(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加工澱粉が、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グルコール酸ナトリウム、及び澱粉リン酸エステルナトリウムから選ばれる少なくとも1種の加工澱粉をアルファー化加工したもの、部分的にアルファー化加工したもの、アルファー化加工をしていないもの、及び生澱粉をアルファー化したものから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のセルロース組成物。
前記加工澱粉が、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋アルファー化澱粉、アルファー化澱粉から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース組成物。
前記水溶性多糖類が、キサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びサイリウムシードガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース組成物。
小麦粉、糖類、油脂を含む原料から得られるベーカリー製品において、短径が0.5mm以上であり、長径/短径比が1.0〜5.0であり、比重が1.0g/mL以上の具材を1質量%以上含み、さらに請求項1〜7のいずれか一項に記載のセルロース組成物を0.1質量%以上含有するベーカリー製品。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明について、以下具体的に説明する。
<セルロース組成物>
本発明のセルロース組成物は、セルロースと水溶性多糖類を含み、1質量%の水分散体の貯蔵弾性率(G’)が0.1Pa以上であるセルロース複合体と加工澱粉を含み、セルロース複合体と加工澱粉の質量比が、5/95〜90/10の範囲で組み合わされた組成物である。セルロース複合体と加工澱粉の質量比は、好ましくは5/95〜80/20の範囲である。セルロース複合体と加工澱粉の質量比が5/95以上の範囲であることによって、十分なレベルの油の分散安定性、懸濁安定性、保形性が得られる。また、セルロース複合体と加工澱粉の質量比が90/10以下の範囲であることによって、高塩分濃度の水系媒体中での分散性が良好になる。すなわち、複合化を経ないセルロースと加工澱粉、必要に応じて多糖類を組み合わせるのみではなく、セルロース複合体と加工澱粉を特定比率で含むセルロース組成物とすることによって、はじめて上記の所望の効果が達成される。セルロース複合体と加工澱粉の質量比が80/20以下(かつ5/95以上)の範囲である場合には、上記の諸点において、より優れた効果が得られる。
【0035】
本発明のセルロース組成物は、セルロース複合体と加工澱粉を特定比率で含むことで、高塩分濃度の水系媒体中で、容易に分散できるようになる。この質量比は、用いる加工澱粉により、好適な範囲が異なるため、以下の<加工澱粉>の項において、詳細に説明する。
<セルロース組成物の分散性>
本発明のセルロース組成物は、高塩分濃度の水系媒体中で容易に分散し、油の分散安定性に優れるものである。この分散性を達成するためには、本発明のセルロース組成物は、該セルロース組成物を、5質量%の塩化ナトリウムの水溶液中に0.01質量%濃度となるように分散させ、超音波処理を2分間処理した際に、レーザー回折/散乱式粒度分布計で測定される粒度分布(屈折率1.04における体積頻度ヒストグラム)において、1μm以下の成分が6%以上検出されることが必要である。上述の測定における1μm以下の成分の量(屈折率1.04における体積頻度ヒストグラム)のことを、本発明では、微粒子成分量(BS量)と呼ぶ。
【0036】
本BS量の測定方法は、以下の通りである。まず、本発明のセルロース組成物を量りとり、0.01質量%濃度となるように、5質量%の塩化ナトリウム水溶液に分散させる。次に、このセルロース組成物の分散液を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、フローセル)に仕込み、2分間の超音波処理を行い、屈折率1.04で、粒度分布を測定する。ここで、得られた体積頻度ヒストグラムにおいて、全体に占める1μm以下の粒子の割合(全体積頻度に対する百分率)を算出することで、本BS量が計測される。
【0037】
このBS量が、6%以上であると、セルロース組成物の分散性が良好となり、非乳化型の油の分散安定性が高くなる。BS量は、大きいほど、セルロース組成物の機能が高くなるため好ましい。この好ましい範囲としては、7%以上であり、より好ましくは、10%以上、特に好ましくは、12%以上である。上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては99%以下である。
<セルロース組成物におけるセルロース複合体の含有量>
本発明のセルロース組成物におけるセルロース複合体の含有量は、特に限定されないが、この組成物の総量に対して5質量%以上であることが好ましい。セルロース組成物において、セルロース複合体の含有量が高いほど、油の分散安定性、懸濁安定性、保形性等の物性が優れる。より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは45質量%以上である。上限は特に設定されないが、セルロース複合体の含有量が高くなると、相対的に加工澱粉の含有量が低くなり、セルロース組成物の分散性が低下する。このため、上限として好ましい範囲は90質量%以下であり、80質量%以下がより好ましい。
<セルロース複合体>
本発明でいうセルロース複合体とは、セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、水溶性多糖類で被覆(複合化)されたセルロースのことをいう。水溶性多糖類は、以下で例示される。
<セルロース>
本発明において、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
<セルロースの平均重合度>
本発明に用いるセルロースの平均重合度は、500以下の結晶セルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、水溶性多糖類との複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
<セルロースの加水分解>
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと水溶性多糖類に機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、水溶性多糖類との複合化の制御が容易になる。
【0038】
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら、加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明に用いるセルロース複合体中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本発明のセルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
【0039】
L/Dは、懸濁安定性の点で20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましく、4以下が最も好ましい。
<水溶性多糖類>
本発明に用いるセルロース複合体中の水溶性多糖類としては、例えば、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カードラン、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、キチン、キトサン、グアーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンドシードガム、デキストラン、プルラン、HMペクチン、LMペクチン、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
上述の水溶性ガムの中でも、セルロースとの複合化の点で、陰イオン性の多糖類が好ましい。
<陰イオン性多糖類>
本発明に用いる陰イオン性の多糖類とは、それを水中で分散又は溶解した際に、陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなるものである。本発明のセルロース複合体は、陰イオン性多糖類を用いることで、セルロースとの複合化がより促進される。その結果、このセルロース複合体が配合されたセルロース組成物は、油の分散安定効果、懸濁安定効果、保形効果が高まるため好ましい。
【0041】
陰イオン性多糖類としては、セルロースとの複合化の点で、以下のものが好適である。例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、キサンタンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、HMペクチン、LMペクチン等が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
さらに、上述の陰イオン性多糖類のなかでも、セルロース組成物の油の分散安定効果、懸濁安定効果、保形効果を高めるためには、キサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、サイリウムシードガムが、好ましい。
【0043】
より好適には、キサンタンガム、ジェランガムであり、最も好適には、キサンタンガムである。
<セルロース複合体におけるセルロースと水溶性多糖類の質量比>
本発明に用いるセルロース複合体において、セルロースと水溶性多糖類の質量比は、99/1〜50/50が好ましい。質量比がこの範囲となることで、セルロース複合体におけるセルロース表面が、水溶性多糖類で充分に被覆(複合化)されると考えられる。従って、この複合体を用いたセルロース組成物は、油の分散安定効果、懸濁安定効果、保形効果が高くなる傾向がある。
【0044】
この質量比は、用いる多糖類により、さらに好ましい範囲が異なるため、以下にて詳細に説明する。
<キサンタンガム>
キサンタンガムとは、トウモロコシなどの澱粉を細菌 Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られるガムであり、 グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなるものである。本発明で用いるキサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。上記の構造を有し、食品で使用できるグレードであれば粘度に制限なく使用できる。
【0045】
本発明のセルロース複合体に用いる場合は、セルロースとキサンタンガムの質量比は、99/1〜80/20が好ましい。より好ましくは99/1〜90/10であり、さらに好ましくは96/4〜92/8である。
<ジェランガム>
ジェランガムとは、Sphingomonas elodeaという微生物が産出する多糖類である。ジェランガムは、ネイティブジェランガムと脱アシル型ジェランガムの2種類があるが、本発明では食品で使用できるグレードであれば制限なく使用できる。
【0046】
ここで、セルロースとジェランガムとの質量比は、99/1〜80/20であることが好ましい。より好ましくは、99/1〜90/10であり、さらに好ましくは98/2〜94/6である。
<サイリウムシードガム>
サイリウムシードガム(PSGと略称されることもある)とは、オオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)のことである。具体的には、イサゴール、プランタゴ・オバタ種皮から得られる多糖類が挙げられる。
【0047】
本発明においてサイリウムシードガムは、上記のオオバコ科の植物(Plantago ovata Forskal)の種子の外皮から得られる多糖類(ガム類)を含むものであれば、きょう雑物を含んでいるものも該当する。例えば、当該多糖類を水等の溶媒で抽出されたガムも、外皮を粉砕されたハスクも、それらを組み合わせ処理されたものも、いずれのものも含まれる。また、それらは、粉末状、塊状、ケーク状、液状のいずれの状態であってもよい。
【0048】
その化学構造は、非セルロース多糖類において、主鎖がキシランとして高度に枝分かれしており、側鎖がアラビノース、キシロース、ガラクツロン酸、ラムノースからなる構造である。側鎖における、その糖構成比は、D−キシロース約60質量%、L−アラビノース約20質量%、L−ラムノース約10質量%、D−ガラクツロン酸約10質量%である。これらの質量比は、PSGの原料、及びPSGの製造工程により5質量%前後するものである。また、上述の構造を有していれば、粘度を調製するために、酸、キシラナーゼ様の酵素等により加水分解してもよい。
【0049】
ここで、セルロースとサイリウムシードガムとの質量比は、99/1〜80/20であることが好ましい。より好ましくは、99/1〜90/10であり、さらに好ましくは98/2〜94/6である。
<カラヤガム>
カラヤガムとは、アオギリ科カラヤの木の樹液を精製したもののことである。市販のグレードとしては、色調、樹皮、異物の割合から、Hand−picked−selected(HPS)、Superior No.1、Superior No.2、Superior No.3、Shiftingsがある(株式会社幸書房2001年発行、国崎、佐野著「食品多糖類」88ページ、表4−4参照)。本発明で用いるカラヤガムは食品で使用できるグレードであれば制限なく使用できる。この中でも、本発明に用いるには、HPS、Superior No.1が好ましく、HPSが複合体の懸濁安定性の点で好ましい。特に、中央および北インドのSterculia urens由来のものが、複合体の懸濁安定性の点で好適である。
【0050】
ここで、セルロースとカラヤガムとの質量比は、99/1〜80/20であることが好ましい。より好ましくは、94/6〜84/16であり、さらに好ましくは92/8〜86/14である。
<カルボキシメチルセルロースナトリウム>
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)とは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化して得られる。
【0051】
特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、0.6〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、CMC−Naの分散性が十分であること、及び製造が容易であることから好ましい。より好ましくは、置換度は0.6〜1.3である。またCMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。特に好ましくは、20mPa・s以下である。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロース、親水性ガムとの複合化が促進されやすい。下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
【0052】
ここで、セルロースとCMC−Naとの質量比は、99/1〜80/20であることが好ましい。より好ましくは、94/6〜84/16であり、さらに好ましくは92/8〜86/14である。
<セルロース複合体に配合される親水性物質>
本発明に用いるセルロース複合体は、水への分散性を高める目的で、セルロースと、水溶性多糖類以外に、親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等、ビタミン類、コラーゲン、アズレン、キトサンが適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましく、デキストリンが最も好ましい。
【0053】
セルロース複合体における親水性物質の配合量には制限はないが、好ましい範囲としては、5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。親水性物質が多いほど水分散性が高まるが、油の分散安定性、懸濁安定性、保形性等のセルロース複合体の物性が低くなるため、上限としては、50質量%以下が好ましい。
<その他添加剤>
本発明に用いるセルロース複合体に、陰イオン性多糖類を用いる場合には、複合化を進める目的で、二価のイオン性物質を配合してもよい。二価のイオン性物質は、水に溶解した際に、カルシウム、マグネシウム等の二価のイオンを生じるものであり、具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が例示される。この物質は、セルロースと、陰イオン性多糖類を複合化する前に添加されることが好ましい。二価のイオン性物質の添加量としては、セルロース複合体において、好ましくは0.5質量%以上である。より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。この物質は、配合量が高すぎると、セルロース組成物を添加された飲食品の味に影響するため、上限としては10質量%以下が好ましい。
<セルロース複合体の製造方法>
次に、本発明に用いるセルロース複合体の製造方法を説明する。
【0054】
本発明に用いるセルロース複合体は、混練工程においてセルロースと水溶性多糖類に機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に多糖類を複合化させることによって得られる。また、セルロースと水溶性多糖類以外の親水性物質、及び、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明に用いるセルロース複合体は、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
【0055】
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は、特に限定されず、成り行きでもよいが、こん練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
