特許第5978049号(P5978049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978049
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】搬送装置、並びに、物品保管装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/08 20060101AFI20160817BHJP
   B65G 1/06 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B65G43/08 Z
   B65G1/06 S
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-168930(P2012-168930)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24678(P2014-24678A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】橘 俊之
(72)【発明者】
【氏名】榎 利公
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−026503(JP,A)
【文献】 特開2000−335730(JP,A)
【文献】 特開2009−286597(JP,A)
【文献】 特開2004−018184(JP,A)
【文献】 実開平02−132007(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G1/06
B65G13/00−13/12
B65G43/00−43/10
B65G47/22−47/32,47/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも物品搬入側から物品搬出側に向けて物品を搬送する基本搬送動作の実施が可能な搬送装置であって、
直列的に並んだ複数の制御ゾーンに分割されており、各制御ゾーン上に物品が載置されているか否かを検出する在荷判定機能を備え、
各制御ゾーンには、物品の搬送に寄与する少なくとも1つの駆動源と、制御装置が設けられ、
前記基本搬送動作によって、自己の制御ゾーンに載置された物品を搬送方向下流側の制御ゾーンに搬送する場合は、自己の制御ゾーンの搬送方向下流側に隣接する制御ゾーンに物品が載置されていないことを条件の一つとして、当該自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御するものであり、
自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御したにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合は、当該自己の制御ゾーンよりも搬送方向上流側から当該自己の制御ゾーンに対して別の物品を搬送する搬送補助動作を実行することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送補助動作では、自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合、当該自己の制御ゾーンの駆動源は、動作が一旦停止され、上流側から自己の制御ゾーンに物品が搬送される所定のタイミングで再開されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送補助動作において、自己の制御ゾーンの駆動源の動作の再開時期は、当該自己の制御ゾーンの搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンの駆動源が駆動されたタイミングとほぼ同時であることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送補助動作において、自己の制御ゾーンの搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンから当該自己の制御ゾーンに物品が搬送されたにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合は、当該搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンのさらに上流側の制御ゾーンから当該搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンに別の物品を搬送することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
直列的に並んだ複数の保管区画を有し、複数の物品を一時的に保管する物品保管装置において、
少なくとも物品搬入側から物品搬出側に向けて物品搬送する基本搬送動作の実施が可能な搬送装置を有し、
搬送装置は、保管区画に跨がって設置され、且つ、保管区画ごとに制御ゾーンが分割されており、さらに当該各制御ゾーンに、物品の搬送に寄与する少なくとも1つの駆動源が設けられたものであり、
前記基本搬送動作によって、自己の制御ゾーンに載置された物品を搬送方向下流側の制御ゾーンに搬送する場合は、自己の制御ゾーンの搬送方向下流側に隣接する制御ゾーンに物品が載置されていないことを条件の一つとして、当該自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御するものであり、
自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御したにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合は、当該自己の制御ゾーンよりも搬送方向上流側から当該自己の制御ゾーンに対して別の物品を搬送する搬送補助動作を実行することを特徴とする物品保管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関するものであり、特に複数の物品を一時的に保管する物品保管装置に好適な搬送装置に関する。また、本発明は、その搬送装置を備えた物品保管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流センターや大型倉庫等の施設では、大量の物品が日々取り扱われている。例えば、大型倉庫であれば、大型の棚枠体が複数列に渡って配置されている。ここで、各棚枠体は、全長が10メートル以上にも及ぶ細長いものであり、且つ複数段の棚板がある。
【0003】
そのような施設では、一般的に、パレット等に載せられた物品をフォークリフト等の自走運搬装置(自走機能を備えたマテリアルハンドリング機器)で、複数段の高さを有する棚枠体に搬入し、あるいは搬出している。このフォークリフトによる棚枠体への搬入・搬出可能な奥行きは、フォークリフトのツメ(フォーク)の長さによって制限される。具体的には、フォークリフトによる棚枠体への搬入・搬出可能な奥行きは、せいぜいパレット1個分である。そのため、棚枠体に対する物品の搬入・搬出は、棚枠体の長手側を正面(以下、棚枠体の物品出入面ともいう)にして、その方向から行わざるを得ない。
【0004】
このような事情に鑑みると、いずれの棚枠体も、物品出入面側に別の棚枠体を詰めるように配置することができない。換言すれば、複数の棚枠体が設置された倉庫等においては、フォークリフトが移動し得るスペースを確保するべく、棚枠体同士の間には一定以上の幅を有した通路を形成する必要がある。そのため、限られた面積しか有さない倉庫では、棚枠体と棚枠体の間に設けられた通路によって、物品の取扱可能量が制限され、物品の取扱量がすぐに限界に達してしまう。
そこで、このような問題の対策として、特許文献1に開示されたような物品保管設備を用いることが考えられる。
【0005】
特許文献1には、棚枠体に複数の短尺コンベアがつなぎ合わされた物品保管設備が開示されている。この物品保管設備では、棚枠体の長手方向の一方側からフォークリフトで物品を搬入し、電動モータで駆動される各コンベアに物品を載せ、各コンベア間を搬送させることで、物品を棚枠体内にストレージ(保管)できる。そして、ストレージされた物品を、棚枠体の長手方向の他方側からフォークリフトで任意に搬出できる。つまり、棚枠体の奥行き方向(長手方向)に、複数の物品を直列に配列させることができるため、従来必須だった棚と棚の間の通路が不要となり、施設における単位面積当たりの物品の占有率を高めることが可能である。すなわち、特許文献1の物品保管設備によれば、限られた面積しか有さない施設でも、物品の取扱可能量を増加させることができ、従来よりも多くの物品を取り扱うことができる。
【0006】
ところが、従来技術の物品搬送設備は、特に重量物品(例えば1t以上の物品)を搬送する施設には十分に対応しきれない場合がある。
これについて以下に説明する。
