(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態である色素増感型太陽電池の製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態の色素増感太陽電池の製造方法は、太陽電池組み立て体を固定ホルダに固定する固定工程と、太陽電池組み立て体を減圧雰囲気下に置いて電解液を注液する注液工程と、を少なくとも備えて構成されている。また、本実施形態の製造方法においては、固定工程の前に、太陽電池組み立て体作製工程を備えている。更に、本実施形態の製造方法においては、注液工程の後に、封止工程と切断工程を備えている。以下、各工程について順次説明する。
【0013】
(I)<太陽電池組み立て体作製工程>
先ず、シート状の太陽電池組み立て体を作製する。太陽電池組み立て体は、シート状の基板に太陽電池構造体が形成されたものである。一枚の基板に形成される太陽電池構造体は、単数であってもよく、複数であって一列に連なっていてもよい。
尚、以下で説明する手順や使用する材質等は本実施形態の色素増感太陽電池の製造工程の一例であり、この例に限定されるものではなく、湾曲自在、かつ、太陽電池構造体の下端側に注液用の開口部を有する太陽電池組み立て体を作製できればよい。
【0014】
[電極板の形成]
先ず、
図1(a)に示す構成を有する第1電極板105と、第2電極板109と、を形成する。第1電極板105は、第1の基板102の一方の表面102aに、透明導電膜103と半導体層104を順次積層したものである。第2電極板109は、第2の基板106の一方の表面106aに対向電極膜107と触媒層108を順次積層したものである。具体的には、第1及び第2の電極板105,109は、次に説明するようにして形成することができる。
【0015】
図1(a)に示すように、第1の基板102の表面102aに酸化インジウムスズ(ITO)等をスパッタリングして、透明導電膜103を形成する。第1の基板102としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムが挙げられるが、これに限定されず、ITOとの整合性がよく、湾曲自在な材質であればよい。
【0016】
次に、
図1(b)に示すように、透明導電膜103の端部103e,103f,103g,103hを、電流の取り出し、または後述する電解液を注入するための開口部118、あるいは封止材111を配するための外周部G1とする。続いて、例えばマスクや印刷法等を用いて、焼成が可能な酸化チタンを含有するペーストを外周部G1以外の透明導電膜103の表面103aに塗布し、酸化チタンのペーストを多孔質にするために当該ペーストを焼結する。このようにして、透明導電膜103の表面103aに半導体層104を形成することができる。
【0017】
また、半導体層104は、エアロゾルデポジション法または低温焼成法によっても形成することができる。エアロゾルデポジション法は、半導体層104の材料を粒体状にしてから音速で第1の基板102の表面102aに噴射する成膜方法である。この方法では、異なる粒径の半導体材料が表面102aに噴射されるため、高品質な多孔質膜が形成される。その結果、曲げに対する強度が高く、第1の基板102に極めて強く密着した半導体層104を形成することができる。また、室温での成膜を行うことができるため、色素増感太陽電池のコストをより低減することができる。
【0018】
酸化チタンを含有するペーストの塗布サイズあるいは酸化チタンの成膜サイズは、色素増感太陽電池の使用目的や設置箇所に応じて設定する。色素増感太陽電池の大量生産等をふまえて、シート状の基板に複数の太陽電池構造体を形成し、後に説明する裁断工程で太陽電池組み立て体を裁断して個々の太陽電池に分離する場合は、横方向の間隔を充分に確保して、
図1(b)に示すように、縦幅D
0×横幅W
0の当該ペーストを、透明導電膜103の表面103aの長手方向の複数箇所に連なるように塗布あるいは成膜する。尚、
図1(b)では、紙面の上下方向が“横”、左右方向が“縦”に該当する。以下では、第1の基板102に一列に連なって複数の太陽電池を形成する場合を例として説明するが、各太陽電池の大きさは均一であってもよく、不均一であってもよい。尚、
図1〜
図3における(b)の平面図は、複数の箇所に形成した半導体層104のうちの1箇所及びその周辺部分(即ち、後に太陽電池構造体120を成す部分)を図示している。
