特許第5978041号(P5978041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978041
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】情報処理システム、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20160817BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20160817BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G08G1/01 A
   G08G1/13
   H04M3/42 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-163856(P2012-163856)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-26320(P2014-26320A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森永 久之
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−240543(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/119866(WO,A1)
【文献】 特開平05−189440(JP,A)
【文献】 特開2010−198571(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098128(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0149459(US,A1)
【文献】 特許第3722444(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
G01C 21/00 − 21/36
H04M 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域から前記第2の領域までの移動に要する基準移動時間と、を対応付けて格納する移動時間情報データベースと、
ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信するプローブ情報受信部と、
複数のユーザ端末から過去に受信したプローブ情報に基づいて、基準移動時間を算出し、当該基準移動時間を前記移動時間情報データベースに格納または更新する基準移動時間算出部と、
前記プローブ情報受信部が前記ユーザ端末から受信した少なくとも2つのプローブ情報に基づいて、前記ユーザ端末が移動を開始した第1の地点と、移動を終了した第2の地点と、前記ユーザ端末が前記第1の地点から前記第2の地点まで移動するのに要した時間を示す実移動時間と、を算出する移動情報算出部と、
前記第1の地点を含む前記の領域と、前記第2の地点を含む前記の領域と、に基づいて、前記移動時間情報データベースから、前記第の領域から前記第の領域までの基準移動時間を抽出し、前記実移動時間が前記基準移動時間よりも短いとき、前記ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正であるものと判定する不正判定部と、を備え
前記基準移動時間算出部は、前記プローブ情報に基づいて生成される移動履歴情報を解析し、前記第1の領域と前記第2の領域との間の実移動時間の累積度数に基づいて、前記基準移動時間を算出することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信するプローブ情報受信部と、
過去に受信した複数のプローブ情報に基づいて、第1の領域から第2の領域まで移動した組み合わせを抽出し、前記第1の領域から前記第2の領域の移動に要した実移動時間を前記組み合わせの各々について算出し、算出された各々の実移動時間の累積度数に基づいて、基準移動時間を算出する基準移動時間算出部と、
前記基準移動時間算出部により算出された前記第1の領域から前記第2の領域までの基準移動時間を、前記第1の領域及び前記第2の領域と対応付けて格納する移動時間情報データベースと、
を備える情報処理システム。
【請求項3】
前記基準移動時間算出部は、前記実移動時間が早いものから並べたときの累積度数が第1の所定パーセントの時間Xを求め、当該時間Xを用いて前記基準移動時間を算出する、請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記基準移動時間算出部は、さらに、前記時間Xから第2の所定パーセント分を割り戻した時間Yを算出し、当該時間Yを前記基準移動時間とする、請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域から前記第2の領域までの移動に要する基準移動時間と、を対応付けて格納する移動時間情報データベースを備える情報処理システムにおける情報処理方法であって、
ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信し、
前記ユーザ端末から受信した少なくとも2つのプローブ情報に基づいて、前記ユーザ端末が移動を開始した第1の地点と、移動を終了した第2の地点と、前記ユーザ端末が前記第1の地点から前記第2の地点まで移動するのに要した時間を示す実移動時間と、を算出し、