一般的に、コンベアには、駆動源としてはモータが採用される。そして、この駆動源たるモータは、搬送対象たる物品に応じた最適な容量を備えたものが決定される。特に、ローラコンベアの場合であれば、モータを備えたローラが、搬送対象たる物品を搬送するのに必要な力(接線力F)が算出され、その接線力Fがモータ選定の重要な条件の1つとされている。
【0007】
ここで、接線力F(N)を算出する公知の数式を以下に示す。
F=μ*g*W・・・(1)
μ:物品あるいはパレットの底面の転がり摩擦係数
g:重力加速度[m/s
W:物品(パレットに載置する場合はパレットの質量含む)の質量[kg]
【0008】
この数式(1)によれば、接線力Fは、物品の重量に加えて、物品等の転がり摩擦係数との乗算により求められることが分かる。つまり、数式(1)により、接線力Fは、ローラと物品との間の滑りにより、大きく減少してしまうことが理解できる。また、このような数式(1)で用いられる係数は、想定される理想的な状態において適用可能な数値である。すなわち、数式(1)により算出される接線力Fは、あくまでコンベア上に正常な姿勢で物品が載置されている場合に適用できる数値であり、物品が異常な姿勢で載置されている場合は想定されていない。このため、物品の載置姿勢が、コンベアに対して接触する面積が減少した異常な姿勢であれば、算出された接線力Fが十分に物品に伝わらないという不具合があった。そして、そのような異常な姿勢は、物品を円滑に搬送するべく使用されるパレット等の底部が変形等した場合に多発することが知られており、その底部の変形等によって物品全体の荷重を偏らせてコンベアに伝達してしまっていることが原因と考えられている。すなわち、重量物品を搬送する施設においては、単純に算出された接線力Fを基準にモータ選定を行った場合、正常な姿勢の物品は適切に搬送できるが、異常な姿勢の物品に関しては、モータの接線力Fが不足し、コンベア上で物品が意図せず停止する搬送不良を発生させてしまう場合があった。
【0009】
このため、従来技術において、このような搬送不良が発生した場合、その不具合を解消するべく、その発生源まで作業者が駆けつけ、何らかの解決策を施さなければならなかった。またこれに伴い、搬送不良が解消するまで、コンベアの搬送動作が停止されるため、搬送効率を著しく低下させてしまう不満があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−347914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、そのような事情を考慮して、特に重量物品を搬送する施設においては、算出された接線力Fから選定されるモータよりも、若干大きな容量を有したモータを選定する方策が勘案される。しかしながら、一般的に、モータの容量が大きくなれば、高価格となるため、コストの観点からすると、この方策を採用することは困難であった。
【0012】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、物品を搬送方向下流に向けて搬送する制御が行われているにも関わらず、コンベア上の物品が搬送されないという搬送不良が発生した場合であっても、作業者に依らずともその搬送不良の解消を実施可能な搬送装置、並びに、物品保管装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は少なくとも物品搬入側から物品搬出側に向けて物品を搬送する基本搬送動作の実施が可能な搬送装置であって、直列的に並んだ複数の制御ゾーンに分割されており、各制御ゾーン上に物品が載置されているか否かを検出する在荷判定機能を備え、各制御ゾーンには、物品の搬送に寄与する少なくとも1つの駆動源と、制御装置が設けられ、前記基本搬送動作によって、自己の制御ゾーンに載置された物品を搬送方向下流側の制御ゾーンに搬送する場合は、自己の制御ゾーンの搬送方向下流側に隣接する制御ゾーンに物品が載置されていないことを条件の一つとして、当該自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御するものであり、自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御したにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合は、当該自己の制御ゾーンよりも搬送方向上流側から当該自己の制御ゾーンに対して別の物品を搬送する搬送補助動作を実行することを特徴とする搬送装置である。
【0014】
本発明の搬送装置は、自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御したにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合に、搬送方向上流側から自己の制御ゾーンに向けて物品を搬送する搬送補助動作が実行される構成とされている。
ここで、本発明の搬送装置では、複数の制御ゾーンが直列的に並べられており、それぞれの制御ゾーンに少なくとの1つの駆動源が設けられている。また、各制御ゾーンがローラコンベアであるとすると、一般的に、各制御ゾーンには、駆動源によって直接駆動する駆動ローラと、その駆動ローラから間接的に得た動力で駆動する従動ローラとが備えられている。つまり、制御ゾーンがこのような構成であれば、従動ローラが何らかの外力で駆動した場合でも、駆動ローラを含めた全体が駆動することとなる。
したがって、本発明のように、自己の制御ゾーンに向けて物品が搬送され、その物品が上流側の駆動源によって搬送された場合、その物品を介して、上流側の駆動力が自己の制御ゾーンに伝道されることとなる。この結果、上流側の駆動力が、自己の制御ゾーンの駆動源の駆動力に加担され、一時的に自己の制御ゾーンの駆動力が補強される。そして、これに伴い、物品を搬送する接線力の上昇を図ることができる。つまり、上流側からの物品の搬送により、自己の制御ゾーンが有する接線力以上の力を一時的に発揮させることができる。
【0015】
このように、本発明によれば、自己の制御ゾーンの駆動源に、過負荷が掛かり、駆動制御しているにも関わらず、殆ど作動しない状況に陥ったとしても、上流の制御ゾーンの駆動力によって、自己の制御ゾーンの駆動力を一時的に増強できるため、自己の制御ゾーンのトータルの接線力が物品の搬送に要する力以上となり、それを足がかりに自己の制御ゾーンの駆動源を正常に作動させることができる。これにより、本発明では、作業者等に依らずとも、過負荷等に起因した搬送不良を解消することができる。
なお、駆動源に過負荷等が発生する場合としては、先にも説明したが、搬送する際に物品を載せるパレット等の底部の歪みによる荷重の偏り等が挙げられる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記搬送補助動作では、自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合、当該自己の制御ゾーンの駆動源は、動作が一旦停止され、上流側から自己の制御ゾーンに物品が搬送される所定のタイミングで再開されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置である。
【0017】
かかる構成によれば、自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合に、その駆動源の動作を一旦停止し、上流側から自己の制御ゾーンに物品が搬送される所定のタイミングで、停止した駆動源の動作を再開するため、駆動源を駆動制御しているにも関わらず動作しない、過度な負荷が生じる期間を短縮することができる。その結果、前記した駆動源に掛かる駆動制御時の負荷を大幅に軽減することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記搬送補助動作において、自己の制御ゾーンの駆動源の動作の再開時期は、当該自己の制御ゾーンの搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンの駆動源が駆動されたタイミングとほぼ同時であることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置である。
【0019】
かかる構成によれば、自己の制御ゾーンの駆動源の再開時期を、上流側に隣接する制御ゾーンの駆動源が駆動されたタイミングとほぼ同時にしたため、自己の制御ゾーンにおける駆動源の負荷をより効率的に軽減することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記搬送補助動作において、自己の制御ゾーンの搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンから当該自己の制御ゾーンに物品が搬送されたにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合は、当該搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンのさらに上流側の制御ゾーンから当該搬送方向上流側に隣接する制御ゾーンに別の物品を搬送することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送装置である。
