(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978089
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】耐火物の製造方法および耐火物
(51)【国際特許分類】
B28B 1/14 20060101AFI20160817BHJP
C04B 35/622 20060101ALI20160817BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
B28B1/14 Z
C04B35/00 D
C04B35/00 E
F27D1/16 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-221148(P2012-221148)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-73603(P2014-73603A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】矢野 淳
【審査官】
立木 林
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−203952(JP,A)
【文献】
特開2007−106650(JP,A)
【文献】
特開2005−060203(JP,A)
【文献】
特開2002−362980(JP,A)
【文献】
特開平10−007931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/14
C04B 35/66
F27D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物原料粒子粉末に水を添加して混合した後に生じた混合物を型枠に流し込み、乾燥および焼成を行うことによる、耐火物の製造方法であって、
添加される水の量が、JIS R 2553に記載の水量の決定方法により求められる水量の1.2〜1.7倍であり、
該混合物を型枠に流し込む際に振動を加えない
ことを特徴とする、耐火物の製造方法。
【請求項2】
前記耐火物原料粒子粉末として、比重の異なる複数の材質を用いる、請求項1に記載の耐火物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温で焼成または熱処理を行う際に用いられる治具等に用いられる耐火物の製造方法およびそのような方法により製造される耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温で焼成または熱処理を行うための治具、製鋼炉や焼却炉、溶融炉などの炉底などには、これらが通常1000℃を超える高温の環境に置かれるため、これらを構成する材料として耐火物が用いられている。
【0003】
耐火物は、通常、粒径1mmを超える粗大粒子(骨材)から100μm以下の微細な粒子が混合された不均質な組織を有している。このような耐火物を製造するには、金型による成形、あるいは原料に水を加えた後に型へ流し込む成形の後に、焼成および機械加工等を施す方法が知られている。
【0004】
得られた耐火物の表面には、骨材を含め種々の粒径の原料由来の粒状物が現れるが、使用過程で骨材の割れや組織の「緩み」により脱落が生じる。その後、骨材の脱落が進行すると、表面の骨材痕が多く現れる。耐火物を治具に使用した場合には、治具上に設置した製品の表面が非常に「荒れた」状態になったり、熱処理中に脱落した骨材が製品に付着したり焼き付いたりするため熱処理後に機械加工が必要な状況が生じる。また耐火物を各種の炉の炉底に用いた場合には、骨材の脱落が進行していくことにより耐火物の強度が徐々に低下し、短期間で破壊に至ることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような弊害を防止するために、平滑な表面状態を有した耐火物を製造する方法およびそのような耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、耐火物原料粒子粉末に水を添加して混合した後に生じた混合物を型枠に流し込み、乾燥および焼成を行うことによる、耐火物の製造方法であって、添加される水の量が、JIS R 2553に記載の水量の決定方法により求められる水量の1.2〜1.7倍であり、該混合物を型枠に流し込む際に振動を加えないことを特徴とするものである。
