(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1張力印加機及び前記第2張力印加機はそれぞれ、前記可動プーリーに連結されて前記光ファイバに印加する荷重を調整可能な荷重可変機構を備える請求項7記載の光ファイバグレーティングの製造装置。
光ファイバのコアにグレーティングを形成するために光ファイバに対して照射されるレーザ光の照射位置よりも前記光ファイバの搬送方向における上流側の第1位置及び下流側の第2位置の少なくとも一方で前記光ファイバを固定する第1ステップと、
前記照射位置に前記レーザ光を照射する第2ステップと、
前記第1位置及び前記第2位置での前記光ファイバの固定を解除する第3ステップと、
前記搬送方向への直線的な往復移動が可能に構成された送り装置で、前記光ファイバを前記搬送方向に所定の長さだけ送る第4ステップと、
を有する光ファイバグレーティングの製造方法。
前記第1ステップの前に、前記第4ステップで送られる長さに応じた長さの光ファイバを、送出機から前記第1位置よりも上流側に配置されて前記光ファイバに付与する張力を印加する第1張力印加機に対して送り出すとともに、前記第2位置よりも下流側に配置されて前記光ファイバに付与する張力を印加する第2張力印加機から巻取機に巻き取るステップを有する請求項10又は請求項11記載の光ファイバグレーティングの製造方法。
前記第2ステップが終了してから再び前記第1ステップが開始される前までの間に、前記光ファイバに印加する荷重を調整する荷重調整ステップを有する、請求項10から請求項12の何れか一項に記載の光ファイバグレーティングの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した位相マスク法及び2光束干渉法の何れを用いる場合であっても、一度にグレーティングを形成することができる長さは限られる。このようなグレーティングを光ファイバの長手方向に渡って複数個作製する時には、光ファイバのある位置にグレーティングを形成した後に光ファイバを予め定められた長さだけ送り出し、光ファイバの次の位置にグレーティングを形成するという動作が繰り返される。尚、グレーティングは、隙間なく(切れ目なく)連続的に形成される場合も、一定の間隔をもって形成される場合もあるが、何れの場合であっても、上記の動作が繰り返される。
【0007】
光ファイバに対して複数個のグレーティングを形成するときには、光ファイバ位相マスクの位置、及び光ファイバの長手方向に対する各グレーティングの位置を高い精度で位置決めし、グレーティングの形成中は光ファイバの位置ずれが生じないようにする必要がある。光ファイバの位置決め精度は、例えば予め規定された基準位置に対する位置誤差が数[μm]以下となる程度の精度にする必要がある。位置決め精度が悪いと、例えば光ファイバに連続的にグレーティングを形成する場合には、先に形成されたグレーティングと次に形成されたグレーティングとの間に隙間が生じ、或いはこれらの重なりが大きくなってしまい、光ファイバグレーティングの特性が悪化してしまうからである。特に、連続した複数個のグレーティングを形成する場合には、各グレーティング間の隙間により連続性が損なわれることや、グレーティングの重なりにより多重反射の影響を受け、反射光の正確な測定ができなくなるといった問題が発生する。
【0008】
前述した特許文献1〜4に開示された製造方法等を用いれば、確かにグレーティングを形成することは可能であると考えられる。しかしながら、前述した特許文献1〜4では、光ファイバの位置決め精度については殆ど考慮されていないことから、ファイバ長手方向に位置精度良く複数配置された光ファイバグレーティングを製造するのは困難であると考えられる。例えば、前述した特許文献1では、光ファイバを長手方向に挿引する位置精度として、±1[cm]以下が挙げられており、この程度の精度では光ファイバに隙間なく連続的にグレーティングを製造することは困難であると考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、グレーティング形成時の位置決め精度を高めることができ、これにより良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造することが可能な光ファイバグレーティングの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、光ファイバ(FB)にレーザ光を照射して前記光ファイバのコア(C)にグレーティング(G)を形成する光ファイバグレーティングの製造装置であって、前記グレーティングの形成が行われる場合に、前記光ファイバに対する前記レーザ光の照射位置よりも前記光ファイバの搬送方向(D1)における上流側の第1位置及び下流側の第2位置の少なくとも一方で前記光ファイバを固定する固定装置(40)と、前記搬送方向への直線的な往復移動が可能に構成され、前記固定装置による前記光ファイバの固定が解除された場合に、前記光ファイバを前記搬送方向に所定の長さだけ送る送り装置(50)と、を備える。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記送り装置が、前記搬送方向に延びるガイドを有する固定部(51)と、前記ガイドに沿って往復移動可能な可動部(52)と、前記可動部に取り付けられて前記光ファイバを把持する把持部(53)と、を備える。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記送り装置が、前記可動部に取り付けられてレーザ光を照射する照射部(54)を備える、請求項2記載の光ファイバグレーティングの製造装置。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記把持部が、前記可動部が前記搬送方向に移動する際に前記光ファイバを把持し、前記可動部が、前記把持部が前記光ファイバを把持しない状態で前記光ファイバの長手方向に沿った方向に移動し、前記照射部が、前記照射位置に配置された位相マスクに対してレーザ光を照射する。