特許第5978075号(P5978075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978075
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】試料観察方法および電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20160817BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01J37/22 501H
   H01J37/22 501A
   H01J37/26
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-194803(P2012-194803)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-53081(P2014-53081A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】元木 創平
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−117679(JP,A)
【文献】 特開2003−287508(JP,A)
【文献】 特開2007−026885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/26
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子線源と、
前記電子線を試料に照射するための照射レンズ系と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を透過した前記電子線で結像するための結像レンズ系と、
前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する制御部と、
を含み、
撮影視野を探すためのサーチモード、および前記サーチモードよりも高い倍率で撮影を行うためのフォトモードを用いて電子顕微鏡像を取得する電子顕微鏡による試料観察方法であって、
前記フォトモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の第1条件を設定する工程と、
前記サーチモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の第2条件を設定する工程と、
前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記制御部が、前記第1条件および前記第2条件に基づいて、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する工程と、
を含む、試料観察方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像に基づいて、前記サーチモードでの視野と前記フォトモードでの視野との間のずれを補正する工程をさらに含む、試料観察方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電子顕微鏡像を取得する工程では、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率であって、互いに異なる倍率の複数の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記制御部が、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する、試料観察方法。
【請求項4】
撮影視野を探すためのサーチモード、および前記サーチモードよりも高い倍率で撮影を行うためのフォトモードを用いて電子顕微鏡像を取得する電子顕微鏡であって、
電子線を発生させる電子線源と、
前記電子線を試料に照射するための照射レンズ系と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を透過した前記電子線で結像するための結像レンズ系と、
前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記サーチモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の条件、および前記フォトモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の条件に基づいて、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する、電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御部は、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率であって、互いに異なる倍率の複数の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する、電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記結像レンズ系によって結像された前記電子顕微鏡像を移動させるための偏向装置を含み、
前記制御部は、前記サーチモードでの視野と前記フォトモードでの視野との間のずれが補正されるように、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像に基づいて前記偏向装置を制御する、電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料観察方法および電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
