(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977985
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】映像信号中継用の無線伝送システム、並びにその送信機又は受信機
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20160817BHJP
H04N 17/00 20060101ALI20160817BHJP
H04N 5/445 20110101ALI20160817BHJP
【FI】
H04W24/04
H04N17/00 A
H04N5/445 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-86718(P2012-86718)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-219467(P2013-219467A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 忠道
【審査官】
久慈 渉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−223459(JP,A)
【文献】
特開2002−271833(JP,A)
【文献】
特開2007−215066(JP,A)
【文献】
特開2010−171681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側機器の状態を取得してリアルタイムの送信側監視データとし、当該送信側監視データをTS信号からなる映像データに多重化して受信側に伝送し、送信側の異常監視を受信側で行うようにした映像信号中継用の無線伝送システムにおいて、
システム伝送系における障害の発生を前記送信側において検知する検知手段と、
前記送信側監視データを記憶する記憶手段と、
前記検知手段により前記障害の発生が検知されたときに前記送信側監視データを前記記憶手段に記憶させ、当該障害が復旧したときに当該記憶手段に記憶した当該送信側監視データと共に前記リアルタイムの送信側監視データを前記TS信号からなる映像データに多重化して受信側に伝送させる演算制御手段と、が備えられたことを特徴とする映像信号中継用の無線伝送システム。
【請求項2】
送信側機器の状態を取得してリアルタイムの送信側監視データとし、当該送信側監視データをTS信号からなる映像データに多重化して受信側に伝送し、送信側の異常監視を受信側で行うようにした映像信号中継用の無線伝送システムの送信機において、
伝送系における障害の発生を検知する検知手段と、前記送信側監視データを記憶する記憶手段と、
伝送系における障害の発生を前記検知手段により検知すると、当該検知した際に取得されている装置状態を前記記憶手段に記憶し、当該検知した障害が復帰した後に当該記憶手段に記憶された障害発生時の装置状態の送信未了を判別した結果、当該送信未了のデータが当該記憶手段に存在する場合には、前記送信側監視データに前記リアルタイムの送信側監視データを含ませた上で当該障害発生時の装置状態を付加して当該送信側監視データと映像データとを多重して送信する演算制御手段と、が備えられたことを特徴とする映像信号中継用の無線伝送システムの送信機。
【請求項3】
送信側機器の状態を取得してリアルタイムの送信側監視データとし、当該送信側監視データをTS信号からなる映像データに多重化して受信側に伝送し、送信側の異常監視を受信側で行うようにした映像信号中継用の無線伝送システムの受信機において、
送信側機器の監視を行う監視装置と、情報を表示するディスプレイと、
データが受信されたか否かを判断し、当該データが受信されなかった場合には送信側機器で障害が発生したことを前記ディスプレイに表示し、当該データが受信された場合には前記送信側監視データと前記映像データとを分離し、当該分離した送信側監視データに当該送信側機器で障害が発生した際に記憶した当該送信側機器の装置状態のデータが含まれているか否かを判断した結果、当該データが含まれていない場合には当該送信側監視データに含まれる前記リアルタイムの送信側監視データを当該ディスプレイに表示し、当該データが含まれている場合には当該送信側機器で障害が発生した際に記憶した当該送信側機器の装置状態のデータを当該ディスプレイに表示し、更に当該リアルタイムの送信側監視データを当該ディスプレイに表示する演算制御手段と、が備えられたことを特徴とする映像信号中継用の無線伝送システムの受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、映像信号の野外中継に好適なディジタル方式の
映像信号中継用の無線伝送システム
、並びにその送信機又は受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像信号の伝送には、ほとんどの場合、ディジタル方式を用いるのが一般的で、このため、従来からQAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式などの多値ディジタル変調方式による伝送が広く用いられている。
