特許第5978092号(P5978092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5978092冷却ガス供給装置およびそのような装置を備えたNMR設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978092
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】冷却ガス供給装置およびそのような装置を備えたNMR設備
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/30 20060101AFI20160817BHJP
   G01R 33/31 20060101ALI20160817BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G01N24/02 510C
   G01N24/02 510F
   G01N24/08 510S
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-229022(P2012-229022)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2013-88433(P2013-88433A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2015年8月11日
(31)【優先権主張番号】1159356
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502026241
【氏名又は名称】ブリユケール・ビオスパン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリツク・クランケ
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−175144(JP,A)
【文献】 特開2008−241493(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0321018(US,A1)
【文献】 山内 一夫,「磁気共鳴分光 V. 実践的な固体NMR」,分光研究,社団法人日本分光学会,2006年10月15日,Vol. 55, No. 5,pp. 350-359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00−24/14
G01R 33/20−33/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定プローブを備えたNMR分析装置または分析器具の冷却ガスの供給装置であって、前記冷却ガスが、測定プローブ内に収容される試料を冷却する一方で、また、試料の支持および回転駆動を実施し、
前記供給装置(1)が、主に、沸点にある液体ガス(5)を収容する断熱リザーバ(4)を有し、冷却すべきガス流が通過する熱交換器(6、6’、6”)が、リザーバ内部に配置され、前記熱交換器が、冷却されたガスを測定プローブに向けて送る1つまたは複数の移送ライン(7、7’、7”)に接続され、
前記供給装置(1)が、また、対応する熱交換器(6、6’、6”)に向けてガス流を送る前に、当該ガス流を予備冷却する少なくとも1つの追加熱交換器(8、8’、8”)を含み、前記または各々の追加熱交換器(8、8’、8”)が、二重管式熱交換器の形態を呈し、
前記供給装置(1)は、予備冷却用の追加熱交換器(8、8’、8”)が、当該ガス流に関して上流側で各々の熱交換器(6、6’、6”)に接続され、前記追加熱交換器が、リザーバ(4)内の液体ガス(5)の沸騰によって発生したガス蒸気(5’)、または測定プローブ(3)の外に排出されるもしくはプローブ(1)の位置で漏れ出す冷却ガス(9)を供給されること、
試料(3’)を冷却するための冷却ガスの予備冷却を行う追加熱交換器(8)が、リザーバ(4)内の液体ガス(5)の沸騰によって発生したガス蒸気(5’)を供給されること、および
