(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の質量測定装置は、物品に作用する重力によってロードセルが垂直方向へ変位することを利用しているので、例えば、マニピュレータやロボットハンドの先端部にロードセルを取り付けて、持ち上げた物品を移動している最中にその物品の質量を測定しようとしても、上記従来技術では対応できない。
【0004】
本発明の課題は、質量測定時の物品の移動状態(静止を含む)に応じて測定方式を切り換えることができる質量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る質量測定装置は、第1質量測定部と、第2質量測定部と、制御部とを備えている。第1質量測定部は、
物品を保持する保持機構と、保持機構を移動させる移動機構と、移動時の物品に作用する力を測定する力測定部と、移動時の物品に作用する加速度を測定する加速度測定部と、を有し、移動時の物品に作用する力及び加速度に基づいて前記物品の質量を
算出する。第2質量測定部は、
物品に作用する鉛直方向の力を測定する力測定部あるいは力測定部とは別の第2力測定部を有し、物品
に作用する鉛直方向の力に基づき物品の質量を
算出する。制御部は、第1質量測定部および第2質量測定部を制御する。さらに、制御部は、
加速度測定部によって測定された加速度に応じて、第1質量測定部での質量測定を採用するか第2質量測定部での質量測定を
採用するか、を決める。
【0006】
仮に、2つの質量測定装置を備え、条件に応じて好ましい質量測定装置を選択して質量測定する場合、物品をその都度、選択した装置側に保持させる(持ち替える)必要があり、たとえ自動であっても作業時間の無駄が発生する。
【0007】
しかし、この質量測定装置では、物品を保持し直す(持ち替える)ことなく2つの方式で質量測定することができるので、生産状況に対応した精度の高い質量測定を実現するとともに、作業時間の無駄を解消することができる。
【0008】
また、この質量測定装置では、物品を移動させながら質量を測定することができ、産業用ロボットと組み合わせることによって、質量検査、及びその質量検査結果に基づく振り分けをロボット側で行うことができる。その結果、ウエイトチェッカおよび振り分け装置を既存の生産工程から撤去することができる。
【0009】
本発明の第2観点に係る質量測定装置は、第1質量測定部と、第2質量測定部と、制御部とを備えている。第1質量測定部は、
物品を移動させる移動機構と、移動時の物品に作用する力を測定する力測定部と、移動時の物品に作用する加速度を測定する加速度測定部と、を有し、移動時の前記物品に作用する力及び加速度に基づいて物品の質量を
算出する。第2質量測定部は、第1質量測定部に連動し、
物品に作用する鉛直方向の力を測定する力測定部あるいは力測定部とは別の第2力測定部を有し、物品に作用する鉛直方向の力に基づき物品の質量を
算出する。制御部は、第1質量測定部および第2質量測定部を制御する。さらに、制御部は、
加速度測定部によって測定された加速度に応じて、第1質量測定部の測定値
を採用するか第2質量測定部の測定値
を採用する
か、を決める。
【0010】
この質量測定装置では、第1質量測定部の質量測定に連動して第2質量測定部が質量測定するので、所定条件が成立したあと、測定値が速やかに出力される。その結果、工程での生産性を損なうことなく、精度の高い質量測定が行われる。
【0011】
また、この質量測定装置では、物品を移動させながら質量を測定することができ、産業用ロボットと組み合わせることによって、質量検査、及びその質量検査結果に基づく振り分けをロボット側で行うことができる。その結果、ウエイトチェッカおよび振り分け装置を既存の生産工程から撤去することができる。
【0012】
本発明の第3観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、第1質量測定部が、物品を移動させ、移動時の物品に作用する力を移動時の物品に作用する加速度で除算して物品の質量を算出する。第2質量測定部は、物品に作用する鉛直方向の力
と重力加速度
とに基づいて、物品の質量を算出する。