【0056】
また、混練温度は、低いほど、水溶性多糖類の劣化が抑制され、結果として得られるセルロース複合体の油の分散安定性、懸濁安定性、保形性が高くなるため好ましい。混練温度は、0〜100℃が好ましく、90℃以下がより好ましく、70℃以下が特に好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下が最も好ましい。高エネルギー下で、上記の混練温度を維持するに、ジャケット冷却、放熱等の徐熱を工夫してもよい。
【0057】
混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物が緩い状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施しても良い。
【0058】
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、20Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが20Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと水溶性多糖類、又は、セルロース、水溶性多糖類、及びその他水溶性ガム等との複合化が促進され、中性のセルロース複合体の懸濁安定性が向上する。混練エネルギーは、より好ましくは50Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上であり、特に好ましくは200Wh/kg以上であり、一層好ましくは300Wh/kg以上であり、最も好ましくは400Wh/kg以上である。混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。また、セルロース複合体における複合化が進むことで、セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体のメジアン径が大きくなる。
【0059】
本発明のセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20質量%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。また、1質量%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5質量%以上である。セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、好ましくは、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度である。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することである。これらの乾燥粉末は、一般的に、セルロース複合体の微粒子が凝集し、二次凝集体を形成しているものである。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散しうる。二次凝集体の見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径として定義することができる。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明のセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。
【0060】
本発明に用いるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)は、0.1Pa以上である。この貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと水溶性多糖類との複合化の程度を表すものである。この貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと水溶性多糖類との複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。本発明のセルロース組成物は、この貯蔵弾性率が高く、複合化が促進されたセルロース複合体を用いることで、高塩分濃度の水系媒体中で、容易に分散し、非乳化型の油の分散安定性に優れ、懸濁安定性と、保形性を兼ね備えるものとなる。
【0061】
本発明において、貯蔵弾性率は、セルロース複合体を1質量%で純水中に分散させた水分散体(好ましくはpH6〜7)の動的粘弾性測定により得られる値である。水分散体に歪みを与えた際の、セルロース複合体のネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分が、貯蔵弾性率として表される。
【0062】
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力の歪み依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型)を用い、所定の条件(温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、歪み:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと水溶性多糖類が高度に複合化していることを表している。
【0063】
セルロース複合体の貯蔵弾性率は、0.5Pa以上が好ましく、1.0Pa以上がより好ましく、さらに好ましくは1.3Pa以上であり、特に好ましくは1.6Pa以上であり、最も好ましくは、1.8Pa以上である。
【0064】
セルロース複合体の貯蔵弾性率の上限は、特に限定されるものではないが、セルロース組成物を食品に添加した際の軽い食感を勘案すると、6.0Pa以下であることが好ましい。6.0Pa以下であると、油の安定性が充分に得られるセルロース組成物の添加量(食品により異なるが、詳細は後述した)において、食感が軽いため好ましい。
<セルロース複合体の体積平均粒子径>
本発明に用いるセルロース複合体の体積平均粒子径は、20μm以下であることが好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
【0065】
セルロース複合体の体積平均粒子径が20μm以下であると、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは、体積平均粒子径は15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。体積平均粒子径が小さいほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上するため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
<セルロース複合体のコロイド状成分量>
さらに、本発明に用いるセルロース複合体は、コロイド状セルロース成分を30質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、親水性ガム、水溶性ガムを含む)の質量百分率のことである。セルロース複合体におけるコロイド状セルロース成分の含有量が30質量%以上であると、分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。コロイド状セルロース成分含有量は、多ければ多いほど、分散安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。コロイド状セルロース成分の大きさは好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以下である。ここでいう大きさは、上記の遠心後の上澄みを、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。
<使用可能なセルロース複合体の例>
本発明のセルロース組成物に使用可能なセルロース複合体は、上述の複合化工程を経たものであれば、いずれを使用しても良い。具体的には、本発明に用いるセルロース複合体は、上述の機械的せん断を経た、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態のものも使用することができる。但し、セルロースと、水溶性多糖類との複合体に関しては、乾燥を経ることで、さらにセルロース複合体の機能(油の分散安定性、懸濁安定性、保形性)が高まるため、複合化工程後に、乾燥されたものを用いることが好ましい。
【0066】
市販品で容易に入手が可能なセルロース複合体として、旭化成ケミカルズ社製の商品名セオラス(登録商標)のRC−591(セルロース/CMC−Na=89/11(質量比))、RC−591S(セルロース/CMC−Na=89/11(質量比))、RC−N81(セルロース/カラヤガム/デキストリン=80/10/10(質量比))、RC−N30(セルロース/キサンタンガム/デキストリン=75/5/20(質量比))、SP−N50(セルロース/キサンタンガム/デキストリン=80/10/10(質量比))、SC−900(セルロース/キサンタンガム/CMC−Na/デキストリン/ナタネ油=72/2.8/5/20/0.2(質量比))、SC−900S(セルロース/キサンタンガム/CMC−Na/デキストリン/ナタネ油=72/2.8/5/20/0.2(質量比))が挙げられる。
【0067】
非乳化型の油の分散安定性能に関しては、RC−N30、SP−N50、SC−900、SC−900S、RC−N81が好ましく、その中でも、キサンタンガムが配合されたRC−N30、SP−N50、SC−900、SC−900Sがより好ましい。さらに機能と分散性のバランスから、RC−N30が最も好ましい。
<加工澱粉>
本発明のセルロース組成物は、加工澱粉を含む。本発明のセルロース組成物は、加工澱粉を含むことで、高塩分濃度の水系媒体中で、容易に分散できるようになる。
【0068】
本発明のセルロース組成物に用いられる加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グルコール酸ナトリウム、澱粉リン酸エステルナトリウムが好ましい。これらは、アルファー化加工したもの、部分的にアルファー化加工したもの、アルファー化加工をしていないもののうち、いずれの形態のものでも使用できる。また、酸処理された澱粉、又は生澱粉をアルファー化したアルファー化澱粉も使用できる。上述の加工澱粉は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0069】
特に飲食品に用いる場合には、厚生労働省令第151号にて定められた11種の加工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉)、並びに生澱粉をアルファー化したアルファー化澱粉が好ましい。
【0070】
上述の中でも、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、リン酸架橋アルファー化澱粉、アルファー化澱粉がセルロース組成物の分散性の点でより好ましく、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋アルファー化澱粉がさらに好ましく、ヒドロキシプロピル化澱粉が最も好ましい。
<加工澱粉の原料となる澱粉>
加工澱粉の原料としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、モチ種馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉、くず澱粉等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、セルロース組成物の分散性の点からモチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、タピオカ澱粉が好ましく、より好ましくはモチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)である。
<ヒドロキシプロピル化澱粉>
ここでのヒドロキシプロピル化澱粉とは、澱粉に対して、例えば薬剤としてプロピレンオキサイドなどを用いてエーテル結合でヒドロキシプロピル基を付加した澱粉を意味する。特に食品に用いられるヒドロキシプロピル化デンプンは、加工度(加工澱粉の全質量に占めるヒドロキシプロピル基の質量比)が0.01%以上7.0%以下のものであることが好ましい。本発明に用いるヒドロキシプロピル化澱粉の加工度は特に限定されるものではないが、セルロース組成物の分散性の点から、1.0%以上7.0%以下が好ましく、3.0%以上7.0%以下が好ましく、5.0%以上7.0%以下が最も好ましい。例えば、市販品で容易に入手可能なものとしてはデリカWH((株)日澱化学製)がある。
【0072】
セルロース複合体と、ヒドロキシプロピル化澱粉との質量比として、より好ましくは、85/15〜30/70であり、さらに好ましくは80/20〜40/60であり、75/25〜65/35が最も好ましい。
<ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉>
ここでのヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉とは、澱粉に対して、例えば薬剤としてトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンなどを用いてエステル化し、プロピレンオキサイドなどを用いてエーテル結合でヒドロキシプロピル基を付加した澱粉を意味する。本発明において、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉における置換度(未置換架橋澱粉中の水酸基の全モル数に対する置換架橋澱粉中の置換された水酸基の全モル数の比)は特に限定されるものではない。例えば、市販品で容易に入手可能なものとしてはデリカKH((株)日澱化学製)がある。
【0073】
セルロース複合体と、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉との質量比として、より好ましくは、85/15〜30/70であり、さらに好ましくは80/20〜40/60であり、75/25〜65/35が最も好ましい。
<リン酸架橋アルファー化澱粉>
ここでのリン酸架橋アルファー化澱粉とは、澱粉に対して、例えば薬剤としてトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンなどを用いてエステル化し、上記の手法等によりアルファー化した澱粉を意味する。本発明において、リン酸架橋澱粉における置換度(未置換架橋澱粉中の水酸基の全モル数に対する置換架橋澱粉中の置換された水酸基の全モル数の比)やアルファー化の程度は特に限定されるものではない。例えば、市販品で容易に入手可能なものとしてはネオビスC−60((株)日本食品化工製)がある。
【0074】
セルロース複合体とリン酸架橋アルファー化澱粉との質量比として、より好ましくは、85/15〜30/70であり、さらに好ましくは80/20〜40/60であり、65/35〜55/45が最も好ましい。
<アルファー化澱粉>
澱粉を含む水系媒体を加熱処理することや、アルカリ性塩類を添加することで澱粉粒子は膨潤を始める。その後、粒子が崩壊し、最後には粘性を持った透明または半透明の澱粉糊液となる。この糊液を直ちに乾燥すると、冷水で容易に膨潤溶解する粉末が得られる。この粉末をアルファー化澱粉という。本発明に用いるアルファー化澱粉は特に限定されるものではなく、一部がアルファー化したものや、全てアルファー化したもののいずれを用いてもよい。例えば、市販品で容易に入手可能なものとしては製品名MH−A((株)日澱化学製)がある。
【0075】
セルロース複合体とアルファー化澱粉との質量比として、より好ましくは、85/15〜30/70であり、さらに好ましくは80/20〜40/60であり、65/35〜55/45が最も好ましい。
<セルロース組成物に配合される親水性物質>
本発明のセルロース組成物は、水への分散性を高める目的で、セルロース複合体と、加工澱粉以外に、親水性物質を加えてもよい。ここでの親水性物質とは、セルロース複合体及び加工澱粉以外の、親水性基を含む有機物質であって、飲食可能なものであれば、特に限定されない。親水性物質としては、冷水(例えば約20℃以下の水)への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさない有機物質であることが、好ましい。親水性物質としては、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等、ビタミン類、コラーゲン、アズレン、キトサンが適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましく、デキストリンが最も好ましい。
【0076】
セルロース組成物における親水性物質の配合量には制限はないが、好ましい範囲としては、1質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。親水性物質が多いほど水分散性が高まるが、油の分散安定性、懸濁安定性、保形性等のセルロース組成物の物性が低くなるため、上限としては59質量%以下が好ましい。
<セルロース組成物の製造方法>
次に、本発明のセルロース組成物の製造方法を説明する。
【0077】
本発明のセルロース組成物は、その製造において、セルロース複合体と加工澱粉とを水系媒体に分散させて、分散液を形成する工程と、それに続き、この分散液を均質化する工程と、さらに、均質化された分散液を乾燥する工程を経て得られることが好ましい。
【0078】
ここでセルロース複合体と、加工澱粉が、スラリー状態で、分散、均質化されることが、セルロース組成物の分散性を高める上で好ましい。スラリー状で、均質化することで、セルロースと加工澱粉が、過度に複合化しないため、分散性が良好なものが得られる。具体的な製造条件について、以下に説明する。
<分散工程>
