(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側構屋根構連結部材と前記側構との連結箇所、及び、前記側構屋根構連結部材と前記屋根構との連結箇所は、それぞれ前記リブと前記インナスキンとの接合箇所の複数にわたして設けられること
を特徴とする請求項4から請求項10までのいずれか1項に記載の鉄道車両用車体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、車体の屋根構、側構、床構といった各構体における構造部材の配置等の基本設計に及ぼす制約が多く、車両の設計自由度が低くなってしまう。また、既存の車両には適用することが極めて困難である。
【0006】
一方、近年の鉄道車両の軽量化や、それに伴う車体構造の変化などを背景として、車体の上下方向の弾性振動(以下、車体弾性振動)低減のための取組みが進められている。車体弾性振動は、古くから一様な弾性はりの1次曲げ振動とみなされることが多いが、本願の発明者らのこれまでの詳細な振動計測結果によると、車体は実際には3次元構造物としての複雑な振動形状を示すことがわかっている。
振動特性(形状)の特徴は、車体構造(アルミ合金、ステンレス鋼といった材料や、これによる製造方法の差異)により異なるが、(1)車体床面に着目した場合に上述したいわゆる「1次曲げ」に近い形状、(2)車体断面にせん断を伴い「ひし形」に変形する形状、を示すモードについては、経験上、いずれの車種でも乗り心地に影響を与える事例が多い。
【0007】
また、従来の車体弾性振動低減手法は、主として上記のうち(1)を対象としたものがほとんどであるが、車種や軌条条件、乗車位置によっては、(2)の乗り心地への寄与が高い場合もあり、これを考慮した対策についても検討する必要がある。
【0008】
また、従来の鉄道車両の構体における剛性向上手法は、その多くが複数の柱、梁等の骨材を有する鋼製、ステンレス製などの構体に関するものであり、柱や梁等を相互に連結するものが主流であったが、例えばアルミニウム合金によるダブルスキン構造のように、柱、梁等の骨材をほとんど持たない構造においては、適用が困難であるという問題があった。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡素かつ小規模な構成によってダブルスキン構造の構体の断面変形に対する剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の鉄道車両用車体は、車室下面部を構成する台枠と、前記台枠の側端部から上方へ延びた側構と、左右の前記側構の上端部間にわたして設けられた屋根構を有し、少なくとも前記側構及び前記屋根構は、車両外部に露出するアウタスキン及び前記アウタスキンの車室内側に間隔を隔てて配置されたインナスキンの間を複数のリブで連結したダブルスキン構造を有する鉄道車両用車体であって、前記側構の下端部近傍における前記インナスキンと、前記台枠の上面部との間を連結する側構台枠連結部材を有することを特徴とする。
これによれば、側構台枠連結部材が側構と台枠との相対角度変化を抑制することによって、車体剛性を向上することができる。
本発明において、前記側構台枠連結部材は、前記側構と前記台枠との相対振動に対して減衰力を発生する減衰手段を有する構成とすることができる。
これによれば、車体弾性振動を効果的に低減することができる。
この場合、前記側構台枠連結部材は、前記側構に固定される第1の部材と、前記台枠に固定される第2の部材との間に粘弾性体を配置した構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成によって上述した効果を得ることができる。
【0010】
本発明において、前記側構台枠連結部材と前記側構との連結箇所は、前記リブと前記インナスキンとの接合箇所の複数にわたして設けられる構成とすることができる。
これによれば、側構台枠連結部材と構体との結合強度を高めて、上述した効果を確実に得ることができる。
【0011】
本発明において、前記側構の上端部近傍における前記インナスキンと、前記屋根構の側端部近傍における前記インナスキンとの間を連結する側構屋根構連結部材を有する構成とすることができる。
これによれば、側構屋根構連結部材が側構と屋根構との相対角度変化を抑制することによって、上述した効果をより高めることができる。
本発明において、前記側構台枠連結部材及び前記側構屋根構連結部材の車両前後方向における位置を実質的に一致させて配置した構成とすることができる。
