(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給して基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
【0019】
基板処理装置1は、チャンバ12と、チャンバ開閉機構131と、基板保持部14と、基板回転機構15と、液受け部16と、カバー17とを備える。
【0020】
チャンバ12は、チャンバ本体121と、チャンバ蓋部122と、トッププレート123とを備える。チャンバ本体121は非磁性体により形成される。チャンバ本体121は、チャンバ底部21と、チャンバ側壁部22とを備える。チャンバ底部21は、略円板状の中央部211と、中央部211の外縁部から下方に延びる筒状の内側壁部212と、内側壁部212から径方向外方へと広がるベース部213とを備える。基板保持部14に基板9が保持された場合、基板9の下面92は、中央部211の上面と対向する。チャンバ側壁部22は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする環状であり、ベース部213から上方へと突出する。チャンバ側壁部22を形成する部材は、後述するように、液受け部16の一部を兼ねる。
【0021】
チャンバ蓋部122は中心軸J1に垂直な略円盤状であり、チャンバ12の上部を含む。チャンバ蓋部122は、チャンバ本体121の上部開口を閉塞する。
図1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間した状態を示す。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉塞する際には、チャンバ蓋部122の外縁部がチャンバ側壁部22の上部と接する。
【0022】
トッププレート123は、中心軸J1に垂直な略円盤板状である。トッププレート123は中央に開口を有する。基板9が基板保持部14に保持されると、基板9の上面91は、トッププレート123の下面と対向する。トッププレート123は、チャンバ蓋部122から吊り下がるようにチャンバ蓋部122に取り付けられる。より正確には、トッププレート123は、チャンバ蓋部122との間の距離が変更可能な状態でチャンバ蓋部122に取り付けられる。トッププレート123は、チャンバ蓋部122に対して、中心軸J1を中心として回転も可能である。
【0023】
チャンバ開閉機構131は、チャンバ12の可動部であるチャンバ蓋部122を、チャンバ12の他の部位に対して相対的に昇降する。以下、チャンバ開閉機構131を「蓋部昇降機構131」と呼ぶ。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121と接し、さらに、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121に向かって押圧されることにより、チャンバ12内に密閉された内部空間120(
図7参照)が形成される。
【0024】
基板保持部14は、中心軸J1を中心とする環状であり、基板9の外縁部を保持する。基板保持部14はチャンバ12内に配置され、水平状態の基板9を保持する。すなわち、基板9は、上面91を中心軸J1に垂直に上側を向く状態で基板保持部14により保持される。基板保持部14が基板9を保持するチャック機構としては、様々なものが利用されてよい。
【0025】
基板回転機構15は、いわゆる中空モータである。基板回転機構15は、中心軸J1を中心とする環状のステータ部151と、環状のロータ部152とを備える。ロータ部152は、略円環状の永久磁石を含む。永久磁石の表面は、PTFE樹脂にてモールドされる。ロータ部152は、内側壁部212とチャンバ側壁部22との間の有底の環状空間内に配置される。ロータ部152は基板保持部14と接続部材を介して接続される。
【0026】
ステータ部151は、チャンバ12外(すなわち、内部空間120の外側)においてロータ部152の径方向外側に配置される。本実施の形態では、ステータ部151は、ベース部213に固定され、液受け部16の下方に位置する。ステータ部151は、中心軸J1を中心とする周方向に配列された複数のコイルを含む。
【0027】
ステータ部151に電流が供給されることにより、ステータ部151とロータ部152との間に、中心軸J1を中心とする回転力が発生する。これにより、ロータ部152が、中心軸J1を中心として水平状態で回転する。ステータ部151とロータ部152との間に働く磁力により、ロータ部152は、チャンバ12内において直接的にも間接的にもチャンバ12に接触することなく浮遊し、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部14と共に回転する。