まず、上記のセルロース複合体と加工澱粉を水に分散溶解させる。その際の、セルロース複合体と加工澱粉等を含む固形分濃度は1〜70質量%となるように、水を含めたそれぞれの量を調整することが望ましい。固形分濃度がこの範囲であれば、水分散液の取り扱い性が良好で、生産性が高く、後の乾燥エネルギーの負荷も許容できる範囲である。より好ましくは3〜50質量%であり、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下であり、最も好ましくは30質量%以下である。上述の理由で、分散液は、スラリー状態とすることが好ましい。分散液の状態は、用いるセルロース複合体と、加工澱粉種、およびそれらの質量比にもよるが、35質量%以下であれば、スラリー状態といえる。
【0079】
セルロース複合体と、加工澱粉、(加える場合は)親水性物質の添加順序は、特に制限されない。分散液の均一性を高めるために、水系媒体に投入する好ましい順序は、親水性物質、加工澱粉、セルロース複合体の順である。
【0080】
分散工程での攪拌方法には、特に制限がなく、目視でママコ状の凝集物(直径数mm〜数cm)がなくなるように攪拌されることが好ましい。
【0081】
攪拌装置としては、タンクに攪拌翼がセットされたものが好ましく、プロペラ翼式攪拌装置、パドル翼式攪拌装置、ファウドラー翼式攪拌装置、アンカー翼式攪拌装置、ヘリカルリボン翼式攪拌装置等を用いることができる。また、タンク式以外でも、スタティック式のラインミキサー、サニタリーポンプ等のライン攪拌装置を用いてもよい。
【0082】
分散温度にも、特に制限はないが、セルロース複合体と、加工澱粉の過度の複合化を抑えるために、0〜60℃が好ましく、10〜50℃がより好ましく、15〜40℃が特に好ましい。
<均質化工程>
本発明のセルロース組成物の製造においては、セルロース複合体と加工澱粉を均質化する工程を経る必要がある。ここで均質化とは、セルロース複合体が、凝集体ではなく、一次粒子に分散された状態のことである。具体的には、均質化後の分散液において、レーザー回折/散乱式粒度分布計(HORIBA製 商品名LA−910を使用、フローセル中で1分間循環、超音波処理なし、屈折率1.20)で、測定される体積頻度の平均粒子径(メジアン径)が、20μm以下となった状態として定義することができる。
【0083】
本発明における均質化は、上記の平均粒子径が達成できれば、原料の添加順序、添加方法には制限はない。例えば、全ての成分を混合して一括処理を行ってもよいし、各成分を水に分散し、成分ごとに均質化処理を行った後に、全ての成分を混合してもよい。
【0084】
均質化の方法は、高速攪拌機で高剪断を与える方法と、高圧ホモジナイザーで高圧分散する方法、ビーズ様のメディアを使用したミルで均質化する方法、ロールミルを用いて均質化する方法等を用いることができる。本発明の均質化が達成できる方法であれば、順不同で、上記の方法を組み合わせてもよい。
【0085】
簡便な工程で、本発明の均質化を達成するには、高速攪拌機で高剪断を与える方法と、高圧ホモジナイザーで高圧分散する方法を、好適に用いることができる。
【0086】
ここで均質化濃度、均質化温度は、上述の分散工程と同様の条件が適用できる。
<高速攪拌機による均質化>
高速攪拌機を用いる均質化は、分散工程で得られた分散液に、高速回転する攪拌を与えることで達成される。均質化に、高速攪拌機を用いる場合には、分散と均質化が一度でできるため、前述の分散工程を省略することも可能である。
【0087】
高速攪拌は、攪拌翼の周速で定められ、周速は以下の式で求められる。周速(m/s)=攪拌翼の直径(m) × π(円周率) × 攪拌翼の回転数(n/s)。この周速は、大きいほど、短時間で均質化できるため好ましい。具体的には、周速は、5m/s以上であることが好ましく、より好ましくは10m/s以上であり、特に好ましくは15m/s以上である。周速の上限は特に規定されるものではないが、工業的に使用される機器を想定すると、100m/s以下が望ましい。処理時間は、被処理物の平均粒子径との兼ね合いで決まるものであり、特に制限はないが、10分以上が好ましい。
【0088】
ここで使用できる高速攪拌機の例としては、商品名:TKホモジナイザー、TKホモミキサー、TKロボミックス、TKオートミクサー、ラボ・リューション、TKホモディスパー、ハイビスディスパーミックス、フィルミキサー(プライミクス社製)、エースホモジナイザー、カンキミキサー(関西機械工業社製)、超振動α−攪拌機(日本テクノ社製)、家庭用ミキサー等の装置を用いることができる。
【0089】
高速攪拌機として、TKホモミキサーMARKII fモデル(プライミクス社製)を使用する場合、回転数600〜13,000rpmで、pH3〜8、温度0〜80℃及び固形分濃度が10〜60%の上記分散液を処理することが望ましい。この回転数の範囲内であれば、分散液の平均粒径を20μm以下とすることができる。高速攪拌機の回転数は、より好ましくは2000〜13,000rpmであり、5,000〜13,000rpmが最も好ましい。
<高圧ホモジナイザーによる均質化>
高圧ホモジナイザーによる均質化は、分散工程で得られた分散液を、一旦加圧して、装置内の間隙を通し、固体粒子が間隙を通り抜ける際のせん断力を利用して均質化を行うものである。ここで、本発明における均質化を達成するには、圧力を4〜150MPaの範囲で運転することが好ましい。この圧力は、高いほど均質化が進むが、高すぎるとセルロース複合体中のセルロースと多糖類との結合が弱まる。従って、圧力のより好ましい範囲としては、5〜100MPaであり、さらに好ましくは10〜50MPaである。
【0090】
ここで使用できる高圧ホモジナイザーの例としては、例えば、商品名:ナノマイザー(ナノマイザー社製)、商品名:マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスク社製)、商品名:アリート(ニロソアビ社製)、商品名:APVホモジナイザー(APV社製)、マントンゴーリンホモジナイザー等の装置がある。尚、高圧ホモジナイザーの処理回数は1回でよいが、複数回処理してもよい。
<乾燥工程>
セルロース組成物を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、上記の均質化後に、乾燥、粉末化されることが好ましい。
【0091】
セルロース組成物を乾燥する方法としては、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。
【0092】
乾燥後のセルロース組成物の含水率は、1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や、運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。含水率は、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、含水率を1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。含水率は、より好ましくは1.5%以上である。
【0093】
乾燥したセルロース組成物は、目開き1mmの篩いを全通する程度に粉末化されることが好ましい。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(見かけの重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。これらの乾燥粉末は、セルロース複合体と加工澱粉の微粒子が凝集し、二次凝集体を形成しているものである。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。二次凝集体の見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。
【0094】
乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕が必要なく、最も好ましい乾燥方法である。その他の方法で、乾燥したセルロース組成物を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。
<噴霧乾燥における乾燥条件>
噴霧乾燥は、均質化工程を経て得られた分散液をミスト状に噴霧して、そのミストに熱風を当てて、水を蒸発させ、粉末化する方法である。本発明においては、分散液の噴霧方法として、ケスナー、ベーン、ピン型等のアトマイザーを用いる方法、二流体ノズル、四流体ノズル等から噴霧する方法を採用できる。また、熱風は、向流式、併流式のいずれでもよいが、アトマイザー法では併流式、ノズル法では向流式が一般的である。
【0095】
上述の粉体水分、粉体粒子径が達成できれば、乾燥条件には制限がない。例えば、熱風温度は、入口温度100〜200℃、出口温度40〜99℃の範囲で運転することが好ましい。
<高塩分濃度、高油分濃度の食品用途>
本発明のセルロース組成物は、上述の通り、高塩分濃度の水系媒体中に容易に分散し、非乳化型の油の分散安定性、懸濁安定性、保形性に優れる。そのため、当該セルロース組成物は、特に、塩分濃度が0.1質量%以上の水性の飲食品に用いることが好ましい。また、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム濃度が1質量%以上であり、油分を1質量%以上含む飲食品に用いることが好ましい。
【0096】
ここで飲食品中の塩分濃度(塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム濃度)は、高いほど、本発明のセルロース組成物の効果が発揮されるため、好ましい。より好ましい塩分濃度としては4質量%以上であり、さらに好ましい範囲としては8質量%以上であり、特に好ましい範囲としては12質量%以上である。最も好ましい塩分濃度としては、15質量%以上であり、これは、本発明のセルロース組成物は、生醤油中でも容易に分散可能であることを意味するものである。塩分濃度の上限値は特に限定されないが、飲食品中の塩分濃度が大きく増えると甘味、旨味、苦味等の味が感じにくくなることから、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0097】
また、より好ましい飲食品中の油分濃度としては、5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは15質量%以上であり、格段に好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは25質量%以上である。油分濃度の上限値は特に限定されないが、油が多くなるとセルロース組成物の分散性が低下するため、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0098】
飲食品中のセルロース組成物の添加量は、最終形態の食品において求められる効果によるが、例えば、以下のように例示ができる。
【0099】
例えば、濃縮スープ様の食品(塩分濃度1〜10質量%、油分濃度10〜30質量%の食品)のような、高塩分、高油分の食品においては、本発明のセルロース組成物は、0.1質量%以上添加することで、油の分散安定性、懸濁安定性が発揮される。この場合のセルロース組成物の濃度は、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.4質量%以上であり、一層好ましくは0.6質量%以上であり、最も好ましくは1.0質量%以上である。本発明のセルロース組成物の添加量は、多いほど安定性が高まるため、上限は特に設定されないが、軽い食感が維持される範囲としては、5質量%以下である。
【0100】
また、たれ様の食品(塩分濃度1〜10質量%、油分濃度10〜30質量%であり、野菜のように比重が1.0以上で、100μm以上の大きさの具材成分を0.5質量%以上含むもの)においては、本発明のセルロース組成物は、0.1質量%以上添加することで、油の安定性と、具材の懸濁安定性が発揮される。この場合のセルロース組成物の濃度は、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.4質量%以上であり、一層好ましくは0.6質量%以上であり、最も好ましくは1.0質量%以上である。本発明のセルロース組成物の添加量は、多いほど安定性が高まるため、上限は特に設定されないが、軽い食感が維持される範囲としては、5質量%以下である。
【0101】
また、マヨネーズ様の半固形状の食品(塩分濃度1〜10質量%、油分濃度10〜80質量%であり、必要に応じ、レシチンのような乳化剤を併用されたもの)においては、本発明のセルロース組成物は、0.1質量%以上添加することで、チューブ様の容器から搾り出した際の角立ちのような、保形性が長時間維持される。この場合のセルロース組成物の濃度は、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.4質量%以上であり、一層好ましくは0.6質量%以上であり、最も好ましくは1.0質量%以上である。本発明のセルロース組成物の添加量は、多いほど安定性が高まるため、上限は特に設定されないが、軽い食感が維持される範囲としては、5質量%以下である。
<水性飲食品の粘弾性>
本発明のセルロース組成物を含む水性飲食品は、以下に示す特有の粘弾性を有する為、耐熱性が高く、高温下で状態を保ちやすい性質を有するため好ましい。この粘弾性は、25℃に対する50℃の損失正接(tanδ)の比で表すことができ、この比が1以上であると本願の効果が達成されるため好ましい。
【0102】
ここでいう、損失正接とは、本発明の水性飲食品の動的粘弾性測定により得られる値である。損失正接(tanδ)は、水分散体に歪みを与えた際の、水性飲食品の内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分(貯蔵弾性率:G’)と、粘性成分(損失弾性率:G’’)から以下の式で算出される。式:tanδ=G’’/G’’。
【0103】
本発明の水性組成物の粘弾性は、25℃と、50℃において、それぞれ測定されたtanδの比をとったものであり、以下の式で表される。式:tanδ(50℃)/tanδ(25℃)。この値が1以上であることは、常温に対し、加熱下で粘性が高くなることを意味し、この粘弾性を達成することで、スープを加熱した際の油の分離を抑制したり、たれを加熱したさいの液だれを抑制したりできる。
【0104】
貯蔵弾性率、損失弾性率は、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:25mm Cone Plate型)を用い、所定の条件(温度:25.0℃一定または50.0℃一定、角速度:20rad/秒、歪み:1→794%の範囲で掃引、水性飲食品は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、10分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率、損失弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み10%の値のことであり、本発明の粘弾性は、それぞれの温度で測定された損失正接の比(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))で算出される。
【0105】
この値が大きいほど、加熱下での飲食品の形態安定性が向上するため好ましく、1を超えることがより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.3以上が特に好ましく、1.5以上が最も好ましい。上限は特に設定されないが、好ましい範囲としては2以下である。
【0106】
本発明の菓子について、以下具体的に説明する。
<菓子>
本発明において、菓子とはJAS法の品質表示基準に従い菓子類に分類されるものである。JAS法において菓子類は、ビスケット類、焼き菓子、米菓、油菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、和干菓子、キャンディー類、チョコレート類、チューインガム、砂糖漬菓子、スナック菓子、冷菓、その他の菓子類に分類されている。
<菓子の製法>
本発明の菓子とは、穀粉、糖類、油脂と、必要に応じ卵等を含む原料を混合して混合済み生地を得る工程、この混合済み生地を成形して、成形済み生地を得る工程、及び成形済み生地を焼成、油ちょう、減圧乾燥、凍結乾燥等に付す工程を経させることにより、水分量を5質量%以下としたもののことであり、それらは従来公知の方法により調製され得る。生地の混合には、縦型、横型等の形状を問わず、通常の菓子およびパンの製造過程で使用されるミキサーが使用できる。原料が実質的に均一に混合されるのであれば、どのような混合方法を用いても良い。本発明では大量生産可能な、オールインミックス法により調製するのが好ましい。上述の方法において、配合原材料の比率、添加される水分率、生地の混合・混練条件、焼成、油ちょう、減圧乾燥、凍結乾燥、及び最終的な形態に応じて、ビスケット類、焼き菓子、米菓、油菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、スナック菓子が製造可能である。本発明は、軽い食感で、サクサクした食感であるビスケット類、焼き菓子、スナック菓子類に好適である。特に、ビスケット類、焼き菓子に好適である。
<焼き菓子>
一般消費者にとって、上記ビスケット類と焼き菓子は同等の菓子として認識されているので、本発明において焼き菓子とは、JAS法における、ビスケット類と焼き菓子の両者を含むものとする。
【0107】
本発明において焼き菓子とは、穀粉を主原料とする生地を、公知の任意の焼成条件、方法で焼成したものである。焼成には、固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブン等が使用可能である。焼成条件は、生地の大きさや、最終製品の目的水分量によって異なるが、一般的には、150〜300℃の範囲において3〜30分間の加熱である。
<菓子の形状>
本発明の菓子の形状としては、任意の形状を選択することが出来る。例えば、立方体、直方体、棒状、円形、球状、円錐状、三角錐状、星形、ある特定の動物や、食物や、乗り物等、通常の菓子の製造で使用できる成形機で製造可能なものであれば、どのような形状でもよい。
<水分量>