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記光ファイバを送り出す送出機(10)と、前記グレーティングが形成された前記光ファイバを巻き取る巻取機(70)と、を備える。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記第1位置よりも上流側に配置され、前記光ファイバに付与する張力を印加する第1張力印加機(20)と、前記第2位置よりも下流側に配置され、前記光ファイバに付与する張力を印加する第2張力印加機(60)と、を備える。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記第1張力印加機及び前記第2張力印加機はそれぞれ、回動可能に支持されて前記光ファイバが掛け回される一対の固定プーリー(21a、21b、61a、61b)と、前記一対の固定プーリーの間の下方において前記光ファイバが半周掛け回される回動可能な可動プーリー(22、62)と、を備える。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記第1張力印加機及び前記第2張力印加機がそれぞれ、前記可動プーリーに連結されて前記光ファイバに印加する荷重を調整可能な荷重可変機構(80、90))を備える。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造装置は、前記荷重可変機構が、前記光ファイバに印加される荷重を測定する荷重測定機構(81、91)と、前記光ファイバに対する荷重の印加を行う荷重印加機構(82、92)と、を備え、前記荷重測定機構の測定結果に応じて前記荷重印加機構を制御することで、前記光ファイバに印加する荷重を調整する。
本発明の光ファイバグレーティングの製造方法は、光ファイバ(FB)のコア(C)にグレーティング(G)を形成するために光ファイバに対して照射されるレーザ光の照射位置よりも前記光ファイバの搬送方向における上流側の第1位置及び下流側の第2位置の少なくとも一方で前記光ファイバを固定する第1ステップ(S12)と、前記照射位置に前記レーザ光を照射する第2ステップ(S13)と、前記第1位置及び前記第2位置での前記光ファイバの固定を解除する第3ステップ(S15)と、前記搬送方向への直線的な往復移動が可能に構成された送り装置(50)で、前記光ファイバを前記搬送方向に所定の長さだけ送る第4ステップ(S16)と、を有する。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造方法は、前記送り装置には、レーザ光を照射する照射部(54)が設けられており、前記第2ステップが、前記送り装置を前記光ファイバの長手方向に沿った方向に移動させ、前記照射部からのレーザ光を前記照射位置に配置された位相マスク(M)に照射することで、前記照射位置に前記レーザ光を照射するステップである。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造方法は、前記第1ステップの前に、前記第4ステップで送られる長さに応じた長さの光ファイバを、送出機(10)から前記第1位置よりも上流側に配置されて前記光ファイバに付与する張力を印加する第1張力印加機(20)に対して送り出すとともに、前記第2位置よりも下流側に配置されて前記光ファイバに付与する張力を印加する第2張力印加機(60)から巻取機(70)に巻き取るステップ(S11)を有する。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造方法は、前記第2ステップが終了してから再び前記第1ステップが開始される前までの間に、前記光ファイバに印加する荷重を調整する荷重調整ステップ(S21)を有する。
また、本発明の光ファイバグレーティングの製造方法は、前記荷重調整ステップが、前記光ファイバに印加されている荷重を測定するステップと、前記荷重の測定結果に応じて、前記光ファイバに印加する荷重を制御するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光ファイバに対して照射されるレーザ光の照射位置よりも光ファイバの搬送方向における上流側の第1位置及び下流側の第2位置の少なくとも一方で光ファイバを固定してグレーティングを形成し、第1位置及び第2位置での光ファイバの固定を解除してから搬送方向への直線的な往復移動が可能に構成された送り装置で光ファイバを搬送方向に所定の長さだけ送るようにしている。このため、グレーティング形成時の位置決め精度等を高めることができ、これにより良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造することが可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバグレーティングの製造装置及び製造方法について詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
〈光ファイバグレーティングの製造装置〉
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバグレーティングの製造装置の構成を示す図である。
図1に示す通り、本実施形態の光ファイバグレーティングの製造装置1は、送出機10、ダンサユニット20(第1張力印加機)、マスクユニット30、クランプ装置40(固定装置)、光ファイバ送り装置50(送り装置)、ダンサユニット60(第2張力印加機)、及び巻取機70を備えており、
図1中の搬送方向D1に光ファイバFBを間欠的に搬送しつつ、光ファイバFBのコアCにグレーティングG(
図2参照)を形成する。
【0015】