前記第1の地点を含む前記の領域と、前記第2の地点を含む前記の領域と、に基づいて、前記移動時間情報データベースから、前記第の領域から前記第の領域までの基準移動時間を抽出し、前記実移動時間が前記基準移動時間よりも短いとき、前記ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正であるものと判定
前記基準移動時間は、複数のユーザ端末から過去に受信したプローブ情報に基づいて算出された前記第1の領域と前記第2の領域との間の実移動時間の累積度数に基づいて前記移動時間情報データベースに格納または更新される、情報処理方法。
【請求項6】
第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域から前記第2の領域までの移動に要する基準移動時間と、を対応付けて格納する移動時間情報データベースを備える情報処理システムにおける情報処理方法であって、
ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、前記測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信し、
過去に受信した複数のプローブ情報に基づいて、第1の領域から第2の領域まで移動した組み合わせを抽出し、前記第1の領域から前記第2の領域の移動に要した実移動時間を前記組み合わせの各々について算出し、算出された各々の実移動時間の累積度数に基づいて、基準移動時間を算出し、
前記算出された基準移動時間を、前記第1の領域及び前記第2の領域と対応付けて前記移動時間情報データベース格納する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、情報処理システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)を利用して生成されるプローブ情報を用いた様々なサービスが検討されている。プローブ情報には、ユーザID、測位時刻、緯度・経度等の情報が含まれる。したがって、ユーザ端末から送信されるプローブ情報により、ユーザの現在位置を把握することができる。例えば、特許文献1には、ユーザの情報端末装置から送信されるプローブ情報を用いて、ユーザの位置情報や移動距離を利用したゲームを提供するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/119866号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザの位置情報や移動距離を利用する場合、位置情報の測定間隔を意図的に変更したり、位置情報に付随するパラメータを改ざんして移動距離を意図的に操作したりするといった不正行為がなされる可能性が指摘されている。このような不正行為に対して、特許文献1では、車・新幹線・飛行機等の移動手段を利用した場合の移動速度に基づいて、不正行為が行われたか否かを判断している。しかしながら、特許文献1の場合、不正を判断する際に、2点間の移動に要することが想定される移動時間や移動速度等をいちいち演算により都度求める必要があるため、多数のユーザが一度にアクセスした場合等に処理が重くなる可能性がある。また、例えば、渋滞などの影響で、事前に設定した移動速度になることが現実的にはあり得ない場合であっても、机上の数値の範囲内であれば不正ではないと判断してしまう可能性がある。そのため、より処理が軽く、また、より実態に即した精度の高い情報を利用して不正行為であるか否かを判定することが求められている。
【0005】
本発明のいくつかの態様は前述の課題に鑑みてなされたものであり、ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正である否かを、2点間の移動に要することが想定される移動時間や移動距離を演算により都度求めることなく、判定することのできる情報処理システム及び情報処理方法を提供しようとするものである。また、本発明のいくつかの態様は、領域間の移動時間に関する情報をプローブ情報から生成することのできる情報処理システム及び情報処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の所定の実施形態に係る情報処理システムは、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域から第2の領域までの移動に要する基準移動時間と、を対応付けて格納する移動時間情報データベースと、ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信するプローブ情報受信部と、プローブ情報受信部がユーザ端末から受信した少なくとも2つのプローブ情報に基づいて、ユーザ端末が移動を開始した第1の地点と、移動を終了した第2の地点と、ユーザ端末が第1の地点から第2の地点まで移動するのに要した時間を示す実移動時間と、を算出する移動情報算出部と、第1の地点を含む第3の領域と、第2の地点を含む第4の領域と、に基づいて、移動時間情報データベースから、第3の領域から第4の領域までの基準移動時間を抽出し、実移動時間が基準移動時間よりも短いとき、ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正であるものと判定する不正判定部と、を備える。
【0007】
