(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
[液体及び気体流動の流動形態]
本発明の実施例は、通路の内部から汚染物質を除去するために、内視鏡又はその他の医療用内腔機器の内部通路内に流動形態を生成するべく設計可能である。汚染物質を除去するための以前から使用されている1つの方法は、気体の流れの中の十分に大きな速度で運動する液滴の衝撃によるものである。しかしながら、いくつかの状況においては、液滴を生成するべく、又は汚染物質を除去するために十分な勢いを具備した液滴を生成するべく、十分な気体速度を提供することができない。この制限は、例えば、通路を含む装置が相対的に小さな圧力制限を有すると共に/又は、内視鏡の特定のチャネル内のように通路が相対的に長い状況において発生する可能性がある。例えば、特定の内視鏡の設計に応じて、且つ、内視鏡内の特定の通路に応じて、通路内に入力可能な最大圧力は、18psig、又は24psig、又は28psigに制限されることになろう(いくつかの内視鏡の1つの特定のチャネルは、70psigの圧力制限を具備可能である)。通路の流動長は、長いものでは数メートルにもなろう。これらのパラメータの組合せが、通路内において実現可能な気体速度を制限する。又、破片及び汚染物質の存在も、通路内において実現可能な気体速度を低減し得る。
【0027】
従って、本発明の一実施例は、その他の物理的メカニズムを使用して洗浄を実現可能とする。細流液滴流動において形成される細流及び表面流動体の摺動運動から生じる運動する3相接触ライン及びメニスカスによる汚染物質の剥離において機能可能な少なくとも2つの可能な物理的メカニズムが存在している。1つのメカニズムは、粘性せん断に関係しており、且つ、他方のメカニズムは、表面張力に関係している。3相接触ラインとは、固体(通路の表面)、液体、及び空気の間の、或いは、その他のケースにおいては、汚染物質粒子の表面、液体、及び空気の間の界面を意味している。メニスカスとは、通路の壁上において運動する摺動体の2次元界面として定義可能である。これら2つメカニズムに加えて、特に、洗浄液体の界面活性剤及びその他の成分が存在する状態においては、更にその他の物理−化学的効果が洗浄の実現を同様に支援するべく機能可能であろうと更に考えられる。これらのメカニズムは、例えば、汚染物質又は汚染物質粒子の一部分の溶解と、界面活性剤の働きによる脱離と、を包含可能である。
【0028】
[汚染物質粒子に対する粘性力]
汚染物質粒子を除去するための粘性せん断と関連し、通路全体を充填する液体の従来のバルク流動によって生成可能な粘性せん断力と、3相接触ラインを具備した摺動液状体によって生成可能であると共に粒子と遭遇した際の大きな前進接触角及び非ゼロの後退接触角の基準を満足した粘性せん断力と、を比較することが有益である。この比較が
図1a、
図1b、
図1c、及び
図1dに示されている。
【0029】
通路を通じた液体流動の従来のバルク層流の場合には、速度プロファイルは、
図1aに示されているように、放物線状となる。液体の速度は、毛細管の壁においてゼロであり、且つ、毛細管の中心において最大である。半径方向の位置の関数としての速度は、次式によって付与される。
V(z)=2U
o[I−(R
t−Z)
2/R
t2] (1)
ここで、V(z)は、毛細管の壁から距離zを有する流動の速度である。U
oは、流動の中心における最大値の半分であり、且つ、R
tは、毛細管の半径である。この式中において、aは、壁から離れる方向において計測された距離を表す。z/R
t<<1である壁の直近においては、式1は、壁近傍の速度プロファイルを付与するべく、次式のように更に単純化される。
V(z)=(4z/R
t)U
o (2)
【0030】
壁に付着した汚染物質粒子が経験しうる水力学的な力を判定するには、aが汚染物質粒子の半径を表すと考えればよい。考慮すべき最も代表的な値は、その寸法が2aである汚染物質粒子の最も外側の地点における液体速度である。従って、汚染物質粒子の外側縁部における液体速度は、(8a/R
t)U
oである。従って、毛細管の半径と比べて小さい粒子の場合には、壁から最も遠い粒子の地点において観察される液体速度は、流動の最大中心速度のわずかに数分の1に過ぎない。これが
図1bに示されている。
【0031】
通路の壁に付着すると共にそのリーディングエッジに3相接触ラインを具備した摺動液状体の流動の場合には、状況が異なってくる。この液状体は、U
siの摺動速度によって前進するものと見なすことができる。更には、この摺動液状体のリーディングエッジは、ウェッジとして表れ、且つ、このウェッジは、毛細管の壁においてゼロであると共にウェッジの最上部において1.5U
siに接近する速度プロファイルV(z)によって運動するものと見なすことができる。この状況は、Pierre−Gilles de Gennes、Francoise Brochard−Wyart、David Quereによる「Capillarity and Wetting Phenomena」(2003年春季)に記述されている。
図1c(de Gennesの文献の
図6.6)は、摺動ウェッジ内の速度プロファイルを示している。この状況は、その地点が、ウェッジが非常に薄いウェッジの先端近傍であるのか、或いは、ウェッジが相対的に厚いウェッジの先端から更に後方であるのかとは無関係に、摺動ウェッジ上の任意の地点において発生する。これが
図1cに示されている。
【0032】
汚染物質粒子を除去するべく、対象となる状況は、壁に付着した汚染物質粒子が、水−空気界面に接触する際に、接触ラインから距離xにおいて接近するウェッジ内に位置した際である。粒子が小さくなるほど、距離xも小さくなる。ウェッジの最上部における速度は、1.5U
siであり、且つ、毛細管の壁における速度は、ゼロであるため、粒子に影響を及ぼす液体の流れの平均速度は、約0.75U
siである。
図1dは、任意の小さな粒子の場合に、両方の表面に接触する接触ラインまでの距離xが存在するため、付着した粒子に影響を及ぼす液体速度は、粒子がどれほど小さくても、少なくとも0.75U
siであることを示している。
【0033】
任意の所与の粒子の場合に、摺動液状体の場合の粒子の縁部における液体速度を従来のバルク流の場合の粒子の縁部における液体速度と比較することにより、摺動液状体の洗浄有効性をバルク液体流の洗浄有効性と比較可能である。この比率は、次式のとおりである。
V縁部(摺動液状体)/V縁部(バルク流)=(1.5)(U
si/U
o)(R
t/a) (3)
「a」によって表される粒子サイズが小さくなるのに伴って、バルク液体流と比べて、摺動液状体の利点が増大することを観察可能である。例えば、0.05cm(R
t)の半径を具備するチューブ内において200cm/sec(U
o=100cm/sec)の最大速度を有するバルク液体流と比較した際に、U
si=1cm/secで運動する摺動液状体の3相接触ラインは、半径が1ミクロンのバルク液体流の剥離力と比べて、剥離力における2倍の増大、半径が0.1ミクロンの粒子の場合には、20倍の増大、半径が0.01ミクロンの粒子の場合には、200倍の増大を生成可能である。
【0034】
従って、バルク流の最大速度の実際の値及び液状体の摺動速度の実際の値がどのようなものであるにしろ、摺動液状体は、その速度を摺動液状体の前進するウェッジのリーディングエッジにおいて壁に非常に近接した状態に配置可能であり、バルク流は、その最大速度を壁の近傍に配置することができないと考えられる。従って、摺動液状体は、壁に付着した小さな汚染物質粒子に対して粘性力を作用させるという点に関する限り、バルク流と比べて利点を具備している。但し、この説明に限定されることを望むものではない。
【0035】
[汚染物質粒子に対する表面張力]
洗浄を実現するための第2の可能なメカニズムは、通路の内部表面上における運動する3相界面、即ち、固体表面における液体と気体の間の界面に伴うメカニズムを使用する。この洗浄メカニズムは、液状体によって湿潤されている表面の一部と、乾燥状態にある又は略乾燥状態にある表面の隣接部分と、を伴うであろう。この結果、このような界面は、移動するのに伴って、汚染物質を除去するべく機能可能な力を生成可能である。
図2は、この状況を概略的に示している。
【0036】
湿潤−乾燥界面は、固体表面に沿って移動するのに伴って、表面に付着可能な汚染物質などの表面の要素に対して力を作用させることができると考えられる。この力は、例えば、それらの汚染物質を下に位置する固体表面から浮き上がらせて引き離すことにより、下に位置する固体表面との間にそれらの汚染物質が具備する付着状態を破壊するのに寄与可能である。これは、「毛細管現象浮上」と呼称可能である。これは、3相接触界面及びメニスカスの移動を伴うであろう(本明細書においては、この「3相接触界面」という用語を「3相接触ライン」と表現する場合もある)。但し、この説明に、或いは、これが、発生する唯一の洗浄メカニズムであるという状況に、限定されることを望むものではない。この説明においては、「湿潤」及び「乾燥」という用語は、例えば、「湿潤」領域と「乾燥」領域の間の界面における3相接触界面の形成を許容するようなものであると解釈されたい。古典的な完全に乾燥した表面の状況を包含するのに加えて、この状況は、極めて薄い又は断続的な液体薄膜が存在可能ではあるが、全体的な挙動は、完全に乾燥した表面上を移動する液状体のものに類似した特性を示すという可能な状況をも含むものと解釈されたい。又、この説明における乾燥及び湿潤状態は、前進接触角、後退接触角、及び3相接触ラインの通過の後に残る残留液体薄膜の観点において表現することも可能である。乾燥又は略乾燥という用語は、残留液体薄膜の厚さが、表面上に存在している汚染物質の寸法よりも小さいであろうことを意味している。
【0037】
図2aは、固体表面上における摺動液状体を示している。
図2bは、摺動液状体と関連した前進及び後退接触角の定義を示している。
【0038】
剥離のメカニズムは、メニスカスが粒子の周りに形成された際の液体/空気界面における毛細管現象張力によって生成可能である(
図2c、2d、2e、及び2f)。
図2cは、摺動液滴の接触ラインが接近している壁に付着した汚染物質粒子を示している。
図2dは、液体/空気界面が粒子に接触する瞬間を示している。
図2e及び
図2fは、毛細管現象力が親水性(θ
p<90°)粒子と疎水性粒子(θ
p>90°)という2つのケースにおいて誘発された際のプロセスにおける粒子の近傍のみを表している。このメカニズムによれば、運動する液体による粒子表面への接触は、粒子が親水性であるのか又は疎水性であるのかに拘わらず、毛細管現象力の始まりを起動する。但し、このメカニズムによる剥離においては、粒子との間の洗浄液体の接触角が重要な役割を演ずる。このメカニズムによる汚染物質の剥離を増強するべく、洗浄組成物の界面活性剤混合物の選択が調整される。
【0039】
親水性粒子の剥離:粒子が親水性である際には、水性液体は、粒子表面を湿潤し、これが液体/粒子表面における接触面積の拡大に結びつく。これは、粒子表面上における接触ラインを表す接触エリア周囲角Ψの拡大によって特徴付けられる。粒子表面に沿った周囲運動には、局所的なメニスカスの形成によって明示される粒子近傍における液体表面の変形が伴う(
図2e)。この場合には、液体/空気界面の表面張力、即ち、界面に沿って方向付けられる力を考慮することで十分である。この力は、接触ラインの任意の地点に存在し、且つ、異なる方向を具備する。粒子の湿潤が軸対称であり、且つ、接触ラインに類似した形状をとると仮定すれば、軸方向座標z及び半径方向座標rを有する局所的な円筒形座標系を導入可能である。局所的な毛細管現象力の半径方向成分は、軸方向の対称性に起因して互いに打ち消しあう。軸方向成分は、接触ラインの任意の地点において同一であり、合計軸方向毛細管現象力をもたらす。軸方向の力が付着力よりも大きい場合には、毛細管現象力が粒子を剥離させることになる。この場合には、粒子の接触角θ
pは、90°未満である。
【0040】
疎水性粒子との相互作用:粒子が疎水性である際には(θ
p>90°)、その湿潤が抑制され、且つ、液体中へのその進入は、
図2fに示されているように、大きな接触角の値に起因して小さい。この結果、毛細管現象力の方向は、
図2eに示されているものと反対である。この場合には、生じる毛細管現象力の(壁に対して平行な)水平成分が、粒子を転動させ、且つ、結果的に壁から剥離させることになる。
【0041】
毛細管現象力の特性を説明すれば、浮遊状態において立ち上がる泡に対する球形粒子の付着における周知の式を使用可能である。液体/空気界面に対する粒子付着における毛細管現象力の式は、Cristina Gomez−Suarez他により、「Applied and Environmental Microbiology」(67、2531〜2537頁(2001))に、以下のように提供されている。
F
cα=2πασsinΨsin(θ−Ψ) (4)
ここで、αは、粒子の半径であり、且つ、σは、液体の表面張力である。毛細管現象力は、接触ラインの長さ2παsinΨと、表面張力と、に比例している。sin(θ−Ψ)は、
図2e及び
図2fに示されているように、ベクトルFσからその投影Fσαxへの遷移において立ち上がる。角度Ψは、相互作用の際に変化し、且つ、特に、次式によって示される毛細管現象力の最大値に対応した値をとる。
F
camax=2πασsin
2(θ/2) (π/2<θ<π) (5)
F
camax=2πασsin
2[(π−θ)/2] (0<θ<π/2) (6)
【0042】
3相接触ラインによって誘発される水力学的な剥離力と比べた毛細管現象剥離力:摺動3相接触ライン近傍の水力学的な剥離力F
hは、次式のように表現される。
F
h=4.5πηαU
sl (7)
ここで、ηは、液体の粘度であり、αは、粒子の半径であり、且つ、U
slは、液滴又は表面流動体の摺動速度である。毛細管現象力に対する水力学的力の比率は、次式によって表現可能である。
F
h/F
cαmαx=(2.25/sin
2θ/2)Cα
sl (8)
ここで、Ca
sl=ηU
sl/σは、非常に小さなキャピラリー数である。例えば、摺動速度U
slが5cm/secであると仮定すれば、液体粘度ηは、1×10
−2g/cm.secであり、且つ、液体の表面張力σは、50.g/s
2(dynes/cm)であり、キャピラリー数は、約10
−3である。接触角を考慮した場合の異なるθ及びU
slにおける水力学的力と毛細管現象力の比率は、次の表のとおりである。
【0044】
いくつかのケースにおいては、毛細管現象剥離力が明白に大きいが、水力学的剥離力が重要になる状況も存在する。液体/空気界面との粒子の接触を提供することができない場合には、毛細管現象剥離力が実現されない。その一方で、水力学的剥離力は、依然として存在することになる。表面流動体の摺動速度は、広い範囲の値にわたるため、両方のメカニズムは、チャネル直径及び動作条件に応じて、しばしば、共に機能可能であり、或いは、相手を上回ることになると考えられる。
【0045】
バルク液体流と比較した毛細管現象剥離力:バルク液体流によって生成される水力学的剥離力F
lfは、次式によって表現される。
F
lf=24πηU。(α
2/R
t) (9)
ここで、R
tは、毛細管又は小さなチューブの半径であり、且つ、U。は、流動の中心において発生する液体流動の最大速度の半分である。バルク液体流と毛細管現象相互作用の両方によって粒子に対して生成される剥離力の比較は、次式のように単純化可能である。
F
lf/F
cα〜12 Cα
o(α/R
t) (10)
ここで、Cα
oは、次式のとおりである。
Cα
o=η(U
0/σ) (11)
先程使用したものと同一のパラメータを適用すれば、粘度ηは、1×10−2cm/sであり、水の表面張力σは、50g/sec
2(dynes/cm)であり、且つ、最大バルク液体速度が200cm/sec(U
o=100cm/sec)であると仮定すれば、Cα
oは、約0.02である。液体流動の水力学的剥離力は、毛細管剥離力よりも一桁だけ弱い。
【0046】
この説明に拘束されることを望むものではなく、両方の剥離メカニズムは、汚染物質の特性と本発明に従って使用される洗浄液体の組成を含む動作条件に応じて、機能可能であると考えられる。
【0047】
この剥離のメカニズムにおいては、断片又は滴のリーディングエッジに形成されるメニスカスが、汚染物質と接触し、且つ、少なくともある程度チャネルの表面から離れる方向に方向付けされた(有効な接触面積に対して作用する表面張力の垂直成分に比例した)毛細管現象力を汚染物質に対して作用させる。この剥離力は、液体の表面張力、汚染物質のサイズ(接触周囲長)、及びその湿潤性(接触角度)の関数になるものと予測可能である。この力は、汚染物質をチャネルの表面に保持する付着力の強度に応じて、表面から汚染物質を剥離させるのに十分なものであろう。毛細管現象浮遊は、前進接触角が90度以上に接近し、且つ、汚染物質粒子が約10μm未満、特に、5μm未満である際に、益々有効になるものと考えられる。更には、摺動液状体又は断片の後退接触角も、このような剥離力を生成することができよう。
【0048】
固体−液体−気体界面は、液状体の前進縁部において、即ち、表面の乾燥した局所的領域が湿潤状態になる際に、或いは、液状体の後退縁部において、即ち、表面の湿潤した局所的領域が乾燥状態になる際に、発生可能である。前進及び後退は、一般に、通路に沿った、又は、細流の流動に沿った、流動の全体的な方向と一致可能であるが、前進及び後退は、通路の長さに沿った流動の全体的な方向を横断する方向の運動の成分とも関連可能であることに更に留意されたい。横断方向の運動の代表的な形態は、本明細書の別のところに記述されているように、蛇行である。前進又は後退接触角を生成する液体の運動は、通路の全体的な流動方向に沿ったものであってもよく、或いは、通路の全体的な流動方向に対して垂直のものであってもよく、或いは、2つの方向のなんらかの組合せであってもよい。これらのすべてが
図2a〜
図2dと
図3aにも示されている。
【0049】
運動する液状体が、これらのメカニズムのいずれかのもの又はその任意の組合せ又はその他のメカニズムを通じて、壁から汚染物質を剥離させる十分な力を提供した際には、汚染物質を摺動液状体又は滴又は細流によって清掃可能である。剥離した汚染物質は、液状体のトレーリングエッジと共に移動可能であり、或いは、液状体の液体/気体界面において捕獲され、且つ、これと共に移動可能である。これらの搬送プロセスのいずれの場合にも、後退接触角が非ゼロであること、即ち、表面流動体のトレーリングエッジを引っ張り出してトレーリング液体薄膜を形成することができないことが有用であろう。非ゼロの後退接触角は、トレーリング表面上における薄膜形成を防止するために、搬送メカニズムよりも重要であると考えられる。通路の壁上における表面流動体の前進及び後退接触角を制御するには、洗浄液体中の界面活性剤の役割が不可欠である。通路表面の親水性も、接触角を決定すると共に細流液滴流動における湿潤−乾燥状態を決定するのに、界面活性剤組成と共に、役割を果たしている。
【0050】
[流動形態]
洗浄動作を提供可能な1つの特定の流動モードが、細流流動である。細流流動においては、液体の大きな部分が、通路の内部表面に付着した状態において存在可能であり、且つ、気体流動の全体的な方向において運動可能である。液体の少なくとも一部が、流動の方向に沿って略長手方向に延長する細流の形態において存在可能である。細流との実際の接触状態にない通路の内部表面の部分は、実質的に乾燥した状態となろう。
【0051】
細流流動は、静止気体の環境において、重量の作用下において滑らかな傾斜プレーンを流れ下る液体の場合について研究されている(例えば、P.Schmuki及びM.Lasoによる「On the stability of rivulet flow」(J Fluid.Mech.、(1990)、第215巻、125〜143頁)を参照されたい)。又、細流現象は、Nolwenn Le GRrand−Pitiera、Adrian Daerr、Laurent LIMATによる「Meandering rivulets on a plane: a simple balance between inertia and capillarity?」(2008年2月2日、arXiv:physics/0510089v2[physics.flu−dyn]7Nov2006)、及びTeamrat A.Ghezzeheiによる「Constraints on flow regimes in wide−aperture fractures」(Lawrence Berkeley National Laboratory Paper LBNL 54681、2004)(http://repositories.cdlib.org/lbnl/LBNL−54681)、及びTakeo Nakagawa及びJohn C.Scottによる「Stream meanders on a smooth hydrophobic surface」(J Fluid Mech.、(1984)、第149巻、89〜99頁)及びT.Nakagawaによる「Rivulet meanders on a smooth hydrophobic surface」(Int.J.Multiphase Flow、第18巻、第3号、455〜463頁(1992))にも記述されている。これらの文献の大部分は、静止気体によって包囲された平らな傾斜プレーンを流れ下る細流流動を研究している。
【0052】
これらの文献のいくつかのものは、これらの状況にある流動を、いくつかの形態の中のいずれかのものを具備するものとして分類している。関係するいくつかの変数の中の3つのものが、プレートの傾斜角、液体流量、及び表面と液体の接触角である。一般に、これらの変数は、増大するエネルギー又は活動レベルのなんらかの標識として考えることが可能な多少関連した効果を具備している。小さな傾斜角及び小さな液体流量のなんらかの組合せの場合に発生可能な最低限に能動的な状況においては、液状体の流動は、実質的に直線状になる傾向を有する。これが安定的状況である。
【0053】
多少大きな液体流量又は傾斜角においては、液体流動の蛇行形状が現れ始め、これは、時間の関数としてその形状を変更可能である。Schmukiの文献から採取した蛇行細流が
図3bに示されている。
【0054】
このような細流の経路は、多少不規則な形状において湾曲している。更には、滑らかな傾斜プレーンを流れ下る液体の細流は、時間の関数として、液体の流れの全般的な方向に対して垂直の方向に自発的に「曲がりくねる」又はジグザグに運動可能であることが観察された。換言すれば、細流の形状が変化している。この状況は、
図3aに示されているように、細流が、恐らくは、多少ランダムに、又は不安定な方式により、表面上におけるその位置を動的に変化させるようなものであろう。いくつかの状況においては、細流は、多少ランダムにホースを周囲に鞭打たせる端部が固定されていない水排出ホースの不安定性に類似すると考えられる不安定性に起因し、曲がりくねるのであろう。これはRayleigh又はその他のタイプの水力学的不安定性に関係するものと考えられる。このような水力学的不安定性は、複雑な方式により、例えば、液体流量、局所的接触角(前進接触角及び後退接触角の両方)、液体粘度、及び平らなプレートの傾斜角度に依存可能である。Grand−Pitieraの論文には、「第2臨界流量Qc2」が存在し、それを超えた場合に、蛇行の形状が不安定化し、且つ、従って、細流の形状が動的に変化すると記述されている。
【0055】
通路の内部を洗浄するには、蛇行細流流動が有用であると考えられる。特に、位置が時間の関数として変化する細流の蛇行が有用であると考えられる。特に、
図3aに示されているように、細流に隣接する表面が乾燥しており、これにより、運動する3相接触界面を提供することができれば、有用であると考えられる。この場合には、前進及び後退接触角が、細流が形成されるかどうかと、通路の表面上における細流の形状と、に関して明確な役割を果たす。
【0056】
前述の文献のいくつかには、この流動状況の更に別の特徴について記述されている。エネルギー又は活動レベルが既に記述されたものを超えて更に増大するのに伴って、流動が再度安定化し、且つ、再度、基本的に、真っ直ぐな経路において又は略真っ直ぐな経路において運動する形態が存在している。従って、動的に蛇行する細流を実現するのは、特定のパラメータが閾値を上回らなければならないというだけの問題ではなく、むしろ、特定のパラメータが1つの閾値を上回り、且つ、同時に、別の閾値を下回らなければならないという更に多少複雑な基準の問題なのである。
【0057】
[平らなプレート上の細流とチャネル内の細流の相違点]
参照された文献は、静止気体によって包囲された傾斜した平らなプレートを流れ下る液体の状況におけるものである。内視鏡チャネル又はその他の内腔医療装置を洗浄するための関連する状況は、この状況とは異なる。水平通路の内部を流れる細流の状況は、いくつかの点において、平らなプレートの例と異なっている。通路の内部表面上の細流が
図4に示されている。1つの相違点は、洗浄されている通路が、全体的に、実質的に水平である可能性があり、これが、洗浄の際の内視鏡の通路の一般的な向きであるという点にある(これは、洗浄における内視鏡の通路の可能な唯一の向きではなく、その他の可能な向きも、本明細書の別のところにおいて議論されている)。水平の向きの使用は、液体の前方運動のための駆動力としての平らなプレートの状況において存在していた傾斜を除去することになろう。液体の前方運動のための代わりの駆動力として、通路の長さに沿って通路内に気体流動を供給可能である。このような状況においては、気体は、通路の内部壁に付着した液状体の速度よりも大きな速度において通路を流れることが可能であり、且つ、これにより、液状体に対して牽引力を作用させ、これにより、通路に沿って流れるように液状体を押しやることができる。細流は、一般に、気体流動の方向に沿って運動可能であるが、蛇行に起因し、細流は、その全体的な位置の多少の変化をも具備可能である。例えば、細流は、気体流動の方向を横断する方向において通路の内部表面に沿ったなんらかの運動を実現するように、蛇行可能である。
【0058】
別の相違点は、通路の内部が湾曲した状態において、通路の底部における(即ち、最も低い高さにおける)細流が通路の長手方向を横断する方向に蛇行するためには、細流は、横断方向に運動するべく、高さを得なければならなくなる、即ち、重力の力に抗することによって通路の壁を登らなければならないであろう。流体が高さを得るには、力が必要である。従って、細流が湾曲断面の通路内において横断方向に運動することは、細流が、横断運動に起因した高さの取得を伴うことなしに平らなプレート上において単純に横断方向に運動することよりも、困難であろう。更に別の相違点は、通路が気体流動のための十分な断面積を提供可能であるかどうか、即ち、液状体が特定の小さな直径の通路の断面積全体を占有する傾向を有するかどうかに関係した問題が存在しうるという点にある。