この場合、前記側構台枠連結部材及び前記側構屋根構連結部材の車両前後方向における位置を、窓と窓との間隔に設けられる吹寄部と一致させた構成とすることができる。
これらの各発明によれば、側構台枠連結部材と側構屋根構連結部材との相乗効果を高めて、上述した効果をよりいっそう促進することができる。
【0012】
また、本発明の他の鉄道車両用車体は、車室下面部を構成する台枠と、前記台枠の側端部から上方へ延びた側構と、左右の前記側構の上端部間にわたして設けられた屋根構を有し、少なくとも前記側構及び前記屋根構は、車両外部に露出するアウタスキン及び前記アウタスキンの車室内側に間隔を隔てて配置されたインナスキンの間を複数のリブで連結したダブルスキン構造を有する鉄道車両用車体であって、前記側構の上端部近傍における前記インナスキンと、前記屋根構の側端部近傍における前記インナスキンとの間を連結する側構屋根構連結部材を有することを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記側構屋根構連結部材は、前記側構と前記屋根構との相対振動に対して減衰力を発生する減衰手段を有する
ことを特徴とする。
これによれば、車体弾性振動を効果的に低減することができる。
この場合、前記側構屋根構連結部材は、前記側構に固定される第1の部材と、前記屋根構に固定される第2の部材との間に粘弾性体を配置して構成される構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成によって上述した効果を得ることができる。
【0014】
本発明において、前記側構屋根構連結部材は、車両前後方向から見たときに車両外側が凸となるように湾曲して形成される構成とすることができる。
これによれば、車室内側への突出量を低減し、比較的狭小なスペースに配置することが可能となる。
本発明において、前記側構屋根構連結部材と前記側構との連結箇所、及び、前記側構屋根構連結部材と前記屋根構との連結箇所は、それぞれ前記リブと前記インナスキンとの接合箇所の複数にわたして設けられる構成とすることができる。
これによれば、側構屋根構連結部材と構体との結合強度を高めて、上述した効果を確実に得ることができる。
【0015】
本発明において、前記側構台枠連結部材は、前記側構及び前記台枠の車室内側に設けられる内装材と、前記側構及び台枠との間隔に収容される構成とすることができる。
本発明において、前記側構屋根構連結部材は、前記側構及び前記屋根構の車室内側に設けられる内装材と、前記側構及び前記屋根構との間隔に収容される構成とすることができる。
これらの各発明によれば、車室内のスペースを減らすことなく上述した各効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、簡素かつ小規模な構成によってダブルスキン構造の構体の断面変形に対する剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した鉄道車両用車体の
参考例及び実施形態について説明する。
<第1
参考例>
まず、第1
参考例について説明する。
第1
参考例の鉄道車両用車体は、例えば、新幹線(東海旅客鉄道株式会社・東日本旅客鉄道株式会社・西日本旅客鉄道株式会社の登録商標)車両等に代表される高速鉄道用電車の旅客車に用いられるものであり、アルミニウム系合金の押し出し材を接合して構成されたダブルスキン構造の構体を備えている。
図1は、第1
参考例の鉄道車両用車体の模式的側面視図である。
図2は、
図1のII−II部矢視断面図である。
【0019】
鉄道車両用車体1は、乗客が収容される車室を構成する構体100を備えている。
構体100は、台枠110、側構120、妻構130、屋根構140等を備え、実質的に六面体状に構成されている。
台枠110は、構体100の下面部を構成するほぼ平板状の部分である。
台枠110は、平面視形状が実質的に矩形状に形成され、実質的に水平に配置されている。
台枠110の上部には、車室の床部111が設けられている。
床部111は、実質的に水平方向に沿って延びたパネル状に形成されている。
床部111は、台枠110の本体部に対して、上下方向に離間して設けられた内装部材である。
台枠110の下部には、軌道20上を走行する輪軸10が設けられる図示しない台車が回動(ボギー角付与)可能に取り付けられる。
【0020】
側構120は、車両の側面部を構成する部分である。
側構120は、台枠110の側端部から上方へ延びて形成されている。
