(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、環境試験装置を用いて、前記したパワーデバイスのような製品の耐久性を試験する場合、より高い品質性を確保するべく、複数の温度条件を用意して実施する場合がある。一般的には、3パターンの温度条件が用意される。具体的な温度条件としては、例えば以下に示す通りである。
【0007】
(1)低温環境:マイナス摂氏40度、高温環境:摂氏230度
(2)低温環境:マイナス摂氏40度、高温環境:摂氏250度
(3)低温環境:マイナス摂氏40度、高温環境:摂氏280度
【0008】
そして、各温度条件ごとに試料体を用意し、個々に試験が実施される。
そのため、研究室等において環境試験装置が1台しか備え付けられていない場合、試験条件の数だけ時間を要し、非効率となっていた。また、試験時間の短縮化を図るべく、試験条件の数だけ環境試験装置を用意することが考えられるが、環境試験装置が設置される研究所等では、スペース自体がそれ程広くはないため、多数の環境試験装置を設置すること自体困難な場合がある。また、たとえ試験条件の数だけ環境試験装置が設置できても、消費電力が嵩み、ランニングコストの増加に繋がる。
【0009】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、省スペース化を図り、さらに消費電力の抑制と、試験時間の短縮化が可能な環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は、
装置本体を有し、当該装置本体の内部に、所望の試験環境が形成される複数の独立した試験室
があり、試験室ごとに、あるいは、試験室を所定のグループに区分し、試験室ごとに又はグループごとに設けられた空調室を有し、各空調室には、個々に蒸発器が設置されていて
全体として複数の蒸発器があり、当該各蒸発器は、少なくとも圧縮機と凝縮器が共通する冷凍回路上に配されており、
当該冷凍回路の冷却能力の最大容量は前記複数の独立した試験室全体の容量に対して不十分であることを特徴とする環境試験装置である。
【0011】
本発明の環境試験装置は、複数の独立した試験室を有しているため、この装置1台で、同時に複数の試料体の耐久性の試験を実施することができる。つまり、本発明では、複数の試験条件があっても、効率良く環境試験を実施することができる。その結果、時間の短縮化を図ることができる。
【0012】
また、本発明では、試験室ごと、あるいは、試験室を所定のグループに区分したグループごとに空調室が設けられており、その空調室のそれぞれには、蒸発器が設けられている。そして、これらの蒸発器は、少なくとも圧縮機と凝縮器が共通する冷凍回路上に配されている。つまり、本発明では、蒸発器が複数あるだけであり、冷凍回路自体は1つである。かかる構成により、本発明では、装置全体が過大とならない。その結果、本発明の環境試験装置は、複数の環境試験装置を設置する場合のように、広い設置スペースを要することがなく、省スペース化を図ることができる。また同時に、冷凍回路を一本化することにより、電力消費が抑えられ、ランニングコストの抑制を図ることができる。
【0013】
請求項
2に記載の発明は、各空調室は、前記蒸発器が配された低温室と、加熱手段が配された高温室を有し、試験室は、低温環境と高温環境を形成することが可能であり、低温環境は低温室で生成された低温気体を導入して形成され、高温環境は高温室で生成された高温気体を導入して形成されるものであり、いずれかの試験室が低温環境に制御されることを1つの条件として、他の少なくとも1つの試験室を高温環境に制御することを可能にした機能が備えられていることを特徴とする請求項
1に記載の環境試験装置である。
【0014】
また同様の知見に基づいて提案される請求項
3に記載の発明は、各空調室は、1つの空間であり、当該空間内に前記蒸発器と加熱手段がそれぞれ配されており、試験室は、低温環境と高温環境を形成することが可能であり、低温環境は主に蒸発器によって生成された低温気体を導入して形成され、高温環境は主に加熱手段によって生成された高温気体を導入して形成されるものであり、いずれかの試験室が低温環境に制御されることを1つの条件として、他の少なくとも1つの試験室を高温環境に制御することを可能にした機能が備えられていることを特徴とする請求項
1に記載の環境試験装置である。
【0015】
請求項