【0021】
かかる構成によれば、自己の制御ゾーンの上流側に隣接する制御ゾーンの駆動力のみならず、さらに上流側の制御ゾーンの駆動力を利用するため、自己の制御ゾーンの駆動源をより確実に作動させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、直列的に並んだ複数の保管区画を有し、複数の物品を一時的に保管する物品保管装置において、少なくとも物品搬入側から物品搬出側に向けて物品搬送する基本搬送動作の実施が可能な搬送装置を有し、搬送装置は、保管区画に跨がって設置され、且つ、保管区画ごとに制御ゾーンが分割されており、さらに当該各制御ゾーンに、物品の搬送に寄与する少なくとも1つの駆動源が設けられたものであり、前記基本搬送動作によって、自己の制御ゾーンに載置された物品を搬送方向下流側の制御ゾーンに搬送する場合は、自己の制御ゾーンの搬送方向下流側に隣接する制御ゾーンに物品が載置されていないことを条件の一つとして、当該自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御するものであり、自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御したにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合は、当該自己の制御ゾーンよりも搬送方向上流側から当該自己の制御ゾーンに対して別の物品を搬送する搬送補助動作を実行することを特徴とする物品保管装置である。
【0023】
本発明の物品保管装置は、搬送装置が、自己の制御ゾーンの駆動源に、過負荷が掛かり、駆動制御しているにも関わらず、殆ど作動しない状況に陥ったとしても、上流の制御ゾーンの駆動力によって、自己の制御ゾーンの駆動力を一時的に増強できるため、自己の制御ゾーンのトータルの接線力が物品の搬送に要する力以上となり、それを足がかりに自己の制御ゾーンの駆動源を正常に作動させることができる。これにより、本発明では、作業者等に依らずとも、過負荷等に起因した搬送不良を解消することができる。
【0024】
また、本発明によれば、自己の制御ゾーンの駆動源が、何らかの原因で故障して物品を搬送し得ない状態になったとしても、自己の制御ゾーンの上流に位置する制御ゾーンの駆動力を利用して物品を自己の制御ゾーンの下流側に搬送することができる。すなわち、上流側から新たな物品を自己の制御ゾーンに搬送して、その新たな物品で自己の制御ゾーンの物品を下流に向けて押し流すことが可能である。このように、本発明では、たとえ自己の制御ゾーン上の物品を搬送できない状況が発生したとしても、その上流側の制御ゾーンの駆動力を利用することができるため、駆動源の故障等による搬送不良も解消することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の搬送装置、並びに、物品保管装置は、自己の制御ゾーンの駆動源を駆動制御したにも関わらず、当該自己の制御ゾーンの駆動源が殆ど作動しない場合に、当該自己の制御ゾーンよりも搬送方向上流側から当該自己の制御ゾーンに対して物品を搬送する搬送補助動作の実行が可能であるため、過負荷あるいは駆動源の故障等に起因した搬送不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る物品保管装置の一部を示す斜視図である。
図2図1の搬送装置を模式的に示した平面図である。
図3図2の搬入ゾーンに設けられた制御装置のブロック図である。
図4図2の保管ゾーンに設けられた制御装置のブロック図である。
図5図2の搬出ゾーンに設けられた制御装置のブロック図である。
図6】搬入ゾーンにおける前詰め保管動作(基本搬送動作)を示すフローチャートである。
図7】保管ゾーンにおける前詰め保管動作(基本搬送動作)を示すフローチャートである。
図8】搬出ゾーンにおける前詰め保管動作(基本搬送動作)を示すフローチャートである。
図9】(a)〜(e)は、搬送装置の前詰め保管動作(基本搬送動作)時の各状態を示す説明図である。
図10】1つの制御ゾーンに1つの通常物品が載置された場合の各動作を示す説明図であり、(a)は搬送装置の在荷判定動作を示し、(b)は(a)の動作が実行された後の位置確認動作を示す。
図11】複数の制御ゾーンに通常物品が跨って載置された場合の各動作を示す説明図であり、(a)は搬送装置の在荷判定動作を示し、(b)及び(c)は(a)の動作が実行された後の位置確認動作を示し、(d)は位置確認動作を実行した後の位置確定動作を示す。
図12】搬送装置の在荷判定動作を示すフローチャートである。
図13】搬送装置の搬送補助動作を実行する際の物品等の挙動を示す説明図である。
図14】搬送装置の搬送補助動作を示すフローチャートである。
図15】物品保管装置に用いられる搬送装置の斜視図である。
図16図15の搬送装置の1つの制御ゾーンに注目した斜視図である。
図17図15の搬送装置で採用するモータ内蔵ローラの断面図である。
図18図15の搬送装置で採用するローラ本体回転型空転ローラの断面図である。
図19図15の搬送装置で採用する本体・支持軸一体型空転ローラの断面図である。
図20】搬送装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態に係る物品保管装置1について説明する。
本実施形態の物品保管装置1は、図1に示すように、ラックを構成する上下2段の保管棚2と、その上下の保管棚2にそれぞれ設けられた搬送装置3とで構成されている。
ここで、以下においては、理解を容易にするため、まず簡素なコンベアモデルを用いて説明し、本実施形態の搬送装置3の具体的な機械構成等については後述することとする。
【0028】
物品保管装置1は、図2に示すように、パレットP上に載せた製品や部品等(パレットPと製品や物品等を総称したものを物品等Wpという)を保管可能な枠体を形成した保管棚2を有し、当該保管棚2において、直列的に並んだ複数(図2のモデルには5つ)の保管区画A〜Eが設けられている。各保管区画A〜Eは、それぞれ物品等Wpを1つ保管できる区画であり、合計5つの物品等Wpを直列に保管できる。また、各保管区画A〜Eには、搬送装置3が設置されており、当該搬送装置3は、その搬送方向が保管区画A〜Eに跨るように設置されている。
【0029】
そして、本実施形態では、搬送装置3の制御ゾーンA〜Eが、それぞれ保管区画A〜Eに対応するように設定されており、物品搬入側から物品搬出側に向かう方向X、具体的には、制御ゾーンAから制御ゾーンEへと物品等Wpが流れる方向を、進行側の搬送方向Xとしている。すなわち、制御ゾーンAから搬入された物品等Wpは、制御ゾーンB〜Dの順に進行して、制御ゾーンEから搬出される。したがって、制御ゾーンAは、物品搬入側の端部(最上流)に位置する制御ゾーンであり、「搬入ゾーン」として機能する。逆に、制御ゾーンEは、物品搬出側の端部(最下流)に位置する制御ゾーンであり、「搬出ゾーン」として機能する。また、それらの間に位置する制御ゾーンB〜Dは、中間領域の制御ゾーンであり、保管ゾーンとして機能する。
【0030】
また、各制御ゾーンA〜Eは、後述するモータ(駆動源)21(モータ内蔵ローラ7)と、制御装置101〜105をそれぞれ有している。制御ゾーンA〜Eが有するモータ21には、それぞれ制御装置101〜105が接続されている。そして、制御装置101〜105同士は、数珠つなぎに接続、つまり電気的に直列に接続されている。
【0031】
また、搬入ゾーンAに設けられた制御装置101は、図3に示すように、マイクロコントローラ120と、モータ駆動回路121と、I/O回路122と、通信回路123と、ディップスイッチ127を有している。
【0032】
マイクロコントローラ120は、従来公知のCPU124と、ROM125と、RAM(在荷記憶手段)126等を備えた集積回路である。
CPU124は制御プログラムや命令等を実行可能な中央処理装置であり、いわゆるプロセッサである。
ROM125は、EEPROMやフラッシュメモリ等で構成される保存装置であり、制御プログラム等を保存可能である。
RAM126は、SRAMやDRAM等で構成される記憶装置であり、いわゆるメインメモリである。RAM126には、前述の「在荷情報」等が記憶される。詳細には、RAM126は、自己の又は他の制御ゾーンに物品が存在するか否かの情報を記憶可能である。
【0033】
モータ駆動回路121は、モータ21(モータ内蔵ローラ7)を制御可能な従来公知のドライバ回路であり、モータ21のON/OFF、速度調整等が可能である。