本発明の他の実施形態に係る情報処理システムは、ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信するプローブ情報受信部と、過去に受信した複数のプローブ情報に基づいて、第1の領域から第2の領域まで移動した組み合わせを抽出し、第1の領域から第2の領域の移動に要した実移動時間を組み合わせの各々について算出し、算出された各々の実移動時間に基づいて、基準移動時間を算出する基準移動時間算出部と、基準移動時間算出部により算出された第1の領域から第2の領域までの基準移動時間を、第1の領域及び第2の領域と対応付けて格納する移動時間情報データベースと、を備える。
【0008】
本発明の所定の実施形態に係る情報処理方法は、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域から第2の領域までの移動に要する基準移動時間と、を対応付けて格納する移動時間情報データベースを備える情報処理システムにおける情報処理方法であって、ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信し、ユーザ端末から受信した少なくとも2つのプローブ情報に基づいて、ユーザ端末が移動を開始した第1の地点と、移動を終了した第2の地点と、ユーザ端末が第1の地点から第2の地点まで移動するのに要した時間を示す実移動時間と、を算出し、第1の地点を含む第3の領域と、第2の地点を含む第4の領域と、に基づいて、移動時間情報データベースから、第3の領域から第4の領域までの基準移動時間を抽出し、実移動時間が基準移動時間よりも短いとき、ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正であるものと判定する。
【0009】
本発明の他の実施形態に係る情報処理方法は、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域から第2の領域までの移動に要する基準移動時間と、を対応付けて格納する移動時間情報データベースを備える情報処理システムにおける情報処理方法であって、ユーザ端末から、現在位置の測位点を示す測位情報と、測位点の測位時刻と、を含むプローブ情報を受信し、過去に受信した複数のプローブ情報に基づいて、第1の領域から第2の領域まで移動した組み合わせを抽出し、第1の領域から第2の領域の移動に要した実移動時間を組み合わせの各々について算出し、算出された各々の実移動時間に基づいて、基準移動時間を算出し、算出された基準移動時間を、第1の領域及び第2の領域と対応付けて移動時間情報データベース格納する。
【0010】
尚、本発明において、「部」や「手段」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザの位置情報や移動距離を利用したサービスを提供する際に、ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正である否かを、想定される移動時間や移動速度を都度演算により求めることなく、判定することが可能となるという効果を奏し得る。また、領域間の移動時間に関する情報を、プローブ情報から生成することが可能となるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における情報処理システム10を含む通信システム1の概略構成を示す図である。
図2図1に示した情報処理システム10の構成を示す図である。
図3図2に示したプローブ情報DB40の構造の一例を示す図である。
図4】プローブ情報を各測位点に応じた位置に示した一例を示す図である。
図5】プローブ情報をメッシュ領域にマッピングした一例を示す図である。
図6】プローブ情報をポリゴン領域にマッピングした一例を示す図である。
図7図2に示した領域情報DB42の構造の一例を示す図である。
図8図2に示した移動時間情報DB44の構造の一例を示す図である。
図9図2に示した基準移動時間算出部24における領域間の基準移動時間の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図10】移動履歴情報の構造の一例を示す図である。
図11図2に示した基準移動時間算出部24による、移動履歴情報から基準移動時間を算出する手法の一例を示す図である。
図12図1に示した情報処理システム10の不正判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明及び参照する図面の記載において、同一又は類似の構成には、それぞれ同一又は類似の符号が付されている。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態における情報処理システム10を含む通信システム1の概略構成を示す図である。図1に示すように、通信システム1は、情報処理システム10、ユーザ端末200(以下、ユーザ端末200A及び200B等を総称してユーザ端末200と呼ぶ。)を含んでいる。同図中の実線矢印は、ユーザ端末200Aないし200Bの移動を表している。情報処理システム10及びユーザ端末200は、それぞれネットワークNに接続されている。
【0015】
ここで、情報処理システム10は、ユーザ端末200からプローブ情報を受信し、受信したプローブ情報が不正であるか否かを判定可能なシステムである。また、情報処理システム10は、プローブ情報に基づいて領域間の基準移動時間を生成可能なシステムである。
【0016】
