特許第5978175号(P5978175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978175
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】植物組織の可溶化方法及び混合酵素製剤
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/00 20060101AFI20160817BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20160817BHJP
   C12N 9/42 20060101ALI20160817BHJP
   C12P 13/02 20060101ALI20160817BHJP
   C12P 13/14 20060101ALI20160817BHJP
   C12P 13/20 20060101ALI20160817BHJP
   C12P 19/14 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C12P1/00 A
   C12N9/16 Z
   C12N9/42
   C12P13/02
   C12P13/14
   C12P13/20
   C12P19/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-142566(P2013-142566)
(22)【出願日】2013年7月8日
(62)【分割の表示】特願2009-123309(P2009-123309)の分割
【原出願日】2009年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-198505(P2013-198505A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2013年7月8日
【審判番号】不服2015-13966(P2015-13966/J1)
【審判請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】594101307
【氏名又は名称】協和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 勲一
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/013560(WO,A1)
【文献】 特開平5−308901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N 9/18,9/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
MEDLINE/CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させる植物組織の可溶化方法であって、
植物組織1gに対し、セルラーゼを0.126〜 126単位、フェルラ酸エステラーゼを0.00006〜0.06単位、及び、タンナーゼを0.002〜2単位作用させることを特徴とする植物組織の可溶化方法。
【請求項2】
植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを含有し、
セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼの配合割合が、セルラーゼ 100質量部に対し、フェルラ酸エステラーゼが20〜30質量部、かつ、タンナーゼが20〜30質量部であることを特徴とする混合酵素製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物組織の可溶化方法及び混合酵素製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物にセルラーゼ等の酵素を作用させて植物組織を可溶化することにより、植物の食味
の改善(例えば渋みや苦みの低減等)や植物繊維の有効利用が図られている(例えば、特
許文献1、特許文献2参照)。
セルラーゼ製剤で植物組織を可溶化する際、植物組織の可溶化の難易は、植物組織の種
類、生育状況等で異なるが、実際には困難な場合が多い。その主な要因は、植物の構成成
分に起因する。
【0003】
セルラーゼ製剤で植物組織の崩壊、可溶化を行う場合、まず、細胞を相互に接着してい
るプロトペクチン、ヘミセルロース等を細胞分離酵素(ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼな
ど)で分解し単細胞化する。その細胞壁の全表面を露出させた後、セルロース等で構成さ
れた細胞壁をセルラーゼ製剤で分解し、内容物を溶出させる方法が基本的な可溶化方法で
ある。この可溶化方法で比較的容易に可溶化できるのは、軟質の植物繊維に限られる。多
くの植物繊維は可溶化しにくい。固い植物組織は、セルラーゼ製剤に対し抵抗性を示す。
その主な理由は、セルロースやヘミセルロースで構成される細胞壁や細胞間物質がプロト
リグニン等の芳香族化合物で包埋されて難分解性化合物になっていて、酵素作用を阻害す