【0059】
少なくとも多少水平な通路内においては、通路の底部に集中する傾向を有する細流は、通路の壁を登ることができる断片細流を生成するためのある種の液体のリザーバ又は供給源を提供するものと更に考えられる。又、細流がその他の液状体を捕捉し、これにより、その液状体が細流とマージした際には、細流は、剥離した汚染物質をその他の液状体から通路の底部に位置したメイン細流に搬送するバルク搬送を提供可能であるとも考えられる。従って、メイン細流は、剥離した汚染物質を、通路の残りの部分を通じて、且つ、通路から外部に、迅速に搬送するべく機能可能である。
【0060】
[更なる液状体及び条件]
液状体及び流動形態の様々な形態が
図5a、
図5b、及び
図5cに更に示されている。これらは、前述の細流を含んでいるが、その他の液状体も同様に含んでいる。
図5aに概略的に示されているもの以外の更にその他の液状体も可能である。
【0061】
単純な蛇行細流が、
図5aの液状体8として、且つ、
図5bの液状体Bとして、示されている。いくつかの細流は、単純な蛇行細流として留まることが可能であるが、細流は不安定性を伴うため、細流が断片化する、即ち、サブ細流に分割されるという可能性も存在する。これが、
図5aの液状体6として示されており、且つ、
図5bのイラストCにも示されている。
【0062】
細流の曲がり又は細流の更なる細流へのサブ分割も、有用な洗浄メカニズムであると考えられる。一般に、複数の細流は、単一の細流よりも大きな面積を清掃可能である。細流の蛇行を生成する不安定性も、細流のサブ細流への分割の少なくとも部分的な原因となっているのであろう。
【0063】
細流の分割は、サブ細流で終了しなければならないわけでなく、細流又はサブ細流の細流断片への分割を更に実現することも可能である。細流又はサブ細流は、隔離した細い筋又は「細流断片」に更に分割可能である。これが、
図5aの液状体4として示されており、且つ、
図5bのイラストDにおいても観察可能である。これらの細流断片は、底部のメイン細流又は蛇行セグメントと連続してはいないが、それにも拘わらず、流れる気体の牽引力下において、チューブの内部表面に沿って運動可能である。
【0064】
細流、サブ細流、又は細流断片は、一連の滴に更に分割可能であり、これらも、表面に沿って摺動を継続可能であろう。これは、線形液滴アレイと呼称可能である。これが
図5aの3つ液状体からなるグループ2として示されており、且つ、
図5bのイラストDにおいても観察可能である。このような滴は、通路の内部表面上に存在可能であり、且つ、通路の内部表面に沿って移動可能であろう。但し、一般的に細流は、隔離した液滴よりも大きな速度において運動可能であり、且つ、隔離した液滴よりも大きな速度において清掃可能であり、且つ、従って、液滴よりも高速で洗浄を実現可能であると考えられる。例えば、細流は、全体的な流動方向を横断する方向において3相界面によって表面を清掃可能であり、且つ、サブ細流又は細流断片も、長手方向の運動方向において清掃可能であろう。液滴は、流動の全般的な方向においてのみ運動可能であり、且つ、その方向において清掃可能であるが、運動及び清掃の速度は、細流と比べた場合に、恐らくは、小さいであろう。
【0065】
これらの液状体のすべてと、形成可能である任意のその他のものは、長手方向又は横断方向又はこれらの任意の組合せに沿って通路の内部表面に沿って運動を継続可能であり、且つ、そのような運動の継続に伴って、通路の内部表面を清掃可能である。
【0066】
更には、蛇行細流は、隔離した液滴又は液滴のアレイを捕捉及び飲み込み可能であり、細流断片及び分岐細流を飲み込むことができよう。この結果、これらの液状体は、更に大きな細流に統合可能である。このようなプロセスも、洗浄されている通路から外部への剥離された汚染物質のバルク搬送を提供するべく有用であろう。
【0067】
これらの液状体のすべては摺動又は運動液状体と呼称可能である。
【0068】
このプロセスは、実際には、通路の表面の洗浄の際に何回にもわたって反復可能である。蛇行細流の別の可能な利点は、表面から液体薄膜を除去し、且つ、その他の運動液状体による3相接触界面に伴う洗浄のための必要な条件を提供するというものであろう。
【0069】
この説明に限定されることを望むものではないが、細流又はその他の液状体が位置を変更し、その結果、表面の予め乾燥していた部分が、細流が到達するのに伴って湿潤状態になった際に、或いは、細流が、自身が湿潤した表面を離れた際に、表面から汚染物質を除去する力が生成されると考えられる。
【0070】
更に詳細なレベルにおいては、通路内を長手方向に流れる気体は圧縮可能であることを理解されたい。一定断面の通路及び略一定の温度の場合には、相対的に上流の場所における気体は、一般に、相対的に大きな密度及び小さな速度を具備し、且つ、相対的に下流の場所における気体は、相対的に小さな密度及び大きな速度を具備する。従って、細流の運動を(長手方向又は横断方向において)駆動すると共に一般に液状体の形成に影響をし得る条件は、通路の長さに沿ったすべての場所において同一ではない。洗浄のための最適な細流流動及び断片化を生成した流動パラメータが、例えば、洗浄されている通路の内部直径及び長さ、通路の長さに沿った位置、及び洗浄液体の界面活性剤の組成に依存していることが、本研究において判明している(
図5c)。これについては、本明細書の別のところにおいて更に記述する。
【0071】
様々な点を考慮し、本明細書の別のところには、蛇行細流、断片細流、滴、及び洗浄に好適な摺動液状体のその他の形態などの細流液滴流動の形成のために好適な条件が記述されている。装置は、例えば、通路に沿って少なくともいくつかの場所において所望の形態において動作するのに好適な液体流量及び気体流量を供給するものであってよい。
【0072】
本研究においては、30psigの気体圧力において、長さが2mで内部直径が1.8mmである通路の場合に、細流の長手方向の摺動速度は、1cm/sec〜10cm/secであってよく、平均は、恐らく、2〜3cm/secであることが(写真を通じて)実験から判明している。2.8mmの内部直径の通路の場合には、細流の長手方向の摺動速度は、5cm/sec〜20cm/secであり、平均は、恐らくは、12.5cm/secであってよい。3.8mmの内部直径の通路の場合には、細流の長手方向の摺動速度は、7cm/sec〜35cm/secであり、平均は、恐らくは、22cm/secであってよい。これらの速度は、100ミクロンのレベルの寸法を具備した液状体について計測されたものである。更に大きな液状体は、更に速い速度を具備可能であろう。
【0073】
これらに相応し、蛇行細流の場合には、横断方向の速度は、長手方向の速度の最大で25%〜50%になろう。
【0074】
蛇行細流以外の流動又は洗浄の更にその他のモードの場合には、表面流動体の更に大きな速度を実現可能である。又、プラグ流動などの流動モードの場合には、運動するメニスカス又は表面流動体の更に大きな速度も可能である。
【0075】
これらの表面流動体の摺動の全体的な効果は、複数の運動する3相接触界面及びメニスカスによるチャネル表面の清掃であろう。通路の内部表面は、いずれもチャネルの表面との接触状態にある蛇行細流、サブ細流、細流断片、線形液滴アレイ、及び様々なサイズの個別の液滴を含む様々な液体表面流動体によって清掃可能である。これらの液状体のそれぞれものは、関連する3相気体/液体/固体接触界面及びメニスカスを具備可能である。この説明に限定されるのは望ましくないが、3相境界及び空気/水界面(メニスカス)の存在は、表面から汚染物質を剥離させるべく機能可能な局所的な力を生成するものと考えられる。これは、3相境界が汚染物質との関係において運動している場合に、特に当て嵌まるであろう。この3相は、固体汚染物質と、液体の縁部と、気体と、であってよい。表面の少なくとも一部分は、洗浄プロセスにおける時間の一部分において、乾燥状態又は略乾燥状態にあってよい。チャネルの表面が少なくとも多少疎水性であれば、有用であろう。又、3相は、液体表面と、気体と、液状体によって湿潤されていない乾燥状態にあってよい固定表面と、であってもよい。
【0076】
様々な流動形態が所与の通路の様々な部分内に存在可能であり、且つ、流動は、1つの流動形態又はモードから別のものに遷移可能であろう。任意の所与の場所において、例えば、いくつかの滴といくつかの細流などの複数の流動形態が共存可能である。通路に沿った様々な場所に、様々な形態又は形態の組合せが存在可能である。
【0077】
複数相流動の特性は、その特性が複雑であると共に多少統計的であり、且つ、多少予測不能であり、且つ、更に詳しくは、チャネルの表面に付着した液状体の形状及び挙動の特性が多少統計的であり、且つ、多少予測不能であるという点にある。挙動の一部は、本質的に多少予測不能な(通路のコア内のバルク効果ではなく)通路の表面上における流体不安定性によるものであろう。複数相流動の分野においては経験的なデータが重要である。
【0078】
観察可能なものの例として、
図5bは、5つの異なるタイプの流動の写真の例と線画の両方を示している。これらは、略、湿潤性の順番になっている。
図5bのイラストAは、隔離した液滴を示しており、これらは、流れを維持するには不十分な液体を伴う多少乾燥した液体及び気体流動の場合であろう。
図5bのイラストBは、蛇行細流を示している。まばらに離隔した液滴も示されている。
図5bのイラストCは、こちらもサブ細流に断片化された蛇行細流を示している。
図5bのイラストDは、線形液滴アレイと共存する細流を示している。このイラストの場合には、細流は、多少直線化されている。
図5bのイラストEは、細流、液滴、又は任意のその他の液状体の定義に有用なように、チューブの壁がほとんど湿潤状態にあり、且つ、本質的に、乾燥した領域が存在しないほどに大量の液体を伴う流動を示している。
【0079】
相対的に大きな液体流量又は気体流量において存在するのが、図示されてはいない更に別の可能な流動形態、即ち、泡である。この状況においては、泡は、どこかに形成される場合には、通路の出口近傍に形成される傾向を有しており、且つ、入口に向かって後方に多少の距離にわたって延在可能である。泡が形成される場合には、泡が存在する通路表面は、液体薄膜によって覆われた状態になり、3相接触界面を形成する可能性がなくなろう。本研究によれば、泡は、一般に、本方法を採用する洗浄を抑圧することが判明した。これは、恐らくは、泡の存在が、その間に接触界面を具備する個別の湿潤領域及び乾燥領域の形成を阻むためである。又、泡の存在は、気体流動の全体的な流動抵抗をも増大させる可能性がある。泡の形成は、本明細書の別のところに記述されているように、使用する界面活性剤の特性の大きな影響を受けることになろう。
【0080】
図5cは、長さの順番に配列された同一のイラストを示している。通路に沿って下流に前進するのに伴って、しばしば、いくつかのこれらのものが空間的に広がった状態において観察される。流体は、まず、蛇行細流として、次いで、分割される細流として、そして、その後に、真っ直ぐな細流として、流れる。このイベントの順番は、少なくとも部分的に、通路に沿って下流に前進するのに伴って気体速度が増大するという傾向によるものであろう。下流に前進するのに伴って、最終的に、気体速度は、蛇行の上部閾値を超えて増大し、且つ、細流又は細流断片が、略真っ直ぐになる。但し、これは、代表的なものに過ぎず、且つ、イベントは、ここに記述したとおりに発生する必要はない。
【0081】
細流液滴流動(Rivulet Droplet Flow:RDF)は、細流又は液滴又はこれらの両方を任意の組合せにおいて有するのものと考えることができる。細流液滴流動は、蛇行細流、サブ細流、細流の断片、滴のアレイ、及び個別の滴の中の1つ又は複数のものを包含可能である。細流液滴流動は、本明細書の別のところに記述されているように、液体及び気体を通路に供給することによって形成可能であり、この場合に、液体及び気体は、いずれも、実質的に一定の流量において供給される。或いは、この代わりに、こちらも本明細書の別のところに記述されているように、細流液滴流動は、供給された液体及び供給された気体の少なくとも1つのものの流量が時間に伴って変化するように液体及び気体を通路に供給することにより、形成することも可能である。これは、プラグ細流液滴流動を包含可能である。
【0082】
本明細書において、表面の脱湿が望ましいと記述されている際には、その脱湿は、以下のメカニズムのいずれか又は両方を通じて実現可能である。その特性により、表面が、その上部を通過する液体との関係において十分に疎水性である場合には、表面は、液状体がその上部における通過を終了したら直ちに実質的に乾燥した状態となろう。その一方で、表面が、液体がその上部における通過を終了した後に、依然として多少湿潤状態にあるが、表面の蒸発に起因し、液状体が表面上における通過を終了した後に、時間の経過と共に実質的に乾燥した状態になるということも可能であろう。本明細書において、乾燥という用語を使用した際には、それは、これらの意味のいずれかを包含するものと解釈されたい。
【0083】
[写真及び流動マップ]
気体及び液体流動の形態については、チューブの入口からの様々な距離において、様々な液体及び気体流量下において、様々な直径の真っ直ぐで透明なテフロン(登録商標)チューブを通じたシステマチックな顕微鏡による観察を実行することにより、経験的に研究されてきた。これは、スチール写真撮影及び高速運動写真撮影、並びに、多重露光写真撮影を伴うストロボ照明を含んでいる。写真は、透明な水平に方向付けされたチューブの壁を通じて垂直方向を下向きに見下ろした状態において撮影された。光学系の焦点面を変化させることにより、チューブの上部又は底部の半円筒形表面のいずれかに沿った流動を観察可能であった。ここに提示されているすべての写真は、上部表面から撮影されたものである。時間の関数としての連続した画像を分析し、これにより、流動及び流動体を時間と共に分析すると共に、それらの運動を追跡することができよう。
【0084】
実験における観察結果が
図6a、
図6b、及び
図6cに更に示されているが、これらは、大量の写真データの小さなサブセットに過ぎない。図示の写真の場合には、気体流動は、空気であった。流動は、大気圧において通路の下流端部から排出された。気体流動は、30psigの圧力において通路の入口に供給された。これらの写真及び流動形態マップの場合には、液体及び気体は、いずれも、室温(略20℃)において通路に供給された。通路の長さは、2mであった。これらの写真は、いずれも、特定の直径の通路について撮影され、その直径は、4.5mmであった。本明細書の別のところに記述されているように、流体メカニズムは、水に添加される界面活性剤の詳細の影響を受ける可能性がある。
【0085】
図6の写真の生成においては、試験溶液は、3リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)30g/L、珪酸ナトリウム(Fisher Scientific社)1.3g/L、Air Products社によって製造されたTomah AO−455 0.24g/L、及びTomah−Air Products社によって製造されたSurfynol 485W 0.36g/Lという添加物を含有する水であった。この組成物の室温における表面張力は、約38〜44dyne/cmであった。この組成物は、良好な断片化と、それほど多くない残存サブ細流と、かなりの細流断片と、を付与するものと考えられる。
【0086】
図6は、4.5mmの内部直径を具備する通路内の流動状態の写真を示している。2mの合計流動長に沿った5つの異なる場所における状態が示されている。
【0087】
図6aは、20ミリメートル/分の液体流量の場合の水力学的状態を示しており、この流量は、小さいことから望ましいものではなく、且つ、従って、洗浄にあまり効果的ではない(トリートメント数が小さい)と考えられる。このような状況においては、細流ではなく、かなり大きな割合の隔離した液滴が存在し、且つ、隔離した液滴は、細流よりも相対的に小さな速度において表面に沿って摺動し、これにより、相対的に低速の洗浄速度を生成し、この結果、処理時間が長くなるであろう。洗浄は、これらの液状体の摺動に起因し、3相接触界面が通過する場所において発生可能であるが、存在するこれらの液状体の数があまり多くないという事実と、液状体のほとんどが、多少低速で運動する液滴であるという事実が、妥当な時間(2〜10分)内における洗浄の実現を制限することになろう。
【0088】
図6bは、45mL/分の液体流量の場合の水力学的状態を示しており、この流量は、良好な洗浄を生成すると考えられた。
【0089】
図6cは、70mL/分の液体流量の場合の水力学的状態を示しており、この流量は、大きいことから望ましいものではなく、且つ、従って、洗浄にとってあまり効果的ではないと考えられる。このような状況においては、通路の内部表面は、時間の大きな割合にわたって湿潤状態となり、この結果、運動する3相接触界面を実現するように、乾燥した又は実質的に乾燥した状態にある表面が十分頻繁に発生しないであろう。これは、表面が
図6cに示されているほどに湿潤状態にある場合には、洗浄の実現を制限するものと考えられる。但し、これらの説明に限定されることを望むものではない。
【0090】
運動する固体−液体−気体界面による洗浄を実現するのに有用な条件については、特定の入力流動及び寸法条件における流動形態を示すパラメータ図によって更に説明可能である。
図6a、
図6b、
図6cに示されているものなどの写真情報は、いずれも、特定の通路の内部直径(4.5mm)について撮影されたものであるが、これらの情報が提供するデータ点は、そのようなパラメータ図を作成するべく必要とされる多数のデータ点の中のいくつかのものに過ぎない。
【0091】
参考として、
図6aに示されている条件(20ミリミットル/分という小さな流量)は、細流ではなく隔離した(まばらな)液滴の特性を有することによって特徴付けられている。隔離した液滴は、細流よりも小さな摺動速度を具備し、且つ、存在するその数も少なく、従って、これらの理由から、運動する3相接触界面による洗浄を実現する機会が多少限られている。
図6bに示されている条件(45ミリリットル/分という中程度の流量)は、良好な洗浄を提供するいくつかの細流断片及びいくつかの滴を有する細流液滴流動であることによって特徴付けられている。細流は、望ましい速度を有する3相接触界面によってエリアを清掃し、且つ、従って、洗浄を実現する。
図6cに示されている条件(70ミリリットル/分という大きな流量)は、所与の時点において実際に乾燥状態にある通路の内部表面上の場所の数がそれほど多くなく、従って、この理由から、運動する3相接触界面による洗浄を実現する機会が多少限られてしまうような過剰に湿潤状態にある流動であることによって特徴付けられている。
【0092】
理解することができるように、このような多数の観察を使用し、
図7に付与されているものなどの流動図を構築する。このような図は、特定の通路の内部直径又は内部直径の範囲にとって固有のものであってよい。5つの異なる通路の内部直径の流動形態マップが、
図7a〜
図7eに付与されている。
【0093】
前述のように、これらの写真は、30psiの入口空気圧力において撮影され、この空気圧力は、多数の内視鏡の多数のチャネルにおける、略、最大許容可能入力圧力である。流動を洗浄に有用なものにするべく、通路の大部分において、細流及び細流断片を、そして、細流流動が実現されない場所においては、液滴を提供する条件を選択することが目標とされよう。これを細流液滴流動と呼称可能である。マップから観察することができるように、特定の液体流量の選択は、同一の流動形態が通路の開始点(入口)から端部(出口)までのすべてに存在することを保証するものではない。又、5つのマップは、5つの異なる通路の内部直径について提示されており、且つ、これらのマップは、通路の内部直径の関数として、定性的にも、定量的にも、相互に相違していることを観察可能である。
【0094】
図7a〜
図7eに提示されている情報の要約及び取り纏めを支援するべく、
図7a〜
図7eから液体流量のいくつかの代表的な有用範囲を選択し、且つ、
図8にプロットした。これらは、特定の通路長の大きな部分にわたって細流液滴流動を提供する流量であるが、この大きな部分とは、必ずしも通路の長さ全体ではない。これらの流量は、個別の通路の内部直径において細流液滴流動を実現するべく、それなりに最適なものではあるが、これは、これらが洗浄にとって有用な唯一の液滴流量であることを意味するものではない。又、これらのデータは、限定を伴うことなしに、界面活性剤の組成、流路の長さ、入口における気体圧力、及びその他のパラメータを含む更にその他の動作パラメータにとって多少固有のものであってよいという点にも留意されたい。
【0095】
図8は、通路の内部直径の特定の数値と関連した液体流量の特定の数値を提示しているが、「容積液体流量/通路の周囲長の単位」の観点において望ましい液体流量を規定することも可能である。これは、液体流動は、主に通路の周囲に付着するという事実の認識によるものである。
【0096】
例えば、6mmの内部直径を有する相対的に大きな通路の場合には、液体流量の代表的な有用範囲は、30〜65mL/分である。このような通路の場合には、内部周囲長は、18.84mmである。対応する液体流量/内部周囲長の単位は、30/18084又は1.59〜65/18.84又は3.45mL/分/周囲長のmmである。
【0097】
図6に示されているように、内部直径が4.5mmの通路の場合には、液体流量の代表的な有用範囲は、15〜40mL/分である。このような通路の場合には、内部周囲長は14.13mmである。対応する液体流量/内部周囲長の単位は、15/14.13又は1.06〜40/14.13又は2.83mL/分/周囲長のmmである。
【0098】
同様に、2.8mmの内部直径の通路の場合には、液体流量の代表的な有用範囲は、15〜25mL/分である。この通路は、8.79mmの内部周囲長を具備する。液体流量/内部周囲長の単位は、15/8.79又は1.71〜25/8.79又は2.84mL/分/周囲長のmmである。
【0099】
同様に、1.8mmの内部直径の通路の場合には、液体流量の代表的な有用範囲は、6〜10mL/分である。この通路は、5.65mmの内部周囲長を具備する。液体流量/内部周囲長の単位は、6/5.65又は1.06〜10/5.65又は1.77mL/分/周囲長のmmである。
【0100】
同様に、0.6mmの内部直径の通路の場合には、液体流量の代表的な有用範囲は、5〜10mL/分である。この通路は、1.88mmの内部周囲長を具備する。液体流量/内部周囲長の単位は、5/1.88又は2.66〜10/1.88又は5.32mL/分/周囲長のmmである。
【0101】
これらの観察を組み合わせることにより、この周囲長によって正規化された液体流量は、約1.5〜4ミリメートル/分/周囲長のmmの範囲内に群集しており、或いは、約1〜約5ミリメートル/分/周囲長のmmの範囲内において、わずかに更に広く定義されることがわかる。
【0102】
又、蛇行細流を実現するには、望ましい気体速度は、通路の長さに沿った少なくともどこかにおいて、約5m/s〜約15m/sの範囲であってよいことにも留意されたい。蛇行細流は、有用であるが、妥当な時間内において良好な洗浄を実現するべく絶対的に必要なものではない。洗浄に有用な別の気体速度の範囲は、通路の直径に応じて、約2m/s〜80m/sという通路の壁上における断片化及び摺動液状体又は表面流動体を実現するのに好適な更に広い範囲である。
【0103】
流動形態は、少なくとも、液体流量、気体流量、通路の長さに沿った位置、及び通路の内部直径に依存可能であることに留意されたい。少なくとも、全体長は、気体の一般的な最大供給圧力が付与された際に気体流量に対して影響を付与可能であるため、流動形態は、通路の全体長に依存可能である。界面活性剤の組成及び濃度も、流動形態に対して影響を付与可能である。
図6、
図7、及び
図8に提示されているデータは、いずれも時間との関係において安定した入力液体流動及び気体流動において得られたものである。
【0104】
流動形態に関する更なるデータが
図9に提示されている。
図6、
図7、及び
図8は、いずれも、30psigの入口空気圧力において採取されたデータに関するものであることを思い出して頂きたい。これは、一般的な内視鏡の一般的なチャネルにおける最大許容可能空気圧力であった。但し、最大許容可能圧力未満の入口空気供給圧力において動作することも可能である。これは、蛇行は、その上方において蛇行が常に発生する単純な閾値が存在するのではなく、特定の動作範囲内において発生可能であるという文献からの示唆に鑑み、考えることできよう。これについては、本明細書の別のところに記述されている。
図9に提示されているデータの場合には、入口空気圧力及び液体流量の両方を変化させた。この場合にも、図示されているように、いくつかの異なる通路の直径を使用した。通路長は、2メートルであった。液体の組成は、
図6、
図7、及び
図8の場合に使用されたものと同一であった。
【0105】
特に、単一の液体流量により、通路の長さに沿ったすべての場所において蛇行細流流動を実現することは不可能であることを
図9a及び
図9bから理解することができる。又、蛇行は、中間程度の圧力などのいくつかの気体供給圧力の場合に発生するが、更に極端に高い又は低い気体供給圧力などのその他の圧力においては、発生しない。蛇行細流流動は、洗浄に有用であるが、唯一の有用な流動形態ではない。細流液滴流動も有用である。真っ直ぐな細流流動は、それほど多くの清掃が発生せず、且つ、細流の断片化も発生しないため、それほど洗浄に有用ではないと考えられる。泡/薄膜も、基本的に流動を妨げ、且つ、恐らくは、表面を湿潤状態に維持するため、洗浄にとって有用であるとは考えられない。但し、この説明に限定されることを望むものではない。
図9においては、以下の表記が使用されている。Yは、洗浄に好適な蛇行細流の実現を意味している。Rは、洗浄に有用であると考えられるRDF(細流液滴流動)を意味しており、Sは、蛇行を伴わない真っ直ぐな細流を意味し、これは、それほど洗浄に有用ではないと考えられ、Fは、薄膜/泡を意味し、これは、それほど洗浄に有用ではないと考えられる。
【0106】
図9a及び
