特許第5977959号(P5977959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5977959-制振シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977959
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】制振シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20160817BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20160817BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160817BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160817BHJP
   B32B 25/02 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C08L21/00
   F16F15/02 Q
   C08J5/18CEQ
   C08K3/04
   B32B25/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-47748(P2012-47748)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-181155(P2013-181155A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭彦
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−278178(JP,A)
【文献】 特開平10−259854(JP,A)
【文献】 特開2007−063327(JP,A)
【文献】 特開2000−212334(JP,A)
【文献】 国際公開第98/032794(WO,A1)
【文献】 特開2004−027080(JP,A)
【文献】 特開2002−020546(JP,A)
【文献】 特開平10−176083(JP,A)
【文献】 特開2006−021680(JP,A)
【文献】 特開2006−307079(JP,A)
【文献】 特開2009−024046(JP,A)
【文献】 特開2005−239813(JP,A)
【文献】 特開平11−302454(JP,A)
【文献】 特開2009−161659(JP,A)
【文献】 特開2008−247028(JP,A)
【文献】 特開2000−006287(JP,A)
【文献】 特開平05−329973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00−21/02
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム100質量部と、
カーボンブラック30質量部以上とを含有する制振層を備え、
前記ゴムは、ブチルゴムであり、前記ブチルゴムの不飽和度が、0.8〜2.2であり、
前記ゴムの配合割合は、前記制振層に対して、5〜20質量%であり、
前記カーボンブラックは、JIS K6217−1(2008)「第1部:ヨウ素吸着量の求め方(滴定法)」に基づいて測定されるヨウ素吸着量が、30mg/g以上であることを特徴とする、制振シート。
【請求項2】
前記カーボンブラックの配合割合が、前記制振層に対して、7〜30質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の制振シート。
【請求項3】
前記制振層は、厚さ2.0mmにおける、周波数1Hzでの動的粘弾性測定により得られる損失剪断弾性率G″のピークにおける温度として定義されるガラス転移点が、0℃以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の制振シート。
【請求項4】
前記制振シートをステンレス板に貼着した後、23℃で、前記ステンレス板に対して90度で速度300mm/分で剥離したときの90度剥離粘着力が、10N/25mm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の制振シート。
【請求項5】
前記制振層に積層される拘束層
をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の制振シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振シート、詳しくは、各種産業製品に用いられる振動部材に貼着して用いられる制振シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車、鉄道車両、家庭電化機器、事務機器、住宅設備または工作機械などの分野に用いられる各種部品は、その運転時に、振動音を生じ易く、そのため、かかる振動音の発生を防止すべく、例えば、制振シートを部品(振動部材)に貼着することにより、部品の制振性を向上させることが知られている。
【0003】
例えば、40℃程度の温度下において良好な振動減衰特性を得るべく、ブチルゴム100部と炭酸カルシウム1600部とを含有する制振シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−136998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、常温(20℃程度)下および40℃程度の温度下における制振シートの制振性が評価されている。
【0006】
一方、近年、40℃を超える高温において使用される部品(高温部品)、具体的には、モーター、ヒーター、エンジンなどの発熱部品、さらには、常温から高温までの広範囲の温度下で使用される部品などに対して、制振性を向上させることが望まれている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の制振シートでは、上記した常温から高温までの広範囲な温度下において、上記した部品の制振性を十分に向上させることが困難な場合がある。