ユーザ端末200は、図示しないユーザが持ち運び自在な可搬性の情報処理装置である。ユーザ端末200はそれぞれ、例えばGPS(Global Positioning System)等により断続的にプローブ情報を取得して、情報処理システム10へ送信することが可能である。ユーザ端末200の具体例としては、例えば、携帯電話(いわゆるスマートフォンであるか、フィーチャーフォンであるかは問わない)、タブレット、ノートPC(Personal Computer)、PDA(Personal Data Assistance)、ゲーム機、カーナビゲーション装置等が想定されるが、これらに限られるものではない。
【0017】
ここで、ユーザ端末200が情報処理システム10にプローブ情報を送信する間隔としては、例えば5分間隔や10分間隔等が考えられるが、これに限られるものではない。また、間隔が定期的であるか不定期であるかを問わない。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態における情報処理システム10の構成を示す図である。情報処理システム10は、蓄積されたプローブ情報に基づいて領域間の基準移動時間を算出し、当該基準移動時間に基づいて、ユーザによる不正行為が行われたか否かを判定するシステムであり、1台または複数台の情報処理装置を用いて構成される。図2に示すように、情報処理システム10は、プローブ情報受信部20、領域情報生成部22、基準移動時間算出部24、移動情報算出部26、不正判定部28、プローブ情報データベース(DB)40、領域情報データベース(DB)42、及び移動時間情報データベース(DB)44を含んで構成される。
【0019】
なお、プローブ情報受信部20、領域情報生成部22、基準移動時間算出部24、移動情報算出部26、及び不正判定部28は、例えば、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現することができる。また、プローブ情報DB40、領域情報DB42、及び移動時間情報DB44は、例えば、メモリや記憶装置等の記憶領域を用いて実現することができる。
【0020】
プローブ情報受信部20は、ユーザ端末200からネットワークNを介して送信されてくるプローブ情報を受信し、プローブ情報DB40に格納する。プローブ情報は、ユーザ端末200におけるGPS等を利用した測位によって生成されるものであり、ユーザ端末200を識別するためのユーザID、ユーザ端末200の現在位置の測位点の緯度・経度を含む測位情報、及び測位点の測位時刻を含んでいる。このようなプローブ情報は、各ユーザ端末200から、例えば、5分間隔等で定期的に送信されてくる。なお、ユーザ端末200の移動が検出されている間のみ、プローブ情報が送信されてくる場合もある。図3には、プローブ情報DB40の構造の一例が示されている。図3に示すように、プローブ情報DB40には、複数のユーザから送信されてくるプローブ情報の履歴が格納されている。また、図4には、プローブ情報を各測位点に応じた位置に示した一例が示されている。
【0021】
図1に戻り、領域情報生成部22は、プローブ情報DB40に格納されているプローブ情報をユーザごとに抽出し、測位点を含むメッシュ領域にマッピングした領域情報を生成する。
【0022】
ここで、メッシュ領域とは、緯度及び経度に基づいて地図を網の目状に分割して得られる複数の分割領域であり、仕様や設計に応じて適宜分割領域のサイズを設定することができる。例えば、ユーザが頻繁に滞在するエリアを特定したい場合はサイズを大きく設定し、一方、ユーザが頻繁に訪れる店などを特定したい場合はサイズを小さく設定することができる。図5には、プローブ情報を縦10列×横10列のメッシュ領域にマッピングした一例が示されている。なお、図5に示されるメッシュ領域は地図全体の一部であり、全てのメッシュ領域が示されているわけではない。図5では、例えば、縦M列目、横N列目のメッシュ領域を「M−N」と表している。なお、分割領域は正方形のメッシュ領域に限られない。例えば、図6に示すように、行政区画によって区分されたポリゴン等、任意の分割領域を用いることが可能である。
【0023】
領域情報生成部22は、プローブ情報に含まれるユーザID及び測位時刻を、マッピングにより特定したメッシュ領域の領域IDと対応づけて領域情報を生成し、領域情報DB42に格納する。図7には、領域情報DB42の構造の一例が示されている。なお、領域IDは、各メッシュ領域を識別可能なものであればよく、領域ごとに割り当てられたコード情報でもよいし、緯度及び経度による範囲指定情報であってもよい。また、領域情報には、測位情報が含まれることとしてもよい。
【0024】
図1に戻り、基準移動時間算出部24は、領域情報DB42に格納されている領域情報を利用して、メッシュ領域間の基準移動時間を算出し、移動時間情報DB44に格納する。基準移動時間は、ある領域から他の領域まで移動する際に想定される現実的な移動時間である。基準移動時間としては、ある領域から他の領域まで、実際の移動に要する移動時間のうち最短の時間であることが好ましい。そのため、過去の移動パターンのうち、移動時間が最短のものを基準移動時間として算出することが考えられるが、これに限られない。また、過去の移動パターンの中から外れ値を除いた上で、基準移動時間を算出することが好ましい。図8には、移動時間情報DB44の構造の一例が示されている。同図に示すとおり、移動時間情報DB44には、移動を開始する第1の領域の領域IDと、移動を終了する第2の領域の領域IDと、第1の領域から第2の領域までの移動に要するものと想定される基準移動時間とが対応付けて格納されている。
【0025】