送出機10は、光ファイバFBの搬送方向D1における最上流位置に配置されており、不図示の制御装置の制御の下で、グレーティングGが形成されていない光ファイバFBを送り出す。例えば、送出機10は、グレーティングGが形成されていない光ファイバFBが巻回されたリール11を備えており、不図示の制御装置によって指示された回転量だけリール11を回転させることによって、グレーティングGが形成されていない光ファイバFBを一定の長さだけ間欠的に送り出す。尚、送出機10が光ファイバFBを送り出す場合の送り出し速度(線速度)は、例えば数[m/min]程度である。
【0016】
光ファイバFBは、例えば、円柱状のコア、コアの外側面を覆う円筒状のクラッド、及びクラッドの外側面を覆う円筒状の被覆を有する光ファイバ(シングルコアファイバ)である。尚、光ファイバFBは、複数のコアを有するマルチコアファイバであっても良い。また、光ファイバFBは、シングルクラッドファイバであっても良く、ダブルクラッドファイバであっても良い。シングルクラッドファイバは、コアの外側面を覆う円筒状のクラッドが1つである光ファイバであり、ダブルクラッドファイバは、コアの外側面を覆う円筒状のクラッド(インナークラッド)と、インナークラッドの外側面を覆う円筒状のクラッド(アウタークラッド)とを有する光ファイバである。また、光ファイバFBは、被覆が設けられていないものであっても良い。
【0017】
ダンサユニット20は、送出機10の設置位置よりも下流側(光ファイバFBの搬送方向D1における下流側)に設置され、マスクユニット30の上流側において、光ファイバFBに一定の張力を印加するものである。具体的に、ダンサユニット20は、回動可能に支持されて光ファイバFBが掛け回される一対の固定プーリー21a,21bと、一対の固定プーリー21a,21bの間の下方において光ファイバFBが半周掛け回される回動可能な可動プーリー22とを備える。送出機10から送り出された光ファイバFBは、固定プーリー21a、可動プーリー22、及び固定プーリー21bの順に掛け回される。
【0018】
固定プーリー21a,21bは、位置が固定されているが、可動プーリー22は、上下方向(鉛直上下方向)の位置が可変である。具体的に、可動プーリー22は、送出機10による光ファイバFBの送り出し、及び光ファイバ送り装置50による光ファイバFBの搬送方向D1への送りに応じて、下方向に移動し、或いは上方向に移動する。可動プーリー22には受け皿23が設けられており、この受け皿23に載置する重しを変更することで、光ファイバFBに付与する張力を変えることが可能である。尚、光ファイバFBに付与される張力は、可動プーリー22、受け皿23、及び受け皿23に載置される重しの重さを加えて得られる重さの半分の重さに応じた張力である。
【0019】
このようなダンサユニット20を設けるのは、光ファイバFBに対してグレーティングGを形成するときに、光ファイバFBの張力を精密に制御するためである。つまり、張力の変動に起因して光ファイバFBが伸びた状態又は縮んだ状態でグレーティングGが形成されてしまうと、本来の周期とは異なる周期を有するグレーティングGが形成されてしまう。これを避けるために、ダンサユニット20で光ファイバFBの張力を精密に制御するようにしている。尚、例えば、クラッドの直径が125[μm]である石英光ファイバでは、1[gf]の張力変動によってブラッグ波長が約17[pm]程度変化することから、特性の良い光ファイバグレーティングを製造するためには、張力変動を数[gf]以下にする必要がある。尚、1[gf]は、約9.81×10
−3[N]である。
【0020】
マスクユニット30は、ダンサユニット20の設置位置よりも下流側に設置されており、光ファイバFBにレーザ光を照射して、光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成するユニットである。尚、マスクユニット30は、台座BS上に搭載されている。このマスクユニット30は、搬送方向D1に搬送される光ファイバFBの側方に配置される位相マスクM(
図2参照)を備えており、紫外領域のレーザ光を位相マスクに照射して得られる回折光(±1次回折光)の干渉光を光ファイバのコアに照射することによって光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成する。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態における位相マスクを用いたグレーティングの形成方法を説明するための図である。
図2に示す通り、位相マスクMは、搬送方向D1に搬送される光ファイバFBの側方(
図2に示す例では、光ファイバFBの上方)に、光ファイバFBの側面に対して予め規定された間隔をもって配置される。マスクユニット30では、この位相マスクMに対して紫外領域のレーザ光LBが照射される。これにより、+1次回折光及び−1次回折光であるサブビームLB1が生じ、これらサブビームLB1の干渉光が光ファイバFBのコアCに照射されることで、光ファイバFBのコアCにグレーティングGが形成される。尚、位相マスクMに照射するレーザ光LBとしては、例えばエキシマレーザから射出される波長240〜360[nm]程度のレーザ光を用いることができ、そのエネルギー密度は、例えば5〜15[W/cm
2]程度である。
【0022】
クランプ装置40は、マスクユニット30と同様に、台座BS上に搭載されており、光ファイバFBのコアCに対するグレーティングGの形成が行われる場合に、不図示の制御装置の制御の下で光ファイバFBを固定する。このクランプ装置40は、グレーティングGの形成中における光ファイバFBの位置ずれを防止して、良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造するために設けられる。
【0023】