MDS(Minimum Dose System、電子線損傷低減法)は、TEM(透過電子顕微鏡)の操作方法の一つとして一般的に用いられている(例えば特許文献1参照)。MDSは、電子顕微鏡像を少ない電子線照射量でCCDカメラまたはフィルム等に記録する為に利用される手法である。MDSでは、撮影視野への電子線照射量を抑えるために、撮影視野を探す場合、焦点合わせをする場合、そして撮影を行う場合で異なる顕微鏡の光学条件を採用している。それぞれの光学条件をサーチモード(撮影視野探しの時に用いる)、フォーカスモード(焦点合わせの時に用いる)、そしてフォトモード(撮影の時に用いる)と呼ぶ。
【0003】
それぞれのモードの光学条件について説明する。サーチモードは、撮影視野を探すために低倍率を実現するモードである。サーチモードでは、フォトモードの領域(撮影視野)への電子線照射量を抑えるために、照射レンズ系によって試料上の電子線の径を大きくする。また、サーチモードでは、サーチモードで決定した撮影視野とフォトモードで実際に撮影した視野とが一致するように、サーチモードでの視野中心とフォトモードでの視野中心とが正確に一致していることが要求される。
【0004】
フォーカスモードは、フォーカス合わせを精密に行うために、フォトモードと同一もしくは高倍率の条件を採用する。フォーカスモードでは、フォトモードの領域と異なる試料上の領域が選択される。フォーカスモードでは、例えば、試料より上(電子線の上流側)に配置されたアライメントコイル(CLアライメントコイル等)を用いて照射領域をフォトモードの領域(撮影視野)からずらす。また、フォーカスモードでは、電子線がフォトモードの領域(撮影視野)にかからないように、照射系レンズが調整される。
【0005】
フォトモードでは、撮影に適した大きな電子線照射量が採用される。例えば、フォトモードでは、試料が壊れない範囲で最大の電子線照射量が採用される。一般的にタンパク質やウィルスの破壊が起こらない電子線照射量は、100e/Å以下である。フォトモードでは、サーチモードで探した撮影視野の撮影を行うことができる。
【0006】
次に、MDSによって電子顕微鏡像を撮影する方法について説明する。まず、サーチモードで撮影したい視野を探す。次にフォトモードに移り、対物レンズの励磁量等を調整する。最終的に透過電子顕微鏡像を撮影するときには、フォトモードに移ることになるが、アライメントコイルで電子線を大きく振り、試料に電子線が当たらない状態(ビームブランキング状態)でフォトモードに移る。そして、検出器のシャッターを切る直前にビームブランキング状態を解除する。これにより、電子線による試料損傷を少なくして、撮影を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−130066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MDSでは、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野との対応は厳密に行われる
必要がある。フォトモードでは、観察者が視野を確認することはできず、サーチモードによって撮影視野が決まるためである。サーチモードでの視野とフォトモードでの視野との対応がとれていない場合、サーチモードで決定した撮影視野とフォトモードで実際に撮影した視野とが一致せずに、試料の所望の領域の撮影ができない場合がある。
【0009】
しかしながら、サーチモードとフォトモードでは、倍率差が一般的に大きいことから、視野対応をとることは難しい。これは、低倍率の視野でも高倍率の視野でも同一対象物だと認識できるユニークな構造が一般的な試料のなかには存在しないことが多いためである。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる試料観察方法および電子顕微鏡を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る試料観察方法は、
電子線を発生させる電子線源と、
前記電子線を試料に照射するための照射レンズ系と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を透過した前記電子線で結像するための結像レンズ系と、
前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する制御部と、
を含み、
撮影視野を探すためのサーチモード、および前記サーチモードよりも高い倍率で撮影を行うためのフォトモードを用いて電子顕微鏡像を取得する電子顕微鏡による試料観察方法であって、
前記フォトモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の第1条件を設定する工程と、
前記サーチモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の第2条件を設定する工程と、
前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記制御部が、前記第1条件および前記第2
条件に基づいて、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する工程と、
を含む。
【0012】
このような視野観察方法によれば、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像を容易に取得することができる。したがって、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像に基づいて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる。
【0013】
(2)本発明に係る試料観察方法において、
前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像に基づいて、前記サーチモードでの視野と前記フォトモードでの視野との間のずれを補正する工程をさらに含んでいてもよい。
【0014】
このような視野観察方法によれば、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる。
【0015】
