(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気通路を内部に有するケーシングと、該ケーシングの内部に移動自在に設けられ前記空気通路を遮断する方向に移動することで該空気通路の連通状態を切り換えるスライド機構とを有する車両用空調装置において、
前記ケーシングは、前記スライド機構の変位方向と直交する幅方向に分割自在に形成され、前記スライド機構と係合して該スライド機構を案内するガイド部と、
前記スライド機構の下流側に当接し、前記空気通路の上流と下流との連通を遮断する着座部と、
を備え、
前記スライド機構は、前記着座部と当接することで前記空気通路を遮断するドア本体と、
前記ケーシングに回転自在且つ前記ドア本体の上流側に設けられ、前記ドア本体を駆動するシャフトと、
前記ドア本体における幅方向端部に設けられ、前記ガイド部に係合される係合部と、
を有し、
前記ガイド部及び前記係合部の少なくともいずれか一方は、前記ドア本体のシール部側への傾きを正規位置へと補正する補正部を有することを特徴とする車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、上述した特許文献1に係るスライドダンパ装置を、2つの分割ケーシングを有した車両用空調装置に適用しようとした場合、一方の分割ケーシングにスライドダンパを組み付けた状態で、他方の分割ケーシングを組み付けることとなるが、前記スライドダンパががたつくことで、効率よく組み付けることが難しい。
【0007】
また、上述した特許文献2に係る車両用空調装置のように、2分割されたケースに対してスライド変位するミックスドア本体を組み付ける場合には、一方のケースに前記ミックスドア本体を組み付けた状態で、他方のケースを組み付けることが困難であり組付性の低下を招くこととなる。一方、ミックスドア本体を含むミックスドア部をユニット化した場合には、ケースに対する組付性を向上させることはできるが、その反面、部品点数の増加に伴って重量が増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成で、分割構造のケーシングに対してスライドダンパを確実且つ効率的に組み付けることが可能な車両用空調装
置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気通路を内部に有するケーシングと、該ケーシングの内部に移動自在に設けられ前記空気通路を遮断する方向に移動することで該空気通路の連通状態を切り換えるスライド機構とを有する車両用空調装置において、
前記ケーシングは、前記スライド機構の変位方向と直交する幅方向に分割自在に形成され、前記スライド機構と係合して該スライド機構を案内するガイド部と、
前記スライド機構の下流側に当接し、前記空気通路の上流と下流との連通を遮断する着座部と、
を備え、
前記スライド機構は、前記着座部と当接することで前記空気通路を遮断するドア本体と、
前記ケーシングに回転自在且つ前記ドア本体の上流側に設けられ、前記ドア本体を駆動するシャフトと、
前記ドア本体における幅方向端部に設けられ、前記ガイド部に係合される係合部と、
を有し、
前記ガイド部及び前記係合部の少なくともいずれか一方は、前記ドア本体のシール部側への傾きを正規位置へと補正する補正部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、幅方向に分割自在なケーシングと、該ケーシングの内部に移動自在に設けられ前記空気通路を遮断する方向に移動することで該空気通路の連通状態を切り換えるスライド機構とを有した車両用空調装置において、前記ケーシングに、前記スライド機構と係合して該スライド機構を案内するガイド部が形成され、一方、前記スライド機構には、前記空気通路を遮断するドア本体の幅方向端部に前記ガイド部に係合される係合部が形成される。また、ガイド部及び係合部の少なくともいずれか一方が、前記ドア本体の前記シール部側への傾きを正規位置に補正する補正部を備えている。
【0011】
従って、分割された一方のケーシングに対してスライド機構を組み付ける際、直立に固定されたシャフトと、前記スライド機構のドア本体が着座部側によって保持されることで前記ドア本体が前記ケーシングに対して一定以上倒れてしまうことを防止すると共に、ガイド部及び/又は係合部に前記ドア本体の傾きを正規位置に補正する補正部を設けることで、前記ドア本体が多少傾いた状態でも、ケーシングを組み付けることで前記ドア本体が強制的に正規位置へと補正される。その結果、スライド機構のドア本体がケーシングに対して一定以上倒れてしまうことが防止されるため、スライド機構の装着された一方のケーシングに対して他方のケーシングを組み付ける際、作業者が前記スライド機構を押さえながら組み付け作業を行う必要がなく、簡素な構成で前記組み付け作業を確実且つ効率的に行うことができる。