そして、これを用いたFPU(Field Pickup Unit)と呼称されている伝送システムによれば、電波伝播条件がかなり変化しても安定した中継伝送が容易に保持できるので、テレビジョン放送の野外中継に好適なシステムとして従来から重用されている。
【0003】
ところで、このようなディジタル映像信号の中継に使用される伝送システムの場合、一般的には送信側機器と受信側機器が所望の伝送系、例えば無線伝送系を介して結ばれているが、このとき信頼性保持の見地から異常の発生にいち早く対応できるようにするのが望ましく、このためにはシステムの動作を常時監視する必要がある。
そこで、従来から、送信側機器と受信側機器の動作を常時モニタするようにしたシステムが知られている。
【0004】
ここで、
図6(a)は、映像データの中継に使用される無線伝送システムの一例をイメージしたブロック図で、この場合、送信機Tは中継路の送信側に配置され、受信機Rは受信側に配置されている。
そして、送信機Tは無線中継すべき映像データを、例えばマイクロ波帯の周波数の搬送波に乗せ、アンテナから電波として送信し、受信機Rは、送信側から到来した電波をアンテナで受信し、受信した信号から映像データを復調して放送局に至る映像信号ラインに出力し、これにより中継動作が得られるようにしている。
【0005】
このとき、送信機Tと受信機Rには、センサや検出回路などからなる各種の検出部が設けられ、これにより入力信号レベル、送信レベル、受信レベル、機器の温度など、送信機Tと受信機Rの動作状態を表す各種の情報からなる動作状態データが取得できるようにしてあり、その上で、送信機Tには信号線L1を介して監視装置M1を接続し、受信機Rには信号線L2を介して監視装置M2を接続し、夫々上記した動作状態データを取り込み、これを各々監視装置M1、M2においてモニタし、異常の発生が認知できるようにしている。
【0006】
しかしながら、この
図6(a)の監視システムの場合、例えば送信機Tに何らかの異常が現れ、それを表す送信側監視データが動作検出部から与えられたとき、折悪しく
図6(b)に示すように、送信機Tと監視装置M1の間の監視データの伝送系(信号線L1を含む)にも異常が生じていたとすると、この場合、監視装置M1では監視データが取得されなくなって送信機Tの監視ができなくなってしまう。
これに対しては、送信機Tと監視装置M1の間の監視データの伝送系を二重系にするなど、多重化構成する方法があり、これによれば監視不能になる確率はかなり低く抑えられるが、この場合、コストの上昇が隘路になる。
【0007】
ここで、
図7は、送信機Tのモニタについても、受信側に設けた監視装置MCにより、受信機Rの監視と一緒に行えるようにした無線伝送システムの一例をイメージした場合で、送信機Tでは、そこにある検出部から送信側機器の動作状態を監視データとして取り込み、それを、このとき送信機Tから送信すべき映像データに重畳して受信機Rに伝送する。
そして受信側では、受信データから送信側監視データを分離し、自身の受信側監視データと共に監視装置MCに取り込み、機器の動作状況を解析し、解析結果をディスプレイDに表示すると共に、異常が検知された場合、異常発生を表示し、警報が与えられるようにする。
【0008】
ところで、上記した、FPUの場合、映像と音声をMPEG処理により圧縮したTS(Transport Stream:トランスポート ストリーム)と呼ばれる周知の形式の信号をディジタル映像データの伝送に用いている。
そこで、このTS信号に送信側監視データを重畳させ、送信側から受信側に伝送するようにした無線伝送システムがあり、以下、このシステムの一例について、
図8により説明する。
まず、この
図8のシステムも、基本的には
図7のシステムと同じで、送信機Tについての監視も、受信側に設けた監視装置MC(
図7)により、受信機Rの監視と並行して共通に行えるようにした場合の無線伝送システムである。
【0009】
そして、この
図8の場合、左側にある送信機Tには、映像・監視データ重畳部として機能するマルチプレクサMUX1が設けられ、これにより送信側状態データがTS信号形式の映像データTSに重畳された形で送信されるようになっている。
このとき送信機Tには、変調回路や高周波電力増幅回路など、一般的な送信機と同様な各種の回路機器が備えられているが、これらについては周知のことなので、図示してない。
次に、同じく
図8において、右側にある受信機Rでは、映像・監視データ分離部として機能するデマルチプレクサDEMUX1を用い、受信された映像データTSから送信側状態データを分離し、受信機R自体の受信側状態データと共に夫々送信側監視データと受信側監視データとして監視装置MC(
図7)に供給するようになっている。
【0010】
詳しく説明すると、まず、送信機Tにおいて、演算装置CPU1は、送信側の機器(主として送信機Tの機器)の温度、電圧、電流、信号状態など、動作状態を表す各種の情報を取り込み、監視データに加工してマルチプレクサMUX1の一方の入力に供給する。
このときマルチプレクサMUX1の他方の入力には、テレビカメラなど、外部にある所望の映像信号源から中継用の映像データTSが供給されている。
従って、このマルチプレクサMUX1では、