本発明において水分量とは、菓子に含まれる水分の、菓子全体の重量に対する割合のことである。水分量は公知の測定方法で測定することが出来る。例えば、赤外水分計を用いて、まず菓子の重量を測定し、次いで菓子を重量変化がなくなるまで105℃で維持する。重量変化がなくなったときの重量を測定し、加熱前と比較して、加熱後に減少した重量から水分量を決定することが出来る。本発明の菓子の水分量は好ましくは5質量%以下である。水分量が5質量%以下であると、サクサクとした食感の菓子となる。食感の点から、より好ましくは、4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、最も好ましくは2質量%以下である。下限は、0%であってもよい。
<密度>
本発明の菓子は密度が0.30〜1.00g/cm
3であることが好ましい。密度が当該範囲に入ることで、食べ応えがあり、ふわっとした軽い食感の菓子となる。
【0108】
本発明において密度(単位:g/cm
3)とは、喫食時における菓子1つの単位体積あたりの質量のことである。菓子が、短径0.5mm以上の具材を含む場合、その具材を全て除いた菓子の密度のことを指す。
【0109】
本発明において、菓子の密度は0.30〜1.00g/cm
3が必須である。密度が0.30g/cm
3未満であると、軽すぎる食感で食べ応えがない菓子となる。他方、密度が1.00g/cm
3を超えると、内部が密に詰まった構造の菓子となり、ふわっとした軽い食感の菓子ではなくなってしまう。食感の観点から、より好ましくは、0.40〜0.85g/cm
3であり、更に好ましくは0.50〜0.80g/cm
3であり、最も好ましくは、0.60〜0.70g/cm
3である。
<最大荷重>
本発明の菓子は最大荷重が0.3〜5kgfであることが好ましい。最大荷重が当該範囲に入ることで、噛む力が弱い子供や、お年寄りでも充分に喫食可能な菓子となる。
【0110】
本発明において荷重は、縦:25±5mm、横:25±5mm、厚み:10±1mmのテストピースを用いて測定する。テストピースは、消費者が喫食可能な状態であれば、どのような状態でもよい。菓子が焼き菓子であれば、生地を焼成後の状態が好ましい。最大荷重は、テクスチャー・アナライザー(英弘精機株式会社製、TA.XT plus型、測定治具:HDP/3PB型、温度:25.0℃、Mode:Mesure Force in Compression、Option:Return to Start,Pre−Test Speed:1.0mm/s,Test−Speed:1.5mm/s,Post−Test Speed:10mm/s,Distance:5mm,Triger Type:Auto 50g)により測定する。本発明における最大荷重は、上述の測定で得られた時間−応力曲線上の、応力が最大の値のことである。この最大荷重の値が大きいほど、菓子が硬い食感であることを表している。
【0111】
本発明において、菓子の最大荷重は0.3〜5kgfが必要である。最大荷重が0.30kgf未満であると、脆く食べ応えがない菓子となる。他方、最大荷重が5kgfを超えると、ガリガリとした硬い食感となり、ふわっとした軽い食感の菓子ではなくなってしまう。一般的には最大荷重が5kgfを超える菓子は、充分に硬いため割れや欠けが問題になるとはないが食感が悪い。最大荷重は食感の観点から、より好ましくは、0.5〜3.5kgfであり、更に好ましくは1.0〜3.0kgfであり、最も好ましくは、1.5〜2.5kgfである。
<穀粉>
典型的な本発明の菓子には穀粉が配合されることが好ましい。穀粉を含むことで、充分な栄養価を持つ菓子になるからである。
【0112】
本発明において、穀粉とは、イネ科穀物(小麦、大麦、ライ麦、米、とうもろこし、テフ、ひえ)、豆類(大豆、ヒヨコマメ、エンドウマメ)、擬穀類(蕎麦、アマランサス)、イモ類・根菜(片栗、馬鈴薯、葛、タピオカ)、木の実(栗、どんぐり)等を挽いて作られた粉末のことである。原料として、これらのうち1種の穀粉を使用しても、2種以上を混合したものを使用してもよい。これらの中でも、本発明の菓子には、小麦粉又は米粉が好ましい。
<小麦粉>
小麦粉とは、小麦を挽いて作られた粉末のことである。小麦粉は、そこに含まれるタンパク質の割合と形成されるグルテンの性質によって薄力粉、中力粉、強力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉等に分類されるが、いずれも本発明でいう小麦粉に該当する。本発明の菓子に配合する小麦粉の量としては、好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは45質量%以上である。小麦粉は多いほど、栄養価に優れるため好ましい。上限は、食感(小麦粉が多すぎるとモチモチとしたパンのような食感となる)の観点で、86質量%以下が好ましく、80質量%以下が好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
【0113】
小麦粉の中でも、本発明の菓子には、強力粉、中力粉、薄力粉が好ましい。強力粉は、タンパク質の割合が12%以上のもので、中力粉は、タンパク質の割合が11.9〜8.6%のもので、薄力粉は、タンパク質の割合が8.5%以下のものである。特に、本発明で使用される穀粉としては、薄力粉を30質量%以上含むものを用いることが、加工特性、食感の点で好ましい。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、45質量%以上である。
<米粉>
ここで、米粉とは、米を挽いて作られた粉末のことである。原料となる米として、うるち米、もち米のどちらを用いても良い。市販で入手可能な米粉としては、上新粉、上用粉、だんご粉、パン用米粉、お菓子用米粉、乳児粉、みじん粉、もち粉、白玉粉、求肥粉、道明寺粉、寒梅粉、落雁粉等がある。これらのうち1種の米粉を使用しても、2種以上を混合したものを使用してもよい。これらの中でも、本発明の菓子には、平均粒子径が150μm以下で、一般的な小麦粉と同等の大きさの米粉を用いるのが好ましい。特に、本発明で使用される穀粉としては、米粉を30質量%含むものを用いることが、加工特性、食感の点で好ましい。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、45質量%以上である。
<糖類>
典型的な本発明の菓子には糖類が配合される。糖類を含むことで、甘味が付与でき、老若男女が好む味の菓子となる。
【0114】
本発明で用いる糖類とは、例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖(グルコース)、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、トレハルロース、ネオトレハロース、パラチノース、D−キシロース、澱粉加水分解物、デキストリン等の糖類、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類をあげることができる。これらの糖類は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、ショ糖、グルコ−ス、糖アルコールが味の点で好ましい。これらの中でも、ショ糖が好ましい。本発明の菓子に配合する糖類の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。糖類は多いほど、甘味に優れるため好ましい。上限は、甘味と小麦粉との味のバランスの観点で、50質量%以下が好ましく、40量%以下が特に好ましい。
<油脂>
典型的な本発明の菓子には油脂が配合されることが好ましい。油脂を含むことで、コクがある菓子となる。本発明で用いる油脂としては、植物性油脂、動物性油脂およびそれらの加工品が例示できる。また、そのような油脂類としては、市販の任意の油脂類が使用できる。当該油脂類の例としては、ショートニング、マーガリン、バター、ラード、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油バター、生クリーム、硬化油脂、エステル交換油脂等が挙げられる。この中から1種又は2種以上を併用することができる。これらの中でも、ショートニング、バター、生クリーム等が風味の点で、好ましい。
【0115】
本発明の菓子に配合する油脂の量としては、好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは12質量%以上である。油脂は多いほど、風味と栄養価が優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまり)の観点で、35質量%以下が好ましく、30量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
<セルロース組成物の添加量>
本発明の菓子は、セルロース組成物を0.01質量%以上含むことが好ましい。ここでいうセルロース組成物の配合量は、組成物の重量から算出される(組成物中のセルロース含量ではない)。また、セルロース組成物を多量に配合するほど、製造時や流通時の製品ロス低減、サクサク感の向上、良好な角(エッジ)立ちが達成できるため好ましい。好ましくは、0.1質量%以上であり、より好ましくは、0.5質量%以上であり、特に好ましくは、1質量%以上である。一方で、セルロースを配合しすぎると、菓子に繊維的な、ぼそぼそとした食感が現れる場合があるため、上限は、5質量%以下が好ましい。
<セルロース組成物の添加方法>
本発明で意図される菓子は、一般的には、穀粉や糖などの粉末原料をブレンド粉とする工程、水や卵等の水分を含む原料を上記ブレンド粉と混合し生地を作製する工程、上記の生地を成形する工程、成形後の生地を焼成、油ちょう、減圧乾燥、凍結乾燥等の処理をする工程を経て製造される。また、風味付けとして、更にチョコレート等の水系媒体でコーティングされることもある。上記の製造工程において、セルロース組成物は、粉末原料と共にブレンドする、水分を含む原料と共に混合する、生地を成形後に粉まぶしをする、焼成、油ちょう、減圧乾燥、凍結乾燥後に粉まぶしをする、水系媒体に配合する、水系媒体でコーティング後に粉まぶしをするのうちの、いずれの方法で添加しても良い。特に、水が存在する段階で、他の原料とともに混合されると、セルロースの分散が促進されるため好ましい。また、水分を多量に含む原料(例えば卵)を添加する際に、予め、それらと混合し、分散された状態で添加してもよい。
<その他原材料>
本発明の菓子は、前記以外は、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、通常の食品と同様の構成をとることができる。例えば、卵、発泡剤、水、オリゴ糖、タンパク質、増粘剤、具材、風味原料、調味料、香料、色素、乳化剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合してよい。
<卵>
本発明で用いる卵としては、食用卵として流通しているものを用いることができ、鳥卵を用いることが好ましい。鳥卵としては、鶏卵、ウズラ卵、アヒル卵、ダチョウ卵、ハト卵が挙げられ、これらを組合せて使用することもできる。特に、本発明では、加工性、味の点で鶏卵を用いることが好ましい。卵は、生卵をそのまま用いることも、乾燥された加工卵を用いることもできるが、加工性の点で生卵を用いることが好ましい。
【0116】
本発明の菓子に配合する卵の量としては、好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。卵は多いほど、風味と栄養価が優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまり)の観点で、35質量%以下が好ましく、30量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
<発泡剤(膨張剤)>
本発明の菓子には、低密度で軽い食感にする目的で、発泡剤(膨張剤)を配合することが好ましい。発泡剤(膨張剤)としては、市販の任意の発泡剤が使用可能であり、ベーキングパウダー、重曹、重炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸マグネシウム、ミョウバンの中から1種又は2種以上を併用することができる。味の観点から好ましくは、ベーキングパウダー、重曹、重炭酸アンモニウムであり、ベーキングパウダーが最も好ましい。
【0117】
本発明の菓子に配合する発泡剤の量としては、好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.3質量%以上である。膨張剤が多いほど、軽い食感となるため好ましい。但し、必要以上に膨化をさせると中身がすかすかで食べ応えのない菓子となるので、上限は食べ応えの観点で、10質量%以下が好ましく、5量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0118】
<オリゴ糖及びタンパク質>
オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクチュロース、α−、β、γ−シクロデキストリン等が挙げられる。これらの中でも、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖は、味質改善効果が高いため好ましい。
【0119】
タンパク質としては、通常、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳或いは生クリームなどの乳由来のタンパク質、大豆タンパク質などを使用することができる。
<増粘剤>
増粘剤は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限度で添加することができる。例えば、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドシードガム、タラガム、カードラン、ラムザンガム、ガティガム、グルコマンナン、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、各種化工・加工澱粉、CMC、MC、HPC、HPMC、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、乾燥こんにゃく加工品等を、利用可能なものとして挙げることができる。
<乳化剤>
本発明に使用できる乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(ナトリウム、カルシウム)等を挙げることができるが、これに限定されない。
<具材>
本発明の菓子は、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、具材を含んでもよい。具材としては、植物性、動物性のいずれのものでもよい。植物性の具材としては、果実、野菜、ナッツ、穀物等を生でカットしたもの、及び/又はそれらを乾燥、浸漬等の加工処理したものを使用することができる。動物性の具材としては、牛肉、豚肉、鶏肉、または、それらを干し肉、ハム、ソーセージ等に加工されたもの、魚肉、または、それらを魚節、カマボコ、ソーセージ等に加工されたもの、チーズ等の乳を発酵したものを用いることもできる。
<風味原料>
本発明の菓子は、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、風味原料を含んでもよい。風味原料の例としては、種子類(ピーナッツ、アーモンド、マカデミアナッツ、カシューナッツ、栗等)、豆類(小豆、エンドウマメ、大豆等)、魚介類(えび、かに、鮭、ホタテ、たらこ等)、乳類(牛乳、生クリーム、練乳、全粉乳、脱脂粉乳、チーズ、ヨーグルト等)、野菜類(にんじん、トマト、たまねぎ、ピーマン、ケール等)、果実類(イチゴ、オレンジ、レーズン、りんご、キウイ、パイナップル、梅、バナナ、イチジク、モモ、なし等)、嗜好飲料類(コーヒー、紅茶、ココア、ビール、ワイン、ウイスキー、焼酎等)、調味料(食塩、みそ、醤油、ソース、食酢等)、香辛料類(こしょう、カレー粉、シナモン等)が挙げられる。これらの原料の形態は、生、乾燥品、粉末、ペースト、ピューレ、液体等の任意の形態であってよい。菓子に目的とする風味を付与するために、1種又は2種以上を併用することができる。
<高甘味度甘味料>
本発明の菓子には、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等も添加してもよい。
<栄養剤>
本発明の菓子には、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、ビタミン、カルシウム、鉄、DHA、EPA、セサミン、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、マカ、ウコン、コラーゲン、オルニチン、スクワラン、コエンザイムQ10、ローヤルゼリーの栄養剤を強化することも可能である。
【0120】
本発明のベーカリー製品について、以下具体的に説明する。
<ベーカリー製品の原料>
本発明のベーカリー製品とは、小麦粉、糖類、油脂を含む原料に、水を添加し、混合、混練され、焼成、又は油ちょうされたもののことである。具体的には、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ホットケーキ、チーズケーキ、ドーナッツを指す。特に、具材が配合され、その均一性を保つ必要のあるものとして、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、チーズケーキが、好ましい形態である。
<小麦粉>
ここで、小麦粉とは、小麦を挽いて作られた粉末のことである。小麦粉のなかでも、それに含まれるタンパク質の割合と形成されるグルテンの性質によって薄力粉、中力粉、強力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉に分類され、いずれも本願でいう小麦粉に該当する。これらの中でも、本発明のベーカリー製品には、強力粉、中力粉、薄力粉が好ましい。強力粉は、タンパク質の割合が12%以上のもので、中力粉は、タンパク質の割合が11.9〜8.6%のもので、薄力粉は、タンパク質の割合が8.5%以下のものである。特に、本願では、薄力粉を50質量%含むものを用いることが、加工特性、食感の点で好ましい。より好ましくは、70質量%以上であり、特に好ましくは、85質量%以上である。
【0121】
本発明のベーカリー製品に配合する小麦粉の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。小麦粉は多いほど、栄養価に優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまりやすさ)の観点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