【0013】
この質量測定装置では、第2質量測定部は一般に静止状態または緩慢な揺れのある状態で利用される質量測定方式であり、移動しながら質量測定する第1質量測定部と併用されることによって、生産工程の変更、或いは生産品の変更などの生産状況の変化に応じて、測定方式を変更することができる。
【0014】
本発明の第
4観点に係る質量測定装置は、第
1観点
又は第2観点に係る質量測定装置であって、第1質量測定部では、力測定部および加速度測定部の感度方向は、鉛直方向を含む互いに直交する3方向である。
【0015】
この質量測定装置では、物品の移動方向に制約されることなく物品を移動させながら質量を測定することができるので、産業用ロボットと組み合わせに適している。なお、感度方向とは、例えば、力に反応するセンサに対して、任意の力を様々な方向に作用させたとき、最もセンサ出力が大きくなる方向である。
【0016】
本発明の第
5観点に係る質量測定装置は、第
1観点
又は第2観点に係る質量測定装置であって、第1質量測定部では、力測定部および加速度測定部の感度方向が水平面に対して所定角度下方に傾斜している。
【0017】
この質量測定装置では、鉛直方向の力および加速度も、水平方向の力および加速度も、力測定部および加速度測定部の感度方向の傾斜角度に応じた成分として現れる。それゆえ、鉛直方向および水平方向のいずれの方向に対しても、力測定部および加速度測定部を増設することなく力および加速度を測定することができる。
【0018】
本発明の第
6観点に係る質量測定装置は、第
1観点
又は第2観点に係る質量測定装置であって、第1質量測定部では、移動機構が鉛直軸を含む互いに直交する2軸まわりに回転し、力測定部および加速度測定部の感度方向を任意の方向に向ける。
【0019】
この質量測定装置では、力測定部および加速度測定部を増設することなく、鉛直方向を含む互いに直交する3方向のいずれに対しても、力および加速度を測定することができる。
【0020】
本発明の第
7観点に係る質量測定装置は、第
1観点に係る質量測定装置であって、
制御部は、第1質量測定部の加速度測定部の出力が所定値未満
のとき、第2質量測定部での質量測定を採用する。
【0021】
本発明の第
8観点に係る質量測定装置は、第
2観点に係る質量測定装置であって、
制御部は、第1質量測定部の加速度測定部の出力が所定値未満のとき、第2質量測定部での測定値を採用する。
【0022】
例えば、物品を低速且つ等速で移動させながら質量測定するとき、或いは物品を持ち上げるだけのほぼ静止状態で質量測定するときは、第1質量測定部であえて物品に加速度を与えて質量測定するよりも、第2質量測定部で対応する方が合理的である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の質量測定装置では、物品を保持し直す(持ち替える)ことなく2つの方式で質量測定することができるので、生産状況に対応した精度の高い質量測定を実現するとともに、作業時間の無駄を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
(1)質量測定装置100の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る質量測定装置100の概略斜視図である。
図1において、質量測定装置100は、力測定部としての力センサ1と、保持機構としての吸着部2と、移動機構としてのロボットアーム3と、加速度測定部としての加速度センサ4とを備えている。
【0027】
力センサ1は、移動中の物品Qに作用する力を3次元の3方向それぞれについて検出する。力センサ1には、例えば、歪みゲージ式ロードセルが採用される。歪みゲージ式ロードセルは、移動によって自由端側が固定端側に対して相対的に変位し、それによって自由端側に作用する力を検出することができる。
【0028】
吸着部2は、物品Qを保持する。吸着部2には、エアー吸着機構、或いは、エアーチャック機構が採用される。なお、吸着部2は、エアー吸着機構やエアーチャック機構などに限定されるものではなく、モータ駆動のフィンガー機構であってもよい。
【0029】