(3)本発明に係る試料観察方法において、
前記電子顕微鏡像を取得する工程では、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率であって、互いに異なる倍率の複数の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記制御部が、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御してもよい。
【0016】
このような視野観察方法によれば、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率の複数の電子顕微鏡像を、容易に取得することができる。したがって、この複数の電子顕微鏡像に基づいて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を、より容易にとることができる。
【0017】
(4)本発明に係る電子顕微鏡は、
撮影視野を探すためのサーチモード、および前記サーチモードよりも高い倍率で撮影を行うためのフォトモードを用いて電子顕微鏡像を取得する電子顕微鏡であって、
電子線を発生させる電子線源と、
前記電子線を試料に照射するための照射レンズ系と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を透過した前記電子線で結像するための結像レンズ系と、
前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記サーチモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の条件、および前記フォトモードにおける前記照射レンズ系および前記結像レンズ系の条件に基づいて、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御する。
【0018】
このような電子顕微鏡によれば、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像を容易に取得することができる。したがって、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像に基づいて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる。
【0019】
(5)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記制御部は、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率であって、互いに異なる倍率の複数の前記電子顕微鏡像が取得されるように、前記照射レンズ系および前記結像レンズ系を制御してもよい。
【0020】
このような電子顕微鏡によれば、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率の複数の電子顕微鏡像を、容易に取得することができる。したがって、この複数の電子顕微鏡像に基づいて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を、より容易にとることができる。
【0021】
(6)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記結像レンズ系によって結像された前記電子顕微鏡像を移動させるための偏向装置を含み、
前記制御部は、前記サーチモードでの視野と前記フォトモードでの視野との間のずれが補正されるように、前記サーチモードにおける倍率よりも高く前記フォトモードにおける倍率よりも低い倍率の前記電子顕微鏡像に基づいて前記偏向装置を制御してもよい。
【0022】
このような電子顕微鏡によれば、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を、より容易にとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る電子顕微鏡の構成を説明するための図。
図2】本実施形態に係る試料観察の手順の一例を示すフローチャート。
図3】フォトモードにおける電子線の状態を説明するための図。
図4】サーチモードにおける電子線の状態を説明するための図。
図5】フォーカスモードにおける電子線の状態を説明するための図。
図6】スルーマグシリーズの一例を示す図。
図7】本実施形態に係る電子顕微鏡の撮影手順について説明するための図。
図8】本実施形態に係る電子顕微鏡の撮影手順について説明するための図。
図9】本実施形態に係る電子顕微鏡の撮影手順について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0025】
1. 電子顕微鏡
まず、本実施形態に係る電子顕微鏡について説明する。図1は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を説明するための図である。
【0026】
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子線源2と、光学系3と、試料ホルダー8と、シャッター20と、シャッター駆動部21と、撮像装置22と、処理部30と、操作部40と、表示部42と、記憶部44と、情報記憶媒体46と、を含んで構成されている。電子顕微鏡100は、さらに、駆動回路5,7,11,13,15,17,19を含んで構成されている。
【0027】
また、光学系3は、照射レンズ系3aと、CLアライメントコイル6と、結像レンズ系3bと、イメージシフトコイル12と、PLアライメントコイル18と、を含んで構成されている。照射レンズ系3aは、集束レンズ4を含んで構成されている。結像レンズ系3bは、対物レンズ10と、中間レンズ14と、投影レンズ16と、を含んで構成されている。
【0028】