<糖類>
次に、本発明で用いる糖類とは、例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖(グルコース)、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、トレハルロース、ネオトレハロース、パラチノース、D−キシロース、澱粉加水分解物、デキストリン等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類をあげることができる。また、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等も添加してもよい。これらの糖類は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、ショ糖、グルコ−ス、糖アルコールが味の点で好ましい。これらの中でも、ショ糖、糖アルコール、またはそれらの組合せが好ましい。
【0122】
本発明のベーカリー製品に配合する糖類の量としては、好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。糖類は多いほど、甘味に優れるため好ましい。上限は、甘味と小麦粉との味のバランスの観点で、25質量%以下が好ましく、20量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
<油脂>
本発明で用いる油脂としては、バター、生クリーム等の乳脂肪分、植物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等の中から一種又は二種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油等を挙げることができる。これらの中でも、バター、生クリームが、風味の点で、好ましい。
【0123】
本発明のベーカリー製品に配合する油脂の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。油脂は多いほど、風味と栄養価が優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまり)の観点で、35質量%以下が好ましく、30量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
<卵>
本発明で用いる卵とは、食用卵として流通しているものを用いることができ、鳥卵を用いることが好ましい。鳥卵としては、鶏卵、ウズラ卵、アヒル卵、ダチョウ卵、ハト卵が挙げられ、これらを組合せて使用することもできる。特に、本発明では、加工性、味の点で鶏卵を用いることが好ましい。卵は、生卵をそのまま用いることも、乾燥された加工卵を用いることもできるが、加工性の点で生卵を用いることが好ましい。
【0124】
本発明のベーカリー製品に配合する卵の量としては、好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。卵は多いほど、風味と栄養価が優れるため好ましい。上限は、生産性(生地のまとまり)の観点で、35質量%以下が好ましく、30量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
<オリゴ糖>
本発明のベーカリー製品には、コク味を付与する目的で、オリゴ糖を配合することが好ましい。糖類に加え、オリゴ糖を配合することで、上記の糖類の先味(食した直後の味)における甘味をまろやかにし、後味(嚥下直後の味)におけるコクを付与できる。オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクチュロース、α−、β−、γ−シクロデキストリン等が挙げられる。これらの中でも、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖は、味質改善効果が高いため好ましい。
【0125】
本発明のベーカリー製品に配合するオリゴ糖の量としては、好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。オリゴ糖は多いほど、味改善効果が優れるため好ましい。上限は、15質量%以下が好ましく、10量%以下がより好ましく、8質量%以下が特に好ましい。
<その他原材料>
本発明のベーカリー製品は、前記以外は、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、通常の食品と同様の構成をとることができる。例えば、水、タンパク質、増粘剤、調味料、香料、色素、乳化剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合したものが用いられる。
【0126】
タンパク質としては、通常、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳或いは生クリームなどの乳由来のタンパク質、大豆タンパク質などを使用することができる。
【0127】
増粘剤としては、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限度で添加することができる。例えば、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドシードガム、タラガム、カードラン、ラムザンガム、ガティガム、グルコマンナン、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、各種化工・加工澱粉、CMC、MC、HPC、HPMC、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、乾燥こんにゃく加工品等を挙げることができる。
【0128】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(ナトリウム、カルシウム)等を挙げることができる。
【0129】
また、ビタミン、カルシウム、鉄、DHAの栄養剤等を併用することも可能である。
<具材>
本発明のベーカリー製品は、短径が0.5mm以上であり、長径/短径比が1.0〜5.0であり、比重1.0g/mL以上の具材を1質量%以上含むものであることが好ましい。本具材は、短径が0.5mm以上の大きいものであることが好ましい。
【0130】
ここでいう短径とは、不定形の具材を用いた場合に、その一方の表面から、中心(重心)を経て、他方の表面に至る距離のうち、最も小さいもののことである。短径が大きいほど、食べ応え、風味が優れるものとなるため、好ましい。短径は、1mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、5mm以上が特に好ましく、10mm以上が最も好ましい。上限としては、30mm以下である。
【0131】
長径とは、上記の計測方法において、最も大きいもののことであり、長径/短径比は、1.0〜5.0である。食べやすさの点で、1.0〜3.0が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。
【0132】
具材の比重は、1.0g/mL以上であり、比重が大きいほど、食べ応えがあり、歯で噛み切る際のボリューム感が良好であるため好ましい。比重は、好ましくは、1.2g/mL以上であり、より好ましくは1.3g/mL以上であり、特に好ましくは1.5g/mL以上であり、最も好ましくは1.7g/mL以上である。具材の均一分布を保つためには、3.0g/mL以下が好ましい。
<具材の種類>
本発明で使用できる具材としては、植物性、動物性のいずれのものでもよい。
【0133】
植物性の具材としては、果実、野菜、ナッツ、穀物等を、生でカットしたもの、及び/又は、それらを乾燥、浸漬等の加工を施したものを使用することができる。浸漬された果実、野菜とは、砂糖等の糖液に漬けたもの、塩水に漬けたもの、酢に漬けたもの等が該当し、水分を含んでいても、乾燥されたものであっても、いずれも使用することができる。これらの中で、果実を天日等で乾燥したもの、もしくは砂糖漬けにしたのち乾燥された、ドライフルーツを用いることが、加工性の点で好ましい。
【0134】
動物性の具材としては、牛肉、豚肉、鶏肉、または、それらを干し肉、ハム、ソーセージ等に加工されたもの、魚肉、または、それらを魚節、カマボコ、ソーセージ等に加工されたもの、チーズ等の乳を発酵したものを用いることもできる。
<果実系の具材>
本発明のベーカリー製品には、果実系の具材を用いることが好ましい。果実を用いることで、味に優れるものが得られる。果実系の具材は、それらの中でも、ドライフルーツ、糖液に漬け込まれたフルーツ、生フルーツから選ばれる一種以上であることが、加工のしやすさの点で、好ましい。
<ドライフルーツ>
本発明のベーカリー製品に配合する具材は、ドライフルーツが、加工のしやすさ、食感、味の点で、好ましい。ドライフルーツとしては、例えば、レーズン(ブドウ)、フィグ(イチジク)、プルーン、干し柿(カキ)、アンズ(アプリコット)、プラム、ブルーベリー、クランベリー、カーラント(スグリ)、オレンジピール(オレンジの果皮) 、レモンピール(レモンの果皮)、メロン、リンゴ、マンゴー、パパイヤ、バナナ、パイナップル、ナツメ、ナツメヤシ、サンザシ、クコ等のドライフルーツのうち1種以上を用いることができる。
<具材の添加量>
本発明のベーカリー製品は、上述の具材を1質量%以上含む必要がある。具材を多量に配合することで、ベーカリー製品の食感、味が優れたものが得られる。好ましくは、3質量%以上であり、より好ましくは、5質量%以上であり、さらに好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、15質量%以上であり、最も好ましくは、20質量%以上である。具材を入れすぎると、生地とのバランスが崩れ、型崩れを生じ、食感が損なわれるため、上限としては、50質量%以下である。
<セルロース組成物の添加量>
本発明のベーカリー製品は、本発明のセルロース組成物を0.1質量%以上含むことが好ましい。ここでいうセルロース組成物の配合量は、組成物の重量から算出される(組成物中のセルロース含量ではない)。セルロース組成物を多量に配合するほど、具材の均一性が優れる。好ましくは、0.3質量%以上であり、より好ましくは、0.5質量%以上であり、さらに好ましくは、1質量%以上であり、特に好ましくは、3質量%以上であり、最も好ましくは5質量%以上である。一方で、セルロースを配合しすぎると、ケーキに繊維的な、ぼそぼそとした食感が現れるため、上限は、10質量%以下が好ましい。
<ベーカリー製品に使用する加工澱粉>
本発明のベーカリー製品には、上述の原材料に加え、加工澱粉を使用することができる。加工澱粉は、セルロース組成物と併用することで、具材の均一安定化において、相乗効果が得られるため好ましい。セルロース組成物と併用した場合の本発明のベーカリー製品への添加量は、0.1質量%以上が好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは、2質量%以上である。加工澱粉は、配合しすぎると食感が損なわれるため、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0135】
ここで、用いることができる加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グルコール酸ナトリウム、澱粉リン酸エステルナトリウムが好ましい。これらは、アルファー化加工したもの、部分的にアルファー化加工したもの、アルファー化加工をしていないもののうち、いずれの形態のものでも使用できる。また、酸処理された澱粉、又は生澱粉をアルファー化したアルファー化澱粉も使用できる。上述の加工澱粉は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。上述の加工澱粉の中でも、アルファー加工したものが、セルロース組成物との相乗効果が高いため、好ましい。アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、リン酸化澱粉、生澱粉のいずれかをアルファー化したものが、さらに好ましい。特に好ましくは、生澱粉をアルファー加工したアルファー化澱粉である。
【0136】
加工澱粉の原料としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、モチ種馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉、くず澱粉等が挙げられる。
【0137】
これらの中でも、セルロース組物との相乗効果の点からモチ種トウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、タピオカ澱粉が好ましく、より好ましくはタピオカ澱粉である。
<ベーカリー製品の製法>
本発明のベーカリー製品とは、小麦粉、糖類、油脂と、必要に応じ卵を含む原料に、水を添加し、混合、混練され、焼成、又は油ちょうされたもののことであり、従来公知の方法により調製される。上述の方法において、配合原材料の比率、添加される水分率、生地の混合・混練条件、焼成条件、最終的な形態に応じて、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ホットケーキ、チーズケーキ、ドーナッツのいずれも製造可能である。この中でも、特に、パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、チーズケーキは、その形態から、本発明の効果が大きくなるため好ましい。
<パウンドケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、チーズケーキ>
例えば、全卵をあらかじめホイップしてからケーキ生地を調製する共立て法、卵を卵白と卵黄に分け、卵白部分をホイップしメレンゲ状態にしてからケーキ生地を調製する別立て法、そして全ての原材料を一緒にまとめて混合し、ホイップしてケーキ生地を調製するオールインミックス法の3つの方法が知られている。本発明では大量生産可能な、オールインミックス法により調製するのが好ましい。
【0138】
オールインミックス法では、小麦粉、全卵、糖質、油脂、水、乳化剤等の原材料を一緒にまとめて混合、ホイップして起泡させ焼成型に流し込んだ後、オーブンで焼成するといった加工方法により調製することができる。
【0139】
本発明では、ホイップ工程は、かならずしも必須ではなく、最終的に要求される形態に応じて、公知技術を用いて、ホイップの程度、方法は、適宜調整することができる。
<セルロース組成物の添加方法>
上述の製造方法において、セルロース組成物は、焼成前の段階で添加される。特に、水が存在する段階で、他の原料とともに混合されると、セルロースの分散が促進されるため好ましい。また、卵や、水を添加する際に、予め、それらと混合し、分散された状態で添加してもよい。
<具材の添加方法>
上述の製造方法において、本発明の具材も、焼成前の段階で添加される。具材とセルロースの添加順序は、前後してもよいが、セルロースが生地に分散された後に添加されることが好ましい。
<スポンジケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ>
本発明でいうスポンジケーキは、特に、上述の記載において、溶いた鶏卵の起泡性を利用し、オーブンで弾力に富んだ軽いスポンジ状に焼き上げるケーキ生地の形態をとるもののことである。特に、泡立て工程で、スポンジ生地の基本的な組成は、卵、砂糖、小麦粉であるが、ここでは、油脂を含んだバタースポンジも、本発明のスポンジケーキに含まれる。本発明のシフォンケーキは、本発明のスポンジケーキに含まれ、特に、ホイップ工程において、メレンゲを経たもののことをいう。
【0140】
ここで、本発明のスポンジケーキと、パウンドケーキは、焼成前の生地の比重で区別できる。スポンジケーキの生地の比重は、0.3〜0.69g/mLが好ましい、より好ましくは、0.35〜0.6g/mLであり、さらに好ましくは、0.4〜0.55g/mLである。
【0141】
本発明のパウンドケーキの生地の比重は、0.7〜1.0g/mLが好ましく、より好ましくは、0.75〜0.9g/mLであり、さらに好ましくは、0.75〜0.85g/mLである。
<その他の食品用途>
本発明のセルロース組成物は、種々の食品に使用できる。例を挙げると、各種のスープ、シチュー、ソース、タレ、ドレッシング等の調味料類、コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース等の嗜好飲料、生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料、カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料及び食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類、アイスクリーム、アイスミルク、ソフトクリーム、ミルクシェーキ、シャーベット等の氷菓類、バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、プリン等の乳製品類、マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の油脂加工食品類、練りがらしに代表される各種練りスパイス、ジャム、フラワーペーストに代表される各種フィリング、各種のアン、ゼリーを含むゲル・ペースト状食品類、パン、麺、パスタ、ピザ、各種プレミックスを含むシリアル食品類、キャンディー、クッキー、ビスケット、ホットケーキ、チョコレート、餅等を含む和・洋菓子類、蒲鉾、ハンペン等に代表される水産練り製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等に代表される畜産製品、クリームコロッケ、中華用アン、グラタン、ギョーザ等の各種の惣菜類、塩辛、カス漬等の珍味類、ペットフード類、並びに経管流動食類等である。
【0142】
本発明のセルロース組成物は、これらの用途において、非乳化型の油の分散安定剤、懸濁安定剤、増粘安定剤、泡安定剤、クラウディー剤、組織付与剤、流動性改善剤、保形剤、離水防止剤、生地改質剤、粉末化基剤、食物繊維基剤、油脂代替などの低カロリー化基剤として作用するものである。また、上記の食品が、レトルト食品、粉末食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等のように形態又は用時調製の加工手法が異なっていても、本発明の効果は発揮される。