図9に示すように、映像データTSの1ストリーム毎に1単位分の監視データが挿入されてゆき、この結果、映像(データ)と監視(データ)が交互に並んだ形で重畳された信号TSがマルチプレクサMUX1から出力され、これが送信機Tの変調部に供給されることになる。
【0011】
次に、受信機Rでは、
図10に示すように、復調部からデマルチプレクサDEMUX1にTS信号が供給され、ここで映像データTSと監視データが分離されて出力される。
そして、この映像データTSは、中継信号として中継ラインに出力され、他方、監視用のデータ(監視データ)は演算装置CPU2に入力され、送信側監視データに加工された上、受信側監視データと共に監視装置MC(
図7)に供給され、監視に供されることになる。
なお、この受信機Rにおいても、図示してないが、高周波増幅回路や入力信号処理回路、各種のフィルタ、映像信号増幅回路など、一般的な受信機と同様な各種の回路機器が備えられているのは言うまでもない。
【0012】
従って、この
図8に示した無線伝送システムによれば、監視装置MCによる一箇所での監視により、受信側は勿論、送信側での異常についても遠隔監視でき、送信側の監視装置が不要になり、監視データ伝送用の信号線も不要になるのでコスト面で有利な上、送信側の信号線の異常による監視機能の喪失に備える必要もない。
【0013】
ここで、このような伝送システムに関連する従来技術としては、例えば特許文献1、2、3の開示を挙げることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−37306号公報
【特許文献2】特開平9−331300号公報
【特許文献3】特開2007−215066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記従来技術は、送信側から受信側に至る伝送系の異常発生に配慮がされておらず、当該伝送系に障害が発生した場合、送信側の監視に齟齬が生じてしまうので、システムの信頼性保持に問題があった。
送信機から受信機までの中継伝送動作に何等かの異常が発生した場合、従来技術では、送信機側から受信機側に伝送されている画像データの伝送が途絶えてしまうのは勿論、送信側監視データも途絶えてしまう。
従って、このとき送信側で異常が発生した場合、その異常の内容を表している送信側監視データが全て喪失してしまうことになる。
【0016】
このとき受信側では、送信側監視データが受信されなくなったことから、伝送系も含めて送信側機器に何等かの異常が発生したこと自体については、とにかく検出は可能である。
ここで、異常が発生した場合、その発生だけの報知であっても有意義なことは言うまでもない。
しかし、この場合、異常回復に如何に迅速且つ的確に対処できるかが更に重要であり、このためには、とにかく異常発生の原因解明が先決で、それにはどのような異常が発生したのかを知る必要がある。
【0017】
しかるに従来技術においては、伝送系の異常発生に際して送信側監視データが全て喪失してしまうので、以後の原因解明が不可能になり、この結果、システムの信頼性保持に問
題が生じてしまうのである。
本発明の目的は、中継伝送動作の異常発生に際しても送信側監視データが喪失する虞がない
映像信号中継用の無線伝送システム
、並びにその送信機又は受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明
の一形態は、送信側機器の状態を取得して
リアルタイムの送信側監視データとし、当該送信側監視データをTS信号からなる映像データに多重化して受信側に伝送し、送信側の異常監視を受信側で行うようにした
映像信号中継用の無線伝送システムにおいて
、伝送システ
ム伝送系における障害の発生を前記送信側において検知する検知手段と、前記送信側監視データを記憶する記憶手段と、前記検知手段により前記障害の発生が検知されたとき
に前記送信側監視データを前記記憶手段に記憶させ、
当該障害が復旧したとき
に当該記憶手段に記憶した
当該送信側監視データ
と共に前記リアルタイムの送信側監視データを前記TS信号からなる映像データに多重化して受信側に伝送させる演算
制御手段と
、が備えら
れたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、中継伝送に障害が発生した場合でも、送信側の機器状態の取得を継続させ、取得した機器状態を記憶するようにしているので、中継動作に障害が現れた場合でも、送信側機器の異常発生についての原因解明が可能になる。
また、この場合、伝送系の機能が回復されることにより、記憶した機器状態が自動的に受信側に伝送されるので、本発明によれば、送信側機器の異常発生についての原因解明が受信側で常に確実に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による無線伝送システムの一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明による無線伝送システムの一実施の形態における送信側の処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明による無線伝送システムの一実施の形態における送信側のデータの説明図である。
【