電子顕微鏡100は、例えば透過電子顕微鏡である。電子顕微鏡100は、MDS(電子線損傷低減法)によって、電子顕微鏡像の撮影を行うことができる。すなわち、電子顕微鏡100は、撮影視野を探すために低倍率を実現するサーチモード、撮影視野とは異なる領域でフォーカス合わせ(焦点あわせ)を行うためのフォーカスモード、およびサーチモードで探した撮影視野の電子顕微鏡像を取得するためのフォトモードを用いて、電子顕微鏡像を取得する。
【0029】
電子顕微鏡100では、光学系3が、鏡筒1の内部に収容されている。鏡筒1の内部は、排気装置(図示せず)によって減圧排気されている。
【0030】
電子線源2は、電子線Lを発生させる。電子線源2は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する。電子線源2として、公知の電子銃を用いることができる。
【0031】
集束レンズ(コンデンサーレンズ)4は、電子線源2で発生した電子線Lを試料Sに照射するためのレンズである。集束レンズ4は、複数のレンズ(図示せず)で構成されていてもよい。集束レンズ4は、試料Sに照射される電子線Lの量(電子線照射量)を調整することができる。集束レンズ4の励磁電流は、集束レンズ駆動回路5から供給される。集束レンズ駆動回路5は、制御部32からの制御信号に基づいて、集束レンズ4に励磁電流を供給する。図示の例では、集束レンズ4によって、試料Sに電子線Lを照射するための照射レンズ系3aが構成されている。
【0032】
CL(Condenser Lens)アライメントコイル6は、集束レンズ4の後段に配置されている。なお、ここでは、「後段」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)は、他の特定のもの(以下「B」という)の「後段」に配置されている」などと用いている。この例のような場合には、Aは、Bよりも電子線Lの下流側に位置していることを意味している。CLアライメントコイル6は、電子線Lを偏向させるための磁界を作るコイルである。図示の例では、CLアライメントコイル6は、2つのコイル6a,6bで構成されている。CLアライメントコイル6は、電子線Lを2次元的に偏向させて、試料S上の電子線照射位置を制御することができる。CLアライメントコイル6の励磁電流は、CLアライメントコイル駆動回路7から供給される。CLアライメントコイル駆動回路7は、制御部32からの制御信号に基づいて、CLアライメントコイル6に励磁電流を供給する。
【0033】
試料ホルダー8は、CLアライメントコイル6と対物レンズ10との間に配置されている。試料ホルダー8は、試料Sを保持することができる。また、試料ホルダー8は、試料Sを水平方向(電子線Lの進行方向に対して直交する方向)や、垂直方向(電子線Lの進行方向に沿う方向)に移動させたり、試料Sを傾斜させたりすることができる。
【0034】
対物レンズ10は、CLアライメントコイル6の後段に配置されている。対物レンズ10は、試料Sを透過した電子線Lで結像するための初段のレンズである。対物レンズ10は、試料Sの電子線Lによる透過波を拡大して電子顕微鏡像(初段拡大像)を形成するためのレンズである。ここで、電子顕微鏡像とは、電子顕微鏡で得ることができる像をいい、明視野像、暗視野像、格子像等を含む試料像(試料の拡大像)、および電子回折で得られる回折パターン等を含む。対物レンズ10の励磁電流は、対物レンズ駆動回路11から供給される。対物レンズ駆動回路11は、制御部32からの制御信号に基づいて、対物レンズ10に励磁電流を供給する。
【0035】
イメージシフトコイル12は、対物レンズ10の後段に配置されている。イメージシフトコイル12は、電子線Lを偏向させるための磁界を作るコイルである。イメージシフトコイル12は、電子線Lを2次元的に偏向させて、イメージシフト(撮像装置22上における視野の移動)を行うことができる。イメージシフトコイル12の励磁電流は、イメージシフトコイル駆動回路13から供給される。イメージシフトコイル駆動回路13は、制御部32からの制御信号に基づいて、イメージシフトコイル12に励磁電流を供給する。
【0036】
中間レンズ14は、イメージシフトコイル12の後段に配置されている。中間レンズ14は、対物レンズ10により作られた像(初段拡大像)をさらに拡大するためのレンズである。中間レンズ14の励磁電流は、中間レンズ駆動回路15から供給される。中間レンズ駆動回路15は、制御部32からの制御信号に基づいて、中間レンズ14に励磁電流を供給する。
【0037】
投影レンズ16は、中間レンズ14の後段に配置されている。投影レンズ16は、中間レンズ14で拡大された像をさらに拡大し、撮像装置22上に結像するためのレンズである。投影レンズ16の励磁電流は、投影レンズ駆動回路17から供給される。投影レンズ駆動回路17は、制御部32からの制御信号に基づいて、投影レンズ16に励磁電流を供給する。図示の例では、対物レンズ10、中間レンズ14、および投影レンズ16によって、試料Sを透過した電子線Lで結像するための結像レンズ系3bが構成されている。
【0038】
PL(Projector Lens)アライメントコイル18は、投影レンズ16の後段に配置されている。PLアライメントコイル18は、電子線Lを偏向させるための磁界を作るコイルである。PLアライメントコイル18は、電子線Lを2次元的に偏向させ
て、撮像装置22上の電子顕微鏡像および電子線を移動させることができる。PLアライメントコイル18の励磁電流は、PLアライメントコイル駆動回路19から供給される。PLアライメントコイル駆動回路19は、制御部32からの制御信号に基づいて、PLアライメントコイル18に励磁電流を供給する。
【0039】
シャッター20は、電子線Lの経路に設けられている。シャッター20は、撮像装置22に対して、撮影時にのみ電子線Lが照射されるように、撮影時の露光時間中のみ開き、それ以外の時は閉じて電子線Lを遮ることができる。シャッター20の開閉は、シャッター駆動部21によって行われる。シャッター駆動部21は、制御部32からの制御信号に基づいて、シャッター20の開閉を行う。
【0040】