具体的に、クランプ装置40は、2つのクランパ40a,40bを備える。クランパ40aは、マスクユニット30よりも上流側(光ファイバFBの搬送方向D1における上流側)であって、ダンサユニット20よりも下流側の所定位置(第1位置)に設置されている。クランパ40bは、マスクユニット30よりも下流側であって、光ファイバ送り装置50よりも上流側の所定位置(第2位置)に設置されている。尚、クランパ40a,40bの具体的な設置位置は、光ファイバFBの位置決め精度等を考慮して適宜設定される。
【0024】
光ファイバ送り装置50は、マスクユニット30及びクランプ装置40の設置位置よりも下流側に設置されている。この光ファイバ送り装置50は、搬送方向D1への直線的な往復移動が可能に構成され、クランプ装置40による光ファイバFBの固定が解除された場合に、不図示の制御装置の制御の下で光ファイバFBを搬送方向D1に所定の長さだけ送る。例えば、光ファイバFBにグレーティングGを隙間なく(切れ目なく)連続的に形成する場合には、光ファイバ送り装置50は、搬送方向D1における位相マスクMの長さに応じた分だけ光ファイバFBを搬送方向D1に送る。尚、光ファイバ送り装置50が、光ファイバFBを搬送方向Dに送る場合の速度(線速度)は、例えば数[m/min]程度である。
【0025】
光ファイバ送り装置50は、固定ステージ51(固定部)、可動ステージ52(可動部)、クランパ53(把持部)、及び照射ユニット54(照射部)を備える。固定ステージ51は、搬送方向D1に延びる直線状のガイドを有しており、例えば床面に設置される。可動ステージ52は、固定ステージ51のガイドに沿って(光ファイバFBの搬送方向に沿って)往復移動可能に構成されている。この光ファイバ送り装置50の分解能(位置決め精度)は、数[μm]程度以下である。尚、この可動ステージ52は、固定ステージ51のガイドに沿って移動可能に構成された第1ステージと、第1ステージに対して上下方向に延びる軸の回りで回動可能に構成された第2ステージとを備えていても良い。
【0026】
クランパ53は、可動ステージ52の上部に取り付けられており、不図示の制御装置の制御の下で光ファイバFBを把持(固定)する。具体的に、クランパ53は、可動ステージ52が搬送方向D1に移動する際(光ファイバFBが搬送方向D1に送られる際)に、光ファイバFBを把持する。尚、光ファイバFBが、光ファイバ送り装置50によって搬送方向D1に送られない場合には、光ファイバFBは、クランパ53によって把持されない。
【0027】
照射ユニット54は、例えば波長240〜360[nm]程度のレーザ光を射出するエキシマレーザからの光を反射するミラーを備えており、射出部54aから位相マスクMに略垂直な方向にレーザ光LB(
図2参照)を射出する。この照射ユニット54は、可動ステージ52に取り付けられており、可動ステージ52が光ファイバFBの搬送方向D1とは反対の方向に移動する際に、マスクユニット30に設けられた位相マスクMに対してレーザ光LBを照射する。位相マスクMに照射されるレーザ光LBの幅(搬送方向D1における長さ)は、搬送方向D1における位相マスクMの長さに比べて短いため、照射ユニット54を移動させつつレーザ光LBを位相マスクMに照射することによって、レーザ光LBを位相マスクMの全面に照射するようにしている。このように、可動ステージ52が光ファイバFBの搬送方向D1とは反対の方向に移動する際に、位相マスクMに対してレーザ光LBを照射することで、可動ステージ52の無駄な動きが無くなるため、生産効率を高めることができる。尚、エキシマレーザは、照射ユニット54に備えられていても良いし、ミラーを用いる場合は別の場所に用意してもよい。照射ユニット54から射出されるレーザ光LBの幅(搬送方向D1における長さ)は、例えば5[mm]程度であり、照射時におけるレーザ光LBの移動速度は、例えば0.5〜2[mm/sec]程度である。
【0028】
このような光ファイバ送り装置50を用いて光ファイバFBの搬送方向D1への送りを行うのは、グレーティングGの形成時の光ファイバFBの位置決め精度を高めるためである。送出機10のリール11及び巻取機70のリール71(後述する)の回転量を制御することによっても、ある程度の精度で位置決めを行うことは可能である。しかしながら、リール11,71における巻き数に応じた光ファイバFBの巻き径等を考慮して回転量を制御する必要があり、光ファイバ送り装置50で得られる位置決め精度を実現するのは困難である。尚、光ファイバ送り装置50の可動ステージ52に照射ユニット54が取り付けられていることから、ファイバ送り装置と照射ユニットとを個別のステージで駆動する場合に比べて相互の位置ずれ要因を少なくすることができ、照射ユニット54の位置決めも高い精度で行うことが可能である。
【0029】
ダンサユニット60は、光ファイバ送り装置50の設置位置よりも下流側に設置され、マスクユニット30の下流側において、光ファイバFBに一定の張力を印加するものである。具体的に、ダンサユニット60は、ダンサユニット20と同様の構成であり、回動可能に支持されて光ファイバFBが掛け回される一対の固定プーリー61a,61bと、一対の固定プーリー61a,61bの間の下方において光ファイバFBが半周掛け回される回動可能な可動プーリー62とを備える。光ファイバFBは、固定プーリー61a、可動プーリー62、及び固定プーリー61bの順に掛け回される。
【0030】
固定プーリー61a,61bは、位置が固定されているが、可動プーリー62は、上下方向(鉛直上下方向)の位置が可変である。具体的に、可動プーリー62は、光ファイバ送り装置50による光ファイバFBの搬送方向D1への送り、及び巻取機70による光ファイバFBの巻き取りに応じて、下方向に移動し、或いは上方向に移動する。可動プーリー62には受け皿63が設けられており、この受け皿63に載置する重しを変更することで、光ファイバFBに付与する張力を変えることが可能である。尚、光ファイバFBに付与される張力は、可動プーリー62、受け皿63、及び受け皿63に載置される重しの重さを加えて得られる重さの半分の重さに応じた張力である。このようなダンサユニット60を設けるのは、ダンサユニット20を設ける理由と同様の理由である。
