(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977967
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ダイ抜き取り方法及び該方法に用いる金型交換装置
(51)【国際特許分類】
B21D 37/04 20060101AFI20160817BHJP
B21D 28/36 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
B21D37/04 M
B21D37/04 H
B21D28/36 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-55369(P2012-55369)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-188766(P2013-188766A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩元 知丈
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−179362(JP,A)
【文献】
特開2010−131633(JP,A)
【文献】
特開2000−094064(JP,A)
【文献】
特開2000−094065(JP,A)
【文献】
特開平09−094620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/04
B21D 28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タレットのダイ装着孔に装着されたダイを、上部昇降アクチュエータで昇降動する上部プッシャと下部昇降アクチュエータで昇降動する下部プッシャとの間で挟み込んで該ダイ装着孔から抜き取るダイ抜き取り方法において、
前記ダイの交換指令の受信と同時に前記上部プッシャを前記ダイ装着孔に装着された前記ダイ側に予め移動させておき、前記上部プッシャと前記下部プッシャとで前記ダイ装着孔に装着された前記ダイを挟み込む際に、前記上部プッシャを自重により前記ダイに押し付け、前記ダイ装着孔から前記ダイを抜き取る際に、前記上部プッシャと前記下部プッシャとで前記ダイを常時挟み込むことを特徴とするダイ抜き取り方法。
【請求項2】
請求項1記載のダイ抜き取り方法において、
突起があるダイを用い、前記突起があるダイの交換指令の受信と同時に前記上部プッシャを前記ダイ装着孔に装着された前記ダイ側に予め移動させておき、前記上部プッシャと前記下部プッシャとで前記ダイ装着孔に装着された前記突起があるダイを挟み込む際に、前記上部プッシャを自重により前記突起があるダイに押し付けて、前記突起があるダイの該突起の形状に倣わせることを特徴とするダイ抜き取り方法。
【請求項3】
タレットのダイ装着孔に装着されたダイを、上部昇降アクチュエータで昇降動する上部プッシャと下部昇降アクチュエータで昇降動する下部プッシャとの間で挟み込んで該ダイ装着孔から抜き取る際に、前記ダイの交換指令の受信と同時に前記上部プッシャを前記ダイ装着孔に装着された前記ダイ側に予め移動させておくダイ抜き取り方法に用いる金型交換装置において、
前記上部昇降アクチュエータに、前記上部プッシャを自重により前記ダイに押し付けるための前記上部プッシャの押し出力と戻し出力をそれぞれ分けて出力させる切り換え手段を一対設けたことを特徴とする金型交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タレットパンチプレス機のタレットからダイの金型を抜き取るダイ抜き取り方法及び該方法に用いる金型交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の金型交換装置として、
図4に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図4に示すように、金型交換装置(ATC)10は、タレットパンチプレス機1と複数のダイDを収納する金型収納装置(図示省略)との間に設けられており、下部タレット5と金型収納装置の間でダイDの交換を行うものである。
【0004】