【0008】
本発明の目的は、常温から高温までの広範囲な温度下における制振性がより一層向上された制振シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の制振シートは、ゴム100質量部と、カーボンブラック30質量部以上とを含有する制振層を備え、前記カーボンブラックは、JIS K6217−1(2008)「第1部:ヨウ素吸着量の求め方(滴定法)」に基づいて測定されるヨウ素吸着量が、30mg/g以上であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の制振シートでは、前記カーボンブラックの配合割合が、前記制振層に対して、7〜30質量%であることが好適である。
【0011】
また、本発明の制振シートでは、前記制振層は、厚さ2.0mmにおける、周波数1Hzでの動的粘弾性測定により得られる損失剪断弾性率G″のピークにおける温度として定義されるガラス転移点が、0℃以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の制振シートでは、前記制振シートをステンレス板に貼着した後、23℃で、前記ステンレス板に対して90度で速度300mm/分で剥離したときの90度剥離粘着力が、10N/25mm以上であることが好適である。
【0013】
また、本発明の制振シートは、前記制振層に積層される拘束層をさらに備えることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の制振シートは、ゴムと、ヨウ素吸着量が特定範囲のカーボンブラックとを特定の配合割合で含有する制振層を備えている。
【0015】
そのため、本発明の制振シートを振動部材に貼着すれば、振動部材を、常温から高温までの広範囲な温度下において使用しても、十分に制振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態である制振シートを、振動部材に貼着する方法を示す説明図であって、(a)は、制振シートを用意して、離型紙を剥がす工程、(b)は、制振シートを振動部材に貼着する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である制振シートを、振動部材に貼着する方法を示す説明図であって、(a)は、制振シートを用意して、離型紙を剥がす工程、(b)は、制振シートを振動部材に貼着する工程を示す。
【0018】
図1(a)において、この制振シート1は、制振層2と、制振層2に積層される拘束層3とを備えている。
【0019】
制振層2は、制振組成物からシート状に形成されている。
【0020】
制振組成物は、ゴムと、カーボンブラックとを含有する。
【0021】
ゴムは、例えば、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ビニルアルキルエーテルゴム、ポリビニルアルコールゴム、ポリビニルピロリドンゴム、ポリアクリルアミドゴム、セルロースゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム、ポリイソブチレンなどの高分子量の固形状または半固形状のゴムが挙げられる。
【0022】
これらゴムは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0023】
これらゴムのなかでは、接着性、制振性を考慮すると、好ましくは、ブチルゴムが挙げられる。
【0024】
ブチルゴムは、イソブテン(イソブチレン)とイソプレンとの共重合により得られる合成ゴムである。
【0025】
ブチルゴムとしては、その不飽和度が、例えば、0.8〜2.2、好ましくは、1.0〜2.0である。
【0026】
ゴムのムーニー粘度(ML1+8、at125℃)は、例えば、25〜90、好ましくは、30〜60である。
【0027】
ゴムの配合割合は、制振組成物に対して、例えば、5〜70質量%、好ましくは、10〜50質量%である。
【0028】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0029】
これらカーボンブラックのなかでは、好ましくは、ファーネスブラックが挙げられる。
【0030】
ファーネスブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEFなどが挙げられる。
【0031】
これらファーネスブラックのなかでは、好ましくは、SAF、ISAF、HAFが挙げられる。
【0032】
カーボンブラックの形状は、特に制限されず、例えば、略球形状、略針形状、略板形状、略チューブ形状などが挙げられる。
【0033】
カーボンブラックの最大長さの平均値(略球形状の場合には、平均粒子径)は、例えば、60nm以下、好ましくは、50nm以下、さらに好ましくは、35nm以下であり、例えば、10nm以上でもある。
【0034】
なお、カーボンブラックの最大長さの平均値は、レーザー散乱法による粒度分布測定により求められる体積基準の算術平均粒子径として算出される。
【0035】
カーボンブラックのヨウ素吸着量は、30mg/g以上、好ましくは、40mg/g以上、さらに好ましくは、60mg/g以上、とりわけ好ましくは、80mg/g以上であり、例えば、500mg/g以下でもある。
【0036】
なお、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K6217−1(2008)「第1部:ヨウ素吸着量の求め方(滴定法)」に基づいて測定される。
【0037】
カーボンブラックのヨウ素吸着量は、カーボンブラックの比表面積と相関関係があり、具体的には、ヨウ素吸着量と、カーボンブラックの比表面積とは比例関係にある。
【0038】
