特許第5978033号(P5978033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978033
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】情報端末、測位方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/48 20100101AFI20160817BHJP
   G01S 19/12 20100101ALI20160817BHJP
   G01S 19/34 20100101ALI20160817BHJP
【FI】
   G01S19/48
   G01S19/12
   G01S19/34
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-154760(P2012-154760)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-16281(P2014-16281A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 順一郎
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−152808(JP,A)
【文献】 特開2011−254367(JP,A)
【文献】 特開2011−247738(JP,A)
【文献】 特開平08−320365(JP,A)
【文献】 特開平05−018768(JP,A)
【文献】 特開2011−247679(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0211430(US,A1)
【文献】 特開2003−065780(JP,A)
【文献】 特表2008−503758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/48
G01S 19/12
G01S 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のタイミングで、中継局からの信号を用いた測位を実行する第1のモジュールに測位を実行させる第1の測位制御手段と、
GPSによる測位を実行する第2のモジュールに測位を実行させる第2の測位制御手段と、
前記所定のタイミングに合わせて、前記第1のモジュールの測位結果から得られた位置を現在位置として決定する決定手段と
を備え、
前記決定手段が前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第1の閾値以上であることを条件として、
前記第2の測位制御手段は、前記所定のタイミングに合わせて前記第2のモジュールに測位を実行させ、
前記決定手段は、前記第2のモジュールの測位が成功した場合、当該測位の結果から得られた位置を現在位置として決定し、
前記決定手段は、前記第2のモジュールの測位が失敗した場合、前記決定手段が前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第2の閾値以上であり、かつ、前記決定手段が測位結果に基づいて前回決定した現在位置及び測位時間と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置及び測位時間とに基づいて算出された移動速度が、第3の閾値以上であることを条件として、現在位置を決定しないこと
を特徴とする情報端末。
【請求項2】
前記第2のモジュールの測位が失敗した場合、前記決定手段が前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、前記第2の閾値未満であることを条件として、
前記決定手段は、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置を現在位置として決定することを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項3】
前記第2のモジュールの測位が失敗した場合、前記決定手段が測位結果に基づいて前回決定した現在位置及び測位時間と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置及び測位時間とに基づいて算出された移動速度が、前記第3の閾値未満であることを条件として、
前記決定手段は、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置を現在位置として決定することを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項4】
前記第2のモジュールの測位が成功した場合、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置と、前記第2のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が第4の閾値以上であるか否かを判定する測位位置比較手段を備え、