ロボットアーム3は、吸着部2を3次元的に移動させる。また、ロボットアーム3は、所定の回転軸CAを中心にしてCW方向およびCCW方向に回転することもできる。なお、ロボットアーム3としては、例えば、水平多関節ロボットや垂直多関節ロボット、あるいは、パラレルリンクロボット等が適切である。
【0030】
加速度センサ4は、物品Qに作用する加速度を3次元の3方向それぞれについて検出する。加速度センサ4としては、例えば、歪みゲージ式ロードセル、MEMS型の小型加速度センサ、及び一般的な市販の加速度センサのいずれかが適宜採用される。
【0031】
なお、力センサ1は吸着部2とロボットアーム3との間に設けられ、加速度センサ4は吸着部2に隣接するように設けられる。以下で説明する実施形態では、力センサ1及び加速度センサ4ともに歪みゲージ式ロードセルが採用されている。
【0032】
(2)質量測定の原理
(2−1)第1質量測定方式
図2は、
図1の質量測定装置100をばね−質量系で表わしたときの当該質量測定装置の2自由度モデルである。
【0033】
図2において、mは物品Qの質量、M
1は力センサ1の自由端側の質量と吸着部2の質量および加速度センサ4の固定端側の質量の和、M
2は加速度センサ4の自由端の質量である。また、k
1は力センサ1のばね定数、k
2は加速度センサ4のばね定数である。x
1は力センサ1の変位量、x
2は加速度センサ4の変位量とする。
【0034】
物品Qに加速度が作用したときの運動方程式は、
(m+M
1)d
2x
1/dt
2=−k
1(x
1−y)+k
2(x
1−x
2) (1)
M
2d
2x
2/dt
2=−k
2(x
2−x
1) (2)
として表される。また(1)式を変形すると、
m=[−k
1(x
1−y)+k
2(x
1−x
2)]/(d
2x
1/dt
2)−M
1 (3)
となる。さらに、加速度センサ4の剛性が大きいことを考慮すると、
d
2x
1/dt
2≒d
2x
2/dt
2 (4)
として近似できる。それゆえ、(3)及び(4)式より、
m=[−k
1(x
1−y)+k
2(x
1−x
2)]/(d
2x
2/dt
2)−M
1 (5)
が導き出される。また、(2)式を変形すると、
d
2x
2/dt
2=−k
2(x
2−x
1)/M
2 (6)
となるので、(5)、(6)式より、
m=[−k
1(x
1−y)/−k
2(x
2−x
1)]M
2+M
2−M
1 (7)
が導き出される。
【0035】
ここで、−k
1(x
1−y)は力センサ1の出力、−k
2(x
2−x
1)は加速度センサ4の出力である。
【0036】
図3は、零点調整のために、吸着部2に何も保持させない状態で力センサ1及び加速度センサ4から得られた検出信号を示すグラフである。
図3において、力センサ1の出力のピーク値をFmz、加速度センサ4の出力のピーク値をFazとしたとき、(7)式より、
0=M
2・C・(Fmz/Faz)+M
2−M
1 (8)
となる。但し、加速度は0でない場合を想定している。なお、Cは換算係数である。
【0037】
図4は、スパン調整用の既知の分銅を吸着部2に保持させた状態で力センサ1及び加速度センサ4から得られた検出信号を示すグラフである。
図4において、スパン質量をms、力センサ1の出力のピーク値をFms、加速度センサ4の出力のピーク値をFasとしたとき、(7)式より、
ms=M
2・C・(Fms/Fas)+M
2−M
1 (9)
となる。そして、(8)−(9)式より、
C=ms/M
2{(Fms/Fas)−(Fmz/Faz)} (10)
が導き出される。(10)式より、M
2は固定係数として、スパン係数をSとすると、
S=C・M
2=ms/{(Fms/Fas)−(Fmz/Faz)} (11)
である。
【0038】
図5は、質量mの被測定物を吸着部2に保持させた状態で力センサ1及び加速度センサ4から得られた検出信号を示すグラフである。
図5において、力センサ1の出力のピーク値をFm、加速度センサ4の出力のピーク値をFaとしたとき、(11)式より、
m=S{(Fm/Fa)−(Fmz/Faz)} (12)
となる。
【0039】