【0012】
また、ガイド部又は係合部のいずれか一方は、他方へ向けて開口した凹部を有し、前記他方は前記凹部へ挿入される凸部を有し、補正部を凸部の先端に向けて傾斜した傾斜面とするとよい。
【0013】
さらに、ガイド部又は係合部のいずれか一方は、他方へ向けて開口した凹部を有し、前記他方は前記凹部へ挿入される凸部を有し、補正部を前記凹部の開口側が底部側よりも広がるように傾斜させた傾斜面とするとよい。
【0014】
さらにまた、ドア本体には、着座部に向かって突出し、ケーシングの組み付け時におけるドア本体の倒れを抑制する倒れ防止部を形成するとよい。
【0015】
またさらに、倒れ防止部を、ドア本体の移動方向に沿って延在し、該ドア本体の側面から突出したリブとするとよい。
【0016】
また、ドア本体には、該ドア本体の移動方向に沿った端部に着座部側に向かって突出し、該着座部に当接するシール部を備え、前記ドア本体の厚さ方向において、倒れ防止部の高さを、前記シール部の高さに対して低く設定するとよい。
【0017】
さらに、倒れ防止部を、弾性材料から形成するとよい。
【0018】
さらにまた、倒れ防止部を、シール部と一体成形により形成するとよい。
【0019】
またさらに、ケーシングには、シャフトの挿入される挿入孔と、
前記挿入孔の周囲に形成され、シャフトの軸方向に延在する挿入筒部と、
を備え、
前記シャフトには、ケーシングと対向する端部に前記挿入筒部の挿入される環状溝を有するとよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0023】
すなわち、本発明によれば、分割された一方のケーシングに対してスライド機構を組み付ける際、直立に固定されたシャフトと、前記スライド機構のドア本体が着座部側によって保持されることで前記ドア本体が前記ケーシングに対して一定以上倒れてしまうことを防止すると共に、ガイド部及び/又は係合部に前記ドア本体の傾きを正規位置に補正する補正部を設けることで、前記ドア本体が多少傾いた状態でも、ケーシングを組み付けることで前記ドア本体が強制的に正規位置へと補正される。その結果、スライド機構の装着された一方のケーシングに対して他方のケーシングを組み付ける際、作業者が前記スライド機構を押さえながら組み付け作業を行う必要がなく、簡素な構成で、組み付け作業を確実且つ効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0026】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。
【0027】
この車両用空調装置10は、
図1に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング12と、前記ケーシング12の内部に配設され、空気を冷却するエバポレータ14と、前記空気を加熱するヒータコア16と、前記ケーシング12内に導入された空気を、エバポレータ14及びヒータコア16によって熱交換を行い、調温された冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とするエアミックスダンパ(スライド機構、スライドダンパ)18と、前記ケーシング12の側面に設けられた駆動源(図示せず)の駆動力を前記エアミックスダンパ18へと伝達し、回動変位させる駆動力伝達機構20とを含む。
【0028】
このケーシング12は、略対称形状の第1及び第2分割ケーシング22、24からなり、該第1分割ケーシング22の側部に開口した開口部には、図示しない送風機によって前記ケーシング12内へ空気が導入されるダクト(図示せず)が装着される。
【0029】
また、ケーシング12の内部には、空気の流通方向における上流側(矢印A1方向)となる位置にエバポレータ14が設けられ、前記エバポレータ14に対して下流側(矢印A2方向)となる位置にヒータコア16が設けられる。このエバポレータ14とヒータコア16との間には、該エバポレータ14によって冷却された空気を、ケーシング12内において下流へと流通させる際、その流通量及び流通状態を調整するエアミックスダンパ18が設けられる。
【0030】
さらに、ケーシング12には、エアミックスダンパ18に対して上流側(矢印A1方向)となる位置に、図示しない駆動源の駆動力が伝達され前記エアミックスダンパ18を変位させるシャフト28が回転自在に設けられる。第1及び第2分割ケーシング22、24には、
図2に示されるように、空気の流通方向(矢印A1、A2方向)と略直交した内壁面34a、34bに挿入孔30a、30bがそれぞれ形成され、前記挿入孔30a、30bに後述するシャフト28の両端部が挿入される。
【0031】