前記決定手段は、前記測位位置比較手段により第4の閾値以上であると判定された場合、前記第2のモジュールが実行した測位により定まる位置を現在位置として決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報端末。
【請求項5】
中継局からの信号を用いて算出された前記第1のモジュールによる測位の精度と、GPS信号を用いて算出された前記第2のモジュールによる測位の精度とを比較する測位精度比較手段を備え、
前記決定手段は、前記測位精度比較手段による比較結果に基づいて、前記第1のモジュールによる測位結果及び前記第2のモジュールによる測位結果のうち、精度の高い方の測位結果により定まる位置を現在位置として決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報端末。
【請求項6】
現在位置の初期値として、前記第2のモジュールの測位結果により定まる位置を現在位置として決定する初期位置決定手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の情報端末。
【請求項7】
制御部を備える情報端末で実施される方法であって、
前記制御部が、所定のタイミングで、中継局からの信号を用いた測位を実行する第1のモジュールに測位を実行させる第1の測位制御ステップと、
前記制御部が、GPSによる測位を実行する第2のモジュールに測位を実行させる第2の測位制御ステップと、
前記制御部が、前記所定のタイミングに合わせて、前記第1のモジュールの測位結果から得られた位置を現在位置として決定する決定ステップと
を備え、
前記決定ステップが前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第1の閾値以上であることを条件として、
前記第2の測位制御ステップは、前記所定のタイミングに合わせて前記第2のモジュールに測位を実行させ、
前記決定ステップは、前記第2のモジュールの測位が成功した場合、当該測位の結果から得られた位置を現在位置として決定し、
前記決定ステップは、前記第2のモジュールの測位が失敗した場合、前記決定ステップが前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第2の閾値以上であり、かつ、前記決定ステップが測位結果に基づいて前回決定した現在位置及び測位時間と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置及び測位時間とに基づいて算出された移動速度が、第3の閾値以上であることを条件として、現在位置を決定しないこと
を特徴とする方法。
【請求項8】
コンピュータに情報処理方法を実行させるためのプログラムであって、
所定のタイミングで、中継局からの信号を用いた測位を実行する第1のモジュールに測位を実行させる第1の測位制御命令と、
GPSによる測位を実行する第2のモジュールに測位を実行させる第2の測位制御命令と、
前記所定のタイミングに合わせて、前記第1のモジュールの測位結果から得られた位置を現在位置として決定する決定命令と
を備え、
前記決定ステップが前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第1の閾値以上であることを条件として、
前記第2の測位制御命令は、前記所定のタイミングに合わせて前記第2のモジュールに測位を実行させ、
前記決定命令は、前記第2のモジュールの測位が成功した場合、当該測位の結果から得られた位置を現在位置として決定し、
前記決定命令は、前記第2のモジュールの測位が失敗した場合、前記決定命令が前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第2の閾値以上であり、かつ、前記決定命令が測位結果に基づいて前回決定した現在位置及び測位時間と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置及び測位時間とに基づいて算出された移動速度が、第3の閾値以上であることを条件として、現在位置を決定しないことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System :全地球測位システム)等を利用する情報処理技術に関し、特に、GPSを利用して測位した携帯端末の測位情報を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末で測位の処理を行う場合、GPSによる測位は消費電力が多いため、頻繁にGPSによる測位を行うことはバッテリーの持続時間の点で好ましくない。
【0003】