図9bは、静止気体中における傾斜した平らなプレートにおける流体メカニズムの文献の観察結果と合致する観察結果を示していることを理解されたい。蛇行細流を実現することは、単に、不安定性の領域に進入するように特定の下部閾値を上回って動作するというような問題ではない。蛇行細流を得るには、下部閾値の存在に加えて、上部閾値未満に留まることも必要とされるように、上部閾値も存在可能である。
【0107】
上部閾値が属する可能性を有する1つのパラメータは、気体速度である。圧縮可能な気体が長い通路に沿って流れるのに伴って気体速度が増大するということを本明細書の別のところに記述した。従って、蛇行細流が通路の長さに沿った中間部分に存在している場合にも、長い通路の出口に接近するのに伴って、細流を再度安定化するほどに気体速度が大きくなる可能性があろう。更には、蛇行細流が通路の長さに沿った中間部分に存在している場合にも、入口直近の気体速度が蛇行細流を生成するには小さ過ぎるという可能性もあろう。これは、
図9a及び
図9bにおける通路の長さに沿ったいくつかの領域内において、通路に沿った特定の場所にのみ蛇行細流流動が存在している理由を説明するのに有用である。
【0108】
気体速度は、供給された入口気体圧力と多少関係している。従って、供給された入口気体圧力が、通路内のあらゆる場所において蛇行細流を生成するのに小さ過ぎる場合もあり、或いは、通路内のあらゆる場所において蛇行細流を生成するのに大き過ぎる場合もあろう。同様に、供給された液体流量が、通路内のあらゆる場所において蛇行細流を生成するのに小さ過ぎる場合もあり、或いは、通路内のあらゆる場所において蛇行細流を生成するのに大き過ぎる場合もあろう。これらの条件も、少なくとも洗浄されている通路の内部直径の関数である。又、これらの基準は、使用される洗浄液体の界面活性剤及び組成の関数でもある。
【0109】
一般的な動作条件においては、蛇行細流に有用な気体速度の範囲は、約5m/sec〜約15m/sである。本発明の一実施例においては、動作条件は、通路の長さの少なくとも一部において、この範囲内で動作するようなものであってよい。
【0110】
又、液体流量の最適値が存在することを
図9から観察することも可能である。液体流量が小さ過ぎるか又は大き過ぎる場合には、蛇行細流は、実現不能であるか、或いは、通路の長さの限られた部分についてのみ、実現可能である。
【0111】
この観察結果に限定されることを望むものではないが、対象である範囲内の相対的に大きな内部直径の場合には、洗浄を実現するべく受け入れ可能な液体流量の範囲は、相対的に広く、且つ、対象である範囲内の相対的に小さな内部直径の場合には、洗浄を実現するべく受け入れ可能な液体流量の範囲は、相対的に狭いものと考えられる。
【0112】
図6、
図7、
図8、及び
図9に提示されているものなどの観察結果に鑑み、本発明の実施例においては、装置は、液体及び気体の望ましい細流−液滴流動形態を提供するように、互いの間に適切な関係を有する気体流量と液体流量を提供するべく構成可能である。
図9に提示されているものなどの観察結果に鑑み、本発明の実施例においては、装置は、通路の長さの少なくともいくつかの部分において、液体及び気体の蛇行細流流動の形態を提供するために、互いの間に適切な関係を有する気体流量と液体流量を提供するべく構成可能である。但し、蛇行は、良好な洗浄を実現するのに不可欠なものではない。
【0113】
流動形態は、洗浄されている通路の内部表面に沿って、又は少なくとも洗浄されている通路の内部表面の一部分上に、摺動する細流を提供するようなものであってよい。更には、細流は、サブ細流にサブ分割可能であろう。このようなサブ細流への分割は、細流の曲がり又は湾曲の地点において発生可能である。サブ細流は、サブ細流よりも更に小さな細流断片に更に分割可能であろう。そして、細流断片は、滴のアレイに分割可能であろう。これらの液状体は、いずれも、洗浄されている通路の内部表面に沿って運動可能であってよい。流動形態は、洗浄されている通路の内部表面上に、又は少なくとも洗浄されている通路の内部表面の一部分上に、時間に伴って不安定な蛇行細流を提供するようなものであってよいが、蛇行は、不可欠ではない。
【0114】
適切な流動形態を実現するための更なるガイダンスとして、通路内に進入する前の気体中に液滴として浮遊する液体洗浄媒体の流動は、液体洗浄媒体の流動全体の10%未満であってよく、且つ、液体洗浄媒体の流動の1%未満であってよいであろう。換言すれば、内部チャネルを通じて流れる液体の容積は、主には、細流と、それらの細流から断片化された表面流動体と、の形態であってよい。
【0115】
通路の出口においては、気体中に液滴として浮遊した液体洗浄媒体の流動は、液体洗浄媒体の流動全体の50%未満、又は液体洗浄媒体の流動の10%未満、又は5%未満、又は1%未満であってよいであろう。
【0116】
通路の出口においては、泡の形態を有する液体の量は、液体の流動全体の10%未満、又は液体の流動全体の1%未満であってよいであろう。
【0117】
[多段洗浄]
前述のように、目標とするところは、本質的に、通路の長さに沿ったすべての場所において、3相接触界面を有する細流及び運動液体流動などの望ましい流動形態を実現するということになろう。望ましい流動形態が通路の長さの一部分のみにおいて実現された場合には、それは、依然として有用ではあろうが、通路の長さに沿ってすべての場所において望ましい流動形態を実現するほうが、より便利であろう。これは、例えば、液体流量を調節することによって調節可能である。
【0118】
但し、動作条件の単一の組を使用して通路の長さ全体にわたって望ましい洗浄条件を提供することは不可能であろう。この場合には、別の可能な方式は、通路の長さの第1の部分を洗浄するのに適したパラメータの第1の組を使用して通路の長さの第1の部分の洗浄を実行し、続いて、同一の通路の第2の長さを洗浄するのに適切なパラメータの第2の組を使用して通路の長さの第2の部分の洗浄を実行するというものであろう。異なる通路用の洗浄条件は、入口空気圧力、又は液体流量、又はこれらの両方、或いは、その他のパラメータにおいて異なることになろう。
【0119】
このような多段洗浄プロセスを使用する場合には、最初に洗浄される通路の部分は、後から洗浄される通路の部分の上流であってよいであろう。このようにすることにより、通路の後から洗浄される部分から除去される汚染物質及び破片が、先に洗浄された通路の部分を汚染するという可能性を伴うことなしに、通路の下流を洗って排出されると予測されることになる。
【0120】
図6、
図7、
図8、及び
図9に提示されているすべてのデータは、一定の動作条件、即ち、液体の一定の入力流量及び気体の一定の入力流量におけるものであることを理解されたい。
【0121】
[内部表面の特定の部分のための更なる方式と不安定な流動入力]
水平に方向付けされた通路の場合には(これは、洗浄されている内視鏡のチャネルの可能な向きである)、細流が、実質的に水平な通路の高さの低い部分に到達するよりも、上部表面(天井)に到達するのが困難であろうことを以上の説明から理解することができよう。これは、特に、相対的に大きな直径の通路に当て嵌まることであろう。従って、不都合なことに、天井が乾燥した状態になる可能性がある。更には、通路の高さの低い部分(床)が、洗浄プロセスにおける時間の不都合にも大きな割合にわたって湿潤状態になる可能性が高く、且つ、従って、床は、湿潤と乾燥の交互の変化を伴う3相接触界面による清掃を受ける可能性が低下するという別の基本的な可能な問題も存在している。
【0122】
床と天井の間の比較以外の異なる更に別の考慮事項は、少なくとも特定の動作条件において、望ましい流動形態を通路の入口に即時に確立することができない入口又は助走区間流領域を通路が経験する可能性があるという点にある。この現象は、
図9a及び
図9bに示されており、且つ、流動形態が通路の長さに沿った位置の関数として変化可能であることを
図6において多少観察可能である。
【0123】
従って、別の基本的方式は、装置が、時変入力流動条件を提供することにより、通路の内部表面の特定の部分について時変湿潤及び乾燥条件を提供するようなものであってよいというものである。一般に、装置は、妥当な洗浄時間内において、ある時点又は別の時点において少なくとも一回だけ通路の内部表面全体を清掃する3相接触界面を具備した液状体を提供することが望ましい。又、内部表面が処置の際に複数回にわたって清掃されるように設計することも可能である。このような操作を伴うことなしには、通路のいくつかのセクションは、その他のもののような十分なトリートメント数を享受することができない。
【0124】
図10aは、
図7の流動マップの中の1つのものとの関係において、望ましい細流液滴流動を、通路の長さの相対的に下流の領域については実現可能であるが、通路の長さの相対的に上流の領域のいくつかについては実現不能であることを示している。これは、液体流動又は気体流動又はこれらの両方の非安定状態入力を伴う洗浄メカニズムを使用するための理由を提供可能である。
【0125】
表面張力に関係するいくつかの流体力学的な考慮事項が、
図10b、
図10c、
図10d、
図10eに示されている。
図10b、
図10c、
図10d、
図10eに示されている通路は、実質的に水平であるが、同一の議論をその他の向きの通路にも少なくともそれなりに適用可能である。
【0126】
静止条件において液体及び気体の両方を収容する小さな内部直径の通路の場合には、可能な状況は、メニスカスが通路の断面全体にわたって存在するという状況である。これが、
図10bに示されている。
図10bは、液体が図示の方向において運動している動的な状況を示しており、前進及び後退接触角が示されている(状況が静的である場合には、それぞれの側部におけるメニスカスは、本質的に互いに対称的なものとなろう)。
【0127】
図10bに示されているタイプのメニスカスを支持しない通路の内部寸法の更に大きな範囲も存在している。静的な条件下において液体及び気体の両方を収容するそのような相対的に大きな通路の場合には、通路は、通路全体にわたってメニスカスを支持不可能であり、当然のことながら、液体は、通路の底部に集まり、且つ、通路断面の残りの部分が実質的に気体によって占有されるという構成が存在することになる。これが
図10cに示されている。
図10bの状況と
図10cの状況の間の区別は、臨界内部直径を参照して理解することが可能であり、臨海内部直径は、2つの状況の間のボーダーラインである。臨界内部直径は、液体の表面張力及びその他の特性の関数である。純粋な水の場合には、臨界内部直径は、約1.8mmである。
【0128】
この臨界内部直径を上回る内部直径を具備する通路の場合には、液体流動の少なくとも一部分にわたって通路の断面を実質的に完全に充填する液体が存在するように、液体をある期間にわたって流すことにより、動的状況において、液体によって完全に又はほとんど充填された断面を実現することが依然として可能であろう。これにより、そのメニスカスが通路の内部表面を清掃する運動液体プラグを、本質的に生成することが可能である。液体流動の期間は、液状体を相互に効果的に分離するべく、且つ、恐らくは、連続した液体プラグの通過の間に通路の内部表面のドライアウトを生成するべく、十分に長い持続時間を有する気体流動の期間によって分離可能である。これが
図10dに示されている。このパターンは、必要な回数だけ反復可能である。この流体流動形態は、不連続プラグ流動(Discontinuous Plug Flow:DPF)と呼称される。この場合における運動するメニスカスの速度は、例えば、気体圧力、チューブの直径、及び液体プラグの長さに応じて、数メートル/秒であってよい。この場合に生成される大きな摺動速度は、本明細書に記述されているメカニズムに従って通路の効果的な洗浄を生成することが判明した。
【0129】
次に、
図10eを参照すれば、プラグが、
図10dに示されているように、相当に規則的に成形された状態において始まった場合にも、プラグが通路の更に下流の部分に前進するのに伴って、プラグのリーディング面が不規則になる可能性があることが示されている。このプラグのリーディング面の不規則性の増大は、重力やRayleigh不安定性などに起因する表面不安定性に起因したものであろう。
図10eには、プラグが、重力に起因し、通路の底部に向かって優先的に広がる可能性があることも示されている。プラグのリーディングエッジにおける不規則性は、通路の内部表面を洗浄するのに有用な液状体を生成するのに有用でありうるものと考えられる。プラグの少なくとも一部が更に小さな液状体に分割された場合には、それも、通路の内部表面を洗浄するのに有用であると考えられる。この形態は、不連続プラグ液滴流動(Discontinuous Plug Droplet Flow:DPDF)と呼称可能である。
【0130】
更には、本明細書の別のところに記述されているように、液体及び気体の液体流動及び気体流動の交互に変化する期間又はその他の流動の変形を使用して、運動する3相界面を実現する更にその他の流動形態を使用することも可能であろう。更には、任意の望ましい順序又は組合せにおいて、恐らくは、細流液滴流動の期間又は順序をも伴うこれらの前述の流体流動形態の組合せ又はシーケンスを使用することも可能であろう。
【0131】
時変入力流動特性が
図11に示されている。
【0132】
まず、
図11には、参考として、
図6〜
図9を生成するべく使用されたものなどの安定状態流動入力が示されている。
【0133】
そして、安定状態又は準安定状態条件以外の条件下において細流液滴流動の有用な形態を生成可能な液体又は気体又はこれらの両方の非安定状態供給の様々な形態が示されている。
【0134】
図11のスケジュール中の1つのものは、気体流動と液体流動の交互に変化するスイッチングオン及びオフを示している。例えば、約1秒〜3秒の持続時間を具備する液体パルスを提供可能である。液体パルスに続いて、液体に対する再露出の前に通路の内部表面のドライアウトを実現するべく、通路の内部表面のドライアウト又は除湿を実現するのに適切な約5秒〜15秒の持続時間を具備した乾燥した又は温かい又は脱湿された空気を供給可能である。このスケジュールにおいては、任意の所与の例において、液体が供給されるか、又は気体が供給されるが、両方が供給されることは絶対にない。これは、プラグ流動又はプラグ細流液滴流動と表現可能である。
【0135】
供給源のいずれか1つのものがオン状態に留まる間に、もう1つの供給源を脈動させることが可能であることも示されている。例えば、液体供給は、気体がオン状態に留まっている間に脈動させることが可能であり、或いは、液体がオン状態に留まっている間に、気体を脈動させることも可能であろう。
【0136】
脈動する液体流動と、これに続く連続液体流動の実行、或いは、一般的には、任意の順序における不安定な液体流動と安定した液体の任意のシーケンスの実行が可能である。
【0137】
当然のことながら、これらの図は、特定の期間においてゼロに正確に移行する1つの流量を示しているが、ドライアウトを伴わない現象の場合には、変形は、更に一般化させることも可能であり、従って、正確にゼロに低減することを伴うことも必須ではない。
【0138】
更に別の可能性として、液状体の形成を促進するべくある時間において第1気体供給圧力を使用し、且つ、次いで、ある期間にわたって別の気体供給圧力に変更することにより、通路に沿ったこれらの液状体の運動を生成することも可能である。第2の圧力は、第1のものよりも小さいものであってもよいが、逆も又可能である。更には、ある時間において相対的に小さな気体供給圧力が1つのチャネルの洗浄に使用されている間に別のチャネルにおいて相対的に大きな気体供給圧力を必要とする流動を実行することも可能であろう。これは、再生サイクルの全体における任意の瞬間における気体に対する合計需要が、気体流動に対するピーク需要が互いに同時に発生した場合のものを下回るように、実行可能であろう。
【0139】
次の表1Aにも、様々な可能な順序が記述されている。
【0141】
反復される液体流量の波形又はシーケンスは、流量の実質的に一定の「オン」値及びこれに続く「オフ」状況におけるゼロ流量と同様に単純である必要はない。更に一般的には、液体流量の波形は、三角形波形、台形波形、正弦波波形、又はその他の波形であってよいであろう。液体流動を表す波形は、単調に増大する部分と、任意選択によってこれに後続する一定の部分と、これに後続する単調に減少する部分と、を具備可能であろう。液体流動の波形の間に、乾燥状態のインターバルが存在可能であるが、更に一般的には、そのような乾燥状態のインターバルの存在は、必須ではない。液体流量の波形は、同一の方式によって反復することも可能であり、或いは、この代わりに、それらは、同一である必要はない。気体流量は、安定状態(一定の流量)にあるものとして示されているが、これは必須ではない。この図においては、洗浄されている通路の長さの少なくとも一部分において蛇行細流流動を実現するべく、「オン」液体流量が適切であると考えられる。通路内への気体及び液体の受け入れにおけるこれらの交互の変化は、洗浄又はすすぎサイクルにおいて、相対的に大きな蛇行と相対的に大きな断片化を許容するものと考えられよう。
【0142】
内視鏡は、内視鏡又は少なくとも内視鏡の大きな部分が水平な向きに配置された状態において、頻繁に洗浄される。任意の通路において、特に、水平の通路においては、このような蛇行細流のランダムな配置は、通路の内部表面全体の洗浄を実現するべく有利であろう。但し、特に、相対的に大きな直径の通路のいくつかの通路の場合には、重力に起因し、細流が、通路の断面の底部において又はその近傍において、平均よりも多くの時間を消費する傾向を有する可能性もあろう。細流が十分頻繁に上方に配置された表面に到達することができず、従って、それらの表面が、時間の大きな割合にわたって乾燥状態となることから十分頻繁に湿潤及び乾燥の交互の変化を経験することができないため、この結果、上方に配置された表面から洗浄の機会が奪われる可能性がある。更には、底部に配置された表面は、時間のかなり大きな部分にわたって湿潤状態になる可能性があり、且つ、これらの表面は、時間の大きな割合にわたって湿潤状態にあることから十分頻繁に湿潤と乾燥の交互の変化を経験することができないため、底部細流の存在は、底部に配置された表面から洗浄の機会を奪う可能性がある。
【0143】
従って、通路を通じて液体流動と気体流動の交互に変化する期間を実現することにより、運動する3相接触ライン条件への露出の交互の変化を通路の内部表面が経験するように、内視鏡再生装置を動作させることが可能である。気体流動の期間は十分に長くてよく、且つ、導入される気体は、チャネルの内部表面が液体の次の導入の前に実質的にドライアウト状態になるように(残っている液体薄膜の厚さが汚染物質粒子の寸法をそれなりに下回るように)、十分に乾燥した状態にあってよい。
【0144】
この前述の方式における流体流動の期間は、既に剥離されているが通路の出口にまだ移動していない破片を洗い流すのにも有用であろう。
【0145】
更なる可能性は、特定の期間にわたって、実質的に安定状態の流量の液体及び気体の供給を使用して細流液滴流動が存在し、且つ、別の期間にわたっては、(気体又は液体の)脈動型の流体供給などの非安定状態の流体供給を伴う前述の形態の中のいずれかのものを含む流動形態が存在するというものである。これらの期間は、任意の順序又は組合せにおいて組み合わせることができよう。
【0146】
[DPFモードにおける液体プラグ長の低減による水力学的剥離の改善]
液体プラグが通路長よりも短い際には、液体プラグは、液体ポンプから分離された後に、空気圧力P
αによって駆動される。流動に対する抵抗は、i)液体プラグに沿った抵抗と、ii)通路内の空気部分に沿った抵抗と、という2つの項から構成されることになる。空気の粘度及び密度は、液体のものよりも格段に小さいため、チューブの空気部分に沿った小さな圧力降下は、無視することが可能であろう。この単純化は、水プラグの長さL
plが極端に通路の長さと比べて小さい際には、不適切なものとなる。この単純化は、チューブの出口における圧力がゼロである際には、プラグの前面における圧力P
f、プラグの後部における圧力P
re、及び通路の入口における圧力P
αという表記の導入によって表現可能である。この結果は、次式のとおりである。
P
α=P
f+(P
re−P
f)+P
α−P
re (16)
P
f−0とP
α−P
reは、空気中における圧力降下であり、且つ、これらは、小さな空気の粘度(又は、慣性)に比例することから、無視可能である。従って、右辺において、P
re−P
f、即ち、プラグにおける圧力降下が得られる。
P
f−0<<P
α、P
α−P
re<<P
α (17)
従って、次式のとおりである。
P
re−P
f=P
α (18)
液体プラグに印加される圧力と、プラグと隣接するチャネル壁の間のせん断応力τと、の間のバランスが存在し、面積は2πR
tL
plであって、ここで、L
plは、プラグの長さである。プラグに印加される合計せん断応力は、2πR
tL
plτ
plであり、これは、印加された圧力P
re−P
fr=P
αに起因して克服され、即ち、次式のとおりである。
2πR
tL
plτ
pl=P
α(πR
t2) (19a)
又は、
τ
pl=P
α(R
t/2)(1/L
pl) (19b)
この式は、特に、プラグがチューブの全体を充填する際、即ち、L
pl=L
tである際に、有効である。
τ
t=P
α(R
t/2)(1/L
t) (20a)
しかしながら、この初期の時点においては、プラグは、まだ、液体ポンプから切断されておらず、即ち、この瞬間においては、プラグは、ポンプ圧力P
puによって駆動されている。
τ
t=P
pu(R
t/2)(1/L
t) (20b)
簡単にするべく、次のように仮定する。
P
α=P
pu (21)
この結果、2つの式(19a)及び式(19b)が1つになる。式(18)及び式(19a)を同時に検討すれば、これらは、大括弧内に同一の乗数を具備している。これらの式の左辺の比率は、右辺の比率に等しく、前述の乗数は取り消される。
τ
pl/τ
t=L
t/L
pl (22a)
又は
τ
pl=τ
t(L
t/L
pt) (22b)
洗浄は、せん断応力によって生成されるため、層流又は乱流の形態における項目τは、過剰である。式(22b)は、両方の形態において、並びに、層流−乱流遷移モードにおいて有効である。この式は、プラグ長が約50分の1に減少するのに伴って、τ
plが、50倍に増大することを示している。式(17)によって表現された要件が満足されないため、更なる減少L
plは、τ
plの更に低速の増大に結び付くことになる。しかしながら、この要件は、省略可能であり、且つ、更に一般的な式を導出可能である。式(22b)中のτ
plは、プラグ流動の状態における液体流動のせん断応力であることに留意されたい。
【0147】
30psiにおいては、Reynolds数Reは、連続した液体流動の場合にも、かなり大きいため、3相接触ライン近傍の水力学的剥離による洗浄に対するプラグ長の影響の効果を明らかにするべく、乱流及び遷移流動における、特に、吸引チャネルの場合におけるプラグ長に対する前面メニスカスの速度の依存性を検討する必要がある。Pentax内視鏡FG−36UX型吸引チャネルの場合には、液体速度U
o=146cm/secを使用することにより、35psiにおいて、Re
o=(0.38×146)/0.01=5548が得られる。水チャネルの場合には、Re
o=(0.18×108)/0.01=1950である。プラグ長の減少に伴って、その速度は、増大し、この結果、水チャネルの場合にも、Reの増大と乱流流動への遷移が発生する。従って、チューブ内の乱流流動用の主要な式、即ち、チューブの場合の抵抗係数の式を適用する必要がある(L.D.Landau、E.M.Lifshitsによる「Mechanics of Continuous Media−Hydrodynamics」、Adison− Wesley Publishing Company、1958年)。
λ=P
α(2R
t/L
pl)/(1/2)ρU
pl2 (23)
ここで、pは、液体の密度である。圧力、速度、及び長さは、短いプラグの場合について規定される。λは、Reの高度な関数である。その長さに対するプラグ速度の依存性に興味があることから、式(23)は、次のように書き換えられる。
U
pl=(4P
αR
t/ρλ
pl)
0.5(1/L
pl)
0.5 (24)
この式は、プラグ長がチューブ長に等しいという極端な場合に有効である。
U
o=(4P
αR
t/ρλ
t)
0.51/(1/L
t)
0.5 (25)
右辺の比率は、左辺の比率に等しく、この結果、次式が得られる。
U
pl/U
o=(L
t/L
pl)
0.5(λ
t/λ
pl)
0.5〜(L
t/L
pl)
0.5 (26a)
(1. L.D.Landau、E.M.Lifshitsによる「Mechanics of Continuous Media− Hydrodynamics」、Adison− Wesley Publishing Company、1958年)の式22は、5000〜30000というReynoldsの範囲において、摩擦係数λ(Re)は、2倍未満に減少することを示している。式(11b)は、プラグの速度が、その長さが減少するのに伴って増大することを示している。
U
pl=U
o(L
t/L
pl)
0.5 (26b)
【0148】
表1Bは、一般的な内視鏡の吸引チューブ内の液体プラグ長と、12及び25psigという2つの空気圧力におけるDPFモードにおいて実現可能なプラグ摺動速度と、の間の関係を示している。この分析の結果は、本発明による不連続モードを使用して洗浄を改善することの固有の利点を支持している。これは、例19に関する結果によっても、更に支持されている。
【0150】
[ドライアウト及び脱湿の実現]
