(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、各図および各実施例において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、重複説明を省略する。
【0010】
図1は本実施例に係る空気調和機の外観を示す正面図である。空気調和機は、室内機1と、室外機2と、リモコン3と、から構成され、室内機1と室外機2とは図示していない冷媒配管で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機1が設置されている室内を空調する。また、室内機1と室外機2とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。
【0011】
リモコン3はユーザによって操作され、室内機1のリモコン3受信部に対して、ユーザの操作指示に対応する赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機は、これらの信号に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転をおこなう。
【0012】
また、空気調和機の室内機1の正面には、詳細を後述する撮像手段26と温度検出手段27が設けられている。
また、室内機には、室内機1に取り込む空気の温度を測定する室温センサと、湿度センサと、照度センサとから成るセンサ部4がある。室外機2にも、同様に、外気温センサが設けられている。
11は電装品であり、当該空気調和機1の制御をおこなう制御部7が構成されている。詳細は、
図8により説明する。
【0013】
図2は、室内機1の側断面図である。筐体ベース8は、熱交換器9、送風ファン10、電装品11(
図1参照)、センサ部4(
図1参照)、撮像手段26、温度検出手段27などの内部構造体を収容している。
熱交換器9は、複数本の伝熱管を有し、送風ファン10により室内機1内に取り込まれた空気を、伝熱管を通流する冷媒と熱交換させ、前記空気を加熱又は冷却するように構成されている。なお、伝熱管は、前記した冷媒配管(図示せず)に連通し、周知の冷媒サイクル(図示せず)の一部を構成している。
【0014】
左右風向板13は、制御部7(
図8参照)からの指示に従い、下部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして左右風向板13用モータ(図示せず)により回動される。
上下風向板14は、制御部7(
図8参照)からの指示に従い、両端部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして上下風向板14用モータ(図示せず)により回動される。
前面パネル15は、室内機1の前面を覆うように設置されており、下端を軸として前面パネル15用モータ(図示せず)により回動可能な構成となっている。ちなみに、前面パネル15を、上端に固定されるものとして構成してもよく、回動できない構成であってもよい。
【0015】
図2に示す送風ファン10が回転することによって、空気吸込み口17及びフィルタ16を介して、室内機1の前面から室内空気を取り込み、熱交換器9で熱交換された空気が吹出し風路18に導かれる。さらに、吹出し風路18に導かれた空気は、左右風向板13及び上下風向板14によって風向きを調整され、空気吹出し口19から外部に送り出されて室内を空調する。
つまり、送風ファン10の回転速度により吹き出し風量が制御され、左右風向板13の回動により左右の吹出し方向が制御され、上下風向板14の回動により上下の吹出し方向が制御される。
【0016】
撮像手段26は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ26b(
図3b参照)であり、前面パネル15の左右方向中央の下部に設置されている
。
また、温度検出手段27は、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成されるサーモパイル27b(
図3a参照)であり、前面パネル15の左右方向中央の下部に設置されている。本実施例では、1×8画素で構成されるサーモパイル27bを使用した場合について述べる。これ以外にも、サーモグラフィーを使用してもよい。
【0017】
撮像手段26と温度検出手段27は、レンズの光軸36が水平線37に対して所定角度だけ下方を向くように設置されており、室内機1が設置されている室内を適切に撮像できるようになっている。撮像手段26が下方を向く角度は、温度検出手段27が下方を向く角度と略同じである。
撮像手段26と温度検出手段27の鉛直方向の検出範囲が異なる場合、検出範囲の上端をそろえる。あるいは、下端をそろえてもよい。
【0018】
撮像手段26と温度検出手段27の水平方向の画角は略同じ角度である。あるいは、一方が他方より大きく、回動することにより画角を変更することで略同等の画角を得てもよい。撮像手段26と温度検出手段27は互いに水平方向または鉛直方向に位置するように設けられる。
また、撮像手段26と温度検出手段27は室内機1の前面中央部や前面上部など空間の検出が可能な位置に近接して設けることが望ましい。これにより、撮像手段26の取得画像と温度検出手段27の取得画像のずれ量を小さくすることができる。
また、撮像手段26あるいは温度検出手段27は、同一の画角で部屋のより広い範囲を見られるよう、前面パネル15の上端にあってもよい。
【0019】
つぎに、
図3aと