また、測位を行うための他の方法として、無線LANルーターや基地局などの中継局の情報をその所在地の情報と関連付けてデータベースに格納し、携帯端末が中継局から受信した信号の強度とデータベースに格納された情報とに基づいて測位を行う技術が知られている(特許文献1参照)。このような中継局による測位は、GPSによる測位と比較して、消費電力が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2003−065780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中継局による測位では、測位に用いる情報として相応しくない情報がデータベースに格納されることがあり、測位精度が極端に低くなる場合がある。すなわち、昨今、可搬性の中継局(例えば、モバイルWiFiルーター)が普及している。あるモバイルWiFiルーターの情報をたまたまこのモバイルWiFiルーターが所在していた位置(例えば、東京都内)に関連付けてデータベースに格納しているとする。このモバイルWiFiルーターが他の場所(例えば、千葉県内)に移動した場合、データベースに格納されているこのモバイルWiFiルーターの情報を用いて測位を行うと、携帯端末は千葉県内に所在しているのにもかかわらず、東京都内に所在しているとして測位が行われてしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、中継局による測位の精度を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報端末は、所定のタイミングで、中継局からの信号を用いた測位を実行する第1のモジュールに測位を実行させる第1の測位制御手段と、GPSによる測位を実行する第2のモジュールに測位を実行させる第2の測位制御手段と、前記所定のタイミングに合わせて、前記第1のモジュールの測位結果を用いて現在位置を決定する決定手段とを備え、前記決定手段が前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第1の閾値以上であることを条件として、前記第2の測位制御手段は、前記所定のタイミングに合わせて前記第2のモジュールに測位を実行させ、前記決定手段は、前記第2のモジュールの測位が成功した場合、当該測位の結果をさらに用いて、現在位置を決定することを特徴とする。
【0008】
本発明の方法は、制御手段を備える情報端末において実施される方法であって、前記制御部が、所定のタイミングで、中継局からの信号を用いた測位を実行する第1のモジュールに測位を実行させる第1の測位制御ステップと、前記制御部が、GPSによる測位を実行する第2のモジュールに測位を実行させる第2の測位制御ステップと、前記制御部が、前記所定のタイミングに合わせて、前記第1のモジュールの測位結果を用いて現在位置を決定する決定ステップとを備え、前記決定ステップが前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第1の閾値以上であることを条件として、前記第2の測位制御ステップは、前記所定のタイミングに合わせて前記第2のモジュールに測位を実行させ、前記決定ステップは、前記第2のモジュールの測位が成功した場合、当該測位の結果をさらに用いて、現在位置を決定することを特徴とする。
【0009】
本発明のプログラムは、コンピュータに情報処理方法を実行させるためのプログラムであって、所定のタイミングで、中継局からの信号を用いた測位を実行する第1のモジュールに測位を実行させる第1の測位制御命令と、GPSによる測位を実行する第2のモジュールに測位を実行させる第2の測位制御命令と、前記所定のタイミングに合わせて、前記第1のモジュールの測位結果を用いて現在位置を決定する決定命令とを備え、前記決定ステップが前回決定した現在位置と、前記所定のタイミングで前記第1のモジュールが実行した測位により定まる位置との間の距離が、第1の閾値以上であることを条件として、前記第2の測位制御命令は、前記所定のタイミングに合わせて前記第2のモジュールに測位を実行させ、前記決定命令は、前記第2のモジュールの測位が成功した場合、当該測位の結果をさらに用いて、現在位置を決定すること特徴とする。
【0010】
また、本発明のプログラムは、CD−ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0011】
また、本明細書等において、モジュールとは、単に物理的モジュールを意味するものではなく、そのモジュールが有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つのモジュールが有する機能が2つ以上の物理的モジュールにより実現されても、2つ以上のモジュールの機能が1つの物理的モジュールにより実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中継局による測位の精度を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るシステムの構成を示す概念図である。