タレットパンチプレス機1の上フレーム2及び下フレーム3には、上部タレット4及び下部タレット5が垂直な軸心周りに回転自在に取り付けられており、これら上部タレット4及び下部タレット5は、タレット用回転モータ6により同期して回転するようになっている。この上部タレット4は円盤状に形成してあり、その周方向に沿って間隔をおいてパンチ(上金型)Pを着脱自在に支持するパンチ装着孔4aを複数形成してある。同様に、下部タレット5も円盤状に形成してあり、その周方向に沿って間隔をおいてダイ(下金型)Dをエジェクタパイプ(エジェクタ部材)7を介して着脱自在に支持するダイ装着孔5aを複数形成してある。また、下部タレット5は、回転によって所定位置のダイ装着孔5aをダイステーション交換位置S(ダイ装着孔5aに対して自動的にダイDの取り付け、取り外しをする位置)に位置決めすることができるように構成されている。
【0005】
金型交換装置10の装置本体11には、昇降体12を上下方向に延びたボールねじ13を介して昇降動自在に設けてある。この昇降体12の基端部には上下方向に延びたスプライン軸14が貫通する貫通孔12aを形成してあり、また、昇降体12の先端部には交換アーム15が軸心周りに揺動自在に設けられている。この交換アーム15の先端側にはダイDを水平方向からクランプするクランパ16を備えている。
【0006】
また、装置本体11には昇降体12と交換アーム15を一体的に昇降させるアーム用昇降モータ17が設けられており、このアーム用昇降モータ17の出力軸にボールねじ13が連結されていることにより、昇降体12に取り付けられてボールねじ13に螺合するナット部材12bを介して昇降体12が上下方向に移動するようになっている。さらに、装置本体11には交換アーム15を揺動させるアーム用駆動モータ18が設けられており、このアーム用駆動モータ18により回転するスプライン軸14には、昇降体12の貫通孔12aを挿通して、ギヤ機構19を介して交換アーム15の基端部を昇降自在に連結してある。
【0007】
下フレーム3の下部タレット5の下方には、下部昇降エアシリンダ(下部昇降アクチュエータ)20が水平方向へ移動自在に設けられており、この下部昇降エアシリンダ20のピストンロッド21の先端部には、ダイステーション交換位置Sに位置決めされたエジェクタパイプ7を下方向から押圧する下部プッシャ22が設けられている。この下部昇降エアシリンダ20には、下部プッシャ22の上昇端を検出する上昇端検出オートスイッチ23が設けられている。また、下フレーム3には、下部昇降エアシリンダ20を水平方向へ移動させる移動エアシリンダ25が設けられており、この移動エアシリンダ25のピストンロッド26の先端部に下部昇降エアシリンダ20が連結されている。
【0008】
交換アーム15の先端部のクランパ16に対向する位置には、上部昇降エアシリンダ(上部昇降アクチュエータ)30が設けられており、この上部昇降エアシリンダ30のピストンロッド31の先端部には、ダイステーション交換位置Sに位置決めされたダイDを上方向から押圧する上部プッシャ32が設けられている。この上部昇降エアシリンダ30には、上部プッシャ32の押し位置(ダイDを押圧する位置)を検出する押し位置検出オートスイッチ33が設けられている。
【0009】
以上のような構成において、所望の交換用のダイDを金型交換装置10で交換する場合、即ち、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る工程を、
図5(a)〜
図5(d)を用いて順に説明する。
【0010】
まず、タレットパンチプレス機1のNC制御盤のCPU(いずれも図示省略)より金型交換の要求が指令されたら移動エアシリンダ25を制御し、
図5(a)の矢印Aで示すように、下部昇降エアシリンダ20を退避位置からダイステーション交換位置Sへ移動させる。
【0011】
次に、
図5(a)の矢印Bで示すように、交換アーム15の揺動により予め設定された下部タレット5の金型交換位置に位置する所定のダイ装着孔5a上まで上部昇降エアシリンダ30を移動させる。このとき、交換アーム15の揺動は、スプライン軸14等を使用して行う。そして、
図5(a)の矢印Cで示すように、ダイステーション交換位置Sの所定のタレットステーションに対して垂直方向から交換アーム15をダイクランプ位置まで下降させて停止させる。このダイクランプ位置は、下部タレット5のステーション毎に測定された座標値による。
【0012】
次に、
