(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977963
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
G05F1/56 310D
G05F1/56 310F
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-51841(P2012-51841)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-186735(P2013-186735A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤村 学
(72)【発明者】
【氏名】井村 多加志
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕二
【審査官】
▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−242945(JP,A)
【文献】
特開2010−211788(JP,A)
【文献】
特開2007−097395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧と出力電圧に基づく電圧の差を増幅する差動増幅回路と、前記差動増幅回路によって制御される出力トランジスタと、を備え、出力端子に所望の前記出力電圧を出力するボルテージレギュレータであって、
前記差動増幅回路の出力端子にゲートが接続された検出トランジスタと、前記検出トランジスタのドレインに接続された出力電流モニタ回路と、前記出力電流モニタ回路の出力端子に接続された制御回路と、を備え、前記ボルテージレギュレータの出力端子の出力電流を検出して前記差動増幅回路のバイアス電流を制御する電流検出回路と、
前記差動増幅回路の出力端子と前記検出トランジスタのゲートの間に接続された抵抗素子と、前記ボルテージレギュレータの出力端子と前記検出トランジスタのゲートの間に接続された容量素子と、を備えた事を特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
基準電圧と出力電圧に基づく電圧の差を増幅する差動増幅回路と、前記差動増幅回路によって制御される出力トランジスタと、を備え、出力端子に所望の前記出力電圧を出力するボルテージレギュレータであって、
前記差動増幅回路の出力端子にゲートが接続された検出トランジスタと、前記検出トランジスタのドレインに接続された出力電流モニタ回路と、前記出力電流モニタ回路の出力端子に接続された制御回路と、を備え、前記ボルテージレギュレータの出力端子の出力電流を検出して前記差動増幅回路のバイアス電流を制御する電流検出回路と、
前記差動増幅回路の出力端子と前記検出トランジスタのゲートの間に接続された抵抗素子と、前記ボルテージレギュレータの出力端子と接地端子の間に接続された、前記ボルテージレギュレータの出力端子の電圧の低下を検出して、前記検出トランジスタのゲートの電圧を接地電圧になるように制御する電圧検出回路と、を備えた事を特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項3】
基準電圧と出力電圧に基づく電圧の差を増幅する差動増幅回路と、前記差動増幅回路によって制御される出力トランジスタと、を備え、出力端子に所望の前記出力電圧を出力するボルテージレギュレータであって、
前記差動増幅回路の出力端子にゲートが接続された検出トランジスタと、前記検出トランジスタのドレインに接続された出力電流モニタ回路と、前記出力電流モニタ回路の出力端子に接続された制御回路と、を備え、前記ボルテージレギュレータの出力端子の出力電流を検出して前記差動増幅回路のバイアス電流を制御する電流検出回路と、
前記差動増幅回路の出力端子と接地端子の間に接続された、前記ボルテージレギュレータの出力端子の電圧の低下を検出して、前記制御回路に検出信号を出力する電圧検出回路とを備え、
前記差動増幅回路の出力端子と前記検出トランジスタのゲートの間に接続された抵抗素子と、前記ボルテージレギュレータの出力端子と前記検出トランジスタのゲートの間に接続された容量素子と、を備えた事を特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項4】
ゲートが前記検出トランジスタのゲートと接続され、ソースが前記出力トランジスタのソースと接続され、ドレインが前記出力トランジスタのドレインと接続されたプリドライバであるトランジスタを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータに関し、より詳しくは出力電流が変動したときの過渡応答特性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータである。差動増幅回路104は基準電圧回路103の出力電圧と分圧回路106の出力電圧を比較し、出力トランジスタ105のゲート・ソース間電圧を制御することによって、出力端子102の電圧が所望の電圧にする。出力電流検出回路107は、検出トランジスタ112と、出力電流モニタ回路113と、制御回路114を備える。