図4】本発明による無線伝送システムの一実施の形態における受信側の処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明による無線伝送システムの一実施の形態における受信側のデータの説明図である。
【
図6】従来技術による無線伝送システムの第1の例を示すブロック図である。
【
図7】従来技術による無線伝送システムの第2の例を示すブロック図である。
【
図8】従来技術による無線伝送システムの第3の例を示す詳細ブロック図である。
【
図9】第3の従来技術におけるデータの説明図である。
【
図10】第3の従来技術における別のデータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る
映像信号中継用の無線伝送システム
、並びにその送信機又は受信機について、図示の実施の形態を
参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態で、図において、FMは記憶装置で、その他、送信機Tの構成は、記憶装置FMが設けられていることを除けば、基本的には
図8で説明した従来技術の場合と同じで、
図1のマルチプレクサMUXは
図8のマルチプレクサMUX1に対応し、演算装置CPUは、処理の内容が異なるだけで、これもハード的には従来技術の演算装置CPU1と同じである。
また、
図1の受信機Rは、演算装置CPU2による処理の内容が異なるだけで、ハード的には
図8の受信機Rと同じである。
尚、演算装置CPU、CPU2は何れもデータ演算処理制御、及び通信制御を行う演算制御手段として機能する。
【0022】
そこで、この
図1の実施形態においても、監視データをTS信号に重畳させて送信側から受信側に伝送させ、これにより送信機Tについての監視も、受信側に設けた監視装置MC(
図7)により、受信機Rの監視と並行して共通に行えるようにした無線伝送システムとして機能する。
このとき、記憶装置FMは、例えば所望の記憶容量を備えたフラッシュROMからなり、演算装置CPUの制御のもとで、当該演算装置CPUから与えられるデータを記憶保持し、必要に応じて記憶保持してあるデータを読み出して出力する働きをする。
【0023】
次に、
図2は、送信機Tの演算装置CPUによる処理を示すフローチャートで、システムの立ち上げにより処理が開始され、その後、映像データTSの1ストリーム毎に繰り返し実行され、これにより送信機Tにおける監視動作、すなわち、送信側での情報の取得と記録及び出力の各動作が得られるように制御する。
そこで、以下、この
図2のフローチャートにより、送信機Tにおける監視動作について説明する。
まず、処理が開始されたら、最初に装置状態の取得と監視データの生成を行う(S1)。そして、この後、伝送系の障害が検知されたか否かを判断する(S2)。
【0024】
このときの障害発生の検知には、例えば送信機Tの最終段にある高周波電力増幅部からアンテナに供給されている高周波電力のレベルを監視し、電力レベルが予め設定してある判定レベル以下になったら、伝送系の障害発生が検知されたものと判断すれば良い。但し、この方法に限るものではない。
そして、このS2の判定処理において、まず、結果がTrue(真)、つまり伝送系に障害発生が検知されたときは、このとき取得されている装置状態を記憶装置FMに格納し(S3)、この後、そのまま処理を終了する。
【0025】
しかして、S2の判定処理の結果がFalse(否)であったら、次に、障害復帰後、いまだに送信未了のままのデータが記憶装置FMに存在するか否かを判断する(S4)。
そして、この判定処理S4において、まず、結果がTrue(真)、つまり伝送障害復旧後にもかかわらず送信未了のままのデータが記憶装置FMに残っていた場合は、監視情報に記憶装置のデータを付加し(S5)、次いで監視情報と映像データを多重化して送信し(S6)、この後、処理を終了する。
しかして、この判定処理S4の結果がFalse(否)であったら、直ちに処理S5に進み、監視情報に記憶装置FMのデータを付加して処理を終了する。
【0026】
ここで、この
図2のフローチャートによる処理が実行された場合に得られる動作について説明する。
まず、このフローチャートでは、処理S2から処理S3に移行した場合が設定されていることから、伝送系に障害が発生した場合、そのときに検出された装置状態は、伝送されなかったことにより喪失されてしまうのではなく、障害が発生した時点でリアルタイムに記憶装置FMに格納され、保存されることになる。
【0027】
次に、処理S2から処理S4と処理S5を経て処理S6に移行した場合の処理が設定されていることから、伝送系の異常が回復されたとき、記憶装置FMに残っていた装置状態が監視データとしてマルチプレクサMUXに供給されるようになり、この結果、後で説明するように、このときの監視データも監視2として映像信号TSに多重化され、更に、処理S2から処理S4を経た後、直ちに処理S6に移行した場合が設定されていることから、このときリアルタイムで取得されている装置状態による監視データは監視1としてマルチプレクサMUXに供給され、映像信号TSに多重化されることになる。
【0028】
そうすると、この場合のマルチプレクサMUXにおけるデータの流れは、
図3に示すようになる。