図5(b)に示すように、NC制御盤のCPUによって上部昇降エアシリンダ30を制御し、上部プッシャ32を下降させて押し位置へ移動させてダイDを上から押さえ込む。このとき、上部昇降エアシリンダ30にある押し位置検出オートスイッチ33がONされる。
【0013】
次に、
図5(c)に示すように、上部プッシャ32が押し位置に移動したら、NC制御盤のCPUによって下部昇降エアシリンダ20を制御し、下部プッシャ22を上昇させてエジェクタパイプ7を上昇させる。このとき、上部昇降エアシリンダ30の押し位置検出オートスイッチ33がOFFになって上部プッシャ32の押し出力をOFFにする。
【0014】
次に、
図5(d)に示すように、下部プッシャ22で押されたエジェクタパイプ7と上部プッシャ32とでダイDを挟み込む形で下部プッシャ22を更に上昇させて、ダイDを下部タレット5のダイ装着孔5aから抜き取る。このとき、下部昇降エアシリンダ20の上昇端検出オートスイッチ23がONされる。
【0015】
そして、下部プッシャ22で上昇させたエジェクタパイプ7の上にあるダイDを交換アーム15の先端部のクランパ16にてクランプする。これにより、下部タレット5のダイ装着孔5aからのダイDの抜き取り作業が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−131633号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、前記従来のダイDの抜き取り方法では、
図5(a),(b)に示すように、交換アーム15をダイクランプ位置まで下降させて停止させた後で、上部昇降エアシリンダ30のピストンロッド31を下降させて、上部プッシャ32をダイDの押し位置まで移動させているため、その分、金型交換の動作が遅くなり、金型交換に時間がかかって生産性が劣る要因となった。
【0018】
また、下部プッシャ22の上昇によりエジェクタパイプ7を上昇させて、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る最中に、ダイDが何らかの原因で下部タレット5のダイ装着孔5a内からスムーズに抜き出てこれなかった場合、下部プッシャ22の上昇により上部プッシャ32の押し出力がOFF(切)にされると、
図6(a)に示すように、上部昇降エアシリンダ30のピストンロッド31が自動的に上昇を続けるために、上部プッシャ32がダイDから離れてしまって、ダイDを上部プッシャ32と下部プッシャ22とで挟み込むことができなくなり、
図6(b)に示すように、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取ることができなくなった。
【0019】
さらに、金型交換時間を短縮するために、交換アーム15をダイクランプ位置まで下降させる前に、上部昇降エアシリンダ30のピストンロッド31を下降させて上部プッシャ32をダイDの押し位置まで移動させておくとすると、特殊成型金型等の通常の金型よりも突起があるダイD′の金型交換の場合、
図7に示すように、ダイD′を抜き取る際に、ダイD′の突起の高さ分交換アーム15が上方に持ち上げられて、該交換アーム15に過負荷がかかり、稼動停止等の要因となる。
【0020】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、金型交換時間を短縮することができ、また、金型の形状に左右されることなく、金型交換を常にスムーズに安定して行うことができるダイ抜き取り方法及び該方法に用いる金型交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1の発明は、タレットのダイ装着孔に装着されたダイを、上部昇降アクチュエータで昇降動する上部プッシャと下部昇降アクチュエータで昇降動する下部プッシャとの間で挟み込んで該ダイ装着孔から抜き取るダイ抜き取り方法において、
前記ダイの交換指令の受信と同時に前記上部プッシャを前記ダイ装着孔に装着された前記ダイ側に予め移動させておき、前記上部プッシャと前記下部プッシャとで前記ダイ装着孔に装着された前記ダイを挟み込む際に、前記上部プッシャを自重により前記ダイに押し付け、前記ダイ装着孔から前記ダイを抜き取る際に、前記上部プッシャと前記下部プッシャとで前記ダイを常時挟み込むことを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明は、
請求項1記載のダイ抜き取り方法において、