ヨウ素吸着量が上記した下限値より小さいと、カーボンブラックの比表面積を十分に確保することができず、そのため、制振シート1が広範囲の温度にわたって十分な制振性を得ることができない場合がある。
【0039】
これらカーボンブラックは、単独で使用してもよく、あるいは、複数種類を併用することもできる。
【0040】
カーボンブラックの配合割合は、ゴム100質量部に対して、30質量部以上であり、好ましくは、40質量部以上、さらに好ましくは、75質量部以上であり、例えば、200質量部以下でもある。また、カーボンブラックの配合割合は、制振組成物(つまり、制振層2)に対して、例えば、7〜30質量%、好ましくは、10〜25質量%でもある。
【0041】
カーボンブラックの配合割合が、上記した下限値に満たない場合には、十分な制振性を確保できない場合がある。また、カーボンブラックの配合割合が、上記した上限値を超える場合には、制振層2の粘着力が低下し、制振シート1を振動部材5(後述、図1(b)参照。)に確実に貼着できない場合がある。
【0042】
また、制振組成物には、上記成分に加えて、例えば、軟化剤、粘着付与剤、充填剤(カーボンブラックを除く。)、老化防止剤、さらには、例えば、架橋剤、架橋促進剤、発泡剤、滑剤、揺変剤(例えば、モンモリロナイトなど)、油脂類(例えば、動物性油脂、植物性油脂、鉱油など)、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、防カビ剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で含有することもできる。
【0043】
軟化剤は、制振層2の取扱性の観点から、必要により制振組成物に配合され、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどのオイル類、例えば、液状ポリブテンなどの低分子量の液状ゴム、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステルなどエステル類などが挙げられる。
【0044】
これら軟化剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0045】
これら軟化剤のなかでは、好ましくは、液状ポリブテンが挙げられる。
【0046】
液状ポリブテンでは、その40℃における動粘度が、例えば、10〜200000mm/s、好ましくは、1000〜100000mm/sであり、その100℃における動粘度が、例えば、2.0〜4000mm/s、好ましくは、50〜2000mm/sである。
【0047】
軟化剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、10〜150質量部、好ましくは、30〜120質量部である。
【0048】
粘着付与剤は、制振層2の粘着性の観点から、必要により制振組成物に配合され、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、フェノール系樹脂、フェノールホルマリン系樹脂、キシレンホルマリン系樹脂、石油系樹脂(例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂など)などが挙げられる。
【0049】
これら粘着付与剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0050】
これら粘着付与剤のなかでは、好ましくは、石油系樹脂が挙げられる。
【0051】
粘着付与剤の配合割合は、粘着性樹脂100質量部に対して、例えば、5〜150質量部、好ましくは、10〜100質量部である。
【0052】
充填剤は、制振層2の補強性および取扱性の観点から、必要により制振組成物に配合され、難燃剤を含み、例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウムなど)、タルク、マイカ、クレー、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、酸化チタン、ガラス粉、窒化ホウ素、金属粉、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)などが挙げられる。
【0053】
これら充填剤は、単独使用あるいは併用することができる。
【0054】
これら充填剤のなかでは、好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0055】
充填剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、10〜300質量部、好ましくは、25〜200質量部である。
【0056】
老化防止剤としては、例えば、芳香族アミン系(具体的には、4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどの芳香族第二級アミン系など)、フェノール系、イミダゾール系などが挙げられる。
【0057】
これら老化防止剤は、単独使用あるいは併用することができる。
【0058】
これら老化防止剤のなかでは、好ましくは、芳香族アミン系が挙げられる。
【0059】
老化防止剤の配合割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、0.5〜10質量部、好ましくは、1〜5質量部である。
【0060】
なお、添加剤のうち、軟化剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤を制振組成物に含有されることにより、制振層2のガラス転移点を所望の範囲(後述)に設定することができる。
【0061】
軟化剤、粘着付与剤および充填剤の3つの添加剤の配合割合は、例えば、軟化剤100質量部に対して、粘着付与剤50〜150質量部、充填剤50〜150質量部である。
【0062】