まず、伝送系に障害が発生していないとき、マルチプレクサMUXに入力される監視用データは、監視1、すなわちリアルタイムで取得されている装置状態による監視データだけになっている。
次に、伝送系に障害が発生し、その後、回復したとき、マルチプレクサMUXに入力される監視用データは、監視2、すなわち伝送系に障害が発生してから回復するまでの間に取得された装置状態による監視データになり、その後、監視1、すなわちリアルタイムで取得されている装置状態による監視データになる。
【0029】
ここで、伝送系に障害が発生した場合、言うまでもなく、送信側から受信側にはデータが伝送されない。
従って、従来技術の場合、伝送系に障害が発生している期間に取得した装置状態は伝送されることなく、そのまま失われてしまって何も残らない。
一方、この実施形態においては、この場合、処理S3が実行されるので、伝送系に障害が発生している期間中も装置状態が取得され記憶装置FMに記憶保存される。そして、この保存されている障害期間中の装置状態は、この後、伝送系の障害が除かれ伝送機能が回復したとき、処理S5と処理S6の実行により自動的に読み出され、TSデータに多重化して送信されることになる。
【0030】
次に、
図4は、受信機Rの演算装置CPU2による処理を示すフローチャートで、これもシステムの立ち上げにより処理を開始し、この後、所望の周期で繰り返し実行され、これにより受信機Rにおける監視動作が得られるように制御する。
そこで、以下、この
図4のフローチャートにより、受信機Rにおける監視動作について説明する。このとき、デマルチプレクサDEMUX1におけるデータの流れは、
図5に示すようになる。
ここで、いま、
図4のフローチャートによる処理が開始されたら、まず、データが受信されないか否かを判断する(S10)。
【0031】
このとき結果がTrue(真)、つまり電波が受信されなかった場合は、ここで送信伝送系に障害が発生したことをディスプレイ(
図7)に表示し(S20)、この後、そのまま処理を終了する。
しかして、S20の判定処理の結果がFalse(否)であったら、次に、受信データの分離と解析を行ない(S30)、次いで、分離された監視用データに記憶装置の情報(監視2)が含まれているか否かを判断する(S40)。
【0032】
そして、まず、結果がTrue(真)、つまり監視用データに記憶装置の情報が含まれていた場合、監視2(記憶装置の情報)の監視用データによる情報をディスプレイに表示し(S50)、次いでリアルタイムに取得した監視用データ(監視1)による情報をディスプレイに表示し(S60)、その後、処理を終了する。
しかして、判定処理S40の結果がFalse(否)であったら、直ちに処理S60に進み、リアルタイムに取得した監視用データ(監視1)による情報をディスプレイに表示した後、処理を終了するのである。
【0033】
そこで、この
図4のフローチャートによる処理が演算装置CPU2により実行された場合に得られる動作について説明する。
ここで、まず、この
図4のフローチャートでは、処理S10から処理S20に移行した場合が設定され、ここでデータが受信できなかったことから、伝送系に何等かの障害が発生したことが判り、この結果、とにかく伝送系での障害発生については、受信側で常に確実に認知でき、報知できることになる。
【0034】
次に、この
図4のフローチャートでは、処理S30の後、処理S40から処理S50に移行した場合が設定されていることから、伝送系に障害が発生した場合で、しかもその間に装置状態の取得が行われていた場合、その装置状態が後で受信側において取得できることになり、この結果、如何なる状況においても送信側機器の異常発生についての原因解明が可能になり、従って、この実施形態によれば、伝送システムに対する監視機能を常に確実に維持させることができる。
しかも、処理S40の後、何れにしても処理S60が必ず実行されるので、リアルタイムに取得した監視用データ(監視1)の取り込みには何等の支障も生ぜず、この結果、常に所望の監視機能が確実に維持できることになる。
【0035】
従って、この実施形態による効果は次の通りである。
まず、送信側の機器状態を映像データTSに重畳して受信側に伝送し、受信側で監視用データを分離して監視が得られるようにしたので、送信側での監視装置とラインが不要にでき、この結果、送信側での監視装置用ラインの異常による影響を受ける虞がないので、監視に信頼性が保てる上、コストの低減も期待できる。
次に、送信側からの信号の途切れにより障害を検出するようにしたので、送信側からの伝送系に異常が発生した場合でも確実に対応し、異常発生が検出できるので、異常監視に疎漏がない。
【0036】
そして、伝送系の障害発生に際しても送信側の機器状態の取得を継続させ、取得した機器状態を記憶しているので、伝送系に障害が現れた場合でも、送信側機器の異常発生についての原因解明が可能になる。
また、この場合、伝送系の機能が回復されることにより、記憶した機器状態が自動的に受信側に伝送されるので、送信側機器の異常発生についての原因解明が受信側で常に確実に可能になる。
【符号の説明】
【0037】
T 送信機
R 受信機
CPU 演算装置
FM 記憶装置(フラッシュROM)
MUX マルチプレクサ(映像・監視データ重畳部)
DEMUX デマルチプレクサ(映像・監視データ分離部)
S1〜S6 送信側での処理
S10〜S60 受信側での処理