突起があるダイを用い、前記突起があるダイの交換指令の受信と同時に前記上部プッシャを前記ダイ装着孔に装着された前記ダイ側に予め移動させておき、前記上部プッシャと前記下部プッシャとで前記ダイ装着孔に装着された前記突起があるダイを挟み込む際に、前記上部プッシャを自重により前記
突起があるダイに押し付けて、前記突起があるダイの該突起の形状に倣わせることを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明は、タレットのダイ装着孔に装着されたダイを、上部昇降アクチュエータで昇降動する上部プッシャと下部昇降アクチュエータで昇降動する下部プッシャとの間で挟み込んで該ダイ装着孔から抜き取る
際に、前記ダイの交換指令の受信と同時に前記上部プッシャを前記ダイ装着孔に装着された前記ダイ側に予め移動させておくダイ抜き取り方法に用いる金型交換装置において、前記上部昇降アクチュエータに、
前記上部プッシャを自重により前記ダイに押し付けるための前記上部プッシャの押し出力と戻し出力をそれぞれ分けて出力させる切り換え手段を一対設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、
ダイの交換指令の受信と同時に上部プッシャをダイ装着孔に装着されたダイ側に予め移動させておくことにより、上部プッシャと下部プッシャとの間でダイを挟み込むまでの時間を短縮することができるため、金型交換の動作時間を短縮することができる。また、上部プッシャと下部プッシャとでダイ装着孔に装着されたダイを挟み込む際に、上部プッシャを自重によりダイに押し付け、ダイ装着孔からダイを抜き取る際に、上部プッシャと下部プッシャとでダイを常時挟み込むことにより、タレットのダイ装着孔からダイを抜き取る際に、ダイが何らかの原因でタレットのダイ装着孔内からスムーズに抜き出てこれないダイ噛み込みが発生しても、上部プッシャと下部プッシャとでダイを確実に挟み込んで抜き取ることができる。これにより、ダイの金型抜き取り失敗による金型交換装置の稼働停止を抑制することができる。
【0027】
請求項2の発明によれば、上部プッシャと下部プッシャとでダイ装着孔に装着された突起があるダイを挟み込む際に、上部プッシャを自重により
突起があるダイに押し付けて、突起があるダイの該突起の形状に倣わせることにより、上部プッシャと下部プッシャとで突起があるダイを確実に挟み込むことができて、タレットのダイ装着孔から
突起があるダイをスムーズかつ確実に抜き取ることができる。
【0028】
請求項3の発明によれば、上部昇降アクチュエータに、
上部プッシャを自重によりダイに押し付けるための上部プッシャの押し出力と戻し出力をそれぞれ分けて出力させる切り換え手段を一対設けたことにより、ダイをタレットのダイ装着孔から抜き取る際に、ダイがスムーズに取り出せない場合でも上部プッシャと下部プッシャとでダイを確実に挟み込ませて取り出すことができる。また、特殊成型金型等の突起があるダイでもその突起の形状に合わせて上部プッシャを倣わせることができ、上部プッシャと下部プッシャとで突起があるダイを確実に挟み込ませて取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】(a)〜(d)は本発明の実施形態のダイを抜き取る工程を順に示す説明図である。
【
図2】(a)〜(d)は上記ダイを抜き取る工程においてダイの噛み込みが発生した場合の対処工程を順に示す説明図である。
【
図3】(a)〜(d)は上記ダイを抜き取る工程において特殊形状のダイを抜き取る工程を順に示す説明図である。
【
図5】(a)〜(d)は従来のダイを抜き取る工程を順に示す説明図である。
【
図6】(a),(b)は上記従来のダイを抜き取る工程においてダイの噛み込みが発生した場合の説明図である。
【
図7】特殊形状のダイを抜き取る工程の途中で交換アームに過負荷が発生した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1(a)〜
図1(d)は本発明の実施形態のダイを抜き取る工程を順に示す説明図である。尚、この実施形態において、タレットパンチプレス機1の下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る工程を説明するに当たり、
図4に示す金型交換装置10の全体構成は援用する。
【0032】