図1に戻り、移動情報算出部26は、ユーザ端末200から受信された少なくとも2つのプローブ情報に基づいて、ユーザの移動情報を算出する。移動情報は、移動を開始した地点、移動を終了した地点、及び開始地点から終了地点までの移動に要した実際の移動時間を示す実移動時間を含んでいる。一例としては、同一ユーザに関する2つのプローブ情報を任意にプローブ情報DB40から抽出し、これら2つのプローブ情報に含まれる位置情報(緯度・経度)及び測位時刻の差分を取ることにより、移動の開始地点、終了地点、及び実移動時間を算出する。なお、移動情報の算出処理としては、他にも任意の処理を採用し得る。
【0026】
不正判定部28は、移動情報算出部26で得られた移動情報を、移動時間情報DB44に格納されている情報と付き合わせて、ユーザ端末200から受信したプローブ情報が不正である否かを判定する。より具体的には、移動情報に含まれる、移動を開始した地点を含む第3の領域と、移動を終了した地点を含む第4の領域と、に基づいて、第3の領域から第4の領域までの基準移動時間を移動時間情報DB44から抽出する。そして、移動情報中の実移動時間が、抽出された基準移動時間よりも短い場合は、移動情報が不正であるものと判定する。一方、実移動時間が基準移動時間よりも長い場合は、不正がなかったものと判定する。
【0027】
次に、本実施形態における基準移動時間算出部24の処理について説明する。図9は、基準移動時間算出部24における領域間の基準移動時間の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0028】
基準移動時間算出部24は、まず、領域情報DB42に格納されている領域情報に基づいて、移動履歴情報を生成する(S91)。移動履歴情報とは、ユーザIDと、移動を開始した領域の領域ID(開始領域ID)と、移動を終了した領域の領域ID(終了領域ID)と、移動を開始した領域から終了した領域までの移動に要した実際の移動時間を示す実移動時間とを含んでいる。
【0029】
移動履歴情報を生成する際、基準移動時間算出部24は、領域情報DB42に格納されている領域情報のうち、同一ユーザIDの2つの領域情報に含まれる領域ID及び測位時刻に基づいて、移動履歴情報を生成する。このとき、隣接する2つレコードの領域情報を利用してもよいし、隣接していない任意の2つのレコードの領域情報を利用してもよい。図10には、移動履歴情報の構造の一例が示されている。実移動時間は、2つの領域間の測位時刻の差に基づいて算出される。このとき、例えば、ユーザAが、領域Pから領域Qに3回移動していた場合には、3回の移動それぞれについて、領域PQ間の実移動時間が算出され、3つの移動履歴情報が生成されることになる。
【0030】
次に、基準移動時間算出部24は、各メッシュ領域間ごとに移動履歴情報を処理して(S92)、基準移動時間を算出する(S93)。
【0031】
図11には、移動履歴情報から基準移動時間を算出する手法の一例が示されている。例えば、領域Pを移動の開始領域とし、領域Qを移動の終了領域とする、領域PQ間の基準移動時間を算出する場合、基準移動時間算出部24は、領域情報から生成した移動履歴情報の中から、開始領域IDがPで終了領域IDがQのものを抽出し、実移動時間に基づいて、度数分布表441を生成する。次に、実移動時間が早いものから並べて上位5%の時間X、すなわち、累積度数が5%の時間Xを求める。例えば、全ユーザの移動履歴情報の中から領域PQ間の移動履歴情報が1000個抽出された場合には、当該1000個の移動履歴情報のうち、実際の移動時間が早いものから順に並べたときに、1000×5%=50番目の移動履歴情報に含まれる実移動時間を時間Xとする。最後に、求められた時間Xから10%分だけ時間を割り戻した時間Yを算出し、この時間Yを領域PQ間の基準移動時間とする。
【0032】
例えば時間Xが1時間40分であった場合、1時間40分×10%=10分だけ時間を割り戻した1時間30分を、基準移動時間として算出する。このような統計的な処理を経ることにより、移動履歴情報の中から、外れ値を除いた上で、より実態に即した精度の高い移動時間情報を算出することが可能となる。
【0033】
なお、本実施例においては、累積度数5%の時間Xを抽出し、そこから10%割り戻した時間Yを基準移動時間として算出したが、5%ないし10%というパラメータ値は一例にすぎず、適宜に変更可能である。また、ここに示した基準移動時間の算出手法は一例であり、任意の手法を採用することができる。好適には、移動履歴情報を解析して基準移動時間を算出する。このとき、移動履歴情報に含まれる実移動時間の中から、外れ値を排除することのできる算出手法がより好ましい。また、累積度数を求めることなく、移動履歴情報の中から最も実移動時間の早いものを、基準移動時間として算出することも可能である。
【0034】
次に、本実施形態において、プローブ情報が不正であるか否かを判定する不正判定処理について説明する。図12は、情報処理システム10の不正判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
まず、過去に蓄積されたプローブ情報ないし領域情報に基づいて、基準移動時間算出部24が、事前に領域間の基準移動時間を算出し、移動時間情報DBに格納しておく(S121)。
【0036】
移動情報算出部26は、特定のユーザ端末200から受信した少なくとも2つのプローブ情報に基づいて、実際にユーザが移動に要した実移動時間含む移動情報を算出する(S122)。
【0037】