2又は3に記載の発明は、いずれにおいても、いずれかの試験室を低温環境に制御する場合に、他の少なくとも1つの試験室を高温環境に制御する機能が備えられているため、冷凍回路全体の冷凍能力の容量を抑えた設計にすることができる。つまり、全ての蒸発器を一気に稼働させる制御を意図的に避けることができるため、例えば3台の蒸発器が設けられていたとしても、その3台の蒸発器を通常の能力で稼働させるための冷凍能力を具備させておく必要がない。その結果、設置スペースのさらなる省スペース化に加え、導入コストの抑制も図ることが可能となる。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、各試験室は、高さ方向の異なる位置に並べられていることを特徴とする請求項
1〜3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0017】
本発明の環境試験装置は、複数の試験室を高さ方向に並べた構成となっているため、横方向(幅方向)の大きさは、1つの試験室しか持たない装置と同程度である。すなわち、本発明の環境試験装置によれば、複数の試験室を備えているにも関わらず、従来のものと幅方向の大きさが同程度であるため、より効果的に設置スペースの省スペース化を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の環境試験装置は、複数の独立した試験室を備え、その各試験室ごと、あるいは、試験室を所定のグループに区分し、そのグループごとに、空調室を設けたため、省スペース化を図りつつも、消費電力の抑制及び試験時間の短縮化を図ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、冷熱衝撃試験装置であり、電子部品や電子機器等の試料体を載置する試験室5を有し、その試料体が配された試験室5に対して、熱風や冷風を所定のサイクルで送って、当該試料体に熱ストレスを与える(冷熱衝撃試験)といった基本的機能を有している。そして、本実施形態では、1つの装置によって異なる条件の冷熱衝撃試験を同時に行えるようにするべく、独立した複数(本実施形態では3つ)の試験室5a〜5cが備えられている。
【0021】
すなわち、本実施形態の環境試験装置1は、
図1に示すように、直方体状の装置本体4を有しており、その装置本体4の内部に3つの独立した試験室5a〜5cが設けられている。そして、これらの試験室5a〜5cのそれぞれには、各室内の雰囲気温度をそれぞれ検知できるように、試験室側温度センサ34が備えられている(
図2)。なお、装置本体4の概ねの大きさは、例えば、高さが1.8〜2.3m程度、幅が1.0〜1.2m程度、奥行きが1.3〜1.5m程度である。
【0022】
また、装置本体4は、
図2に示すように、その内部に、試験室5a〜5cごとに対応した空調室7(7a〜7c)が設けられている。すなわち、本実施形態では、3つの空調室7a〜7cがあり、各試験室5a〜5c内の環境を独立的に制御できる構成となっている。そして、各空調室7a〜7cはいずれも、高温室12と低温室13とで構成されている。なお、装置本体4には、その正面側に、各試験室5a〜5cと外部を連通する装置開口11a〜11cが設けられており、装置本体4に対して開閉自在な3つの扉6a〜6cによって、当該装置開口11a〜11cが開閉可能な構造となっている。
【0023】
高温室12は、試験室5内の雰囲気温度を高温域(例えば摂氏200〜300度)に調整するための部分である。すなわち、高温室12は、当該室内の気体を予め設定した高温側の設定温度になるように加熱し、その加熱した気体を試験室5との間で循環させることで試験室5内を昇温させる。具体的には、高温室12には、主たる構成として、気体を加熱する加熱ヒータ(加熱手段)22と、気体を循環させる高温側送風機23と、高温室12内の雰囲気温度を検知する高温側温度センサ45が備えられている。
【0024】
さらに、高温室12と試験室5との間には、高温側往き側口20と、高温側戻り側口21が設けられており、室内の気体は、高温側往き側口20と高温側戻り側口21とを介して、室間(高温室12と試験室5との間)を循環する。なお、高温側往き側口20と高温側戻り側口21のそれぞれには、その開口における気体の通過を制限する通気ダンパ38、39が設けられている。
【0025】
また、本実施形態では、高温室12において、試験室5内の雰囲気温度を常温域(以下、RT(room temperature)という)に調整するための機能が付与されている。すなわち、高温室12には、室内に外気を取り込むための給気部40と、室内の気体を外部に排気するための排気部41が設けられている。給気部40は、高温室12と連通した給気用開口42と、外気を室内に送り込む給気用送風機43と、給気用開口42における気体の流通を制限する給気側ダンパ44とで構成されている。一方、排気部41は、高温室12と連通した排気用開口46と、排気用開口46における気体の流通を制限する排気側ダンパ49で構成されている。