そして、制振組成物は、上記した各成分を、上記した配合割合において配合し、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、バンバリーミキサー、押出機などの混練機によって混練して、混練物として調製する。
【0063】
その後、得られた混練物を、例えば、カレンダー成形、押出成形またはプレス成形などによって圧延することにより、制振層2をシート状に形成する(つまり、シート化する。)。
【0064】
これによって、制振層2を形成する。
【0065】
制振層2の厚さは、例えば、0.5〜6mm、好ましくは、0.5〜3mmである。
【0066】
制振層2の厚さが、上記した下限値に満たない場合には、制振性が低い場合がある。また、制振層2の厚さが、上記した上限値を超える場合には、制振性は認められるものの、厚さを増やした効果がほとんど認められない場合がある。
【0067】
また、制振層2は、ガラス転移点が、例えば、0℃以下、好ましくは、−20℃以下、さらに好ましくは、−30℃以下であり、例えば、−70℃以上でもある。
【0068】
なお、ガラス転移点は、使用治具としてパラレルプレートを用い、サンプル厚さ2.0mm、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの測定条件において、動的粘弾性測定装置により測定される損失剪断弾性率G″のピークにおける温度として得られる。
【0069】
制振層2のガラス転移点が、上記した上限値を超える場合には、制振層2の常温での粘着性が低下する場合があり、さらに、制振層2の常温での制振性が低下する場合がある。
【0070】
制振層2の23℃における90度剥離粘着力は、例えば、10N/25mm以上、好ましくは、50N/25mm以上、さらに好ましくは、95N/25mm以上であり、例えば、500N/25mm以下でもある。
【0071】
なお、90度剥離粘着力は、制振層2を幅25mm、長さ100mmに切断してサンプルを作製し、サンプルをステンレス板に貼着した後、23℃で、ステンレス板に対して90度で速度300mm/分で万能引張試験機を用いてサンプルを剥離することにより、測定される。
【0072】
制振層2の90度剥離粘着力が上記した範囲内にあるとき、制振層2は常温で十分な粘着性を有する。
【0073】
また、制振層2の体積抵抗率は、例えば、1×10Ωcmを超過し、好ましくは、5×10Ωcm以上、さらに好ましくは、1×10Ωcm以上であり、例えば、1×1014Ωcm以下でもある。体積抵抗率は、ASTM D991に記載の方法に準拠して測定される。
【0074】
拘束層3は、制振層2を拘束し、制振層2に靱性を付与して強度の向上を図るために、制振層2に積層されている。拘束層3は、シート状をなし、また、軽量および薄膜で、制振層2と密着一体化できる材料から形成され、例えば、ガラスクロス、樹脂含浸ガラスクロス、合成樹脂不織布、金属箔、カーボンファイバー、合成樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0075】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが挙げられる。
【0076】
樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、EVA−塩化ビニル樹脂共重合体などが挙げられる。また、上記した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0077】
合成樹脂不織布としては、例えば、ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、ポリエステル系樹脂不織布などが挙げられる。
【0078】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やスチール箔などが挙げられる。
【0079】
カーボンファイバーは、炭素を主成分とする繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。
【0080】
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムなどのポリエステルフィルムなどが挙げられる。
【0081】
これら拘束層3のなかでは、密着性、強度およびコストを考慮すると、好ましくは、ガラスクロス、金属箔が挙げられる。
【0082】
また、拘束層3の厚さは、例えば、0.05〜2.0mm、好ましくは、0.1〜1.0mmである。
【0083】
制振層2と拘束層3との合計の厚さ(つまり、制振シート1の厚さ)は、例えば、0.55〜8.0mmである。
【0084】
制振シート1を作製するには、制振層2と、拘束層3とを、例えば、圧着または熱圧着などにより貼着する。
【0085】
なお、制振シート1において、制振層2における拘束層3の積層側と反対側の表面に、必要により、公知の離型紙4を貼着することもできる。その場合には、離型紙4は、制振層2をシート化する時に、制振層2に積層される。
【0086】
また、制振シート1は、損失係数が、20℃、40℃および60℃において、例えば、0.05以上、好ましくは、0.10以上、さらに好ましくは、0.15以上であり、例えば、1.00以下でもある。
【0087】
また、制振シート1の損失係数は、80℃において、例えば、0.03以上、好ましくは、0.05以上、さらに好ましくは、0.1以上であり、例えば、1.00以下でもある。
【0088】
また、制振シート1の損失係数は、100℃において、例えば、0.02以上、好ましくは、0.03以上、さらに好ましくは、0.05以上であり、例えば、1.00以下でもある。
【0089】
なお、損失係数は、制振層2を幅10mm、長さ250mmに切断してサンプルを作製し、サンプルを被着体である0.8mm×10mm×250mmのSPCC鋼板に貼着し、損失係数測定装置を用いて、共振点から算出する周波数(例えば、500Hz)における中央加振法により測定される。
【0090】
制振シート1の損失係数が上記した下限値以上である場合には、制振シート1を振動部材5に対して貼着すれば、振動部材5を十分に制振することができる。