【0143】
本発明のセルロース組成物を食品に使用する場合、各食品の製造で一般に行われている方法と同様の機器を使用して、主原料の他、必要に応じて、香料、pH調整剤、増粘安定剤、塩類、糖類、油脂類、蛋白類、乳化剤、酸味料、色素等と配合して、混合、混練、撹拌、乳化、加熱等の操作を行えばよい。
<食品以外の用途>
本発明のセルロース組成物は、高塩分濃度の液で容易に分散可能な、非乳化型の油の易分散安定剤である。食品以外にも、シロップ剤、液剤、軟膏等の医薬品、化粧水、乳液、洗浄剤等の化粧品、食品用・工業用洗浄剤及び処理剤原料、家庭用(衣料、台所、住居、食器等)洗剤原料、塗料、顔料、セラミックス、水系ラテックス、乳化(重合)用、農薬用、繊維加工用(精錬剤、染色助剤、柔軟剤、撥水剤)、防汚加工剤、コンクリート用混和剤、印刷インキ用、潤滑油用、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、脱墨剤等を、当該セルロース組成物の用途として挙げることができる。その中でも、特に、水不溶性成分を含む水系懸濁状態の組成物においては、凝集や分離、離水、沈降を発生させることなく、安定な分散状態を保持することが可能である。また、安定剤としての性能が著しく向上するとともに、その滑らかな舌ざわりとボディ感によりザラツキの問題が解消されるため、当該セルロース組成物は、上記に記載した以外の幅広い食品用途で使用することも可能である。
<工業用途>
本発明のセルロース組成物は、懸濁安定効果も有しているので、塗料成分の分離、沈降、凝集を防止することに有効である。特に、製造工程及び使用時に成分の分離、沈降、凝集が問題となる電着塗料、上塗り塗料、中塗り塗料、建材用塗料に使用するのが好適である。これらの用途において塩濃度は特に規定されないが、1.0mol/L以下であることが好ましい。ここでの塩濃度とは、上述の塗料中の固形分を、遠心分離及び/又はろ過で除去した後、得られた水溶液中の塩分濃度のことであり、塩分計(ATAGO製デジタル塩分計ES−421)を用いて測定された値(質量%)を、NaClとして換算したモル濃度(mol/L)のことである。また、これらの用途においてpHは特に規定されないが、pHは3.0〜13.0が好ましく、4.0〜12.0がより好ましい。pHの測定方法としては、上述の塗料中の固形分を、遠心分離及び/又はろ過で除去した後、pH計(HORIBA製 pHメータD−50)を用いて測定できる。
【実施例】
【0144】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0145】
<水性飲食品の実施例、比較例>
まず、各種物性の評価方法を説明する。
【0146】
<セルロース組成物の微粒子成分(BS量)>
(1)本発明のセルロース組成物を量りとり、0.01質量%濃度となるように、5質量%の塩化ナトリウム水溶液に分散させた。
(2)次に、このセルロース組成物の分散液を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、フローセル)に仕込み、2分間の超音波処理を行い、屈折率1.04で、粒度分布を測定した。
(3)ここで、得られた体積頻度ヒストグラムにおいて、全体に占める1μm以下の粒子の割合(全体積頻度に対する百分率)を、以下の式により算出した。BS量(%)=(1μm以下の粒子の体積頻度)/(検出された全体積頻度)×100
【0147】
<ラーメンスープの評価:外観観察>
(油の分散安定性)
200mLのトールビーカーに、試作したスープを仕込んで、所定時間、所定温度で放置した後に、上部に発生した色が薄い層(油層)の体積率を、目視で評価した。
◎(優):分離なし(均一)
○(良):分離あり、10%未満
△(可):分離10%以上30%未満
×(不可):分離30%以上
※ここで分離を示す%は、全スープの体積に閉める油層の体積百分率である。
(たんぱく質の凝集)
200mLのトールビーカーに、試作したスープを仕込んで、所定時間、所定温度で放置した後に、側面および底面の色の濃淡(斑点様の色むら)を、目視で評価した。
◎(優):色の濃淡なし(均一)
○(良):一部に色の濃淡あり
△(可):一面に色の濃淡あり、さらに沈降を生じている
×(不可):全体的に色の濃淡あり、さらに沈降を生じている
(風味)
調製直後の濃縮スープに熱湯を加え、体積比で3倍希釈した。その直後に、この希釈液とセルロース組成物無添加品とを比較した場合の、油の風味のマスキングの度合いを官能評価した。
◎(優):マスキングなし
○(良):僅かにマスキングあり
△(可):明らかにマスキングあり
×(不可):油の風味を感じない程度に、マスキングあり
【0148】
<焼肉のたれの評価:外観観察>
(油の分散安定性)
50mL容積のプラスチック容器に、試作した焼肉のたれを仕込んで、所定時間、所定温度で保存し、次いで所定の処理を行った後に、上部に発生した色が薄い層(油層)の体積率を、目視で評価した。
◎(優):分離なし(均一)
○(良):分離あり、5%未満
△(可):分離5%以上10%未満
×(不可):分離10%以上
※ここで分離を示す%は、全たれの体積に閉める油層の体積百分率である。
(具材の懸濁安定性)
50mL容積のプラスチック容器に、試作した焼肉のたれを仕込んで、所定時間、所定温度で保存し、次いで所定の処理を行った後に、底面への具材の沈降(堆積物)を、目視で評価した。
◎(優):沈降なし
○(良):部分的に薄く沈降
△(可):一面に薄く沈降
×(不可):全体的に濃く沈降
【0149】
<マヨネーズの評価:外観観察>
(保形性)
試作したマヨネーズを、チューブ容器に仕込み、チューブから角が立つように3g搾り出し、1時間後の角立ちを、目視で評価した。
◎(優):絞り出し直後の形態をそのまま保持
○(良):角の先端が僅かに丸く変形
△(可):角の先端から中部までが丸く変形
×(不可):全体が丸くなり、角がなくなった状態
【0150】
<ソフトミックスの評価:外観観察>
(油の分散安定性)
試作したソフトミックスに、所定時間、所定温度で殺菌処理を施し、250mL容積の耐熱瓶に充填し、次いで所定時間、所定温度で保存した後に、上部に発生した色が薄い層(油層)の体積率を、目視で評価した。
◎(優):分離なし(均一)
○(良):分離あり、2%未満
△(可):分離2%以上5%未満
×(不可):分離5%以上
※ここで分離を示す%は、全ソフトミックスの体積に閉める油層の体積百分率である。
【0151】
<水性飲食品の粘弾性>
(1) 各実施例、比較例で得られた水性飲食品を所定の温度(25℃または50℃)に加熱し、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:25mm Cone Plate型)に仕込んだ。この際、所定の条件(温度:25.0℃一定または50.0℃一定、角速度:20rad/秒、歪み:1→794%の範囲で掃引、水性飲食品は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、10分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定した。
(2) 次に、上述のそれぞれの温度の測定で得られた、歪み−応力曲線上の、歪み10%の貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)から、損失正接(tanδ)を求め、これらを用いて、損失正接の比(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))を算出した。
【0152】
[実施例1]
1)分散/均質化工程
高速攪拌機(プライミクス製 商品名TKホモミキサーMARKII)を用いて、25℃の水道水1500gを2000rpmで攪拌しながら、親水性物質としてデキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を250g加え、5分間攪拌した。その後、加工澱粉として、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を25g加えた後に、更に5分間攪拌した。続いて、セルロース複合体として、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30、組成:セルロース/キサンタンガム/デキストリン=75/5/20(質量比)、貯蔵弾性率(G’):1.0Pa、体積平均粒子径8.6μm、コロイド状成分量65質量%)を225g加えて、12、000rpmで60分間攪拌し、分散液とした。
2)乾燥工程
この分散液を、スプレードライヤー(東京理科製 商品名SD−1000型)を使用し、フィード速度10g/分で、入口温度160〜200℃、出口温度60〜80℃の範囲で乾燥させた。得られた乾燥物を、目開き500μmの篩を通過させ、セルロース組成物Aを得た。得られたセルロース組成物AのBS量を測定し、結果を表1に示した。
【0153】
3)濃縮ラーメンスープの試作
セルロース組成物Aを用いて、次のようにして濃縮ラーメンスープを作成した。
まず、プロペラ攪拌機(HEIDON製 商品名3−1モーター、攪拌翼カイ十字型プロペラ1段)を用いて、チキンエキス(JTフーズ社製)96g、白豚湯(JTフーズ社製)21g、濃口醤油(キッコーマン製)12.6g、豚蛋白加水分解物(AP−LP社製)5.1g、ニボシエキス(JTフーズ社製)2.1gと純水84gを75℃、500rpmで10分間攪拌した。
次に、予め混合した、粉末成分(セルロース組成物A4.5g、砂糖6.9g、食塩6g、核酸系調味料1.8g、キサンタンガム0.45g)を加え、500rpmで10分間攪拌し、その後に、精製ラード60gを加え、700rpmで10分間攪拌した。最終品の塩分濃度は3質量%であり、油分が20質量%であった。
これを、200ml容積のトールビーカーに移し、75℃で2時間保存した後、目視で外観の状態観察(油の分散安定性、たんぱく質の凝集の評価)を行った。評価結果を表1に示した。
【0154】
粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.1であった。
【0155】
4)焼肉のたれの試作
上記のセルロース組成物Aを用いて、次のようにして焼肉のたれを作製した。
プロペラ攪拌機(HEIDON製 商品名3−1モーター、攪拌翼カイ十字型プロペラ1段)を用いて、濃口醤油(キッコーマン製)40g、砂糖16g、みりん10g、ゴマ油9g、りんご酢5.4g、おろしにんにく3g、豚蛋白加水分解物1g、炒りごま1g、カラメル色素1g、調味料1g、セルロース組成物A1.3g、キサンタンガム0.03g、酵素0.5g、ブラックペッパー0.1g、純水4.67gを85℃で2時間700rpmにて攪拌した。最終品の塩分濃度は6質量%であり、油分が10質量%であった。これを50mL容積のプラスチック容器に移し25℃で3日間保存した。保存後のたれを、上下に激しく20回振盪させた後に静置させ、1分後に目視で外観の状態観察(油の分散安定性、炒りごまの懸濁安定性評価)を行った。評価結果を表1に示した。
【0156】
粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.1であった。
【0157】
5)マヨネーズの試作
上記のセルロース組成物Aを用いて、次のようにしてマヨネーズを作製した。
まず、キサンタンガム3g、卵黄100g、純水397gを、TKホモジナイザーを用いて8,000rpmで5分間攪拌した。
【0158】
次に、サラダ油350g、食塩26g、砂糖9g、からし粉4g、セルロース組成物A20gを、TKホモジナイザーを用いて8,000rpmで5分間攪拌し懸濁液とし、酢酸を用いてpHを4.0に調整した後に、再度同様に攪拌した。この液を、高圧ホモジナイザー(APV製 商品名マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて、本圧10MPaに、二次圧5MPaを加え、トータル15MPaにて均質化処理を行った後に、容器(チューブ式絞り器)に充填した。最終品の塩分濃度は3質量%であり、油分が39質量%であった。
【0159】
5℃で1週間保存した後、容器から絞り出した際の角立ちの評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0160】
6)ソフトミックスの試作
上記のセルロース組成物Aを用いて、次のようにしてソフトミックスを作製した。
まず、無塩バター160g、グラニュー糖600g、脱脂粉乳400g、ヤシ油120g、乳化剤6g、安息香酸ナトリウム4g、セルロース組成物A12gと、70℃の温水2698gを、TKホモジナイザーを用いて8,000rpmで5分間攪拌し懸濁液とした。
次に、この液を、高圧ホモジナイザー(APV製 商品名マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて、本圧10MPaに、二次圧5MPaを加え、トータル15MPaにて均質化処理を行った後に、UHT殺菌機で120℃、3秒条件で殺菌し250mL容積の耐熱瓶に充填した。5℃で1週間保存した後、目視で外観の状態観察(油の分散安定性)を行った。評価結果を表1に示した。塩分濃度は0.1質量%であり、油分が6.2質量%であった。
【0161】
[実施例2]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を220g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を55g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を225gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Bを得た。得られたセルロース組成物BのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Bを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0162】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.3であった。
【0163】
[実施例3]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を180g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を95g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を225gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Cを得た。得られたセルロース組成物CのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Cを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0164】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.5であった。
【0165】
[実施例4]
1)分散工程
プロペラ攪拌機(HEIDON製 商品名3−1モーターBL−600型、攪拌翼カイ十字型一段)を用いて、デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を125g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を150g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を225gとした以外は、実施例1と同様に、分散し、分散液を得た。
2)均質化工程
上記で得られた分散液を、高圧ホモジナイザー(APV製 商品名マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて、本圧15MPaに、二次圧5MPaを加え、トータル20MPaにて、高圧下で均質化を行った。
3)乾燥工程
上記で得られた均質化された分散液を、実施例1と同様の方法で乾燥し、セルロース組成物Dを得た。得られたセルロース組成物DのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Dを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0166】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.4であった。
【0167】
[実施例5]
ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を275g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を225gとした以外は、実施例4と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Eを得た。得られたセルロース組成物EのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Eを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0168】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.2であった。
【0169】
[実施例6]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を285g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を65g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を150gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Fを得た。得られたセルロース組成物FのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Fを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0170】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.1であった。