【0026】
低温室13は、試験室5内の雰囲気温度を低温域(例えば、摂氏マイナス20〜50度)に調整するための部分である。すなわち、低温室13は、当該室内の気体を予め設定した低温側の設定温度になるように冷却し、その冷却した気体を試験室5との間で循環させることで試験室5内を降温させる。具体的には、低温室13には、冷却機能を発揮させるべく、主たる構成として、気体を冷却する蒸発器27と、気体を循環させる低温側送風機28と、低温室13内の雰囲気温度を検知する低温側温度センサ29が備えられている。
なお、蒸発器27は、圧縮機と凝縮器と膨張弁と共に構成される冷凍回路の一部である。
【0027】
さらに、低温室13と試験室5との間には、低温側往き側口25と、低温側戻り側口26が設けられており、室内の気体は、当該低温側往き側口25と低温側戻り側口26とを介して、室間(低温室13と試験室5との間)を循環する。なお、低温側往き側口25と低温側戻り側口26のそれぞれには、その開口における気体の通過を制限する通気ダンパ47、48が設けられている。
【0028】
ここで、先にも説明したように、複数の試験室を設け、単純に、それぞれの試験室に個別の冷凍回路を備え付けた場合、環境試験装置自体が過度に大型化してしまう。そのため、環境試験装置に要する設置スペースの省スペース化が困難となっていた。また、複数の冷凍回路を個別に備え付けた場合、同時に個々の冷凍回路を稼働しなければならない状況下においては、消費エネルギーが無駄に嵩むため、ランニングコストの増大を招いてしまう懸念があった。
【0029】
そこで、そのような問題を解消するべく、本実施形態では、以下に示す特徴的構成が備えられている。すなわち、環境試験装置1は、3つの試験室5a〜5cに設置されたそれぞれの蒸発器27が、1つの冷凍回路15上に配された構成となっている。なお、以下においては、便宜上、各試験室5a〜5cに対応する各蒸発器を、蒸発器27a〜27cと符番して説明する。
【0030】
詳細に説明すると、各蒸発器27a〜27cは、1つの冷凍回路15上において、並列的に設けられている。すなわち、冷凍回路15は、主流路35と、当該主流路35から並列的に分岐した3つの分岐路37a〜37cを有し、各分岐路37a〜37cが対応する低温室13を通過する回路構成となっている。そして、低温室13を通過したそれぞれの分岐路37a〜37cに、蒸発器27a〜27cが配されている。
【0031】
具体的には、1つの試験室5aに隣接する低温室13には、1つの分岐路37aが通過しており、その分岐路37a上に1器の蒸発器27aが配されている。また、別の1つの試験室5bに隣接する低温室13には、別の1つの分岐路37bが通過しており、その分岐路37b上に別の1器の蒸発器27bが配されている。さらに別の1つの試験室5cに隣接する低温室13には、別の1つの分岐路37cが通過しており、その分岐路37c上に別の1器の蒸発器27cが配されている。
【0032】
また、各分岐路37a〜37c上であって、蒸発器27a〜27cの前後においては、各種弁が配されている。具体的には、各分岐路37a〜37c上には、蒸発器27a〜27cを基準として、その上流側に、電磁弁30及び膨張弁31が配され、下流側に逆止弁32が配されている。なお、本実施形態では、電磁弁30の方が、膨張弁31よりも上流側に設けられている。
【0033】
したがって、本実施形態では、各分岐路37a〜37cに設けた電磁弁30によって、各蒸発器27a〜27cへの冷媒の流入が制限され、また逆止弁32によって、各蒸発器27a〜27cを通過した冷媒が逆流することを防止できる構成となっている。
【0034】
また、本実施形態では、設置スペースのさらなる省スペース化を図るべく、冷凍回路15における冷却能力の最大容量が、低温室ごとに個別に冷凍回路を設置する場合の1つの回路を基準に、概ね2倍程度の冷却能力となっている。つまり、本実施形態では、冷凍回路15上に3器の蒸発器27a〜27cが設けられているが、従来と同等の冷却能力を発揮しようとした場合、同時に稼働できる蒸発器は、3器の蒸発器27a〜27cのうちの2器分である。
【0035】
ただし、本実施形態では、冷凍回路15において発揮できる冷却能力の最大容量を制限しただけであり、3器の蒸発器27a〜27cを同時に制御できないようにしたわけではない。つまり、3器の蒸発器27a〜27cを同時に稼働する場合は、いずれか2器の蒸発器27a〜27cを同時に稼働する場合に比べて、冷却能力が幾分低下するといった状態になるだけである。
【0036】