図2】一実施形態に係るサーバ装置の構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る情報端末の構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る情報端末の処理の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、発明の範囲をこれらに限定するものではない。携帯移動端末装置(以下、「携帯端末」という。)で測位の処理を行う場合、GPSによる測位は消費電力が多い。また、無線LANルーターや基地局などの中継局の情報をその所在地の情報と関連付けてデータベースに格納し、携帯端末が中継局から受信した信号の強度とデータベースに格納された情報とに基づいて行う測位(以下、中継局による測位ともいう。)を行う場合、GPSによる測位と比較して、消費電力が少ない。一方で、中継局による測位では、測位に用いる情報として相応しくない情報(すなわち、実際の位置とは異なる可搬性中継局の位置の情報)がデータベースに格納されることがあり、測位精度が極端に低くなる場合がある。このように中継局による測位において、測位精度が極端に低い測位結果は、前回の測位から今回の測位までの間において、移動距離又は移動速度が極端に高い測位結果を検出することで特定することができる。本実施形態は、このような技術思想に基づいている。
【0015】
[1.情報処理システムの構成]
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの概略構成の一例を示すブロック図である。情報処理システム1は、サーバ装置10及び携帯端末20などの情報処理装置(情報端末)を主に備える。携帯端末20は、基地局40、無線LANルーター41、及び可搬性無線LANルーター42などの中継局、並びにネットワークNを介してサーバ装置10と相互に通信することができる。また、携帯端末20は、GPS衛星30,31,32と通信を行うことができる。
【0016】
ネットワークNは、サーバ装置10と携帯端末20との間で情報を送受信するための通信回線である。例えば、インターネット、LAN、専用線、パケット通信網、電話回線、企業内ネットワーク、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0017】
サーバ装置10は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができ、例えば、CPUがROM等に格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能実現手段として機能する。なお、サーバ装置10は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。
【0018】
図2を参照して、サーバ装置10の構成の一例を説明する。サーバ装置10は、主制御部11、通信モジュール12、表示モジュール13、操作モジュール14、及び記憶モジュール15などの各種機能実現手段を主に備える。
【0019】
主制御部11は、図示しないCPU、ROMやRAM等のメモリを含むプロセッサで構成されており、ROMに記憶された所定のプログラムをCPUが実行することによりサーバ装置10の各部の動作を制御する。通信モジュール12は、ネットワークNを介して携帯端末20との間で各種情報を送受信するためのインタフェースである。表示モジュール13は、文字や画像等の情報を表示するディスプレイなどで構成される。操作モジュール14は、ユーザからの操作指示を受け付けるキーボードやマウスなどで構成される。記憶モジュール15は、メモリやハードディスクドライブ等で構成され、各種プログラムやデータを記憶する記憶装置である。
【0020】
また、記憶モジュール15は、中継局の識別子と中継局の所在地とを関連付けた中継局情報151を格納している。中継局情報151は、例えば、中継局ID、位置、及び登録日の情報を含む。位置の情報は、中継局の所在地を示す情報であり、緯度・経度などの位置を特定する情報によって示される。
【0021】
図3を参照して、携帯端末20の構成の一例を説明する。携帯端末20は、例えば、携帯電話機、PDA、パーソナルコンピュータなどの現在位置を測位した測位情報を所定時間間隔でアップロードする機能を備えた情報端末を適用することができる。
【0022】
携帯端末20は、主制御部21、通信モジュール22、表示モジュール23、操作モジュール24、記憶モジュール25、GPS測位モジュール26、中継局測位モジュール27、測位制御モジュール28などの各種機能実現手段を主に備える。
【0023】
主制御部21は、図示しないCPU、ROMやRAM等のメモリを含むプロセッサで構成されており、ROMに記憶された所定のプログラムをCPUが実行することにより携帯端末20の各部の動作を制御する。通信モジュール22は、中継局及びネットワークNを介してサーバ装置10との間で各種情報を送受信するためのインタフェースである。表示モジュール23は、文字や画像等の情報を表示するディスプレイであり、操作モジュール24は、ユーザからの操作指示を受け付けるボタンやタッチパネルである。また、記憶モジュール25は、各種プログラムやデータを記憶する記憶装置としてのメモリである。