【0034】
I/O回路122は、外部装置と信号を送受信するためのインターフェース回路である。I/O回路122には、近接スイッチ111と、赤外線センサ112と、取出スイッチ113が接続されている。
【0035】
近接スイッチ111は、非接触型の磁気センサであり、金属の近接・離反を検知するものである。近接スイッチ111は、自己の制御ゾーンに、外部装置であるフォークリフト等の自走運搬装置の一部(金属製のツメ等)が近接・離反したことを検知できる。
【0036】
赤外線センサ112は、非接触で物品の有無を検知可能なセンサである。赤外線センサ112は、発光部と受光部を有し、発光部から放出した赤外線が、物品等Wpに反射して受光することで、物品の有無を検出するものである。
【0037】
取出スイッチ113は、従来公知の押しボタンスイッチであり、物品等Wpの搬送方向Xを逆転できるスイッチである。すなわち、取出スイッチ113は、物品搬入側から物品搬出側に向かう方向から、物品搬出側から物品搬入側に向かう方向、あるいは、物品搬出側から物品搬入側に向かう方向から、物品搬入側から物品搬出側に向かう方向に反転する信号を送信することができる。
【0038】
通信回路123は、他の制御装置と通信するための回路である。本実施形態では、通信回路123は、搬送方向Xにおける隣接する制御ゾーンA〜Eの制御装置101〜105同士を接続し、自己の制御ゾーンAに対して、搬送方向Xにおける下流側の制御ゾーンBに物品等Wpが存在するか否かの「在荷情報」を受信する通信手段である。
【0039】
ディップスイッチ127は、設定切替用の手動スイッチである。本実施形態では、ディップスイッチ127の操作により、搬送方向の切り替え、搬送速度の切り替え等を行うことが可能である。また、ディップスイッチ127の切り替えにより、制御装置101を「保管ゾーン」制御用の制御装置として用いることが可能となる。さらに、ディップスイッチ127の切り替えにより、制御装置101を「搬出ゾーン」制御用の制御装置として用い、逆に、制御装置105を「搬入ゾーン」制御用の制御装置として用いることも可能である。
【0040】
保管ゾーンB〜Dに設けられた制御装置102〜104は、前記した制御装置101と基本的に同様の構成を有しているため、以下の説明においては、同一の部材あるいは同一の機能を有する部分については同一の番号を付して、説明を省略する。
【0041】
すなわち、保管ゾーンB〜Dに設けられた制御装置102〜104は、図4に示すように、マイクロコントローラ120と、モータ駆動回路121と、I/O回路122と、通信回路123と、ディップスイッチ127を有している。そして、各制御装置102〜104は、自己の制御ゾーンよりも物品搬出側の制御ゾーンに物品等Wpが存在するか否かの「在荷情報」を受信可能であると共に、自己の制御ゾーンに物品等Wpが存在するか否かの「在荷情報」を、物品搬入側の制御装置に送信可能な構成とされている。
【0042】
より具体的に、保管ゾーンB〜Dにおける、「在荷情報」の送受信を行う位置関係について説明すると、制御装置102(制御ゾーンBの制御装置)の物品搬出側は、制御装置103(制御ゾーンCの制御装置)であり、物品搬入側は、制御装置101(制御ゾーンAの制御装置)である。同様に、制御装置103(制御ゾーンCの制御装置)の物品搬出側は、制御装置104(制御ゾーンDの制御装置)、物品搬入側は、制御装置102(制御ゾーンBの制御装置)である。さらに、制御装置104(制御ゾーンDの制御装置)の物品搬出側は、制御装置105(制御ゾーンEの制御装置)、物品搬入側は、制御装置103(制御ゾーンCの制御装置)である。
【0043】
また、本実施形態では、制御装置102〜104のI/O回路122には、何も接続されていない。すなわち、制御装置102〜104のI/O回路122には、近接スイッチ111、取出スイッチ113だけでなく、赤外線センサ112も接続されていない、センサレスの構成である。そのため、本実施形態では、制御装置102〜104においては、自己の制御ゾーン(制御ゾーンB〜D)に物品等Wpが存在するか否かを判定する在荷判定機能と、自己の制御ゾーンに物品等Wpが搬送されていることを検出する搬送検出機能が備えられている。なお、この在荷判定機能と搬送検出機能については、搬送装置3の動作説明の際に詳しく説明する。
【0044】
搬出ゾーンEに設けられた制御装置105は、前記した制御装置101と基本的に同様の構成を有しているため、以下の説明においては、同一の部材あるいは同一の機能を有する部分については同一の番号を付して、説明を省略する。
【0045】
すなわち、搬出ゾーンEに設けられた制御装置105は、図5に示すように、マイクロコントローラ120と、モータ駆動回路121と、I/O回路122と、通信回路123と、ディップスイッチ127を有している。そして、制御装置105は、前記した搬入ゾーンAの制御装置101と同様、近接スイッチ111と、赤外線センサ112とが接続された構成とされている。
【0046】
制御装置105は、搬送方向Xにおける最下流(物品搬出側の端部)に位置し、そのさらに下流側には制御装置が存在しない。そのため、搬出ゾーンEに対して、搬送方向Xの上流側から物品等Wpが搬送されてくると、物品等Wpを自己の制御ゾーンで停止させ、保管する必要がある。そのため、本実施形態では、赤外線センサ112によって、自己の制御ゾーンに物品等Wpが到着したことが検知されると、モータ21の駆動を強制的に停止できる機能を備えている。
【0047】
次に、本実施形態の搬送装置3における基本搬送動作について説明する。
本実施形態の搬送装置3は、基本搬送動作として、物品等Wpを搬入ゾーンAから搬出ゾーンEに向けて前詰めする「前詰め保管動作」が実行される。すなわち、前詰め保管動作では、図9(a)に示すように、物品等Wpが搬入ゾーンAに搬入されると、図6〜8のフローチャートに従って、当該物品等Wpが搬出ゾーンEに向けて搬送される。
なお、以下の基本搬送動作の説明においては、後述する在荷判定機能によって、予め、各保管ゾーンB〜D上に物品等Wpが無いものと判定されているものとする。
【0048】
具体的には、搬入ゾーンAにおいては、赤外線センサ112によって、物品等Wpの有無が検知される(図6のステップ1)。そして、ステップ1において、赤外線センサ112が、搬入ゾーンAに物品等Wpが有ることを検知し、制御装置101にその検知情報が入力されると、当該制御装置101によって、搬入ゾーンAに物品等Wpが搬入されたと認識される。そして、搬入ゾーンAが物品等Wpを認識したことを条件に、ステップ2に移行し、搬送方向Xの下流側に隣接する保管ゾーンBにおける物品等Wpの有無が確認される。
【0049】
ここで、前記したように、既に、在荷判定機能によって、保管ゾーンBには物品等Wpが無いと判定されているため、搬入ゾーンAの制御装置101に、保管ゾーンB上には物品等Wpは存在しないという「在荷情報」が入力される。その結果、ステップ3に移行して、搬入ゾーンAのモータ21が駆動されると共に、制御装置101から搬送方向下流側に位置する制御ゾーンBの制御装置102に対して、物品等Wpの搬送に関連する情報が入力されて、搬入ゾーンAから保管ゾーンBに物品等Wpの搬送が開始される。そして、搬入ゾーンAのモータ21は、搬入ゾーンAにおける搬送方向Xに沿った全長を基準に、所定のパルス数だけ駆動するように回転制御される。より詳細には、搬入ゾーンAのモータ21は、物品等Wpを、前記搬入ゾーンAの全長の3/4程度の距離を移動するような回転制御が実行される。
なお、本実施形態では、「物品等Wpの搬送に関連する情報」として、モータ21の駆動信号や、モータ21の回転方向等、駆動源たるモータ21の駆動に関する情報を採用している。
【0050】
そして、物品等Wpが保管ゾーンBに到達して、搬入ゾーンAのモータ21の駆動力が物品等Wpを介して、保管ゾーンBのモータ21に伝動されると、搬送検出機能が働く。すなわち、保管ゾーンBにおいては、搬送検出機能によって、自己の制御ゾーンへの物品等Wpの搬送が確認される。より詳細に説明すると、物品等Wpが搬入ゾーンAから送られてくると、保管ゾーンBが有するモータ21が強制的に回転力(負荷)を受ける。このとき、モータ21内部では、モータ21の制御用として内蔵しているホールIC(図示省略)が、モータ21の回転を検知してパルス電圧(負荷に起因した変化)を発生する。そして、このパルス電圧(出力信号)が、モータ駆動回路121を経由して、マイクロコントローラ120で受信されることで、保管ゾーンBの制御装置102に物品が到着したことが認識される。
なお、本実施形態では、前記したRAM126にその情報を記憶させることによって、「在荷情報」を制御装置102に保持させている。また、前記した在荷情報を検知するその他の方法として、モータ21が回転力を受けた際に生じる逆起電力(負荷に起因した変化)を利用しても構わない。
【0051】