るためである。
【0004】
また、セルラーゼ製剤で木材等のセルロース系原料を糖化する際、リグニン等により酵
素作用が阻害される要因を除去するため、前処理が行われる(例えば、非特許文献1、非
特許文献2参照)。前処理の方法は化学的方法や物理的方法あるいは微生物的方法が利用
されるが、いずれの方法も一長一短があり有効な方法はまだ確立されていない。また前処
理にコストがかかるのも問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−161258号公報
【特許文献2】特許第2948471号公報
【非特許文献1】木材学会誌28(2)122(1982)
【非特許文献2】木材学会誌35 521−529(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、セルラーゼを用いた植物組織の可溶化方法において、前処理にコスト
をかけることなく、セルラーゼの分解力を高めることによって植物組織を効率的に可溶化
できる方法を提供することにある。また、植物組織に作用させて植物組織を可溶化するた
めの混合酵素製剤であって、前処理にコストをかけることなく、セルラーゼの分解力を高
めることによって植物組織を効率的に可溶化できる混合酵素製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため、植物組織の多様な構造を理解し、まず天然芳香
族化合物に特異性をもつ酵素製剤の検討を行った。
植物組織の基幹部分は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンで構成され、これにタ
ンパク質、澱粉、脂質等が結合している。リグニンは、細胞間や細胞壁に沈着し、セルロ
ースやヘミセルロースと化学的に結合し物理的な強度を与えている。
ヘミセルロースは、種々の糖残基が多様な結合をしたヘテロポリマーである。セルロー
スのように規則性がなく、複雑な結合様式をしている。このセルロースやヘミセルロース
にリグニンが結合し、植物の基幹構造が形成されている。
【0008】
リグニンとは、その前駆体(モノリグノール)である桂皮アルコールが酵素的に脱水素
されたフェノキシラジカルが非酵素的に重合したものである。その結合様式は規則性のな
い複雑な構造であり、三次元網目構造を形成した、巨大な生体高分子である。
しかし、基本的な分子の結合のすべてがC6−C3単位ではなく、その結合様式もβ−
O−4型だけではなく、他の結合方法も種々存在する。この基質の多様性から、今後、色
々な基質特異性を持った酵素製剤の検討が非常に重要になる。
植物組織に広く分布するリグニン以外の天然芳香族化合物のなかで、低分子のフェノー
ル酸類は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン等とエステル結合をして存在するもの
も多い。これらの存在様式の詳細は不明だが、本発明者は、これをフェルラ酸エステラーゼ等のエステラーゼで加水分解することで、難分解性化合物の一角を崩し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼの反応性が高まることを見出し、本発明を完成する
にいたった。
【0009】
すなわち、本発明に係る植物組織の可溶化方法は、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させる植物組織の可溶化方法であって、植物組織1gに対し、セルラーゼを 0.126〜 126単位、フェルラ酸エステラーゼを 0.00006〜0.06単位、及び、タンナーゼを 0.002〜2単位作用させる方法である。
【0010】
また、本発明に係る混合酵素製剤は、植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを含有し、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼの配合割合が、セルラーゼ 100質量部に対し、フェルラ酸エステラーゼが20〜30質量部、かつ、タンナーゼが20〜30質量部である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の植物組織の可溶化方法によれば、前処理にコストをかけることなく、植物組織を効率的に可溶化することができる。また、本発明の混合酵素製剤によれば、前処理にコストをかけることなく、植物組織を効率的に可溶化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用されるセルラーゼとしては、セルロースに作用するものであれば特に限定されない。微生物起源としては、バチルス サブティリス(Bacillus subtilis )、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger )、イルぺクス ラクトース(Irpex lacteus)、ヒュミクラ インソレンス(Humicura insorens )、トリコデルマ バリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ リーセイ(Trichoderm reesei )等が代表的なものである。このなかでも特に、トリコデルマ属由来のものが最適である。