【0019】
半導体層104を形成した後、増感色素を溶剤に溶かした増感色素溶液に半導体層104を浸漬させ、半導体層104に増感色素を担持させる。尚、半導体層104に増感色素を担持させる方法は、上記に限定されず、半導体層104を連続的に、かつ、移動させながら増感色素溶液中に投入する方法等を採用してもよい。
【0020】
次に、
図1(a)に示すように、PETフィルム等よりなる第2の基板106の一方の表面106aに、ITO又は酸化亜鉛等をスパッタリングして対向電極膜107を形成する。尚、対向電極膜107は、印刷法やスプレー法等を用いて形成してもよい。
続いて、対向電極膜107の表面107aに、プラチナ等を成膜して触媒層108を形成する。
【0021】
[封止材及び開口部形成用部材の配置]
次に、
図2(a),(b)に示すように、透明導電膜103の表面103aのうち、電流を取り出す領域、即ち半導体層104の周辺部を除いた外周部G1に封止材111を塗布して半導体層104を囲繞する。また、表面103aにおける封止材111の塗布位置に対向する触媒層108の表面108aにも封止材111を塗布する。
【0022】
次に、
図2(b)に示すように、第2電極板109の下端125bと触媒層108とを連通させるように、開口部形成用部材としての離型性樹脂シート119を配置し、離型性樹脂シート119の表面にも封止材111を塗布する。離型性樹脂シート119には、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂シートを用いることができ、上記樹脂シートを短冊状に切断して離型性樹脂シート119とする。
【0023】
尚、第2電極板109に配置された離型性樹脂シート119を、後に行う開口部の形成において引き抜くことにより、その後に行う注液工程において電解液を通過させるための開口部118を形成する。そのため、離型性樹脂シート119は、電解液が注入されやすい幅等を勘案して適切なサイズに切断する。また、離型性樹脂シート119は、
図2(b)に示すように幅が一定であってもよく、後に引き抜く方向に連続的あるいは非連続的に幅が変化するものであってもよい。例えば、離型性樹脂シート119は、第2電極板109の下端125bに近い領域のみ幅の広いT字型としてもよい。
【0024】
[基板の接着]
次に、
図3(a),(b)に示すように、セパレータ110を介在させた状態で半導体層104と触媒層108とを対向させるように、第1電極板105を第2電極板109に当接させる。セパレータ110には、封止材111及び電解液112を通過させる多数の孔(図示略)を有する材質を用いる。このような材質としては、例えば不織布等のシート材が挙げられる。
【0025】
続いて、外周部G1に塗布された封止材111を熱硬化等させ、第1電極板105と第2電極板109とを接着する。この際、
図4に示すように、封止材111に挟まれている外周部G1のセパレータ110の多数の孔には、溶融した封止材111が流れ込み、他の部分の封止材111と同様に、硬化される。また、離型性樹脂シート119は、耐熱温度が封止材111の硬化温度よりも高く、かつ、非接着性に優れているので、離型性樹脂シート119に接する封止材111とは接着されない。従って、離型性樹脂シート119の両表面は、第1電極板105とも第2電極板109とも接着されていない状態にすることができる。
【0026】
上記工程により、第1電極板105と第2電極板109と封止材111と離型性樹脂シート119とに囲まれた複数の電解液保持部117を有する、開口部118形成前のシート状の太陽電池組み立て体を作製することができる。
【0027】
[開口部の形成]
次に、
図4に示すように、開口部118形成前のシート状の太陽電池組み立て体から離型性樹脂シート119を引き抜き、太陽電池組み立て体の下端125bと電解液保持部117とを連通させる開口部118を形成する。この開口部118は、後述する注液工程で電解液保持部117に電解液112を注入する際の電解液112の通過孔となる。
【0028】
上記説明した電極板の形成から開口部の形成までの手順を行うことにより、
図5に示すように、下端125bと各電解液保持部117とを連通させる開口部118を有するシート状の太陽電池組み立て体125が完成する。以降では、平面視で各電解液保持部117の範囲内の第1及び第2の電極板105,109と、電解液保持部117と、開口部118とを含む構造体を太陽電池構造体120と称することとする。尚、
