特許第5978190号(P5978190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978190
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20160817BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20160817BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G03G21/00 312
   G03G15/16
   G03G15/00 303
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-227765(P2013-227765)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-87677(P2015-87677A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 彩加
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−122343(JP,A)
【文献】 特開2000−131962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0057762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する感光体ドラムと、当該トナー像を転写した後に当該感光体ドラムに残ったトナーを除去するドラムクリーニング部とを有する画像形成部と、
前記感光体ドラムから前記トナー像が一次転写される転写ベルトと、
前記転写ベルトに残ったトナーを除去するベルトクリーニング部と、
前記ベルトクリーニング部に対して前記トナーの帯電極性と逆極性のクリーニングバイアスを印加するバイアス印加部と、
前記転写ベルトに一次転写されたトナーを前記ベルトクリーニング部が除去する前と除去した後のトナー濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部の測定結果に基づいて前記クリーニングバイアスを設定するクリーニングバイアス設定部とを備え、
前記画像形成部は、複数のトナーパッチを前記転写ベルト上に形成可能であり、
前記バイアス印加部は、前記ベルトクリーニング部が前記トナーパッチを除去する際の前記クリーニングバイアスの値を前記トナーパッチ毎に変化させて印加し、
前記ベルトクリーニング部が前記トナーパッチを除去する前と除去した後のトナー濃度の濃度差の最大値が予め定められた閾値以上の場合、前記クリーニングバイアス設定部は当該最大値を示した時のバイアス値をクリーニングバイアスとし、前記最大値が前記閾値より小さい場合、前記転写ベルト上のトナーを逆極性化させる予め定められたバイアス値を前記クリーニングバイアスとし、
更に、前記ベルトクリーニング部が前記トナーパッチを除去する前と除去した後のトナー濃度の濃度差の最大値が予め定められた閾値以上であって、当該最大値を示す濃度差が複数ある場合、前記クリーニングバイアス設定部は当該最大値を示した時のバイアス値のうち最も低い値をクリーニングバイアスとする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成部は、トナー像のトナー濃度を調整するキャリブレーション実行時に形成されるトナーパッチを、前記トナーパッチとして形成する請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラムの周面にレーザー光を照射して静電潜像を形成し、その周面にトナーを供給して静電潜像をトナー像化した後、感光体ドラムから転写ベルト上にトナー像を一次転写させ、そのトナー像を用紙に二次転写させることによって用紙に画像を形成する画像形成装置が広く用いられている。
【0003】
トナー像を用紙に二次転写した後、転写ベルト上にトナーが残る場合がある(残トナー)。転写ベルトにトナーが残ったまま次のトナー像が転写されると、画像不良を引き起こすため、残トナーを除去するためのベルトクリーニング部が設けられる。
【0004】
ベルトクリーニング部は、一般的に、クリーニングブラシとトナー回収ローラーで構成される。クリーニングブラシは転写ベルトを摺擦する位置に配置され、トナーと逆極性のクリーニングバイアスが印加される。転写ベルト上の残トナーは静電的にクリーニングブラシに移動し、クリーニングブラシに付着した残トナーはトナー回収ローラーによって回収される。
【0005】