この挿入孔30a、30bには、その外周側に円筒状の第1筒部32a、32bが内壁面34a、34bから突出するように形成され、その先端部には、外周面が半径内方向に縮径した小径部36a、36bが形成される。
【0032】
一方、ケーシング12には、
図1に示されるように、エアミックスダンパ18に対して下流側(矢印A2方向)となる位置に、後述するエアミックスダンパ18のシール部46a、46bが当接し、通路を分割する分割壁(着座部)38が設けられる。分割壁38は、ケーシング12に設けられたシャフト28と対向するように設けられ、該シャフト28及びエアミックスダンパ18に臨むシール面40を有し、前記シール面40には、後述するエアミックスダンパ18のリブ50a、50bが摺接する。
【0033】
一方、第1及び第2分割ケーシング22、24において、空気の流通方向(矢印A2方向)と略直交した内壁面34a、34bには、エアミックスダンパ18を変位自在に案内する一対のガイド部(補正部)42a、42bが形成される。ガイド部42a、42bは、ヒータコア16側に向かって大きな半径で断面円弧状に膨出するように形成され、
図4に示されるように、内壁面34a、34bに対してケーシング12の幅方向(矢印B方向)に所定高さで突出し、該内壁面34a、34bから離間する方向に向かって徐々に先細となるテーパ状に形成される。
【0034】
換言すれば、なお、ガイド部42a、42bは、ケーシング12の内壁面34a、34bから離間する方向に向かって徐々に厚さ寸法が小さくなるように形成される(
図4参照)。
【0035】
また、ガイド部42a、42bは、エアミックスダンパ18の変位方向に沿って略一定高さで延在している。
【0036】
エアミックスダンパ18は、ケーシング12の幅方向(
図4中、矢印B方向)に沿って設けられ、その両側部が、第1及び第2分割ケーシング22、24の内壁面34a、34bに設けられた一対のガイド部42a、42bに沿って案内される。このエアミックスダンパ18は、
図3Aに示されるように、大きな半径で形成された断面円弧状のプレートであり、エバポレータ14から離間する方向、すなわち、ヒータコア16側(
図1中、矢印A2方向)に向かって凸状となるように形成される。なお、エアミックスダンパ18は、ガイド部42a、42bの半径と同一半径となるように形成される。
【0037】
このエアミックスダンパ18は、例えば、樹脂製材料から形成されるドア本体44と、前記ドア本体44の端部に形成されるシール部46a、46bとからなり、前記ドア本体44をポリプロピレン等の樹脂製材料で成形した後、弾性を有する弾性材料(例えば、エラストマー材)を前記ドア本体44の周縁部に流し込んで成形を行う2色成形によって形成される。すなわち、エアミックスダンパ18は、樹脂製材料から形成されるドア本体44と、弾性材料から形成されるシール部46a、46bとが異なる材料から2色成形によって一体的に形成される。
【0038】
このドア本体44には、凹状に窪んだ内周面に沿って一組のラックギア48が設けられると共に、複数のリブ50a、50bが設けられる。ラックギア48は、ドア本体44の内周面においてエアミックスダンパ18のスライド方向に沿ってそれぞれ一直線状に形成され、該スライド方向と直交した幅方向(
図3A中、矢印C方向)の両端部近傍に設けられる。すなわち、一組のラックギア48は、ドア本体44の幅方向(矢印C方向)に所定間隔離間して平行に設けられる。
【0039】
このリブ50a、50bは、ドア本体44において凸状に膨出した外周面に形成され、ラックギア48と略平行、且つ、ドア本体44の幅方向内側となる位置に形成される。このリブ50a、50bは、ドア本体44の外周面に対して所定高さだけ突出して形成される。
【0040】
また、リブ50a、50bの高さは、エアミックスダンパ18のスライド方向に沿って略一定となるように形成される。
【0041】
一方、ドア本体44における幅方向(矢印C方向)の端部52には、断面U字状で外側に向かって開口したガイド溝(係合部)54a、54b(
図4参照)がそれぞれ形成される。そして、ガイド溝54a、54bには、第1及び第2分割ケーシング22、24のガイド部42a、42bがそれぞれ挿入されることで、前記ガイド部42a、42bによってドア本体44を含むエアミックスダンパ18が案内される。
【0042】
なお、第1及び第2分割ケーシング22、24のガイド部42a、42bをテーパ状に形成する代わりに、上述したガイド溝54a、54bを、開口部位から離間する方向(ドア本体44の幅方向内側)に向かって徐々に先細となるテーパ状に形成するようにしてもよい。
【0043】