図5には、横幅W
1の太陽電池構造体120が横方向にW
2の間隔をあけて、一列に連なって6箇所に形成された太陽電池組み立て体125を例示しているが、太陽電池構造体120の形成数や位置は、
図5の例に限定されない。
【0029】
(II)<固定工程>
先ず、
図6に示す固定ホルダ134を用意する。固定ホルダ134は、その側面134pに太陽電池組み立て体125を湾曲させて固定できるものであり、後に説明する電解液容器133Bに設置した際に太陽電池組み立て体125の開口部118の下端118bを電解液112に浸漬させることができれば、その形状等は特に制限されない。このような固定ホルダ134としては、例えば
図6に示す円柱体134Aのほか、
図7に示す楕円柱体134B、
図8(a)に示す多角柱体134Cが挙げられる。また、各固定ホルダ134A〜Cには、太陽電池組み立て体125を湾曲させて固定するための固定用部材136が備え付けられている。尚、
図7及び
図8に示す固定ホルダ134B,Cの固定用部材の図示は省略している。
【0030】
固定ホルダ134の側面134pは、
図6,7に示すように円筒面または楕円筒面とすることが好ましい。これにより、太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125pにおけるいずれの箇所に対しても湾曲時にストレスを与えることなく、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134の側面134pに固定できる。
【0031】
また、
図8(a)に示すように、固定ホルダ134Cの側面134rが多角筒面の場合は、側面134rが同一幅の帯状の複数の平面部134r
1と、各平面部同士が接する辺である稜線部134r
2から構成される。平面部134r
1の数を増やすほど側面134rが円筒面に近づき、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134Cに巻きつけたときに太陽電池組み立て体125に与えるストレスが小さくなるので好ましい。例えば、固定ホルダ134Cの形状をn角形柱と表現した場合のnは、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。nが8より小さいと、太陽電池組み立て体125と側面134rの平面部134r
1との間に空隙が生じやすくなり、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134Cに安定して固定できないので好ましくない。
更に、
図8(b)に示すように平面視において、湾曲させた太陽電池組み立て体125がなす円に側面134pがなす多角形が内接するように、固定ホルダ134の大きさを設定することが好ましい。
【0032】
次に、
図9(a)に示すように、固定ホルダ134の固定用部材136に、太陽電池組み立て体125の一方の側端125cを固定する。続いて、同図に示すA方向に固定ホルダ134を回転させながら、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134の側面134pに沿って湾曲させながら巻きつけて固定する。A方向に固定ホルダ134を一周させた後、
図9(b)に示すように、固定ホルダ134の固定用部材136に太陽電池組み立て体125の他方の側端125dを固定する。このとき、太陽電池組み立て体125の開口部118の下端118bを固定ホルダ134の下方に突出させるように固定する。
【0033】
本実施形態の固定工程では、
図9(c)に示すように、太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125p全体を固定ホルダ134の円筒面からなる側面134pに当接させる。これにより、太陽電池組み立て体125に負荷をかけることなく、太陽電池組み立て体125を固定できる。
太陽電池組み立て体125を湾曲させる際の曲率半径が小さくなると、太陽電池組み立て体125にストレスが加わり、太陽電池組み立て体125の封止材111が第1及び第2の電極板105,109から剥がれる、あるいは、透明導電膜103,対向電極膜107や半導体層104が割れる虞がある。その結果、後に説明する注液工程において、電解液保持部117への電解液112の注入が阻害される、あるいは、注入された電解液112が電解液保持部117外に漏れ出す、もしくは設計通りの色素増感太陽電池の性能が得られないというような事態が発生するため、好ましくない。