ここで、クリーニングバイアスはトナーにとって最適な値でないと、残トナーがクリーニングブラシに移動せず、画像不良の原因となってしまう。特許文献1には、複数の濃度測定用トナーパッチをクリーニングさせるとき、トナーパッチ毎にクリーニングバイアスを変化させ、クリーニング後のトナーパッチの濃度測定を行い、最適なクリーニングバイアスの最適値を決定する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−122343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
転写ベルトの白化が進むと、表面抵抗が上昇し、クリーニングブラシと転写ベルトとの間で放電が起こりやすくなることが知られている。また、転写ベルトがある一定以上の耐久度になると、残トナーを除去できるクリーニングバイアスの設定値がなくなるということが分かっている。このような場合、特許文献1に開示された技術を用いてクリーニングバイアスの最適値を決定しても、残トナーを十分クリーニングすることができない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、残トナーによる画像不良を従来よりも確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における画像形成装置は、トナー像を担持する感光体ドラムと、当該トナー像を転写した後に当該感光体ドラムに残ったトナーを除去するドラムクリーニング部とを有する画像形成部と、
前記感光体ドラムから前記トナー像が一次転写される転写ベルトと、
前記転写ベルトに残ったトナーを除去するベルトクリーニング部と、
前記ベルトクリーニング部に対して前記トナーの帯電極性と逆極性のクリーニングバイアスを印加するバイアス印加部と、
前記転写ベルトに一次転写されたトナーを前記ベルトクリーニング部が除去する前と除去した後のトナー濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部の測定結果に基づいて前記クリーニングバイアスを設定するクリーニングバイアス設定部とを備え、
前記画像形成部は、複数のトナーパッチを前記転写ベルト上に形成可能であり、
前記バイアス印加部は、前記ベルトクリーニング部が前記トナーパッチを除去する際の前記クリーニングバイアスの値を前記トナーパッチ毎に変化させて印加し、
前記ベルトクリーニング部が前記トナーパッチを除去する前と除去した後のトナー濃度の濃度差の最大値が予め定められた閾値以上の場合、前記クリーニングバイアス設定部は当該最大値を示した時のバイアス値をクリーニングバイアスとし、前記最大値が前記閾値より小さい場合、前記転写ベルト上のトナーを逆極性化させる予め定められたバイアス値を前記クリーニングバイアスとし、
更に、前記ベルトクリーニング部が前記トナーパッチを除去する前と除去した後のトナー濃度の濃度差の最大値が予め定められた閾値以上であって、当該最大値を示す濃度差が複数ある場合、前記クリーニングバイアス設定部は当該最大値を示した時のバイアス値のうち最も低い値をクリーニングバイアスとする。
【発明の効果】
【0010】
転写ベルトの状態変化によって二次転写後に転写ベルトに残る残トナーのクリーニング能力が低下して、転写ベルトから除去されるトナー量が低減した場合であっても、クリーニングバイアスの調整によりトナー除去量を適正な量に確保でき、また、クリーニングバイアスの調整ではトナー除去量が確保できなくなった場合でも、クリーニングバイアスを、残トナーを逆極性化させるバイアス値とすることで、残トナーの極性は逆転し、その後感光体ドラムに静電的に移動してドラムクリーニング部に回収される。つまり、残トナーが二次転写時に用紙に転写されないようにして、従来よりも確実に画像不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図2】ベルトクリーニング部周辺の拡大図である。
図3】濃度測定部とトナー回収ローラーに関連する部分の電気的構成を示した図である。
図4】トナーパッチの一例を示した図である。
図5】クリーニングバイアスとトナーパッチのクリーニング前後のトナー濃度差の関係を示したグラフである。
図6】トナーの極性と、二次転写ローラー及びトナー回収ローラーに印加される電圧の極性を示した図である。
図7】トナーの極性と、二次転写ローラー及びトナー回収ローラーに印加される電圧の極性を示した図である。
図8】クリーニングバイアス設定の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図面に基づき詳細に説明する。ここで、画像形成装置として、タンデム方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。また、画像形成装置の種類としては、カラープリンターを例に挙げて説明するが、例えば、複写機、ファクシミリ装置及び複合機等であってもよく、カラープリンターに限定されない。