撮像装置22は、電子線Lを検出するための検出器を有している。検出器は、例えば、2次元的に配置されたCCDを有するCCDカメラである。撮像装置22は、電子顕微鏡像を検出し、この電子顕微鏡像の情報を、例えば画像生成部34に出力する。画像生成部34は、この情報に基づいて電子顕微鏡像の画像を生成し、生成した電子顕微鏡像の画像を表示部42に表示させる。
【0041】
操作部40は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部30に出力する。操作部40の機能は、キーボード、マウス、タッチパネル型ディスプレイなどのハードウェアにより実現することができる。
【0042】
表示部42は、処理部30(画像生成部34)によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部42は、例えば、処理部30により生成された電子顕微鏡像を表示する。
【0043】
記憶部44は、処理部30のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。情報記憶媒体46(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部30は、情報記憶媒体46に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体46には、処理部30の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。記憶部44および情報記憶媒体46には、各モード(サーチモード、フォーカスモード、フォトモード)における光学系3の条件のデータを記憶することができる。また、記憶部44および情報記憶媒体46には、後述するスルーマグシリーズのデータを記憶することができる。
【0044】
処理部30は、電子顕微鏡100を構成する光学系3を制御する処理や、シャッター20を制御する処理、撮像装置22を制御する処理、電子顕微鏡像の画像を生成する処理などの処理を行う。処理部30の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部30は、制御部32と、画像生成部34と、を含む。
【0045】
制御部32は、電子顕微鏡100の光学系3を制御する。制御部32は、例えば、ユーザーによってモード(サーチモード、フォーカスモード、フォトモード)が選択されると、選択されたモードの光学条件となるように、光学系3を制御する。制御部32は、記憶部44に記憶された各モードにおける光学系3の条件に基づいて、制御信号を生成し、生成された制御信号を各駆動回路5,7,11,13,15,17,19,21に出力する。
【0046】
また、制御部32は、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍
率の電子顕微鏡像が取得されるように、サーチモードにおける光学系3の条件およびフォトモードにおける光学系3の条件に基づいて、光学系3を制御する。ここで、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率とは、サーチモードにおける倍率よりも高い倍率であって、フォトモードにおける倍率よりも低い倍率をいう。
【0047】
制御部32は、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに倍率の異なる複数の電子顕微鏡像(後述する図6に示すスルーマグシリーズ)が取得されるように光学系3を制御してもよい。また、制御部32は、自動的に電子顕微鏡像が撮影されるように、シャッター20および撮像装置22を制御することができる。取得された電子顕微鏡像は、記憶部44に記憶される。
【0048】
画像生成部34は、撮像装置22からの情報に基づいて電子顕微鏡像の画像を生成する。
【0049】
2. 試料観察方法
次に、本実施形態に係る試料観察方法について説明する。図2は、本実施形態に係る試料観察の手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、フォトモードにおける光学系3の条件(第1条件)を設定する(ステップS10)。ステップS10では、ユーザーが、フォトモードにおける光学系3の条件を記憶部44(または情報記憶媒体46)に記憶させる。具体的には、ユーザーは、例えば、倍率、試料Sに照射する電子線量を決める照射レンズ系3aの条件、電子顕微鏡100の電圧軸や電流軸等の軸調整を行うためのアライメントコイルの条件などを設定する。また、ステップS10において、コマフリー軸の調整を行ってもよい。ユーザーによって設定されたフォトモードにおける光学系3の条件は、記憶部44(または情報記憶媒体46)に記憶される。記憶部44に記憶されたフォトモードにおける光学系3の条件は、例えば、ユーザーが操作部40を用いて表示部42に表示されたフォトモードボタンをクリックすることにより、呼び出して再現することができる。
【0051】
図3は、フォトモードにおける電子線Lの状態を説明するための図である。フォトモードでは、撮影に適した電子線照射量が設定される。例えば、フォトモードでは、試料Sが壊れない範囲で最大の電子線照射量が設定される。
【0052】
次に、サーチモードにおける光学系3の条件(第2条件)を設定する(ステップS11)。ステップS11では、ユーザーが、サーチモードにおける光学系3の条件を記憶部44(または情報記憶媒体46)に記憶させる。具体的には、ユーザーが、例えば、倍率、照射レンズ系3aの条件、電子顕微鏡100の軸調整を行うためのアライメントコイルの条件などを設定する。ユーザーによって設定されたサーチモードにおける光学系3の条件は、記憶部44(または情報記憶媒体46)に記憶させる。記憶部44に記憶されたサーチモードにおける光学系3の条件は、例えば、ユーザーが操作部40を用いて表示部42に表示されたサーチモードボタンをクリックすることにより、呼び出して再現することができる。
【0053】