通常、セルラーゼは、上記生産菌を使用して、固形培養法又は液体培養法で製造されるが、セルラーゼとしては、麹、培養液、これを精製した濃縮液又は粉末等あらゆる態様で使用することが可能である。また、市販されているセルラーゼ製剤、例えば、協和化成株式会社製セルラーゼ製剤「TP2−協和」等を使用することもできる。
【0013】
本発明で使用されるフェルラ酸エステラーゼは、酵素の反応形式に基づくEC分類では、加水分解酵素(ヒドロラーゼ)に属しエステル結合に作用する公知の酵素である。フェルラ酸エチル等に基質特異性を示す。
本発明と関係が深い参考例で使用される桂皮酸エステラーゼは、フェルラ酸エステラーゼと同じくEC分類で加水分解酵素に属しエステル結合に作用する公知の酵素である。桂皮酸エチル等に基質特異性を示す。桂皮酸エチルを分解すると桂皮酸とエタノールになる。
【0014】
フェルラ酸エステラーゼあるいは桂皮酸エステラーゼとしては、エステル結合を有する基質に対しエステラーゼ活性を有するものであればよく、例えば、アスペルギルス属やボトリシス属等に属し、フェルラ酸エステラーゼや桂皮酸エステラーゼ生産能を有する微生物を培養に用いる培地を用い、常法にしたがって固形培養又は液体培養して得られた培養物又はその処理物があげられる。処理物としては、(1)該培養物の水抽出液、(2)液体培養濾液、(3)該水抽出液又は該液体培養液から硫安等を用いる塩析法又はアルコール等を用いる沈澱法により沈殿物を得、これを乾燥した粗酵素粉末、(4)必要によりこの粗酵素粉末から調整した精製酵素、及び、市販されるフェルラ酸エステラーゼ、桂皮酸エステラーゼ等が挙げられる。
【0015】
本発明で使用されるタンナーゼとしては、通常のタンナーゼ、例えば、没食子酸エステルを加水分解する活性を有するタンナーゼが挙げられる。具体的には、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、ムコール属等に属しタンナーゼ生産能を有する微生物をこれら微生物の培養に用いられる培地を用い、常法にしたがって固体培養又は液体培養して得られた、培養物又はその処理物が挙げられる。処理物としては、(1)該培養物の水抽出液、(2)液体培養濾液、(3)該水抽出液又は該液体培養濾液から硫安等を用いる塩析法又はアルコール等を用いる沈殿法等により沈殿物を得、これを乾燥した粗酵素粉末、及び、(4)市販されているタンナーゼ製剤、例えば、キッコーマン株式会社製タンナーゼ等が挙げられる。
【0016】
上記酵素により処理される植物としては、セルロースを主体成分とする植物であればよく、例えば、茶葉、ユーカリ、ポプラ等の木の葉、根及び枝等、サツマイモ、トウモロコシ、稲、麦、豆等の蔓、茎、葉、及び、刈草等、リンゴ、ユズ、ブドウなどの果実類等が挙げられる。
これらの植物は、そのままでもよく、必要に応じて乾燥、粉砕、加熱等の前処理を施してもよい。
【0017】
本発明と関係が深い参考例1について説明する。上記植物に上記のセルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、桂皮酸エステラーゼを添加し、これら3種類の酵素を植物組織に作用させる。
これら3種類の酵素は、植物組織に別々に順次添加して作用させてもよいが、植物組織に同時に添加して作用させる方が好ましい。順次添加する場合、3種類の酵素の添加順序は順不同でよく、特に限定されないが、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、桂皮酸エステラーゼの順で添加するのが好ましい。
【0018】
上記の3種類の酵素を同時に添加して作用させる場合、各酵素の添加量及び酵素反応条件は、処理対象の植物の種類や酵素の形態等によっても異なるが、通常、次のようにするとよい。
【0019】
セルラーゼの添加量は、植物組織1gに対し、 0.126〜 126単位、好ましくは、 7.2〜18単位(1単位はCMC溶液中で40℃、30分反応させたとき、1分間に1マイクロモルのグルコースを生成する酵素量)であることが好ましい。
フェルラ酸エステラーゼの添加量は、植物組織1gに対し、 0.00006〜0.06単位、好ましくは、 0.006〜0.0015単位(1単位は37℃の水中において1分間に1マイクロモルのフェルラ酸を生成する酵素量)であることが好ましい。
桂皮酸エステラーゼの添加量は、植物組織1gに対し、0.000075〜 0.075単位、好ましくは、0.0075〜 0.018単位(1単位は30℃で20分間反応させたとき、1分間に1マイクロモルの桂皮酸を生成する酵素量)であることが好ましい。
【0020】
上記の3種類の酵素を同時に添加して作用させる場合の酵素反応は、従来より行われている方法に準じて行うことができ、例えば、植物に水又は水溶液を加え、そこに上記の3種類の酵素を同時に添加する方法、或いは3種類の酵素を予め混合しておき、この混合酵素と植物とを水又は水溶液に加える方法等により行うことができる。