【0028】
液受け部16は、第1カップ部161と、第1カップ昇降機構162と、第2カップ部163と、第2カップ昇降機構164とを備える。既述のように、チャンバ側壁部22を形成する部材の一部は液受け部16に含まれる。第2カップ部163は中心軸J1を中心とする環状であり、チャンバ側壁部22の径方向外側に位置する。第1カップ部161も環状であり、第2カップ部163の径方向外側に位置する。第1カップ昇降機構162は第1カップ部161を上下に移動する。第2カップ昇降機構164は第2カップ部163を上下に移動する。
【0029】
第2カップ部163の内周部の下部は、チャンバ側壁部22の外側に位置する環状の第2凹部166内に位置する。第1カップ部161の下部は、第2凹部166の外側に位置する環状の第1凹部165内に位置する。第1凹部165および第2凹部166を形成する部材は、チャンバ側壁部22を形成する部材と連続する。
【0030】
チャンバ蓋部122の中央には上部ノズル181が固定される。上部ノズル181は、トッププレート123の中央の開口と対向する。チャンバ底部21の中央部211の中央には、下部ノズル182が取り付けられる。第1凹部165の底部は、第1排出路191に接続される。第2凹部166の底部は、第2排出路192に接続される。内側壁部212とチャンバ側壁部22との間の凹部の底部は、第3排出路193に接続される。なお、これら上部ノズル181、下部ノズル182の設置位置は必ずしも中央部分に限らず、例えば基板9の周縁部に対向する位置であってもよい。
【0031】
カバー17は、チャンバ12の上方および側方を覆う。カバー17の上部には、多孔部171が配置される。多孔部171に形成された多数の孔からエアが流出することにより、カバー17内にダウンフローが発生する。これにより、液受け部16やチャンバ底部21から基板9へとパーティクルが上昇することが防止される。
【0032】
図2は、基板処理装置1が備える処理液供給部18と、液回収部19とを示すブロック図である。処理液供給部18は、上述の上部ノズル181および下部ノズル182に加えて、第1処理液供給部183と、第2処理液供給部184と、第3処理液供給部185とを備える。第1処理液供給部183、第2処理液供給部184および第3処理液供給部185は、それぞれ弁を介して上部ノズル181に接続される。下部ノズル182は、それぞれ弁を介して第1処理液供給部183および第2処理液供給部184に接続される。上部ノズル181は、ガス供給部186にも接続される。上部ノズル181は中央に液吐出口を有し、その周囲にガス噴出口を有する。したがって、正確には、上部ノズル181の一部は基板9にガスを供給する広義のガス供給部の一部である。下部ノズル182は中央に液吐出口を有する。
【0033】
チャンバ12には、チャンバ12が密閉された際にチャンバ12の内部空間120を加圧する加圧部187が接続される。加圧部187により内部空間120が大気圧よりも高い加圧雰囲気となる。なお、ガス供給部186が加圧部を兼ねてもよい。加圧処理が不要な場合は、加圧部187は省略されてよい。
【0034】
液受け部16の第1凹部165に接続される第1排出路191は、廃液路に接続される。第2凹部166に接続される第2排出路192は、第1回収部194に接続される。チャンバ底部21に接続される第3排出路193は、第2回収部195に接続される。第1回収部194および第2回収部195は、減圧部196に接続される。減圧部196が駆動されることにより、第1回収部194および第2回収部195にて処理液が回収される。また、チャンバ12が密閉されている場合は、減圧部196により内部空間120が減圧され、大気圧よりも低い減圧雰囲気となる。第1回収部194および第2回収部195は、廃液路にも接続され、第2排出路192および第3排出路193から廃液も可能である。
【0035】
第1処理液供給部183、第2処理液供給部184、第3処理液供給部185、ガス供給部186、加圧部187、第1回収部194、第2回収部195、減圧部196および各種弁は、制御部10により制御される。蓋部昇降機構131、基板保持部14、基板回転機構15、第1カップ昇降機構162および第2カップ昇降機構164も制御部10により制御される。
【0036】