【0003】
ここで、ボルテージレギュレータの出力電圧102が負荷電流の増加により低下したとすると、差動増幅回路104が出力トランジスタ105のゲート・ソース間電圧を大きくするように動作する。出力トランジスタ105と検出トランジスタ112は、同一特性でK値の異なるトランジスタを用いており、カレントミラー接続されている。従って、検出トランジスタ112は出力電圧102の負荷電流に応じた電流Imを流す。出力電流モニタ回路113は、検出トランジスタ112が流す電流Imを電圧に変換し出力する。制御回路114は、出力電流モニタ回路113から出力された電圧を受けて、制御信号を生成し出力する。差動増幅回路104は、出力電流モニタ回路113から制御信号を受けて、バイアス電流を増加させる。
【0004】
以上説明したように、従来のボルテージレギュレータは、負荷電流応じて出力電流検出回路が差動増幅回路104のバイアス電流が制御するので、過渡応答特性がよくなる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−96210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータでは、差動増幅回路104の出力信号によって負荷電流を検出して、差動増幅回路104のバイアス電流を制御していたので、出力電圧の低下に対して即座に対応することが困難であった。すなわち、負荷電流が軽負荷から重負荷に切り替わった場合に、差動増幅回路104のバイアス電流が絞られているため、出力電圧の低下を検出するときの差動増幅回路104の過渡応答特性が悪い、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、出力トランジスタ105のゲート端子と、検出トランジスタ112のゲート端子との間に抵抗素子151を接続し、出力端子102と検出トランジスタ112のゲート端子間に容量素子152を備えることを特徴とするボルテージレギュレータを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボルテージレギュレータによれば、負荷電流の増加にともなう出力電圧の低下に対して、検出トランジスタがいち早く電流を流すことが出来るので、出力電流検出回路が差動増幅回路のバイアス電流を高速に増加させることができる。これにより、負荷の増加による出力電圧の低下を小さくすることができるため、過渡応答特性の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。
【
図2】第一の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータの他の例を示す回路図である。
【
図3】第二の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。
【
図4】第三の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。
【
図5】第二及び第三の実施形態の電圧検出回路の一例を示す回路図である。
【
図6】従来の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。本実施形態のボルテージレギュレータは、基準電圧回路103と、差動増幅回路104と、出力トランジスタ105と、分圧回路106と、出力電流検出回路107と、抵抗151と、容量152で構成されている。出力電流検出回路107は、検出トランジスタ112と、出力電流モニタ回路113と、制御回路114と、で構成される。
【0011】
次に、本実施形態のボルテージレギュレータの要素回路の接続について説明する。
基準電圧回路103は、出力端子を差動増幅回路104の反転入力端子に接続する。分圧回路106は、出力端子102とVss端子100の間に設けられ、その出力端子は差動増幅回路104の非反転入力端子に接続する。差動増幅回路104は、出力端子を出力トランジスタ105のゲートに接続する。抵抗151は、差動増幅回路104の出力端子と検出トランジスタ112のゲートの間に設けられる。容量152は、検出トランジスタ112のゲートと出力端子102の間に設けられる。出力トランジスタ105は、ソースをVin端子に接続し、ドレインを出力端子102に接続する。検出トランジスタ112は、ソースをVin端子に接続し、ドレインを出力電流モニタ回路113に接続する。出力電流モニタ回路113は、出力端子を制御回路114に接続する。制御回路114は、出力端子を差動増幅回路104の動作電流制御端子に接続する。
【0012】
次に、本実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明する。
出力トランジスタ105は、抵抗151によってゲートが差動増幅回路104の出力端子とAC的に分離され、容量152の容量結合によって出力端子102とAC的に結合される。
【0013】