この金型交換装置10の構成において、上部昇降エアシリンダ(上部昇降アクチュエータ)30に図示しない一対の切り換えバルブ(切り換え手段)を設け、上部プッシャ32の押し出力と戻し出力をそれぞれ分けて出力するようにした構成が従来のものと相違する。即ち、タレットパンチプレス機1の下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る際に、一方の切り換えバルブの押し出力の指令により、上部プッシャ32の押し出力をONして、上部プッシャ32のダイDの押し位置を押し位置検出オートスイッチ33で検出したら、上部プッシャ32の押し出力をOFF(切)にして、上部プッシャ32が元の位置に戻らないようにし、他方の切り換えバルブの戻し出力の指令により上部プッシャ32の戻し出力がONされてから、上部プッシャ32が元の位置に戻るようになっている。また、タレットパンチプレス機1のNC制御盤のCPUからの金型交換指令の受信と同時に上部プッシャ32を出力させるようになっている。
【0033】
次に、タレットパンチプレス機1の下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る工程を、
図1(a)〜
図1(d)を用いて順に説明する。
【0034】
まず、タレットパンチプレス機1のNC制御盤のCPUより金型交換の要求が指令されたら移動エアシリンダ25を制御し、
図1(a)の矢印Aで示すように、下部昇降エアシリンダ(下部昇降アクチュエータ)20を退避位置からダイステーション交換位置Sへ移動させると共に、NC制御盤のCPUによって上部昇降エアシリンダ30を制御し、ピストンロッド31を下降させて上部プッシャ32をダイDの押し位置まで予め移動させる。このとき、上部昇降エアシリンダ30にある押し位置検出オートスイッチ33がONされる。
【0035】
次に、
図1(a)の矢印Bで示すように、交換アーム15の揺動により予め設定された下部タレット5の金型交換位置に位置する所定のダイ装着孔5a上まで上部昇降エアシリンダ30を移動させる。このとき、交換アーム15の揺動は、スプライン軸14等を使用して行う。
【0036】
次に、
図1(b)に示すように、ダイステーション交換位置Sの所定のタレットステーションに対して垂直方向から交換アーム15をダイクランプ位置まで下降させて停止させる。このダイクランプ位置は、下部タレット5のステーション毎に測定された座標値による。
【0037】
次に、
図1(c)に示すように、交換アーム15がダイクランプ位置まで下降されたら、NC制御盤のCPUによって下部昇降エアシリンダ20を制御し、下部プッシャ22を上昇させてエジェクタパイプ(エジェクタ部材)7を上昇させる。このとき、上部昇降エアシリンダ30の押し位置検出オートスイッチ33がOFFになって上部プッシャ32の押し出力をOFFにする。
【0038】
次に、
図1(d)に示すように、下部プッシャ22で押されたエジェクタパイプ7と上部プッシャ32とでダイDを挟み込む形で下部プッシャ22を更に上昇させて、ダイDを下部タレット5のダイ装着孔5aから抜き取る。このとき、下部昇降エアシリンダ20の上昇端検出オートスイッチ23がONされる。
【0039】
そして、下部プッシャ22で上昇させたエジェクタパイプ7の上にあるダイDを交換アーム15の先端部のクランパ16にてクランプする。これにより、下部タレット5のダイ装着孔5aからのダイDの抜き取り作業が終了する。
【0040】
このように、タレットパンチプレス機1のNC制御盤のCPUからの金型交換の指令の受信と同時に上部プッシャ32の押し出力をONさせるため、即ち、下部昇降エアシリンダ20を退避位置からダイステーション交換位置Sへ移動させる際に、上部プッシャ32をダイDの押し位置まで予め移動させるため、従来のように、交換アーム15をダイクランプ位置まで下降させて停止させた後で、上部プッシャ32をダイDの押し位置まで移動させる場合に比較して、金型交換の動作時間を短縮することができる。これにより、金型交換時間の高速化を図って、生産性を向上させることができる。
【0041】
図2(a)〜
図2(d)は、ダイDを抜き取る工程においてダイDの噛み込みが発生した場合の対処工程を順に示す。
【0042】
図2(a)に示すように、上部プッシャ32をダイDの押し位置まで予め移動させてから、
図2(b)に示すように、上部プッシャ32がダイDの上面に当たって押し位置検出オートスイッチ33がONされると、上部プッシャ32の押し出力がOFFになって上部昇降エアシリンダ30に設けられた他方の切り換えバルブの戻し出力の指令を待つ。これにより、