本実施の形態では、第1処理液供給部183から供給される第1処理液は、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液である。第2処理液供給部184から供給される第2処理液は、純水(DIW:Deionized Water)である。第3処理液供給部185から供給される第3処理液は、イソプロピルアルコール(IPA)である。また、ガス供給部186は、チャンバ12内に窒素(N
2)ガスを供給する。
【0037】
図3は液受け部16近傍の拡大図である。チャンバ蓋部122の外縁部の下部には、2つの環状のリップシール231,232が設けられる。リップシール231は、第2カップ部163の上端部の上方に位置する。リップシール232は、チャンバ側壁部22の上端部の上方に位置する。チャンバ蓋部122が下降し、第2カップ部163が上昇すると、リップシール231と第2カップ部163の上端部とが接する。チャンバ蓋部122がチャンバ側壁部22まで下降すると、リップシール232とチャンバ側壁部22の上端部とが接する。
【0038】
チャンバ12の上部であるチャンバ蓋部122の外縁部の下部には、全周に亘って上方かつ径方向内方へと窪む凹部233が設けられる。チャンバ蓋部122が下降し、第1カップ部161が上昇すると、第1カップ部161の上端部と凹部233とが上下方向に関して接する。これらは近接するのみでもよい。第2カップ部163が下降すると、チャンバ側壁部22の上部と第2カップ部163の上端部とが接する。
【0039】
トッププレート123の外縁部の下面には、複数の第1係合部241が周方向に配列される。基板保持部14の上面には、複数の第2係合部242が周方向に配列される。これらの係合部は3組以上設けられることが好ましく、本実施の形態では4組設けられる。第1係合部241の下部には上方に向かって窪む凹部が設けられる。第2係合部242は基板保持部14から上方に向かって突出する。
【0040】
チャンバ蓋部122が下降すると、第1係合部241の凹部に第2係合部242が嵌る。これにより、トッププレート123は、中心軸J1を中心とする周方向において基板保持部14と係合する。この状態で基板回転機構15により基板保持部14が回転すると、トッププレート123も回転する。トッププレート123が下降する際には、第1係合部241と第2係合部242とが嵌り合うように基板保持部14の回転位置が制御される。
【0041】
次に、制御部10の制御による基板処理装置1における基板9の処理の流れを
図4を参照しつつ説明する。
図4の処理は、一例に過ぎず、基板処理装置1では、様々な処理を様々な順序で行うことができる。基板処理装置1では、まず、チャンバ蓋部122が
図1に示すように上方に位置する状態で、基板9が搬送されて基板保持部14により保持される(ステップS11)。チャンバ蓋部122は下降し、
図5に示すように、トッププレート123が基板保持部14と係合する。チャンバ蓋部122とチャンバ側壁部22とは離間しており、基板9の周囲(すなわち、径方向外側)において、チャンバ蓋部122とチャンバ側壁部22との間に環状開口81が形成される。
【0042】
第2カップ部163は上昇し、環状開口81の径方向外側に位置する。このように、第2カップ昇降機構164は、第2カップ部163を環状開口81の径方向外側の位置と、当該位置よりも下方の位置との間で移動する。第2カップ部163の上端部はリップシール231に接する。これにより、チャンバ12内の基板9周辺は密閉空間が形成されることになり、上方からパーティクルが下降したとしても、第2カップ部163内に進入することが防止される。なお、第1カップ部161の上端部もチャンバ蓋部122に接し、第1カップ部161内にパーティクルが進入することも防止される。以下、環状開口81が形成されるチャンバ12の状態を「半オープン状態」と呼ぶ。また、
図1の状態を「オープン状態」と呼ぶ。
【0043】
次に、基板回転機構15により、基板保持部14および基板9の高速回転が開始される。また、図示を省略するヒータにより、基板9が加熱される。第1処理液供給部183(
図2参照)からの第1処理液が上部ノズル181から基板9の上面91の中央部に供給される。第1処理液は、基板9の回転により外周部へと拡がり、上面91全体が第1処理液により被覆される(ステップS12)。
【0044】
下部ノズル182からも基板9の下面92の中央部に第1処理液が供給され、基板9の回転により外周部へと拡がる。基板9の上面91および下面92から飛散する第1処理液は、環状開口81を介して第2カップ部163にて受けられ、第2回収部195により回収される。回収された第1処理液が再利用可能である場合は、フィルタ等を介して第1処理液から不純物等が除去された後、再利用される。トッププレート123の外縁部は、径方向外方に向かうに従って僅かに下方に向かうように傾斜する。トッププレート123の外縁部にて処理液が案内されることにより、処理液は環状開口81を介して液受け部16にて適切に受けられる。