試料(3’)の支持および回転をそれぞれ実施するために冷却ガスの予備冷却を行う追加熱交換器(8’、8”)が、測定プローブ(3)の位置で排出されるもしくは漏れ出す冷却ガス(9)を供給されることを特徴とする、供給装置。
【請求項2】
各々の追加熱交換器(8、8’、8”)が、同心の2個のダクトまたは管(10、10’)を配列して構成され、ダクトまたは管の一方(10)には、好適には内側にある管またはダクトには、予備冷却すべきガス流が通過し、ダクトまたは管の他方(10’)には、リザーバ(4)の液体ガス(5)の沸騰ガス蒸気(5’)によって、または測定プローブ(3)の位置で排出されるもしくは漏れ出すガス(9)によって形成される冷却ガス流が通過することを特徴とする、請求項1に記載の供給装置。
【請求項3】
各々の追加熱交換器(8、8’、8”)が、向流のすなわち反対流れの熱交換器であることを特徴とする、請求項1または2に記載の供給装置。
【請求項4】
3個の追加熱交換器(8、8’、8”)が、単一の構造ユニット(11)としてまとめられ、たとえば、3個の追加熱交換器(8、8’、8”)のうちの1個の熱交換器にそれぞれ対応する3個の螺旋形の筒状構造(10、10’)を入り組ませた構成からなる単一の蛇管(11)の形態を呈することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の供給装置。
【請求項5】
断熱ハウジング(11’)内に収容される単一ユニット(11)として構造的にまとめられることが好ましい追加熱交換器(8、8’、8”)は、少なくとも一部が、液体ガス(5)と熱交換器(6、6’、6”)とを収容するリザーバ(4)の上部(4’)に配置され、有利には、前記リザーバ(4)を閉鎖するカバー(4”)に取り付けられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の供給装置。
【請求項6】
特にLTMASプローブタイプのNMR測定設備であって、プローブが、試料の冷却、支持、および回転を実施する冷却ガスを供給され、前記NMR測定設備が、それぞれ対応する供給管を介して冷却ガスを送る冷却ガスの供給装置を含み、および/または、冷却ガスの供給装置に流体接続されている、NMR測定設備であって、
供給装置(1)が、請求項1から5のいずれか一項に記載の供給装置(1)であることを特徴とする、設備(2)。
【請求項7】
測定プローブ(3)から排出されるもしくは漏れ出すガス(9)を1つまたは複数の前記追加熱交換器(8’、8”)に向けて送るための断熱かつ好適には可撓性の移送管(12)を含み、前記移送管が、液体ガス(5)のリザーバ(4)に測定プローブ(3)の排出管(15)を接続することを特徴とする、請求項6に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(NMR)、特にLTMAS(Low Temperature Magic Angle Spinning−低温マジック角スピニング)と呼ばれるNMR技術を用いた測定および画像表示用の装備品および設備の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、上記のタイプのNMR器具または設備の冷却ガス供給装置、ならびに、それに対応する設備を目的とする。
【背景技術】
【0003】
LTMAS式のNMRタイプの測定プローブの幾つかは、液体窒素に近い温度(77.3K)の極低温ガスによって動作する。これらのガスは、ステータ内に挿入されたロータと呼ばれる小型管内に一般的に収容される試料をガイドかつ回転させる一方で、また、この試料の冷却を実施する。
【0004】
このため、通常は、「VT」(試料の冷却ガス)、「Bearing」(軸受け)、および「Drive」(駆動)と示される3種類の異なるガス流を用いる。これらのガスの圧力は、従来的には1バールから4バール(0.1MPaから0.4MPa)であり、通常の流量は20から60l/分である。圧力と流量は、ユーザによりプログラミングされる試料の回転速度に応じる。
【0005】
一般に、これらのガスは、室温にあるボンベ、タンクまたは同様のリザーバから送られ、液体窒素を部分的に充填した3個の与圧チャンバに収容された3個の熱交換器(1つのガスにつき1個)を通過することによって冷却される。各チャンバの内部圧力は、電子コントローラにより調節されて一定に維持される。電子コントローラは、チャンバの液体窒素に浸漬された加熱抵抗の発熱量に作用することによって、チャンバの内部圧力を調節する。