本節においては、細流又は液状体に隣接する表面が実質的に乾燥した状態にあることが有用であり、且つ、液体及び気体の交互に変化する流動を使用する場合には、液体流動が再度導入される前に、内部表面が実質的にドライアウト状態になるように、気体流動が十分に長い持続時間を有することが有用であることについて説明する。乾燥又は脱湿は、2つのメカニズムのいずれか又は両方によって実現可能である。1つのメカニズムは、通路の内部表面が十分に疎水性である場合には、細流又は液状体が表面の特定の部分から離れるように運動した際に、当然の結果として、表面が細流又は液状体の不存在に起因して脱湿されるというものである。別のメカニズムは、表面のいずれかの部分が湿潤状態に又は液体の薄膜によって覆われた状態に留まる場合に、液体が蒸発するというものである。このためには、除湿された又は室温よりも温かい又はこれらの両方の状態の空気を通路に供給することが有用であろう。そのような状況においては、凡その気体流動の期間の持続時間は、以下に挙げるとおりである。これらは、約2mの長さの通路の場合であり、空気は、約40℃の温度において約28psigの入口圧力において供給される。約2.8mm〜4mmの内部直径を具備する通路の場合に、5秒〜7秒の期間で十分であろう。1mm〜1.8mmの内部直径を具備する通路の場合には、約15秒の期間で十分であろう。表面が絶対的な乾燥状態にあることを必要としない場合には、或いは、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)などのように表面が極端な疎水性を有する場合には、更に短い期間が可能である。細流又は液状体を補充することなしに、流れる気体によって細流又は液状体を通路の下流端部に単純に押し出すことにより、脱湿を支援することも可能であろう。脱湿及び乾燥の目的は、本発明に記述されているメカニズムによって最適な剥離力を実現することができるように表面を準備するということにある。3相接触ラインの通過の後に残る残留液体薄膜の厚さを汚染物質粒子の寸法未満にすることができるものと考えられる。ドライアウト及び脱湿は、統計的な分布によって表現可能であり、且つ、3相接触ラインの通過の後に毎回実現することは不可能であろう。但し、これは、本発明による高度な洗浄を実現するべく必要である。
【0151】
更には、内視鏡が水平以外の位置にある際に内視鏡を洗浄することも可能であろう。例えば、位置は、下向きの方向における流動を伴う垂直など、垂直であってもよいであろう。更にその他の向きも可能である。
【0152】
[界面活性剤を含む洗浄液体の組成]
これまで、本発明者らは、本洗浄方法の性能に影響を及ぼす物理的なパラメータ(気体及び液体流量、気体圧力、チャネル表面の疎水性など)と、これらのものを任意のチャンセル幅及び長さについて最適化する方法について説明した。しかしながら、液体洗浄媒体の実際の組成も、本洗浄プロセスの有効性に関して重要な役割を具備している。
【0153】
[界面活性剤]
1つ又は複数の界面活性剤を洗浄媒体中に含むことが望ましいであろう。界面活性剤の混合物が特に有用であることが判明した。但し、有用であるのは、界面活性剤の限られた種類のみである。
図7a〜
図7eにおけるように流動マッピングによって内視鏡チャネル内において試験した際に、多数の実験に基づいて、界面活性剤を3つの種類に分割することができた。
【0154】
種類Iの界面活性剤は、重量において0.05%の界面活性剤濃度においてさえも、細流液滴流動(RDF)、不連続なプラグ流動(DPF)、又は不連続なプラグ液滴流動(DPDF)という流動形態が十分に生成されることを妨げる湿潤液体薄膜を発泡を伴わないで生成することが観察された。これらの界面活性剤は、一般に、低HLB(親水性−親油性バランス)を具備すると共に、水に対して不溶性である。アルキル基が線形又は分岐型のいくつかの非イオン系アルキルエトキシレートであるPLURONIC(登録商標)、REVERSE PLURONIC(登録商標)、TETRONIC(登録商標)、及びREVERSE TETRONIC(登録商標)シリーズの中のいくつかのものが、この種類に属している。但し、驚いたことに、製造者のみが主張しているHLBは、例えば、テフロン(登録商標)などの疎水性チャネル上における湿潤薄膜の形成を予測するのに十分なものではなかった。但し、水に対する溶解性も非常に低い際には、通常、湿潤薄膜が生成された。HLBと水に対する溶解性の両方が、2相流動において湿潤薄膜を形成する界面活性剤の潜在性を決定するものと思われる。9.2未満のHLBと水に対する不溶性は、通常、30psiの空気圧力及び小さな液体流量において、液体組成の重量で約0.05%を上回る界面活性剤の濃度において、内視鏡の疎水性チャネルの表面全体を覆う湿潤薄膜の形成に結び付く。これらの界面活性剤は、流動の際にチャネルの壁上において3相接触ラインを具備する表面流動体を生成しないため、それ自体、本発明による洗浄に望ましいものではない。
【0155】
種類IIの界面活性剤は、重量で0.05%の低界面活性剤濃度においてさえも、RDF(及びDPDF)を妨げるチャネルの全体を通じた泡を形成する。これらの界面活性剤は、0.1%の濃度において、50mmを上回る初期Ross−Miles泡高さが計測される発泡潜在性を具備しており、且つ、チューブ全体(断面及び長さ)を充填する泡を生成することが判明した。Ross Miles泡試験は、界面活性剤の発泡潜在性に関する周知の尺度であり、且つ、J.Ross及びG.D.Milesによる「Am Soc for Testing Materials,Method」(D1173−53、Philadelphia PA、1953年)に記述されている。通常、発泡しないが、50〜55dynes/cmを大きく下回って表面張力を低下させることもないヒドロトロープを除いて、大部分の陰イオン系の界面活性剤が、この種類に属する傾向を有する。大部分の陽イオン性及び四級アンモニウム界面活性剤も、気体流動の存在下において狭いチャネル内に導入された際には、種類IIに属することが判明した。アルキル(アルコール)エトキシレート、ひまし油エトキシレート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS/SLS)、アルキルフェニルスルホン酸塩、高Ross−Miles泡指数、9超過のHLB、及び25〜35dynes/cmという低表面張力を有するオクチル及びノニルフェノールエトキシレートは、この種類の例である。
【0156】
種類IIIの界面活性剤は、使用された際に、RDF及びDPDFの流動形態を個別に生成するものであり、且つ、本方法による洗浄及び剥離のための望ましい界面活性剤である。これらの界面活性剤は、通常、重量で0.05%以上の濃度において、液体断片を付与する。種類IIIの界面活性剤は、通常、50mm未満の、好ましくは、20mm未満の、且つ、更に好ましくは、5mm未満又はゼロに近い非常に小さなRoss−Miles指数泡高さを具備する。多くの界面活性剤は、最適なものの場合にも、多少の泡又は湿潤薄膜の形成に起因し、0.1%超の濃度において、RDF流動を生成するその能力を失う傾向を有する。
【0157】
界面活性剤及びRDF/DPDF流動形態との関係において、本発明者らの実験を通じた観察結果から、いくつかの一般的な結論を導出可能である。
【0158】
DRF/DPFのための適切な界面活性剤は、大部分が非イオン性の様々なアルコキシル化された界面活性剤である傾向を有するが、いくつかの低発泡陰イオン性界面活性剤も好適である。
【0159】
50dynes/cm超の表面張力を生成する界面活性剤は、チャネル壁上に乏しい液体断片を生成する傾向を有する。断片化のレベルは、水によるものよりも良好ではあるが、そのような界面活性剤は、小さなトリートメント数しか実現しない。それらは、通常、汚染した内視鏡において遭遇する有機質汚物を可溶化すると共に取り除くための洗浄力を欠いている。こようなタイプの低表面活性を有する界面活性剤は、キシレンスルホン酸塩、ヘキシルスルホン酸塩、オクチルスルホン酸塩、及びエチルヘキシルスルホン酸塩、又はショートアルキルエトキシレート及びその他の類似の非イオン性又は陽イオン性剤などのヒドロトロープを含む。液体断片は、通常、楕円形状であり、且つ、そのトレーリング端部に線形液滴アレイを生成しない。前進及び後退接触角は、大きい(例えば、90度以上である)。
【0160】
30dyne/cm未満の表面張力を具備する界面活性剤、特に、低HLBを具備すると共に水に対して不溶性である界面活性剤は、疎水性チャネルの表面全体を覆う湿潤薄膜を生成する傾向を有し、30psigにおいて、約0.05〜約0.1%の濃度範囲の界面活性剤濃度において、並びに、RDF/DPDF流動に必要とされる一般的な液体流量において、ゼロ度の後退接触角が計測される(例を参照されたい)。全般的な湿潤状態が不可避であり、且つ、生成される流動マップは、大部分の液体流量において、全体的に「薄膜モード」にあると表現可能である。湿潤薄膜は、通常、チャネルの表面全体を覆っている。これらは、界面活性剤のその他の特性に応じて、泡と関連する場合もあり、或いは、そうでない場合もある。
【0161】
約50mm未満、好ましくは、0〜約5mmの小さなRoss−Miles泡高さを具備し、且つ、33〜50dynes/cmの平衡表面張力を具備する界面活性剤は、例2〜例7の流動形態マップに示されているように、RDF流動モードを実現可能である。但し、この種類のいくつかの界面活性剤は、特に、高濃度において使用された際、並びに、大きな気体又は液体流量において使用された際に、チャネル内に多少の泡を生成する傾向を有する。33〜47dynes/cm、特に、35〜45dynes/cmの表面張力を有する界面活性剤は、適切なRDFの形態を付与し、且つ、相対的に良好な洗浄性能を提供する。10〜17のHLBを有する単分散界面活性剤は、この界面活性剤の群を含む傾向を有する。表面張力が約30〜34dynes/cmである際に、チャネルの出口近傍に泡を形成可能である。
【0162】
本発明者らの実験の結果に関する以上の説明に基づいて、本発明の洗浄方法のための最適な流動形態を提供する液体洗浄媒体は、好ましくは、約33〜50dynes/cmの、好ましくは、約35〜約45dynes/cmの平衡表面張力を提供する濃度を有する1つ又は複数の界面活性剤を含む。これらの1つ又は複数の界面活性剤は、0.1%の界面活性剤濃度において、計測された際に50mmを下回る、好ましくは、20mmを下回る、更に好ましくは、5mmを下回る、そして、最も好ましくは、例えば、1mm未満などのゼロに近いRoss Miles泡高さを具備することにより、泡を生成する低い潜在性を具備することを要する。洗浄媒体は、計測された際に後退接触角がゼロ度を上回る湿潤薄膜をチャネル表面(チャネルの内部壁)上に形成するべきではない。好ましくは、界面活性剤は、水に対する溶解性を有し、且つ、約9.2を上回る、好ましくは、約10〜約14のHLBを具備している。
【0163】
本発明による洗浄媒体において使用される好適な界面活性剤は、BASF社から販売されているPLURONIC(登録商標)L43及びPLURONIC(登録商標)L62LF、及びreverse PLURONIC(登録商標)17R2、17R4、25R2、25R4、31R1などのポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマ、Air Products社から販売されている米国特許第6717019号に記述されているSURFYNOL(登録商標)465及び485などの「アセチレン系界面活性剤」と表記されるグリシジルエーテル−キャップ型アセチレン系ジオールエトキシレート、Dow Chemical Company社から販売されているTERGITOL(登録商標)、MINFOAM 1X(登録商標)、及びMINFOAM 2X(登録商標)などのアルコールエトキシレート及びSurfonic T−15などのタロウアルコールエトキシレート、Air Products社から入手可能な米国特許第5972875号に記述されているAO−455及びAO−405などのアルコキシル化エーテルアルコキシル化エーテルアミンオキシド、及びDow Chemicals社からのDOWFAX(登録商標)8390などのアルキルジフェルオキシドジスルホン酸塩を含む。更にその他の潜在的に好適な非イオン系界面活性剤は、それらが、表面張力、低発泡、及び非湿潤要件を満足することを条件として、エトキシル化アミド、エトキシル化カルボン酸、アルキル又は脂肪アルコールPEO−PPO界面活性剤、及びこれらに類似したものを含む。
【0164】
又、界面活性剤混合物も、洗浄媒体中において好適であり、且つ、いくつかのケースにおいて、RDF及びDPDF形態の提供において、個別の界面活性剤よりも良好に機能することが判明した。種類IIIに属する界面活性剤が好適であるが、種類I及び種類IIの界面活性剤も、特に、小さな割合で使用される際には、界面活性剤混合物中の成分の1つとして好適であろう。例えば、混合物は、混合物が溶解可能であると共に好適な範囲の平均HLBを具備するように、選択可能である。但し、混合物は、非湿潤薄膜基準特性及び非発泡基準を満足しなければならず、且つ、必要とされる範囲の表面張力を提供しなければならない。
【0165】
特に好適な界面活性剤混合物は、約0.06%の合計界面活性剤濃度を有するアセチレン系界面活性剤SURFYNOL(登録商標)485とアルコキシル化エーテルアミンオキシドAO−455の混合物である。この混合物は、予想外に、同一の濃度において使用された際に、混合物の個別のメンバと比べて、内視鏡チャネル内において非常に有効なRDFの形態を提供する。
【0166】
一般に、界面活性剤及びその他の任意選択の成分の濃度が、液体洗浄媒体の表面活性と湿潤及び発泡特性に対して影響を付与するという点に留意することが重要である。従って、例えば、1つの濃度において好適な界面活性剤は、その表面張力の低下が不十分である更に低い濃度においては、或いは、発泡又は湿潤(環状薄膜形成)特性が適切ではない更に高い濃度においては、好適ではないであろう。当業者であれば、本明細書に開示されている基本原理を理解することにより、洗浄のための最適な流動形態を実現するための界面活性剤濃度の最適化について十分に検討することができよう。
【0167】
[任意選択の洗浄成分]
様々な任意選択の成分を本発明の液体洗浄媒体中に包含可能である。好適な任意選択の成分は、以下のものを含む。
【0168】
pH調節剤:洗浄媒体のpHは、一般に、8.0超過、好ましくは、約9.5〜11.5であり、且つ、更に好ましくは、10.0〜11.0であることを要する。好適なpH調節剤は、NaOH、KOH及びメタ珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びこれらに類似したものなどの水酸化アルカリを含む。
【0169】
ビルダ又は金属イオン封鎖剤:これらの材料は、水又は汚物中のカルシウム及びその他の二価又は多価の金属イオンを複合体化する。好適なビルダ/金属イオン封鎖剤の例は、ナトリウムトリポリホスホスフェート(STP)又はテトラナトリウムピロホスフェート(TTPP)、又はこれらの混合物、EDTA又はその他の有機キレート化剤、クエン酸塩を含むポリカルボン酸塩、及び低分子量のポリアクリレート及びアクリレート−マレエートコポリマなどの複合リン酸塩を含む。いくつかの有機キレート化剤は、RDFモードの実現を妨げる可能性があり、従って、それぞれの候補は、例1に開示されている方法によって評価することを要することが判明した。
【0170】
曇り点消泡剤:洗浄溶液は、組成中において使用される主要な界面活性剤の発泡を低減可能な更なる界面活性剤を包含可能である。例えば、PLURONIC(登録商標)L61又はL81などの低曇り点界面活性剤をわずかな濃度(例えば、0.01〜0.025%)だけ添加して発泡を低減可能である。後者の濃度は、RFDモードが維持され、且つ、表面流動体間の空間内に液体薄膜形成が生じないように、選択することを要する。
【0171】
分散剤:これらの材料は、静電気反発を促進し、且つ、剥離した汚染物質又はバクテリアのチャネル表面への堆積又は再付着を防止する。好適な分散剤は、例えば、Rohm and Haas社のACCUSOL(登録商標) 455N、460N、及び505N、BASF社のSOKALAN CP5又はCP7、及びメタクリル酸又は無水マレイン酸及びポリ硫酸塩又はスルホン酸塩の関係するコポリマなどのポリカルボン酸を含む。
【0172】
溶剤及びヒドロトロープ:これらの材料は、それらが、例1の方法によって評価された際に、本洗浄方法のための最適な流動形態の効率的な生成を妨げない限り、界面活性剤システムを相溶化するか又は汚物成分の軟化又は可溶化を支援するべく使用可能である。好適なヒドロトロープは、例えば、キシレンスルフォネート及び低級アルキル硫酸を含む。好適な溶剤は、例えば、グリコールエーエルを含む。
【0173】
酸化剤:前述のように、好適な酸化剤は、過酢酸などの過酸、次亜塩素酸ナトリウム又はそのソース、及び過炭酸塩又は過硼酸塩などの過酸化水素又はそのソースを含む。
【0174】
洗浄液体への約300〜1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムの添加は、例えば、テフロン(登録商標)などの疎水性の内視鏡チャネルからのフィブリノゲンの除去に有効であることが判明した。次亜塩素酸ナトリウムは、任意選択により、内視鏡の血液汚染から発生する合併症を回避するべく、洗浄組成中に添加可能である。
【0175】
防腐剤:当技術分野において既知の防腐剤を利用し、洗浄組成の保存の際の有機物の成長を防止可能である。
【0176】
方法の実際的な適用においては、使用の前に水で希釈される濃縮物(2倍〜20倍)として液体洗浄媒体を製造するのが便利である。濃縮物中の様々な成分を相溶化するべく、溶剤又はヒドロトロープが必要であろう。
【0177】
[トリートメント数]
摺動液状体又は細流との3相接触界面によって通路の内部表面にどれだけの「清掃」が発生するのかに関するなんらかの基準を生成するのが有用である。例えば、蛇行細流の横断方向速度に関する情報は限られている。この主題に関する理論的な情報が存在していないことから、高速写真撮影を利用した。
【0178】
例えば、時間的に近接して撮影された複数の写真画像から、複数の写真内の細流などの同一の摺動流動体を識別し、且つ、既知の時間インターバイルによって時間的に離隔した連続写真フレームにおいてその位置を相関させることができよう。この情報の組合せは、細流の横断方向速度などの蛇行の速度に関する情報や、その他のタイプの摺動流動体に関する類似の情報を提供可能である。そして、この知識を使用し、表面エリアが3相接触において湿潤−乾燥界面によって清掃されるレートを算出可能である。断片細流及び液滴アレイの場合などの蛇行細流以外の摺動液状体の場合にも、類似の情報を算出可能である。
【0179】
真の効果は、いずれも、チャネルの表面との接触状態にある蛇行細流、サブ細流、細流断片、線形液滴アレイ、及び様々なサイズの個別の液滴を含む様々な摺動液状体によるチャネルの内部表面の清掃である。これらの液状体のそれぞれのものは、関連する3相気体/液体/固体接触界面及びメニスカスを具備する。これらの表面流動体の摺動の全体的な効果は、複数の運動する3相接触界面及びメニスカスによるチャネル表面の清掃である。
【0180】
ある程度の重要性の基準は、摺動液状体の運動によって清掃される面積の量が通路の内側表面に等しいという状況であろう。この状況において、特定の地点の清掃に重複が存在していない場合には、通路の内部表面上のそれぞれの地点が、一回だけ清掃されることになり、且つ、従って、少なくとも1回の洗浄動作を経験することになろう。当然のことながら、本明細書に記述されているプロセスのランダムで統計的な特性を考慮した際には、いくつかの地点がまったく清掃されない状態において、いくつかのその他の地点が複数回にわたって摺動液状体の運動によって清掃される可能性もあろう。従って、トリートメント数が1を上回るように、洗浄が実行されることが望ましいであろう。まず、1を多少上回るトリートメント数を具備すれば、いくつかの地点が複数回にわたって清掃された場合にも、すべての個々の地点が少なくとも一回だけ清掃される可能性が高まることになろう。更には1を十分に上回るトリートメント数を具備すれば、大部分の地点又はすべての地点が複数回にわたって清掃される可能性を高くすることができよう。この結果、洗浄の品質が更に改善されることになろう。当然のことながら、摺動液状体による1回の清掃が汚染物質を除去するのに不十分である汚染物質も存在可能であろうが、複数回のこのような清掃は除去を実現することができよう。
【0181】
従って、例えば、洗浄は、洗浄が少なくとも5の、又は少なくとも10の、又は少なくとも25のトリートメント数を実現するように、実行可能であろう。
【0182】
長く且つ狭い内部通路からの蛋白質を含む有機物質及び有機質汚物の約5〜6の対数減少値を実現するように、十分な長さの時間にわたって、記述されている方法による洗浄が実行可能であろう。
【0183】
トリートメント数は、内視鏡チャネルの長さに沿って異なる場所において異なるものであってよい。又、トリートメント数は、内視鏡チャネルの特定の断面の周囲における異なる場所などの内視鏡チャネルの所与の断面においても局所的に異なることになろう。例えば、トリートメント数の最小値がすべての場所において実現され、且つ、更に大きな値がいくつか場所において実現されるように、洗浄条件を選択可能である。
【0184】
チャネルの表面が表面流動体によって清掃される程度に関する定量的な尺度は、トリートメント数NTとして表記されるパラメータによって提供され、このトリートメント数は、すべての表面流動体によって清掃される合計面積をチャネルの合計内部表面面積によって除算したものとして定義される。トリートメント数が1に等しいということは、チャネルの全体が表面流動体によって1回だけ清掃されることを意味している。トリートメント数は、以下の手順により、その長さに沿った異なる場所においてチャネルの内部表面上の様々な位置において撮影される特定の寸法(例えば、400μm×300μm)のサンプルエリアの高速写真撮影から演算可能である。トリートメント数の判定は、先程概説されると共に詳細に後述する水力学的な流動マッピングと組み合わせることができる。
【0185】
直径d
SFE,iの、例えば、滴又は円筒体などの、特定の表面流動体(SFE)によって固定時間t
cl(例えば、300秒)において清掃される合計面積は、次式のとおりである。
A
SFE,i=d
SFE,iU
SFE,it
cl (12)
ここで、U
SFE,iは、i番目のSFEの摺動速度、即ち、細流断片のリーディングエッジにおける3相接触ラインが表面上を運動する速度である。
【0186】
合計観察時間中に進入及び離脱するSFEを含む、サンプル容積要素(例えば、視野)内に出現するすべてのタイプのSFEについてのt
clにおいて清掃される合計面積は、次式のとおりである。
細流断片によって清掃される合計面積=Σ
id
SFE,iU
SFE,it
cl (13)
ここでは、すべての細流断片にわたって合計を採取している。
【0187】
式2は、すべてのタイプの表面流動体(蛇行細流、円筒体、線形液滴アレイ、大きな滴、小さな滴など)について、次式のように一般化可能である。
すべての表面流動体についての清掃された合計面積=A
cl,Tot=t
clΣ
kΣ
id
k,iU
k,i (14)
ここで、d
k,iは、平均摺動速度U
k,iを具備する、例えば、個別の液滴などの、「k番目」のタイプのi番目のSFEの直径である。
【0188】
それぞれの表面流動体の平均摺動速度は、軸方向において、流動体の、或いは、蛇行細流については、軸方向及び半径方向の両方において、流動体の運動を時間に伴って観察することにより、計測可能である。気体流動の影響下におけるその迅速な運動に起因し、本発明者らは、カメラのシャッタが開放状態に留まることが可能であり、且つ、露光がストロボ光によって制御される多重露光時間経過写真撮影法を利用した。運動する3相接触ラインの位置の変化を時間に伴って計測することにより、それぞれのSFEの速度を判定可能であり、且つ、摺動速度の分布関数をそれぞれのタイプの流動体について演算可能である。
【0189】
トリートメント数N
jTは、観察されている特定の位置において、即ち、その長さに沿ったチャネルのj番目のセクション又は容積要素において、すべてのSFEによって清掃された合計面積をチャネルの合計面積A
Cによって除算したものとして定義される。円形のシリンダであるチャネルの場合には、A
jCは、πDlに等しく、ここで、πDは、チャネルの周囲長であり、且つ、lは、軸方向において観察されている観察エリアの長さである。この結果、「j番目」のセクション(容積要素)におけるトリートメント数は、次式によって付与される。
N
jT=A
jcl,Tot/A
jC=(t
cl/πD
2l
j)Σ
kΣ
id
jk,iU
jk,i (15)
ここで、添え字「j」は、「j番目」の観察エリアを意味している。
【0190】
式4の項は、異なる流動体に分離可能であり、且つ、更には、個別のサイズ範囲にサブ分割可能である。次いで、計測された平均速度又は速度分布関数から、それぞれのサイズ範囲に属するそれぞれのタイプの流動体の平均摺動速度が演算可能である。
【0191】
多数の画像の検査により、任意の画像内のSFE(表面流動体)の分布が均一ではなく、且つ、提供されているエリアの相対的に小さなストリップが任意の時点において洗浄されることが明らかになった。但し、観察エリア内における特定のSFEの滞留時間は、一秒よりも格段に小さく、従って、洗浄時間が、例えば、300秒である場合には、観察エリア内において観察されるSFEの数及びタイプは、300倍を超えて変化することになる。特定の液状体の場所は、様々な時点において異なるため、洗浄に十分な時間が許容され、且つ、トリートメント数が十分に大きい場合には、相当に均一な処理が実現される。一方、洗浄時間が短くなるほど、SFFの瞬間的な分布に表れる不均一性が大きくなる。
【0192】
トリートメント数が1以下である際には、処理の均一性は低い。SFEによって清掃されるチャネルのエリアは、チャネルの幾何学的エリアに等しいが、チャネルの大きな領域が処理されない状態に留まる。しかしながら、N
jTが30を超過し、且つ、好ましくは、50を超過した際には、観察されている特定のセクションの処理は、十分均一になり、セクションのすべてのエリアが洗浄されるようになる。トリートメント数が約100以上に到達した際には、3相接触ラインによって清掃される合計面積の割合の観点において非常に高度な均一性が観察される。
【0193】
以上の分析に基づいて、チューブの長さに沿った(入口から出口までの)実質的にすべての位置におけるトリートメント数N
jTは、10超過、好ましくは、少なくとも約30、更に好ましくは30−50の間であり、且つ、最も好ましくは、約50を上回るであろう。チューブの長さに沿った実質的にすべての位置という用語は、チューブの長さの少なくとも約75%、好ましくは、チューブの長さの80%超過、及び最も好ましくは、チューブの長さの95%超過を意味している。
【0194】
本方法は、実際に、100以上の、そして、いくつかの条件下においては、300〜1000の非常に大きなトリートメント数をごく普通に実現する能力を有する。これらの大きなトリートメント数は、例えば、汚染物質の微生物におけるpLog6などの非常に大きな対数減少を実現する。
【0195】
式4から、トリートメント数が、洗浄動作の間に形成される表面流動体の合計数と、その摺動速度と、に依存していることがわかる。任意選択により、これらの変数は、液体及び気体流量により、且つ、界面特性及び液体洗浄媒体の粘度などのその他の特性により、制御される。