上記のように、第1質量測定方式は、物品Qを移動させ、移動時の物品に作用する力を移動時の物品に作用する加速度で除算して物品Qの質量を算出する方式である。この第1質量測定方式を用いた質量測定を担う部分を総称して、第1質量測定部とよぶ。
【0040】
(2−2)第2質量測定方式
第1質量測定方式の利用は物品が移動していることが前提条件であるが、ある特定の商品の生産においては、物品Qを持ち上げるだけで質量を測定したい場合もある。そのようなときに、第1質量測定方式で物品Qに加速度を与えて質量測定することは不合理である。そこで、質量測定装置100は、物品Qを低速且つ等速で移動させながら質量測定するとき、或いは物品Qを持ち上げるだけのほぼ静止状態で質量測定するときは、第1質量測定方式と測定方式が異なる第2質量測定方式で測定する。
【0041】
第2質量測定方式は、基本的には物品Qに作用する鉛直方向の力を重力加速度で除算して、又はその原理を応用して物品Qの質量を算出する方式である。したがって、理論的には力センサ1の出力が物品Qに作用する鉛直方向の力となるが、物品Qには生産現場の振動がロボットアーム3及び吸着部2を介して伝播してくる。それゆえ、力センサ1の出力には振動成分が含まれている。
【0042】
したがって、第2質量測定方式では、加速度センサ4の出力を物品Qに作用する振動加速度とみなし、その出力に加速度センサ4に付帯する構造体の質量に基づく係数を掛けた値を、力センサ1の出力から減じる処理を行っている。この結果、振動の影響が取り除かれた物品の質量が測定される。この第2質量測定方式を用いた質量測定を担う部分を総称して、第2質量測定部とよぶ。
【0043】
(3)制御系
(3−1)第1質量測定方式における制御系
図6は、質量測定装置100の第1質量測定方式における制御系のブロック図である。
図6において、制御部40及び記憶部49を含む制御回路50には、力センサ1、吸着部2、ロボットアーム3、加速度センサ4、入力部7及びディスプレイ8が電気的に接続されている。なお、力センサ1、吸着部2、ロボットアーム3、及び加速度センサ4については、既に説明しているので、ここでは言及しない。
【0044】
入力部7は、質量測定装置100の始動前に、オペレータが力センサ1の定格や、被測定物の測定範囲などを入力するための機器であり、具体的には、キーボード、或いは、タッチパネルである。
【0045】
ディスプレイ8は、質量測定装置100の動作状況を逐次表示するための機器であり、力センサ1及び加速度センサ4の異常や、吸着部2及びロボットアーム3の動作異常が発生したときには、エラー表示を行う。
【0046】
記憶部49は、質量測定装置100に搭載可能な力センサ1の定格、及び被測定物の質量範囲ごとに設定された被測定物に作用させるべき適用加速度を予め記憶している。
【0047】
例えば、質量測定装置100が、物品Qが搬送される工程で、「吸着部2によって物品Qを吸着し、ロボットアーム3によって物品Qを梱包容器まで移動させ、その間に質量を測定し、物品Qを梱包容器に納める」という動作を行う場合、オペレータは質量測定装置100の始動前に、物品Qの質量測定範囲(例えば、m±0.5g)を入力する。
【0048】
記憶部49は、予め質量m程度の物品Qの質量を測定するときに物品Qに作用させるべき最適加速度を記憶している。制御部40は、入力された質量測定範囲に対応する適用加速度を記憶部49から読み取り、ロボットアーム3を介して物品Qにその適用加速度を作用させ、そのときの力センサ1の出力を読み取る。なお、制御部40としては、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)やマイコン等が採用される。
【0049】
図7は、力センサ1及び加速度センサ4によって検出された信号を処理する信号処理回路図である。
図7において、力センサ1と加速度センサ4には、それぞれ増幅器31a、31bが接続されており、これらの増幅器31a、31bは、力センサ1及び加速度センサ4から入力された検出信号を増幅する。また、増幅器31a、31bには、それぞれA/D変換器33a、33bが接続されている。そのA/D変換器33a、33bは、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。