【0006】
チャンバ内の液体窒素がその蒸気とのバランスをとった状態にする一定の圧力は、チャンバ内の液体窒素の温度が一定であることを意味する。このようにして、各チャンバの液体窒素の沸点をコントロールする。MASロータを正確に回転させるには、液化ガスを含まない乾燥ガスを供給することが必要不可欠である。
【0007】
これらの3つの熱交換器から構成される上記の機械的なアセンブリは、一般にLTMAS冷却装置と呼ばれる冷却ガス供給装置を構成する。
【0008】
このような装置の1つの実施形態は、仏国特許出願公開第2926629号明細書に記載されている。
【0009】
こうした知られている冷却装置は完璧に動作するが、かなり多量の液体窒素を消費するという欠点がある。
【0010】
そのため、消費量は、ロータの回転速度が速いときは20l/hr、すなわち、1日当たり480リットルにも達することがある。液体窒素の全体消費量は、熱交換器を収容するチャンバの内部圧力に直接比例する。
【0011】
ところで、各チャンバの圧力は、ロータの回転速度によって変わる。特に「駆動」ガスおよび「軸受け」ガスの場合、ガス流量がより多量であれば高速の回転速度が得られる。チャンバの熱交換面は、最大の発熱量を排出できるように寸法決定される。
【0012】
当然のことながら、液体窒素の消費量が多ければ設備の動作コストが跳ね上がり、装置のユーザが液体窒素のリザーバを頻繁に操作しなければならなくなる。装置を24時間にわたって常に動作させるために、ユーザは、一般に、液体窒素を充填した200リットルのタンクを1日2回配備することが必要であり、これによって、熱交換器を収容したチャンバが内部に配置される主要窒素リザーバ内のレベルを一定に保持するようにしている。
【0013】
上記の仏国特許出願公開第2926629号明細書は、予備冷却の可能性を示唆しているが、リザーバ位置でガス漏れを利用することだけが開示され、実際の機能上または構造上の細部については、まったく開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2926629号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記の不都合を解消し、関与する様々なガス流の特性を考慮しながら上記装置内の液体窒素の消費量を著しく減らすことができる最適な解決方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このため、本発明は、測定プローブを備えたNMR分析装置または分析器具の冷却ガスの供給装置を目的とし、冷却ガスが、プローブ内に収容される試料を冷却する一方で、また、試料の支持(sustentation)および回転駆動を実施し、
上記供給装置が、主に、沸点にある液体ガスを収容する断熱リザーバを有し、冷却すべきガス流が通過する熱交換器が、リザーバ内部に配置され、これらの熱交換器が、冷却されたガスをプローブに向けて送る1つまたは複数の移送ラインに接続され、
上記供給装置が、また、対応する熱交換器に向けてガス流を送る前に、当該ガス流を予備冷却する少なくとも1つの追加熱交換器を含み、上記または各々の追加熱交換器が、二重管式(double flux)熱交換器の形態を呈し、
この供給装置は、予備冷却用の追加熱交換器が、当該ガス流に関して上流側で各々の熱交換器に接続され、この追加熱交換器が、リザーバ内の液体ガスの沸騰によって生じたガス蒸気、またはプローブの外に排出されるもしくはプローブの位置で漏れ出す冷却ガスを供給されること、
試料を冷却するための冷却ガスの予備冷却を行う追加熱交換器が、リザーバ内の液体ガスの沸騰によって発生したガス蒸気を供給されること、および
試料の支持および回転をそれぞれ実施するために冷却ガスの予備冷却を行う追加熱交換器が、プローブの位置で排出されるもしくは漏れ出す冷却ガスを供給される、ことを特徴とする。
【0017】
本発明は、限定的ではなく例として挙げられ、添付図面に関して説明された好適な実施形態に関する以下の説明を読めば、いっそう理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による供給装置の原理を示す概略図である。