【0045】
第1処理液によるエッチングが完了すると、第1処理液の供給が停止され、上部ノズル181が窒素ガスを噴出し、基板9の回転により、基板9から第1処理液が除去される。トッププレート123は基板保持部14と共に回転するため、トッププレート123の下面に第1処理液はほとんど残存せず、トッププレート123から第1処理液が落下することはない。
【0046】
次に、チャンバ12が半オープン状態のまま第2カップ部163が下降し、
図6に示すように第1カップ部161が環状開口81の径方向外側に位置する。すなわち、第2カップ昇降機構164により、第2カップ部163が基板9からの処理液を受ける状態と、第1カップ部161が基板9からの処理液を受ける状態とが切り替わる。第2カップ部163の上端部はチャンバ側壁部22の上部と接し、チャンバ12内部と第2カップ部163の内側の空間とは分離する。第1カップ部161の上端部とチャンバ蓋部122とは接する状態である。
【0047】
トッププレート123と基板保持部14とが係合する状態で、トッププレート123の中央に位置する上部ノズル181が純水である第2処理液を連続的に吐出することにより、回転中の基板9の上面91の中央部に第2処理液が供給される。第2処理液は、基板9の回転により外周部へと拡がり、基板9の外周縁から外側へと飛散する。下部ノズル182からは基板9の下面92の中央部に第2処理液が供給され、基板9の回転により外周部へと拡がる。基板9から飛散する第2処理液である使用後の水は、第2カップ部163にて受けられ、廃棄される(ステップS13)。第2処理液による基板9のリンスでは、途中で下面92への第2処理液の供給が停止され、基板9の回転速度が減少する。これにより、トッププレート123と基板9との間が第2処理液で満たされる。すなわち、基板9上に純水をパドリングした状態となる。
【0048】
次に、第2処理液の供給が停止され、上部ノズル181のみからIPAである第3処理液が基板9の上面91に供給される。トッププレート123と基板9との間は第3処理液により満たされ、第3処理液の供給が停止する。これにより、基板9上において純水がIPAに置換される(ステップS14)。その後、
図7に示すように、チャンバ蓋部122および第1カップ部161が下降する。チャンバ蓋部122のリップシール232とチャンバ側壁部22の上部とが接する。これにより、チャンバ12は密閉された内部空間120を形成する。トッププレート123はチャンバ蓋部122に対して相対的に上下方向に移動可能であることから、トッププレート123と基板保持部14との間の係合状態は維持される。チャンバ12が密閉された状態では、基板9および基板保持部14は、チャンバ12の側壁と直接対向し、これらの間に他の液受け部は存在しない。なお、チャンバ12の密閉は、ステップS14の前に行われてもよい。なお、これらステップS13,S14において、ここではトッププレート123と基板9との間を処理液で満たして液密状態で処理しているが、トッププレート123の高さをこれよりも高くして、トッププレート123と基板9との間が処理液で満たされない状態で処理することもできる。
【0049】
密閉空間内にて基板9が高速回転するとともに上部ノズル181から窒素ガスが噴出され、第3処理液が基板9から除去される。基板9から飛散する第3処理液は、チャンバ側壁部22にて受けられ、第2回収部195にて回収される。このとき、減圧部196によりチャンバ12の内部空間120が減圧され、基板9の乾燥が促進される(ステップS15)。第2回収部195にて回収された第3処理液を再利用する場合は、第3処理液から不純物等の除去が行われる。基板9の乾燥が完了すると、基板9の回転が停止する。
【0050】
なお、乾燥時に基板9が加熱されてもよい。また、減圧前に加圧部187により内部空間120が加圧されてもよい。これにより、第3処理液を基板9上にパターン内に容易に進入させることができる。
【0051】
その後、内部空間120が常圧に戻され、チャンバ蓋部122が