負荷108が軽負荷から重負荷に変動すると、出力端子102から負荷108に流れる電流が増加して、出力端子102の電圧は低下する。ここで、検出トランジスタ112のゲートは、抵抗151と容量152の働きによって、出力端子102の出力電圧の低下を受けることが出来る。従って、差動増幅回路104の出力トランジスタ105のゲート・ソース間電圧の制御を待つことなく、検出トランジスタ112によって出力電流モニタ回路113に電流を流すことが出来る。その結果、制御時回路114を介して差動増幅回路104のバイアス電流を増加させることが出来る。その後は、分圧回路106の出力電圧によって差動増幅回路104が出力トランジスタ105を制御する電圧によって、検出トランジスタ112が出力電流モニタ回路113に電流を供給する。その結果、負荷108に応じた差動増幅回路104のバイアス電流を流すことが出来る。
【0014】
以上説明したように、本実施形態のボルテージレギュレータは、検出トランジスタ112のゲートを、出力端子102の出力電圧の変動で制御することによって、出力電流の変動に対して素早く差動増幅回路104のバイアス電流を制御することが可能になるため、過渡応答特性を改善することができる。
なお、
図2に示すように、出力トランジスタ105と並列に、検出トランジスタ112とカレントミラー接続になるプリドライバ201を追加してもよい。
【0015】
このように構成すると、出力電流が軽負荷から重負荷に変動した場合、出力の低下時に容量152の容量結合により、プリドライバ201のゲート・ソース間電圧が大きくなり、プリドライバから出力電流を供給することが出来る。従って、プリドライバ201から出力に供給される電流によって、出力電圧102を持ち上げるように動作するため、更に過渡応答性を改善することができる。
【0016】
<第二の実施形態>
図3は、第二の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。本実施形態のボルテージレギュレータは、第一の実施形態の回路に、電圧検出回路301を追加した。電圧検出回路301は、出力端子102とVss端子100の間に設けられ、出力端子を検出トランジスタ112のゲートに接続する。
【0017】
次に、第二の実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明する。
出力が軽負荷から重負荷に変動した場合、電圧検出回路301は出力端子102の出力電圧の変動を受けて、検出トランジスタ112のゲート電圧を直接引き下げるための電圧及び電流を出力する。従って、検出トランジスタ112によって出力電流モニタ回路113に電流を流すことが出来る。その結果、制御時回路114を介して差動増幅回路104のバイアス電流を増加させることが出来る。これにより、差動増幅回路104のバイアス電流を第一の実施形態よりも早く増加させることができるため、更に過渡応答性を改善することができる。
【0018】
ここで、電圧検出回路301は、出力端子102の電圧の低下を検出したときに、出力端子がVss端子の電圧になるような回路であればよく、例えば
図5に示すような回路で構成されても良い。
【0019】
図5に示す電圧検出回路301は、デプレッション型NMOSトランジスタ501、502、503、504と、容量505と、抵抗506とで構成される。入力端子510をボルテージレギュレータの出力端子102に接続され、出力端子511を検出トランジスタ112のゲートに接続される。
【0020】
なお、
図3の回路において、容量152はなくても、同様の効果が得られる。
また、出力トランジスタ105と並列に、検出トランジスタ112とカレントミラー接続になるプリドライバ201を追加してもよい。
【0021】
<第三の実施形態>
図4は、第三の実施形態の出力電流検出回路を備えたボルテージレギュレータを示す回路図である。本実施形態のボルテージレギュレータは、第二の実施形態の回路において、電圧検出回路301の出力を、論理回路401(例えばOR回路)を介して制御回路114に入力するようにした。
【0022】
次に、第三の実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明する。
出力電流が軽負荷から重負荷に変動した場合、電圧検出回路301は出力端子102の出力電圧の変動を受けて、論理回路401を介して制御回路114に差動増幅回路104のバイアス電流を増加させる信号を出力する。論理回路401は、電圧検出回路301の信号と出力電流モニタ回路113の出力電圧との論理和(OR回路の場合)を取って、制御回路114に信号を出力する。その結果、制御時回路114を介して差動増幅回路104のバイアス電流を増加させることが出来る。これにより、差動増幅回路104のバイアス電流を他の実施形態よりも早く増加させることができるため、更に過渡応答性を改善することができる。
【0023】
なお、
図4の回路において、抵抗151と容量152はなくても、同様の効果が得られる。
また、出力トランジスタ105と並列に、検出トランジスタ112とカレントミラー接続になるプリドライバ201を追加してもよい。
【符号の説明】
【0024】
102 出力端子
103 基準電圧回路
104 差動増幅回路
106 分圧回路
107 電流検出回路
108 出力負荷
113 出力電流モニタ回路
201 プリドライバ
301 電圧検出回路
401 論理回路