【0031】
巻取機70は、光ファイバFBの搬送方向D1における最下流位置に配置されており、不図示の制御装置の制御の下で、グレーティングGが形成された光ファイバFBを巻き取る。例えば、巻取機70は、送出機10が備えるリール11と同様のリール71を備えており、不図示の制御装置によって指示された回転量だけリール71を回転させることによって、グレーティングGが形成された光ファイバFBを一定の長さだけ間欠的に巻き取る。尚、巻取機70が光ファイバFBを巻き取る場合の巻き取り速度(線速度)は、例えば数[m/min]程度である。
【0032】
〈光ファイバグレーティングの製造方法〉
図3は、本発明の第1実施形態による光ファイバグレーティングの製造方法の一例を示すフローチャートである。また、
図4,
図5は、光ファイバグレーティングの製造時におけるファイバグレーティングの製造装置の各状態を示す図である。
図3に示すフローチャートの処理は、光ファイバグレーティングの製造開始によって開始され、光ファイバグレーティングの製造が終了するまで繰り返し実行される。尚、
図4,
図5では、ダンサユニット20,60に設けられた受け皿23,63の図示を省略している。以下では、理解を容易にするために、ブラッグ波長が同一のグレーティングGを光ファイバFBに隙間なく(切れ目なく)連続的に形成する場合を例に挙げて説明する。
【0033】
光ファイバグレーティングの製造が開始されると、まず原点復帰が行われる(ステップS11)。ここで、原点復帰とは、ファイバグレーティングの製造装置1が、光ファイバFBにグレーティングGを形成するために必要な初期状態(
図4(a)に示す状態)になることをいう。この原点復帰では、ファイバグレーティングの製造装置1に設けられた不図示の制御装置によって送出機10及び巻取機70が制御され、一定の長さの光ファイバFBが送出機10から送り出され、一定の長さの光ファイバFBが巻取機70に巻き取られる。尚、光ファイバFBが送出機10から送り出される長さ、及び光ファイバFBが送出機10によって巻き取られる長さは、例えば搬送方向D1における位相マスクMの長さ(例えば、数十〜百[mm]程度)である。
【0034】
具体的には、送出機10からダンサユニット20に対し、一定の長さの分の光ファイバFBが一定の速度(例えば、数[m/min]程度の速度)で送り出される。これにより、ダンサユニット20に設けられた可動プーリー22は、
図4(a)に示す通り、送出機10から送り出された光ファイバFBの長さに応じた分(正確には、送り出された長さの半分の距離)だけ下方に移動する。尚、可動プーリー22は、送出機10から一定の長さの光ファイバFBが送り出されても、床面(送出機10や台座SB等が設置されている床面)に接触しないようにされている。
【0035】
また、ダンサユニット60に掛け回された一定の長さの光ファイバFBが、巻取機70に一定の速度(例えば、数[m/min]程度の速度)で巻き取られる。これにより、ダンサユニット60に設けられた可動プーリー62は、
図4(a)に示す通り、巻取機70によって巻き取られた光ファイバFBの長さに応じた分(正確には、巻き取られた長さの半分の距離)だけ上方に移動する。尚、可動プーリー62は、巻取機70によって一定の長さの分の光ファイバFBが巻き取られても、固定プーリー61a,61bと接触することなくこれらの間の下方に位置するようにされている。
【0036】
次に、
図4(b)に示す通り、クランプ装置40により光ファイバFBが固定される(ステップS12:第1ステップ)。具体的には、ファイバグレーティングの製造装置1に設けられた不図示の制御装置によってクランプ装置40が制御され、クランパ40aに光ファイバFBが挟み込まれるとともに、クランパ40bに光ファイバFBが挟み込まれる。これにより、光ファイバFBは、マスクユニット30よりも上流側の位置(第1位置)とマスクユニット30よりも下流側の位置(第2位置)とにおいて固定される。
【0037】
次いで、マスクユニット30の位相マスクMにレーザ光LBを照射して、光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成する工程が行われる(ステップS13:第2ステップ)。具体的には、ファイバグレーティングの製造装置1に設けられた不図示の制御装置によって光ファイバ送り装置50及び照射ユニット54が制御され、
図4(c)に示す通り、可動ステージ52の移動(光ファイバFBの搬送方向D1とは反対の方向への一定速度での移動)が行われながら、照射ユニット54からのレーザ光LBの照射が行われる。尚、光ファイバ送り装置50に設けられたクランパ53は、光ファイバFBを把持していない状態である。
【0038】
照射ユニット54が可動ステージ52によって一定速度で光ファイバFBの搬送方向D1とは反対の方向に搬送されつつ、照射ユニット54の射出部54aから下方に照射されるレーザ光LBが、マスクユニット30に設けられた位相マスクMを走査するように位相マスクMに照射される。レーザ光LBが位相マスクMに照射されると、+1次回折光及び−1次回折光であるサブビームLB1が生じ(
図2参照)、これらサブビームLB1の干渉光が光ファイバFBのコアCに照射されることで、光ファイバFBのコアCにグレーティングGが形成される。尚、グレーティングGの形成時における可動ステージ52の移動距離は、搬送方向D1における位相マスクMの長さ(例えば、百[mm]程度)と同程度の距離であり、移動完了後は照射ユニット54からのレーザ光LBの射出が停止される。
【0039】
続いて、
図5(a)に示す通り、光ファイバ送り装置50によって光ファイバFBが把持される(ステップS14)。具体的には、ファイバグレーティングの製造装置1に設けられた不図示の制御装置によって光ファイバ送り装置50が制御され、クランパ53に光ファイバFBが挟み込まれる。これにより、光ファイバFBは、クランプ装置40によって固定され、且つ光ファイバ送り装置50のクランパ53によって把持された状態になる。