図2】本発明の1つの有利な実施形態による供給装置を示す側面立面断面図である。
図3図1図2に示した装置の好適な変形実施形態による追加熱交換器の構成からなる構造ユニットを示す断面図である(試料の冷却ガスのための追加熱交換器を全体として示している)。
図4】NMR測定設備を図1図2に示したような供給装置に接続する流体接続を示す部分概略図である(NMR器具そのものではなく、プローブを包囲する構造を示す)。
図5図4に示した設備の一部をなす、試料を囲むプローブ部分をガス流の符号表記と共に示す、詳細な異なる縮尺の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図2は、測定プローブ3を備えたNMR分析設備または分析器具2の冷却ガスの供給装置1を示し、冷却ガスは、プローブ3に収容される試料3’を冷却する一方で、試料の支持および回転駆動を同様に実施する。この供給装置1は、主に、沸点にある液体ガス5を収容する断熱リザーバ4を含み、冷却すべきガス流が通過する熱交換器6、6’、6”が、リザーバ内部に配置され、これらの熱交換器が、冷却されたガスをプローブ3に向けて送る1つまたは複数の(断熱または真空の)移送ライン7、7’、7”に接続されている。
【0020】
本発明によれば、供給装置1は、また、対応する熱交換器6、6’、6”に向けてガス流を送る前に、当該ガス流を予備冷却する少なくとも1つの追加熱交換器8、8’、8”を含み、この追加熱交換器または各々の追加熱交換器8、8’、8”は、二重管式(または向流型)熱交換器の形態を呈し、リザーバ4内の液体ガス5の沸騰によって発生したガス蒸気5’、またはプローブの外に排出されるもしくはプローブ3の位置で漏れ出す冷却ガス9を供給される。
【0021】
そのため、本発明は、現行では利用されていないために大気中に排出される冷却ガスのフリゴリーの少なくとも一部を回収することができる。
【0022】
当該冷却ガスによって行われる予備冷却は、対応する熱交換器6、6’、6”により移送すべき発熱量を減少させるので、液体窒素5による冷却の必要性が低減される(熱交換器6、6’、6”は、一般には、温度および圧力の管理が行われるチャンバ6’”の内部に配置される)。
【0023】
本発明のこのような基本設計は、好適には3つの冷却ガスに適用される。
【0024】
そのため、本発明によれば、図1に示すように、予備冷却用の追加熱交換器8、8’、8”が、当該ガス流に関して上流側で各熱交換器6、6’、6”に接続されるように構成されている。
【0025】
同様に、本発明によれば、試料3’を冷却するための冷却ガスの予備冷却を行う追加熱交換器8は、タンク4内の液体ガス5の沸騰によって発生するガス蒸気5’を供給され、試料3’の支持および回転をそれぞれ実施するための冷却ガスの予備冷却を行う追加熱交換器8’、8”は、プローブ3の位置で排出されるもしくは漏れ出すガス9を供給される。
【0026】
このようにして、(後述するように、ガス9の流量と支持ガスおよび回転ガスの流量とが相互に依存しあっていることから)たとえ設備2の停止が延長された後であっても、プローブ3の支持および回転駆動のために乾燥ガスが確実に供給される。
【0027】
添付図面の図3に示した有効な熱移送を達成する本発明の1つの実施形態によれば、各々の追加熱交換器8、8’、8”が、同心の2個のダクトまたは管10、10’を配列して構成され、その一方10、好適には内側にある管またはダクトを、予備冷却すべきガス流が通過し(主要循環路)、他方10’(二次的な循環路)を、リザーバ4の液体ガス流5の沸騰ガス蒸気5’またはプローブ3の位置で排出されるもしくは漏れ出すガス9からなる冷却ガス流が通過する。
【0028】
段階的に予備冷却しながらガス蒸気5’または排出ガス9の冷却力を最適利用できるようにするために、有利には、各々の追加熱交換器8、8’、8”が向流のすなわち反対流れの熱交換器である。
【0029】
図2および図3に示した、簡単、小型かつ熱に関して最適な解決方法を得られる本発明の有利な構造上の変形実施形態によれば、3個の追加熱交換器8、8’、8”が、単一の構造ユニット11としてまとめられ、たとえば3個の熱交換器8、8’、8”のうちの1個の熱交換器にそれぞれ対応する3個の螺旋形の筒状構造10、10’を入り組ませた構成からなる単一の蛇管11の形態を呈する。