【0171】
[実施例7]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を215g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を85g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を200gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Gを得た。得られたセルロース組成物GのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Gを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0172】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.3であった。
【0173】
[実施例8]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を107g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を118g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を275gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Hを得た。得られたセルロース組成物HのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Hを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0174】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.1であった。
【0175】
[実施例9]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を285g、ワキシーコーンスターチ由来のリン酸架橋アルファー化澱粉(日本食品化工製 商品名ネオビスC−60)を65g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を150gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Iを得た。得られたセルロース組成物IのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Iを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0176】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.05であった。
【0177】
[実施例10]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を285g、ワキシーコーンスターチ由来のアルファー化澱粉(日澱化学製 商品名MH−A)を65g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を150gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Jを得た。得られたセルロース組成物JのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Jを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0178】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.05であった。
【0179】
[実施例11]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を285g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(日澱化学製 商品デリカKH)を65g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を150gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Kを得た。得られたセルロース組成物KのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Kを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0180】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.05であった。
【0181】
[実施例12]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を180g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を95g、セルロースとカラヤガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N81、組成:セルロース/カラヤガム/デキストリン=80/10/10(質量比)、貯蔵弾性率(G’):0.2Pa、体積平均粒子径8.2μm、コロイド状成分量55質量%)を225gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Lを得た。得られたセルロース組成物LのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Lを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0182】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.3であった。
【0183】
[実施例13]
1)セルロースとジェランガムの複合体の製造
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーク状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーク状のセルロースと、A成分として市販ジェランガム(三栄源FFI製ケルコゲルLT100)、B成分として市販デキストリン(三和澱粉製 サンデック♯30)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、セルロース/ジェランガム/デキストリンの質量比が77/3/20(質量比)となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は390Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。このセルロース複合体は、一軸押出機のφ1mmでペレット化され、90℃の通風オーブン中で乾燥された。乾燥後のペレットは、超遠心式粉砕機(レッチェ製 小型粉砕機 スクリーン径φ0.75μm)で粉砕され、目開きφ500μmの篩を通過された。得られた粉末をセルロース複合体X(水分6質量%)とした。
2)セルロース組成物の製造
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を285g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を65g、セルロースとジェランガムの複合体(上述のセルロース複合体X、貯蔵弾性率(G’):2.5Pa、体積平均粒子径7.8μm、コロイド状成分量78質量%)を150gとした以外は、実施例4と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Mを得た。得られたセルロース組成物MのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Mを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0184】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.3であった。
【0185】
[実施例14]
1)セルロースとキサンタンガムの複合体の製造
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーク状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーク状のセルロースと、A成分として市販キサンタンガム(三栄源FFI製 商品名ビストップD−712)、B成分として市販デキストリン(三和澱粉製 サンデック♯30)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、セルロース/キサンタンガム/デキストリンの質量比が75/5/20(質量比)となるように投入し、固形分52質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は30Wh/kgであった。混練温度
は、熱伝対を用いて混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃であった。このセルロース複合体は、実施例13と同様にペレット化、乾燥、粉砕、篩い分けを行い、セルロース複合体Y(水分6質量%)とした。
2)セルロース組成物の製造
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を180g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を95g、セルロースとキサンタンガムの複合体(上述のセルロース複合体Y、貯蔵弾性率(G’):0.5Pa、体積平均粒子径9.6μm、コロイド状成分量56質量%)を225gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Nを得た。得られたセルロース組成物NのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Nを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0186】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は1.3であった。
【0187】
[比較例1]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を263.2g、ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を11.8g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を225gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Oを得た。得られたセルロース組成物OのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Oを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0188】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は0.9であった。
【0189】
[比較例2]
ワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名デリカWH)を480g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30)を20gとした以外は、実施例1と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Pを得た。得られたセルロース組成物PのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Pを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0190】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は0.7であった。
【0191】
[比較例3]
以下の方法で、セルロース複合体ではなく、セルロースウェットケークを用いて、セルロース組成物を得た。
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、ウェットケーク状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。このウェットケーク861gと、タピオカ由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(王子コーンスターチ製 商品名てんじん)を257g、セルロースと加工澱粉の固形分による質量比で、60/40になるように調整した。続いて、上記セルロースウエットケーク(セルロース複合体ではないが、セルロースウェットケークは、水溶性多糖類と複合化していないため貯蔵弾性率(G’)は0.1Pa未満と低かった。)と加工澱粉の混合物を二軸式エクストルーダー(栗本鉄工所製 商品名KRCニーダー、パドル径2インチ、回転数100rpm)を使用し、8.3kg/hの送り量で、4パス処理し、摩砕を行った。
次に、この摩砕物を、蒸留水で、固形分10質量%になるように希釈し、高速攪拌機(プライミクス製 商品名TKホモミキサーMARKII)を用いて、25℃で、10分間攪拌した後、高圧ホモジナイザー(APV製 商品名マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて、本圧17MPaにて、高圧下で均質化を行った。
【0192】
均質化された分散液を、実施例1と同様に、乾燥し、セルロース組成物Qを得た。得られたセルロース組成物QのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Qを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0193】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は0.8であった。
【0194】
[比較例4]
以下の方法で、セルロース複合体ではなく、セルロースウェットケークを用いて、セルロース組成物を得た。
比較例3と同様に得られたウェットケークを用いて、粉末状の原料として、キサンタンガム(三栄源FFI製 商品名ビストップD−712)と、デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック♯100)と、加工澱粉としてワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシプロピル化澱粉(日澱化学製 商品名WH)を加え、最終的な組成が、実施例3と同様になるように原料を調製した。
【0195】
続いて、上記セルロースウエットケーク(セルロース複合体ではないが、セルロースウェットケークは、水溶性多糖類と複合化していないため貯蔵弾性率(G’)は0.1Pa未満と低かった。)、キサンタンガム及び加工澱粉の混合物を、比較例3と同様に、摩砕、均質化、乾燥を経て、セルロース組成物Rを得た。得られたセルロース組成物RのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Rを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0196】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は0.8であった。
【0197】
[比較例5]
デキストリン(三和澱粉製 商品名サンデック#100)を248g、セルロースとキサンタンガムの複合体(旭化成ケミカルズ製 商品名セオラスRC−N30、組成:セルロース/キサンタンガム/デキストリン=75/5/20(質量比)、貯蔵弾性率(G’):1.0Pa、体積平均粒子径8.6μm、コロイド状成分量65質量%)を202gとした以外は、実施例4と同様に、分散/均質化、乾燥を行い、セルロース組成物Sを得た。得られたセルロース組成物SのBS量を測定し、結果を表1に示した。
また、セルロース組成物Sを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0198】
ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は0.9であった。
【0199】
理論に拘束されるつもりはないが、上記実施例及び比較例で得られた結果について、以下で考察する。
【0200】
セルロース複合体を45質量%含むセルロース組成物における、セルロース複合体と加工澱粉の質量比を実施例1〜5で検討した。セルロース複合体と加工澱粉の質量比が90/10以上に加工澱粉が多いと分散性が良好であり、加工澱粉の質量比が増えるにつれて分散性が向上した。しかし、セルロース複合体と加工澱粉の質量比が60/40以上に加工澱粉が増えると分散性が良好な一方で、濃縮ラーメンスープの風味が僅かにマスキングされ、油の分散安定性もやや低下した。
【0201】
次に、セルロース複合体と加工澱粉の質量比を70/30に固定し、セルロース組成物中のセルロース複合体の含有量を実施例3及び実施例6〜8で検討した。セルロース複合体の割合が増えるに従い、応用物性が良好になる一方で分散性がやや低下した。即ち、セルロース組成物中に含まれる、特定のセルロース複合体と加工澱粉の質量比において、分散性と応用物性が共に良好な、セルロース複合体の含有量が存在することが判明した。
【0202】
その次に、セルロース組成物中に含まれる加工澱粉の種類を、実施例6及び実施例9〜11で検討した。いずれの加工澱粉を用いた場合にも、セルロース組成物の分散性は良好であった。しかし、実施例9〜11で使用した加工澱粉は濃縮ラーメンスープ中のたんぱく質と反応し、たんぱく質の部分的な凝集が発生した。