図4は、サーチモードにおける電子線Lの状態を説明するための図である。ここで、サーチモードでは、例えばディフラクションモードでシャドーイメージを作る。ディフラクションモードとは、中間レンズ14を対物レンズ10の後焦点にフォーカスさせてディフラクション(電子回折)を観察するためのモードである。シャドーイメージを作るためには、中間レンズ14の励磁を変化させて、ディフラクションの透過波のスポット(0次回折スポット)をディスク状にする。そのディスク内に現れる構造は、試料Sの低倍率の拡大像になっている。サーチモードにおいて、シャドーイメージを用いることにより、一般
的に低倍率観察で用いられるLowMagモードと異なり、対物レンズ10の励磁をMagモードと同じにできる。これにより、レンズの励磁変化にともなう熱ドリフトを抑制することができる。ステップS11では、中間レンズ14の励磁を、視野探しを行うために十分と思える広い視野が得られる様に設定する。また、電子線照射量を抑えるために照射レンズ系3a(集束レンズ4)の励磁を、試料S上の電子線Lの径が大きくなるように設定する。サーチモードにおける倍率は、フォトモードにおける倍率よりも低い倍率となるように設定される。
【0054】
次に、フォーカスモードにおける光学系3の条件を設定する(ステップS12)。ステップS12では、ユーザーが、フォーカスモードにおける光学系3の条件を記憶部44(または情報記憶媒体46)に記憶させる。具体的には、フォーカスモードでは、フォトモードの視野(撮影視野)範囲を避けるように視野を設定する。
【0055】
図5は、フォーカスモードにおける電子線Lの状態を説明するための図である。フォーカスモードでは、フォーカスモードの視野をフォトモードの視野と異なるものにするために、図5に示すように、試料Sよりも電子線Lの上流側にあるCLアライメントコイル6を試料S上の電子線照射領域がフォトモードと異なる領域になるように設定する。
【0056】
ただし、これでは、撮像装置22上で像を取得することができないため、試料Sよりも電子線Lの下流側にあるイメージシフトコイル12を電子顕微鏡像が撮像装置22上に形成されるように設定する。また、フォーカスモードにおける倍率を、フォーカス合わせ、すなわち、対物レンズ10の焦点合わせが行い易い倍率に設定する。例えば、フォーカスモードにおける倍率を、フォトモードにおける倍率以上に設定する。記憶部44に記憶されたフォーカスモードにおける光学系3の条件は、例えば、ユーザーが操作部40を用いて表示部42に表示されたフォーカスモードボタンをクリックすることにより、呼び出して再現することができる。
【0057】
次に、レンズヒステリシスの影響の確認を行う(ステップS13)。ステップS13では、ユーザーが、モード(フォトモード、サーチモード、フォーカスモード)を順次切り替えて、各モードにおいて、電子線Lのずれや、視野中心のずれがないかを確認する。ユーザーがレンズヒステリシスの撮影に与える影響があると判断した場合(ステップS14でNoの場合)、ステップS10に戻って、再度、ステップS11、S12、S13を行う。レンズヒステリシスの撮影に与える影響がなくなるまで、ステップS10〜S13を繰り返す。
【0058】
ユーザーがレンズヒステリシスの影響がないと判断した場合(ステップS14でYESの場合)、スルーマグシリーズを取得する(ステップS15)。
【0059】
ステップS15では、制御部32が、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像が取得されるように、記憶部44に記憶されたサーチモードにおける光学系3の条件、およびフォトモードにおける光学系3の条件に基づいて、電子顕微鏡100の光学系3を制御する。ここでは、制御部32は、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率の複数の電子顕微鏡像(スルーマグシリーズ)が取得されるように、電子顕微鏡100の光学系3を制御する。以下、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率の一連の電子顕微鏡像を「スルーマグシリーズ」という。
【0060】
図6は、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率を持つ4つの電子顕微鏡像から構成されているスルーマグシリーズを示す図である。
【0061】
ステップS15では、ユーザーが操作部40を用いて表示部42に表示されたスルーマグシリーズ取得ボタンをクリックする。これを受けて、制御部32は、記憶部44に記憶されたサーチモードにおける倍率の情報とフォトモードにおける倍率の情報を取得する。そして、制御部32は、この倍率情報に基づいて、スルーマグシリーズを構成する電子顕微鏡像の倍率を決定する。このとき、制御部32は、スルーマグシリーズを構成する電子顕微鏡像の倍率を、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率となるように決定する。例えば、サーチモードにおける倍率が2,000倍、フォトモードにおける倍率が50,000倍であった場合、制御部32は、スルーマグシリーズを構成する電子顕微鏡像の倍率を、例えば、5,000倍、10,000倍、20,000倍、40,000倍に決定する。制御部32は、決定した倍率の電子顕微鏡像が取得されるように光学系3を制御する。そして、制御部32は、倍率ごとに自動的に電子顕微鏡像が撮影されるように、シャッター20および撮像装置22を制御する。取得された一連の電子顕微鏡像(スルーマグシリーズ)は、記憶部44に記憶される。記憶部44に記憶されたスルーマグシリーズは、例えば、ユーザーが操作部40を用いて表示部42に表示されたスルーマグシリーズボタンをクリックすることにより、呼び出すことができる。
【0062】
なお、スルーマグシリーズを構成する電子顕微鏡像の数や倍率は特に限定されない。例えば、スルーマグシリーズを構成する電子顕微鏡像の数や倍率を、ユーザーが設定してもよいし、サーチモードにおける倍率およびフォトモードにおける倍率に応じて、予め設定されていてもよい。また、スルーマグシリーズの撮影は、制御部32によってスルーマグシリーズが取得されるように光学系3が制御された後に、ユーザーが電子顕微鏡100のシャッターボタン(図示せず)を押すことで行ってもよい。
【0063】