【0040】
その後、
図5(b)に示す通り、クランプ装置40による光ファイバFBの固定が解除される(ステップS15:第3ステップ)。具体的には、ファイバグレーティングの製造装置1に設けられた不図示の制御装置によってクランプ装置40が制御され、クランパ40aによる光ファイバFBの挟み込みが解除されるとともに、クランパ40bによる光ファイバFBの挟み込みが解除される。
【0041】
クランプ装置40による光ファイバFBの固定が解除されると、光ファイバ送り装置50によって一定の長さの光ファイバFBが搬送方向D1に送られる(ステップS16:第4ステップ)。具体的には、ファイバグレーティングの製造装置1に設けられた不図示の制御装置によって光ファイバ送り装置50が制御され、
図5(c)に示す通り、可動ステージ52が、光ファイバFBの搬送方向D1に一定速度で移動される。
【0042】
ここで、光ファイバFBは、光ファイバ送り装置50に設けられたクランパ53によって把持された状態である。このため、光ファイバFBは、可動ステージ52の移動に伴って搬送方向D1に送られる。尚、光ファイバFBが光ファイバ送り装置50によって送られる長さは、搬送方向D1における位相マスクMの長さ(例えば、数十〜百[mm]程度)であり、光ファイバFBが光ファイバ送り装置50によって送られる速度は、例えば数[m/min]程度の速度である。
【0043】
光ファイバ送り装置50による光ファイバFBの送りが完了すると、ダンサユニット20に設けられた可動プーリー22は、
図5(c)に示す通り、光ファイバ送り装置50によって送られた光ファイバFBの長さに応じた分(正確には、送された長さの半分の距離)だけ上方に移動する。これに対し、ダンサユニット60に設けられた可動プーリー62は、
図5(c)に示す通り、光ファイバ送り装置50によって送られた光ファイバFBの長さに応じた分(正確には、送された長さの半分の距離)だけ下方に移動する。
【0044】
光ファイバFBの送りが完了すると、クランパ53による把持は解除され、再び原点復帰が行われる(ステップS11)。以下、
図3に示すフローチャートの処理が繰り返し行実行される。このような処理が行われることで、
図1中の搬送方向D1に光ファイバFBを間欠的に搬送しつつ、光ファイバFBのコアCにブラッグ波長が同一のグレーティングGが順次形成される。尚、
図3に示すフローチャートの処理は、光ファイバグレーティングの製造が終了するまで繰り返し実行される。
【0045】
以上の通り、本実施形態では、クランプ装置40によって光ファイバFBをマスクユニット30よりも上流側の位置(第1位置)とマスクユニット30よりも下流側の位置(第2位置)とにおいて固定し、マスクユニット30の位相マスクMにレーザ光LBを照射して光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成している。そして、クランプ装置40による光ファイバFBの固定を解除した後で、光ファイバ送り装置50で光ファイバFBを搬送方向D1に一定の長さだけ送るようにしている。このため、グレーティングGの形成時の位置決め精度等を高めることができ、これにより良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造することが可能である。また、本実施形態では、ダンサユニット20,60によって、搬送中に光ファイバFBに一定張力が印加された状態が維持されるようにしている。このため、グレーティングG毎のブラッグ波長のばらつきを小さくすることができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
〈光ファイバグレーティングの製造装置〉
図6は、本発明の第2実施形態による光ファイバグレーティングの製造装置の構成を示す図である。
図6に示す通り、本実施形態の光ファイバグレーティングの製造装置2は、
図1に示す光ファイバグレーティングの製造装置1に設けられたダンサユニット20,60の受け皿23,63を省略し、ダンサユニット20,60にそれぞれ荷重可変機構80,90を設けた構成である。
【0047】
このような光ファイバグレーティングの製造装置2は、光ファイバFBの高精度での位置決めに加えて、光ファイバFBに付与する張力の精密な制御を可能にすることで、第1実施形態の光ファイバグレーティングの製造装置1よりも、特性の良いグレーティングGを製造可能としたものである。例えば、ブラッグ波長が同じグレーティングGを連続的に形成する場合にはブラッグ波長のずれが生じないようにし、ブラッグ波長が変化するグレーティングGを形成する場合にはブラッグ波長を精度良く変化させるようにするものである。
【0048】
荷重可変機構80は、荷重測定機構81及び荷重印加機構82を備えており、可動プーリー22の上方に配されて、可動プーリー22を介して光ファイバFBに印加する荷重を調整する。具体的に、荷重可変機構80は、可動プーリー22が回動可能なように可動プーリー22の回転軸に連結されており、可動プーリー22を下方に押し下げ、或いは可動プーリー22を上方に押し上げることによって、光ファイバFBに印加する荷重を調整する。
【0049】
荷重測定機構81は、可動プーリー22に連結された荷重印加機構82の駆動軸83に取り付けられており、光ファイバFBに印加される荷重を測定する。この荷重測定機構81としては、例えばロードセルを用いることができる。荷重印加機構82は、光ファイバFBに対する荷重の印加を行う。この荷重印加機構82としては、例えば電磁弁の制御によって駆動されるエアシリンダを用いることができる。荷重可変機構80は、例えば荷重測定機構81で測定される荷重(光ファイバFBの張力)が一定となるように荷重印加機構82を制御する。尚、荷重印加機構82は、電気的に制御可能なものであれば良く、例えば1軸アクチュエータ等でも代用可能である。