【0013】
画像形成装置10は、図1に示すように、箱形を呈した装置本体11内に内装された、用紙Pを給紙する給紙部12と、この給紙部12から給紙された用紙Pを搬送しながら、この用紙P上に画像情報に基づくトナー像を形成する画像形成部13と、この画像形成部13で用紙P上に形成された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部14とが設けられている。更に、装置本体11の上部には、定着部14で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部15が形成されている。
【0014】
装置本体11の上面の適所には、用紙Pに対する出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、電源キーや出力条件を入力するための各種のキー等が設けられている。
【0015】
また、装置本体11内には、図1に示す画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びた用紙搬送路111が形成されている。用紙搬送路111には、適所に搬送ローラー対112が設けられている。そして、用紙搬送路111は、搬送ローラー対112によって、用紙Pを給紙部12から排紙部15まで搬送し、その搬送中の用紙Pが、画像形成部13の転写部や定着部14を通過するように形成されている。
【0016】
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122及び給紙ローラー対123を備えている。給紙トレイ121は、装置本体11内における画像形成部13より下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚の用紙Pが積層された用紙束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121の、用紙Pの搬送方向上流側で上方位置、具体的には、図1に示す右上方位置に設けられ、給紙トレイ121に貯留された用紙束P1の最上面の用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路111に送り出す。そうすることによって、給紙部12は、画像形成部13へ向けて用紙Pを給紙する。
【0017】
また、給紙部12は、装置本体11の、図1に示す左側側面に取り付けられる手差しトレイ124、ピックアップローラー125及び給紙ローラー対126を更に備えている。手差しトレイ124は、用紙Pを手差し操作で画像形成部13へ向けて供給するためのものである。手差しトレイ124は、装置本体11の側面に収納可能であり、手差しで用紙Pを給紙する際、図1に示すように、装置本体11の側面から引き出されて手差し給紙に供される。ピックアップローラー125は、手差しトレイ124に載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー125によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー対123及び126によって用紙搬送路111に送り出す。そうすることによって、給紙部12は、画像形成部13へ向けて用紙Pを給紙する。
【0018】
画像形成部13は、所定の画像処理によって給紙部12から給紙された用紙Pにカラー画像等の画像を形成させるものである。画像形成部13は、複数の画像形成ユニット131と、転写ベルト132と、一次転写ローラー133と、二次転写ローラー134とを備えている。
【0019】
画像形成ユニット131としては、本実施形態では、転写ベルト132の回転方向上流側から下流側へ(図1に示す左側から右側へ)向けて順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット131M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット131C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット131Y、及びブラック(K)色の現像剤を用いるブラック用ユニット131Kが備えられている。各ユニット131は、感光体ドラム135を備え、感光体ドラム135上に画像情報に基づいて各色に対応するトナー像を形成させ、転写ベルト132に一次転写する。