図3bにより、撮像手段26と温度検出手段27による撮像について説明する。撮像手段26は、640×480画素のCCDイメージセンサ26bにより構成され、温度検出手段27は1×8画素のサーモパイル27bにより構成される。そして、CCDイメージセンサ26bやサーモパイル27bの前面にはレンズが設けられており、視野像がセンサに結像される。
【0020】
サーモパイル27bの検出素子は、1次元配置された受熱素子となっている。
図3aにしめすように、検出素子の配列方向を回転軸にしてサーモパイル27bを回動することにより、検出素子の配列方向に垂直な方向に走査する。これにより、縦方向に8画素の2次元の放射熱像を取得することができる。取得画像の走査方向(水平方向)の画素数については後述する。
【0021】
CCDイメージセンサ26bは2次元の撮像素子であるが、撮像手段26の取得画像範囲を広くするために、
図3bにしめすように、CCDイメージセンサ26bの縦方向を回転軸にしてCCDイメージセンサ26bを回動し、水平方向の走査をおこなう。これにより、CCDイメージセンサ26bの水平方向の画素数より大きな撮像画像を得ることができる。
【0022】
図4は、撮像手段26のCCDイメージセンサ26bと温度検出手段27のサーモパイル27bの回転角度の関係を説明する図である。ここで、CCDイメージセンサ26bは、60°の画角をもち、サーモパイル27bは、5°の画角をもち、撮像手段26と温度検出手段27は、水平方向が150°の画角で、同じ視野の画像取得をおこなうものとする。
【0023】
図4の実線はCCDイメージセンサ26bの1回の撮像角度範囲を示し、点線はサーモパイル27bの1回の検出角度範囲を示している。図に示されるように150°の画角の取得画像を得るには、サーモパイル27bは、中央の左右75°の範囲を5°の回転角度ごとに、放射熱像を取得し、CCDイメージセンサ26bは、中央と左右45°の3つの回転角度で撮像をおこない画像取得をおこなえばよい。
【0024】
図5aと
図5bは、上記の条件で撮像をおこなった撮像手段26と温度検出手段27の撮像結果をしめす図である。撮像手段26は、水平方向が150°の画角で、1600×480の画素数の画像取得がおこなえる。温度検出手段27は、水平方向が150°の画角で、30×8の画素数の熱画像取得がおこなえる。
このとき、撮像手段26による撮像画像には、重複する領域があるので、適宜削除あるいは平均化して、上記の画素数の画像取得をおこなう。
【0025】
上記の取得画像の画素数は一例であって、取得する画角や、使用するCCDイメージセンサ26bやサーモパイル27bの種類によって種々選択可能であることは言うまでもない。
なお、一見、サーモパイル27bの分解能が低いように思えるが、実施例のように空気調和機の送風制御のために室内の温度分布を測定する用途であれば、上記の分解能であれば充分に制御をおこなうことができる。もちろん、高分解能であることが望ましいことは言うまでもない。
【0026】
つぎに、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動させる機構について説明する。
図6aと
図6bは機構概要をしめす図である。ここで、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動する駆動源は、ステッピングモータ42を使用するものとする。
図6aと
図6bで、
【0027】
図6aに示す機構では、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動する回転軸とステッピングモータ42の駆動軸を、ギアを介して接続するものである。ステップ数の小さなステッピングモータ42であっても、ギア比を選択することにより所望の回転角を得ることができる。
図6bに示す機構では、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動する回転軸とステッピングモータ42の駆動軸を、4節リンクにより接続し、回転運動を揺動運動に変換することができる。
【0028】
上述のギアやリンクにより駆動軸の接続をおこなった場合は、ギアのバックラッシュやリンクの“あそび”により、回動位置精度に誤差が生じることがある。このため、撮像時のサーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bの撮像時の回動方向を一方向にして“あそび”による回動角の誤差が生じないようにすることが望ましい。また、予め“あそび”を吸収する調整量を求めておき、回動方向が反転する際に調整をおこなうようにしてもよい。
【0029】
図7は、温度検出手段27の鉛直断面の撮像状態を示す図である。上述のとおり、温度検出手段27のサーモパイル27bは、縦方向に8素子から構成されている。
図7の1から8の領域の放射熱が受熱素子により検出される。
図7から分かるように、撮像結果の上側と下側がそれぞれ室内の壁と床に対応している。
【0030】
図8は、実施例の空気調和機の制御回路の構成図である。
上述の撮像手段26のCCDイメージセンサ26bと温度検出手段27のサーモパイル27bは、それぞれ独立に、センサ回動制御部50により回動駆動される。CCDイメージセンサ26bとサーモパイル27bの出力信号は、温度分布生成・判定処理部5により、
図5aや
図5bに示す2次元の放射熱画像と撮像画像が生成される。
【0031】
温度分布生成・判定処理部5は、上記の2次元の撮像画像と放射熱画像を解析して、レイアウト状態、人物の有無やその人数やその活動率、温度分布を、算出する。
そして、空調温度・風向処理部6は、この算出結果と、外気温センサ制御部51、室温センサ制御部52、湿度センサ制御部53、照度センサ制御部54の入力値と、リモコン制御部55と通信するリモコン3による設定値を参照して、送風の温度・風量と方向等の制御量を決める。