【0050】
A/D変換器33a、33bには、それぞれローパスフィルタ37a、37bが接続されている。このローパスフィルタ37a、37bは、入力された検出信号から一定周波数以上のノイズ成分を除去する。また、ローパスフィルタ37a、37bは、制御部40に接続されている。
【0051】
制御部40は、入力された検出信号に基づいて各種の処理を実行する。先ず、制御部40は、力センサ1及び加速度センサ4の検出信号に含まれるノイズ周波数成分をローパスフィルタ37a、37bにより除去する処理を行う。そして、そのノイズ周波数成分が除去された力センサ1の検出信号を除算器41により加速度センサ4の検出信号で除算する処理を行い、その後、制御部40は、減算器43として機能することで、その除算結果を用いて式(12)の演算を行い、質量mを算出する処理を行う。即ち、制御部40は、力センサ1及び加速度センサ4の検出信号に基づいて、物品Qの質量mを算出する。
【0052】
(3−2)第2質量測定方式の制御系
図8は、質量測定装置100の第2質量測定方式における制御系のブロック図である。
図8において、制御部40は、ローパスフィルタ37bを経た加速度センサ4の検出信号を補正部45で、加速度センサ4に付帯する構造体の重量分に相当する出力レベルを零レベルに補正する。次に制御部40は、係数乗算部47で補正部45を経た検出信号に加速度センサ4に付帯する構造体の質量に基づく係数を掛ける。
【0053】
そして、制御部40は、ローパスフィルタ37aを経た力センサ1の検出信号から、係数乗算部47を経た加速度センサ4の検出信号を減算して質量mを算出する。
【0054】
(4)質量測定装置100の動作
上記のように構成された質量測定装置100について、その動作例を以下で説明する。例えば、ある生産工程においてコンベアを流れる物品について、質量測定後に質量チェックを行い、ダンボール詰めするものとする。質量チェックでは、物品の質量が所定許容範囲内であるか否かを判定して、OK品はダンボール詰めを行い、NG品は不良品箱に入れるものとする。また本生産工程では複数種類の物品の処理を行っているものとする。
【0055】
(4−1)各動作での計量方式
制御部40は、搬送コンベアを流れる物品Qを吸着部2で保持する。次に制御部40は、ロボットアーム3の動作を制御して、物品Qに加速度が作用するように鉛直上方へ移動させる(コンベアから持ち上げる動作)。このとき、力センサ1および加速度センサ4の感度方向が鉛直になるように設定することで、鉛直方向移動による物品Qに作用する力と加速度が検出できる。なお、感度方向とは、ロードセルのような力に反応するセンサに対して、任意の力を様々な方向に作用させたとき、最もセンサ出力が大きくなる方向である。
【0056】
制御部40は、除算器41により力センサ1の出力を加速度センサ4の出力で除算する処理を行う。その後、制御部40は、減算器43として機能することで、前段で求めた除算結果を用いて式(12)の演算を行い、質量mを算出する。(第1質量測定方式)。
【0057】
続いて制御部40は、物品Qを水平に移動させる(コンベヤの上方からダンボール箱の上方へ移動させる動作)。このとき、力センサ1および加速度センサ4の感度方向が移動方向に対して垂直となるので、力センサ1および加速度センサ4は、移動方向の力と加速度をほとんど検出しない。したがって、力センサ1の出力を物品Qに作用する鉛直方向の力とみなすことができ、第2質量測定方式で物品Qの質量mを算出することができる。また、加速度センサ4の出力を物品Qに伝播した機械振動とみなして、力センサ1の出力から加速度センサ4の出力を減算することにより、力センサ1の出力から機械振動の影響を除去することで、計量精度を向上することができる。(第2質量測定方式)。
【0058】
(4−2)質量測定方式の選択
第1質量測定方式では、移動の際の加速度が大きいほど、出力信号が大きくなるため、S/N比が向上し、精度の高い質量算出結果が得られる。一方、第2質量測定方式では、移動時の加速度が小さいほど、力センサ1の出力に加わる機械振動等の外乱が小さくなるため、計量精度が向上する。例えば、物品Qを低速且つ等速で移動させながら質量測定するとき、或いは物品Qを持ち上げるだけのほぼ静止状態で質量測定するときは、第1質量測定部であえて物品に加速度を与えて質量測定するよりも、第2質量測定部で対応する方が合理的である。