次に、本実施形態の環境試験装置1の環境試験時における基本動作について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、前記したように、冷熱衝撃試験装置であり、各試験室5a〜5cでは、公知のそれと同様の冷熱衝撃試験(以下、単独冷熱試験という)の実施が可能である。
そこで、以下においては、1つの試験室5aに注目し、低温さらし試験、高温さらし試験を所定回数繰り返す一連のサイクル動作について説明する。
なお、以下の説明では、低温さらし試験、高温さらし試験の順番で一連のサイクルを繰り返すものとする。
【0037】
試験室5aにおいて単独冷熱試験が開始されると、まず1サイクル目の低温さらし試験を開始する。すなわち、環境試験装置1では、最初に、全てのダンパ38、39、47、48が閉鎖状態であることを確認したことを条件に、低温室13の蒸発器27a及び低温側送風機28を駆動し、低温室13内を予め設定された目標設定温度(例えば、摂氏マイナス40度)まで冷却する(予冷動作)。その後、低温室13内の雰囲気温度が、目標設定温度に達すれば、通気ダンパ47、48を開放状態に制御し、低温さらし試験が開始される。
【0038】
低温さらし試験では、予冷動作後、低温室13側から試験室5a側に低温気体が送り込まれる。低温気体は、低温側往き側口25を介して試験室5a内に導入される。そして、試験室5a内に流入した低温気体は、低温側戻り側口26を介して、再び低温室13側に戻る。すなわち、低温室13内で生成された冷風は、低温室13と試験室5aとの間で循環する。これにより、試験室5a内は、低温室13から送り込まれる冷風によって急激に冷却され、目標温度まで降温する。そしてこれに伴い、試験室5aに載置された試料体に低温の熱衝撃が与えられる。こうして、低温さらし試験が、予め設定された所定時間行われる。
【0039】
低温さらし試験が開始されてから所定時間が経過すると、蒸発器27a及び低温側送風機28を停止して低温さらし試験を終了し、同サイクルの高温さらし試験を開始する。
【0040】
すなわち、環境試験装置1では、低温さらし試験が終了すると、低温室13と試験室5aとの間に設けられた通気ダンパ47、48を閉鎖状態に制御する。そして同時に、高温さらし試験を開始する。高温さらし試験が開始されると、まず高温室12と試験室5aとの間に設けられた通気ダンパ38、39を開放状態に制御し、高温室12内で生成された高温気体を、試験室5a側に送り込む。
【0041】
ここで、高温さらし試験を実行する場合、当該試験動作を開始する以前に、高温室12内を予め加熱しておく予熱動作が実施される。すなわち、低温さらし試験の開始と同時、あるいは、タイミングをずらして、加熱ヒータ22及び高温側送風機23を駆動し、高温室12内を予め設定された目標温度(例えば摂氏280度)まで加熱する。そして、このようにして高温室12内を加熱した状態で、低温さらし試験の終了を待機する。
【0042】
したがって、低温さらし試験が終了すれば、環境試験装置1は、高温室12と試験室5aとの間の通気ダンパ47、48を開放状態に制御し、高温さらし試験を開始する。
【0043】
高温さらし試験では、高温室12側から試験室5a側に高温気体が送り込まれる。高温気体は、高温側往き側口20を介して試験室5a内に導入される。そして、試験室5a内に流入した高温気体は、高温側戻り側口21を介して、再び高温室12側に戻る。すなわち、高温室12内で生成された熱風は、高温室12と試験室5aとの間で循環する。これにより、試験室5a内は、高温室12から送り込まれる熱風によって急激に加熱され、目標温度まで昇温する。そしてこれに伴い、試験室5aに載置された試料体に高温の熱衝撃が与えられる。こうして、高温さらし試験が、予め設定された所定時間行われる。
【0044】
このような流れで、1サイクル目の試験動作が終了すると、次サイクルに突入し、前記同様に、低温さらし試験と高温さらし試験が実施される。そして、この単独冷熱試験は、予め設定された所定回数のサイクルに至るまで繰り返し行われる。所定回数のサイクルが終了すると、低温さらし試験及び高温さらし試験に関わる制御を全て停止し、試験室5a内を常温雰囲気にさらす。すなわち、給気側ダンパ44及び排気側ダンパ49を開方向に制御すると共に、給気用送風機43を駆動する。すると、試験室5a内の気体が外気と置換される。そして、試験室5aの雰囲気温度がRTに至れば、あるいは、RT近傍に至れば、給気側ダンパ44及び排気側ダンパ49を閉方向に制御すると共に、給気用送風機43を停止する。
なお、試験室5b、5cにおいても、同様のサイクル動作の実施が可能である。
【0045】
次に、本実施形態の環境試験装置1の特徴的機能について説明する。