図1に示すように上昇する。トッププレート123は基板保持部14と共に回転するため、トッププレート123の下面に液体はほとんど残存せず、チャンバ蓋部122の上昇時にトッププレート123から液体が落下することはない。基板9は外部の搬送機構により搬出される(ステップS16)。チャンバ蓋部122の上昇時には、トッププレート123の上部の下面に設けられた環状の溝部243に、チャンバ蓋部122に設けられた複数の突起244が嵌ることにより、チャンバ蓋部122に対してトッププレート123が調芯される。なお、調芯構造として他の構造が採用されてもよい。
【0052】
基板処理装置1の処理液供給部18には、
図8に示すように、スキャンノズル188が追加されてもよい。スキャンノズル188が利用される際には、チャンバ蓋部122はチャンバ本体121から上方に大きく離間し、トッププレート123が基板保持部14から離間するオープン状態となる。したがって、トッププレート123は回転しない。このように、トッププレート123は、チャンバ蓋部122とチャンバ12の他の部位との間の距離が第1の距離の場合に、周方向に関して基板保持部14と係合し、当該距離が第1の距離よりも大きい第2の距離の場合に、トッププレート123と基板保持部14とが離間する。チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間に、チャンバ12外部からスキャンノズル188が挿入され、基板9上へと移動する。スキャンノズル188は、二流体ノズルであり、例えば、SC1処理後の純水洗浄を行う。スキャンノズル188は二流体ノズル以外のタイプのノズルであってもよい。スキャンノズル188が水平方向に揺動しつつ基板9の上面91に処理液が供給される。スキャンノズル188は他の処理用の他の種類のノズルであってもよい。スキャンノズル188として二流体ノズルを用いる際には、カバー17内に図示しない排気設備を接続して、発生する処理液ミストを充分排出できるようにすることが望ましい。
【0053】
スキャンノズル188からの処理液が廃棄される場合は、第1カップ部161が上昇し、第2カップ部163が下降する。基板9の外縁部と第1カップ部161とが径方向に対向する。処理液を回収して再利用する場合は、第1カップ部161および第2カップ部163が上昇する。基板9の外縁部と第2カップ部163とが径方向に対向する。
【0054】
以上に説明したように、基板処理装置1では、チャンバ12を密閉した状態で行う処理(以下、「密閉処理」という。)、および、半オープン状態またはオープン状態で行う処理(以下、「オープン処理」という。)の双方を行うことができる。すなわち、従来に比べて様々な処理を1つの装置で行うことができる。特に、減圧や加圧を伴う密閉処理とオープン処理と連続して行うことができる。スキャンノズル188が設けられる場合は、スキャンノズル188を用いる処理も密閉処理と連続して行うことができる。また、液受け部16はチャンバ12の外部に配置されるため、処理液の回収を効率よく行えるとともに、チャンバ12を小型化、小容積化することができ、これにより、加圧や減圧を伴う処理を容易かつ効率よくおこなうことができ、またチャンバ12に充填されるガスの量を削減することができる。また、半オープン状態にあっても、チャンバ12内の基板9の周囲をほぼ密閉することができるので、カバー17内の不所望な雰囲気のチャンバ12内への流入を阻止できる。例えば上述のステップS12において、
図5に示す半オープンの状態で上部ノズル181から窒素ガスを噴出しつつ第1処理液を基板9に供給することで、チャンバ12内の基板9の周囲を窒素雰囲気とし、不所望な酸素や薬液雰囲気を排除し、低酸素雰囲気の状態で処理を行うことができる。このような低酸素雰囲気での処理は、例えば銅配線が形成された基板のポリマー除去処理などにおいて銅配線の酸化を防止したい場合などに有用である。
【0055】
液受け部16には第1カップ部161および第2カップ部163が設けられるため、複数種類の処理液を分離して回収することができる。密閉処理時の処理液とオープン処理時の処理液も分離して回収することができる。これにより、チャンバの内壁のみで複数種類の処理液を受けて多連バルブで分離回収する場合に比べて、処理液の回収効率を高めることができ、処理液のライフタイムを延ばすことができる。さらに、異種の処理液が混ざることによる、パーティクルの発生、発熱、発煙等も容易に防止することができる。
【0056】
チャンバ12では密閉状態で純水が基板9に供給されてもよい。密閉状態でチャンバ12が基板9から飛散する使用後の水やIPAを受け、処理液が基板9に化学反応を与える薬液の場合に半オープン状態で処理液がカップ部に受けられることにより、チャンバ12内の汚れが低減される。このように、チャンバ12の内壁や各カップ部を特定の処理液の専用の液受け部とすることにより、高純度でロスの少ない処理液の回収が可能となる。