シール部46a、46bは、例えば、断面三角形状に形成され、ドア本体44においてエアミックスダンパ18のスライド方向に沿った両端部にそれぞれ形成される。そして、シール部46a、46bは、リブ50a、50bの形成されるドア本体44の外周面に対して所定高さだけ突出するように形成され、前記外周面に対する突出高さは、前記リブ50a、50bの突出高さに対して高くなるように設定される。換言すれば、エアミックスダンパ18における厚さ方向に沿ったリブ50a、50bの高さは、シール部46a、46bの高さに対して低くなるように設定されている。
【0044】
駆動力伝達機構20は、例えば、ステッピングモータ等の駆動源の駆動力を変速して伝達する複数のギアを有し、前記ギアに噛合され前記駆動力をエアミックスダンパ18へと伝達するシャフト28を有する。このシャフト28は、外周面にギア歯が刻設されエアミックスダンパ18のラックギア48に噛合されるピニオンギア56と、前記シャフト28の両端部において、前記ピニオンギア56から軸方向に突出した円筒状の第2筒部58を有する。第2筒部58は、挿入孔30a、30bと略同一径で形成され、第1筒部32a、32b及び挿入孔30a、30bの内部に挿入される。なお、シャフト28の一端又は他端の第2筒部58には、図示しないリンクアームに形成されたギアと噛合する、入力ギア(図示せず)が形成され、前記リンクアームが前記駆動源により回動することでシャフト28が所定角度だけ回動する。
【0045】
また、第2筒部58とピニオンギア56との接合部位には、該第2筒部58に対して外周側に環状溝60が形成され、ケーシング12に形成された第1筒部32a、32bの小径部36a、36bがそれぞれ挿入される。これにより、シャフト28をケーシング12の挿入孔30a、30bに対して同軸上に組み付けることができる。
【0046】
また、上述したエアミックスダンパ18は、リブ50a、50bを有したドア本体44を樹脂製材料から成形することで形成し、前記ドア本体44の周縁部に形成されるシール部46a、46bを、前記樹脂製材料とは異なる弾性材料で一体的に成形する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図3Bに示されるエアミックスダンパ100のように、ドア本体102に形成されるリブ104a、104bを、シール部106a、106bと共に弾性材料から成形し、前記ドア本体102とは異なる材料から形成するようにしてもよい。具体的には、先ず、樹脂製材料からドア本体102を成形した後、前記ドア本体
102の周縁部及び該ドア本体102の側面に対して弾性材料を充填することで、リブ104a、104b及びシール部106a、106bを前記ドア本体102に対して一体的に成形する。
【0047】
このような構成とすることにより、エアミックスダンパ100の製造コストを削減できる。
【0048】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に前記車両用空調装置10における第1及び第2分割ケーシング22、24の組み付けについて説明する。なお、車両用空調装置10のケーシング12には、予めエバポレータ14及びヒータコア16が組み付けられている状態とする。
【0049】
先ず、
図4に示されるように、ケーシング12を構成する第1及び第2分割ケーシング22、24が互いに分割された状態で、例えば、前記第2分割ケーシング24を床面S等に載置する。この場合、第2分割ケーシング24は、その内部が上方に向かって開口するように載置する。
【0050】
次に、エアミックスダンパ18を第2分割ケーシング24の内部に挿入し、リブ50a、50bの形成された外周面をヒータコア16側(分割壁38側)、ラックギア48の設けられた内周面を、エバポレータ14側(矢印A1方向)となるように配置し、その幅方向端部52に形成されたガイド溝54bにガイド部42bを挿入させる。この際、ガイド部42bは、先端が先細となったテーパ状に形成されているため、前記ガイド溝54bに前記ガイド部42bを容易且つ確実に挿入することができる。これにより、エアミックスダンパ18における一方の幅方向端部52が、ガイド部42bによって保持される。
【0051】
また、エアミックスダンパ18は、そのリブ50a、50bが分割壁38のシール面40に当接するように、ガイド部42a、42bの延在方向に沿った略中央部に配置しておく。
【0052】
次に、シャフト28の一端部を、第2分割ケーシング24の挿入孔30bに挿入し、床面Sに対して略直交させた状態とする。この場合、シャフト28は、
図2に示されるように、その端部に設けられた第2筒部58がケーシング12の第1筒部32bに挿入されることで同軸上に組み付けられて保持され、しかも、前記第1筒部32bの小径部36bが前記シャフト28の環状溝60に挿入されることで、より確実且つ高精度に同軸上で回転自在に保持されることとなる。また、シャフト28のピニオンギア56を、エアミックスダンパ18のラックギア48に噛合させる。
【0053】