図2(b)の点線の矢印Fに示すように、上部プッシャ32が現状のままのフリーの状態になる(ダイDの金型に倣って上部プッシャ32が戻されるようになる)ので、
図2(c)に示すように、下部プッシャ22の上昇によりエジェクタパイプ7を上昇させて、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る最中に、ダイDが何らかの原因で下部タレット5のダイ装着孔5a内からスムーズに抜き出てこれないダイ噛み込みが発生しても、従来のように、上部昇降エアシリンダ30のピストンロッド31が上昇を続けることがなく、上部プッシャ32がダイDから離れることなくその自重によりダイDを押し付けているため、エジェクタパイプ7を介して上部プッシャ32と下部プッシャ22とでダイDを挟み込むタイミングを合わせることができる。これにより、
図2(d)に示すように、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを確実に抜き取ることができる。
【0043】
このように、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る際に、ダイDがスムーズに取り出せない場合でも、上部プッシャ32と下部プッシャ22とでダイDを確実に挟み込んで抜き取ることができる。これにより、ダイDの金型抜き取り失敗による金型交換装置10の稼働停止を抑制することができる。その結果、常に安定した状態でダイDの金型交換をすることができ、金型交換装置10を無人で長時間連続して稼働させることができる。
【0044】
図3(a)〜
図3(d)は、上面側に突起dを有した特殊形状のダイD′を抜き取る工程を順に示す。
【0045】
図3(a)に示すように、上部プッシャ32をダイDの押し位置まで予め移動させてから、
図3(b)に示すように、上部プッシャ32が突起dを有した特殊形状のダイD′の該突起dに当たって押し位置検出オートスイッチ33がONされると、上部プッシャ32の押し出力がOFFになって上部昇降エアシリンダ30に設けられた他方の切り換えバルブの戻し出力の指令を待つ。これにより、
図3(b)の点線の矢印Fに示すように、上部プッシャ32が現状のままのフリーの状態になって、ダイD′の突起dに倣って、上部プッシャ32がダイD′の突起dの高さ分上方に戻されるため、交換アーム15が上方に持ち上げられることがなく、該交換アーム15に過負荷がかかることはない。
【0046】
そして、
図3(c)に示すように、下部プッシャ22の上昇によりエジェクタパイプ7が上昇して、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイDを抜き取る最中においても、上部プッシャ32がダイD′から離れることなくその自重によりダイD′を押し付けているため、ダイD′をエジェクタパイプ7を介して上部プッシャ32と下部プッシャ22とで確実に挟み込むことができる。これにより、
図3(d)に示すように、下部タレット5のダイ装着孔5aからダイD′をスムーズかつ確実に抜き取ることができる。
【0047】
このように、突起dを有した特殊形状のダイD′を抜き取る際に、交換アーム15に過負荷がかかることがないため、金型交換装置10の稼動停止を抑制することができ、また、無人で長時間連続して稼働できるため、生産性をより一段と向上させることができる。さらに、特殊成型金型等の突起dがあるダイD′であっても、その突起dの形状に合わせて上部プッシャ32が倣うことで、上部プッシャ32と下部プッシャ22とで突起dを有した特殊形状のダイD′を確実に挟み込むことができる。これにより、下部タレット5のダイ装着孔5aから突起dを有した特殊形状のダイD′をスムーズかつ確実に抜き取ることができる。
【0048】
尚、前記実施形態によれば、プッシャを可動させるアクチュエータとしてエアシリンダを使用した場合について説明したが、アクチュエータはエアシリンダに限られず、油圧シリンダ等の他のアクチュエータを使用しても良い。
【符号の説明】
【0049】
5 下部タレット(タレット)
5a ダイ装着孔
10 金型交換装置
20 下部昇降エアシリンダ(下部昇降アクチュエータ)
22 下部プッシャ
30 上部昇降エアシリンダ(上部昇降アクチュエータ)
32 上部プッシャ
D ダイ
D′ 特殊形状のダイ
d 突起