【0024】
GPS測位モジュール26(第1のモジュール)は、GPS衛星30,31,32などの望ましくは3つ以上のGPS衛星から受信したGPS信号に基づいて測位処理を行うことによって、携帯端末20が所在する位置を算出する。
【0025】
中継局測位モジュール27(第2のモジュール)は、基地局40、無線LANルーター41、及び可搬性無線LANルーター42などの中継局から受信した信号に基づいて測位処理を行うことによって、携帯端末20が所在する位置を算出する。具体的には、中継局測位モジュール27は、まず、望ましくは3つ以上の中継局から受信したそれぞれの信号の強度を測定し、当該信号から、信号を発信した中継局のIDを取得する。中継局測位モジュール27は、当該信号の強度及び中継局のIDと、通信モジュール22を介して取得したサーバ装置10の記憶モジュール15に格納されている中継局情報151とに基づいて、携帯端末20が所在する位置を算出する。
【0026】
なお、中継局測位モジュール27による測位の処理はこの方法に限定されず、中継局から受信した信号に基づいて測位を行う方法であれば、他の方法であってもよい。例えば、サーバ装置10の記憶モジュール15に格納されている中継局情報151を予め携帯端末20の記憶モジュール25に記憶しておき、当該記憶された情報と、中継局から受信した信号の信号強度と、当該信号に含まれている信号を発信した中継局のIDとに基づいて測位の処理を行ってもよい。
【0027】
測位制御モジュール28は、携帯端末20で測位を行う必要が生じたときに、GPS測位モジュール26や中継局測位モジュール27を用いて測位を実行するように制御し、測位の実行結果を用いて、現在位置を決定する。決定された現在位置は、携帯端末20内で記憶・管理されてもよく、現在位置を管理するサーバ等に送信されてもよい。また携帯端末20で動作するアプリケーションにより利用することも可能である。以下、測位制御モジュール28による測位の制御方法を詳細に説明する。
【0028】
[初期位置の決定]
測位制御モジュール28は、定期的(例えば、5分ごと)に測位を実行するように処理の制御を行っている。初回の測位を行うタイミングでは、測位制御モジュール28は、GPSによる測位を実行するようにGPS測位モジュール26を制御する。なぜなら、通信している中継局が可搬性基地局である場合、中継局情報151が示す可搬性中継局の位置と、実際にこの可搬性中継局が所在する位置とが一致していない可能性があり、その場合、初回の測位の精度は低くなり、以降の測位の精度も低くなる可能性があるためである。従って、初回の測位を行うタイミングでは、測位制御モジュール28は、GPSによる測位を実行するようにGPS測位モジュール26を制御し、測位結果による定まる位置を現在位置の初期位置として決定する(すなわち、現在位置は、GPS測位モジュール26により実行された測位の結果を用いて決定する)。決定された現在位置の情報は、必要に応じて記憶モジュール25に格納、又は通信モジュール22を介して外部装置に送信等される。
【0029】
[中継局による測位情報を用いた現在位置の決定]
2回目以降に測位を行うタイミングでは、測位制御モジュール28は、まず、中継局からの信号により測位を実行するように中継局測位モジュール27を制御し、中継局測位モジュール27から測位情報を取得する。その後、測位制御モジュール28は、前回決定した現在位置から今回の中継局測位モジュール27による測位の位置までの移動距離を算出し、当該算出結果に基づいて、GPS測位モジュール26により測位を行うか否かを判定する。具体的には、測位制御モジュール28は、算出された移動距離が第1の閾値以上である場合、GPS測位モジュール26により測位を行うように制御し、後述するように、GPS測位の測位情報と中継局測位による測位の測位情報とを用いて現在位置を決定する。第1の閾値未満である場合、中継局測位による測位の測位情報のみを用いて現在位置を仮決定する(すなわち、中継局測位による測位で定まる位置を現在位置として仮決定する)。
【0030】
なお、第1の閾値には、中継局測位モジュール27による測位の精度を考慮して、人が移動したと判定できる程度の距離の値(例えば、50m)が設定される。このように第1の閾値を設定することで、測位精度を向上させることができる。すなわち、一般に、連続して中継局による測位を実行しているときに、測位位置が変化していない場合、途中から実際の位置とは異なる可搬性中継局の位置の情報を用いて中継局測位を実行していた(すなわち、測位位置に大きな誤差が生じた)という事態は考えにくい。逆に、移動距離が第1の閾値以上であると判定できた(すなわち、測位位置が変化した)場合、可搬性中継局と通信を行っている可能性が生じたと判断できるので、GPS測位の結果も用いて現在位置を決定することによって、測位精度を向上させることができる。さらに、人が移動したときにのみGPS測位を行うため、GPS測位の回数を減らすことができ、電力消費を低減させることができる。
【0031】