この際の酵素反応条件は、反応温度が30〜50℃、特に40〜43℃で、反応時間が2〜50時間、特に3〜6時間であることが好ましい。水又は水溶液のpHは、調整しても調整しなくてもよいが、 3.0〜 7.0、特に 4.0〜 6.0に調整することが好ましい。また、反応中、攪拌しても攪拌しなくてもよい。
【0021】
また、上記の3種類の酵素を別々に順次添加して作用させる場合は、植物に水又は水溶液を加え、そこに上記の3種類の酵素を順次添加して反応させればよく、その際の各酵素の添加量及び各酵素反応条件は次のようにするとよい。
【0022】
セルラーゼの添加量は、植物組織1gに対し、 0.126〜 126単位、好ましくは 7.2〜18単位であることが好ましい。
セルラーゼ処理に当り、反応温度は30〜50℃、特に、40〜50℃に調整することが好ましい。反応時間は2〜50時間、好ましくは3〜6時間である。また、上記水又は水溶液のpHは、調整しても調整しなくてもよいが、 3.0〜 7.0、特に、 4.0〜 6.0に調整することが好ましい。また、反応中、攪拌しても攪拌しなくてもよい。
【0023】
フェルラ酸エステラーゼの添加量は、植物組織に含まれるフェルラ酸を殆ど、ないし完全に遊離するのに十分な量、例えば、植物組織1gに対し、 0.00006〜0.06単位、好ましくは、 0.006〜 0.015単位であることが好ましい。フェルラ酸エステラーゼ処理にあたり、反応温度は25〜60℃、特に、50〜55℃に調整することが好ましい。反応時間は1〜10時間、好ましくは2〜6時間である。また、上記水又は水溶液のpHは、調整しても調整しなくてもよいが、 5.0〜 8.0、特に 6.0〜 7.0に調整することが好ましい。また、反応中、攪拌しても攪拌しなくてもよい。
【0024】
桂皮酸エステラーゼの添加量は、植物組織1gに対し、0.000075〜 0.075単位好ましくは0.0075〜 0.018単位であることが好ましい。桂皮酸エステラーゼ処理にあたり、反応温度は30〜50℃、特に35℃〜40℃に調整することが好ましい。反応時間は1〜10時間、好ま
しくは2〜6時間である。また、pHは調整しても調整しなくてもよいが、 4.5〜 6.0、特に 5.0〜 5.5に調整することが好ましい。また、反応中、攪拌しても攪拌しなくても良い。
【0025】
上記の3種類の酵素を別々に順次添加して作用させる場合、前に添加した酵素を失活させてから次の酵素を添加してもよく、前に添加した酵素を失活させずに次の酵素を添加してもよい。
【0026】
次に、本発明と関係が深い参考例について説明する。セルラーゼ及びフェルラ酸エステラーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させる。その他の構成は、参考例1と同様である。
【0027】
次に、本発明と関係が深い参考例について説明する。セルラーゼ及び桂皮酸エステラーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させる。その他の構成は、参考例1と同様である。
【0028】
次に、本発明の実施の一形態について説明する。セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させる。
タンナーゼの添加量は、植物1gに対し、 0.002〜2単位、好ましくは、 0.2〜 0.5単位であることが好ましい。タンナーゼ処理に当たり、反応温度は30℃〜46℃、特に40℃〜42℃に調整することが好ましい。反応時間は1〜10時間、好ましくは2〜6時間である。また、pHは、調整しても調整しなくてもよいが、 4.5〜 6.0、特に 5.0〜 5.5に調整することが好ましい。また、反応中、攪拌しても攪拌しなくてもよい。
その他の構成は、参考例1と同様である。
【0029】
次に、本発明と関係が深い参考例4について説明する。セルラーゼ、桂皮酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させる。その他の構成は、上記本発明の実施の一形態と同様である。
【0030】
次に、参考例1の植物組織の可溶化方法に用いられる混合酵素製剤について説明する。
すなわち、参考例1に用いられる混合酵素製剤は、上述した3種類の酵素(セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、桂皮酸エステラーゼ)及び必要に応じてこの種の酵素製剤の製造に従来より用いられている種々の担体、賦形剤、その他の添加剤を配合して製剤化したものである。剤型は、錠剤、散剤、顆粒剤、液剤等であり、常法により製剤化することができる。
【0031】
参考例1に用いられる混合酵素製剤において、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ及び桂皮酸エステラーゼの配合割合は、セルラーゼ 100質量部に対し、フェルラ酸エステラーゼを20〜30質量部、特に25〜27質量部とし、桂皮酸エステラーゼを20〜30質量
部、特に25〜27質量部とすることが好ましい。また、本発明の混合酵素製剤は、セルラーゼ活性が 100〜 10000単位、特に 500〜5000単位、フェルラ酸エステラーゼ活性が1〜 100単位、特に5〜50単位、及び、桂皮酸エステラーゼ活性が 1.2〜 120単位、特に6〜60