【0059】
そこで、制御部40は、第1質量測定方式での加速度センサ4の最大出力と事前に設定した閾値(例えば1.4G)を比較する。その結果、加速度センサ4の最大出力が閾値以上であれば第1質量測定方式による算出結果を採用し、閾値未満であれば第2質量測定方式の算出結果を採用する。
【0060】
(4−3)質量チェックの処理
算出された物品Qの質量mが許容範囲内であれば、制御部40は物品QをOK品と判断する。その後、制御部40はロボットアーム3の動作を制御して、物品Qをダンボール箱に箱詰めするように制御する。他方、算出された物品Qの質量mが許容範囲から外れていた場合、制御部40は物品QをNG品と判断する。その後、制御部40はロボットアーム3の動作を制御して、物品Qを不良品箱まで運ぶ。
【0061】
一般に、複数種類の物品が流れる生産工程では、物品の種類(大きさ・柔らかさ・保持の容易さ等)に応じて、物品を移動させる動作(加速度)を変更させる必要がある。そのため、物品を移動させる動作を一定にすることはできない。しかしながら、以上のように、物品Qを持ちかえることなく2つの異なる質量測定方式で物品Qの質量を測定することができるので、物品Qを移動させる動作に対応した精度の高い質量測定を行うことが可能となる。
【0062】
(5)特徴
(5−1)
質量測定装置100は、第1質量測定部と、第2質量測定部と、制御部40とを備えている。第1質量測定部は、物品Qを保持してその質量を測定する。第2質量測定部は、物品Qを第1質量測定部に保持させたまま、第1質量測定部と異なる方式で物品Qの質量を測定する。制御部40は、所定条件成立時、第2質量測定部での質量測定を優先する。この質量測定装置100では、物品Qを持ち替えることなく2つの方式で質量測定することができるので、生産状況に対応した精度の高い質量測定を実現するとともに、作業時間の無駄を解消することができる。
【0063】
(5−2)
また、質量測定装置100では、第1質量測定部の質量測定に連動して第2質量測定部が質量測定するので、所定条件が成立したあと、測定値が速やかに出力される。その結果、工程での生産性を損なうことなく、精度の高い質量測定が行われる。
【0064】
(5−3)
第1質量測定部が、物品Qを移動させ、移動時の物品Qに作用する力を移動時の物品Qに作用する加速度で除算して物品の質量を算出する。第2質量測定部は、物品Qに作用する鉛直方向の力を重力加速度で除算して、又はその原理を応用して物品の質量を算出する。第2質量測定部は一般に静止状態または緩慢な揺れのある状態で利用される質量測定方式であり、移動しながら質量測定する第1質量測定部と併用されることによって、生産工程の変更、或いは生産品の変更などの生産状況の変化に応じて、測定方式を変更することができる。
【0065】
(5−4)
この質量測定装置100では、第1質量測定部が、物品Qを保持する吸着部2と、吸着部2を移動させるロボットアーム3と、移動時の物品に作用する力を測定する力センサ1と、移動時の物品に作用する加速度を測定する加速度センサ4とを有している。質量測定装置100は、物品Qを移動させながら質量を測定することができ、産業用ロボットと組み合わせることによって、質量検査、及びその質量検査結果に基づく振り分けをロボット側で行うことができる。その結果、ウエイトチェッカおよび振り分け装置を既存の生産工程から撤去することができる。
【0066】
(6)変形例
(6−1)第1変形例
上記実施形態では、1つの力センサ1が3次元の3方向それぞれについて力を検出し、1つの加速度センサ4が3次元の3方向それぞれについて加速度を検出する構成であるが、これに限定されるものではない。
【0067】
図9は、第1変形例に係る質量測定装置150の概略斜視図である。