側構120は、窓部121、吹寄部122等を有して構成されている。
窓部121は、例えば、非開閉式の二重窓ガラスが取り付けられる開口である。
窓部121は、車両前後方向に複数が配列されている。
吹寄部122は、窓部121の間隔に設けられた領域である。
吹寄部122には、空調用の風道等が設けられている。
【0021】
また、側構120の車室内側には、内装パネル123が設けられている。
内装パネル123は、例えば樹脂等によって形成され、車室内に露出する内装部材である。
内装パネル123は、側構120本体との間に間隔を隔てて配置されている。
【0022】
妻構130は、車体の前後端面を構成する部分である。
妻構130は、台枠110の前後端部から上方へ延びて形成されている。
妻構130には、図示しない貫通路などが設けられている。
妻構130の側端部は、側構120の前後端部と接続されている。
【0023】
屋根構140は、車室の屋根を構成する部分である。
屋根構140は、車両前後方向から見たときに上方に凸となるように湾曲して形成されている。
屋根構140の側端部は、側構120の上端部と接続されている。
屋根構140の前後端部は、妻構130の上端部と接続されている。
【0024】
以上説明した構体において、側構120及び屋根構140は、車両外部に露出するアウタスキンO、及び、アウタスキンOの車室内側に間隔を隔てて配置されたインナスキンIを、複数のリブRによって連結したダブルスキン構造となっている。
複数のリブRは、それぞれ相互に傾斜して順次配列されることによって、構体を車両前後方向から見た断面形状は、実質的に三角形状の閉断面が互い違いに順次連続するトラス状となっている。
このような構体は、例えば、アルミニウム系合金の押し出し材を、側構120の上下方向、屋根構140の幅方向に順次接続することによって形成されている。
【0025】
また、鉄道車両用車体1は、コーナーブレース200を備えている。
図3は、
図1のIII−III部矢視断面図である。
図3に示すように、コーナーブレース200は、側構120の下部におけるインナスキンIの表面と、台枠110の上部とを連結するガセット状の連結部材である。
【0026】
コーナーブレース200は、本体部210、側構固定面部220、台枠固定面部230、補強板240等を備えて形成されている。
本体部210は、側構120の下部と台枠110の上部との間に設けられた帯板状の平面部であって、幅方向を車両前後方向にほぼ沿わせて配置されるとともに、上端部が下端部に対して車幅方向外側となるように傾斜して配置されている。
【0027】
側構固定面部220は、側構120に溶接されたブラケット(受金)B1に、例えばボルト等によって締結される部分である。
側構固定面部220は、本体部210の上端部を、ストレートに延長して形成されている。
ブラケットB1は、側構120と溶接可能なようにアルミニウム系合金によって形成され、側構固定面部220との当接箇所に、上下方向に配列された複数のナット部を備えている。
また、ブラケットB1は、側構120におけるインナスキンIとリブRとの接合箇所のうち上下方向に離間した複数個所(例えば、
図3に示すように2箇所)にわたして設けられている。
【0028】
台枠固定面部230は、台枠110に溶接されたブラケットB2に、例えばボルト等によって締結される部分である。
台枠固定面部230は、本体部210の下端部から、車幅方向内側へほぼ水平に突き出して形成されている。
ブラケットB2は、台枠110と溶接可能なようにアルミニウム系合金によって形成され、台枠固定面部230との当接箇所に、車幅方向に配列された複数のナット部を備えている。
【0029】
上述したブラケットB1、B2は、それぞれ例えば厚さ4mmのアルミニウム板をコの字断面となるように形成し、コの字断面の開いた側を構体に突き当て、溶接して構成されている。
【0030】
補強板240は、コーナーブレース200の剛性確保のため、本体部210、側構固定面部220、台枠固定面部230の幅方向(車両前後方向)における端部から、車室内側へ突き出して形成された面部である。
図4は、
図3のA−A部矢視断面のバリエーションを示す図である。
補強板240は、
図4(a)に示すように、コーナーブレース200の前後両側に設けてコの字断面としてもよく、また、
図4(b)に示すように、一方にのみ設けてL字断面としてもよい。また、
図4(c)に示すように、コーナーブレース200の前後両側に補強板240を設けるとともに、補強板240の本体部210とは反対側の端部間にわたして設けられた面部241を設けて、矩形の閉断面としてもよい。