次に、不正判定部28は、移動情報に含まれる2地点に対応する2領域間の基準移動時間を、移動時間情報DB44から抽出する(S123)。そして、S122で算出した実移動時間と、S123で移動時間情報DB44から抽出した基準移動時間とを比較して(S124)、実移動時間が基準移動時間よりも短い場合(S124:Yes)、そのような移動は過去に実績がなく、現実にはあり得ないと考えられることから、当該ユーザから受信したプローブ情報が不正行為により得られたものであると判定する(S125)。一方、S123で、実移動時間が基準移動時間よりも長い場合には(S124:No)、不正がなかったものと判定する(S126)。
【0038】
例えば、図8の例において、ユーザが、領域Pに含まれる地点pから、領域Qに含まれる地点qまで移動した場合、不正判定部28は、ユーザによる地点pq間の実移動時間が、移動時間情報DB44に格納されている領域PQ間の基準移動時間である1時間30分よりも短い場合には、当該ユーザによって不正行為が行われたものと判定する。一方、地点pq間の移動に1時間30分以上かかっている場合には、不正がなかったものと判定する。
【0039】
また、2つの領域間の移動パターンが過去に存在しない場合が考えられる。例えば、領域Pから領域Sへの移動パターンの蓄積が、プローブ情報DB40ないし領域情報DB42に無い場合、図8に示すように、領域Pから領域Sへの基準移動時間を算出することができない。この領域PS間のように、過去の移動パターンの蓄積が無い場合、そのような移動はあり得ないと考えて、不正であると判定してもよい。また、領域Pの近隣から領域Sへの移動パターン、領域Pから領域Sの近隣への移動パターン、ないし領域Pの近隣から領域Sの近隣への移動パターンのいずれかが過去に蓄積されている場合、これら近隣の情報を利用して基準移動時間を算出してもよい。さらに、過去の移動パターンの蓄積が無い場合に限り、所定の計算により基準移動時間を算出してもよい。この場合、例えば、領域PS間で既存のルート探索等をして、その結果に基づいて、基準移動時間を設定してもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の情報処理システム10は、ユーザ端末から受信したプローブ情報が不正である否かを、予め作成しておいたデータベースを参照することによって判定する。そのため、不正の判定に、想定される移動時間や移動速度を演算により都度求めるシステムよりも、一般に処理が軽くなる。また、領域間の移動時間に関する情報を、ユーザ端末200から受信したプローブ情報から生成するので、より実態に即した基準移動時間を設定可能になる。例えば、領域PQ間と領域PR間の距離が同じであった場合に、従来のように不正判定の閾値を演算により求めると、両者が同じ閾値になってしまうが、本実施形態においては、実態に即した異なる基準移動時間が設定され得ることになる。
【0041】
本実施形態の情報処理システム10は、過去の移動パターンを分析して、その移動の開始領域と終了領域に基づいて、基準移動時間に関するデータベースを作成するが、その際、飛行機や電車といった、エリア間の移動手段そのものの情報は使用しない。また、不正の判定を行う際にも、移動手段に関する情報は不要である。移動手段の情報が必要なシステムの場合、空港や電車の路線等について最新の地図データに更新する必要があるのに対し、本実施形態の情報処理システム10は、領域を管理すれば足りるため、最新の地図データに更新する必要がない。
【0042】
また、点と点の間の基準移動時間に関するデータベースを作成しようとすると、無数の点の組み合わせがあるため、データベース化することができない。本実施形態の情報処理システム10においては、領域と領域の間の基準移動時間に関するデータベースを作成することによって、有限の組み合わせによる基準移動時間のデータベース化を実現している。
【0043】
尚、前述の各実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【0044】
上記実施形態では、移動情報算出部26は、2つのプローブ情報から、移動前後の地点と移動時間を算出するものとしたが、移動情報の算出手法はこれに限られない。例えば、複数のプローブ情報から、ユーザの行動履歴を分析し、移動と滞在とを判別し、移動を開始した地点と移動を終了した地点を抽出し、これらの2つの地点の測位時刻の差を取ることによって、移動に要した実移動時間を算出するようにしてもよい。
【0045】
また、移動時間情報DB44は、さらに、移動の開始時間帯をパラメータとして、データベースを作成してもよい。この場合、移動の開始時間帯によって、異なるデータベースを参照することになるため、時間帯によって、基準移動時間が変わることになり、より精度の高い不正判定が可能になる。
【0046】
上記実施形態では、領域間の移動時間に関するデータベースを作成し、不正判定に利用したが、領域間の距離を移動時間で除算するなどして求めた基準移動速度に関するデータベースを作成し、不正判定に利用しても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 通信システム、10 情報処理システム、20 プローブ情報受信部、22 領域情報生成部、24 基準移動時間算出部、26 移動情報算出部、28 不正判定部、40 プローブ情報データベース、42 領域情報データベース、44 移動時間情報データベース、200 ユーザ端末、441 度数分布表、N ネットワーク。
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