【0034】
固定ホルダ134が円柱体である場合の直径は、太陽電池組み立て体125の構成部材や寸法等を考慮して、封止材111,透明導電膜103,対向電極膜107や半導体層104の割れが起きないように適宜設定すればよい。固定ホルダ134が楕円柱体あるいは多角柱体である場合のサイズも同様に、封止材111,透明導電膜103,対向電極膜107や半導体層104の割れが起きないように適宜設定すればよい。
【0035】
また、
図8(b)に示すように、側面が多角筒面である固定ホルダ134Cを用いた場合は、固定ホルダ134Cの側面134rに太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125pを固定した際に、平面視において太陽電池組み立て体125の面125pによってなす円に側面134pがなす多角形を内接させるように固定する。即ち、太陽電池組み立て体125を稜線部134r
2に当接させるように固定する。これにより、太陽電池組み立て体125にストレスを与えずに固定することができる。
更に、太陽電池組み立て体125の電解液保持部117の位置が多角筒面の平面部134r
1の延長上に位置するように、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134Cに巻きつけるとよい。これにより、電解液保持部117が稜線部134r
2の延長上に位置しないので、電解液保持部117が大きく変形することなく、次に説明する注液工程において電解液保持部117に電解液112を注液できる。
【0036】
(III)<注液工程>
先ず、
図10に示すように、側壁部133Aと、環状の溝部132を有する電解液容器133Bを用意する。溝部132の内側には、固定ホルダ載置面131が設けられている。尚、溝部132の形状は、固定ホルダ134の形状と大きさに合わせて適宜設定できる。
【0037】
次に、電解液容器133Bの溝部132を電解液112で満たす。電解液112としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等の非水系溶剤等を用いることができる。プロピオニトリル等の非水系溶剤は、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム又はヨウ化ブチルメチルイミダゾリウム等のイオン液体などの液体成分に、ヨウ化リチウム等の支持電解液とヨウ素とが混合された溶液である。また、電解液112には、逆電子移動反応を抑えるためにt−ブチルピリジンを含むものを用いてもよい。
【0038】
次に、
図11(a)に示すように、太陽電池組み立て体125を保持した固定ホルダ134を電解液容器133Bに設置する。具体的には、先ず電解液容器133Bの固定ホルダ載置面131に向けて、固定ホルダ134を下降させる。そして、
図11(b)に示すように、固定ホルダ134から下方に突出している太陽電池組み立て体125の開口部118を、電解液容器133Bの溝部132に貯留された電解液112に浸漬する。これにより、固定ホルダ134には、電解液112が付着しない。
【0039】
次に、電解液容器133Bと固定ホルダ134を囲む雰囲気を減圧して減圧雰囲気にすることにより、太陽電池組み立て体125の各太陽電池構造体120の開口部118から電解液保持部117に電解液112を注液する。減圧雰囲気の圧力は、例えば100Pa以上500Pa以下とすることが好ましい。また、電解液112は揮発しやすいので、より短時間に真空度を上げることが好ましい。真空度を上げるための時間は、5分以下であることが好ましく、1分以下であることがより好ましい。電解液容器133Bと固定ホルダ134を囲む雰囲気が減圧雰囲気になるまでの間、即ち、電解液保持部117に電解液112が注入される間には、電解液容器133Bで気流が発生するが、本実施形態では太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125p全体を固定ホルダ134の側面134pに固定していることにより、太陽電池組み立て体125の振動を抑えることができる。その結果、太陽電池組み立て体125の電解液保持部117の内部に気泡を残すことなく、電解液112を注液できる。