図9において、質量測定装置150は、吸着部12、ロボットアーム13、第1力センサ111、第2力センサ112、第3力センサ113、第1加速度センサ141、第2加速度センサ142、及び第3加速度センサ143を備えている。吸着部12は、上記実施形態の吸着部2と同様に、エアー吸着機構が採用されている。ロボットアーム13は、吸着部12を3次元的に移動させる。また、ロボットアーム13は、所定の回転軸CBを中心にしてCW方向およびCCW方向に回転することもできる。
【0068】
第1力センサ111、第2力センサ112及び第3力センサ113は歪みゲージ式ロードセルである。歪みゲージ式ロードセルは、移動によって自由端側が固定端側に対して相対的に変位し、それによって自由端側に作用する力を検出することができる。
【0069】
第1力センサ111、第2力センサ112及び第3力センサ113は、それぞれの感度方向をZ軸方向、Y軸方向、X軸方向に向けて配置されている。
【0070】
第1力センサ111の一端(固定端)は取り付け部材131を介してロボットアーム13に固定され、第1力センサ111の自由端には第1接続部材161が連結されている。
【0071】
また、第2力センサ112の一端(固定端)は第1接続部材161に連結され、第2力センサ112の自由端には、第2接続部材162が連結されている。また、第3力センサ113の一端(固定端)は第2接続部材162に連結され、第3力センサ113の自由端には、第3接続部材163が連結されている。そして、吸着部12が第3接続部材163を介して第3力センサ113と連結されている。
【0072】
第1加速度センサ141、第2加速度センサ142及び第3加速度センサ143も歪みゲージ式ロードセルであり、それぞれの感度方向をZ軸方向、Y軸方向、X軸方向に向けて配置されている。
【0073】
第1力センサ111、第2力センサ112及び第3力センサ113には、くり貫き部とよばれる感度方向と直交する方向に貫通する孔が設けられており、これ以降、くり貫き部111a,112a,113aとよぶ。
【0074】
同様に、第1加速度センサ141、第2加速度センサ142及び第3加速度センサ143にも、くり貫き部とよばれる感度方向と直交する方向に貫通する孔が設けられており、これ以降、くり貫き部141a,142a,143aとよぶ。
【0075】
第1加速度センサ141、第2加速度センサ142及び第3加速度センサ143の大きさは、第1力センサ111、第2力センサ112及び第3力センサ113のくり貫き部111a,112a,113aに収まる程度の大きさである。
【0076】
第1加速度センサ141は、第1力センサ111のくり貫き部111a内に片持ち梁上に固定されている。また、第2加速度センサ142は、第2力センサ112のくり貫き部112a内に片持ち梁上に固定されている。また、第3加速度センサ143は、第3力センサ113のくり貫き部113a内に片持ち梁上に固定されている。
【0077】
以上のような構成によって、第1力センサ111及び第1加速度センサ141は、物品QがZ軸方向に移動するときに物品Qに作用する力と加速度を検出する。また、第2力センサ112及び第2加速度センサ142は、物品QがY軸方向に移動するときに物品Qに作用する力と加速度を検出する。第3力センサ113及び第3加速度センサ143は、物品QがX軸方向に移動するときに物品Qに作用する力と加速度を検出する。
【0078】
この変形例1に係る質量測定装置150では、物品Qの移動方向に制約されることなく物品Qを移動させながら質量を測定することができるので、産業用ロボットとの組み合わせに適している。
【0079】
(6−2)第2変形例
第1変形例では、3つの力センサ(ロードセル)によって物品Qに作用するX,Y,Z軸方向の力を検出し、さらに3つの加速度センサ(ロードセル)によって物品Qに作用するX,Y,Z軸方向の加速度を検出するので、合計6つのロードセルが必要となる。仮に、力および加速度の検出をそれぞれ1つのロードセルで対応することができるならばコスト低減となる。
【0080】
図10は、第2変形例に係る質量測定装置200の側面図である。
図10において、質量測定装置200は、力センサ21と、ロボットハンド22と、ロボットアーム23と、加速度センサ24とを備えている。力センサ21及び加速度センサ24は歪みゲージ式ロードセルであり、感度方向を傾けた姿勢で配置されている。