【0057】
また、全てのカップ部が昇降可能であるため、基板9の搬入時の基板9のハンドリングを容易に行うことができる。
【0058】
基板処理装置1では、トッププレート123により、簡単な構造で、チャンバ内部に付着した液体の基板への落下を防止することができる。処理時には、トッププレート123と基板保持部14とが係合する状態で、トッププレート123が基板9に近接するため、基板9の上面91を処理液で覆う際に必要な処理液の量を削減することができる。トッププレート123と基板9との間に供給するガスの量も削減することができる。
【0059】
トッププレート123はチャンバ蓋部122に対して上下方向に移動可能であるため、密閉状態でも半オープン状態でもトッププレート123を基板保持部14と共に回転することができる。また、半オープン状態からチャンバ蓋部122を少しだけ上昇させることにより、トッププレート123と基板保持部14との係合を解除することができる。このようなオープン状態で上部ノズル181から処理液を吐出して処理を行うことも可能である。
【0060】
基板処理装置1では、ロータ部152が密閉可能な内部空間120に配置され、ステータ部151がチャンバ12外に配置される。これにより、高い密閉性を有する内部空間120を容易に形成することができる。その結果、密閉された内部空間120における基板9の枚葉処理を容易に実現することができる。また、モータをチャンバ底部の下方に設ける装置に比べて、チャンバ底部21に下部ノズル182等の様々な構造を容易に設けることができる。
【0061】
基板回転機構15では、ロータ部152が内部空間120において浮遊状態にて回転する。このため、ロータ部152を支持する構造を内部空間120に設ける必要がなく、基板処理装置1の小型化および装置構造の簡素化が実現される。ロータ部152と支持構造との摩擦により粉塵等が発生することがないため、内部空間120の清浄性を向上することができる。さらに、支持構造による摩擦抵抗がロータ部152に作用しないため、ロータ部152の高速回転を容易に実現することができる。
【0062】
図9ないし
図13は、第2の実施の形態に係る基板処理装置1aの断面図である。
図9は、基板9の搬出入の際の装置の状態を示す。
図10は、半オープン状態で基板9から飛散する処理液を第2カップ部163にて受ける状態を示す。
図11は、半オープン状態で基板9から飛散する処理液を第1カップ部161にて受ける状態を示す。
図12は、密閉処理が行われる状態を示す。
図13は、スキャンノズル188を用いて処理が行われる状態を示す。
【0063】
図9に示すように、基板処理装置1aでは、カバー17に仕切板172が設けられる。仕切板172は、チャンバ12から径方向外方へと広がる。仕切板172から径方向内方へと連続する部位、すなわち、仕切板172を含む部材の内周部は、下方に突出し、チャンバ12の一部を構成する。以下、この部位を「チャンバ固定部124」と呼ぶ。さらに換言すれば、仕切板172は、チャンバ固定部124から外側へと広がる。仕切板172は、第1カップ部161および第2カップ部163の上方に位置する。仕切板172により、半オープン状態においてチャンバ12内に気流が入ることが防止される。
【0064】
チャンバ12の下部を含む部位であってチャンバ固定部124よりも下側の部位125は、チャンバ昇降機構132により昇降する。後述するように、半オープン状態と密閉状態とはチャンバ昇降機構132により実現されるため、本実施の形態では、チャンバ昇降機構132がチャンバ開閉機構として機能する。以下、部位125を「チャンバ可動部」と呼ぶ。チャンバ蓋部122はチャンバ固定部124の上側に位置する。なお、第1の実施の形態と同様に、蓋部昇降機構131もチャンバ開閉機構として捉えられてよい。
【0065】
第1カップ部161は上端部が仕切板172に近接する状態で位置が固定される。第2カップ部163は第2カップ昇降機構164により昇降する。基板回転機構15aは、軸回転型のモータであり、基板保持部14は板状である。基板回転機構15aの回転軸は、基板保持部14の中央に接続される。下部ノズル182は、基板回転機構15aの上端に設けられる。他の構成は、第1の実施の形態とほぼ同様である。処理動作の例も第1の実施の形態と同様である。
【0066】
チャンバ蓋部122の外縁部には、環状のリップシール234が設けられる。