【0196】
液体流量の増大に伴って、SFEの量とタイプが増大する。これは、液体流量の増大に伴うトリートメント数の増大に結び付き、これは、様々な条件下において撮影された顕微鏡写真画像の分析により、実験を通じて十分に実証されている。
【0197】
同様に、断片化及び迅速な摺動を第1場所において誘発するのは、流れる気体によって提供される牽引力であるため、気体流量の増大は、表面流動体の数及びその摺動速度を増大させる。
【0198】
RDFの流動形態を利用した本洗浄方法の更なる実施例においては、液体洗浄媒体の細流流動又は気体の流動のいずれか又は両方が洗浄サイクルにおいてパルス化されており、これは、いくつかのケースにおいて、汚染物質の剥離を支援することが判明している。
【0199】
[内視鏡の構造]
特定の外科又は診断手順のための様々な内視鏡設計が存在しており、且つ、同一の外科手順用の内視鏡の場合にも、異なる製造者によって製造された異なるモデルの中に異なる設計が存在している。内視鏡の一般的な特徴が
図12に示されている。一般的な特徴として、内視鏡は、患者内に進入する遠端100を具備可能である。遠端100から後方へ向かった多少の距離には、制御ハンドル90が存在可能であり、この制御ハンドルにおいては、特定の制御部を操作可能であり、且つ、内視鏡内のチャネルへのアクセスを得ることができる。内視鏡は、遠端100及び制御ハンドル90の間において、曲がりやすい。制御ハンドル90から更に後方に継続し、別の曲がりやすい長さが存在可能であって、これは、アンビリカルケーブル80である、このケーブルは、アンビリカル端部70において終端している。
【0200】
チャネルについては、すべてのチャネルの長さが内視鏡自身の長さに関係しているため、様々なチャネルの長さは、通常、すべてのチャネルについて同一であろう。制御ハンドルから遠端100に向かう内視鏡の部分は、約2〜2.6mの最大長さを具備可能である。内視鏡のアンビリカル部分(制御ハンドル90とアンビリカル端部70の間)は、約1.4mの長さを具備可能である。
【0201】
内視鏡は、空気チャネル132と、水チャネル131と、を有することができる。これらのチャネル131、132は、互いに類似したものであってもよく、或いは、互いに同一のものであってもよい。これらは、内視鏡内の相対的に小さな直径のチャネルの一部であってもよい。例えば、空気チャネル132及び水チャネル131の内部直径は、相対的に小さなものであってよく、約1mmである。空気チャネル132及び水チャネル131は、アンビリカル端部70から遠端100まで内視鏡の長さ全体にわたって延在可能であり、制御ハンドル90には、アクセスポイントが存在する。空気チャネル132及び水チャネル131は、内視鏡の遠端100において1つに統合可能であり、且つ、共通オリフィス(又は、空気−水ノズル)133を通じて遠端100において排出可能である。共通オリフィス133は、空気チャネル132又は水チャネル131の内部直径よりも小さい内部直径を具備可能である。
【0202】
内視鏡は、生検チャネルとしても機能可能な吸引チャネル109Aを有することができる。このようなチャネル109Aの内部直径は、そのチャネル及びその内視鏡の目的及び設計に応じて、1.2mm〜6.0mmなどの大きな範囲にわたって様々であってよい。
【0203】
いくつかの内視鏡は、前方水噴射又は潅注チャネルを更に有することができる。このチャネルは、こちらも1mmの範囲である内部直径を具備可能である。前方水噴射又は潅注チャネルは、制御ハンドル90とアンビリカル端部70の間の別のチャネルセグメントを具備することなしに、制御ハンドル90から遠端100に延在可能であろう。或いは、この代わりに、水噴射又は潅注チャネルは、制御ハンドル90においてアクセスポイントを具備することなしに、アンビリカル端部70から遠端100までずっと延在することも可能であろう。
【0204】
制御ハンドル90から遠端100に、且つ、制御ハンドル90からアンビリカル端部70に延在するチャネルの中のいずれのものの場合にも、制御ハンドル90から遠端100までのセグメントの内部直径は、制御ハンドル90からアンビリカル端部70までのセグメントの内部直径と異なるものであってよいであろう。通常、異なる場合には、制御ハンドル90から遠端100までのセグメントの内部直径が制御ハンドル90からアンビリカル端部70までのセグメントの内部直径よりも小さいであろう。
【0205】
図12は、一般的な内視鏡の制御ハンドルの詳細を示している。
図12には、吸引チャネルに対する接続を具備した吸引シリンダウェル103が示されている。このシリンダウェルには、遠端100に向かって延在する1つの接続105と、アンビリカル端部70に向かって延在するもう1つの接続104と、が存在している。
【0206】
図12には、空気チャネルに対する接続と、水チャネルに対する接続と、を含む空気/水シリンダウェル126が示されており、これらの接続は、いずれも、共通空気/水シリンダウェル126において1つになっている。従って、このシリンダウェル126は、4つのポートを具備している。ポート128は、内視鏡の遠端100に向かって延在する水チャネル用のものであり、且つ、ポート127は、内視鏡のアンビリカル端部70に向かって延在する水チャネル用のものである。ポート130は、内視鏡の遠端100に向かって延在する空気チャネル用のものであり、且つ、ポート129は、内視鏡のアンビリカル端部70に向かって延在する空気チャネル用のものである。
【0207】
吸引/生検チャネル102は、アンビリカル端部70に配置された吸引ニップル101から制御ハンドル90に配置された吸引制御シリンダウェル103に延在可能であり、且つ、吸引制御シリンダウェル103から、チャネル107を通じて更に延長し、生検挿入ポート108と接続されたチャネル109と統合可能である。次いで、吸引/生検チャネルは、プラスチックチューブ109Aによって継続し、遠端に配置された排出ポート108と統合されている。吸引/生検制御シリンダウェル103は、適用の際に吸引制御バルブを収容するべく使用される金属ハウジングであり、ここには、プラスチックチューブ107及びプラスチックチューブ102と接続するための入口ポート104及び出口ポート105が含まれている。
【0208】
空気チャネル124は、アンビリカルプラグ70に配置された空気/水ポート121から制御ハンドル90に配置された空気/水シリンダウェル126に延在可能であり、且つ、空気/水シリンダウェル126から内視鏡の遠端に配置された空気/水ノズル133に延在するチャネル132を更に有することができる。水チャネル123は、アンビリカル端部70に配置された空気/水ポート121から制御ハンドル90に配置された空気/水シリンダウェル126に延在可能であり、且つ、空気/水シリンダウェル126から内視鏡の遠端100に配置された空気/水ノズル133に延在するチャネル131を更に有することができる。様々なチャネルは、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリマーから製造されたチューブであってよい。
【0209】
多くのタイプの内視鏡において、遠端100に配置された空気/水ノズル133は、空気チャネル124及び水チャネル123が統合される地点である。ノズル133の内部直径は、空気チャネル124又は水チャネル123自体の内部直径よりも小さいものであってよい。
【0210】
内視鏡は、前方水噴射(又は、潅注)チャネル142を有することができる。このチャネル142は、制御ハンドル90に又はアンビリカルプラグ70に配置された前方水噴射ポート141から遠端100に配置された排出ポート143に延在可能である。
【0211】
いくつかの内視鏡は、エレベータチャネル111を包含可能であり、これは、内視鏡の先端を操向するべく使用されるワイヤをその内部に具備したチューブである。エレベータチャネル111は、制御ハンドル90に配置されたエレベータワイヤチャネル洗浄ポート110から遠端100に延在可能である。従って、エレベータワイヤチャネルは、内視鏡の長さ全体にわたって延在可能ないくつかのその他のチャネルよりも短いであろう。ワイヤ112をエレベータワイヤチャネル111の内部に設置可能である。ワイヤ112の一端は、遠端の吸引排出ポート108の近傍にヒンジ結合されたエレベータ上昇部113に対して装着されている。ワイヤ112の他端は、制御ハンドル90の制御ノブメカニズムに対して装着可能であり、このメカニズムは、エレベータワイヤチャネル洗浄ポート110から始まっている。エレベータワイヤとエレベータワイヤを取り囲んでいるチューブの間の空間の寸法は、約0.18mmであってよい。通常、エレベータチャネルは、内視鏡のその他の通路よりも高い圧力において圧力試験が実施される。
【0212】
様々な内視鏡の中の特定のチャネルの代表的な長さ及び内部直径を表に纏めることが可能であり、或いは、これらの寸法の少なくとも範囲を表に纏めることが可能であろう。これらが表2に要約されている。
【表4】
【0213】
内視鏡は、光ファイバや電子回路などの更にその他のコンポーネントを更に有することが可能であるが、これらは、ここでは、図面を簡潔にするべく省略されている。
【0214】
[内視鏡洗浄装置の回路]
内視鏡洗浄装置50は、様々な流体流動回路及びその他の装置を有することができる。これらが
図13a〜13dに示されている。
図13aは、全体システムの概略図である。
図13b、
図13c、及び
図13dは、
図13aの各部分を更に詳細に示している。例えば、
図13b、
図13c、及び
図13dは、わかりやすくするべく
図13aにおいては省略されている弁をも含む。
【0215】
i)空気回路:空気流動回路設計1は、外部供給源又はコンプレッサからの空気吸入口1Gと、範囲A及びBの圧力漏洩試験を実施し、且つ、細流−液滴流動洗浄及びすすぎ並びに内部チャネルの乾燥のために空気をライン1A、1D、及び1Cを介して分配マニホルドA(8)、分配マニホルドB(9)、及びエレベータマニホルド(10)内に噴射するための空気分配ブランチ1E及び1Fと、包含可能である。空気は、除湿することも可能であり、或いは、100%未満の湿度を有するものであってもよい。図示のように、空気は、装置50の残りの部分に進入する前に除湿機1Iを通過している。又、空気は、様々な目的に使用される前に、ヒーター1Jを通過することも可能であろう。空気の加熱により、その湿度は、更に低減されるものと予測可能である。又、空気回路からの空気は、装置50の水ライン1H及び消毒剤ライン1Bをパージするべく使用することも可能である。
【0216】
ii)水回路:水回路設計2は、外部からの湯の吸入口2lを包含可能であり、ライン2A、2C、及び2Dを介して分配マニホルドA(8)、分配マニホルドB(9)、及びエレベータマニホルド(10)を通じてすべての内視鏡の内部チャネルをすすぎ、且つ、ライン1Eを介してベイスンを通じて内視鏡の外部表面をすすぐための水を供給している。又、この回路は、ライン6及び12を介して範囲A及びBのチャネル開通性計測を実行するべく、ライン2Bを介して消毒剤回路を、そして、ライン2Gを介してクリーナー回路をすすぐべく、且つ、ライン2Hを介して最終的な希釈のために濃縮洗浄溶液と水を混合させるべく、水を供給している。
【0217】
iii)クリーナー回路:この回路設計3は、ボトルからの濃縮洗浄溶液の吸入口3Fと、濃縮洗浄溶液との混合のための水供給源(2H)と、クリーナー回路をすすぐための水供給源(2G)と、を包含可能である。クリーナー回路は、ライン3A、3B、及び3Dを介して分配マニホルドA(8)、分配マニホルドB(9)、及びエレベータマニホルド(10)に洗浄溶液を供給し、内部チャネルの細流−液滴流動洗浄を実行すると共に、洗浄溶液をライン3Cを介してベイスンに供給し、内視鏡表面の外部洗浄を実行する。又、この回路は、自己消毒サイクルにおいてライン3Eを介して過酢酸(PAA)をベイスンに供給するためにも使用される。
【0218】
iv)消毒剤回路:高度な消毒回路設計7は、消毒剤を35℃に維持するためのインラインヒーター4Fを有する保存タンク及び再循環ループ(7A及び4E)を含む。この回路は、消毒剤をベイスンに供給し、35℃において5分間にわたる完全な浸漬を実現する。内部チャネルは、消毒サイクルにおいて、ライン4A、4B、及び4Dを介して分配マニホルドA(8)、分配マニホルドB(9)、及びエレベータマニホルド(10)を通じたベイスンからの消毒剤によって浸漬される。消毒の際には、噴霧アーム及びエダクタが消毒剤を内視鏡表面に送付し、且つ、装置の蓋を含むベイスンの表面をカバーする。消毒剤回路設計は、それぞれ、内部チャネル及び外部表面の高度な消毒のために、同時に、消毒剤をベイスンに対して供給し、次いで、分配マニホルド及びエダクタを通じて消毒剤を再循環させる。又、この回路は、消毒剤をヒーター4Fを通じて再循環させることにより、リザーバ内の消毒剤の温度を維持している。
【0219】
v)アルコール回路:アルコール回路5は、乾燥を促進するための空気による最終乾燥ステップの前に、アルコールをライン5A、5B、及び5Cを介して分配マニホルドA(8)、分配マニホルドB(9)、及びエレベータマニホルド(10)に供給する。
【0220】
vi)分配マニホルド回路:分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(9)は、細流液滴流動を生成すると共に異なる流体を2つの内視鏡A及びBの内部チャネルに供給するべく使用される。それぞれの分配マニホルドは、5つの吸入口ポート(空気(1A、1D)、水(2A、2C)、洗浄溶液(3A、3B)、アルコール(5A、5B)、及びベイスン(4A、4B))、及び5つの排出口ポート(空気(8A、9A)、水(8B、9B)、吸引(8C、9C)、生検(8D、9D)、及び潅注(8E、9E)チャネル)を具備している。エレベータマニホルド10も、細流−液滴流動を生成するべく使用され、且つ、同一の5つの吸入口ポート(1C、2D、3D、5C、及び4D)を具備するが、排出口ポートは、範囲(A)のエレベータワイヤチャネル用のもの(10A)と、範囲Bのエレベータワイヤチャネル用のもう1つのもの(10B)という2つのみである。
図13bは、マニホルドA(8)の概略図を更に詳細に示している。マニホルドA(8)に対する空気吸入口(1A)、水吸入口(2A)、クリーナー吸入口(3A)、ベイスン吸入口(4A)、及びアルコール吸入口(5A)は、弁8F、8G、8H、8I、及び8Jによってそれぞれ制御されている。空気ポート(8A)、水ポート(8B)、吸引ポート(8C)、生検ポート(8D)、及び水潅注ポート(8E)に対するマニホルドからの排出口は、それぞれ、弁8K、8L、8M、8N、及び8Oによって制御されている。
【0221】
vii)ベイスン回路:この
図13dに示されている回路設計は、2つの内視鏡の外部表面を洗浄、すすぎ、及び消毒するべく、循環ポンプ4H及び弁4Iを使用するエダクタ4Gと、循環ポンプ4H及び弁4Kを使用する噴霧アーム4Jと、を通じて洗浄溶液3C、水2E、及び消毒剤7Aを供給している。わりやすくするべく、
図13dには、1つのエダクタ(4G)のみが示されている。ベイスン回路4は、分配マニホルドA(8)、分配マニホルドB(9)、及びエレベータマニホルド(10)を使用し、ライン4A、4B、及び4Dを介して内視鏡の内部チャネルを通じて消毒剤を循環させ、且つ、ベイスンの内容物を外部ドレイン4Cに排出している。ベイスン4内の消毒剤7の温度は、消毒剤をヒーター4F及びライン4E及び7Aを介して消毒剤ボトルを通じて循環させることにより、維持されている。ベイスン4内には、ベイスン4内における圧力生成を防止するべく、通気口4Lも提供されている。又、この回路は、クリーナーライン3E及び3Cを通じてPAAのボトルからベイスン4に過酢酸(PAA)(11)滅菌剤などの滅菌剤を供給し、自己消毒サイクルをも実行する。
【0222】
開通性試験:
図13cは、範囲Aの開通性試験回路の概要図を詳細に示している。水回路(2)からの水(6)が、それぞれの弁により、固定圧力において、水調節器6Fと、空気(6A)、水(6B)、吸引(6C)、水潅注(6D)、及び生検(6E)という5つのチャネルの中の1つのものと、に送られる(圧力は、圧力センサ6Gによって監視されている)。同様に、範囲Bについても、水回路(2)からの水(12)が、それぞれの弁により、空気(12A)、水(12B)、吸引(12C)、水潅注(12D)、及び生検(12E)という5つのチャネルの中の1つのものに送付される。チャネルを通じた水の流量は、水流量計(6H)によって計測されている。空気チャネル(6A)、水チャネル(6B)、吸引チャネル(6C)、水潅注チャネル(6D)、及び生検チャネル(6E)への水の注入は、それぞれ、弁6I、6J、6K、6L、及び6Mによって制御されている。
【0223】
[単一チャネルの再生サイクル]
再生においては、装置50(
図13a)は、以下の流体のすべて又は任意のサブセットを適切な時点において内視鏡に供給可能であり、又は以下の動作のすべて又は任意のサブセットを実行可能である。所与のチャネルの再生サイクルは、i)プレ洗浄、ii)漏洩及び開通性試験、iii)細流−液滴流動洗浄、iv)すすぎ、v)消毒、vi)すすぎ、vii)アルコール浸漬、及びviii)空気乾燥という段階を包含可能である。この一連のイベントが
図14に更に示されている。
【0224】
内視鏡の再生のための準備においては、内視鏡の使用手順が完了したら、その内視鏡の使用手順において堆積したであろう破片が、その内視鏡の使用手順と再生の間の時間に湿潤状態に留まるように、内視鏡のチャネルを、液体によって充填するか、又はなんらかの方式によって湿潤可能であろう。これは、容易に除去可能な状態に破片を維持するのに有用であろう。
【0225】
[i)プレ洗浄]
プレ洗浄ステップは、患者に伴う大きな物質をチャネルから除去するべく内視鏡チャネルを通じて洗浄溶液の細流−液滴流動を脈動させるステップを包含可能である。ある期間にわたる水回路2からの水とクリーナー回路3からの洗浄溶液の混合物と、これに続くある期間にわたる空気回路1からの空気パルスと、をチャネルを通じて送付可能であり、且つ、このプロセスは、このステップの全体を通じて複数回にわたって反復可能である。又、このプレ洗浄ステップの終了時点において、水回路2を使用し、その全体が水などの液体からなる流動によってチャネルを洗い流すことも可能であろう。
【0226】
[ii)漏洩及び開通性試験]
漏洩試験においては、約3psigなどの中程度の圧力における空気回路1からの空気を内視鏡のシースに適用し、且つ、時間の関数として圧力の低下を圧力センサによって監視可能である。圧力低下が許容可能な範囲を外れている場合には、内視鏡は漏洩試験に不合格となる。内視鏡の内部チャネルの開通性/閉塞試験においては、既知の一定の温度及び圧力における水回路2からの水の流動をチャネルに対して適用可能であり、且つ、次いで、チャネル内の流量を高精度の流量計/センサによって監視可能である。この開通性試験システムは、(1)装置のデータベース内に保存可能であるその特定の内視鏡(新しい状態)のその特定のチャネルのベースライン値に対して、得られた流量を比較することによる方法と、(2)こちらもその値が装置のデータベース内に保存されている同一の直径及び長さを具備したチャネル用の既定値に対して、計測された流量を比較することによる方法という2つの方法のいずれか又は両方により、チャネルの閉塞又は詰りを判定可能である。
【0227】
[iii)細流−液滴流動洗浄]
このステップにおいては、細流液滴流動の形態を使用し、少なくとも時間の一部分において、ある期間にわたって、チャネルを洗浄可能である。細流−液滴流動洗浄においては、既知の圧力における空気回路1からの温かい空気と既知の流量におけるクリーナー回路3からの温かい洗浄溶液を、チャネルを通じて流すことができる。チャネルの表面から汚染物質を剥離させるように細流液滴流動を形成するべく、チャネルの内部直径及び長さに基づいて流量を選択可能である。この細流−液滴流動洗浄の終了時点において、空気回路1からの空気により、チャネルを短い期間にわたってパージし、チャネルから洗浄溶液を除去可能である。
【0228】
[iv)すすぎ]
特別なすすぎステップを実行し、内視鏡の内部チャネルから剥離された汚染物質を除去するか、又はチャネルから洗浄溶液を除去可能である。このすすぎステップは、実質的に純粋な水を使用して実行可能である。このすすぎステップは、パルス化細流−液滴流動すすぎと連続水すすぎという2つのサブステップを包含可能である。パルス化細流−液滴流動すすぎにおいては、チャネルに、ある期間にわたって水回路2からの水を、次いで、ある期間にわたって空気回路1からの空気パルスを送付可能であり、且つ、このプロセスは、複数回にわたって反復可能である。連続水すすぎにおいては、水回路2からの水をチャネルに送付可能である。すすぎの終了時点において、空気回路1からの空気により、チャネルを短い期間にわたってパージし、チャネルから水を除去可能である。
【0229】
[v)消毒]
FDA承認済みの消毒剤(例えば、5分間にわたる35℃のグルタルアルデヒド又は過酢酸(PAA))を使用し、高度な消毒を実行可能である。このステップにおいては、内視鏡がベイスン4内の消毒剤中に完全に浸漬された状態において、消毒剤回路7からの消毒剤を内部チャネルを通じてベイスン4から循環させることができる。消毒ステップの終了時点において、空気回路1からの空気により、チャネルを短い期間にわたってパージし、チャネルから消毒剤を除去可能である。
【0230】
[vi)すすぎ]
このステップにおいては、水回路2からの水をチャネルに送り、消毒剤の残留物を除去可能である。すすぎの終了時点において、空気回路1からの空気により、チャネルを短い期間にわたってパージし、チャネルから水を除去可能である。
【0231】
[vii)アルコール浸漬]
このステップにおいては、アルコール回路5からのアルコールをある時間にわたってチャネルに送付可能である。アルコールは、エタノールであってもよく、或いは、エタノールを有することができる。アルコールは水よりも容易に蒸発可能であるため、このステップは、乾燥を促進するという目的に寄与可能である。
【0232】
[viii)空気乾燥]
このステップにおいては、チャネルを空気回路1からの温かい空気によってパージし、内視鏡の内部チャネルを乾燥させることができる。
【0233】
前述の内視鏡の内部チャネルを洗浄するサイクルとは別個に、装置は、例えば、発生可能なバイオフィルムの除去などのために、消毒剤を使用して内視鏡再生装置自体の内部の流体ラインを消毒する自己消毒を実行する特別なサイクルを提供することも可能である。自己消毒は、例えば、毎週など、定期的に実行可能である。自己消毒に使用される物質は、例えば、過酢酸であってよい。
【0234】
又、装置50(
図13a)は、ベイスンが水によって充填され、且つ、水のサンプルが特別なポートを通じて採取される水サンプリング用の特殊なサイクルを提供することも可能である。
【0235】
[2つの内視鏡の同時非同一洗浄]
効率性又は利便のために、単一の装置が同時に又はほぼ同時に2つの内視鏡を洗浄可能であることが望ましいであろう。これを実現するための一連のイベントが
図15に示されている。
【0236】
2つの内視鏡は、互いに同一であってもよく、或いは、互いに異なっていてもよい。これらの内視鏡が互いに同一である場合にも、任意の所与の時点において、1つの内視鏡(又は、その内視鏡の特定の通路)に対して実行されている洗浄動作は、もう1つの内視鏡(又は、その内視鏡の特定の通路)に対して実行されている洗浄動作と同一であってもよく、或いは、同一でなくてもよい。
【0237】
特定の通路がその他の通路よりも大きなニーズを具備する場合がある。このニーズは、電力消費量の観点において、或いは、圧縮空気の消費量又はその他のリソースの消費量の観点において、表現可能である。電力又は圧縮空気又はその他のリソースなどのリソースは、供給が限られているものであってもよく、或いは、その最大需要を特定の限度未満に維持することが望ましいようなものであってもよく、或いは、最大需要の大きさを極小化することが望ましいようなものであってもよい。例えば、電気的供給要件を決定するのは最大瞬間需要である。同様に、圧縮空気消費量の関連においては、圧縮空気の保存は、ある程度可能ではあるが、一般には、圧縮空気の最大瞬間消費量は、エアコンプレッサの必要な容量(と、従って、ある程度は、装置の電力消費量)に対して大きな影響を付与する可能性が高い。
【0238】
図15aは、少なくとも略同時に、但し、同一のイベント順序を伴ってではなく、2つの内視鏡を洗浄するための可能な一連のイベントを示している。図示のために、
図15aにおいては、範囲A及び範囲Bの例を使用している。
図15に示されているように、空気流量消費量が相対的に小さい通路の洗浄が1つの内視鏡内において実行されると同時に、もう1つの内視鏡において空気流量消費量が相対的に大きい通路の洗浄が実行されるように、2つの内視鏡の同時処理において、動作をスケジュール可能である。そして、この後の時点において、動作を逆転可能である。この結果、2つの内視鏡を同時に洗浄することが可能であり、且つ、それでいて、圧縮空気の消費量のピーク需要を最大空気消費量の通路の空気消費量の2倍未満に維持することが可能である。
【0239】
電気エネルギー消費量のピークレートを極小化するという理由のみならず、エアコンプレッサの資本コスト、ピーク雑音生成、装置の全体的なサイズ又は重量、及びその他の理由などのその他の理由の観点からも、圧縮空気の消費量のピークレートを極小化することが望ましいであろう。
【0240】
当然のことながら、本明細書の別のところに記述されているように、1つの幾何学的通路の良好な洗浄を実現するための条件は、別の幾何学的通路の良好な洗浄を実現するための条件とは異なるであろう。これらの条件は、液体/気体比率において異なる可能性があり、或いは、タイミング及びスケジューリング又はこれらの両方において異なる可能性あろう。2つの内視鏡を同時に洗浄する、或いは、場合によっては、単一の内視鏡内の異なる通路を同時に洗浄する機器は、個別の通路に対してその特定の通路にとって好適な条件を供給するように、動作させることができる。
【0241】
装置が複数の異なる設計又はモデル又はブランドの内視鏡を洗浄する能力を有する場合には、その装置は、同時に複数の異なる設計又はモデル又はブランドの内視鏡を洗浄する能力を有することができよう。その場合には、装置は、装置内の特定のステーションにおいてどのタイプの内視鏡が洗浄されているのかを識別するべくプログラム可能であり、或いは、装置は、特定のステーションにどのタイプの内視鏡が位置しているのかを認識する能力を有することも可能である。更には、装置は、それぞれの内視鏡ごとに空気を適切に供給する能力を有することができる。