【0030】
好適には、図2が示すように、断熱ハウジング11’内に収容される単一ユニット11として構造的にまとめられた追加熱交換器8、8’、8”は、少なくとも一部が、液体ガス5と熱交換器6、6’、6”とを収容するリザーバ4の上部4’に配置され、有利には、リザーバ4を閉鎖するカバー4”に取り付けられる。
【0031】
次に、添付図面の図1から図4に関して限定的ではない1つの実施形態について詳しく説明する。
【0032】
前述のように、本発明は、NMR設備、特にLTMASプローブを用いた設備において液体ガス(一般には窒素)の消費量を減らすことをめざしているので、このため、一般に用いられている手段は、各熱交換器6、6’、6”内を通過させる前にすべてのMASガスを予備冷却することからなる。
【0033】
そのため、本発明は、供給装置1とNMRプローブ3とを動作させるときに発生するすべての冷却ガスの、これまでは用いられなかった冷却力を利用するものである。
【0034】
発明者は、容易に利用可能な次の2つの冷却ガス源を現行の設備において指摘することができた。
【0035】
1)供給装置1の動作時に、チャンバ6’”内のMASガスの冷却と、これらのチャンバの外部への熱移送とによって、主要リザーバ4内で常に液体窒素5の沸騰が発生する。この極低温ガス(窒素)は、一般に「boil−off(ボイルオフガス)」と呼ばれる。このガスは、これらの供給装置の現行構造では使用されておらず、装置の上部に通じる管から単に屋外に放出されている。
【0036】
2)LTMAS方式のNMRプローブでは、冷却ガスすなわち「VT」ガス、「軸受け」ガス、および「駆動」ガスは、ステータ3”から出ると、プローブ3の外部槽2’の内部容積内で混合される。それによって生じる冷却ガス混合物は、プローブの基部ハウジングから通じている排出管によりプローブの外に向かって大気中に放出される。プローブの外部槽2’を構成する槽は、適切に断熱されているので、その結果として排気ガスは低温のままである。現在、空気中に単に排出されているガスの出力温度は、恒久的な動作時には120Kから140Kでありうる。
【0037】
図2図4に示すように、本発明によれば、内部真空によって断熱されたハウジング11’に固定されているプローブ3に向かって、MASガスの移送管12’が設けられている。有利には、カバーとリザーバとの間にシールパッキンが設けられ、カバーは、フランジにより液体窒素リザーバに保持される。
【0038】
好適な実施形態では、本発明は、「VT」ガス、「軸受け」ガス、および「駆動」ガスのための3つの予備冷却装置8、8’、8”を設けている。
【0039】
ガスの予備冷却装置を形成する各々の追加熱交換器は、いわゆる「チューブインチューブ」構成で螺旋状の形状を呈する向流型の熱交換器である。内側管10(たとえば8mm)内では、冷却すべきガスが上から下に流れる(図1および図3)。内側管10と外側管10’(たとえば16mm)との間に含まれる環状の断面では、予備冷却用の冷却ガスが下から上に流れる。たとえば、「VT」ガスは室温で入り、予備冷却用の冷却ガスは、図3の蛇管の上部で空気中に排出される。予備冷却されたVTガスは、蛇管11の下部に排出されてから、熱交換器6内を通過する。「VT」ガス、「軸受け」ガス、および「駆動」ガスのための3つの予備冷却装置8、8’、8”は、ハウジング11’内に収容される。
【0040】
図3では、G1は、室温のVTガス流を示し、G1’は、予備冷却されたVTガス流を、G2は、リザーバ4の上部4’から排出されたガス蒸気流5’を、G2’は、周囲に漏れ出すガス蒸気流5’を示している。
【0041】
予備冷却装置を形成する3個の追加熱交換器の入力は、上記の2つの冷却ガス源により供給される。より詳しくは、
1)「VT」ガスは、熱交換器6、6’、6”が含浸されている液体窒素5のリザーバ4内で発生する「ボイルオフ」冷却ガス(窒素)5’により予備冷却される。この冷却ガス5’は、予備冷却用の外側管10’の入力13を通過する。チャンバ6’”の圧力制御手段が作動されると、すなわち、チャンバの圧力が一定になるとすぐに、チャンバを中心としてリザーバ4内で沸騰が生じ、発生した冷却ガス(ガス蒸気5’)は、追加熱交換器8の外側管10’から形成される循環路を通過する。