【0040】
また、側面134pが円筒面または楕円筒面である固定ホルダ134に太陽電池組み立て体125を保持することにより、太陽電池組み立て体125の保持スペースが縮小される。これにより、減圧雰囲気にする空間の容積を小さくすることができ、注液工程を実施するために必要なスペースを少なくすることができる。
【0041】
太陽電池組み立て体125の電解液保持部117に電解液112を注入した後、電解液容器133Bを大気開放する。
【0042】
(IV)<封止工程>
次に、太陽電池組み立て体125の開口部118の封止材111を熱融着することで開口部118を閉口して、電解液保持部117を封止する。本工程により、
図12に示すように、電解液保持部117に電解液112が充填された太陽電池組み立て体125が完成する。
【0043】
(V)<切断工程>
次に、太陽電池組み立て体125を適当なサイズで裁断して、色素増感太陽電池(図示略)を得る。
【0044】
以上のように、本実施形態の色素増感太陽電池の製造方法によれば、固定工程において、太陽電池組み立て体125を湾曲させた状態で固定ホルダ134の側面134pに固定するので、太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125p全体を固定ホルダ134に保持できる。これにより、注液工程において、電解液容器133B内の減圧時の気流の影響により太陽電池組み立て体125を振動させることなく、安定して太陽電池組み立て体125の電解液保持部117に電解液112を注液することができる。
同時に、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134に湾曲させた状態で固定することで、減圧雰囲気にする空間の容積を小さくすることができ、太陽電池の製造のために必要なスペースを少なくして太陽電池の生産効率を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の色素増感太陽電池の製造方法によれば、固定ホルダ134の側面134pを円筒面または楕円筒面とし、太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125p全体を側面134pに当接させて固定する。これにより、太陽電池組み立て体125にストレスを与えることなく、より安定して固定させることができ、電解液112の注液を確実に行うことができる。
尚、固定ホルダ134の側面134pを多角筒面とし、太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125pを多角筒面の稜線部に当接させて固定させてもよい。その場合、円筒面または楕円筒面の側面134pを有する固定ホルダ134と同様に、太陽電池組み立て体125にストレスを与えることなくより安定して固定させることができ、電解液112の注液を確実に行うことができる。
【0046】
更に、本発明の色素増感太陽電池の製造方法によれば、固定ホルダ134の底部よりも下側に太陽電池組み立て体125の開口部118を突出させた状態で固定して、電解液112を満たした電解液容器133Bに向けて、固定ホルダ134を相対的に下降させて開口部118を電解液に浸漬させる。これにより、開口部118のみを電解液112に浸漬させることができ、固定ホルダ134を電解液112に触れさせずに電解液112を注液できる。
【0047】
更にまた、本発明の色素増感太陽電池の製造方法によれば、複数の太陽電池構造体120が一列に連なって構成され、かつ、各太陽電池構造体120の下端側に開口部118が設けられた太陽電池組み立て体125を用いる。これにより、一度に複数の太陽電池構造体120に電解液112を注液でき、太陽電池の生産効率を大幅に高めることができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
(他の実施形態)
太陽電池組み立て体125を湾曲させて固定できる固定ホルダ134としては、
図6〜8に示した固定ホルダ134A,B,Cのほか、
図13に示すように、平面視で渦巻状に当接させる固定ホルダ134Dを用いてもよい。
【0050】
固定ホルダ134Dの一例を
図13に示す。固定ホルダ134Dは、
図13(a)に示すように、円柱状のプレート134tと、プレート134tの上面134t