このようにして、本実施形態では、搬送検出機能によって、赤外線センサ112を用いることなく、自己の制御ゾーンに物品等Wpが到着したことを確認することができる。すなわち、ステップ4において、保管ゾーンBにおいてパルス電圧が発生したことが確認されると、物品等Wpが搬入されていると確認し、ステップ5に移行して、保管ゾーンBのモータ21が所定のパルス数だけ駆動するように回転制御される。これにより、図9(b)に示すように、物品等Wpは保管ゾーンBに完全に送られた状態となる。すなわち、ステップ5において、保管ゾーンBのモータ21が駆動されることによって、物品等Wpが搬入ゾーンAから逸脱した状態となる。
【0052】
一方、図6のステップ4において、搬入ゾーンAから物品等Wpが搬送されているにも関わらず、保管ゾーンBにおける物品等Wpの搬入が行われなかった場合は、ステップ6に移行し、後述する搬送補助機能が実行される。
【0053】
このようにして、物品等Wpが保管ゾーンBに完全に移行すると、図7のフローチャートに従った搬送動作が実施される。すなわち、図7のステップ11では、保管ゾーンBに対して、搬送方向Xの下流側に隣接する保管ゾーンCにおける物品等Wpの有無が確認される。そして、前記条件に従えば、保管ゾーンCには物品等Wpは存在しないため、保管ゾーンBの制御装置102には「保管ゾーンCには物品無し」という「在荷情報」が入力される。その結果、ステップ12に移行して、保管ゾーンBのモータ21が駆動されると共に、制御装置102から搬送方向下流側に位置する制御ゾーン(保管ゾーン)Cの制御装置102に対して、物品等Wpの搬送に関連する情報が入力されて、保管ゾーン(以下、送り出し側の制御ゾーンを「送出制御ゾーン」ともいう)Bから保管ゾーン(以下、受け入れ側の制御ゾーンを「受入制御ゾーン」ともいう)Cに物品等Wpの搬送が開始される。そしてこのとき、送出制御ゾーンBのモータ21は、所定のパルス数だけ駆動するように回転制御される。
【0054】
ステップ12の動作によって、物品等Wpが受入制御ゾーンCに到達し、送出制御ゾーンBのモータ21の駆動力が物品等Wpを介して、受入制御ゾーンCのモータ21に伝動されると、搬送検出機能が働き、受入制御ゾーンCにおいて、自己の制御ゾーンへの物品等Wpの搬送が確認される(ステップ13)。そして、ステップ13において、受入制御ゾーンCのモータ21のパルス電圧が確認され、当該パルス電圧が発生していれば、ステップ14に移行する。
【0055】
ステップ14では、受入制御ゾーンCのモータ21が所定のパルス数だけ駆動する制御が実行される。これにより、図9(c)に示すように、物品等Wpが受入制御ゾーンCに完全に移行した状態となる。その後、保管ゾーンCが送出制御ゾーンとなると共に、保管ゾーンDが受入制御ゾーンとなって、前記同様の動作が実行され、図9(d)に示すように、物品等Wpが保管ゾーンDまで搬送される。
【0056】
一方、ステップ13において、送出制御ゾーンBから物品等Wpが搬送されているにも関わらず、受入制御ゾーンCにおける物品等Wpの搬入が行われなかった場合は、図6のフローチャートのステップ6と同様、後述する搬送補助機能が実施される(図7のステップ15)。
【0057】
このようにして、物品等Wpが保管ゾーンにおける搬送方向Xの下流端まで搬送されると、図8のフローチャートに従った搬送動作が実施される。すなわち、図8のステップ21では、保管ゾーンDの搬送方向Xの下流側に隣接する搬出ゾーンEにおける物品等Wpの有無が確認される。具体的には、搬出ゾーンEに設けられた赤外線センサ112によって、物品の有無が検知される。そして、赤外線センサ112が物品等Wpを検知しなければ、「搬出ゾーンE上には物品無し」という「在荷情報」が、保管ゾーンDの制御装置104に入力される。その結果、ステップ22に移行して、保管ゾーンDのモータ21が駆動されると共に、制御装置104から搬送方向下流側に位置する制御ゾーン(搬出ゾーン)Eの制御装置105に対して、物品等Wpの搬送に関連する情報が入力されて、保管ゾーンDから搬出ゾーンEへの物品等Wpの搬送が開始される。そしてこのとき、保管ゾーンDのモータ21は、所定のパルス数だけ駆動するように回転制御される。
【0058】
ステップ22の動作によって、物品等Wpが搬出ゾーンEに到達し、保管ゾーンDのモータ21の駆動力が物品等Wpを介して、保管ゾーンEのモータ21に伝動されると、搬送検出機能が働き、搬出ゾーンEにおいて、自己の制御ゾーンへの物品等Wpの搬送が確認される。すなわち、ステップ23においては、搬出ゾーンEのモータ21のパルス電圧の発生が確認されて、当該パルス電圧の発生があれば、ステップ24に移行する。そして、ステップ24に移行し、ゾーンDのモータ21が所定のパルス数だけ駆動する回転制御が実行されると、図9(e)に示すように、物品等Wpが搬出ゾーンEに完全に移行した状態となる。
また、本実施形態では、ステップ25において、赤外線センサ112が物品等Wpを検知すれば、ステップ26に移行して、搬出ゾーンEのモータ21の駆動を強制的に停止することができる。そのため、物品等Wpが搬出ゾーンEを通り過ぎて、搬送装置3から脱落してしまうような不具合が起き得ない。
このようにして、搬入ゾーンAに搬入された物品等Wpは、各制御ゾーンA〜Eにおける制御を経て、搬出ゾーンEに搬送されて保管される。
【0059】
一方、ステップ23において、保管ゾーンDから物品等Wpが搬送されているにも関わらず、搬出ゾーンEにおける物品等Wpの搬入が行われなかった場合は、図6のフローチャートのステップ6(あるいは図7のフローチャートのステップ15)と同様、後述する搬送補助動作が実施される(図8のステップ27)。
【0060】
そして、さらに、搬入ゾーンAから搬入される物品等Wpがあれば、前記した同様の前詰め保管動作によって、当該物品等Wpが搬出ゾーンEに向けて搬送される。
【0061】
また、本実施形態においては、基本搬送動作を実施するにあたっての安全上の観点から、搬入ゾーンA及び搬出ゾーンEにおいて、外部装置であるフォークリフト等の自走運搬装置の一部(金属製のツメ等)が近接したことを検知した場合に、搬入ゾーンAや搬出ゾーンEのモータ21を強制的に不能にする安全動作機能が備えられている。すなわち、本実施形態の制御装置は、この安全動作機能によって、近接スイッチ111が前記外部装置の近接したことを検知した場合に、搬入ゾーンAや搬出ゾーンEのモータ21を不能状態にし、近接スイッチ111から前記外部装置が離れたと認識すれば、モータ21の不能状態を解除する制御が実行される。
【0062】
次に、本実施形態の搬送装置3における特徴的動作について説明する。
本実施形態の搬送装置3は、特徴的動作として、赤外線センサ112によることなく、各制御ゾーンにおける物品の在荷情報を得ることができる在荷判定機能と、各制御ゾーンのモータ21が過負荷等が起因して搬送不良状態となった場合に、作業者等に依らずとも自動復帰を可能とする搬送補助機能とが備えられている。
【0063】
本実施形態の在荷判定機能は、前記した基本搬送動作を行う前の準備運転であり、主に電源投入時に実施される動作(以下、在荷判定動作という)である。なお、ここで言う「電源投入時」とは、就業時に搬送装置3を起動する場合や、予期せぬタイミングで電源が落ちたり、停電が起きた際に、搬送装置3を再起動するような場合である。
【0064】
この在荷判定動作は、電源投入時に必ず実施される動作であり、各制御ゾーンA〜Eのモータ21を、低速度の回転に制限した所定(本実施形態では、6%)のデューティ(実際の出力トルク/モータの最大トルク)に固定して駆動し、その際のモータ21から取得できる情報に基づいて、制御ゾーンA〜Eにおける物品等Wpの有無の判定を行う動作である。より具体的には、本実施形態の在荷判定動作では、搬送方向Xに隣接する制御ゾーン同士が、異なる方向に物品等Wpを搬送するような制御を行い、その際に各制御ゾーンのモータ21に発生し得る負荷やその負荷に起因した変化に関する情報を取得し、その情報に基づいて、物品等Wpの有無の判定を行う。
なお、本発明では、各制御ゾーンA〜Eにおけるモータ21のデューティを、前記した6%に限ったものではなく、5〜10%や、5〜15%等の一定の範囲に制限されるようにしても、6%以外の数値を固定デューティとして制限して用いても構わない。ただし、いずれにしても、在荷判定動作を行うにあたっては、モータ21のデューティが一定値(例えば20%)よりも高くならないようにすることが望ましい。
【0065】
具体的に、各制御ゾーンA〜Eにおけるモータ21の回転制御について説明すると、物品搬入側の端部(最上流)たる搬入ゾーンAのモータ21が、物品等Wpが物品搬出側の端部(最下流)たる搬出ゾーンEに向けて流れるように回転制御(以下、正回転制御という)が行われたとすれば、その搬入ゾーンAの下流側に隣接する保管ゾーンBのモータ21は、物品等Wpが搬入ゾーンAに向けて流れるように回転制御(以下、逆回転制御という)が行われ、保管ゾーンBの下流側に隣接する保管ゾーンCのモータ21は正回転制御が行われ、保管ゾーンCの下流側に隣接する保管ゾーンDのモータ21は逆回転制御が行われ、搬出ゾーンEのモータ21は正回転制御が行われる。