【0020】
画像形成ユニット131は、感光体ドラム135が矢印方向に回転可能に配置されている。そして、感光体ドラム135の周囲には、除電装置24、ドラムクリーニング部25、帯電装置21、露光装置22及び現像装置23が各々配置されている。
【0021】
帯電装置21は、矢印方向に回転されている感光体ドラム135の周面を帯電させる。露光装置22は、帯電装置21によって周面が帯電された感光体ドラム135の周面に、画像情報に基づくレーザー光を照射し、感光体ドラム135の周面上に画像情報に基づく静電潜像を形成させる。
【0022】
現像装置23は、感光体ドラム135の周面にトナーを供給する。感光体ドラム135は、露光装置22から出射されるレーザー光によって周面に静電潜像が形成され、現像装置23によるトナー供給によって顕像化されたトナー像を担持する。
【0023】
除電装置24は、一次転写ローラー133が感光体ドラム135周面上のトナー像を転写ベルト132に一次転写した後、感光体ドラム135の周面上に残存したトナーを除電させる。
【0024】
ドラムクリーニング部25は、一次転写後に感光体ドラム135の周面にある残トナーを除去して清浄化するものである。具体的には、例えば、クリーニングブレード等が挙げられる。ドラムクリーニング部25によって清浄化処理された感光体ドラム135の周面は、新たな画像形成処理のために帯電位置へ向かう。ドラムクリーニング部25によって除去されたトナーは、所定の経路を通ってトナー回収ボックス(不図示)に搬送され、貯留される。
【0025】
転写ベルト132は、複数の画像形成ユニット131によって、その周面に画像情報に基づくトナー像が一次転写されるためのものである。即ち、転写ベルト132は、本実施形態においては、感光体ドラム135と一次転写ローラー133とで狭持され、感光体ドラム135からトナー像が転写される周面を有する被転写体である。
【0026】
また、転写ベルト132は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム135の周面にそれぞれ当接するように、二次転写対向ローラー136及び従動ローラー137に架け渡されている。また、転写ベルト132は、転写ベルト132を介して各感光体ドラム135と対向する位置に配される各一次転写ローラー133によって各感光体ドラム135に押圧された状態で、二次転写対向ローラー136の回転駆動によって、無端回転するように構成されている。
【0027】
二次転写対向ローラー136は、ステッピングモーター等の駆動源によって回転駆動し、転写ベルト132を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー137は、回転自在に設けられ、二次転写対向ローラー136による転写ベルト132の無端回転に伴って従動回転する。
【0028】
一次転写ローラー133は、転写ベルト132を狭持して感光体ドラム135周面上のトナー像を転写ベルト132に一次転写させる。また、一次転写ローラー133は、転写ベルト132を介して各感光体ドラム135と対向する位置に配置され、転写ベルト132に接触したまま、転写ベルト132の無端回転に従属して回転する。その際、各一次転写ローラー133に、トナーの帯電極性とは逆極性である一次転写バイアスを印加することによって、各感光体ドラム135上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム135とそれに対応する各一次転写ローラー133との間で、転写ベルト132に一次転写される。これにより、各感光体ドラム135上に形成されたトナー像が、矢印A方向(図1では、反時計回り)に周回する転写ベルト132に重ね塗り状態で順次一次転写される。
【0029】
二次転写ローラー134は、転写ベルト132の周面に接触してニップ部を形成し、そのニップ部を通過する用紙Pに、転写ベルト132の周面上のトナー像を二次転写させる。
【0030】
二次転写ローラー134は、転写ベルト132を介して、二次転写対向ローラー136と対向する位置に配置され、転写ベルト132に接触したまま、転写ベルト132の無端回転に従属して回転する。その際、二次転写ローラー134に、トナーの帯電極性とは逆極性である二次転写バイアスを印加することによって、転写ベルト132上に一次転写されたトナー像が、二次転写ローラー134と二次転写対向ローラー136との間で、二次転写される。これにより、トナー像が用紙P上に未定着の状態で転写される。
【0031】