【0242】
図15bは、洗浄の際に実行可能なタイプの流動入力の様々な詳細を示している。このような流動入力は、プレ洗浄において又はすすぎにおいて適用することも可能であろう。
【0243】
[2つの内視鏡を略同時に洗浄する再生サイクル]
2つの内視鏡のための再生サイクルは、i)プレ洗浄、ii)漏洩及び開通性試験、iii)細流−液滴流動洗浄、iv)すすぎ、v)消毒、vi)すすぎ、vii)アルコール浸漬、及びviii)空気乾燥という、単一の内視鏡のために本明細書の別のところに記述されているステップを包含可能である。この一連のイベントが
図15に更に示されている。再生においては、装置50(
図13a)は、以下のステップのすべて又は任意のサブセットを実行可能である。
【0244】
[i)プレ洗浄]
プレ洗浄ステップは、患者に伴う大きな物質をチャネルから除去するべく内視鏡チャネルを通じて洗浄溶液の細流−液滴流動を脈動させるステップを包含可能である。ある期間にわたる水回路2からの水とクリーナー回路3からの洗浄溶液の混合物と、これに続くある期間にわたる空気回路1からの空気パルスと、をチャネルを通じて送付可能であり、且つ、このプロセスは、このステップの全体を通じて複数回にわたって反復可能である。又、このプレ洗浄ステップの終了時点において、水回路2を使用し、その全体が水などの液体からなる流動によってチャネルを洗い流すことも可能であろう。
【0245】
[ii)漏洩及び開通性試験]
漏洩試験は、開通性試験が範囲Bにおいて実行されている間に、範囲Aにおいて実行される。この後に、範囲Aにおける開通性試験と範囲Bにおける漏洩試験が実行される。漏洩試験においては、空気回路1からの3psiの空気を内視鏡のシースに適用し、且つ、時間の関数として圧力低下を圧力センサによって監視する。圧力低下が許容可能な範囲を上回っている場合には、内視鏡は漏洩試験に不合格となる。内視鏡の内部チャネルの開通性/閉塞試験においては、既知の一定の温度及び圧力における水回路2からの水の流動をそれぞれのチャネルに別個に供給し、且つ、次いで、チャネル内の流量を高精度の流量計/センサによって監視する。この開通性試験システムは、1)装置のデータベース内に保存された同一の内視鏡(新しい状態)のベースライン値と入手された流量を比較することによる方法と、2)(修理された内視鏡の場合の)こちらもその値が装置のデータベース内に保存されている同一の直径及び長さのチャネルの既定値と計測された流量を比較することによる方法という2つの方法により、チャネルの閉塞又は詰りを判定する。本発明者らの装置においては、本発明者らは、それぞれのチャネルの開通性をその他のチャネルからの干渉を伴うことなしに試験することができるように、すべての内視鏡チャネルを相互に分離するための手段を含む。
【0246】
[iii)細流−液滴流動洗浄]
本発明者らの装置においては、範囲Aからの1つの大きなチャネル(例えば、吸引や生検)と範囲Bからの1つの小さなチャネル(例えば、空気や水)を、それぞれ、分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(9)を使用し、ある期間にわたって同時に洗浄可能である。そして、この後に、この場合にも、それぞれ、分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(9)を使用し、範囲Aからの1つの小さなチャネルと範囲Bからの1つの大きなチャネルを洗浄可能である。このシーケンスは、すべてのチャネルが洗浄される時点まで、継続可能である。エレベータワイヤチャネルは、エレベータマニホルド(10)を使用し、細流−液滴流動洗浄サイクルの全体を通じて継続的に洗浄可能である。細流−液滴流動洗浄においては、チャネルの内部直径及び長さに基づいて、既知の圧力における空気回路1からの温かい空気と既知の流量におけるクリーナー回路3からの温かい洗浄溶液をそれぞれのチャネルを通じて適用し、チャネルの表面から汚染物質を剥離させることができる。細流−液滴流動洗浄の終了時点において、空気回路1からの空気により、すべてのチャネルを短い期間にわたってパージし、内視鏡の内部チャネルから洗浄溶液を除去可能である。
【0247】
[iv)すすぎ]
特別なすすぎステップを実行し、内視鏡の内部チャネルから剥離された汚染物質を除去するか、又はチャネルから洗浄溶液を除去可能である。このすすぎステップは、実質的に純粋な水を使用して実行可能である。このすすぎステップは、パルス化細流−液滴流動すすぎ及び連続水すすぎという2つのサブステップを包含可能である。パルス化細流−液滴流動すすぎにおいては、それぞれ、分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(9)を介して、範囲A及びBに、ある期間にわたって水回路2からの水を、次いで、ある期間にわたって空気回路1からの空気パルスを送付可能である。このプロセスは数回繰り返される。連続水すすぎにおいては、水回路2からの水を同時に範囲A及びBのすべてのチャネルに送付可能である。すすぎの終了時点において、空気回路1からの空気により、すべてのチャネルを短い期間にわたってパージし、内視鏡の内部チャネルから水を除去可能である。
【0248】
[v)消毒]
FDA承認済みの消毒剤(5分にわたる35℃のグルタルアルデヒド又は過酢酸(PAA))を使用し、高度な消毒を実行可能である。このステップにおいては、2つの範囲がベイスン4の内部の消毒剤中に完全に浸漬された状態において、消毒剤回路7からの消毒剤を、それぞれ、分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(8)を使用し、範囲A及びBの内部チャネルを通じてベイスン4から循環させることができる。消毒ステップの終了時点において、空気回路1からの空気により、範囲A及びBのすべてのチャネルを短い期間にわたってパージし、内視鏡の内部チャネルから消毒剤を除去可能である。
【0249】
[vi)すすぎ]
このステップにおいては、水回路2からの水を同時に範囲A及びBのチャネルのすべてに送り、消毒剤の残留物を除去可能である。すすぎの終了時点において、空気回路1からの空気により、すべてのチャネルを短い期間にわたってパージし、内視鏡の内部チャネルから水を除去可能である。
【0250】
[vii)アルコール浸漬]
このステップにおいては、それぞれ、分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(9)を使用し、アルコール回路からのアルコールをある期間にわたって範囲A及びBのすべてのチャネルに送付可能である。アルコールは、エタノールであってもよく、或いは、エタノールを有することができる。アルコールは水よりも容易に蒸発可能であるため、このステップは、乾燥を促進するという目的に寄与可能である。
【0251】
[viii)空気乾燥]
このステップにおいては、分配マニホルドA(8)及び分配マニホルドB(9)を使用して範囲A及びBのすべてのチャネルを空気回路1からの温かい空気によってパージし、内視鏡の内部チャネルを乾燥させることができる。
【0252】
本明細書の別のところに記述されているように、装置は、ベイスンが水で充填され、且つ、水のサンプルが特別なポートを通じて採取される水サンプリング用の特殊なサイクルを提供することも可能である。又、装置は、第2消毒剤を使用して内視鏡洗浄装置のすべての流体ラインを消毒する自己消毒を実行するための特殊なサイクルを包含することも可能である。
【0253】
[加熱又は除湿された空気を供給する装置]
乾燥状態にあるか又は疎水性を有する固体表面上を移動する液状体は、運動する3相接触界面によって汚染物質を剥離させるのに有用であると考えらえると本明細書の別のところに記述されている。この状況を促進する1つの方法は、液体と固体表面の間に疎水性の適切な関係を具備するというものである。この状況を促進する別の要因は、洗浄に使用される水などの液体の蒸発の発生を支援するというものである。蒸発は、流動に対して供給される気体が100%未満の湿度を有する場合に促進可能である。気体流動用に使用される気体が空気である場合には、通路に供給される前に空気を除湿することにより、この条件を実現可能である。適切な除湿手段については、当技術分野において既知である。或いは、この代わりに、これは、室温空気をわずかに上昇した温度に加熱することによっても実現可能である。空気が100%の湿度を有するか又は略100%の湿度を有する場合にも、それが室温を有する場合には、温度が上昇した際に、空気は、100%未満の湿度を有する状態となり、且つ、従って、液体の多少の蒸発を促進する能力を有することになろう。当然のことながら、通路に対して供給される空気又はその他の気体に対して除湿及び加熱の両方を実行することも可能である。
【0254】
当然のことながら、通路に供給される液体は、温かいか又は熱いものであってもよいであろう。又、一般に、液体又は気体又はこれら両方の加熱は、拡散プロセスを加速することにより、蛋白質を変性させることにより、破片及び汚染物質の軟化を支援することにより、且つ、その他のメカニズムにより、洗浄を支援可能である。
【0255】
空気ヒーター要素1Jが
図13aの空気回路内に示されている。液体の加熱は、(空気ヒーター要素1Jに類似した、但し、図示されてはいない)液体ヒーターにより、装置内において内部的に実現することも可能であり、或いは、恐らく更に現実的には、恐らくは、装置の外部又は内部における温度制御を伴って、外部供給源からの温かい又は熱い水を装置内に導入することも可能である。
【0256】
例えば、供給されている液体が存在していない状況において、通路の内部直径、通路の長さ、湿度、温度、並びに、恐らくは、その他の要因に応じて、約5秒〜15秒の持続時間にわたって、加熱された気体の流動を供給可能である。気体供給圧力が約30psigである場合に、空気/水チャネルを乾燥又は脱湿するには、(供給される液体が存在していない状況において)5〜15秒の持続時間の気体の流動が適切であろう。吸引チャネルを乾燥又は除湿するには、5〜7秒の持続時間が適切であろう。
【0257】
更には、このドライアウト及び脱湿のプロセスは、多数回にわたって反復可能であることを理解されたい。この結果、表面の特定のパッチが、特定のプラグ流動において又は細流液滴流動の特定の経験において再湿潤を経験しない場合にも、後続のプラグ流動において又は細流液滴流動の後続の経験において再湿潤を経験することができることを保証可能である。更には、表面のあらゆるパッチがドライアウト及び再湿潤を多数回にわたって経験し、良好な洗浄を保証可能である。これは、本明細書の別のところにおいて記述されているように、トリートメント数によって表される。これは、洗浄対象の通路が、恐らくは、最初に、乾燥状態において洗浄プロセスを開始し、且つ、従って、月並みな自明の例として、当然、洗浄が実際に始まった際に、一度、湿潤を経験するという状況とは異なっている。同様に、これは、通路が従来の液体のみの洗浄サイクルの終了時点において能動的にドライアウト状態とされる明白な例とも異なっている。本発明の実施例においては、洗浄されている表面の反復的なドライアウト及び再湿潤が存在可能である。
【0258】
[特定の内視鏡チャネルを通じた流動の弁操作及び方向]
一般的な内視鏡は、制御ハンドル90、アンビリカル端部70、及び遠端100という洗浄プロセスにおいて使用される流体の進入及び排出の3つの可能な領域を具備している。一般に、遠端100は、洗浄の際に使用される流動用の排出口として遠端100が使用される可能性を高める幾何学的な制約を具備可能である。しかしながら、その他の2つの場所、即ち、制御ハンドル90及びアンビリカル端部70における接続地点は、どの接続地点が流動用の入口となるのか、どの接続地点が流動用の出口となるのか、そして、流動を制御するべく弁をどのように使用するのかについての可能性を提供している。
【0259】
一般に、制御ハンドル90又はその近傍にアクセスポイントを具備する内視鏡チャネルの場合には、1つの可能性は、流動を制御ハンドル90において導入するというものである。これが
図16aに示されている。制御ハンドル90内の空気/水シリンダウェル126に流動を導入可能であろう。この流動の進入は、弁V2によって制御可能である。制御ハンドル90内の吸引シリンダウェル103にも流動を導入可能であり、且つ、この流動は、弁V3によって制御可能であろう。流動は、遠端100及びアンビリカル端部70の両方に排出可能である。
【0260】
図16aに示されている構成について継続すれば、アンビリカル端部70には、空気チャネル(124)及び水チャネル(123)のための接続点が更に存在可能である。この接続点(121)を通じた流動は、弁V4によって制御可能である。又、アンビリカル端部70には、吸引チャネルのための接続点も存在可能である。この接続点(101)を通じた流動は、弁V5によって制御可能である。
図16aに示されているように、これらのアンビリカル端部70における流動は、いずれも、排出流動となろう。弁V4及びV5は、いずれも、開放又は閉鎖位置にあってよい。入口弁V2が開放状態にある際に弁V4が開放様態にある場合には、アンビリカルケーブル80内の空気チャネル(124)及び水チャネル(123)を通じた流動が存在することになろう。弁V4が閉鎖されている場合には、対応する入口弁V2が開放状態にある場合にも、流動は存在しないであろう。同様に、入口弁V3が開放状態にある際に弁V5が開放状態にある場合には、アンビリカルケーブル80内の吸引チャネル102を通じた流動が存在することになろう。弁V5が閉鎖されている場合には、対応する入口弁V3が開放状態にある場合にも、流動は存在しないであろう。
【0261】
図示のように、制御ハンドル90又はその近傍から始まって遠端100に延在するが、アンビリカルケーブル80内には存在していないいくつかのチャネルが存在している。これらのチャネルの場合にも、流動は、
図16aに示されているものと同様に、制御ハンドル90又はその近傍における接続によって供給可能であり、且つ、遠端100に向かって前進可能である。生検ポート108を具備する内視鏡の場合には、制御ハンドル90内に又はその近傍に存在可能な生検ポート108に位置した吸引/生検チャネル109に流動を導入可能であり、且つ、この流動は、弁V1によって制御可能であろう。エレベータ/ワイヤチャネル111を具備する内視鏡の場合には、エレベータ/ワイヤポート110において流動を導入可能であり、且つ、この流動は、弁V7によって制御可能である。前方水噴射チャネル142を具備する内視鏡の場合には、図示のように、制御ハンドル90内に(又は、その他の内視鏡モデルの場合には、アンビリカル端部に)存在可能な前方水噴射ポート141において流動を導入可能であろう。この流動は、弁V6によって制御可能である。
【0262】
液体及び気体流動の供給源は、入口弁である弁、即ち、弁V1、V2、V3、V6、及びV7に対して、或いは、その任意のサブセットに対して、適用可能である。図示されているように、遠端100は、弁によって制御されてはいない。流動は、その流動が上流のどこかで供給された任意のチャネルを通じて遠端100から排出可能である。
【0263】
次に、
図16bを参照すれば、アンビリカルケーブル80内に存在するチャネルを通じた流動が
図16aに示されているものとは反対の方向である構成が示されている。流動は、アンビリカル端部70内の空気/水接続121に導入可能であろう。この流動の進入は、弁Vaによって制御可能である。同様に、流動は、アンビリカル端部70内の吸引接続101に導入可能であろう。この流動の進入は、弁Vbによって制御可能であろう。
【0264】
出口弁Vdが開放状態にある場合には、空気チャネル(124)及び水チャネル(123)内の流動は、制御ハンドル90から排出可能である。出口弁Vdが閉鎖状態にある場合には、空気/水チャネル内の流動は、遠端100までずっと継続可能である。同様に、出口弁Veが開放状態にある場合には、吸引チャネル102内の流動は、制御ハンドル90から排出可能である。出口弁Veが閉鎖状態にある場合には、吸引チャネル107内の流動は、遠端100までずっと継続可能である。
【0265】
図示のように、制御ハンドル90又はその近傍から始まって遠端100に延在するが、アンビリカルケーブル80内には存在していないいくつかのチャネルが存在する。このようなチャネルの場合には、流動は、
図16aに示されているものと同様に、制御ハンドル90又はその近傍における接続によって供給可能であり、且つ、遠端100に前進可能である。生検ポート108を具備する内視鏡の場合には、制御ハンドル90の近傍又はその内部に存在可能な生検ポート108に位置した吸引/生検チャネル109に流動を導入可能であり、且つ、この流動は、弁Vcによって制御可能であろう。エレベータ/ワイヤチャネル111を具備する内視鏡の場合には、エレベータ/ワイヤポート110において流動を導入可能であり、且つ、この流動は、弁Vgによって制御可能である。前方水噴射チャネル142を具備する内視鏡の場合には、図示のように、制御ハンドル90内に(又は、その他の内視鏡モデルの場合には、アンビリカル端部に)存在可能な前方水噴射ポート141において流動を導入可能であろう。この流動は、弁Vfによって制御可能である。
【0266】
液体及び気体流動の供給源は、入口弁である弁、即ち、弁Va、Vb、Vc、Vf、及びVgに対して、或いは、その任意のサブセットに対して、適用可能である。図示のように、遠端100は、弁によって制御されてはいない。流動は、その流動が上流のどこかにおいて供給された任意のチャネルを通じて遠端100から排出可能である。
【0267】
更には、流動が、アンビリカルケーブル80内のいくつかのチャネル内において、1つの方向を有し、その他のチャネル内においては、反対の方向を有することも可能であろう。
【0268】
[液体流量のフィードバック制御]
洗浄に好適な条件を実現するなどのいくつかの目的のためには、液体流量と気体流量の間に、望ましい関係が存在可能であろう。更には、気体が一定圧力の供給源などの供給源から供給される場合には、通路を通じた気体流量が時間の関数として変化する可能性もあろう。例えば、洗浄が実現されるのに伴って、汚染物質が通路から除去されることになり、且つ、この汚染物質の除去の結果、通路は、減少した流動抵抗を具備することになろう。そして、この結果、気体供給源によって供給される気体の流量が増大する可能性がある。この現象が発生した場合には、或いは、更に一般的に表現すれば、気体流量がなんらかの理由によって変化した場合には、予め設定された又は一定の液体流量を具備することによっては、特定の時点において実際に発生している気体流量における最適な又は望ましい液体流量の実現を達成することはできないであろう。洗浄サイクルの一部分において気体流量について予め設定されている一定の液体流量は、例えば、流動抵抗が変化した場合には、常に最適な液体流量であるわけではない。
【0269】
従って、本装置は、フィードバック制御ループを包含可能である。このような装置が
図17に示されている。この装置においては、気体は、気体供給源1710から供給可能である。気体供給源1710から供給された気体は、流量計1720を通過可能であり、この流量計は、洗浄されている通路に供給される実際の気体流量を任意の所与の時点において計測する。液体流動は、液体供給システムから供給可能であり、この液体供給システムは、望ましい液体流量を供給するように、流量計1720によって計測された気体流量に応答して制御可能である。この結果、気体流量が変化した場合には、液体流量も変化し、気体流量との望ましい関係を維持可能である。
図17においては、液体供給システムは、濃縮洗浄溶液の供給源から望ましい流量において液体を供給する濃縮洗浄溶液計量ポンプ1732と、水を供給する水計量ポンプ1734と、を有するものとして示されている。次いで、この水と濃縮洗浄溶液は、望ましい洗浄溶液を形成するように、合流部1750において遭遇し、且つ、混合可能である。次いで、望ましい洗浄溶液は、合流部1760において気体流動と合流し、且つ、洗浄対象の通路1780に供給される。図示の装置は、一般には大量に入手可能である水との組合せにおいて、濃縮洗浄溶液の相対的に小さな又は長期間にわたって持続するコンテナの使用を許容しており、この結果、濃縮洗浄溶液のコンテナの頻繁な交換又は再充填が不要である。
【0270】
又、本明細書の別のところに記述されているように、液体及び気体流動を2つの異なる通路に同時に供給する装置が存在可能である。
図18a及び
図18bは、2つの異なる通路の洗浄を同時に実行するためのフィードバックループの使用を示している。
図18a及び
図18bには、いずれも、気体供給源1810が提供されている。
図18a及び
図18bは、一般的な液体供給システム1840を単純に示している。液体供給システム1840は、望ましい状態における洗浄溶液の単純なリザーバであってもよく、或いは、
図17との関連において前述したように、濃縮洗浄溶液を水と混合するシステムであってもよいであろう。個別の流路1880a及び1880bに供給される気体流量を計測するべく、2つの気体流量計1820a及び1820bが提供されている。計測された気体流量は、制御基板1835に報告される。
【0271】
図18aにおいては、制御基板1835は、液体を流路1880aに供給する第1計量ポンプ1830aを動作させ、且つ、更には、液体を流路1880bに供給する第2計量ポンプ1830bをも動作させる。
図18bにおいては、制御基板1835は、その出力が流路1880a及び1880b用の望ましい液体流量の合計である単一の計量ポンプ1830を動作させている。次いで、この合計流量は、流路1880a及び1880bの間において合計流量を適切に分割する比例弁1845に供給されている。
【0272】
当然のことながら、液体流量に応答して気体流量をフィードバック制御するフィードバックシステムを提供することも可能であろう。
【0273】
[液体+気体流動の忠実な分割又は分配を円滑に実行するための構造]
特定のタイプのチャネルが2つの場所においてシリンダウェルから出ていくように、コネクタが内視鏡の制御ハンドル内のシリンダウェル2060に接続可能であることを
図19aにおいて観察可能である。1つの出口は、内視鏡の遠端に向かうものであってよく、且つ、もう1つの出口は、内視鏡のアンビリカル端部に向かうものであってよい。コネクタ/導入装置は、それぞれの方向における流動が到来した流動と略同一の液体/気体比率を具備すると共に気体と液体が過剰に分離しないように、2つの異なる方向において液体+気体流動を供給することが望ましいであろう。気体及び液体がコネクタ内を同時に流れており、且つ、コネクタが方向の変化を伴う場合には、気体は、液体よりも容易に方向の変化を実現する可能性が高く、且つ、液体は、その勢いによって搬送され、その結果、方向の変化の近傍においてその流路の下流の構造に衝撃を与える可能性が高いことを理解されたい。特に、これは、複数の出口が、互いに異なる局所的な構造を有するように設けられている場合には、考慮を要する事項であろう。コネクタは、液体及び気体流動の誤った分配の可能性を極小化する滑らかな幾何学的遷移などの構造を有するように設計可能である。
【0274】
特定の内視鏡チャネルの順方向と同一の内視鏡チャネルの逆方向は、コネクタが流動をチャネルに導入する実質的に類似の局所的構造を具備することも可能であろう。或いは、この代わりに、特定の内視鏡チャネルの順及び逆方向は、異なる局所的構造を具備することも可能であろう。局所的構造がどのようなものであろうとも、特定の設計方式を使用し、両方の方向が流動に対して同時に開放状態にある場合に2つの方向の間において気体流動及び液体流動の忠実な分割を実現することが依然として可能である。又、内視鏡内の特定のチャネルに専用の流路が存在する場合にも、これらの方式は、気体+液体流動の良好な進入を実現可能である。
【0275】
例えば、特に、チャネルの入口の直近においては、方向の鋭い変化を回避するのがよい。チャネルの入口に接近するのに従って、気体の流動及び液体の流動をある距離にわたって実質的に互いに平行な状態にすることができよう。液体の流動及び気体の流動は、液体流動を搬送する1つの管腔と、気体流動を搬送するための別の管腔と、からなる共押出管腔を使用して導入可能である。共押出管腔は、液体を搬送する管腔が中央に位置し、且つ、気体を搬送する管腔が液体搬送管腔を取り囲むなどのように同軸状態にあってもよいであろう。液体は、合流した流体が洗浄対象のチャネルに進入する場所に非常に近接した場所において気体と合流させることができよう。この設計は、任意の必要とされる気体流動の膨張が、気体と液体が互いに遭遇する地点の多少上流において既に発生しているようなものであってよいであろう。
【0276】
[集合的なチャネル接続用の位置固定型コネクタ]
本発明の実施例においては、適切なシリンダとインターフェイスすると共に必要に応じて流動を誘導するコネクタを提供可能である。次に
図19を参照すれば、流動を集合的にチャネルの両方の方向に誘導する能力を有する位置固定型コネクタが示されている。
【0277】
図19aは、制御ハンドル90内のシリンダウェルのある程度の詳細を含む内視鏡を概略的に示している。
【0278】
図19bは、可能な1つの設計を示しており、この場合には、両方の方向においてコネクタ2000Aによって第1チャネルに供給される液体及び気体流動が、ポート2030によってコネクタに導入されている。
【0279】
図19cは、可能な1つの設計を示しており、この場合には、両方の方向にコネクタ2500Aによって第1チャネルに供給される液体及び気体流動は、専用の第1ポートによってコネクタに導入されており、且つ、第2チャネル方向にコネクタによって供給される液体及び気体流動は、専用の第2ポートによってコネクタに導入されている。第1ポートと関連する内部領域は、シーリング材2035により、第2ポートと関連する内部領域から分離されている。シーリング材2035は、Oリングであってよい。図示のように、第1ポート2050aは、第2ポート2050bとは別個に配置されている。或いは、この代わりに、1つのポートがもう1つのポートと同心状になることも可能であろう。
【0280】
[個別のチャネル接続用の位置固定型コネクタ]
次に