【0031】
上述したコーナーブレース200は、
図1に示すように、車両前後方向に分散して複数設けられている。
各コーナーブレース200は、車両前後方向における位置を、吹寄部122に合わせて配置され、第1
参考例においては、例えば、車体全体として10断面に取付けている。これによる質量増は、例えば約60kg程度である。
また、コーナーブレース200は、例えば、厚さ5mmの鋼製となっている。
コーナーブレース200は、台枠110、側構120等からなる構体と、床部111、内装パネル123等の内装部材との間隔に配置され、車室内に突出したり露出することはない。
【0032】
次に、以上説明した第1
参考例の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
比較例の鉄道車両用車体は、第1
参考例の鉄道車両用車体から、コーナーブレース200を撤去したものである。
【0033】
発明者らは、第1
参考例及び比較例の鉄道車両用車体を対象として、有限要素法(FEM)モデルを用いた固有値解析を行った。
FEMモデルは、高速車両用の車体であって、床の横はり等に「ビーム要素」を用いたほかは、全体にわたって「シェルモデル」によりモデル化しており、要素長は70mm程度を目安に作成した。節点数は約35万、要素数は約27万である。
作成したFEMモデルを用いて実固有値解析を実施し、主に車体断面が平行四辺形状に変形する変形モードに着目して固有振動数を求めた。
その結果、比較例においては、固有振動数が12.92Hzであったのに対し、第1実施形態では、コーナーブレース200を
図4(b)に示すようなL字断面とした場合には13.28Hz、
図4(a)に示すようなコの字断面とした場合には、13.33Hz、さらに、
図4(c)に示す閉断面とした場合にも13.33Hzとなり、車体剛性の向上効果が確認された。
さらに、ブラケットB1をボックス状として補強した場合には、固有振動数は13.64Hzまで上昇することが確認された。
【0034】
以上説明した第1
参考例においては、柱、梁等の骨材をほとんど用いないダブルスキン構造の構体においても、質量にして60kg程度の増加でありかつ内装材の内部に収容可能な簡素な構成によって、車体断面形状が変形する方向の車体剛性を効果的に向上することができる。
【0035】
<第2
参考例>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第2
参考例について説明する。
以下説明する各
参考例及び実施形態において、上述した第1
参考例と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図5は、第2
参考例の鉄道車両用車体の模式的側面視図である。
図6は、第2
参考例の鉄道車両用車体におけるコーナーブレースを示す図であって、
図6(a)は
図5のVI−VI部矢視断面図であり、
図6(b)は
図6(a)のb−b部矢視断面図である。
【0036】
第2
参考例の鉄道車両用車体は、第1
参考例の鉄道車両用車体に対して、以下説明するコーナーブレース300を付加したものである。
コーナーブレース300は、側構120の上部におけるインナスキンIと、屋根構140の側端部におけるインナスキンIとを連結する連結部材である。
【0037】
図6に示すように、コーナーブレース300は、本体部310、側構固定面部320、屋根構固定面部330、補強板340等を有して構成されている。
本体部310は、側構120の上部と屋根構140の側端部との間に設けられた帯板状の部分である。
本体部310は、幅方向を車両前後方向にほぼ沿わせて配置されるとともに、側構120と屋根構140とのコーナー部の湾曲にほぼ沿って、車両前後方向から見て車室外側が凸となるように湾曲して形成されている。
【0038】
側構固定面部320は、側構120に溶接されたブラケットB3に、例えばボルト等によって締結される部分である。
側構固定面部320は、本体部310の側構120側の端部に設けられている。
ブラケットB3は、側構120と溶接可能なようにアルミニウム系合金によって形成され、側構固定面部320との当接箇所に、上下方向に配列された複数のナット部を備えている。
また、ブラケットB3は、側構120におけるインナスキンIとリブRとの接合箇所のうち上下方向に離間した複数個所にわたして設けられている。
【0039】
屋根構固定面部330は、屋根構140に溶接されたブラケットB4に、例えばボルト等によって締結される部分である。