また同様に、各制御ゾーンA〜Eにおいては、モータ21の回転方向をそれぞれ前記した方向と逆方向にしても構わない。
【0066】
例えば、図10(a)に示すように、1つの制御ゾーンBに、1つの物品等Wpが載置されている場合において、図12のフローチャートに従って、前記したモータ21の回転制御を所定時間(例えば30秒)行う(ステップ31)。すると、図10(a)に示す保管ゾーンBのモータ21は、逆回転制御が行われる。これにより、物品等Wpは、その回転に追従して、搬入ゾーンAに向かって流れようとするが、物品等Wpの重量によって当該モータ21の回転は阻害される。より具体的に言うと、保管ゾーンBのモータ21は、制御装置102から所定のデューティに制限されて回転制御されるが、物品等Wpの負荷によって、その所定のデューティに満たない状態あるいは全く回転しない状態となる。換言すれば、保管ゾーンBのモータ21は、制御装置102から出力される所定のパルス数よりも、小さいパルス数で回転するか、無回転状態(以下、モータロック等ともいう)となる。
【0067】
この結果、図12のステップ32において、保管ゾーンBのモータ21の実際のパルス数が、制御装置102から出力された所定のパルス数未満であることが確認されれば、ステップ33に移行する。ステップ33では、ステップ32で所定のパルス数未満であると確認された制御ゾーン(複数存在すれば複数の制御ゾーン)のモータ21を、搬送方向Xの下流側に位置するものから順番に駆動していく(物品位置確認動作)。すなわち、ステップ33では、図10(b)に示す保管ゾーンBのモータ21が、一定のパルス数で正回転するように制御される。なお、このときのモータ21は、ほんの僅かなパルス数(本実施形態では、物品等Wpが30mm移動する程度のパルス数)で回転制御される。
【0068】
そして、ステップ34に移行して、ステップ3で実際に回転制御した制御ゾーンの上流側に隣接する制御ゾーンにおけるモータ21が、パルス電圧を生じるか否かが確認される。具体的には、保管ゾーンBの上流側に隣接する搬入ゾーンAに、パルス電圧が発生するか否かが確認される。そして、図10に示す場合、1つの物品等Wpが1つの制御ゾーンたる保管ゾーンBに載置されているだけであるため、搬入ゾーンAにパルス電圧が発生することはなく、ステップ38に移行する。その結果、ステップ38では、保管ゾーンBには通常物品等Wpaが存在し、搬入ゾーンAには物品等Wpが存在しないと判定される。
なお、本実施形態では、搬入ゾーンAに赤外線センサ112が設けられているため、範有ゾーンAに関しては、通常在荷判定動作の結果に関わらず、赤外線センサ112で検知された検知情報を採用することができる。
【0069】
これに対して、図10に示すその他の制御ゾーンC〜E上には、当初から物品等Wpが載置されておらず、モータ21に負荷あるいは負荷に起因した変化をもたらすことはないため、図12のステップ31において、各制御ゾーンC〜Eのモータ21が、モータロック等することがない。すなわち、制御ゾーンC〜Eはそれぞれ、ステップ32からステップ37に移行し、自己の制御ゾーンに物品等Wpが存在しないと判定される。
そして、このようにして在荷情報が取得されると、上記した基本搬送動作に移行する。
【0070】
また、本実施形態の在荷判定動作は、搬送方向Xに隣接する制御ゾーン同士が、互いに異なる方向に物品等Wpを搬送するように、モータ21の回転制御を行うことで、隣接する制御ゾーンに跨って通常物品等Wpaが載置されている場合であっても、的確に在荷情報を取得することができる構成とされている。
【0071】
例えば、図11(a)に示すように、保管ゾーンBと、その下流側に隣接する保管ゾーンCに、1つの物品等Wpが跨って載置されている場合を例にする。すなわち、この場合において、前記したモータ21の回転制御を行えば(図12のステップ31)、保管ゾーンBのモータ21は逆回転を行い、保管ゾーンCのモータ21は正回転を行う。すなわち、物品等Wpは、保管ゾーンB側では搬入ゾーンAに向けて流れようとし、保管ゾーンC側では搬出ゾーンEに向けて流れようとする。換言すると、保管ゾーンBと保管ゾーンCに跨って載置された物品等Wpは、各制御ゾーンのモータ21の駆動力によって、引っ張り合うような力が作用する。また、このときの保管ゾーンB、Cのモータ21に注目すると、物品等Wpを介して、互いに駆動力を打ち消し合うような作用が働く。
なお、物品等Wpが、保管ゾーンCと保管ゾーンDに跨って載置されて、各制御ゾーンのモータ21の駆動力によって、押し付け合うような力を受けた場合であっても、前記同様の作用が各モータ21に働くため、一方の場合についてのみ説明する。
【0072】
このように、本実施形態では、保管ゾーンB、Cのモータ21のそれぞれに対して、物品等Wpの重量に加えて、他方のモータ21の駆動力を負荷として掛けることができるため、モータ21に生じる負荷に起因した変化を顕著にすることができる。これにより、物品等Wpが載置された保管ゾーンB、Cのモータ21は、制御装置102、103から出力されるパルス数よりも、小さいパルス数で回転するか、無回転状態(モータロック等)となる。
【0073】
この結果、図12のステップ32においては、保管ゾーンB、Cのモータ21の実際のパルス数が、所定のパルス数未満であることが確認されて、ステップ33に移行する。ステップ33では、ステップ32でモータ21のパルス数が所定のパルス数未満であると確認された2つの保管ゾーンB、Cを、搬送方向Xの下流側に位置するものから順番に、一定のパルス数で正回転するように制御していく(物品位置確認動作)。すなわち、物品位置確認動作によって、まず、保管ゾーンCのモータ21が回転制御される(図11(b))。すると、保管ゾーンCのモータ21の回転に連動して、品Wpが搬出ゾーンEに向かって流れ、それに追従するように、保管ゾーンBのモータ21が回転する。これに伴い、保管ゾーンBのモータ21には、パルス電圧が発生する。すなわち、ステップ34では、保管ゾーンCの搬送方向Xの上流側に隣接した制御ゾーン(保管ゾーンB)のモータ21に発生したパルス電圧が確認される。その結果、1つの物品等Wpが、保管ゾーンBと保管ゾーンCに跨って載置されていると判断され、ステップ35に移行する。
また、ステップ33では、物品位置確認動作によって、保管ゾーンBのモータ21も同様に制御されて、パルス電圧の発生の有無が確認される。
【0074】
ステップ35では、ステップ34において最初にパルス電圧が発生した制御ゾーンのモータ21が、所定のパルス数で正回転するように駆動される。具体的には、通常物品等Wpaが跨って載置された制御ゾーン(保管ゾーンB、C)のうちの、上流側の制御ゾーン(保管ゾーンB)のモータ21を駆動する。なお、ステップ35で駆動するモータ21は、保管ゾーンBにおける搬送方向Xに沿った全長を基準に、所定のパルス数だけ駆動するように回転制御される。より詳細には、保管ゾーンBのモータ21は、物品等Wpを、前記搬入ゾーンAの全長に相当する距離を移動するような回転制御が実行される。すると、保管ゾーンBと保管ゾーンCに跨って載置された物品等Wpは、図11(d)に示すように、保管ゾーンBの下流側に位置する保管ゾーンCに完全に移行する。この結果、ステップ36に移行して、保管ゾーンBには物品等Wpが存在せず、保管ゾーンCには物品等Wpが存在すると判定される。
【0075】
これに対して、図11(d)に示すその他の制御ゾーンA、D、E上には、当初から通常物品等Wpaが載置されておらず、モータ21に負荷あるいは負荷に起因した変化をもたらすことはないため、図12のステップ31において、各制御ゾーンA、D、Eのモータ21が、制御装置101、104、105から出力される所定のパルス数よりも、小さいパルス数で回転したり、無回転状態となることがない。すなわち、制御ゾーンA、D、Eはそれぞれ、ステップ32からステップ37に移行し、自己の制御ゾーンに通常物品等Wpaが存在しないと判定される。
そして、このようにして在荷情報が取得されると、上記した基本搬送動作に移行する。
【0076】
続いて、搬送補助機能について説明する。
本実施形態における搬送補助機能は、前記基本搬送動作の最中に実施される補助的な運転であり、所定の条件が満足されて、搬送すべき物品が搬送されない場合に実施される動作(以下、搬送補助動作という)である。より具体的には、搬送補助動作は、物品等Wpを搬出ゾーンEに向けて搬送するべく、基本搬送動作である前詰め保管動作が実行されているにも関わらず、物品等Wpが載置された制御ゾーンのモータ21が過負荷等によって作動せず、物品等Wpが正常に搬送されない場合に実施される動作である。
【0077】
すなわち、前記したように、図6、7、8のフローチャートのステップ4、13、23のタイミングにおいて、物品の送り出し側の制御ゾーン(以下においては自己の制御ゾーンという)のモータ21が、所定のパルス数よりも小さいパルス数で回転するか、全く回転しない状態(モータロック等)となれば、基本搬送動作から搬送補助動作に移行する。