なお、移動距離が閾値以上であるときにGPS測位を行うという条件に限定されず、移動速度が閾値以上であるときにGPS測位を行ってもよい。この場合も上記と同様の効果を得ることができる。
【0032】
[GPS測位に失敗した場合の現在位置の決定]
2回目以降に測位を行うタイミングで、GPS測位の処理を実行し、測位に失敗した場合(例えば、GPS衛星からGPS信号を受信できなかった場合など)、測位制御モジュール28は、中継局による測位が誤測位である(すなわち、実際の位置とは異なる可搬性中継局の位置の情報を用いて中継局測位モジュール27による測位を行った)か否かを判定する。詳細には、測位制御モジュール28は、前回決定した現在位置から中継局による測位で定まる位置までの移動距離が第2の閾値以上であるか否かを判定し、さらに、前回決定した現在位置から中継局による測位で定まる位置までの移動速度が第3の閾値以上であるか否かを判定する。
【0033】
なお、第2の閾値には、前回の測位時間から今回の測位時間までの間に、人が移動する距離として困難な距離の値が設定される。第3の閾値には、人が移動する速度として困難な速度の値が設定される。このように閾値を設定することによって、中継局測位モジュール27による測位において、中継局情報151に含まれる情報のうち、実際の位置とは異なる可搬性中継局の位置の情報を用いて測位を行った場合を特定しうる。
【0034】
測位制御モジュール28は、移動距離が第2の閾値以上であり、かつ、移動速度が第3の閾値以上であるときは、中継局による測位が誤測位であると判定し、今回の測位では、現在位置を決定しない。他の場合、すなわち、移動距離が第2の閾値未満である、又は、移動速度が第3の閾値未満であるときは、中継局による測位は誤測位ではないと判定し、中継局による測位で定まる位置を現在位置として決定する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、2回目以降に測位を行うタイミングでGPS測位に失敗したときに、中継局による測位が誤測位ではないと判定された場合にのみ中継局による測位で定まる位置を現在位置として決定する。その結果、測位の精度を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態において、算出された移動距離が第2の閾値以上であり、かつ、算出された移動速度が第3の閾値以上である場合にのみ、中継局による測位が誤測位であると判定している。その結果、測位の時間間隔が一定でない場合であっても、中継局による測位のうち、御測位を特定することができる。すなわち、例えば、測位の時間間隔が短かったときに、移動速度が閾値以上であっても、移動距離が閾値以上でないときは、短い時間間隔で瞬間的に速度が高くなっただけであり、測位の精度はそれほど低くないと考えられる。そのため、この場合、中継局による測位を誤測位であるとは判定しない。また、逆に、測位の時間間隔が長かったときに、移動距離が閾値以上であっても、移動速度が閾値以上でないときは、その移動距離は異常ではなく、測位の精度はそれほど低くないと考えられるため、中継局による測位を誤測位であるとは判定しない。このように速度の閾値と距離の閾値を設けることで、測位の時間間隔が一定でない場合であっても、中継局による測位のうち、精度が低いものを特定することができる。
【0037】
なお、本実施形態において、算出された移動距離が第2の閾値以上であり、かつ、算出された移動速度が第3の閾値以上である場合にのみ、中継局による測位が誤測位であると判定しているが、誤測位の判定方法はこれに限定されない。算出された移動距離が第2の閾値以上であるという条件のみで、誤測位であると判定してもよいし、算出された移動速度が第2の閾値以上であるという条件のみで、誤測位であると判定してもよい。
【0038】
[測位位置の比較による現在位置の決定]
また、2回目以降の測位でGPS測位モジュール26により測位を行い、該測位に成功した場合、測位制御モジュール28は、中継局測位モジュール27の測位結果により定まる位置とGPS測位モジュール26の測位結果により定まる位置との間の距離を算出し、算出された距離が第4の閾値以上であるか否かを判定する。測位制御モジュール28は、距離が第4の閾値以上である場合、GPS測位モジュール26の測位結果により定まる位置を現在位置として決定する。
【0039】
第4の閾値は、GPS測位の一般的な精度を考慮して、中継局測位が誤測位であるかを判定するための値として設定される。例えば、GPS測位の精度として、300mから500m程度の精度誤差が生じうる場合において、中継局測位モジュール27による測位位置とGPS測位モジュール26による測位位置との間の距離が、GPS測位の精度誤差である500m以上あるときは、GPS測位モジュール26による測位の方が間違っているとは考えにくい。つまり、中継局測位モジュール27による測位が誤測位であると考えられる。従って、第4の閾値は、GPS測位の精度誤差(例えば500m程度)に設定するのが妥当である。
【0040】