【0007】
このような方法により耐火物を製造することによって、得られる耐火物の表面状態は良好なものとなり、このため、多数回にわたって使用しても骨材の脱落等が生じず耐久性を向上させることができる。
【0008】
上記本発明の耐火物製造方法において、前記耐火物原料粒子粉末として、比重の異なる複数の材質を用いてもよい。
【0009】
このように比重の異なる複数の材質を用いることにより、表層部と中心部とで異なる材質を有する複数構造を有する耐火物を製造することが可能である。
【0010】
また、本発明は、上記の製造方法により製造される耐火物に関するものである。本発明の耐火物は、上記のように、表面状態が良好であり、かつ、耐久性に優れている。
【発明の効果】
【0011】
本発明による耐火物の製造方法では、添加される水の量が、JIS R 2553に記載の水量の決定方法により求められる水量の1.2〜1.7倍であり、混合物を型枠に流し込む際に振動を加えないことにより、耐火物の表面状態を良好にすることができ、このために多数回にわたって使用しても骨材の脱落等が生じず耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】焼成後の耐火物の断面状態を示す写真であり、(a)は実施例2により得られた耐火物を示し、(b)は比較例1により得られた耐火物を示す。
【
図2】焼成後の耐火物の表面状態を示す写真であり、(a)は実施例2により得られた耐火物を示し、(b)は比較例1により得られた耐火物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による耐火物の製造方法を詳細に説明する。
【0014】
本発明による耐火物の製造方法は、耐火物原料粒子粉末に水を添加して混合した後に生じた混合物を型枠に流し込み、乾燥および焼成を行うことによるものであり、(1)耐火物原料粒子粉末に水を添加するに際して、その水の量が、JIS R 2553に記載の水量の決定方法により求められる水量の1.2〜1.7倍となる量とされ、さらに、(2)水と耐火物原料粒子粉末とから生じた混合物を型枠に流し込む際に振動を加えないことを特徴とする。
【0015】
本発明方法に従って耐火物を製造するに際して用いられる耐火物原料粒子粉末は従来から知られている粒径1mmを超える粗大粒子(骨材)から100μm以下の微細な粒子が混合されたものを用いてよい。
【0016】
また、上記粗大粒子と微細粒子との比率は、最終製品である耐火物の求められる性能、粗大粒子および微細粒子の性状に応じて種々変更してよいが、例えば、重量比率で、粗大粒子/微細粒子の比は、0.4〜0.8である。
【0017】
耐火物原料粒子粉末に添加される水の量は、JIS R 2553に記載の水量の決定方法により求められる水量の1.2〜1.7倍とされる。
【0018】
ここで、JIS R 2553に記載の水量の決定方法に従って、基準となる水量を決定する手順について、上記から必要な記載を抜粋し簡単に説明すると、下記(a)〜(d)を順次行うことにより決定されることになる。
【0019】
(a)試料約1kgを上皿はかりで計り採り、鉢に入れる。ただし、軽量キャスタブル耐火物の試料は、品種に応じて0.5〜1kgを採る。
【0020】
(b)温度20±3℃の水を約100mL加え、混練器具を用いて混練する。
【0021】
(c)混合物を手でボール状に固め、約30cm上方に投げてこれを片手で受ける。
【0022】
(d)この状態が所定の状態(標準軟度状態;具体的にはJIS R 2553参照)に示すようになるまで、(a)(b)(c)の操作を水量を変えて繰り返し、標準軟度状態に達したときに使用した水量を供試キャスタブル耐火物の乾燥質量に対する百分率(%)として算出する。
【0023】
耐火物原料粒子粉末に水が添加されることにより得られた混合物が流し込まれる型枠は、従来公知である種々の態様のものが用いられてよい。
【0024】
ここで、本発明では、混合物を型枠に流し込むに際して、振動は加えられずに行われることになる。
【0025】
型枠に混合物を流し込んだ後に行われる、乾燥および焼成は、耐火物製造のために通常用いられている条件下に行われる。例えば、乾燥は、大気雰囲気中、室温で一昼夜自然乾燥後5〜10℃/時間の昇温速度で600℃まで加熱することにより行われ、焼成は、酸化物の場合大気雰囲気中(非酸化物の場合窒素雰囲気中)、耐火物の常用温度よりも50〜100℃高い温度まで50〜100時間かけて加熱することにより行われる。