【0203】
続いて、セルロース組成物中に含まれるセルロース複合体の種類を検討した。具体的には、セルロースと複合体を形成する際に使用する水溶性多糖類の種類を、実施例3及び実施例12、13で検討した。特に、キサンタンガムと複合化したセルロース複合体を用いたセルロース組成物が、カラヤガムやジェランガムと複合化したセルロース複合体を用いたセルロース組成物に比べて、油の分散安定性に優れていた。
【0204】
続いて、実施例14ではセルロース複合体の貯蔵弾性率G’がセルロース組成物の応用物性に与える影響を確認した。その結果、同組成のセルロース複合体を用いた場合には、G’が高いセルロース複合体を用いた方が、得られるセルロース組成物の応用物性が良好であった。
【0205】
比較例1は、セルロース複合体に対する加工澱粉の質量が不足しているため、分散性が低かった。そのため、各実施例と比較して、濃縮ラーメンスープ及び焼肉のたれの油の分散安定性の点で劣っていた。比較例2はセルロース組成物中のセルロース複合体の割合が低いため、各実施例と比較して、油の分散安定性、具材の懸濁安定性、保形効果の点で劣っていた。比較例3、4はセルロース複合体を用いずに、セルロースウエットケークと加工澱粉を磨砕して用いた。そのため、各実施例と比較して、分散性が低いと共に、油の分散安定性、具材の懸濁安定性、保形効果の点で劣っていた。比較例5は、セルロース複合体と親水性物質のみからなり加工澱粉を含まないため分散性が低かった。各実施例と比較して濃縮ラーメンスープ及び焼肉のたれの油の分散安定性の点で劣っていた。
【0206】
【表1-1】
【0207】
【表1-2】
【0208】
[比較例6]
香味エキスパウダー(富士食品工業(株)製)14.5質量%、カレー粉(特製エスビーカレー、ヱスビー食品(株)製)10.5質量%、ソルビトール(物産フードサイエンス(株)製)14.0質量%、オニオンパウダー(池田糖化工業(株)製)3.0質量%、食塩(KSL、(株)日本海水製)3.0質量%、加工澱粉(スウェリージェル700、王子コーンスターチ(株)製)15.0質量%、キサンタンガム(サンエース、三栄源エフエフ・エフ・アイ(株)製)0.1質量%、セルロース組成物S(比較例5参照)3.0質量%、部分アルファー化澱粉(PCS FC−30、旭化成ケミカルズ(株)製)5.0質量%、微結晶セルロース(セオラス UF−F702、旭化成ケミカルズ(株)製)3.9質量%の割合で粉体として800gをビニール袋に入れ、3分間混合した。この混合粉体を流動層造粒乾燥装置((株)パウレック製、MP−01型)を用いて、スプレーノズル径1.2mm、ノズル先端1mm出し、スプレー位置はトップ(下段セット)、アトマイズ空気量40NL/分、バグフィルター種はテトロン織布、バグフィルター払い落とし圧力0.5MPa、給気温度設定60℃、風量0.4〜0.7m
3/分、結合液投入速度20g/分の条件で造粒した。なお、混合粉体を造粒する際の結合液としては、ラード(精製ラード、ミヨシ油脂(株)製)20質量%を50℃に加温し、溶融させた液体を噴霧後、造粒された混合粉体を排気温度が40℃になるまで給気を継続した。造粒された混合粉体は給気終了まで良好な流動性を示した。さらに、目開き:1400μmの篩で篩過して粗大粒子を取り除き、セルロース組成物Tを得た。粗大粒子の割合は11.6%であった。
また、セルロース組成物Tを用いて、実施例1と同様に、応用物性の評価を行った。得られた結果を以下に示す。
【0209】
セルロース組成物のBS量は、5.9%であり、濃縮ラーメンスープの油の分散安定性は×、たんぱく質の凝集は○、風味は×であった。また、焼き肉のたれの油の分散安定性は×、具材の懸濁安定性は×、マヨネーズの保形性は○、ソフトミックスの油の分散安定性は×であった。さらに、ラーメンスープ、たれの粘弾性を測定した結果、(tanδ(50℃)/tanδ(25℃))は0.7であった。
【0210】
<菓子の実施例、比較例>
まず、クッキーの試作方法、各種物性の評価方法を説明する。
<セルロース組成物以外の原材料 (セルロース組成物は、実施例の項に記載。)>
1)薄力粉:日清製 商品名「日清フラワー薄力小麦粉」
2)砂糖:日新製糖製 商品名「粉糖NZ−1」
3)全卵:市販の鶏卵
4)ショートニング:日清製 商品名「とっても便利なショートニング」
5)ベーキングパウダー:日清製 商品名「ベーキングパウダー」
<クッキーの試作方法>
使用機器:KANTO MIXER HPi−20M、バタービーターフック
1)まず、ショートニングと砂糖を合わせて、混合した。(248rpm×1分、451rpm×1分)
2)次に、全卵を2回に分けて入れ、混合した (451rpm×40秒)。
3)薄力粉とベーキングパウダーとセルロースを入れ、混合した(136rpm×1分×3回)。
4)生地を密封し、冷蔵保管した(12〜24時間)。
5)生地を4mm厚にのばし、25mm×25mmにカットした。
6)生地をオーブンで焼成した(170℃:5分→天板の前後入れ替え→170℃:4分)。
7)室温で祖熱を取り、評価に用いた。
<密度>
無作為に10枚のクッキーを選択し、各々の密度を算出した。10枚の平均値を密度とした。
<最大荷重>
無作為に10枚のクッキーを選択し、各々の最大荷重を測定した。具体的には、テクスチャー・アナライザー(英弘精機株式会社製、TA.XT plus型、測定治具:HDP/3PB型、温度:25.0℃、Mode:Mesure Force in Compression、Option:Return to Start,Pre−Test
Speed:1.0mm/s,Test−Speed:1.5mm/s,Post−Test Speed:10mm/s,Distance:5mm,Triger Type:Auto 50g)により測定した。10枚の平均値を最大荷重とした。
<割れ欠け発生枚数>
無作為に10枚のクッキーを選択し、クッキーを木製の机に30cmの高さから5回自由落下させた。1枚のクッキーが、クッキーの全質量に対して、いずれかが5質量%以上を有する2つ以上の物体に分割した場合を割れ欠けが発生したと定義した。
◎(優):0〜1枚で割れ欠けが発生
○(良):2〜3枚で割れ欠けが発生
△(可):4〜5枚で割れ欠けが発生
×(不可):6枚以上で割れ欠けが発生
<食感評価>
22歳から48歳の男女12名のパネラーにより、上記のクッキーを実際に食してもらい、以下の評価基準で官能評価を実施した。以下の各食感について、0〜4点(1点刻み)で点数をつけ、平均点を求めた。
1)食感:セルロース無添加品(比較例7)と比較した、歯で全体を噛んだ際に、感じる食感。
平均3点以上 : ◎ 比較例7と同じ食感
平均2点以上、3点未満: ○ 比較例7と食感が僅かに異なる
平均1点以上、2点未満: △ 比較例7と食感が少し異なる
平均1点未満 : × 比較例7と食感が明確に異なる
2)サクサク感:歯で、全体を噛む際のサクサクした食感
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし
<クッキーの角(エッジ)立ちの評価:外観観察>
焼成後のクッキーの四隅の角立ちを、目視で評価した。
◎(優):全て焼成前の形態をそのまま保持
○(良):1つの角の先端が丸く変形
△(可):2〜3つの角の先端が丸く変形
×(不可):全体が丸くなり、角がなくなった状態
【0211】
[実施例15]
上記のクッキーの試作方法において、薄力粉を1386g、ショートニングを400g、全卵を400g、ベーキングパウダーを14g、砂糖を599g、実施例3で得られたセルロース組成物Cを全仕込み量2800gに対し0.05質量%配合し、クッキーを試作した。得られたクッキーについて、上記の評価を行った。得られた結果を、表2に示す。なお、表2では、ここで用いたセルロース組成物Cを、組成物Cと略記した。
【0212】
[実施例16]
実施例15の試作方法において、セルロース組成物Cの配合量を0.1質量%、砂糖597gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例17]
実施例15の試作方法において、セルロース組成物Cの配合量を0.5質量%、砂糖586gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例18]
実施例15の試作方法において、セルロース組成物Cの配合量を1.0質量%、砂糖572gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例19]
実施例15の試作方法において、セルロース組成物Cの配合量を2.5質量%、砂糖530gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例20]
実施例18の試作方法において、薄力粉を1428g、ベーキングパウダーを無添加にした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例21]
実施例20の試作方法において、薄力粉を1176g、砂糖を801gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例22]
実施例20の試作方法において、薄力粉を1008g、砂糖を980gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例23]
実施例18の試作方法において、薄力粉を1372g、ベーキングパウダー28gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
[実施例24]
実施例18の試作方法において、薄力粉を1344g、ベーキングパウダー56gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表2に示す。
【0213】
【表2】
【0214】
[比較例7]
実施例18の試作方法において、砂糖を600g、セルロースを無添加にした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表3に示す。
[比較例8]
比較例7の試作方法において、薄力粉を1372g、砂糖を571g、ベーキングパウダーを56gにした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表3に示す。
[比較例9]
比較例7の試作方法において、薄力粉を1008g、砂糖を1008g、ベーキングパウダーを無添加にした以外は、同様にクッキーを試作し、同様に評価を行った。得られた結果を、表3に示す。
[比較例10]
米粉1372g、えんどう豆1372g、「KCフロック400G」56gを混合した。この原料を2軸エクストルーダーに供給し、同時に混合物の水分含量を18重量%になるように加水量を調整し、バレル温度90℃、ダイ温度150℃、フィード量270kg/hr、圧力30〜50kg/cm
2で加圧加熱処理を行い膨化物を得た。この膨化物を押し出し速度の1.2倍の速度でけん引し、得られたスティック状膨化物の直径に対して20倍になるような長さになるように切断した。その後乾燥機を用いて水分値を1.5%以下にし、作製したスティック状膨化物を同様に評価した。得られた結果を、表3に示す。
[比較例11]
タピオカ澱粉由来のアセチル澱粉744gおよび馬鈴薯澱粉696gを用いた。冷水糊化粉としてα架橋ワキシーコーンスターチ(冷水膨潤度28ml/g)178g、トレハロース324g、粉末チーズ534g、「KCフロック400G」を162gを実施例1と同様の装置で1分間粉体混合し均一化した、次に、ショートニング113g、レシチン3gを混合したものを加え、さらに炭酸アンモニウム16gを溶解した水521g加えながら縦型のケーキミキサーで1分間粉体混合し生地を作製した。以下、実施例1の試作方法で同様に成形後、オーブンを用いて220℃で12分間加熱により作製したクッキーを同様に評価した。得られた結果を、表3に示す。
【0215】
【表3】
【0216】
比較例7は、食感が優れるものの、割れ欠けの発生枚数が多く、サクサク感がほとんどなかった。比較例8は、比較例7に対して低密度であるため、サクサク感は向上したが、割れ欠け低減効果はなく、食感も異なる菓子となった。比較例9は、比較例7に対して高密度で硬いため、割れ欠けは向上したが、食感が大きく異なる菓子となった。比較例10は、比較例7に対して割れ欠けは向上したが、過剰に低密度になるために、比較例7に対して食感が大きく異なり、サクサク感も付与できていない。比較例11は、比較例7に対して割れ欠けは向上したが、菓子が硬くなることで、比較例7に対して食感が大きく異なる菓子となった。
実施例15〜19は、セルロース組成物Nの添加量を振って得られた結果である。表2の結果から、セルロース組成物の添加量が増えると、割れ欠けが抑制され、サクサク感が向上した。また、セルロース組成物は、0.05質量%の添加でも、比較例7(セルロース無添加)に対し、割れ欠けが抑制された。食感については、実施例レベルに割れ欠けが抑制された比較例10、11と比較しても、実施例では食感が良好なものが得られた。
実施例20〜22は、菓子の最大荷重を振った結果である。その結果、ベーキングパウダーを配合した実施例15〜19が良好な食感であるが、広範囲の最大荷重において割れ欠けの低減は遜色ない結果であった。
実施例23、24は、菓子の密度を振った結果である。その結果、実施例15〜19が良好食感であるが、広範囲の密度において割れ欠けの低減は遜色ない結果であった。
【0217】
<ベーカリー製品の実施例、比較例>
パウンドケーキの試作方法、各種物性の評価方法を説明する。
<セルロース組成物以外の原材料 ※セルロース組成物は、実施例の項に記載>
1)薄力粉:日清製 商品名「日清フラワー薄力小麦粉」
2)上白糖:三井製糖製 商品名「スプーン印上白糖」
3)マルトオリゴ糖:日本食品化工製 商品名「フジオリゴ」
4)加工デンプン(タピオカα化デンプン):三和澱粉製 商品名「タピオカアルファーTP−2」
5)食塩:日本食塩製造製 商品名「クッキングソルト」
6)全卵:市販の鶏卵
7)バター(無塩):明治製 商品名「バター(食塩不使用)」
8)ドライフルーツミックス:小島屋製 商品名「ダイスカットドライフルーツ」
※キウイ・苺・パイナップル・パパイア・マンゴー・メロン・りんごをダイス状にカットし、砂糖液に漬け込み、乾燥されたもの。
※実測の短径=3mm〜10mm、長径/短径比=1〜3、比重(平均)1.4g/mL
9)バニラエッセンス:明治屋製 商品名「バニラエッセンス」
【0218】
<パウンドケーキの試作方法:全量500gで試作>
1)まず、表4の処方において、※印で記載した粉体類を予めポリ袋中で3分間混合し、金属製のボウルに投入した。
2)次に、全卵を加え、プラスチック製のヘラで混ぜ、溶かし、10分間、室温で生地を寝かせた。ここに、溶かしバター、ドライフルーツ、バニラエッセンスを加えて、さらに10分間、同様に混ぜた。ここで、実施例25、比較例12〜14の焼成前の生地の比重は、0.75〜0.85g/mLであった。
3)金属性のパウンド型に平らになるように400gを入れ、オーブンで、170℃で40分間焼成した。※断面形状は、約7cm角。
4)焼きあがったケーキは、約2cmの厚みにカットして、評価に用いた。
【0219】
<具材の均一性>
1)無作為に12カットのケーキを選択し、断面に存在する全具材の数を目視で計測した。また、ケーキの底面から、上面の距離を計測し、中央から上部に存在する具材の数を計測した。上記で計測した具材の数量より、以下の式で均一性を算出した。
具材の均一性(%)=((上部に存在する具材数)/(全具材数))×100
【0220】
<食感評価>
22歳から48歳の男女12名のパネラーにより、上記のケーキを実際に食し、以下の評価基準で官能評価を実施した。以下の各食感について、0〜4点(1点刻み)で点数をつけ、平均点を求めた。
1)クリスピー感: 前歯で、クラスト部分を噛む際のサクサクした食感
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
(セルロース、加工デンプン(増粘剤)無添加と遜色なし)
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし(食感がモチモチしすぎている)
2)さっくり感: 前歯で、クラム部分の噛みきりやすさ
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
(セルロース、加工デンプン(増粘剤)無添加と遜色なし)
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし(食感がモチモチしすぎている)
3)ふんわり感: 奥歯で、全体を噛む際の軽いふんわりした食感
平均3点以上 : ◎ 非常に優れる
(セルロース、加工デンプン(増粘剤)無添加と遜色なし)
平均2点以上、3点未満: ○ 優れる
平均1点以上、2点未満: △ 劣る
平均1点未満 : × ほとんどなし(食感がモチモチしすぎている)
4)ざらつき感: 飲み込む際の舌に感じる、ざらざらした感触
平均3点以上 : ◎ なし
平均2点以上、3点未満: ○ ほとんどなし
平均1点以上、2点未満: △ 少し感じる
平均1点未満 : × 感じる
【0221】
[実施例25]
セルロース組成物Cを用い、その配合量を0.3質量%として、上記の試作方法に従ってケーキを試作し、評価を行った。得られた結果を、表4に示す。なお、表4では、ここで用いたセルロースを、セルロース組成物Cと記載した。
[比較例12〜14]
従来のケーキと比較するために、比較例12では、セルロース、増粘剤(加工デンプン)を無添加のケーキを試作した。それに対し、比較例13、14では、セルロースを配合せず、増粘剤として加工澱粉を配合し、ケーキを試作した。
得られた結果を、表4に示す。
【0222】
【表4】
【0223】
比較例12は、食感が優れるものの、具材は沈降し、均一なものは得られなかった。それに対し、比較例13、14で、加工デンプンを配合、増量すると、具材の均一性は向上したが、それに反し、食感が悪化した(食感がモチモチしすぎ、本来のケーキの食感(比較例12参照)ではなくなった。)。
実施例は、ドライフルーツの配合量を10質量%に固定し、セルロース組成物を配合して得られた結果である。表4の結果から、セルロース組成物を配合すると、具材の均一性が向上し、比較例12(セルロース、加工デンプン無添加)に対し、具材の均一性が向上した。食感については、実施例レベルに、具材の均一性が向上した比較例13、14(加工デンプン配合)と比較して、食感が良好なものが得られた。