機器制御部7は、空調温度・風向処理部6からの指示に基づいて、室外機2の圧縮機駆動部22bと室外機ファンモータ駆動部24と四方弁駆動部34と電動弁駆動部35を制御して、冷房・暖房をおこなう冷媒サイクルの制御をおこなうとともに、前記空調温度・風向処理部6の指示に基づいて、上下風向板駆動部14bと左右風向板駆動部13bと送風ファン駆動部10bを制御して冷却風や暖房風の吹き出し方向・風量を制御する。
また、空調温度・風向処理部6は、センサ回動制御部50の動作状態を設定する。
【0032】
前記温度分布生成・判定処理部5と空調温度・風向処理部6と機器制御部7は、マイクロプロセッサによるプログラム処理で実現される。
【0033】
<実施例1>
上述のとおり、撮像手段26と温度検出手段27は、独立に撮像動作をおこなうことができる。このため、空気調和機の機能に合わせて、撮像手段26と温度検出手段27の動作を変えることとする。ここで、空気調和機の撮像機能を、人の出入りや人数や人の位置・動きを検出して温度や風向・風量をコントロールする機能モード(以下、人監視モードと称する)と、ドアの開閉等の間取りの変化や日が差し込んでいるエリアを検出して温度や風向・風量をコントロールする機能モード(以下、部屋監視モードと称する)とを設ける。
人監視モードでは、撮像手段26で識別した人の位置に対応する温度を検知するために、撮像手段26と温度検出手段27とを並行動作させる(第1の動作状態)。部屋監視モードでは、撮像手段26と温度検出手段27は個別に順に動作すればよい(第2の動作状態)。以下に、それぞれの動作の詳細を説明する。
【0034】
部屋監視モードでの、撮像手段26と温度検出手段27と動作を
図9aに示す。
図9aの横軸は時間変化を示し、縦軸はCCDイメージセンサ26bとサーモパイル27bの回動角度をしめしている。ここで、縦軸の回動角度は、
図4のサーモパイルの30点の回動角度に対応している。
空気調和機の部屋監視モードでは、室内の状況変化に伴う急激な温度変化を想定していないので、撮像手段26と温度検出手段27は個別に交互動作させればよい。まず、撮像手段26の撮像画像から壁位置やドアの開閉等の部屋の状況が画像認識され、これに基づいて温度や風向・風量がコントロールされる。つぎに、温度検出手段27により検出された温度分布の変化により、温度や風向・風量がフィードバック制御される。
ここで、CCDイメージセンサ26bとサーモパイル27bの撮像は適当なタイミングでおこなえばよい。
また、部屋監視モードでは、撮像手段26と温度検出手段27を低速あるいは低頻度で動作すればよいので、部品寿命の点では有利となる。
【0035】
人監視モードでは、撮像手段26の撮像画像から人物を画像認識し、人物の活動量や居場所に合わせて温度や風向・風量をコントロールする。このため、人物の認識と温度検出のタイミングずれを小さくするために、撮像手段26と温度検出手段27の回動を並行動作させる。
図9bに、撮像手段26と温度検出手段27の動作をしめす。
【0036】
図9bにしめすように、温度検出手段27のサーモパイル27bは、30ポイントの検出点で一定の回動角速度で駆動され、かつ、一定間隔で撮像(信号検出)される。これに対して、撮像手段26のCCDイメージセンサ26bは、サーモパイル27bの10ポイントの検出点ごとに、回動動作をおこなうようにする。そして、CCDイメージセンサ26bの撮像(信号検出)のタイミングはサーモパイル27bの10ポイントの検出点の範囲の中央とする。これにより、人物の認識と温度検出のタイミングずれを小さくする。
【0037】
より詳細には、サーモパイル27bが
図4に示した1から9の回動角度に在るときには、CCDイメージセンサ26bは回度角度が1の位置にあり、サーモパイル27bの回動角度が5の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bの撮像をおこなう。
つぎに、サーモパイル27bの回動角度が10の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bを回度角度10の位置に駆動する。そして、サーモパイル27bの回動角度が15の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bの撮像をおこなう。
さらに、サーモパイル27bの回動角度が19の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bを回度角度19の位置に駆動する。そして、サーモパイル27bの回動角度が26の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bの撮像をおこなう。
【0038】
<実施例2>
図10は、人物の認識と温度検出のタイミングをより小さくする制御フローを示したものである。上述の実施例では、撮像手段26と温度検出手段27を並行動作させ、所定のタイミングで撮像手段26の撮像をおこなうようにしていた。本実施例は、サーモパイル27bを認識した人物の位置に回動して撮像をおこない、人物の温度検出をおこなうものである。
詳しくは、撮像手段26により室内を撮像し(S101)、画像認識して人物の位置を特定し(S102)、前記の人物位置に対応するサーモパイル27bの回動角度を算出し(S103)、サーモパイル27bを前記回動角度に駆動して撮像して温度を検出する(S104)。
複数の人物が認識された場合には、識別された人物ごとに上記の処理を繰り返して温度検出をおこなう。
以上により、より正確な温度測定が可能となる。
【0039】
尚、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。