【0042】
2)熱交換器6、6’、6”の出力における冷却ガスは、移送管12’によりプローブに向けて配向され、この移送管は、プローブ3構造の底部内に収容された、断熱された内部移送ライン14に連結されている。ガスは、ステータ3”の付近で内側の管から出る。「軸受け」ガスは、支持を形成し、「駆動」ガスはロータの駆動を実施し、「VT」ガスは、試料管3’の中央部分を冷却する。
【0043】
3)NMRプローブ3は、真空の二重壁2’(Dewar)により断熱される。3つのガスは、ステータ3”から出ることによって、プローブ3の内部容積内で混ざり合い、プローブ3の構造の底部を閉じてハウジング外部に通じている排出管15から、混合状態で排出される(図4)。
【0044】
NMR測定プローブの排出管15内に挿入された、真空断熱される可撓性の戻し管装置12は、たとえばナットとOリングとによって固定される。戻し管装置の他端は、液体窒素5のリザーバ4のカバー4”の下に固定されたアダプタ16に嵌合可能である。この他端は、たとえばナットおよびシールパッキンによって所定の位置に保持される。
【0045】
アダプタ16は、2個のプラスチック管によって2個の予備冷却装置8’、8”の2個の入力に向けて冷却ガス(プローブ3から排出されたガスの混合物)を分配する。
【0046】
4)各チャンバ6’”の熱交換面は、断熱されていない上部であり、チャンバの外部に向けて、すなわちリザーバ4の液体窒素5に向けて発熱量を移送する役割を果たす。各チャンバ6’”の熱交換面積は、予備冷却を行わないオリジナルバージョンに比べて約50%減らすことができた。こうした面積の減少は、各チャンバに排出すべき発熱量がMASガスの予備冷却によって一段と少なくされたことから可能になったものである。
【0047】
各予備冷却装置8、8’、8”に対してそれぞれ行われる冷却源の特別な割り当て(「ボイルオフ」ガス5’と、プローブ3により排出されたガス混合気9)は、設備4の適正な動作にとっては非常に重要である。
【0048】
そのため、既に述べたように、また、特に図1図2図4、および図5に示したように、プローブ3から送られる冷却ガス9は、「軸受け」ガスと「駆動」ガスとを予備冷却するために用いられる。プローブ3から出されるこの冷却ガス(「排気」ガス)9は、実際には、ステータ3”から排出されるすべての冷却ガス(VT、軸受け、および駆動ガス)の混合気によって生じるガスである。
【0049】
VTガスは、(アセンブリ6/8の位置で)リザーバLn(参照符号4)のいわゆる「ボイルオフ」ガス5’によってのみ予備冷却される。こうしたリザーバLnの「ボイルオフ」ガスは常時発生するものであり、このガス流は、液体窒素内に散逸される全体の発熱量によって形成される。これは、リザーバLn4の熱損失と、熱交換器6、6’、6”を収容する各チャンバ6’”によって散逸される発熱量との和である(各チャンバによって発散される発熱量は、このチャンバの内部圧力によってのみ決まる)。
【0050】
こうした特別な割り当ては、驚くべきことに、回転に関して、また、場合によっては、試料を組み込んだロータ3’の支持に関して、制御されない変形に関する問題を回避するという長所を有する。
【0051】
というのも、レベルをほぼ一定に保持するためにリザーバ4に周期的に液体窒素を充填する場合、リザーバの内部圧力が著しく増加するからである。
【0052】
こうした状況で、駆動ガスと軸受けガスとを予備冷却するために、必要に応じてガス9と混合してボイルオフガス5’を使用しなければならない場合、その結果として、プローブ3内の上流側において駆動ガスと軸受けガスとの圧力妨害が生じることが考えられる。その場合、これらの変動がロータ3’の回転速度を変動させるので、このことからロータ制御が難しくなることもある。しかも、プローブ3から排出される冷却ガス9は、いっそう高温にあり(約120Kから140K)、それによって、液体窒素の消費量とリザーバ4の「ボイルオフ」ガスとが増えてしまう。
【0053】