【0050】
荷重可変機構90は、荷重可変機構80と同様に、荷重測定機構91及び荷重印加機構92を備えており、可動プーリー62の上方に配されて、可動プーリー62を介して光ファイバFBに印加する荷重を調整する。具体的に、荷重可変機構90は、荷重可変機構80と同様に、可動プーリー62が回動可能なように可動プーリー62の回転軸に連結されており、可動プーリー62を下方に押し下げ、或いは可動プーリー62を上方に押し上げることによって、光ファイバFBに印加する荷重を調整する。
【0051】
荷重測定機構91及び荷重印加機構92は、荷重測定機構81及び荷重印加機構82とそれぞれ同様のものである。尚、荷重測定機構91は、可動プーリー62に連結された荷重印加機構92の駆動軸93に取り付けられている。荷重測定機構91としては、例えばロードセルを用いることができ、荷重印加機構92としては、例えば電磁弁の制御によって駆動されるエアシリンダを用いることができる。荷重可変機構90も、荷重可変機構80と同様に、例えば荷重測定機構91で測定される荷重(光ファイバFBの張力)が一定となるように荷重印加機構92を制御する。尚、荷重印加機構92は、電気的に制御可能なものであれば良く、例えば1軸アクチュエータ等でも代用可能である。
【0052】
本実施形態において、光ファイバ送り装置50は、荷重可変機構80,90によって光ファイバFBに印加された荷重(張力)に応じて、搬送方向D1への光ファイバFBの送り量を調整可能にされている。これは、荷重可変機構80,90によって光ファイバFBに印加する荷重を変化させた場合に生ずる光ファイバFBの伸び量の変化を補償し、例えば連続性が維持された特性の良いグレーティングGを製造可能にするためである。
【0053】
〈光ファイバグレーティングの製造方法〉
図7は、本発明の第2実施形態による光ファイバグレーティングの製造方法の一例を示すフローチャートである。尚、
図7に示すフローチャートの処理は、
図3に示すフローチャートの処理と同様に、光ファイバグレーティングの製造開始によって開始され、光ファイバグレーティングの製造が終了するまで繰り返し実行される。尚、以下では、理解を容易にするために、第1実施形態と同様に、ブラッグ波長が同一のグレーティングGを光ファイバFBに隙間なく(切れ目なく)連続的に形成する場合を例に挙げて説明する。
【0054】
図7に示すフローチャートと
図3に示すフローチャートとが異なる点は、
図7に示すフローチャートにおいて、ステップS11の処理とステップS12の処理との間にステップS21の処理が設けられている点である。光ファイバグレーティングの製造が開始されると、第1実施形態と同様に、まず原点復帰が行われる(ステップS11)。原点復帰が完了すると、光ファイバFBの荷重を測定し、その測定結果に応じて光ファイバFBの荷重を制御する処理が、荷重可変機構80,90で行われる(ステップS21)。
【0055】
ここでは、上述の通り、ブラッグ波長が同一のグレーティングGを光ファイバFBに隙間なく(切れ目なく)連続的に形成する場合を考えている。このため、例えば荷重可変機構80においては、荷重測定機構81で測定される荷重が予め規定された荷重になるように荷重印加機構82が制御され、荷重可変機構90においては、荷重測定機構91で測定される荷重が予め規定された荷重になるように荷重印加機構92が制御される。
【0056】
光ファイバFBの荷重を制御する処理が完了すると、第1実施形態と同様に、クランプ装置40により光ファイバFBが固定され(ステップS12:第1ステップ)、マスクユニット30の位相マスクMにレーザ光LBを照射して、光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成する工程が行われる(ステップS13:第2ステップ)。グレーティングGの形成が完了すると、光ファイバ送り装置50による光ファイバFBの把持(ステップS14)、及びクランプ装置40による光ファイバFBの固定解除(ステップS15:第3ステップ)が順次行われる。続いて、光ファイバ送り装置50によって一定の長さの光ファイバFBが搬送方向D1に送られる(ステップS16:第4ステップ)。
【0057】
以上の処理が完了すると、クランパ53による把持が解除され、再び原点復帰が行われる(ステップS11)。以下、
図7に示すフローチャートの処理が繰り返し行実行される。このような処理が行われることで、
図1中の搬送方向D1に光ファイバFBを間欠的に搬送しつつ、光ファイバFBの張力が一定にされた状態で、光ファイバFBのコアCにブラッグ波長が同一のグレーティングGが順次形成される。尚、
図7に示すフローチャートの処理は、光ファイバグレーティングの製造が終了するまで繰り返し実行される。
【0058】
尚、上述の実施形態では、理解を容易にするために、
図7に示すステップS11とステップS12との間に、ステップS21の処理(光ファイバFBの荷重を測定し、その測定結果に応じて光ファイバFBの荷重を制御する処理)が設けられた例について説明した。しかしながら、ステップS21の処理は、マスクユニット30の位相マスクMにレーザ光LBを照射して光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成する工程(ステップS13)が終了してから、次に光ファイバFBがクランプ装置40によって固定される(ステップS12)までの間であれば、任意のタイミングで行うことができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、荷重可変機構80,90の各々において、測定される荷重が予め規定された荷重になるように制御して、ブラッグ波長が同一のグレーティングGを光ファイバFBに隙間なく(切れ目なく)連続的に形成する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ステップS21の処理が行われる度に、荷重可変機構80,90によって光ファイバFBに異なる荷重を印加するようにしても良い。これにより、例えばブラッグ波長が階段状に変化するグレーティングGを形成することができる。尚、荷重可変機構80,90によって光ファイバFBに印加する荷重を変化させた場合には、光ファイバFBの伸び量の変化を補償するために、荷重の変化量に応じて搬送方向D1への光ファイバFBの送り量が調整される。