図10に示すように、半オープン状態では、チャンバ蓋部122のリップシール234は仕切板172に接する。一方、チャンバ可動部125は仕切板172から離間する。これにより、チャンバ可動部125と仕切板172との間に環状開口81が形成される。環状開口81は、基板9の周囲に位置する。
図10では、第2カップ部163が環状開口81の径方向外側に位置する。回転する基板9から飛散する処理液は、第1の実施の形態と同様に、第2カップ部163を介して第1回収部194(
図2参照)にて回収される。
【0067】
図11では、チャンバ12は半オープンの状態であり、
図10に示す状態から第2カップ部163が下降することにより、第1カップ部161が環状開口81の径方向外側に位置する。このように、第1の実施の形態と同様に、第2カップ昇降機構164は、第2カップ部163を、環状開口81の径方向外側の位置と、当該位置よりも下方の位置との間で移動する。これにより、第2カップ部163が基板9からの処理液を受ける状態と、第1カップ部161が基板9からの処理液を受ける状態とが切り替わる。基板9から飛散する処理液は、第1カップ部161にて受けられ、廃棄される。
【0068】
図12では、チャンバ可動部125が上昇して仕切板172と接する。これにより、チャンバ12内に密閉された内部空間120が形成される。基板9から飛散する処理液は、チャンバ可動部125の外周部であるチャンバ側壁部22aにて受けられ、第2回収部195にて回収される。
【0069】
図13に示すように、スキャンノズル188が使用される場合は、チャンバ蓋部122が仕切板172から離間し、チャンバ蓋部122と仕切板172との間にスキャンノズル188が挿入される。チャンバ可動部125も仕切板172から離間し、環状開口81が形成される。回転する基板9から飛散する処理液は、環状開口81の径方向外側に位置するカップ部にて受けられる。
図13の場合、環状開口81の径方向外側に、第1カップ部161が位置する。もちろん、環状開口81の径方向外側に第2カップ部163が位置してもよい。
【0070】
第1の実施の形態と同様に、半オープン状態および密閉状態では、トッププレート123は基板保持部14と周方向に係合し、基板保持部14と共に回転する。これにより、処理液および処理ガスの使用量が削減される。
図13の場合、トッププレート123は回転しない。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0072】
基板処理装置1では、他の様々な処理が行われてよい。例えば、SPM(硫酸・ 過酸化水素水混合液)による処理が行われてもよい。オープン状態、半オープン状態、密閉状態にて行われる処理の順序や処理内容も様々に変更可能である。
【0073】
液受け部16のカップ部にて受けた処理液は、全て廃液されてもよい。逆に、全て回収されてもよい。チャンバ12にて受けた処理液も、廃液されても回収されてもよい。カップ部の数は1でも3以上でもよい。複数のカップ部が同時に昇降してもよい。処理液の多少の混合により問題が生じない場合は、各カップ部が複数種類の処理液を受けてもよい。この場合、カップ部からの排液路に多連バルブが設けられてもよい。
【0074】
上部ノズル181や下部ノズル182の形状は、突出する形状には限定されない。処理液を吐出する吐出口を有する部位であれば全て本実施の形態のノズルの概念に含まれる。
【0075】
チャンバ開閉機構は、チャンバ12を様々な態様にて開閉する機構であってよく、チャンバ12の上部または下部を含むチャンバ可動部を他の部位に対して相対的に昇降する機構であればよい。チャンバ可動部の移動により、基板9の周囲に環状開口81が形成される。
【0076】
トッププレート123と基板保持部14との周方向における係合は、他の構造が採用されてもよい。例えば、トッププレート123から下方に突出する突起と、基板保持部14から上方に突出する突起とが周方向に接するのみでもよい。
【0077】
図1に示す基板回転機構15の構造は、様々に変更されてよい。ロータ部152は、必ずしも浮遊状態にて回転する必要はなく、チャンバ12の内部空間120にロータ部152を機械的に支持するガイド等の構造が設けられ、当該ガイドに沿ってロータ部152が回転してもよい。
【0078】
液受け部16が省かれ、密閉処理のみが行われる装置にチャンバ蓋部122およびトッププレート123の構造が採用されてもよい。
【0079】
基板処理装置1にて処理される基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。
【0080】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。