本実施形態では、上記したように、3つの試験室5a〜5cを備え、それぞれの試験室5a〜5cに個別の蒸発器27a〜27cを設置している。また、各蒸発器27a〜27cは、1つの冷凍回路15上に設けられ、その冷却能力の最大容量が、従来の個別の冷凍回路の冷却能力を基準に、概ね2倍程度の冷却能力となっている。そのため、3つの試験室5a〜5cにおいて、同時に低温さらし試験が実施された場合、冷却能力が不十分となり、試験精度に幾分影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、3つの試験室5a〜5cに試料体を載置して、同時に冷熱衝撃試験を実施する場合、3つの試験室5a〜5cが低温さらし試験を同時に実施することのない機能が備えられている。すなわち、3つの試験室5a〜5cにおいて同時に冷熱衝撃試験が実施される場合は、少なくとも1つの試験室のサイクル動作と、他の試験室のサイクル動作とが逆位相の関係となるような制御(以下、逆位相サイクル制御という)を実行する。
【0047】
具体的には、逆位相サイクル制御によって、いずれか2つの試験室におけるサイクル動作が同位相に制御され、残りの1つの試験室におけるサイクル動作が前記サイクル動作の逆位相となるように制御される。本実施形態では、試験室5a、5bのサイクル動作が同位相で制御され、残りの試験室5cのサイクル動作が前記試験室5a、5bの逆位相で制御される。例えば、かかる制御が実施されると、試験室5a、5bが低温さらし試験を行っている間は、残りの試験室5cが高温さらし試験を行う関係となる。
【0048】
このような条件の下、逆位相サイクル制御が実施されると、
図3の太線に示すように、まず、試験室5cにおいて、1サイクル目の低温さらし試験(目標温度:摂氏マイナス40度)が開始される。そして、一定時間、試験室5cのみで低温さらし試験が行われる。試験室5cにおける低温さらし試験が開始されてから一定時間が経過すると、残りの試験室5a、5bにおいて、
図3の細線及び二点鎖線に示すように、1サイクル目の低温さらし試験(目標温度:摂氏マイナス40度)が開始される。すなわち、残り2つの試験室5a、5bの双方では、試験室5cにおける低温さらし試験から一定時間ずらすようにして、1サイクル目の低温さらし試験が開始される。このように、逆位相サイクル制御では、先行的に、1つの試験室5cで低温さらし試験を開始し、その試験室5cにおける低温さらし試験の終了のタイミングに合わせるように、残り2つの試験室5a、5bにおける低温さらし試験を開始する。
【0049】
2つの試験室5a、5bで同時に低温さらし試験が開始されると、それらよりも先行的に低温さらし試験が実施された試験室5cでは、1サイクル目の高温さらし試験(目標温度:摂氏250度)が開始される。そして、一定時間、試験室5c側では、高温さらし試験が行われる。一方で、2つの試験室5a、5bでは、低温さらし試験が実施されている。すなわち、このタイミングにおいては、試験室5cにおける1サイクル目の高温さらし試験と、前記した2つの試験室5a、5bにおける1サイクル目の低温さらし試験が、並行して実施される。このように、逆位相サイクル制御では、2つの試験室5a、5bにおいて同時に低温さらし試験が開始されると、先行的に低温さらし試験を実施した試験室5cにおいては、高温さらし試験を開始する。
【0050】
そして、試験室5cでは、1サイクル目の高温さらし試験が開始されてから一定時間が経過すると、当該高温さらし試験を終了して2サイクル目の低温さらし試験を開始する。また同時に、試験室5a、5bでは、1サイクル目の低温さらし試験が終了するため、当該低温さらし試験を終了して1サイクル目の高温さらし試験(試験室5aの目標温度:摂氏280度、試験室5bの目標温度:摂氏230度)を開始する。すなわち、試験室5cにおける2サイクル目の低温さらし試験と、試験室5a、5bにおける1サイクル目の高温さらし試験は、同一のタイミングで実施される。
【0051】
こうして、各試験室5a〜5cにおいて、所定回数のサイクルが実施されると、試験室5a〜5cにおいて低温さらし試験又は高温さらし試験に関わる制御を停止する。本実施形態では、各サイクルの後半の動作が高温さらし試験であるため、先行的に低温さらし試験を実施した試験室5cにおいては、最終サイクル(本実施形態では2サイクル)の高温さらし試験が終了すると、試験に関わる制御を停止する。そして同時に、試験室5c内を常温雰囲気にさらす常温さらし動作を実施する。
【0052】