また、ステップS15では、制御部32がディフラクションモードで中間レンズ14の励磁を変えることによって倍率を変えて、スルーマグシリーズを取得してもよい。また、制御部32がフォトモードにおける光学系3の条件から中間レンズ14の励磁を変えることによって倍率を変えて、スルーマグシリーズを取得してもよい。なお、制御部32は、例えば、スルーマグシリーズを構成する一連の電子顕微鏡像を取得する際に、倍率以外の条件は変更しない。例えば、スルーマグシリーズを構成する一連の電子顕微鏡像は、試料ホルダー8による試料Sの移動は行わずに取得される。スルーマグシリーズは、視野を固定し、倍率のみを変えて取得された一連の電子顕微鏡像であるともいえる。
【0064】
次に、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応をとる(ステップS16)。ここで、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応をとるとは、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野との間のずれを補正することをいう。すなわち、例えば、サーチモードでの視野の位置(例えば視野の中心の位置)と、フォトモードでの視野の位置(例えば視野の中心の位置)とを一致させることをいう。また、例えば、サーチモードで視野の中心に位置していた対象物が、フォトモードでも視野の中心に位置するように調整することをいう。サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応をとることにより、サーチモードで決定した視野と、フォトモードで撮影する視野とを一致させることができる。
【0065】
ステップS16では、スルーマグシリーズを用いて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応をとる。例えば、ユーザーがスルーマグシリーズを参照して、試料Sの所定の箇所(例えば図6の矢印で示す箇所)が、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野で同じ位置(例えば視野中心)にくるように、PLアライメントコイル18を用いて調整する。このときのPLアライメントコイル18の条件は、記憶部44に記憶される。スルーマグシリーズを用いて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応
をとることにより、サーチモードにおける倍率の画像とフォトモードにおける倍率の画像とで、直接、視野対応をとる場合と比べて、容易に視野対応をとることができる。
【0066】
なお、ステップS16の後に、レンズヒステリシスの影響により、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野との間にずれが生じないか確認してもよい。レンズヒステリシスの影響によるずれが生じている場合には、再度、ステップS15を行う。
【0067】
次に、サーチモードで撮影視野を探す(ステップS17)。ステップS17では、ユーザーがサーチモードを選択すると、制御部32がステップS11で設定されたサーチモードにおける光学系3の条件に基づいて、光学系3を制御する。これにより、電子顕微鏡100では、図4に示すサーチモードの光学条件が再現される。
【0068】
電子顕微鏡100では、図4に示すように、サーチモードに設定されると、集束レンズ4によって、試料S上における電子線Lの径が広げられる。これにより、試料Sに照射される電子線量が少ない条件で、撮影視野を探すことができる。電子顕微鏡100において、サーチモードでは、例えば、シャドーイメージが使用される。
【0069】
電子顕微鏡100がサーチモードの条件に設定されると、ユーザーは、試料ホルダー8を操作して、試料Sを水平移動させながら、撮影に適した視野を探す。そして、ユーザーは、撮影に適した視野(撮影視野A)を決定し、視野中心に移動させる。
【0070】
次に、フォーカスモードでフォーカス合わせを行う(ステップS18)。ステップS18では、ユーザーがフォーカスモードを選択すると、制御部32がステップS12で設定されたフォーカスモードにおける光学系3の条件に基づいて、光学系3を制御する。これにより、電子顕微鏡100では、図5に示すフォーカスモードの光学条件が再現される。
【0071】
電子顕微鏡100では、フォーカスモードに設定されると、図5に示すように、CLアライメントコイル6が、電子線Lの照射領域を撮影視野Aからずれた視野Bとなるように電子線Lを偏向させる。また、イメージシフトコイル12が、電子顕微鏡像が撮像装置22上に形成されるように電子線Lを偏向させる。これにより、フォーカスモードでは、撮影視野Aを避けるような視野Bとなり、撮影視野Aに電子線Lが照射されて撮影視野Aに含まれる試料Sが損傷することを防ぐことができる。
【0072】
電子顕微鏡100がフォトモードに設定されると、ユーザーは、対物レンズ10の励磁量を調整してフォーカス合わせ(焦点合わせ)を行う。また、ユーザーは、非点補正等の撮影に必要な操作を行ってもよい。
【0073】
次に、フォトモードで撮影を行う(ステップS19)。ステップS19では、ユーザーがフォトモードを選択すると、制御部32が記憶部44に記憶されたフォトモードにおける光学系3の条件に基づいて、光学系3を制御する。これにより、電子顕微鏡100では、図3に示すフォトモードの光学条件が再現される。
【0074】
ここで、撮影の手順について説明する。図7図9は、電子顕微鏡100の撮影手順について説明するための図である。
【0075】
電子顕微鏡100では、フォトモードに設定されると、制御部32が光学系3をステップS10で設定された条件となるように制御する。このとき、制御部32は、CLアライメントコイル6を、図7に示すように、電子線Lを大きく偏向させて、試料Sに電子線Lが照射されない状態(ビームブランキング状態)とする。ユーザーが、シャッターボタンを押すと、図8に示すように、ビームブランキング状態が解除される。その後、図9に示