屋根構固定面部330は、本体部310の屋根構140側の端部に設けられている。
ブラケットB4は、屋根構140と溶接可能なようにアルミニウム系合金によって形成され、屋根構固定面部330との当接箇所に、車幅方向にほぼ沿って配列された複数のナット部を備えている。
また、ブラケットB4は、屋根構140におけるインナスキンIとリブRとの接合箇所のうち車幅方向に離間した複数個所にわたして設けられている。
上述したブラケットB3,B4は、それぞれ例えば厚さ4mmのアルミニウム板をコの字断面となるように形成し、構体に溶接して構成されている。
【0040】
また、側構120と屋根構140との境界部付近には、本体部310の中央部が締結されるブラケットB5が形成されている。
ブラケットB5は、構体と一体に形成されたアルミニウム合金製の受金であって、例えば一本のボルトの頭部をホールドできる溝部を備えている。
【0041】
補強板340は、コーナーブレース300の剛性確保のため、本体部310、側構固定面部320、屋根構固定面部330の幅方向(車両前後方向)における端部から、車室内側へ突き出して形成された面部である。
この補強板340も、コーナーブレース200の補強板240と同様に、本体部310等の片側にのみ設けてもよく、また、両側に設けてもよい。
また、コの字断面の端部を連結して矩形の閉断面としてもよい。
【0042】
コーナーブレース300は、側構120及び屋根構140の車室内側に設けられ、車室内に露出する内装パネルと、側構120及び屋根構140との間隔に収容され、車室内に露出したり突出することはない。
また、コーナーブレース300は、
図5に示すように、車両前後方向における位置が、コーナーブレース200及び吹寄部122と実質的に一致するように配置される。
【0043】
以上説明した第2
参考例においては、上述した第1
参考例の効果と実質的に同様の効果に加えて、コーナーブレース300が側構120と屋根構140との相対角度変化を抑制することによって、車体弾性振動の抑制効果をより高めることができる。
【0044】
<第
1実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第
1実施形態について説明する。
第
1実施形態の鉄道車両用車体は、第1
参考例のコーナーブレース200に代えて、以下説明するコーナーブレース200Aを備えている。
また、このようなコーナーブレース200Aと、第2
参考例のコーナーブレース300とを併用してもよい。
図7は、第
1実施形態の鉄道車両用車体における側構と台枠を連結するコーナーブレースを示す図であって、第1
参考例における
図3と同じ断面を示す図である(
図9,10において同じ)。
図8は、
図7のA−A部矢視断面のバリエーションを示す図である。
【0045】
コーナーブレース200Aの本体部210Aは、内筒211及び外筒212を有する二重筒構造となっている。
内筒211及び外筒212は、それぞれ実質的に矩形断面を有するパイプとして形成されている。
内筒211は、側構固定面部220に固定されている。内筒211の下部は外筒212の内部に挿入され、内筒211の上部は、外筒212の上部から突き出して露出している。
外筒212は、台枠固定面部230から上方へ立設された状態で台枠固定面部230に固定されている。
内筒211の台枠110側の端部は、外筒212の内径側に、外筒212の内周面とは間隔を隔てて対向して配置されている。
【0046】
図8に示すように、内筒211の外周面と、外筒212の内周面との間には、例えばエラストマー、ゴム等の粘弾性を有する材質からなり、内筒211と外筒212との間の相対振動を減衰させる機能を有する減衰部材250が配置されている。減衰部材250は、内筒211及び外筒212と、例えば接着等によって接合されている。
このような減衰部材250は、例えば
図8(a)に示すように、矩形断面を有する内筒211及び外筒212の各辺部にそれぞれ設けて、コーナー部は空けるようにしてもよい。
また、減衰部材250は、
図8(b)、
図8(c)に示すように、矩形断面を構成する四辺のうち、対向する一対の辺にのみ設けて、他の辺には設けなくてもよい。
例えば、
図8(b)に示すように、内筒211を車両前後方向に挟んだ位置や、
図8(c)に示すように、内筒211を車幅方向に挟んだ位置にのみ設ける構成としてもよい。
さらに、減衰部材250は、
図8(d)に示すように、内筒211と外筒212との間の実質的に全周にわたって配置してもよい。