【0026】
また、
前記耐火物原料粒子粉末として、比重の異なる複数の材質を用いた場合、本発明では、型枠に流し込む際に振動が加えられないことにより、乾燥・焼成を行った後に、表層部と中心部とで異なる材質の比率を有する複層構造を有する耐火物を製造することも可能である。
【0027】
(実施例)
次に、本発明に沿った実施例、およびこれとの比較を示すための比較例を実際にいくつか行ったので以下に説明する。
【0028】
耐火物原料粒子粉末として、1mm以上の粒径を有する粗大粒子粉末30重量%、100μm以下の粒径を有する微細粉末40重量%を含み、残りの30重量%は100μmより大きくかつ1mm未満の粉末である市販のアルミナ質不定形耐火物を用いた。
【0029】
(比較例1)
不定形耐火物に、JIS R 2553に記載の水量の決定方法により求められる水量(以下標準添加量と称する)に相当する量の水を加えた。この不定形耐火物においては、水の標準添加量は、不定形耐火物重量に対して10重量%であった。
【0030】
標準添加量(10重量%)の水を加えた後、これをミキサーに投入し、このミキサーにおいて混合し、その後、加振台にセットした木枠(500×1000mm)に流し込んだ。
【0031】
一昼夜自然乾燥後、10℃/時間の昇温速度で600℃まで加熱して乾燥した後に50時間かけて1500℃まで加熱して焼成を行い、耐火物を得た。
【0032】
得られた耐火物の大きさは、495×990×30mmであった。
【0033】
(実施例1)
標準添加量の1.5倍に相当する量の水、すなわち、15重量%の水を加え、また、木枠に流し込む際に加振しなかった他は、比較例1と同様にして耐火物を得た。得られた耐火物の大きさは、比較例1と同様に、495×990×30mmであった。
【0034】
(実施例2〜4および比較例2〜7)
上記比較例1および実施例1と同様にして耐火物を製造したが、材質をアルミナ質のものから炭化ケイ素に変更したり(比較例4および実施例4)、添加水分量を種々変更したり、木枠に流し込む際に加振を加えたり加えなかったり等による製造時の条件を種々変更して複数種の耐火物を得た。
【0035】
実施例1〜4および比較例1〜7による11種の耐火物を製造する際の条件を表1にまとめる。
【0037】
上記11種の各耐火物を焼成用治具として用いてジルコニアセラミックスの焼成を大気中1400℃、電気炉にて実施する工程を繰り返した。
【0038】
工程後の耐火物の表面状態および肉厚を下記表2に示す。
【0039】
上記実施例1および比較例1の耐火物により得られた結果を、実施例2〜4および比較例2〜7の耐火物により得られた結果と共に表2に示す。
【0041】
表2中、○は、使用前と比較して表面状態が変化ない場合であり、△は、骨材の脱落が発生した場合であり、×は、骨材の脱落が著しく進行した場合である。また、肉厚は、10%以上低下した場合は×とした。
【0042】
比較例1で製作した耐火物は、5回目から骨材の割れによる脱落が生じ始め、9回目で焼成後のジルコニアセラミックスの表面に骨材が焼き付くことを確認することができた。骨材の脱落はその後も進行し、30回目で当初の厚みが減肉していることが分かった(当初30mm→27mm)。
【0043】
一方、実施例1で製作した耐火物は骨材の脱落もなく、30回目の使用においても表面状態、肉厚とも初期と大差ないことを確認した。
【0044】
他の実施例および比較例の結果は表2が参照される。表2に示されるように、良好な表面状態と耐火物の長期耐用の双方を得るためには標準添加量の1.2〜1.7倍の水分を添加する必要がある。また、同様の結果が、アルミナ質
のもの(酸化物)の他炭化ケイ素(非酸化物)でも得られた。
【0045】
一方、成形時の加振の効果については、実施例1と比較例6とを比較すれば明らかなように、標準添加量よりも多い量の水を加えた場合には、加振しないことにより良好な結果が得られた。なお、標準添加量よりも少ない量の水を加えた場合には、加振の有無に拘わらず表面状態は悪いという結果となった。
【0046】
以上に示したように、耐火物を流し込み成形にて製造する場合は、標準添加量の1.2〜1.7倍の水を添加し、かつ、成形時に加振を行わないことにより良好な性質が得られることが分かった。