これにより、エアミックスダンパ18は、分割壁38とシャフト28との間に配置されることで、該分割壁38及びシャフト28によって一定以上の倒れ(傾斜)が防止され、第2分割ケーシング24の内壁面34bに対して略直立した状態で保持される。すなわち、エアミックスダンパ18は、例えば、作業者が保持しておくことなく、第2分割ケーシング24の内壁面34bに対して略直立した状態で仮組みされる。
【0054】
そして、最後に、第2分割ケーシング24の上部から第1分割ケーシング22を組み付ける。この際、第1分割ケーシング22は、その開口部が下方、すなわち、前記第2分割ケーシング24側となるように該第2分割ケーシング24側(下方)に向かって接近させていく。これにより、シャフト28の他端部に形成された第2筒部58が、第1分割ケーシング22の挿入孔30aへと徐々に挿入され始め、次に、第1分割ケーシング22に形成されたガイド部42aが、エアミックスダンパ18における他方の幅方向端部52に形成されたガイド溝54aに挿入されていく。
【0055】
この際、第1分割ケーシング22のガイド部42aは、第2分割ケーシング24側に向かって徐々に先細となるテーパ状に形成されているため、例えば、エアミックスダンパ18が若干だけ傾斜していたとしても、ガイド溝54aに対して容易に挿入されると共に、予め設定された所定の位置(正規位置)へと補正されて組み付けられる。
【0056】
また、シャフト28は、
図2に示されるように、他端部の第2筒部58が第1分割ケーシング22の挿入孔30a及び第1筒部32aに挿入され、且つ、環状溝60に小径部36aが挿入されることで、前記第1分割ケーシング22の挿入孔30aに対して同軸且つ回転自在に保持される。なお、このシャフト28は、第2分割ケーシング24の内壁面34
bに対して直立するように、図示しない治具等で一時的に固定するようにしてもよい。
【0057】
そして、第2分割ケーシング24の開口した端部に、第1分割ケーシング22の開口した端部を重ね合わせ、図示しない固定手段(ボルト等)で互いに固定することにより、車両用空調装置10に対するエアミックスダンパ18の組み付けが完了する。
【0058】
なお、組み付けられたエアミックスダンパ18は、そのリブ50a、50bが分割壁38のシール面40に対して若干だけ離間するように設けられる(
図1参照)。これにより、エアミックスダンパ18がガイド部42a、42bに沿って移動する際の摺動抵抗が抑制され、円滑に変位させることができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、エアミックスダンパ18を構成するドア本体44の幅方向端部52にそれぞれガイド溝54a、54bを形成し、一方、該ガイド溝54a、54bに臨む第1及び第2分割ケーシング22、24の内壁面34a、34bに、該内壁面34a、34bから突出した一対のガイド部42a、42bを形成し、且つ、前記ガイド部42a、42bを前記内壁面34a、34bから離間する方向に向かって先細となるテーパ状に形成している。
【0060】
これにより、エアミックスダンパ18を第1及び第2分割ケーシング22、24に対して組み付ける際、ガイド部42a、42bをガイド溝54a、54bに対して挿入しやすく、しかも、エアミックスダンパ18がケーシング12に対して傾いていても予め設定された所定の位置(正規位置)に補正することができる。
【0061】
その結果、例えば、第1分割ケーシング22と第2分割ケーシング24とを組み付ける際に、作業者がエアミックスダンパ18を押さえておくことなく確実且つ効率的に組み付けることが可能となる。
【0062】
また、エアミックスダンパ18を構成するドア本体44の外周面に、該エアミックスダンパ18の移動方向に沿って延在し、且つ、前記外周面から突出したリブ50a、50bを設けることにより、前記エアミックスダンパ18を2分割された第1及び第2分割ケーシング22、24の内部へと組み付ける際、例えば、前記リブ50a、50bを第1及び第2分割ケーシング22、24における分割壁38のシール面40に当接させた状態で、シャフト28のピニオンギア56を前記エアミックスダンパ18のラックギア48に噛合させることで、前記エアミックスダンパ18の傾きを抑制することができる。
【0063】
そのため、エアミックスダンパ18の仮組みされた第2分割ケーシング24に対して、もう一方の第1分割ケーシング22を組み付けることで、前記エアミックスダンパ18を第1及び第2分割ケーシング22、24に対して確実且つ効率的に組み付けることができる。
【0064】
さらに、エアミックスダンパ18は、例えば、ドア本体44を樹脂製材料から成形し、該ドア本体44を成形した後に、その周縁部に弾性材料を流し込んでシール部46a、46bを成形する2色成形で一体成形されるため、その製造コストの削減を図ることができる。
【0065】