このように、本実施形態によれば、GPS測位モジュール26による測位を行い、GPS測位モジュール26による測位結果により定まる位置を用いて、中継局測位が誤測位であると判定されたときは、GPS測位モジュール26の測位結果により定まる位置を現在位置として決定する。その結果、測位の精度を向上させることができる。
【0041】
[測位精度の比較による現在位置の決定]
前述の第4の閾値以上であるか否かの判定において、第4の閾値未満であると判定された場合、中継局測位モジュール27の測位結果の精度と、GPS測位モジュール26の測位結果の精度とを比較し、どちらの精度が高いかを比較する。比較の結果、精度が高い方の測位結果により定まる位置を現在位置として決定する。
【0042】
なお、GPS測位モジュール26の測位の精度は、例えば、測位の処理を実行するときにいくつのGPS衛星からGPS信号を受信できたかに基づいて誤差の範囲(m)を算出することによって求めることができる。また、中継局測位モジュール27の測位の精度は、例えば、中継局から受信した信号の強度に基づいて誤差の範囲(m)を算出することによって求めることができる。
【0043】
このように、中継局測位モジュール27の測位結果の精度と、GPS測位モジュール26の測位結果の精度とを比較し、精度の高い方の測位により定まる位置を現在位置として決定するため、測位の精度を向上させることができる。
【0044】
[2.携帯端末の動作]
次に、上記のように構成される携帯端末20の動作の概要について説明する。なお、後述の各処理ステップは、処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して又は並列に実行することができるとともに、各処理ステップ間に他のステップを追加してもよい。また、便宜上1ステップとして記載されているステップは、複数ステップに分けて実行することができる一方、便宜上複数ステップに分けて記載されているものは、1ステップとして把握することができる。
【0045】
図4を参照して、携帯端末20における測位処理の制御フローについて説明する。この処理は、携帯端末20の電源が投入されたときなど、携帯端末20において初回の測位処理を行う必要が生じたときに開始する。
【0046】
ステップS11において、まず、測位制御モジュール28は、GPSによる測位を実行するようにGPS測位モジュール26を制御する。測位制御モジュール28は、GPS測位モジュール26の測位結果により定まる位置を現在位置として決定する。すなわち、現在位置の初期位置は、GPS測位モジュール26により実行された測位の結果を用いて決定する。その後、測位制御モジュール28は、所定の時間(例えば、5分)ごとに測位が実行されるように制御する。
【0047】
ステップS12において、測位制御モジュール28は、前回の測位から所定の時間が経過するまで待機する。所定の時間が経過した場合、処理はステップS13に進む。
【0048】
ステップS13において、測位制御モジュール28は、現在位置を決定するために、中継局による測位を実行するように中継局測位モジュール27を制御し、中継局測位モジュール27から測位情報を取得する。後述するように、ここで実行された測位の結果を用いて、またはGPS測位の結果をさらに用いて、現在位置が決定される。
【0049】
ステップS14において、測位制御モジュール28は、前回決定した現在位置から、ステップS13で実行された測位により定まる位置までの移動距離が第1の閾値以上であるかを判定する。第1の閾値以上であるときは、ステップS15において、測位制御モジュール28は、GPSによる測位を実行するようにGPS測位モジュール26を制御し、GPS測位モジュール26から測位情報を取得する。第1の閾値未満であるときは、ステップS22において、測位制御モジュール28は、ステップS13で実行された測位により定まる位置で現在位置を仮決定し、処理はステップS12へ進む。仮決定された現在位置は、測位処理の制御フローにおいて内部的に記憶され「前回決定した現在位置」として用いられるが、測位処理の制御フローにより最終的に決定された現在位置として利用されることはない(例えば、他のアプリケーションにより携帯端末20の現在位置として利用されることはなく、現在位置を管理するサーバ等へ送信されることもない)。
【0050】
ここで、第1の閾値には、測位の誤差等を考慮して、人が移動したと判定できる程度の距離の値(例えば、50m)が設定される。なお、ステップS14において、移動距離によって判定をしているがこれに限定されず、移動距離から移動速度を算出し、移動速度が所定の閾値を超えているかを判定してもよい。
【0051】
このように、前回決定した現在位置から、ステップS13で実行された測位により定まる位置までの移動距離が第1の閾値以上であるときに、GPSによる測位を実行し、後述するように、中継局による測位の結果と、GPSによる測位の結果とを用いて、現在位置を決定する。その結果、測位精度を向上させることができる。すなわち、一般に、連続して中継局測位を実行しているときに、測位位置が変化していない場合、途中から実際の位置とは異なる可搬性中継局の位置の情報を用いて中継局測位を実行していた(すなわち、測位位置に大きな誤差が生じた)という事態は考えにくい。逆に、移動距離が第1の閾値以上であると判定できた(すなわち、測位位置が変化した)場合、可搬性中継局と通信を行っている可能性が生じたと判断できるので、GPS測位の結果も用いて今回の現在位置を決定することによって、測位精度を向上させることができる。さらに、人が移動したときにのみGPS測位を行うため、GPS測位の回数を減らすことができ、その結果、毎回GPS測位を行う場合と比較して、電力消費を低減させることができる。