常温さらし動作が開始されると、試験室5cでは、高温室12と試験室5aとの間に設けられた通気ダンパ38、39を開放状態にしたまま、給気側ダンパ44及び排気側ダンパ49を開放状態に制御する。これにより、給気用開口42及び排気用開口46とが外部と連通状態となる。また、常温さらし動作では、給気用送風機43が駆動される。そのため、試験室5c内には、給気用開口42を介して外気が導入される。また同時に、試験室5c内の高温気体が、排気用開口46を介して外部に押し出される。こうして、常温さらし動作によって、試験室5c内の高温気体が外気に完全に置換され、試験室5cの雰囲気温度がRTに至れば、あるいは、RT近傍に至れば、当該動作を終了する。
【0053】
また、試験室5aにおける常温さらし動作の最中、あるいは、常温さらし動作の終了後に、残りの2つの試験室5a、5bにおける最終サイクル(本実施形態では2サイクル)の高温さらし試験が終了すると、前記試験室5c同様、残りの2つの試験室5a、5bにおいて、当該高温さらし試験に関わる制御を停止する。すなわち、試験室5a、5bにおいて、給気側ダンパ44及び排気側ダンパ49を開放状態に制御し、さらに給気用送風機43を駆動する。これにより、各試験室5a、5bは、内部の高温気体が外気に置換される。その結果、試験室5cの雰囲気温度がRTに至れば、あるいは、RT近傍に至れば、常温さらし動作を終了する。
【0054】
なお、上記説明では、試験室5a、5bにおけるサイクル動作を同期させた制御を示したが、試験室5a、5c、あるいは、試験室5b、5cにおけるサイクル動作を同期させた制御を行っても同様の作用効果を期待できる。
また、試験室5a〜5cにおいて実施される一連のサイクルは、上記したように、所定回数繰り返しても良いし、1回のみであっても構わない。
【0055】
このように、本実施形態の環境試験装置1では、複数の独立した試験室5を備え、その各試験室5ごとに、空調室7を設けたため、省スペース化を図りつつも、消費電力の抑制及び試験時間の短縮化を図ることが可能である。また、本実施形態では、冷熱衝撃試験において逆位相サイクル制御を実施する機能が備えられているため、意図的に、2つの試験室5a、5bのサイクル動作を同位相で実施しつつ、残りの1つの試験室5cのサイクル動作を逆位相で実施することができる。そのため、冷凍回路15における冷却能力の最大容量が、試験室5a〜5cの容量(冷却対象となる試験室の数や大きさ)に対して十分でない場合であっても、低温さらし試験において、従来と同程度の冷却能力を発揮することができる。その結果、本実施形態では、蒸発器ごとに冷凍回路を備えた環境試験装置と同等の試験精度を期待することができる。
【0056】
上記実施形態では、各試験室5a〜5cのそれぞれに低温室13を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、試験室5a〜5cを、いくつかのグループに分割し、そのグループごとに低温室13を設けた構成であっても構わない。具体的には、
図4に示すように、2つのグループに分割した環境試験装置50
が挙げられる。また関連する態様として図5に示すように、1つのグループにまとめた環境試験装置51が挙げられる。
【0057】
環境試験装置50は、2つの試験室5a、5bが共有する低温室52を1つ設け、試験室5cに別の低温室53を設けた構成となっている。そして、この環境試験装置50において逆位相サイクル制御を行う場合は、1つの低温室52を共有する試験室5a、5bのサイクル動作を同位相で制御し、試験室5cのサイクル動作を逆位相で制御することが好適である。仮に、試験室5a、5cのサイクル動作を同位相で制御する場合や、試験室5b、5cのサイクル動作を同位相で制御する場合は、各試験室5a〜5cに対応した通気ダンパ47、48の開閉状態の切り換えにより、前記同様の逆位相サイクル制御が可能となる。
【0058】
一方、環境試験装置
(関連発明の態様)51は、3つの試験室5a〜5cが共有する低温室55を1つだけ設けた構成となっている。そのため、この環境試験装置51において逆位相サイクル制御を行う場合は、各試験室5a〜5cに対応した通気ダンパ47、48の開閉状態の切り換えにより可能となる。
【0059】
上記実施形態では、空調室7として高温室12と低温室13を個別に設け、冷熱衝撃試験装置として好適な環境試験装置1を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、加熱ヒータ22と蒸発器27が1つの空間に設置された空調室61を有し、その空調室61によって、試験室5内の雰囲気温度を調整可能な温度サイクル試験装置(あるいは温湿度サイクル試験装置)として好適な環境試験装置60であっても構わない。例えば、この環境試験装置60が温度サイクル試験装置である場合において、逆位相サイクル制御を行った場合は以下のような動作を実施する。
【0060】
