠心分離部102へ浸入することを防ぐことができる。
【0039】
本実施例では液面検知部104をエコノマイザ本体29と別体で設けることにより、旋回抑制部103での冷媒液液面位置を安定して検出可能とした。検知した冷媒液液面の高さを基に、二次膨張弁8の開閉動作にてエコノマイザ4内部での冷媒液液面を仕切り板18より低い位置に保持し、冷媒液液面が仕切り板18の設置位置よりも高くなることで生じる、気液分離性能の急激な低下を防止する効果がある。
【0040】
冷媒液出口部13での質量流量を二相流冷媒流入部11での質量流量にて除して得られる値(係数)を、二相流冷媒流入部11の流路断面積に乗じた値以上となるように冷媒液出口部13の流路断面積を設定することで、冷媒液出口部13の流動抵抗が極端に大きくなることはないので、流入した二相流冷媒から分離された冷媒液がエコノマイザに過剰に滞留して、冷媒液の液面が上昇することを防止できる。すなわち、遠心分離部102まで、液面が上昇して、気液分離性能を低下することがないので、小型で気液分離性能が高いエコノマイザを提供することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、内筒14内部の冷媒ガス整流板17、冷媒液旋回抑制板19の設置条件は4枚ではなく、3枚以下であってもよく、5枚以上であってもよい。また、90°ずつ均等に配置するものではなく、異なる角度で不均一に配置されていてもよく、内筒の直径の全長にわたって設置されるものであってもよいし、壁面に接触していなくてもよい。
【0042】
また、二相流冷媒流入部11、冷媒液出口部13は既存のJIS配管を用いても良いし、そうではなくても問題ない。例えば、冷媒液出口部13の流路断面積が、冷媒液出口部13での体積流量を二相流冷媒流入部11での質量流量で除した値(比率)を、二相流冷媒流入部11の流路断面積に乗じた値以上であれば、規格外配管等や、縦長楕円形状等の異形配管でもよい。
【0043】
また、液滴除去部に設置されている液滴除去装置は、上記で説明したようなワイヤーシートを積層させた構造でなくてもよい。例えば、隔壁にて液滴除去部に複数の空間を設け、壁面に液滴を付着(捕捉)させる構造でもよい。
【0044】
また、液滴除去部の内部にはデミスタ16や隔壁等の構造物がなく、広い空間により冷媒ガスの流速が下がり、液滴を除去する構造でもよい。あるいは、液滴除去部における気液分離性能が高い場合は、液滴除去部自体がなくてもよい。
【0045】
また、旋回抑制部として広い空間が確保されており、冷媒液液面が確保されている場合、仕切り板18、冷媒液旋回抑制板19、冷媒液液面調整空間23のいずれか、もしくは全てがなくてもよい。
【0046】
また、エコノマイザの外筒は円筒形状であれば、管板22を用いずに円筒上下の端部を絞りにて成形してもよい。
【0047】
また、本実施形態では多段圧縮式のターボ冷凍機を例に説明したが、本発明はこれに限らずスクロール式、スクリュー式、ロータリー式等、様々な圧縮方式の冷凍機に対して適用することが可能である。