以下においては、図13の搬送状況を示す図と、図14のフローチャートを用いて、搬送補助動作について説明する。
【0078】
すなわち、図13(a)に示すように、制御ゾーンDのモータ21がモータロック等を生じた場合に搬送補助動作が実行される。
搬送補助動作では、図14のフローチャートに示すように、まず、モータロック等を生じた制御ゾーン(自己の制御ゾーン)Dのモータ21の駆動を一旦停止する(ステップ41)。そして、ステップ42に移行し、自己の制御ゾーンDの上流側に隣接した制御ゾーン(以下、上流制御ゾーンともいう)Cに物品等Wpが載置されているか否かが確認される。そして、上流制御ゾーンCに物品等Wpが載置されているならば、ステップ43において上流制御ゾーンCのモータ21を駆動する。一方、ステップ42において、上流制御ゾーンCに物品等Wpが載置されていなければ、ステップ49に移行して、さらに上流の制御ゾーンA、Bから物品等Wpを上流制御ゾーンCに向けて搬送し、ステップ43に移行する。
【0079】
こうして、上流制御ゾーンCの物品等Wpが、自己の制御ゾーンDに向けて搬送される。また、本実施形態では、ステップ43で上流制御ゾーンCのモータ21を駆動するタイミングとほぼ同時のタイミングで、自己の制御ゾーンDのモータ21の駆動を再開する(ステップ44)。すなわち、図13(b)に示すように、上流制御ゾーンCから自己の制御ゾーンDに物品等Wpが到来する際には、双方の制御ゾーンC、Dのモータ21が駆動制御されている状態となる。
【0080】
つまり、本実施形態では、自己の制御ゾーンDと上流制御ゾーンCの双方のモータ21を駆動制御した状態にし、自己の制御ゾーンDに上流制御ゾーンCから物品等Wpを搬送することによって、その物品等Wpが自己の制御ゾーンDに到達した際に、上流制御ゾーンCの駆動力を自己の制御ゾーンDの駆動力を補助する力として作用させている。すなわち、本実施形態では、自己の制御ゾーンDのモータ21がモータロック等生じて、そのモータ21が物品等Wpを搬送し得る程度に十分に作動しない場合に、上流側の制御ゾーンCのモータ21の駆動力を間接的に付加することを可能としている。そして、本実施形態では、モータロック等を生じた制御ゾーンに上流側から物品等を送り込むことによって、図13(b)に示すように、自己の制御ゾーンD上に載置された物品等Wpに対して、上流制御ゾーンC上に載置された物品等Wpが押し当てることを可能としている。すなわち、自己の制御ゾーンD上の物品等Wpと、上流制御ゾーンC上の物品等Wpとを当接した状態で併走させることができる。このようにして、上流制御ゾーンCの駆動力が自己の制御ゾーンDに伝動され易くしている。
【0081】
そして、図13(c)に示すように、2つの物品等Wpが当接した状態で併走すると、ステップ45に移行して、自己の制御ゾーンDのモータロック等が解除されていないか否かが確認される。すなわち、ステップ45においては、自己の制御ゾーンDのモータ21が、所定のパルス数あるいはそのパルス数から一定の誤差範囲内のパルス数、回転したか否かが確認される。そして、ステップ45において、自己の制御ゾーンDのモータ21のモータロック等が解消されていれば、ステップ46に移行し、自己の制御ゾーンDの下流側に隣接した制御ゾーン(以下、下流制御ゾーンという)Eに、自己の制御ゾーンDに載置されていた物品等Wpが搬送されたか否かが確認される。すなわち、ステップ46では、下流制御ゾーンEにパルス電圧が発生したか否かが確認される。そして、ステップ46において、下流制御ゾーンEでパルス電圧が確認されると、ステップ47に移行して、現在フラグがオンかオフかに関わらず、フラグがオフにされる。そして、ステップ48において、基本搬送動作に移行する。
【0082】
なお、搬送補助動作から基本搬送動作に移行する際においては、図13(d)に示すように、当接状態の物品等Wpが再び切り離された状態に制御される。すなわち、本実施形態では、自己の制御ゾーンDに載置されていた物品等Wpが下流制御ゾーンEに搬送されると、その下流制御ゾーンEのモータ21を所定のパルス数だけ駆動して、当接状態の物品等Wpを再び切り離された状態にする。
【0083】
また、図14のステップ45において、自己の制御ゾーンDのモータロック等が解消されなければ、ステップ50でフラグのオンオフが確認され、オフであれば、ステップ51に移行する。ステップ51では、上流制御ゾーンCのさらに上流側に隣接する制御ゾーン(以下、第二上流制御ゾーンという)Bに物品等Wpが載置されているか否かが確認される。そして、第二上流制御ゾーンBに物品等Wpが載置されているならば、ステップ52において第二上流制御ゾーンBのモータ21を駆動する。一方、ステップ51において、第二上流制御ゾーンBに物品等Wpが載置されていなければ、ステップ54に移行して、さらに上流の制御ゾーンAから物品等Wpを第二上流制御ゾーンBに向けて搬送し、ステップ52に移行する。
【0084】
そして、ステップ53においてフラグをオンにし、再びステップ45に移行し、自己の制御ゾーンDのモータロック等が未だ解消されていないかが確認される。これにより、自己の制御ゾーンBのモータ21のモータロック等が確認されれば、前記したステップ46以降の動作が行われて、基本搬送動作に移行する。しかしながら、ステップ45において、依然自己の制御ゾーンBのモータロック等が解消されていなければ、ステップ50からステップ55に移行して、異常報知が行われて、搬送動作が停止される。
このようにして、本実施形態の搬送装置3によれば、過負荷等によって、制御ゾーンのモータ21がモータロック等生じて搬送不良を発生させた場合であっても、作業者等が介在することなく、自動制御によって搬送動作を継続することができるため、高い搬送効率を確保することができる。
【0085】
上記実施形態では、搬送補助動作において、自己の制御ゾーン上に載置された物品等Wpに対して、上流側の制御ゾーン上に載置された物品等Wpを押し当てて、下流の制御ゾーンに搬送する動作を示したが、本発明はこれに限定されず、物品等Wpを押し当てずとも自己の制御ゾーン上の物品等Wpを下流に向けて搬送する動作であっても構わない。
【0086】
上記実施形態では、搬送補助動作において、モータロック等を生じたモータ21の駆動を一旦停止し、上流制御ゾーンのモータ21を駆動する際に、再び駆動させる動作を示したが、本発明はこれに限定されず、モータロック等を生じた後であっても、駆動を継続し、その最中に上流制御ゾーンのモータ21を駆動する動作を実行しても構わない。
【0087】
上記実施形態では、自己の制御ゾーンのモータ21を再駆動するタイミングを、自己の制御ゾーンの上流側に隣接する制御ゾーンのモータ21が駆動した際にしているが、本発明はこれに限定されず、モータ21の再駆動するタイミングを、上流側から自己の制御ゾーンに物品等Wpが搬送されて来た時点あるいは上流側から搬送された物品が自己の制御ゾーンの物品等Wpに衝突した時点にしても構わない。
【0088】
上記実施形態では、搬送補助動作において、上流制御ゾーンのモータ21を駆動した後、自己の制御ゾーンのモータロック等が解除されているか否かを確認し、且つ、下流制御ゾーンにパルス電圧が発生したか否かを確認してから、基本搬送動作に移行する動作を示したが、本発明はこれに限定されず、いずれか一方の条件のみを確認し、その結果に基づいて、基本搬送動作に移行する動作を実行しても構わない。
【0089】
上記実施形態では、搬送補助動作において、自己の制御ゾーンのモータ21の駆動力を補助する力として、上流制御ゾーンと第二上流制御ゾーンの駆動力を用いることができる構成を示したが、本発明はこれに限定されず、さらに上流側の制御ゾーンの駆動力を自己の制御ゾーンの補助力として用いることができる構成であっても構わない。
【0090】
上記実施形態では、制御ゾーンEは、シンプルなコンベア装置としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、制御ゾーンEに機械的なストッパ等の安全装置を設けても良い。あるいは、制御ゾーンEに設けたストッパに物品等Wpを当接させることで、「前詰め」の最終地点としても良い。
【0091】
上記実施形態では、1つの制御装置が、それぞれ1つの制御ゾーンを受け持つ構成を説明した。すなわち、上記実施形態では、制御ゾーンの数と、制御装置の数は相等しく、一対一に対応している。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、2以上の制御ゾーンを受け持つ制御装置を含んでいてもよく、2以上の制御ゾーンを制御する制御装置だけで構成されていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、固定デューティでモータ駆動した際のパルス数の変化を検知して、在荷情報を取得する構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、モータ21を低速で回転させた際の電流値を測定し、その電流値により物品等Wpが有ると判断しても構わない。