すなわち、環境試験装置60では、各試験室5a〜5cが、それぞれに連通した空調室61から送られた所望の気体によって低温環境や高温環境が形成される。そして、上記実施形態と同様、逆位相サイクル制御によって、3つの試験室5a〜5cが同時に低温環境が形成されないように制御される。
なお、以下においては、低温サイクル動作、高温サイクル動作の順番で所定回数繰り返す一連のサイクル動作を行うものとして説明する。
【0061】
より詳細に説明すると、環境試験装置60では、逆位相サイクル制御が実施されると、
図7の太線に示すように、まず、試験室5cにおいて、1サイクル目の低温サイクル動作が開始される。すなわち、空調室61内の蒸発器27を作動し、当該空調室61内の気体を冷却する。また同時に、空調室61内の送風機63が起動し、空調室61内で生成した低温気体を試験室5c側に送り込む。つまり、空調室61と試験室5cとの間で低温気体を循環させる。これにより、試験室5c内の雰囲気温度が、予め設定された目標温度(例えば摂氏マイナス55度)となるように冷却される(以下、単に冷却制御という)。そして、試験室5c内では、前記目標温度に至れば、一定時間その温度を維持するように制御される。そして、試験室5cでは、前記一定時間が経過すれば、蒸発器27の作動を停止し、1サイクル目の高温サイクル動作が開始される。
【0062】
一方、試験室5cにおいて1サイクル目の低温サイクル動作が開始されてから一定時間が経過すると、残りの試験室5a、5bにおいて、
図7の細線及び二点鎖線に示すように、1サイクル目の低温サイクル動作が開始される(目標温度:摂氏マイナス55度)。すなわち、残り2つの試験室5a、5bの双方では、試験室5cにおける冷却制御から一定時間ずらすようにして、同様の冷却制御が開始される。このように、環境試験装置60においても、先行的に、1つの試験室5cで冷却制御を実施し、その試験室5cにおける低温サイクル動作の終了のタイミングに合わせるように、残りの2つの試験室5a、5bにおける低温サイクル動作を開始する。
【0063】
試験室5cでは、1サイクル目の高温サイクル動作が開始されると、加熱ヒータ22を起動し、空調室61内の気体を加熱する。つまり、空調室61と試験室5cとの間で高温気体を循環させる。これにより、試験室5c内の雰囲気温度が、予め設定された目標温度(例えば摂氏125度)となるように加熱される(以下、単に加熱制御という)。そして、試験室5c内では、前記目標温度に至れば、一定時間その温度を維持するように制御される。
【0064】
そして、試験室5cでは、高温サイクル動作が開始されてから一定時間が経過すれば、加熱ヒータ22の作動を停止し、2サイクル目の低温サイクル動作が開始される。また同時に、試験室5a、5bでは、1サイクル目の低温サイクル動作が終了するため、当該低温サイクル動作を終了して1サイクル目の高温サイクル動作(試験室5aの目標温度:摂氏150度、試験室5bの目標温度:摂氏100度)が開始される。すなわち、試験室5cにおける2サイクル目の低温サイクル動作と、試験室5a、5bにおける1サイクル目の高温サイクル動作は、同一のタイミングで実施される。
【0065】
こうして、各試験室5a〜5cにおいて、所定回数のサイクル動作が実施されると、試験室5a〜5cにおいて低温サイクル動作又は高温サイクル動作に関わる制御を停止する。本実施形態では、各サイクルの後半の動作が高温サイクル動作であるため、先行的に低温サイクル動作を実施した試験室5cにおいては、最終サイクル(本実施形態では2サイクル)の高温サイクル動作が終了すると、試験に関わる制御を停止する。そして同時に、試験室5c内を常温雰囲気にさらす常温さらし動作を実施する。
【0066】
常温さらし動作が開始されると、給気側ダンパ44及び排気側ダンパ49を開放状態に制御する。これにより、給気用開口42及び排気用開口46とが外部と連通状態となる。また、常温さらし動作では、給気用送風機43が駆動される。そのため、試験室5c内には、給気用開口42を介して外気が導入される。また同時に、試験室5c内の高温気体が、排気用開口46を介して外部に押し出される。こうして、常温さらし動作によって、試験室5c内の高温気体が外気に完全に置換され、試験室5cの雰囲気温度がRTに至れば、あるいは、RT近傍に至れば、当該動作を終了する。
【0067】
また、残りの2つの試験室5a、5bについても、試験室5cと同様であり、最終サイクル(本実施形態では2サイクル)の高温サイクル動作が終了すると、試験に関わる制御を停止し、試験室5a、5b内を常温雰囲気にさらす常温さらし動作を実施する。その結果、試験室5a、5bの雰囲気温度がRTに至れば、あるいは、RT近傍に至れば、常温さらし動作を終了する。
なお、試験室5a〜5cにおいて実施される一連のサイクルは、上記実施形態と同様、所定回数繰り返しても良いし、1回のみであっても構わない。