1から突起するように配設された固定用部材136A,136B及び複数の円柱134xから構成される。固定用部材136A,136B及び複数の円柱134xの配置は、
図13(b)に示すように、上面134t
1に渦巻線を仮想して描いたときのその渦巻線上に沿って、所定の間隔をあけて配置されている。固定用部材136Aが渦巻線の外周側の端部に位置しており、固定用部材136Bは渦巻線の内周側の端部に位置している。そして、固定用部材136A,136Bの間に円柱134xが渦巻線に沿って配置されている。
【0051】
図13には、10本の円柱134x
1〜134x
10がプレート134tの上面134t
1に配設された固定ホルダ134Dを例示しているが、円柱134xの数は10本に限定されない。また、隣接する円柱134xの間隔は一定であってもよく、一定でなくてもよい。即ち、円柱134xの数と隣接する円柱134xの間隔は、渦巻線の全長を勘案して適宜設定することができる。円柱134xの数を増やすほど渦巻線はより滑らかになり、太陽電池組み立て体125を渦巻線に沿って複数の円柱134xに巻きつけたときに太陽電池組み立て体125に与えるストレスが小さくなるので好ましい。
【0052】
固定ホルダ134Dを用いた際の固定工程においては、固定用部材136Aに太陽電池組み立て体125の一方の側端125cを固定する。続いて、渦巻線に沿って太陽電池組み立て体125の固定ホルダ側の面125pを固定する。最後に、固定用部材136Bに太陽電池組み立て体125の他方の側端125dを固定する。これにより、太陽電池組み立て体125にストレスを与えずに固定することができる。
また、太陽電池組み立て体125の開口部118の下端118bがプレート134tの上面134t
1よりやや上方に位置するように、太陽電池組み立て体125を固定ホルダ134Dに固定するとよい。これにより、下端117bが上面134t
1に接触することなく、注液工程において電解液保持部117に電解液112を注液できる。
その後は、先に説明した実施形態と同様に、注液工程、封止工程及び切断工程を行えばよい。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
本実施形態の色素増感太陽電池の製造方法を用いて、以下説明する条件等により色素増感太陽電池を製造した。
【0055】
(I)<太陽電池組み立て体作製工程>
〔第1電極板の作製〕
透明導電膜として酸化インジウムスズ(ITO)がスパッタリングにより塗布された、100mm×110mm(以降のサイズについては、縦幅×横幅で記載する)のPENフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:テオネックスQ65FA)を用意した。このPENフィルムの端部から2mmの領域にCO
2レーザ(アスク工業(株)製)を用いて絶縁加工を行った。続いて、アプリケーター(テスター産業(株)製)を用いて、ITO膜上に、横方向に5mmの間隔をあけて、TiO
2ペースト(ソラロニクス社製、商品名:ソラロニクスD−L)を8mm×90mmのサイズで7箇所塗布した。その後、電気炉を用いて、TiO
2ペーストを120℃で30分間加熱して硬化させた。更に、色素(綜研化学(株)製、商品名:MK−2)をトルエン(関東化学(株)製、商品名:特級トルエン(脱水))に、色素濃度が0.02〜0.5mMになるように溶解させ、その溶液中にPENフィルムを10分間浸漬した。溶液から取り出したPENフィルムをエタノールで洗浄した後に乾燥させて、TiO
2ペースト毎に1mm×90mmの銅両箔粘着テープ((株)寺岡製作所製)を貼り付けた。
【0056】
〔第2電極板の作製〕
透明導電膜としてITOがスパッタリングにより塗布された、100mm×110mmのPENフィルムを用意した。このPENフィルムの端部から2mmの領域にCO
2レーザを用いて絶縁加工を行った後に、アプリケーターを用いて、ITO膜上に、横方向に
5mmの間隔をあけて、カーボンペースト(十条ケミカル(株)製、商品名:JELCON CH−8)を8mm×90mmのサイズで7箇所塗布した。電気炉を用いてカーボンペーストを120℃で3分間加熱して硬化させた後に、カーボンペースト毎に1mm×90mmのサイズの銅両箔粘着テープを貼り付けた。
【0057】
〔封止材の塗布〕