単位であることが好ましい。本発明混合製剤には、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ等を適宜配合してもよい。
【0032】
次に、本発明と関係が深い参考例に用いられる混合酵素製剤について説明する。植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ及びフェルラ酸エステラーゼを含有する。その他の構成は、参考例1に用いられる混合酵素製剤と同様である。
【0033】
次に、本発明と関係が深い参考例に用いられる混合酵素製剤について説明する。植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ及び桂皮酸エステラーゼを含有する。その他の構成は、参考例1に用いられる混合酵素製剤と同様である。
【0034】
次に、本発明の実施の一形態に用いられる混合酵素製剤について説明する。植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを含有する。
上記本発明の実施の一形態に用いられる混合酵素製剤において、タンナーゼの配合割合は、セルラーゼ 100質量部に対し、20〜30質量部、特に25〜27質量部とすることが好ましい。
その他の構成は、参考例1に用いられる混合酵素製剤と同様である。
【0035】
次に、参考例4に用いられる混合酵素製剤について説明する。植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ、桂皮酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを含有する。その他の構成は、第の実施の形態に用いられる混合酵素製剤と同様である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0037】
実施例1
(1)茶葉の分解−
茶葉(生)1gに対し純水30mlを加えた。これに、次の1)〜4)の製剤を添加した。
1)セルラーゼ製剤(TP2−協和、協和化成社製)10mg(60単位)単独
2)セルラーゼ製剤(TP2−協和、協和化成社製)10mg(60単位)にフェルラ酸エステラーゼ(協和化成社製)3mg( 0.009単位)を併用
3)セルラーゼ製剤(TP2−協和、協和化成社製)10mg(60単位)にタンナーゼ製剤(キッコーマン社製)3mg( 0.3単位)を併用
4)セルラーゼ製剤(TP2−協和、協和化成社製)10mg(60単位)にフェルラ酸エステラーゼ(協和化成社製)3mg( 0.009単位)及びタンナーゼ製剤(キッコーマン社製)3mg( 0.3単位)を併用
以上4区について比較試験を行った。酵素反応は、40℃で43時間行い、反応終了後、分解液の生成還元糖を定量した。その結果を下記に示す。
1)セルラーゼ製剤単独: 125mg
2)セルラーゼ製剤にフェルラ酸エステラーゼ製剤を併用: 185mg
3)セルラーゼ製剤にタンナーゼ製剤を併用: 160mg
4)セルラーゼ製剤にフェルラ酸エステラーゼ製剤及びタンナーゼ製剤を併用: 251mg この結果から、セルラーゼ製剤にエステラーゼを併用することで、セルラーゼの反応性が高まることがわかる。特に、3種類の酵素を併用した上記本発明の実施の一形態の4)区は生成還元糖量がセルラーゼ製剤単独処理の1)区の約2倍である。また、この4)区は、分解液の全体的な低分子化が進み濾紙濾過時の濾過速度も速く、完全な透明液が得られた。
【0038】
実施例
(2)茶葉の分解−
3種類の茶葉(生)(茶葉−1、茶葉−2、茶葉−3)を用いた。この茶葉1gに対し純水30mlを加え、これにセルラーゼ6mg(36単位)、フェルラ酸エステラーゼ2mg( 0.006単位)及びタンナーゼ2mg( 0.2単位)を含む混合製剤10mgを添加し、反応させた。コントロールとして、セルラーゼ製剤(TP2−協和)10mg(60単位)を単用した。40℃で保温して反応させ、24時間経過後にサンプリングし、ポアサイズ 0.2μmのメンブランフィルターで濾過して、濾過液の総ポリフェノール量を測定した。その結果を表に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明の上記本発明の実施の一形態に用いられる混合酵素製剤使用区は、総ポリフェノール量がコントロール(単用区)に比べて大きく上回っている。茶葉の種類によって酵素作用に違いはあるが、3種類の酵素の併用効果が各葉で認められた。
【0041】
以上のように、本発明は、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを順不同で順次又は同時に植物組織に作用させるので、セルラーゼを用いた植物組織の可溶化方法において、前処理にコストをかけることなく、セルラーゼの分解力を高めることによって植物組織を効率的に可溶化できる。
【0042】
また、植物組織に作用させて植物組織を可溶化するための混合酵素製剤であって、セルラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、及び、タンナーゼを含有するので、前処理にコストをかけることなく、セルラーゼの分解力を高めることによって植物組織を効率的に可溶化できる。