【0093】
上記実施形態では、制御装置101〜105にプログラムされた指令において、物品等Wpを搬送する際に、モータ21をパルス数で回転制御する動作を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、モータ21への指令を、搬送距離や回転角度で指令しても構わない。
【0094】
上記実施形態では、駆動源としモータ内蔵ローラのモータ21を採用した構成を示したが、本発明はこれに限定されず、モータ側にホール素子を設けず、ローラ本体側にホール素子を設けたモータ内蔵ローラを駆動源として採用した構成であっても構わない。
【0095】
上記実施形態では、搬入ゾーンAと搬出ゾーンBの双方に赤外線センサ112を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、いずれか一方のみの制御ゾーンに赤外線センサ112を設けた構成であっても構わない。その場合、赤外線センサ112を設けない制御ゾーンに関しては、上記した在荷判定機能を設けることが望ましい。
【0096】
上記実施形態では、保管ゾーンB〜Dに赤外線センサ112を設けない構成と示したが、本発明はこれに限定されず、保管ゾーンB〜Dのいずれかあるいは全部に赤外線センサ112を設けた構成であっても構わない。
【0097】
次に、本発明の実施形態で採用する搬送装置3の機械的な構成等について詳述する。
搬送装置3は、図15に示すように、複数(本実施形態では5つ)のコンベアユニット5が直列に連結されて形成されている。なお、本実施形態では、1つのコンベアユニット5が、上記した1つの制御ゾーンを構成する。
【0098】
コンベアユニット5は、図16に示すように、3列のローラ群8〜10を有し、各ローラ群8〜10は、いずれも同方向に回転できるように、固定フレーム11に配設されている。より具体的には、各ローラ群8〜10は、搬送方向Xに回転できる配置であり、搬送方向Xに交差する方向に並べられている。
【0099】
より具体的には、各ローラ群8〜10は、駆動源を持たない2つのフリーローラ群8、10と、駆動源を備えた1つの駆動ローラ群9に区分されており、当該駆動ローラ群9は、フリーローラ群8、10の間に位置するような配列にされている。すなわち、コンベアユニット5は、固定フレーム11のほぼ中央に駆動ローラ群9が設けられ、その駆動ローラ群9を挟むような位置にフリーローラ群8、10が設けられている。
【0100】
駆動ローラ群9は、公知のモータ内蔵ローラ7と、そのモータ内蔵ローラ7を駆動源とした複数の従動ローラ12とを有する構成である。そして、本実施形態では、モータ内蔵ローラ7は、従動ローラ12の動力源としてのみ使用され、物品等Wpの搬送には寄与しない構成とされている。
【0101】
モータ内蔵ローラ7は、例えば、図17のような構造を有するものであり、ローラ本体20内にモータ21と減速機22が内蔵されたものである。そして減速機22の出力軸28は、ローラ本体20の内面と係合しており、モータ21の回転力が減速機22で減速されてローラ本体20を回転させる。
【0102】
また、ローラ本体20の両端からは、支持軸23、25が突出している。2つの支持軸23、25は、いずれも軸受け26、27を介して、ローラ本体20に取り付けられている。そのため、ローラ本体20は、支持軸23、25に対して回転可能である。また、一方の支持軸23は、中空であり中空部30の内部に給電線31等が挿通されている。そして、モータ21は、この給電線31によって外部から電力が供給される。
また、ローラ本体20は、中空のローラであるが、表面にベルト53を係合させるための溝35が環状に2条設けられている。
【0103】
従動ローラ12は、図18のような構造のローラ本体回転型空転ローラである。そして、このローラ本体回転型空転ローラは、ローラ本体20の中にモータ等を有しないものである。すなわち、従動ローラ12は、ローラ本体20を有し、ローラ本体20の両端には、軸線方向に突出した支持軸40、41が設けられている。2つの支持軸40、41は、いずれも軸受け43、45を介して、ローラ本体20に取り付けられている。
【0104】
そのため、従動ローラ12においては、ローラ本体20が支持軸40、41に対して回転可能である。すなわち、従動ローラ12では、ローラ本体20は両端の支持軸40、41の双方に対して回転可能である。
また、従動ローラのローラ本体20の構造は、モータ内蔵ローラ7と同一であり、表面にベルトを係合させるための溝35が環状に2条設けられている。
【0105】
そして、各ローラ7、12は、隣接するローラ7、12との間でベルト53が懸架されている。すなわち、各ローラ7、12は、それぞれに隣接する位置にあるローラ7、12と同期的に回転するべく、双方の溝35にベルト53が懸架されている。したがって、駆動ローラ群9では、各ローラ7、12は全てが連動し、いずれか1つのローラ7、12が回転すると、他のローラ7、12も回転する。
【0106】
フリーローラ群8、10は、前記したように、駆動源たるモータ内蔵ローラ7を有しておらず、従動ローラ13のみで構成している。より具体的には、フリーローラ群8、10は、8つの従動ローラ13を有し、駆動ローラ群9の従動ローラ12とほぼ同一の位置に配列されている。そして、この従動ローラ13、図19に示すように、前記した駆動ローラ群9の従動ローラ12とほぼ同一の構造であり、従動ローラ12に比べて、ローラ本体29の軸線方向の長さが短く、表面に溝35が形成されていない点が異なる構成である。すなわち、フリーローラ群8、10の従動ローラ13におけるその他の構成は、駆動ローラ群9の従動ローラ12の構成と同一であるため、説明を省略する。
したがって、フリーローラ群8、10は、各ローラ13が独立して回転する構成であり、いずれか1つのローラ13が回転しても、他のローラ13が連動して回転することはない。
【0107】
続いて、搬送装置3の作用について説明する。
搬送装置3は、製品や部品等の物品Wを、大型で四角形のパレットPに載せて搬送する装置である。そして、その物品等Wpを搬送する場合には、コンベアユニット5のほぼ中央に位置する駆動ローラ群9のモータ内蔵ローラ7を駆動させる。モータ内蔵ローラ7は、前記したように、同一のコンベアユニット5内、つまり同一の制御ゾーン内で、従動ローラ12とベルトで連結されているため、モータ内蔵ローラ7が回転すると、同一の制御ゾーン内の従動ローラ12も連動して回転する。
【0108】
すなわち、駆動ローラ群9における全てのローラ7、12の回転は、モータ内蔵ローラ7の回転と同期しているため、物品等Wpの搬送に寄与する従動ローラ12は全てが同期的に回転する。また、その駆動ローラ群9を挟む位置に配されたフリーローラ群8、10は、搬送される物品等Wpを介して、駆動ローラ群9からの動力が伝動されて回転する。そのため、物品等Wpは、搬送方向Xに沿って安定的に流れる。
【0109】
上記実施形態では、1つの固定フレーム11内に、3列のローラ群8〜10を搬送方向Xに交差するように並列的に並べた構成を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、2列以下あるいは4列以上のローラ群を備えた構成であっても構わない。例えば、図20に示すように、2列のローラ群56、57を備えた搬送装置51が挙げられる。
簡単に、搬送装置51について説明すると、2列のローラ群56、57のうちの、一方のローラ群56にモータ内蔵ローラ7を設け、その他の従動ローラ12とベルトで連結する。また、他方のローラ群57には、モータ内蔵ローラ7を設けることなく、各従動ローラ12をベルトで連結する。そして、双方のローラ群56、57を、モータ内蔵ローラ7の動力が伝動するように、適当な長さのシャフト55等で接続する。これにより、上記実施形態と同様の搬送作用を得ることができる。
【0110】
上記実施形態では、隣接するローラをベルトで連結して、各ローラに動力を伝動したが、1本のチェーンを複数のローラ間に懸架して各ローラを同期回転させてもよい。また、ローラコンベアだけでなく、ベルトコンベアにも応用することができる。
【0111】
また、上記実施形態では、1つの制御ゾーンに1つのモータ内蔵ローラ7を配設した構成を示したが、本発明はこれに限定されず、1つの制御ゾーンに2以上のモータ内蔵ローラ7を配設した構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0112】
1 物品保管装置
3、51 搬送装置
7 モータ内蔵ローラ(駆動源)
21 モータ(駆動源)
101〜105 制御装置
112 赤外線センサ
A〜E 保管区間(制御ゾーン)
P パレット
W 物品
X 搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20