ITO膜より大きい110mm×120mmのホットメルト樹脂(タマポリ(株)製)を用意した。電流取り出し配線以外のITO膜を覆うように、横方向に5mmの間隔をあけて、このホットメルト樹脂を8mm×92mmのサイズで7箇所塗布した。
【0058】
〔セパレータの準備〕
封止材と同様に、ITO膜より大きな110mm×120mmのセパレータ(廣瀬製紙(株)製、商品名:HOP−6)を用意した。このセパレータにCO
2レーザ(アスク工業(株)製)を用いて、横方向に11.5mmの間隔をあけて、1.5mm×92mmの導通材用の開口を6箇所形成した。
【0059】
〔基板の接着〕及び〔開口部の形成〕
上記工程で得られた各部材を、TiO
2ペーストとカーボンペーストとが対向するように、半導体電極−ホットメルト樹脂−セパレータ−ホットメルト樹脂・離型性樹脂シート(アズワン(株)製、商品名:ナフロンシート)−対極の順に積層した。この後、ホットプレス((株)神藤金属工業所製、商品名:Digital Press)を用いて、120℃、1kN、120秒でホットメルト樹脂を熱融着させて、半導体電極と対極とを接合することにより太陽電池組み立て体とした。
【0060】
(II)〜(IV)<固定工程>、<注液工程>及び<封止工程>
その後、半導体電極と対極との間にある離型性樹脂シートを引き出し、テフロン(登録商標)製の直径60mmの固定ホルダの円筒形の側面に沿って封止部端部を粘着テープで上から押さえながら、太陽電池組み立て体を湾曲させて固定した。この固定ホルダをチャンバ内に設置し、太陽電池組み立て体の開口部を電解液(ソラロニクス社製、商品名:Iodolyte AN−50)に浸漬させた状態で、チャンバ内の圧力が100Paになるまで真空引きを行った。太陽電池組み立て体の全ての電極に同時に電解液を注入した後、チャンバ内を大気開放してホットプレスを用いて開口部を封止した。
【0061】
(実施例2)
本実施形態の色素増感太陽電池の製造方法を用いて、以下説明する条件等により色素増感太陽電池を製造した。
【0062】
〔第1電極板の作製〕
透明導電膜としてITOがスパッタリングにより塗布された、100mm×310mmのPENフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:テオネックスQ65FA)を用意した。このPENフィルムの端部から2mmの領域にCO
2レーザ(アスク工業(株)製)を用いて絶縁加工を行った。続いて、アプリケーター(テスター産業(株)製)を用いて、ITO膜上に、横方向に5mmの間隔をあけて、TiO
2ペースト(ソラロニクス社製、商品名:ソラロニクスD−L)を8mm×90mmのサイズで7箇所塗布した。また、横方向に10mmの間隔をあけて、同じサイズで3箇所塗布した。その後、電気炉を用いてTiO
2ペーストを120℃で30分間加熱して硬化させた。さらに、色素(綜研化学(株)製、商品名:MK−2)をトルエン(関東化学(株)製、商品名:特級トルエン(脱水))に、色素濃度が0.02〜0.5mMになるように溶解させ、その溶液中にPENフィルムを10分間浸漬した。溶液から取り出したPENフィルムをエタノールで洗浄した後に乾燥させて、TiO
2ペースト毎にサイズ1mm×90mmの銅両箔粘着テープ((株)寺岡製作所製)を貼り付けた。
【0063】
〔第2電極板の作製〕
透明導電膜としてITOがスパッタリングにより塗布された、100mm×310mmのPENフィルムを用意した。このPENフィルムの端部から2mmの領域にCO
2レーザを用いて絶縁加工を行った後に、アプリケーターを用いて、ITO膜上に、横方向に5mmの間隔をあけて、カーボンペースト(十条ケミカル(株)製、商品名:JELCON CH−8)を8mm×90mmのサイズで7箇所塗布し、また、横方向に10mmの間隔をあけて、同じサイズで3箇所塗布した。その後、電気炉を用いてカーボンペーストを120℃で3分間加熱して硬化させた後に、カーボンペースト毎に1mm×90mmの銅両箔粘着テープを貼り付けた。
【0064】
〔封止材の塗布〕
ITO膜より大きい110mm×320mmのホットメルト樹脂(タマポリ(株)製)を用意した。電流取り出し配線以外のITO膜を覆うように、横方向に5mmの間隔をあけて、ホットメルト樹脂を8mm×92mmのサイズで7箇所塗布した。また、横方向に10mmの間隔をあけて、同一のサイズで3箇所塗布した。
【0065】
〔セパレータの準備〕