図20aを参照すれば、流動を個別にチャネルの2つの方向のいずれかに誘導する能力を有する位置固定型(非アクチュエータ駆動型)コネクタが示されている。これは、いずれもが制御ハンドル内のシリンダウェルに接続している合計で2つの個別の通路を意味している。例えば、シリンダウェル2010は、内視鏡の遠端に向かう第1排出方向及び内視鏡のアンビリカル端部に向かう第2排出方向を具備する吸引チャネルに対して接続可能である。図示のように、2つの入口ポート2020a及び2020bと、これらに対応する導入経路2021a及び2021bと、が存在している。それぞれのポート及び導入経路は、内視鏡内の特定のチャネルの特定の方向と関連付けられている。図示のように、導入経路2021a及び導入経路2021bは、互いに同軸状になっているが、これは、必須ではない。コネクタ2000内には、個別の導入経路の間の又は導入経路と外部の間の分離を画定可能なOリングなどのシーリング材2030が存在可能である。シーリング材は、コネクタ2000がシリンダウェル2010内の定位置にある際には、シリンダウェル2010の対応する内部表面に圧接可能である。図示のように、シリンダウェル2010内の最も深い場所においてシリンダウェル2020aと接続している通路は、内視鏡のアンビリカル端部に向かう方向における吸引チャネルである。アンビリカル端部に向かう方向における吸引チャネルへの流動は、コネクタ2000の中心線上に位置するポート2020aにより、第1導入経路2021aを介して供給されている。内視鏡の遠端に向かう方向における吸引チャネルである第2通路は、シリンダウェル2010内の次の最も深い接続点である。流動は、第1導入経路2021aと同心状ではあるが第1導入経路2021aほどにはシリンダウェル2010内に延在していない第2導入経路2021bにより、遠端に向かう方向において吸引チャネルに供給されている。このコネクタの設計を使用することにより、同時に、又は順次に、或いは、これらの任意の組合せなどの任意の時間的な組合せにおいて、任意のその他の通路とは独立的に、流動を通路の中の任意のものに供給可能である。
【0281】
次に
図20bを参照すれば、2つの異なるチャネルの2つ方向のいずれかに個別に流動を誘導する能力を有する非アクチュエータ駆動型コネクタ2500が示されている。これは、いずれもが制御ハンドル内のシリンダウェルに接続している合計で4つの個別の通路を意味している。例えば、シリンダウェル2060は、遠端の方向において空気チャンネルに、アンビリカル端部の方向において空気チャネルに、遠端の方向において水チャネルに、且つ、アンビリカル端部の方向において水チャネルに接続可能である。図示のように、4つの入口ポート2070a、2070b、2070c、2070dと、これらに対応する導入経路2071a、2071b、2071c、及び2071dと、が存在している。それぞれのポート及び導入経路は、内視鏡内の特定のチャネルの特定の方向と関連付けられている。これらの導入経路の中の少なくともいくつかのものは、別の導入経路と同軸状であってよい。コネクタ2500内には、個別の導入経路の間の又は導入経路と外部の間の離隔を画定可能なOリングなどのシーリング材2080a、2080b、及び2080cが存在可能である。シーリング材は、コネクタ2500がシリンダウェル2060内の定位置にある際に、シリンダウェル2060の対応する内部表面に対して圧接可能である。図示されているように、シリンダウェル2060内の最も深い場所においてシリンダウェル2060と接続している通路は、内視鏡のアンビリカル端部に向かう方向における水チャネル2178である。アンビリカル端部に向かう方向における水チャネルの流動は、コネクタ2500の中心線上に位置するポート2070aにより、第1導入経路2071aを介して供給されている。内視鏡の遠端に向かう方向における水チャネル2176である第2通路は、シリンダウェル2060内における次の最も深い接続点である。流動は、第1導入経路2070aと同心状であるが第1導入経路2071aほどにはシリンダウェル2060内に延在していない第2導入経路2071bを介して、ポート2070bにより、遠端に向かう方向において水チャネルに供給されている。シリンダウェル2060内において次に深いものは、アンビリカル端部の方向における空気チャネル2174の接続点である。これは、第3導入経路2071cによって供給されており、この第3導入経路は、第3ポート2070cによって供給されている。第3導入経路2071cは、その他の導入経路と同心状であってもよく、或いは、そうでなくてもよい。シリンダウェル内への凹入が最も小さい接続点は、内視鏡の遠端の方向における空気チャネル2172である。この通路には、第4ポート2070d及び第4導入経路2071dが流動を導入している。それぞれの導入経路は、その独自の専用の弁(図示されてはいない)によって制御可能である。このコネクタの設計を使用することにより、同時に、又は順次に、或いは、これらの任意の組合せなどの任意の時間的組合せにおいて、その他の通路とは独立的に流動を通路の中の任意のものに対して供給可能である。
【0282】
当然のことながら、コネクタのその他の構造及び設計も可能である。一般的には、定義された方式によって4つのポートを4つの通路に接続すると共にシリンダウェル及びシリンダウェルに接続する通路の構造に対応している任意の接続構造を使用可能である。
【0283】
[アクチュエータを具備したコネクタ]
更には、コネクタは、内視鏡又はこれに類似した医療装置の特定の1つ又は複数のチャネルの流動の経路を確実に開閉又は確立するアクチュエータ2130を有することも可能であろう。これが
図21に示されており、この場合には、4つの可能な位置を具備する作動型のコネクタである。
図21a、
図21b、
図21c、及び
図21dは、それぞれ、アクチュエータのすべての4つの可能な位置を個別に示している。
【0284】
図示されているように、コネクタ2100は、2つのシーリング材2112及び2114を有することが可能であり、流動は、2つのシーリング材2112及び2114の間において供給される。
図21aにおいては、アクチュエータ2130の位置は、シリンダウェル2060の外部に最も近接した通路接続2172に流動が供給されるようなものになっている。図示のように、この通路接続は、遠端の方向における空気チャネルである。
図21bは、次の最も外側の位置に流動が供給される位置にあるアクチュエータを示しており、この位置は、図示されているように、アンビリカル端部の方向における空気チャネルへの通路接続2174である。
図21cは、更にもっと内側に配置された位置に流動が供給される位置にあるアクチュエータを示しており、この位置は、図示されているように、遠端の方向における水チャネルへの通路接続2176である。
図21dは、最も内側の位置に流動が供給される位置にあるアクチュエータを示しており、この位置は、図示のように、アンビリカル端部の方向における水チャネル2178への通路接続である。
【0285】
アクチュエータ2130の位置は、マイクロプロセッサ又は類似の制御システムによって制御可能であり、このマイクロプロセッサ又は類似の制御システムは、自動化された内視鏡再生装置のその他の側面をも動作させることが可能であり、或いは、再生装置のその他のコンポーネントの状態に関する知識を具備することも可能である。
【0286】
同様に、アクチュエータの2つの位置のみを具備する作動型のコネクタを設計することも可能であろう。又、所望のチャネルに対して選択的に接続可能なアクチュエータ駆動型コネクタを設計することも可能であり、これは、恐らくはシーリング材を有する回転可能な部材の回転を伴うことになろう。更には、回転運動及び平行運動の両方を使用するアクチュエータ作動型コネクタを設計することも可能であろう。
【0287】
アクチュエータ駆動型コネクタによれば、特定のシリンダウェルに接続している通路のすべてのものに対して流動を同時に提供することは不可能であろう。その他のものを除外して1つの通路又は通路の群に対して流動を供給し、その後に、その他のものを除外して別の1つの通路又は通路の群に対して流動を供給する必要があろう。
【0288】
[ラッチ]
更には、コネクタは、内視鏡自体の構造を把持して内視鏡との関係においてコネクタの配置を維持、固定、及び補正するラッチを有することも可能であろう。例えば、コネクタの構造は、内視鏡との関係においてコネクタの許容された1つの向きのみが存在するように、内視鏡の構造と相互作用可能であろう。或いは、この代わりに、コネクタは、複数の許容された向きにおいて、又は任意の数の許容された向きにおいて、内視鏡との関係において方向付けされるべく許容されることが望ましいであろう。必要に応じて、この状況を許容するべく、コネクタを適切に設計可能であろう。
【0289】
[導入装置(洗浄の前に付加的な流路長を提供するもの)]
この場合にも、この説明に限定されることを望むものではないが、気体流動及び液体流動が最初にコネクタから又は流動構造又は方向の大きな変化から通路内に導入された際には、最終的に流動形態が確立されるものと考えられ、この流動形態は、その後、更に下流において何回か反復されることになり、且つ、完全に確立された流動形態と表現可能である。但し、これが実現する前に、なんらかのその他の流動形態が存在する入口或いは流動構造又は方向の変化に近接した初期領域が存在可能である。更に下流における完全に確立された状態が洗浄にとって好適である場合にも、初期領域内の状態は、洗浄にとってあまり望ましいものでない可能性があろう。完全に確立された流動などの洗浄用の適切な状態の確立には、それ自体が生じる又は確立するための特定の長さの流路が必要となる可能性がある。従って、内視鏡又は洗浄対象のその他の装置に対するコネクタは、別個に又は単一のポートにおいて2相を導入するための1つ又は複数のポートを有することが可能であり、且つ、洗浄対象の通路のものと同一の又はこれに類似した断面形状を具備すると共に洗浄対象の通路の断面積の(いずれかの方向において)2倍以内の断面積を具備する適切な長さの通路を更に有することができよう。更には、このような導入領域は、洗浄手順の実行の前に少なくとも実質的に清浄な状態において使用されるべく提供可能であろう。この導入装置は、以前の洗浄手順における使用の後に洗浄可能である。その結果、導入領域内の流動状態自体が洗浄にとって最適ではない場合にも、少なくとも導入領域は、洗浄対象の通路内に又はこれを通じて下流に洗い流される可能性のある汚染物質を含むことにはならない。
【0290】
[供給される流動の固有性]
本発明の実施例においては、それが固定型であるか作動型であるかを問わず、これらの前述のコネクタのいずれのものの場合にも、内視鏡内の特定のチャネル又は内視鏡内のチャネルの特定の方向などの特定の通路に既定の流動(液体流量及び気体流量の両方を既定可能である)を供給可能である。特に、任意の所与の時点において1つの通路のみに対して開放接続が存在している場合には、その通路内の液体/気体比率が明確に既知であることが保証される。又、特定の通路に対する流動の供給順序も明確に決定可能である。
【0291】
例えば、空気チャネルなどの所与のチャネルの場合には、流動は、制御ハンドルから内視鏡の遠端に向かってある期間にわたって誘導可能であり、且つ、別の期間においては、制御ハンドルから内視鏡のアンビリカル端部に向かって誘導可能であろう。専用の第1チャネル及び第2チャネルであってよい内視鏡の2つの流体チャネルにコネクタが供給する場合には、ある期間にわたって、コネクタは、第1チャネルの1つの方向に流動を誘導可能であり、且つ、別の期間にわたって、コネクタは、第1チャネルの反対方向において流動を誘導可能であり、且つ、更に別の期間にわたって、コネクタは、第2チャネルの1つの方向において流動を誘導可能であり、且つ、更に別の期間にわたって、コネクタは、第2チャネルの反対の方向において流動を誘導可能であろう。当然のことながら、順序は、任意の方式により、且つ、コネクタの設計に応じて、適合可能であり、これらの動作のいくつかのものをこれらの動作のその他のものと同時に実行することも可能であろう。
【0292】
当然のことながら、特定の方向における特定のチャネルに対して流動を誘導する際には、液体流量、又は気体流量、又はこれらの両方を、その状況に固有の方式により、選択可能であろう。本明細書の別のところに記述されているように、最適な液体流量の選択肢は、特定のチャネルの直径、チャネルの長さ、並びに、恐らくは、その他のパラメータの影響を受ける可能性がある。例えば、制御ハンドルにおけるシリンダウェルからの特定のチャネルの順方向における液体流量は、その同一のチャネルの逆方向における液体流量と同一である必要はない。
【0293】
本明細書に記述されている装置は、それぞれのチャネル内において汚染物質を除去するための細流及び細流断片の最適な流動を生成するように、装置のそれぞれのチャネルごとに液体及び気体流動の別個の状態を許容している。液体流動及び任意のその他の状態は、特定の通路の内部直径、特定の通路の長さ、特定の通路の最大許容可能圧力、及び特定の通路に固有の任意のその他の特徴について固有のものであってよい。実際的な意味においては、(界面活性剤の組成又は濃度を含む)同一の液体を所与の内視鏡内のすべてのチャネルについて使用することが便利であろうが、これに加えて、異なる液体を異なるチャネルに使用することも可能である。
【0294】
装置は、内視鏡の特定のブランド又はモデルに固有のコネクタを具備可能であり、これにより、装置は、洗浄されているものに関する特定量の情報を単にコネクタによって知ることができよう。更には、装置は、バーコード又は類似の識別情報を判読することにより、洗浄されているものに関する情報を判読することも可能であろう。装置は、特定の内視鏡に関する情報を保存することも可能であろう。このような任意の情報を使用し、特定の内視鏡の又は特定の内視鏡の特定の通路の動作条件を選択可能である。
【0295】
内視鏡などの複雑な医療装置は、直径、構造、及び長さが異なる様々な通路を包含可能である。本明細書の別のところにおける記述内容から、望ましい流動入力条件は、内視鏡の様々なチャネルごとに異なってよいことを理解されたい。装置は、それぞれの通路又はチャネル内において汚染物質を除去するための細流及び細流断片などの液状体の最適な流動を生成するように、装置のそれぞれの通路のための液体及び気体流動の別個の条件を提供可能であってよい。
【0296】
一般に、内視鏡の任意のチャネルは、イベントの時間的配列の側面において、その他の内視鏡チャネルのものとは異なる処理順序を経験可能であろう。
【0297】
[その内部にワイヤを具備する通路の洗浄]
前述の装置及び方法を使用し、内部に配置されたワイヤを有する略円筒形の通路を洗浄することも可能である。このような通路は、内視鏡内のエレベータチャネル(エレベータワイヤチャネルとも呼称可能である)であってよい。エレベータワイヤは、内視鏡の先端を操向するべく使用可能である。
【0298】
ワイヤが通路と少なくともそれなりに同心状に配置されている場合には、エレベータチャネルとワイヤは、協働して環状の空間を画定可能である。エレベータワイヤとエレベータワイヤを取り囲むチャネルの間の空間的寸法は、約0.18mmであってよい。当然のことながら、ワイヤがチャネルとの関係において偏心しているか、或いは、場合によっては、チャネルの内部に接触することも可能であろう。このような異なる様々な構成が、エレベータチャネル及びその内部のワイヤの長さに沿って様々な場所に存在可能であろう。この説明に限定されることを望むものではないが、細流液滴流動は、チャネルの内部表面及びワイヤの外部表面の両方に接触するか又はそれに沿って摺動可能であり、且つ、そのような表面の両方を洗浄可能であると考えられる。
【0299】
通常、エレベータチャネルは、内視鏡のその他のチャネルよりも高圧において圧力試験が行われており、従って、エレベータチャネル内においては、例えば、60又は80psigなどの相対的に高い気体圧力を使用可能であろう。
【0300】
[エダクタ及び外部洗浄]
本発明の実施例においては、内視鏡の外部を洗浄するための装置は、エダクタ800を有することが可能であり、エダクタとは、流動増幅装置である。これが
図22aに示されている。エダクタ800は、進入合流領域822を有することが可能であり、これには、少なくとも略一定の内部断面を有することできる本体領域824が後続し、これには、発散又は拡散領域826が後続している。これらの領域822、824、及び826は、いずれも、共通の長手方向にアライメント可能である。これらの領域822、824、及び826は、円筒形であってよい。エダクタ800は、略長手方向においてエダクタ800の内部に排出するノズル830を更に有することができる。加圧された洗浄溶液がポンプによって高速でノズル830を通じて注入されるのに伴って、周囲の液体がメインストリームに流入する/引き入れられる。ポンプによって注入され、且つ、引き込まれた流動の組合せは、ノズル830自体を通じて放出されたストリームの流量を格段に上回る可能性がある。例えば、エダクタ800は、ノズル830を通じてポンプによって注入されるそれぞれの容積について、周囲の液体から最大で3〜5倍の更なる流動容積を引き込むことができる。液体は、再循環ポンプ840によって注入可能であり、このポンプは、ベイスン850から液体を汲み上げており、ベイスン内には、1つ又は複数の内視鏡が収容されている。この増幅効果に起因し、相対的に小さなポンプ840を使用し、内視鏡の外部表面の洗浄のために洗浄溶液の相対的に大きな流量を循環させることができる。図示されているように、ポンプ840は、ベイスン850から流体を汲み上げ、且つ、流体をすべてのエダクタ800のノズル830を通じて戻している。
【0301】
図22aに示されているように、ベイスン850のそれぞれのコーナーに2つずつ、合計で8つのエダクタ800が存在している。単一のエダクタ800は、ベイスン850内にコイル状に配置可能である内視鏡の一部分の単一視角をカバーする強力な流動を生成可能であるに過ぎないことを理解されたい。従って、組合せにおいて、外部表面を洗浄するための効果的な流動パターンを形成するように、それぞれが内視鏡の特定の部分に対向している複数のエダクタ800を使用可能である。
図22aに示されているように、ベイスン850は、4つのコーナーを具備する矩形又は略正方形であってよく、且つ、それぞれのコーナーには、そのコーナーからベイスン850の内部に向けられた2つのエダクタ800が存在可能であり、これらの2つのエダクタ800のそれぞれのものは、わずかに異なる方向に向けられている。当然のことながら、ベイスン850のその他の形状も可能である。
【0302】
本発明者らは、エダクタシステムによって生成される衝突効果と攪拌効果の両方を統合し、内視鏡の外部表面を洗浄するための最良の洗浄結果を実現することが重要であることを見出した。従って、ベイスンは、一般に、2つの内視鏡を収容するための適切な空洞を含む特殊な構造を有するように設計可能である。コーナーに配置されたエダクタと壁上に配置されたエダクタの組合せが存在可能である。エダクタの設計及びベイスンの設計については、例において、更に説明する。
【0303】
内視鏡再生装置は、1つ又は複数の内視鏡が洗浄される際に1つ又は複数の内視鏡の高さよりも上方に配置された噴霧アーム又は噴霧ノズルを更に有することができる。例えば、1つ又は複数の内視鏡の外部表面の洗浄が実行された後には、このような噴霧を使用し、1つ又は複数の内視鏡の外部表面をすすぐことができる。当然のことながら、このような噴霧ノズルを1つ又は複数の内視鏡の外部表面の洗浄の際に使用することも可能である。これらが
図22d及び
図22eに示されている。
【0304】
更には、エダクタは、すべてのエダクタがすべての時間にわたって流動を生成するのではなく、順番又はパターンにおいて、流動を生成させることも可能である。例えば、攪拌を更に生成するように、異なる時点において、いくつかのものがオン状態にあってよく、且つ、いくつかのものがオフ状態にあってよい。例えば、エダクタの動作のパターン及びタイミングは、1つ又は別の方向において、或いは、様々な方向において、順番に渦を生成するようなものであってもよいであろう。又、例えば、すすぎに有用なオーバーヘッド型の噴霧が存在することも可能であろう。
【0305】
[例]
以下の例は、本発明を例示するべく提示されるものであり、従って、その範囲を限定することをなんら意図したものではない。
【0306】
例1〜例7は、流動の水力学的モードを判定し、異なる直径のチューブ用の流量の関数としてこれらのモードをマッピングし、且つ、細流液滴流動を生成する条件を識別する方法を示している。利用されているチューブは、一般的な内視鏡において遭遇するチャネルに相当する直径を有する。
【0307】
[例1]
[流動形態マップを作成する方法]
この方法は、動作パラメータの関数として入口から出口までのチャネルの長さに沿ったいくつかの位置におけるチャネル壁上の流動形態(表面流動体及びその分布)を識別及び定義するべく開発されものである。動作パラメータは、チャネルの直径及び長さ、液体流量、空気圧力、空気の流量及び速度、並びに、界面活性剤のタイプ及び濃度を含む。この方法によれば、様々な内視鏡チャネルポートのための細流液滴流動を識別及び最適化可能である。更には、チャネルの長さに沿った様々な場所における流動形態を使用し、チャネル表面エリア全体の高度な洗浄を実現するのに必要な洗浄サイクルの動作条件を定義した。明らかになるように、流動形態(流体流動要素の集合体)は、チャネルの入口から出口への距離の関数として変化しており、且つ、この結果、それぞれのタイプのチャネルごとに、最適な結果を実現するための異なる処理条件が必要である。本方法は、RDF流動を伴って示されているが、細流の代わりに液体プラグを導入することにより、本方法を使用してDPF及びDPDF流動形態をマッピングすることも可能であることは明らかである。
【0308】
装置:
図23に概略的に示されている装置200によれば、試験において使用される流動状態を制御すると共に静的及び動的条件の両方の下においてすべての動作パラメータを計測するべく、透明な内視鏡チャネルの光学的な検査が可能である。装置200は、圧縮空気の供給源202(Craftsman社、6馬力、150psi、40psiにおいて8.6SCFM、90psiにおいて6.4SCFM、120V/15A)、様々なコネクタ及び弁204及び106、圧力レギュレータ208及び210、流量計212、圧力計214、216、及び218、計量ポンプ220(Fluid Metering Inc.社、QV−0型、0〜144mL/分)、計量ポンプコントローラ222(Fluid Metering社、Stroke Rate Controller、V200型)、様々なスタンド及びクランプ(図示されてはいない)、様々なチューブアダプタ(図示されてはいない)、顕微鏡、デジタルカメラ、フラッシュ、及び様々な照明源を含む撮像システム224(
図12には、個別に示されていないが、以下において識別される)から構成される。
【0309】
圧縮空気の供給減は、6馬力(30ガロンタンク)のCraftsman社製エアコンプレッサ202である。コンプレッサ202は、2つの圧力計を具備し、1つは、タンク圧力用のもの214であり、且つ、もう1つは、調節後のライン圧力用のもの216である。最大タンク圧力は、150psiである。コンプレッサ202は、タンク圧力が110psiに到達した際に作動する。ライン圧力は、試験の大部分において60psiに調節され、唯一の例外は、0.6mm(ID)の「エレベータ−ワイヤチャネル」の水力学的モードを定義するべく使用される高圧試験(80psi)である。調節後の圧縮空気は、長さが15フィートで直径が3/8インチの強化型PVCチューブを介して第2レギュレータに供給されている。第2レギュレータは、それぞれの試験の圧力を調節するべく使用される。次いで、空気は、圧力計218が装着された0〜10SCFMのHedland社製の流量計212に供給される。この圧力計218は、先行する第2レギュレータ210を介して試験圧力を設定すると共に実験の際に動的な圧力を判読するべく使用される。流量計212は、空気を「混合」T字管226に供給しており、ここで、液体がFMI「Q」計量ポンプ220を介して空気流内に計量供給される。計量ポンプ220は、FMIポンプコントローラ222によって制御されている。混合T字管226の出口には、モデル内視鏡チューブの直径230を変化させるためのアダプタ228が接続されている。
【0310】
チャネルの内部における流動モードの画像を取得するべく、本発明者らは、Bausch and Lomb Stereozoom−7顕微鏡(1倍〜7倍)、カメラ−顕微鏡Tマウントアダプタ、Cannon 40DデジタルSLRカメラ、及びCanon 580EX speedliteを使用した。カメラ−顕微鏡アダプタのTマウント端部をカメラに挿し込み、且つ、反対側の端部を双眼顕微鏡の接眼レンズの中の1つのものの代わりに挿入する。フラッシュをカメラフラッシュケーブルからホットシューを介してカメラに装着し、且つ、顕微鏡ステージの下方に取り付けられたミラー/ライトディフューザ内に導波する。ミラー/ディフューザは、1つの面にミラーを、そして、反対側の面にソフトホワイトディフューザを有する両面ディスクである。これは、ステージに向かって導波される光の角度を変更すると共に2つの面の間において切り替えるべく回転可能である。又、顕微鏡は、光がミラー/ディフューザ上に導波されることを許容する後方底部上の開放した丸窓をも具備する。ライブ観察及び合焦のために、Bausch and Lomb社製ライト(カタログ番号31−35−30)を、この丸窓内に挿入してCanon 40Dのライブ観察機能との関連において使用する。ライブ観察機能により、カメラの裏面上の3インチのLCD画面上にリアルタイム画像が表示される。撮影対象のチャネルを顕微鏡ステージ上に配置し、且つ、定位置にテープ止めする。振動を低減するべく任意選択の遠隔操縦を使用し、フルパワーのフラッシュによって1秒の1/250の露光時間で写真を撮影した。特定の試験は、1回の撮影を必要とし、その他の試験は、「バーストモード」における写真の撮影を必要とした。バースモードにおいては、カメラは、等しいインターバルで1秒当たりに5フレームを撮影した。画像は、2GBのコンパクトフラッシュ(登録商標)カード上に保存され、且つ、マルチスロットカード読取機を介してPCに転送された。画像は、Adobe CS3によって(明瞭にするべく)処理され、且つ、1つずつ、22インチのLCDモニタ上において、或いは、カラーレーザープリンタによるカラー印刷を介して、裸眼によって分析された。後者は、様々な条件下においてトリートメント数を分析及び演算するべく使用された。
【0311】