また、画像形成部13には、転写ベルト132における二次転写位置より回転方向下流側であって一次転写位置より回転方向上流側の位置に、ベルトクリーニング部138を更に備えている。ベルトクリーニング部138は、クリーニングブラシ31、トナー回収ローラー32、クリーニングブレード33及びトナー回収スクリュー34を備え、二次転写後、転写ベルト132の周面上に残った残トナーを除去して清浄化するための装置である。
【0032】
トナー回収ローラー32にはトナーの帯電極性とは逆極性のクリーニングバイアスが印加される。これにより、接地された従動ローラー137から転写ベルト132、クリーニングブラシ31を経てトナー回収ローラー32へ電位傾斜が発生し、クリーニングブラシ31は転写ベルト132上の残トナーを静電的に吸着する。クリーニングブラシ31が吸着したトナーは、トナー回収ローラー32へ移動する。
【0033】
トナー回収ローラー32に付着したトナーはクリーニングブレード33が掻き落とし、掻き落とされたトナーはトナー回収スクリュー34によってトナー回収ボックス(不図示)へ搬送され、貯留される。このようにベルトクリーニング部138によって清浄化処理された転写ベルト132の周面は、新たな一次転写処理のために一次転写位置へ向かう。
【0034】
定着部14は、画像形成部13で転写された用紙P上のトナー像に対し定着処理を施す。定着部14は、内部に加熱源である通電発熱体を備えた加熱ローラー141と、加熱ローラー141と配向配置された定着ローラー142と、定着ローラー142と加熱ローラー141との間に張架された定着ベルト143と、定着ベルト143を介して定着ローラー142と対向配置された加圧ローラー144とを備えている。
【0035】
定着部14へ供給された用紙Pは、定着ベルト143と加圧ローラー144との間に形成される定着ニップ部を通過することで、加熱加圧される。これにより、画像形成部13で用紙Pに転写されたトナー像は、用紙Pに定着される。定着処理の完了した用紙Pは、定着部14の上部から延設された用紙搬送路111を経由して、装置本体11の頂部に設けられた排紙部15の排紙トレイ151へ向けて排紙される。
【0036】
排紙部15は、装置本体11の頂部が凹没されることによって、形成され、この凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ151が形成されている。
【0037】
濃度測定部41a及び41bは、転写ベルト132上に転写されたトナーパッチがベルトクリーニング部138によってクリーニングされる前と後のトナー濃度を測定する。図2は、ベルトクリーニング部138周辺の拡大図である。濃度測定部41aは転写ベルト132の残トナークリーニング位置(転写ベルト132にクリーニングブラシ31が摺擦する位置)の回転方向上流側に配置され、濃度測定部41bは残トナークリーニング位置の回転方向下流側に配置される。
【0038】
図3は、濃度測定部41a及び41bとトナー回収ローラー32に関連する部分の電気的構成を示した図である。電源D1(バイアス印加部)は、トナーの帯電極性と逆極性のクリーニングバイアスをトナー回収ローラー32に印加する。
【0039】
クリーニングバイアス設定部9は、濃度測定部41a及び41bからトナーパッチのクリーニング前後のトナー濃度の測定結果を取り込み、この測定結果に応じてクリーニングバイアスを決定する。そしてクリーニングバイアス設定部9は、決定したバイアス値に基づいて電源D1を制御する。
【0040】
図4は、クリーニングバイアス設定部9がクリーニングバイアスを設定する際に用いるトナーパッチの一例を示した図である。クリーニングバイアスの設定時、画像形成部13は図4に示すようなトナーパッチを転写ベルト132上に形成する。P1a、P2a、P3a及びP4aは、例えばブラックの濃度100%のトナーパッチであり、P1b、P2b、P3b及びP4bは、ブラックの濃度50%のトナーパッチである。以下、トナーパッチP1a〜P4aとトナーパッチP1b〜P4bを適宜まとめて「トナーパッチP」という。
【0041】
そして、電源D1は、ベルトクリーニング部138がトナーパッチP1a及びP1bをクリーニングするときはクリーニングバイアスをV1にし、トナーパッチP2a及びP2bをクリーニングするときはクリーニングバイアスをV2にし、トナーパッチP3a及びP3bをクリーニングするときはクリーニングバイアスをV3にし、トナーパッチP4a及びP4bをクリーニングするときはクリーニングバイアスV4を印加する。ここで、各クリーニングバイアスの値の関係は、V1<V2<V3<V4である。
【0042】
濃度測定部41a及び41bは、クリーニング前後のトナーパッチのトナー濃度を測定し、測定結果をクリーニングバイアス設定部9へ送信する。クリーニングバイアス設定部9は、クリーニング前のトナーパッチの濃度(濃度測定部41aの測定結果)と、クリーニング後のトナーパッチの濃度(濃度測定部41bの測定結果)の差、つまりベルトクリーニング部138が回収したトナー量に相当する値を算出する。