封止材と同様に、ITO膜より大きいサイズ;110mm×320mmのセパレータ(廣瀬製紙(株)製、商品名:HOP−6)を用意した。このセパレータにCO
2レーザ(アスク工業(株)製)を用いて、横方向に11.5mmの間隔をあけて、1.5mm×92mmの導通材用の開口を6箇所に形成し、横方向に10mmの間隔をあけて、同一サイズの導通材用の開口を3箇所形成した。
【0066】
〔基板の接着〕及び〔開口部の形成〕
上記準備工程で得られた各部材を、TiO
2ペーストとカーボンペーストとが対向するように、半導体電極−ホットメルト樹脂−セパレータ−ホットメルト樹脂・離型性樹脂シート(アズワン(株)製、商品名:ナフロンシート)−対極の順に積層した。この後、ホットプレス((株)神藤金属工業所製、商品名:Digital Press)を用いて、120℃、3kN、120秒の条件でホットメルト樹脂を熱融着させて半導体電極と対極とを接合することにより太陽電池組み立て体とした。
【0067】
その後、実施例1と同じ条件及び手順で、固定工程、注液工程、封止工程を行った。
【0068】
(比較例1)
実施例2と同一の条件及び手順で、第1電極板の準備、第2電極板の準備、封止材の準備、セパレータの準備を実施して第1の基板と第2の基板を作製し、ホットメルト樹脂とセパレータを用意した。その後、以下の工程を行い、色素増感太陽電池を製造した。
【0069】
(II)〜(IV)<固定工程>、<注液工程>及び<封止工程>
半導体電極と対極との間の離型性樹脂シートを引き出し、横方向の幅が400mmであるライン状の固定ホルダに太陽電池組み立て体を固定した。この固定ホルダを大型チャンバ内に設置し、太陽電池組み立て体の開口部を電解液(ソラロニクス社製、商品名:Iodolyte AN−50)に浸漬させた状態で、チャンバ内の圧力が100Paになるまで真空引きを行った。太陽電池組み立て体の全ての電極に同時に電解液を注入した後、チャンバ内を大気開放して、ホットプレスを用いて開口部を封止した。
【0070】
以上説明した実施例1,2及び比較例1で得られた色素増感太陽電池の気泡の有無、変換効率、加速試験における変換効率をそれぞれ、で評価した結果を表1に示す。尚、実施例1,2及び比較例1ではそれぞれ色素増感太陽電池を3回作製した。また、表1の“気泡”の欄は、電解液の注入後において、3回の色素増感太陽電池作製のいずれにおいても太陽電池組み立て体の内部に気泡が確認されなかった場合を「○」、1回以上の色素増感太陽電池作製において気泡が確認された場合を「×」として記載した。表1の変換効率は、3回の作製で得られた色素増感太陽電池の変換効率の平均値である。加速試験では、色素増感太陽電池を温度60℃、湿度95%の条件下に100時間置いた後に変換効率を測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法を用いた実施例1,2では、太陽電池組み立て体の内部に気泡が確認されなかった。これは、固定工程で太陽電池組み立て体を円筒面の側面を有する固定ホルダの側面に沿って湾曲させて固定することにより、注液工程で太陽電池組み立て体を極めて安定させたことによる。また、実施例1,2では高い変換効率の色素増感太陽電池が得られており、加速試験の結果においても変換効率の低下が殆どみられなかった。これは、注液工程で太陽電池組み立て体を安定させて、内部に気泡を残すことなく、100%に極めて近い充填率で電解液を注入することができたことによる。
これに対して、比較例1では、太陽電池組み立て体の内部に気泡が確認された。また、変換効率が低下し、加速試験においては変換効率が著しく低下した。これは、注液工程で太陽電池組み立て体が不安定になって振動したために、電解注入時に気泡を除去しきれなかった、あるいは、振動により太陽電池組み立て体の電解液保持部内に空気が入り込んだためと考えられる。また、残留した気泡が第1電極板と第2電極板との導通性を低下させ、加速試験では過酷な条件下で気泡が膨張してしまい、結果として変換効率が低下したものと考えられる。
【0073】
実施例1,2及び比較例1により、本発明の色素増感太陽電池の製造方法によれば、固定工程において、太陽電池組み立て体を固定ホルダに極めて安定させて保持できるため、注液工程において、太陽電池組み立て体の内部に気泡を残すことなく、電解液保持部に電解液を安定的に注入することができ、高い変換効率の色素増感太陽電池が得られることを確認した。また、色素増感太陽電池の製造装置のスペースを大幅に縮小することができた。