【0091】
こうして得られた制振シート1は、例えば、自動車、鉄道車両、家庭電化機器、事務機器、住宅設備または工作機械などの分野に用いられる各種部品に貼着して、その各種部品を制振する。
【0092】
各種部品としては、例えば、40℃を超える高温において使用される部品(高温部品)、例えば、モーター、ヒーター、エンジンなどの発熱部品、さらには、例えば、常温(20℃)から高温(例えば、100℃)までの広範囲の温度下で使用される部品が挙げられる。
【0093】
より具体的には、制振シート1では、制振層2の表面に離型紙4が貼着されている場合には、使用時には、図1(a)の仮想線で示すように、制振層2の表面から離型紙4を剥がして、次いで、図1(b)に示すように、その制振層2の表面を、被着体である部品などの振動部材5に貼着する。これにより、制振シート1は、振動部材5を制振する。
【0094】
制振層2と、振動部材5とは、例えば、熱圧着などにより、貼着することができる。
【0095】
そして、この制振シート1は、ゴムと、ヨウ素吸着量が特定範囲のカーボンブラックとを特定の配合割合で含有する制振層2を備えている。
【0096】
詳しくは、カーボンブラックのヨウ素吸着量が特定範囲にあるので、カーボンブラックの比表面積を十分に確保することができる。そのため、カーボンブラックのゴムに対する接触面積を十分に確保することができる。
【0097】
その結果、ゴムとカーボンブラックとの間の摩擦係数が大きくなり、振動が熱に変換されると推測される。それによって、振動部材5が振動すると、その振動が制振シート1の制振層2に伝達されても、上記した振動の熱への変換によって、制振シート1が振動を吸収し、それによって、振動部材5を制振することができる。
【0098】
従って、制振シート1を振動部材5に貼着すれば、振動部材5を、常温から高温までの広範囲な温度下において使用しても、十分に制振することができる。具体的には、常温(20℃)から、40℃を超えて100℃以下の高温で使用される部品に対して、十分に制振することができる。
【0099】
なお、図1(a)および図1(b)の実施形態では、制振シート1において、拘束層3を制振層2に積層しているが、例えば、図示しないが、拘束層3を設けることなく、制振層2のみを備える制振シート1とすることもできる。
【0100】
この実施形態によっても、図1(a)および図1(b)の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0102】
実施例1〜4および比較例1,2
表1に示す処方において、各成分を配合し、ミキシングロールで混練することにより混練物(制振組成物)を調製した。
【0103】
次いで、得られた混練物を、プレス成形により、シート状に圧延して、離型紙の表面に積層し、厚さ2.0mmの制振層を形成した。
【0104】
その後、制振層における離型紙の積層側に対して反対側の表面に、厚さ0.1mmのガラスクロスからなる拘束層を、熱圧着にて貼着し、制振層および拘束層の合計の厚さが2.1mmである制振シートを作製した。
【0105】
(評価)
(1)ガラス転移点
制振層の損失剪断弾性率G″を、動的粘弾性測定装置により測定し、得られた損失剪断弾性率G″のピークにおける温度をガラス転移点として得た。測定条件を下記に示す。結果を表1に示す。
動的粘弾性測定装置:ARES、レオメトリック・サイエンティフィック社製
使用治具:パラレルプレート
サンプル厚さ:2.0mm
昇温速度:5℃/分
周波数:1Hz
(2)90度剥離粘着力
制振シートを幅25mm、長さ100mmに切断して、サンプルを用意した。サンプルの制振層を、ステンレス板(SUS304鋼板)の表面に配置し、2kgのローラを用いて圧着した後、23℃において、剥離速度300mm/minで制振シートとステンレス板とを万能引張試験によって剥離させたときの90度剥離粘着力を測定した。結果を表1に示す。
(3)制振性(損失係数)
制振シートの20℃、40℃、60℃、80℃、100℃における損失係数を、損失係数測定装置を用いて、中央加振法により下記の測定条件で測定した。具体的には、制振シートを幅10mm、長さ250mmに切断して、サンプルを用意し、サンプルを被着体に貼着することにより損失係数を測定した。結果を表1に示す。
被着体:0.8mm×10mm×250mmのSPCC鋼板
周波数:500Hz(共振点より500Hzを算出)
(4)体積抵抗率
制振層の体積抵抗率をASTM D991に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
なお、表1の略号などを以下に示す。
JSRブチル268:ブチルゴム、不飽和度1.6、ムーニー粘度51(ML1+8、at125℃)、JSR社製
シースト3H:算術平均粒子径27nm、HAF−HSグレード、ヨウ素吸着量84mg/g(JIS K6217−1(2008)に準拠)、東海カーボン社製
シーストN:、算術平均粒子径29nm、LI−HAFグレード、ヨウ素吸着量70mg/g(JIS K6217−1(2008)に準拠)、東海カーボン社製
シーストSO:、算術平均粒子径43nm、FEFグレード、ヨウ素吸着量44mg/g(JIS K6217−1(2008)に準拠)、東海カーボン社製
旭#50:算術平均粒子径80nm、ヨウ素吸着量23mg/g(JIS K6217−1(2008)に準拠)、旭カーボン社製
ポリブテンHV300:液状ポリブテン、動粘度26000mm/s(at40℃)、動粘度590mm/s(at100℃)、新日本石油社製
エスコレッツ1202:石油系樹脂、エクソン社製
重質炭酸カルシウム:炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製
ノクラックCD:4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、老化防止剤、大内新興化学工業社製
【符号の説明】
【0107】
1 制振シート
2 制振層
3 拘束層
図1