すように、シャッター20が開き、撮像装置22が電子顕微鏡像を取得する。
【0076】
以上の工程により、試料を観察することができる。
【0077】
本実施形態に係る電子顕微鏡および試料観察方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0078】
本実施形態に係る電子顕微鏡100では、制御部32が、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像が取得されるように、サーチモードにおける光学系3の条件およびフォトモードにおける光学系3の条件に基づいて、光学系3を制御することができる。これにより、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像を容易に取得することができる。したがって、当該電子顕微鏡像を用いて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる。
【0079】
ここで、MDSでは、サーチモードで撮影視野を決定するため、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応が取れていない場合、サーチモードで撮影視野を決定しても、決定した撮影視野とは異なる視野が撮影されてしまう。そのため、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応をとる必要がある。しかしながら、サーチモードとフォトモードでは、倍率差が大きいことから、視野対応をとることは難しい。電子顕微鏡100によれば、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像を容易に取得することができるため、当該電子顕微鏡像を用いて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる。
【0080】
本実施形態に係る電子顕微鏡100では、制御部32は、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率の複数の電子顕微鏡像(スルーマグシリーズ)が取得されるように、電子顕微鏡の光学系3を制御する。これにより、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を、より容易にとることができる。
【0081】
本実施形態に係る試料観察方法では、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像が取得されるように、制御部32が、サーチモードにおける光学系3の条件およびフォトモードにおける光学系3の条件に基づいて、光学系3を制御する。これにより、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像を容易に取得することができる。したがって、当該電子顕微鏡像を用いて、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を容易にとることができる。
【0082】
本実施形態に係る試料観察方法では、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率であって、互いに異なる倍率の複数の前記電子顕微鏡像(スルーマグシリーズ)が取得されるように、光学系3を制御する。これにより、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の対応を、より容易にとることができる。
【0083】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、サーチモードとフォトモードの視野対応をとるステップS16では、ユーザーが、スルーマグシリーズを参照しながら、PLアライメントコイル18を用いて、視野対応をとっていた。これに対して、ステップ16において、制御部32が、サーチモードでの視野とフォトモードでの視野の間のずれが補正されるように、サーチモードにおける倍率とフォトモードにおける倍率の間の倍率の電子顕微鏡像に基づいて、偏向装置(例えば、PLアライメントコイル18)を制御してもよい。具体的には
、制御部32が、フォトモードでの画像(視野)をスルーマグシリーズを取得した各倍率値を参照してアフィン変換し、これとサーチモードでの画像(視野)を相互相関演算することにより視野を比較してそのずれ量を算出する。そして、制御部32が、サーチモードでの視野中心と、フォトモードでの視野中心が一致するように、算出結果に基づいて、PLアライメントコイル(偏向装置)18を制御する。これにより、自動的にサーチモードでの視野とフォーカスモードでの視野の対応をとることができる。
【0085】
また、例えば、上述した実施形態では、サーチモード、フォーカスモード、フォトモードの3つのモードを用いて撮影を行ったが、サーチモードおよびフォトモードの2つのモードで撮影を行ってもよい。すなわち、サーチモードで視野探しを行った後、フォーカスモードに移らずに、直接、フォトモードに移り、撮影を行ってもよい。
【0086】
なお、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0087】
2…電子線源、3…光学系、3a…照射レンズ系、3b…結像レンズ系、4…集束レンズ、5…集束レンズ駆動回路、6…CLアライメントコイル、7…CLアライメントコイル駆動回路、8…試料ホルダー、10…対物レンズ、11…対物レンズ駆動回路、12…イメージシフトコイル、13…イメージシフトコイル駆動回路、14…中間レンズ、15…中間レンズ駆動回路、16…投影レンズ、17…投影レンズ駆動回路、18…PLアライメントコイル、19…PLアライメントコイル駆動回路、20…シャッター、21…シャッター駆動部、22…撮像装置、30…処理部、32…制御部、34…画像生成部、40…操作部、42…表示部、44…記憶部、46…情報記憶媒体、100…電子顕微鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9