【0052】
ステップS15においてGPSによる測位が成功しなかった場合(例えば、GPS衛星からGPS信号を受信できなかった場合)(ステップS16:No)、処理はステップS17に進み、ステップS13における中継局による測位が誤測位である(すなわち、実際の位置とは異なる可搬性中継局の位置の情報を用いて中継局測位モジュール27による測位を行った)か否かを判定する。詳細には、測位制御モジュール28は、前回決定した現在位置からステップS13で実行された測位により定まる位置までの移動距離が第2の閾値以上であるか否かを判定し、さらに、前回決定した現在位置からステップS13で実行された測位により定まる位置までの移動速度が第3の閾値以上であるか否かを判定する。測位制御モジュール28は、移動距離が第2の閾値以上であり、かつ、移動速度が第3の閾値以上であるときは、ステップS13で実行された中継局による測位が誤測位であると判定し、今回の測位では、現在位置を決定せず、次の測位を実行する場合、処理はステップS12へ進む。他の場合、処理は、ステップS18へ進み、ステップS13で実行された中継局による測位により定まる位置を現在位置として決定する。その後、次の測位を実行する場合、ステップS12へ進む。
【0053】
このように、ステップS17において、ステップS13で実行された中継局による測位が誤測位であると判定された場合、当該測位により定まる位置を現在位置として決定しないことによって、現在位置の精度を高めることができる。
【0054】
ステップS15においてGPSによる測位が成功した場合(ステップS16:Yes)、処理はステップS19へ進み、ステップS13で実行された中継局による測位により定まる位置と、ステップS15で実行されたGPSによる測位により定まる位置との差が第4の閾値以上であるか否かを判定する。上述のとおり、第4の閾値は、GPS測位の一般的な精度を考慮して、中継局測位が誤測位であるか否かを判定するための値として設定される。
【0055】
第4の閾値以上であった場合、ステップS21において、測位制御モジュール28は、ステップS15で実行されたGPSによる測位により定まる位置を現在位置として決定する。その後、次の測位を実行する場合、ステップS12へ進む。
【0056】
また、第4の閾値未満であった場合、ステップS20において、測位制御モジュール28は、ステップS13で実行された中継局による測位の精度と、ステップS15で実行されたGPSによる測位の精度とを比較し、どちらの精度が高いかを判定する。なお、GPSによる測位の精度は、例えば、測位の処理を実行するときにいくつのGPS衛星からGPS信号を受信できたかに基づいて誤差の範囲(m)を算出することによって求めることができる。また、中継局による測位の精度は、例えば、中継局から受信した信号の強度に基づいて誤差の範囲(m)を算出することによって求めることができる。
【0057】
このように、ステップS20において、中継局による測位の精度と、GPSによる測位の精度とを比較し、精度の高い方の測位により定まる位置を現在位置として決定するため、測位の精度を向上させることができる。
【0058】
以上のように本実施形態によれば、2回目以降に測位を行うタイミングで中継局測位モジュール27による測位の精度が低い可能性があると判定された場合にのみGPS測位モジュール26により測位を行うことで、GPS測位モジュール26による測位の回数を減らすことができ、その結果、測位による電力消費を抑えることができる。さらに、中継局測位モジュール27による測位が誤測位であると判定された場合、当該測位の結果を現在位置として決定しないため、測位精度を向上させることができる。また、中継局測位モジュール27による測位の精度と、GPS測位モジュール26による測位の精度とを比較し、精度の高い方の測位により定まる位置を現在位置として決定するため、測位の精度を向上させることができる。
[その他の実施形態]
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 情報処理システム、10 サーバ装置、11 主制御部、12 通信モジュール、13 表示モジュール、14 操作モジュール、15 記憶モジュール、20 携帯端末、21 主制御部、22 通信モジュール、23 表示モジュール、24 操作モジュール、25 記憶モジュール、26 GPS測位モジュール、27 中継局測位モジュール、28 測位制御モジュール、30−32 GPS衛星、40 基地局、41 無線LANルーター、42 可搬性無線LANルーター、N ネットワーク
図1
図2
図3
図4