【0060】
以上の通り、本実施形態では、位相マスクMにレーザ光LBを照射して1つのグレーティングGの形成が終了してから、次のグレーティングGの形成が開始されるまで(正確には、次に光ファイバFBがクランプ装置40によって固定されるまで)の間に、荷重可変機構80,90によって、光ファイバFBに与える調整を制御するようにしている。このため、同一のブラッグ波長を有するグレーティングGであっても、複数の異なるブラッグ波長を有するグレーティングGであっても、高い精度で製造することができる。
【0061】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、クランプ装置40によって光ファイバFBを固定した状態でマスクユニット30の位相マスクMにレーザ光LBを照射して光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成している。そして、クランプ装置40による光ファイバFBの固定を解除した後で、光ファイバ送り装置50で光ファイバFBを搬送方向D1に一定の長さだけ送るようにしている。このため、グレーティングGの形成時の位置決め精度等を高めることができ、これにより良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造することが可能である。
【0062】
更に、本実施形態では、荷重可変機構80,90によって光ファイバFBに印加する荷重を変化させた場合に、荷重の変化量に応じて光ファイバ送り装置50による搬送方向D1への光ファイバFBの送り量を調整するようにしている。これにより、光ファイバFBに印加する荷重を変化させることで生ずる光ファイバFBの伸び量の変化を補償することができ、グレーティングGの間隔を精度良く制御することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、光ファイバ送り装置50の可動ステージ52に照射ユニット54が取り付けられている例について説明した。しかしながら、照射ユニット54は、必ずしも光ファイバ送り装置50の可動ステージ52に設けられている必要はなく、光ファイバ送り装置50とは別に設けられていても良い。光ファイバ送り装置50と照射ユニット54とを別に設ける場合には、例えば照射ユニット54を光ファイバ送り装置50と同程度の位置決め精度を有する移動装置に取り付ければ良い。
【0064】
また、上記実施形態では、可動ステージ52を光ファイバFBの搬送方向D1とは反対の方向に移動させながら、位相マスクMにレーザ光LBを照射する例について説明した。しかしながら、可動ステージ52を光ファイバFBの長手方向に往復させながら位相マスクMにレーザ光LBを照射しても良く、また可動ステージ52が停止している状態で位相マスクMにレーザ光LBを照射しても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、クランプ装置40によって光ファイバFBをマスクユニット30よりも上流側の位置(第1位置)とマスクユニット30よりも下流側の位置(第2位置)とにおいて固定する例について説明した。しかしながら、良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造することができるのであれば、光ファイバFBは、上記の位置の何れか一方の位置のみで固定されても良い。
【0066】
また、ダンサユニット20は、
図1に示す構成(2つの固定プーリー21a,21b、1つの可動プーリー22、及び受け皿23を備える構成)である必要はない。同様に、ダンサユニット60は、
図1に示す構成(2つの固定プーリー61a,61b、1つの可動プーリー62、及び受け皿63を備える構成)である必要はない。光ファイバFBのコアCにグレーティングGを形成する上で、光ファイバFBに一定の張力を適切に印加することができるのであれば任意のものを用いることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、位相マスクMを用いて位相マスク法によりグレーティングGを形成する光ファイバグレーティングの製造装置及び製造方法について説明した。しかしながら、本発明は、位相マスク法によりグレーティングGを形成する光ファイバグレーティングの製造装置及び製造方法に限定される訳ではなく、他の方法(例えば、2光束干渉法)によりグレーティングGを形成する光ファイバグレーティングの製造装置及び製造方法に適用可能である。
【課題】グレーティング形成時の位置決め精度等を高めることができ、これにより良好な特性を有する光ファイバグレーティングを製造することが可能な光ファイバグレーティングの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】光ファイバグレーティングの製造装置1は、光ファイバFBにレーザ光を照射して光ファイバFBのコアにグレーティングを形成するマスクユニット30と、グレーティングの形成が行われる場合に、光ファイバFBに対するレーザ光の照射位置よりも光ファイバの搬送方向D1における上流側の第1位置及び下流側の第2位置の少なくとも一方で光ファイバFBを固定するクランプ装置40と、搬送方向D1への直線的な往復移動が可能に構成され、クランプ装置40による光ファイバFBの固定が解除された場合に、光ファイバFBを搬送方向D1に所定の長さだけ送る光ファイバ送り装置50とを備える。