【0043】
具体的には、クリーニングバイアス設定部9は濃度測定部41aからクリーニング前のトナーパッチP1aのトナー濃度Xを取り込み、更に濃度測定部41bからクリーニング後のトナーパッチP1aの測定結果Yを取り込む。そして、クリーニングバイアス設定部9はトナー濃度XとYの差Z1、つまりクリーニングバイアスをV1とした時のクリーニング前後のトナー濃度差Z1(トナー回収量に相当)を算出する。このように、クリーニングバイアス設定部9はトナーパッチP2a〜P4aについて、クリーニングバイアスV2のときのクリーニング前後のトナー濃度差Z2、クリーニングバイアスV3のときのクリーニング前後のトナー濃度差Z3、クリーニングバイアスV4のときのクリーニング前後のトナー濃度差Z4をそれぞれ求める。
【0044】
図5は、クリーニングバイアスとクリーニング前後のトナー濃度差の関係を示したグラフである。図5の場合、クリーニングバイアスV3とV4の時のトナー濃度差が最も大きい、つまり、クリーニングバイアスがV3又はV4の時が、最もトナーの回収量が多いことを示している。従って、クリーニングバイアス設定部9は、通常使用するクリーニングバイアスとしてトナー濃度差の最も大きい(最もトナー回収量の多い)クリーニングバイアスを採用する。図5の場合、トナー濃度差の最も大きいクリーニングバイアスはV3とV4であるため、その中で最も低いバイアス値、つまりV3を通常のクリーニングバイアスとして設定する。
【0045】
尚、条件によっては、濃度100%のトナーパッチを基準として設定したクリーニングバイアスが最もトナーを回収できるバイアスであるとは限らない。画像形成装置1の設定環境や転写ベルト132の耐久度の変化等により、各濃度における最適なクリーニングバイアスが異なる可能性もある。
【0046】
このため、上記したように、画像形成部13は濃度の異なるトナーパッチ(100%と50%)を形成し、クリーニングバイアス設定部9はそれぞれの濃度についてトナー濃度差を求める。そして同じクリーニングバイアスを用いた時の濃度100%と濃度50%のトナー濃度差のうち、濃度差の小さい方を用いるようにしてもよい。
【0047】
図6は、トナーの極性と、二次転写ローラー134及びトナー回収ローラー32に印加される電圧の極性を説明するための図である。二次転写ローラー134とトナー回収ローラー32は現像装置23が感光体ドラム137に供給するトナーTと逆極性のバイアスが印加される。従って、トナーTが正極性を帯びている場合、二次転写ローラー134とトナー回収ローラー32には負のバイアスが印加される。
【0048】
転写ベルト132上に一次転写されたトナーTは、二次転写ローラー134と二次転写対向ローラー136との間で、用紙に二次転写される。しかし、用紙に移動せずに転写ベルト132上に残った残トナーTrは、クリーニングブラシ31の方へ運ばれ、クリーニングブラシ31が残トナーTrを静電的に吸着する。クリーニングブラシ31が吸着した残トナーTrは、トナー回収ローラー32へ移動することで、ベルトクリーニングが行われる。
【0049】
しかし、転写ベルト132の白化が進むと、表面抵抗が上昇し、クリーニングブラシ31と転写ベルト132との間で放電が起こりやすくなる。また、転写ベルト132がある一定以上の耐久度になると、残トナーを除去できるに足りる値でクリーニングバイアスを設定できなくなるため、残トナーを十分除去することができず、画像不良の原因となっていた。
【0050】
そこで、クリーニング前後のトナー濃度差の最大値が予め定められた閾値以下である場合、つまりトナー回収ローラー32に十分なクリーニングバイアスを印加してもトナーを十分回収できない事態になった場合、クリーニングバイアス設定部9は予め設定されたクリーニングバイアスの適正値よりも大きな値、具体的には残トナーを逆チャージ化させることができるバイアス値に設定する。
【0051】
ここで、クリーニングバイアスの適正値とは、転写ベルト132やトナーの性質、画像形成装置1の設置環境、画像形成装置1の機種等に合わせて予め設定された値であり、クリーニングバイアス設定部9が記憶している。そして、クリーニングバイアスの適正値より大きな値とは、残トナーを逆チャージ化させるために十分なバイアス値であり、予め設定されてクリーニングバイアス設定部9が記憶している。
【0052】
図7を用いて説明する。用紙に移動せずに転写ベルト132上に残った残トナーTrは、クリーニングブラシ31の方へ運ばれる。トナー回収ローラー32にはクリーニングバイアスの適正値より大きな負のバイアスが印加されており、これにより残トナーTrは極性が正から負に反転する(逆チャージ化)。