【0068】
このように、環境試験装置60においても、複数の試験室5と空調室61が設けられ、さらに逆位相サイクル制御を備えたため、上記実施形態と同様の作用効果を期待することができる。
なお、この環境試験装置60においては、空調室61と試験室5との間に、ダンパを設けず、常時連通した構成を示したが、ダンパを設け、必要に応じて、そのダンパにより、空調室61と試験室5とを連通させる構成としても構わない。
【0069】
上記実施形態では、低温さらし試験と高温さらし試験を繰り返し実施可能な冷熱衝撃試験装置を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、低温さらし試験と常温さらし試験の実施が可能な冷熱衝撃試験装置であっても構わない。例えば、その環境試験装置65としては、
図8に示す構成が挙げられる。すなわち、環境試験装置65は、空調室7として低温室13のみを有し、高温室12を有さない構成である。また、この環境試験装置65には、常温さらし試験を可能とする給気部40と排気部41が備えられている。
また、同様の構成として、
図4、5に示す環境試験装置50、51から高温室12を省略したものも挙げられる。
【0070】
上記実施形態では、冷凍回路15の各分岐路37a〜37c上であって、蒸発器27a〜27cの上流側に膨張弁31を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、主流路35上であって、分岐路37a〜37cに至る直前に1つの膨張弁31を設けた構成であっても構わない。かかる構成を採用した場合、各分岐路37a〜37c上に設けた電磁弁30の開閉制御で、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
上記実施形態では、冷凍回路15上に3つの蒸発器27a〜27cを設けて、冷凍回路15における冷却能力の最大容量が、空調室ごとに個別の冷凍回路を設置する場合の1つの回路を基準に、概ね2倍程度の冷却能力を備えた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば3倍程度の冷却能力を備えた構成であっても構わない。かかる構成によれば、上記実施形態と同様、設置スペースの省スペース化を図ることができる。また、本構成であっても、消費電力を抑えるように利用すれば、上記実施形態と同様、従来よりも省エネルギーを図ることが可能である。
【0072】
上記実施形態では、冷熱衝撃試験(あるいは温度サイクル試験)において、低温さらし試験(あるいは低温サイクル動作)、高温さらし試験(あるいは高温サイクル動作)の順番で一連のサイクルを繰り返す制御構成を示したが、本発明はこれに限定されず、高温さらし試験(あるいは高温サイクル動作)、低温さらし試験(あるいは低温サイクル動作)の順番で一連のサイクルを繰り返す制御構成を採用しても構わない。
【0073】
またその他、例えば、試験室5cは、高温さらし試験(あるいは高温サイクル動作)、低温さらし試験(あるいは低温サイクル動作)の順番で一連のサイクルを繰り返し、試験室5a、5bは、試験室5cのサイクルと逆の順番、つまり低温さらし試験(あるいは低温サイクル動作)、高温さらし試験(あるいは高温サイクル動作)の順番で一連のサイクルを繰り返す制御を採用しても構わない。
ただし、この制御構成を採用して、逆位相サイクル制御を実施する場合は、上記実施形態のように、いずれかの試験室を他の試験室に先行(半サイクル先行)して、低温さらし試験(あるいは低温サイクル動作)を実施する制御を行わず、全ての試験室の開始タイミングを同時にするか、いずれかの試験室の開始のタイミングをn(n:1以上の自然数)サイクルずらした制御を行うのが望ましい。
【0074】
上記実施形態では、3つの試験室5a〜5cを高さ方向に並べた環境試験装置1を示したが、本発明はこれに限定されず、
図9に示すように、3つの試験室5a〜5cを幅方向に並べた環境試験装置62であっても構わない。
【0075】
上記実施形態では、3つの試験室5a〜5cを備えた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、2つの試験室を備えた構成であったり、4以上の試験室を備えた構成であっても構わない。
【0076】
上記実施形態では、冷熱衝撃試験において、いずれの試験室5a〜5cにおいても、低温さらし試験の目標温度を摂氏マイナス40度に固定した制御を示したが、試験室ごとに目標温度を変えて制御しても構わない。例えば、試験室5a〜5cのそれぞれの目標温度を、摂氏マイナス20度、摂氏マイナス30度、摂氏マイナス40度といった具合である。