予備冷却装置8、8’、8”の主要循環路10内でガスがまったく流れない場合、あるいは当該ガスの流量が少ない場合、二次循環路10’内の冷却ガスの流量を停止することが推奨される。その理由は、主要循環路10のガスの部分的な液化が発生する可能性があるからである。そのため、圧力1バールから3バール(0.1MPaから0.3MPa)の駆動ガスまたは軸受けガスを、ボイルオフガス(推定温度約80K)の予備冷却に使用することが必要な場合、これらのガスが部分的に液化する可能性がある。ところで、これによって、ロータ3’の適正な動作が著しく損なわれる。その理由は、軸受けガスと駆動ガスは、液化窒素ガスの液滴を絶対に含んでいてはならないからである。
【0054】
さらに、試料の挿入または取り出し段階の際、ロータ3’は停止状態にあり、プローブ3内のガス流量全体はゼロである。その結果、軸受けガス用の熱交換器6’および駆動ガス用の熱交換器6”の二次的な流量も同様にゼロであり、予備冷却装置8’、8”に存在する軸受けガスと駆動ガスが液化することがない。それに対して、ボイルオフガス5’が、軸受けガス用の予備冷却装置6’および駆動ガス用の予備冷却装置6”の二次循環路10’で使用されるならば、これらのガスが実際に液化される可能性がある。したがって、本発明による構成では、試料を備えたロータ3が場合によっては回転するという問題が回避される。
【0055】
さらに、特にVTガスのための予備冷却熱交換器8の場合、主要ガスの流量が停止されると、ボイルオフガス5’が常に二次循環路10’で流れる。しかしながら、この予備冷却装置8ではVTガスの部分的な液化が確認されることは決してない。なぜなら、その場合、VTガスの圧力は低く(P<<0.5バール(0.05MPa))、その一方で、ボイルオフガスの温度は80Kまたはそれ以上であるからである。また、たとえ液化が発生するとしても、それによって、プローブ3の適正な機能に対して特定の問題が発生することはない。なぜなら、VTガスは回転に対しても試料の支持に対しても影響を及ぼさないからである。
【0056】
本発明による特別な構成によって、プローブ3に向かって送られるガスの量および特徴を保証しながら、液化窒素の消費量を著しく低減することが可能になる。
【0057】
発明者は、試作品で1時間当たり6.5l/LN2の消費量を測定することができた(8KHzで回転する3.2mmのロータの場合)。このようにして、以上に説明した本発明の特徴を備えない知られている同等供給装置で測定された消費量に比べて、約50%以上の消費量の低減が得られた。
【0058】
液体窒素の消費の減少によって、主要リザーバ内の液体窒素レベルを一定に保持するために使用される補助的な液体窒素タンクの取扱数が低減される。
【0059】
そのため、本発明によれば、毎日実施しなければならないタンクの所定の場所への配置操作および接続操作の回数が少なくなる。これにより、ロータの中庸の回転速度すなわち3.2mmのロータを備えたプローブで10KHz未満の回転速度では、200リットルのLN2タンクが1つあれば、24時間の連続動作を実施するのに十分である。
【0060】
本発明は、また、試料(ロータ3’)の冷却(VT)、支持(BEARING)および回転(DRIVE)を行う冷却ガスがプローブ3に供給される、特にLTMASプローブタイプのRMN測定設備2を目的とし、この設備2は、それぞれ対応する供給管を介してこれらの冷却ガスを送る冷却ガス供給装置7、7’、7”を含み、および/または、これらの冷却ガス供給装置に流体接続されている(図4および図5)。
【0061】
この設備2は、供給装置が、上記のような供給装置1であることを特徴とする。
【0062】
前述のように、有利には、設備2は、プローブ3から排出されるもしくは漏れ出すガス9を1つまたは複数の当該追加熱交換器8’、8”に向けて送るための断熱かつ好適には可撓性の移送管12を含み、この移送管は、液体ガス5のリザーバ4にプローブ3の排出管15を接続している。
【0063】
もちろん、本発明は、添付図面に示した上記の実施形態に制限されるものではない。特に各種部材の構成の観点から、あるいは技術的同等物の代替によって、本発明の保護範囲を逸脱することなく様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 冷却ガス供給装置
3 プローブ
3’ 試料
4 リザーバ
5 液体ガス
5’ ガス蒸気
6、6’、6” 熱交換器
8、8’、8” 追加熱交換器
12 移送管
15 排出管
図1
図2
図3
図4
図5