さらにまた、リブ50a、50bは、ドア本体44の外周面に対して部分的に突出するよう設けられているため、エアミックスダンパ18をケーシング12の内部でスライド変位させる際、例えば、前記リブ50a、50bが分割壁38のシール面40へ当接した場合でも、前記外周面が全面的に前記シール面40に当接した場合と比較し、その摺動抵抗を抑制することができる。すなわち、エアミックスダンパ18とシール面40との接触面積を小さくすることで摺動抵抗を抑制可能となる。
【0066】
またさらに、ドア本体44に設けられたリブ50a、50bは、シール部46a、46bの突出高さに対して低くなるように形成されるため、前記シール部46a、46bが確実に分割壁38に当接することで通路間の空気の流通を遮断でき、しかも、リブ50a、50bが前記分割壁38のシール面40に当接しにくくすることが可能となる。
【0067】
また、リブ50a、50bを弾性材料で形成することにより、分割壁38のシール面40に接触した場合でも、前記シール面40と比較して硬度が低いため、該シール面40を傷つけてしまうことが防止されると共に、前記シール面40と当接した際、リブ50a、50bの弾性力によってドア本体44をシャフト28側へと付勢するため、ラックギア48と前記シャフト28との噛合状態をより良好とすることができる。
【0068】
次に、上述したようにエアミックスダンパ18の組み付けられた車両用空調装置10の動作について簡単に説明する。
【0069】
先ず、図示しない乗員が、車両用空調装置10の搭載された車両の車室内に配置された操作レバーを操作することで、該操作レバーの操作に応じて図示しない駆動源が回転駆動する。この駆動源の駆動力が複数のギア及びリンクアームを介してシャフト28へと伝達され、該シャフト28が所定角度だけ回動する。これにより、シャフト28のピニオンギア56に噛合されたエアミックスダンパ18が、一対のガイド部42a、42bのガイド作用下に上方又は下方へと所定距離だけスライド変位する。その結果、エアミックスダンパ18が変位することで、ケーシング12内の通路における空気の流通状態が制御され、該通路から車室内へと供給される空気の送風量、送風温度が制御される。
【0070】
また、上述したガイド部42a、42bは、ケーシング12の内壁面34a、34bから先端に向かってテーパ状に形成される場合に限定されるものではなく、例えば、
図5Aに示される第1変形例に係る車両用空調装置150のように、先端のみがテーパ状に形成され、該先端からケーシング12の内壁面34a、34bまでの間が一定径で形成されたガイド部152としてもよいし、
図5Bに示される第2変形例に係る車両用空調装置160のように、外周側に向かって断面湾曲状に膨出し、且つ、先端に向かって徐々に縮径するガイド部162としてもよい。すなわち、ガイド部152、162の先端が先細状となるように形成することで、エアミックスダンパ18のガイド溝54a、54bに対して容易に挿入することが可能となる。
【0071】
一方、エアミックスダンパ18のガイド溝54a、54bは、ドア本体44の幅方向に沿って略同一の幅寸法、且つ、同一厚さで形成される場合に限定されるものではなく、例えば、
図5Cに示される第3変形例に係る車両用空調装置170のように、ガイド溝172における一方の壁部174をガイド部176側に向かって拡幅するように傾斜させるようしてもよいし、
図5Dに示される第4変形例に係る車両用空調装置180のように、ガイド溝182の内壁面184を、ガイド部186側に向かって拡幅するようにテーパ状に形成してもよい。この場合、ガイド部186の先端もテーパ状に形成される。このような構成とすることにより、ガイド溝172、182に対してガイド部176、186を挿入させる際に、より一層容易且つ確実に挿入させることが可能となる。
【0072】
さらに、上述したようにエアミックスダンパ18の側部に凹状のガイド溝54a、54bを形成し、該ガイド溝54a、54bに臨むケーシング12の内壁面34a、34bに凸状のガイド部42a、42bを設ける代わりに、
図5Eに示される第5変形例に係る車両用空調装置190のように、前記エアミックスダンパ18の側部に凸状のガイド部192を設け、一方、ケーシング12の内壁面34a、34bに凹状のガイド溝194を設け、前記ガイド溝194に対して前記ガイド部192を挿入させる構成としてもよい。
【0073】
すなわち、上述した第1〜第5変形例のように、互いに挿入され係合されるガイド部152、162、176、186、192及びガイド溝172、182、194の少なくともいずれか一方の先端が、拡幅又は先細状となるように形成することにより、両者の挿入及び係合作業を一層容易に行うことが可能となる。
【0074】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。