【0053】
この逆チャージ化した残トナーTcは、転写ベルト132上に戻って再付着し、転写ベルト132によって感光体ドラム135の方へ運ばれる。感光体ドラム135の周面は正に帯電していることから、残トナーTcは感光体ドラム135の周面に移動し、除電装置24によって除電された後、ドラムクリーニング部25が有するクリーニングブレード251によって感光体ドラム135の周面から除去される。ここで、残トナーTcが感光体ドラム135に移動せずに、二次転写ローラー134の方へ運ばれたとしても、二次転写ローラー134と残トナーTcは同極性のため残トナーTcは用紙に転写されず、画像不良を引き起こさない。
【0054】
図8は、クリーニングバイアス設定の流れを示したフローチャートである。まず、画像形成部13はクリーニングバイアス設定用のトナーパッチPを転写ベルト132上に形成する(ステップS11)。
【0055】
次に、濃度測定部41aがトナーパッチP1aとP1bのトナー濃度を測定し(ステップS12)、電源D1はクリーニングバイアスV1をトナー回収ローラー32に印加することでトナーパッチP1a及びP1bのクリーニングが行われる(ステップS13)。その後、濃度測定部41bがトナーパッチP1a及びP1bが形成されていた位置のトナー濃度を測定する(ステップS14)。以上の処理をトナーパッチP2a〜P4a及びP2b〜P4bについてそれぞれ行う。
【0056】
次に、クリーニングバイアス設定部9は、濃度測定部41aと41bから送信された測定結果からクリーニングバイアスV1〜V4におけるトナー濃度差を算出し(ステップS16)、トナー濃度差の最大値が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS17)。閾値以上の場合(ステップS17;YES)、つまり、ステップS13で電源D1が変化させたクリーニングバイアスの範囲で残トナーが十分回収されている場合、クリーニングバイアス設定部9は、トナー濃度差が最大となったときのバイアス値を通常のクリーニングバイアスとして設定する(ステップS18)。
【0057】
尚、トナー濃度差が最大となるバイアス値が複数ある場合、クリーニングバイアス設定部9は該当するバイアス値の中で最も小さい値を通常のクリーニングバイアスとして設定する。
【0058】
一方、トナー濃度差の最大値が閾値より小さい場合(ステップS17;YES)、つまり、ステップS13で電源D1が印加した範囲のクリーニングバイアスでは残トナーを十分回収できない場合、クリーニングバイアス設定部9は、クリーニングバイアスを予め定められた適正値より大きな値、つまり残トナーを逆チャージ化させる値に設定する(ステップS19)。
【0059】
以上、説明したように、転写ベルト132の状態変化によってクリーニング能力が低下し、残トナーを回収しづらい状態になった場合でも、クリーニングバイアスを予め定められた適正値より大きな値にして残トナーを逆チャージ化させることで、残トナーは感光体ドラム135に移動してドラムクリーニング部25に回収される。つまり、残トナーが二次転写時に用紙に転写されることがなく、画像不良を防ぐことができる。
【0060】
また、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、画像形成部13が、濃度調整を行うためのキャリブレーションの実行時に転写ベルト132上にトナーパッチを形成したとき、このトナーパッチが、当該キャリブレーションと、上述したクリーニングバイアス設定処理の両方に用いられるものとしてもよい。すなわち、トナーパッチPは、キャリブレーション用とクリーニングバイアス設定処理用とで兼用される。この場合、トナーパッチを形成する行程と、濃度検出を行う行程とを、キャリブレーションとクリーニングバイアス設定とで兼用できるため、これら各行程に要するトータル時間が削減される。
【0061】
図1乃至図8を用いて上記各実施形態に示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の構成及び処理はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
132 転写ベルト
133 一次転写ローラー
134 二次転写ローラー
135 感光体ドラム
136 二次転写対向ローラー
137 従動ローラー
251 クリーニングブレード
31 クリーニングブラシ
32 トナー回収ローラー
41a、41b 濃度測定部
9 クリーニングバイアス設定部
D1、D2 電源
図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7