【0081】
例えば、力センサ21及び加速度センサ24の感度方向が水平方向に対して角度θ傾斜している場合、質量mの物品Qに鉛直方向の加速度aが作用するとき、力センサ21はm・(g+a)sinθの力を検出し、加速度センサ24は(g+a)sinθの加速度を検出する。なお、gは重力加速度である。他方、質量mの物品Qに水平方向の加速度aが作用するとき、力センサ21はm・a・cosθの力を検出し、加速度センサ24はa・cosθの加速度を検出する。
【0082】
以上のように、第2変形例に係る質量測定装置200は、1個の力センサ21及び1個の加速度センサ24が鉛直方向と水平方向のいずれの方向に移動しても、そのときに物品Qに作用する力および加速度の感度方向成分を検出することができる。
【0083】
また、力センサ21及び加速度センサ24は水平軸61まわりに回転可能であるので、力センサ21及び加速度センサ24の傾斜角度θは任意に設定可能である。さらに、力センサ21及び加速度センサ24は任意の傾斜角度θで傾斜した状態のまま鉛直軸62まわりにも回転可能であるので、力センサ21及び加速度センサ24の感度方向は任意の方向に設定可能である。したがって、第2変形例に係る質量測定装置200は、力センサ21及び加速度センサ24の感度方向を物品Qの移動方向の変化に追従させることができる。
【0084】
その結果、第2変形例に係る質量測定装置200では、力センサ21および加速度センサ24を増設することなく、鉛直方向を含む互いに直交する3方向のいずれに対しても、力および加速度を測定することができる。
【0085】
(6−3)第3変形例
図11Aは、力センサ21及び加速度センサ24が所定姿勢をとる第3変形例に係る質量測定装置250の概略側面図である。また、
図11Bは、力センサ21及び加速度センサ24が他の姿勢をとる第3変形例に係る質量測定装置250の概略側面図である。
図11A及び
図11Bにおける質量測定装置250の構成は
図10で示した第2変形例から鉛直軸62まわりの回転機構を廃止した構成であり、その他の構成は第2変形例と同様である。
【0086】
図11Aにおいて、質量測定装置250の力センサ21及び加速度センサ24は感度方向が鉛直方向となる姿勢をとっている。通常、物品Qの移動には鉛直移動が含まれているので、力センサ21及び加速度センサ24が反応する。また、物品Qの移動が3次元的傾斜方向であっても力センサ21及び加速度センサ24には鉛直方向の成分が出力される。
【0087】
制御部40は、ロボットハンド22及びロボットアーム223を制御して物品Qを移動させるので、物品Qが鉛直方向を含む移動している期間、力センサ21及び加速度センサ24の出力に基づいて質量を算出することができる。
【0088】
他方、
図11Bにおいて、質量測定装置250の力センサ21及び加速度センサ24は感度方向が水平方向となる姿勢をとっている。なお、姿勢の変更は、力センサ21及び加速度センサ24が水平軸61まわりに回転可能であるので、力センサ21及び加速度センサ24の感度方向の傾斜角度は任意に設定可能である。
【0089】
通常、物品Qの移動には水平移動が含まれているので、力センサ21及び加速度センサ24が反応する。また、物品Qの移動が3次元的傾斜方向であっても力センサ21及び加速度センサ24には水平方向の成分が出力される。
【0090】
制御部40は、ロボットハンド22及びロボットアーム223を制御して物品Qを移動させるので、物品Qが水平方向を含む移動している期間、力センサ21及び加速度センサ24の出力に基づいて質量を算出することができる。
【0091】
それゆえ、この第3変形例に係る質量測定装置250では、鉛直方向および水平方向のいずれの方向に対しても、力センサ21及び加速度センサ24を増設することなく力および加速度を測定することができる。
【0092】
(7)その他
第2質量測定方式では、加速度センサ4,141,24が物品Qに作用する振動加速度を検出しているが、加速度センサ4,141,24とは別に機械振動を検出する振動センサをロボットアーム3,13,23,223側に設けても何ら支障はなく、本発明の技術的範囲であることは明らかである。