また、内筒、外筒の断面形状も矩形には限らず、例えば円形断面等であってもよい。
【0047】
以上説明した第
1実施形態によれば、上述した第1
参考例の効果と実質的に同様の効果に加え、減衰部材250が台枠110と側構120との相対振動を減衰させることによって、車体の弾性振動を低減し、乗り心地を改善することができる。
【0048】
<第
2実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第
2実施形態について説明する。
第
2実施形態の鉄道車両用車体は、第1
参考例のコーナーブレース200に代えて、以下説明するコーナーブレース200Bを備えている。
図9は、第
2実施形態の鉄道車両用車体における側構と台枠を連結するコーナーブレースを示す図である。
第
2実施形態のコーナーブレース200Bは、台枠固定面部230と、ブラケットB2との間に挟まれた、シート状の減衰部材260を設けたものである。
以上説明した第
2実施形態においても、上述した各
参考例及び実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
なお、第
2実施形態においては、粘弾性体を台枠固定面部230側に設けているが、側構固定面部220側に設けてもよい。
【0049】
<第
3実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第
3実施形態について説明する。
第
3実施形態の鉄道車両用車体は、第1
参考例のコーナーブレース200に代えて、以下説明するコーナーブレース200Cを備えている。
図10は、第
3実施形態の鉄道車両用車体における側構と台枠を連結するコーナーブレースを示す図である。
図11は、
図10のA−A部矢視断面図である。
【0050】
第
3実施形態のコーナーブレース200Cは、第1
参考例における本体部210に代えて設けられた本体部210Cを、車両前後方向と実質的に垂直に配置された平板状のプレートとして形成している。
本体部210Cの側構120側の端部は、側構固定面部220に溶接等によって固定されている。
本体部210Cの台枠110側の端部は、台枠固定面部230から上方へ立ち上げて形成された一対のブラケット231の間隔に、シート状の弾性部材270を介在させた状態で挟み込まれている。
すなわち、本体部210Cは、一対の弾性部材270によって挟み込まれ、さらにその外側から一対のブラケット231によって挟み込まれる。
以上説明した第
3実施形態においても、上述した各
参考例及び実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
なお、第
3実施形態における部材の向き、配置は、上下逆転した構成として用いることも可能である。すなわち、本体部の側構側の端部が粘弾性体によって挟み込まれる構成としてもよい。
【0051】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
例えば、各連結部材(コーナーブレース)の形状、材質、製法、個数、配置等は、上述した各実施形態のものに限らず適宜変更することが可能である。
また、減衰手段も各実施形態のものには限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、減衰手段として、オイルダンパやフリクションダンパ等を用いてもよい。
また、このような減衰手段を、側構屋根構連結部材に設けてもよい。例えば、コーナーブレース300に、第
1乃至第
3実施形態のコーナーブレース200A,200B,200Cと実質的に同様の減衰手段を設けてもよい。
また、側構の吹寄部に沿って、空調用のダクトである風道が上下方向に設けられる場合には、連結部材(コーナーブレース)と風道とを連結あるいは一体化してもよい。
図12は、このようなコーナーブレースの一例を示す外観斜視図である。
図12に示すコーナーブレース200Dは、車両の床下に配置された空調装置からの送風を、吹寄部122に設けられ上下方向に延びた図示しない風道に導入する風道400と一体に形成されている。
風道400は、矩形の断面を有するダクトであって、実質的に水平に配置された入口部410及び上側に開口した出口部420を有し、その中間部430を屈曲させて形成されている。
コーナーブレース200Dは、風道400の台枠110及び側構120と隣接する面部を、車両前後方向に延長して構成されている。
このような構成によって、部品点数を低減し、車両の製造工程における組立作業の簡素化、軽量化などを図ることができる。