モデル試験:異なる内部直径及び長さを有するテフロン(登録商標)チューブ(McMaster−Carr社)を使用し、流動形態マップを生成した。これらの実験における気体圧力は、第2レギュレータにおいて0〜80psiの望ましい値に設定した。液体流量は、約3mL/分の小流量から、約120mL/分、或いは、必要に応じて更に大きな流量という大流量において変化させた。1)35〜45cm、2)65〜75cm、3)110〜120cm、4)143〜165cm、及び5)チューブの端部近傍の190〜210cmというそれぞれのチューブの長さ(一般に長さは約2メートルである)に沿って入口から計測された略5つの位置において画像を撮影した。それぞれの試験においては、それぞれの位置において、合計で5つ及び9つの流量段階を有する小流量〜大流量の一連の流量において、顕微鏡写真を撮影した。分析のためにそれぞれの位置において20〜30枚の写真を撮影した。
【0312】
画像の分析及びマップの作成:画像の分析は、有力な表面流動体及び水力学的モードを判定するべく流量とチャネル位置のそれぞれの組合せにおけるすべての顕微鏡写真の調査から構成されていた。対象の表面流動体は、細流(直線及び蛇行)、液滴(ランダム)、線形液滴アレイ(LDA)、サブ細流、メイン細流から「指」のように突き出すサブ細流、サブ細流断片、乱流性/発泡性細流、液体薄膜、泡、及びこれらの形態の間のすべての遷移点を含んでいた。これらの液体の形態を使用して様々な流動のモード(流動形態)を表現し、且つ、次いで、選択された空気圧力における様々な液体流量においてチューブの入口からの距離の関数としての有力な流動のモードを示す「マップ」内に、これらのモードを配置した。定性的な特徴を使用して観察された流動形態を定義し、且つ、画像の定量的な分析を使用してトリートメント数を演算した。
【0313】
流動形態をマッピングする際に使用される液体の形態及び水力学的モードの説明:以下に記述された説明ための定義を使用し、液体が細流の流れとしてチャネル内に導入され、且つ、同時に、気体がチューブ内を圧力下において流れるべく許容された際に観察される個別の表面流動体を分類している。これらの用語は、以下に定義される流動形態の分類のための流動要素の一貫性のある定義を提供している。
【0314】
1.細流:通常は、チューブの全体長をカバーし、且つ、通常は、チューブの入口セクションの近傍において相対的に有力である液体の連続した流れ。細流は、その速度、液体組成、及びチューブ表面の微細粗度に応じて、完全に直線的であるか、又は「よじれ」ることも可能である。両方のケースにおいて、細流は、「突出」することも可能であり(蛇行なし)、或いは、横断方向の運動に起因し、チューブ表面を蛇行してチューブの側部又は天井に到達することも可能であろう(「蛇行細流」)。
【0315】
2.液滴:静的であるか又はチューブの表面に沿って運動可能であり、且つ、任意のその他の液体の形態に接続されていない液体の単一の玉。これらの液滴の範囲は、5ミクロン〜50ミクロンであってよい。液滴は、ランダムに分布可能であり、或いは、細流断片のトレーリング端部から分割された線形アレイとして存在することも可能である。
【0316】
3.サブ細流:メイン細流から分割された又は指のように突出した長い連続した液体の筋の形態を有する円筒体。これらは、一般に、メイン細流と比較して格段に細い。サブ細流の寸法は、流動条件及び液体組成に依存し、且つ、100ミクロン〜300ミクロンの範囲であってよい。
【0317】
4.サブ細流断片:サブ細流は、分割された際に、細流断片を生成する。サブ細流は、通常、不安定になり、且つ、線形細流断片アレイ(Linear Rivulet Fragment Array:LRFA)を形成するいくつかの等しい細流断片に分割される。それぞれの断片は、前進及び後退接触角を有する涙形又は錠剤形になる。前進接触角は、通常、大きく(例えば、60度を上回る)、この液体の形態のトレーリングエッジにおける後退接触角は、格段に小さい(例えば、50度未満である)。細流断片のトレーリング端部から、通常、液滴が分割される。これらの液滴は、しばしば、線形液滴アレイ(LDA)を形成する。
【0318】
5.線形液滴アレイ(LDA):通常は、サブ細流断片のトレーリング端部から形成される、チューブ表面上に堆積した小さな(20ミクロン〜200ミクロンの)液滴からなる長いアレイ。
【0319】
6.乱流性/発泡性細流:メイン細流は、しばしば、チューブの端部近傍において、更に混沌とすると共に更に構造化レベルの低い方式によって変化し、且つ、しばしば、個別の分散した気泡又は泡(近接した状態にある複数の分散した気泡)を含む。この細流は、入口の近傍における早期のチューブセクションにおいて、メイン細流と同じほどには蛇行する傾向を有していない。この発泡性モードは、通常、使用される界面活性剤又は界面活性剤混合物に応じて、チューブの断面全体を覆う厚い液体薄膜の形成に結び付く。
【0320】
7.薄膜:通常、気泡又は泡の痕跡を伴うことなしにチューブの全体又はチューブセクションを覆う完全な環状液体薄膜。
【0321】
8.泡:通常はチューブの断面全体に存在する液相において分散した気泡群。
【0322】
「断片」という用語は、初期の細流から導出されるすべての表面流動体を包含し、且つ、液滴、サブ細流、及びサブ細流断片(集合的に円筒体)、並びに、線形液滴アレイ(LDA)を包含するべく使用される。
【0323】
一般化された流動形態:以下の定性的な表現を使用し、実験において観察される有力な流動形態又は「流動モード」を定性的に分類している。これらの一般的な外観は、
図5bの写真及び対応する概略的な図面に付与されている。
【0324】
まばら/乾燥(
図5b−A):液体流量が非常に小さい際に一般的に観察される流動モード。メイン細流は、細く、且つ、分割される傾向を有する(連続的ではない)。いくつかの散在するサブ細流断片及びランダム断片が存在するが、これらの形態は、数が少なく、且つ、ごく希である。
【0325】
単一細流(
図5b−B):液体流量が臨界レベルに到達した際に、メイン細流が形成され、且つ、これは、連続的である。メイン細流は、直線的であるか又はよじれることも可能であり、気体速度に応じて、静的であるか又は蛇行することも可能である。細流は、流量に伴って太くなり、且つ、分割されない。液体のすべてが細流に含まれるため、この流動モードには、その他の形態は存在しない。
【0326】
イジェクションゾーン(
図5b−C):十分に大きな気体速度(チューブの入口からの更なる距離又は相対的に大きな圧力)及び/又は液体流量が実現された際に、サブ細流は、不安定化を開始し、メイン細流から放出又は分割される。このモードは、いくつかのサブ細流断片及びランダム液滴をも含む。
【0327】
細流−液滴−流動(
図5b−D):メイン細流は、存在してもよく、或いは、存在しなくてもよい。サブ細流、サブ細流断片、及び液滴が有力である。サブ細流断片は、線形液滴アレイを離脱する。ランダム液滴も存在する。
【0328】
薄膜/泡(
図5b−E):薄膜及び/又は泡によるチューブの完全な被覆。
【0329】
[例2]
[2.8mmのチャネルにおける流動形態マップ]
この例においては、例1の方法及び装置を使用し、2.8mmのIDと2メートルの長さを有するチューブの流動形態マップを作成した。空気圧力(30psi)、空気流量(約5.0SCFM)、空気温度(21℃−周囲)、及び液体温度(21℃−周囲)という動作条件を利用した。洗浄液体は、SURFYNOL(登録商標)485とAO−455を含んでいた(表5の組成10A)。液体流量の範囲は、0mL/分〜29mL/分の合計9つの流量であり、その間に、7つの流量段階を有していた。この例においては、写真撮影の位置は、45cm、73cm、112cm、146cm、及び196cmであった。それぞれの位置及びそれぞれの液体流量において顕微鏡写真を収集し、且つ、次いで、分析して
図7cに付与されている流動形態マップを作成した。チューブに沿ったそれぞれの位置(入口からの距離)において、液体流量及びチューブに沿った位置の関数として以下の流動モードが観察された。
【0330】
45cmの地点においては、流動モードは、約6.5mL/分までは、まばら/乾燥であり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流流動モードに遷移し、このモードが、29mL/分までの増大した液体流量において継続している。この位置においては、気体速度は、チューブの入口近傍において小さく、従って、細流の不安定性又は断片化を生成するのに不十分である。液体流量が6.5mL/分を上回った段階において出現するこの位置に形成される細流は、水力学的不安定性に起因して多少の蛇行を示す。
【0331】
73cmの地点においては、流動モードは、5mL/分の流量までまばら/乾燥である。液体流量が増大するのに伴って、流動モードは、単一細流モードに遷移する。単一細流流動モードは、約18mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、イジェクションゾーンモードに遷移し、サブ細流がメイン液体細流から分割される。イジェクションゾーンは、29mL/分まで継続する。イジェクションゾーンモードは、メイン細流からのサブ細流の分割に結び付くチューブ壁上における液体の更なる不安定性に起因して生じるものと考えられる。メイン細流は、横断方向の運動に起因して蛇行する傾向を有する。
【0332】
112cmの地点においては、流動モードは、約4.0mL/分の流量までまばら/乾燥であり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流流動に遷移する。単一細流流動は、約17mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、イジェクションゾーンに遷移する。イジェクションゾーンは、23mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。薄膜/泡モードは、29mL/分まで継続する。
【0333】
146cmの地点においては、流動モードは、約3mL/分までまばら/乾燥であり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流流動に遷移する。単一細流流動モードは、12mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、様々な断片及び表面流動体が観察される細流−液滴流動(RDF)に遷移する。RDFモードは、22mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。薄膜/泡モードは、29mL/分まで継続する。
【0334】
196cmの地点においては、流動モードは、2mL/分までまばら/乾燥であり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流流動モードに遷移する。単一細流流動モードは、12.5mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、RDFモードに遷移する。RDFモードは、21mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。薄膜/泡モードは、29mL/分まで継続する。
【0335】
以上のデータは、一定の空気圧力における入口(0cm)から出口(200cm)までのチューブに沿った位置と液体流量の関数としての流動形態マップとして
図7cにプロットされている。このマップは、異なる液体流量においてチューブの長さに沿ったそれぞれの位置において観察される異なる流動モードを定義する便利な表現を提供している。従って、最適なRDF流動を提供するマップ内の領域を識別可能であり、且つ、制御パラメータ(例えば、特定の気体圧力における液体流量)を選択可能である。
【0336】
2.8mmのIDのチューブの場合には、約16〜約22mL/分の液体流量が、チューブの長さの大部分にわたって高度な洗浄を実現する液体流動形態を提供するものと考えられる。例として、19mL/分の液体流量においては、まばら/乾燥モードが極小化され(入口近傍の短いセクションのみに限定される)、イジェクション及びRDFモードの両方が、チューブの出口近傍における薄膜又は泡の形成を伴うことなしに、チューブの長さの大部分をカバーしている。非常に小さな液体流量(0〜10mL/分)においては、流動モードは、まばら/乾燥モード及び単一細流モードによって特徴付けられ、このような状態においては、この場合のわずかな量の表面流動体と小さなトリートメント数に起因し、チューブの表面全体を十分に洗浄することができない。この場合には、処理時間を延長する必要があり、且つ、これは、内視鏡及びその他の医療装置の洗浄においては、非現実的である。一方、非常に大きな液体流量においては、チューブの長さの大部分が薄膜及び泡によって占められることになり、この結果、液体薄膜によって汚染物質が覆われることになり、これは、高度な洗浄を生成しない状態である。従って、単一の液体流量を伴う本方法による洗浄は、洗浄時間が短い場合には、チューブの長さ全体をカバーすることができず、従って、複数の液体流量を使用するか、或いは、DPF又はDPDF形態などの交互に変化する流動形態を利用して、運動する三相接触ラインを有する表面流動体を生成することが必要になるであろうことを理解されたい。これは、洗浄サイクルの一部分又はすべてにわたって、交互に変化する液体プラグ及び気体流動を利用することにより、実現可能である。又、その他の界面活性剤混合物を使用することによっても、界面活性剤の特性に応じて、同一の条件下においてその他の流動マップを生成可能である。
【0337】
例3〜例7においては、例1の方法及び例2の分析手順を利用し、異なる直径のチューブにおける流動形態マップを構築した。
【0338】
[例3]
[1.8mmのチューブにおける流動形態マップ]
使用した条件は、空気圧(30psi)、空気流量(約3.0SCFM)、空気温度(21℃−周囲)、及び液体温度(21℃−周囲)というものであった。試験洗浄液体は、Surfynol 485(0.036%)とAO−455(0.024%)を含んでいた。この例においては、液体流量の範囲は、3.5mL/分〜12.5mL/分という合計で7つの流量であり、その間に5つの流量段階を伴っていた。写真によって調査した位置は、36cm、73cm、112cm、146cm、及び188cmであり、これらは、いずれも、チューブの入口(0cm)から計測したものである。上述の条件において判明した1.8mmのチューブにおけるマップが
図7bに示されている。
【0339】
1.8mmのチャネル(
図7b)における流動マップと2.8mmのチャネルにおける流動マップ(
図7c)は、明らかに異なっている。1.8mmのチューブにおいて観察されるRDF及びイジェクションゾーンは、2.8mmのチューブとの関係において、相対的に小さな液体流量にシフトしており、且つ、チューブの長さの相対的に大きな割合をカバーしている。
【0340】
1.8mmのチューブは、多くの曲がりやすい内視鏡内の空気、水、及び補助チャネルの寸法を代表するものであるため、重要である。流動モードマップ(
図7b)は、6.0〜9.0mL/分の液体流量が、本発明の方法に従って30psiの空気圧力において高度な洗浄を実現するべく許容可能な範囲を提供すると考えられることを示している。この液体の範囲においては、細流、サブ細流、及び断片化がチューブ表面の大部分において生成可能である。この界面活性剤混合物(表5の組成10A)を伴う大きな液体流量は、薄膜/泡流動モードに結び付き、この流動モードは、大きな剥離力を生成する表面流動体の形成を妨げる。
【0341】
[例4]
[4.5mmのチューブにおける流動形態マップ]
試験条件は、空気圧力(30psi)、空気流量(約6.0SCFM)、空気温度(21℃−周囲)、及び液体温度(21℃−周囲)というものであった。洗浄液体は、例2及び例3と同一であった。液体流量の範囲は、13mL/分〜69mL/分という合計で9つの流量であり、その間に、7つの流量段階を伴っていた。顕微鏡写真に使用されたチューブに沿った位置は、28cm、67cm、123cm、162cm、及び196cmであった。以上の条件において判明した4.5mmのチューブにおけるマップが
図7dに示されており、且つ、これは、例2及び例3において説明した相対的に狭い直径のチューブとは大きく異なっている。
【0342】
28cmの地点においては、4.5mmのチューブは、開始からイジェクションモードにあり、且つ、33mL/分においてRDFに遷移している。RDFモードは、62mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。67cmの地点においては、4.5mmのチューブは、60mL/分までRDFにあり、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。123cmの地点においては、4.5mmのチューブは、39mL/分までRDFにあり、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。162cmの地点においては、4.5mmのチューブは、35mL/分までRDFモードにあり、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡流動に遷移する。196cmの地点においては、4.5mmのチューブは、33mL/分までRDFにあり、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。相対的に大きな直径のチューブに起因し、4.5mmのチューブ内の気体速度は、格段に大きく、且つ、イジェクションがチューブ内において相対的に早期に(入口に近接したところに)発生し、且つ、RDFモードの表面流動体が、チューブの相対的に大きな部分にわたって、且つ、相対的に流量の大きな範囲にわたって、維持される。4.5mmのチューブ内においては、更に小さな流量は、まばら/乾燥モードに結び付く。
【0343】
[例5]
[6.0mmのチューブにおける流動形態マップ]
試験条件は、空気圧力(30psi)、空気流量(約8.0SCFM)、空気温度(21℃−周囲)、及び洗浄溶液温度(21℃−周囲)というものであった。この例における試験洗浄液体は、例1と同一のものであった。流量の範囲は、25mL/分〜85mL/分の合計で9つの流量であり、その間に、7つの流量段階を伴っていた。写真撮影の位置は、23cm、56cm、118cm、163cm、及び196cmであった。以上の条件において判明した6mmのチューブにおけるマップが
図7eに示されており、且つ、これは、4.5mmのIDのチューブにおけるマップに質的に類似しているが、例2及び例3において説明した更に狭い直径のチューブのものとは大きく異なっている。
【0344】
23cmの地点においては、単一細流流動モードが約32mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、イジェクション流動モードに遷移する。このモードは、約62mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動は、RDFモードに遷移する。56cmの地点においては、単一細流流動が32mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、RDF流動モードに遷移する。RDFモードは、約80mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードにシフトする。118cmの地点においては、単一細流流動が約32mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、RDF流動に遷移する。RDFモードは、約65mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードにシフトする。163cmにおいては、単一細流流動モードが約32mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、混合RDFモードに遷移する。RDFモードは、62mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードにシフトする。196cmの地点においては、RDFモードは、65mL/分まで観察され、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードにシフトする。このマップは、4.5mmのチューブのマップ(
図7d)によく似ている。但し、これらの前述の条件下において得られる大きな空気流量に起因し、チューブの入口近傍の短いセグメントを除いて、チューブの長さの大部分においてRDFモードを実現可能である。
【0345】
図7b及び7cと
図7d及び7eの比較は、相対的に直径が大きい4.5mm及び6mmのチューブの場合には、チューブの長さの大部分にわたってRDF流動の最適なゾーンを実現することが容易であることを示している。
【0346】
[例6]
[30psiの空気圧力における0.6mmのチューブの場合の流動形態マップ]
試験条件は、空気圧力(30psi)、空気流量(約0.1SCFM)、空気及び洗浄溶液温度(21℃−周囲)というものであった。洗浄液体は、例1と同一であった。液体流量の範囲は、3mL/分〜11.5mL/分という合計で6つの流量であり、その間に、4つの流量段階を伴っていた。写真撮影の位置は、28cm、73cm、118cm、157cm、及び207cmであった。流動マップが
図7aに示されている。
【0347】
28cmの地点においては、単一細流モードが観察され、これが8.5mL/分の液体流量まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移している。73cmの地点においては、流動モードは、単一細流であり、これが10.5mL/分まで継続する。更に大きな流量においては、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。118cmの地点においては、流動モードは、5mL/分までRDFであり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流モードに遷移する。これが10.5mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。157cmの地点においては、流動モードは、単一細流流動である。これは、10.5mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡モードに遷移する。207cmの地点においては、流動モードは、5mL/分までRDFであり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流モードに遷移する。これが9.5mL/分まで継続し、このレベルにおいて、流動モードは、薄膜/泡流動モードに遷移する。
【0348】
この流動モードマップによれば、RDFモードには、低頻度にしか遭遇しておらず、且つ、前述の条件下においては、一般に、RDFモードにアクセス可能ではない。これは、この狭い直径のチューブの大きな水力学的抵抗に起因している。液体断片の形成に結び付く不安定性を誘発するのに、空気速度が不十分である。これらの条件下における細流流動による洗浄は、横断方向の運動に起因した単一細流流動の蛇行にのみ起因している。最適なRDF流動を実現するには、80psiの気体圧力において実行された次の例7に示されているように、相対的に大きな圧力並びに液体及び気体流速が必要である。
【0349】
[例7]
[80psiの空気圧力における0.6mmのチューブの場合の流動形態マップ]
動作条件は、例6のものと同一であったが、空気圧を、この非常に小さな直径の内視鏡チャネル(エレベータワイヤチャネル)の最大定格圧力である80psiに制御した。結果が
図24に付与されている。
【0350】
28cm〜207cmにおいて(即ち、チューブの長さ全体にわたって)、流動モードは、約10.5mL/分まで継続的にRDFであり、このレベルにおいて、流動モードは、単一細流モードに遷移した。この例の結果は、相対的に大きな空気圧力及び空気速度を使用することにより、0.6mmのチャネルの場合にも、洗浄に好適なRDFが結果的に形成されることを実証している。これらの寸法は、曲がりやすい内視鏡のエレベータワイヤチャネルに類似しているため、この例は重要である。
【0351】
例2〜例7は、細流流動による洗浄用の最適なRDF流動形態を生成するために必要とされる流量及び気体圧力の観点における動作条件が、利用されるチューブの直径に強く依存しており、且つ、異なる直径において異なっていることを実証している。あらゆるチャネル直径用の単一のユニバーサルなパラメータの組が存在しないため、内視鏡などの複数チャネル装置の最適な洗浄のためには、例えば、細流流動の場合におけるRDFなどの最適な流動モードを生成するべく、それぞれのチャネルに利用される条件を最適化する必要がある。
【0352】
[例8]
[単一界面活性剤を含む液体洗浄媒体の例]
単一の界面活性剤を含む液体組成を調製し、例1の流動マッピング法によって試験し、且つ、例2〜7に記述されているように異なる直径(IDが0.6mm〜6.0mm)の内視鏡チューブについて流動形態マップを作成した。組成は、表3に要約されている。評価において使用した空気圧力の範囲は、10〜30psiであり、且つ、その他のケースにおいては、30psi超であった。評価において使用した液体流量は、例2〜例7に付与されているものに類似した流動形態/モードマップによって定義される範囲内のものであった。
【0353】
界面活性剤は、前述の種類IIIに属している。すべての実験の結果が、全体的なRDF評点と、全体的な有機質汚物洗浄評点と、により、要約されている。すべての界面活性剤は、すべての異なるチャネルにおいてRDF流動形態を形成すると共に汚物の除去を提供する洗浄媒体を提供した。但し、汚物の除去における有効性は、多少異なっていた。有機質汚物の除去は、例15に記述されている手順によって評価した。
【0355】
[例9]
[不適切な界面活性剤を含む液体洗浄媒体の比較例]
表4に一覧表示されている比較例を調製し、且つ、例8に記述されているものと同一の手順によって試験した。但し、個別の界面活性剤は、種類I(湿潤薄膜を形成するもの)又は種類II(過剰な泡を形成するもの)に属していた。
【0356】
比較例C−Pは、55dynes/cm未満の表面張力を提供しないヒドロトロープ(キシレンスルホン酸塩)SX−40を利用しており、これは、広範な断片化を生成するのに不十分であると考えられる。
【0357】
比較例C−Q及びC−Rは、それぞれ、ひまし油エトキシレート(15EO)であるCO−15とアセチレン系界面活性剤であるSURFYNOL(登録商標)420によって製造され、これらは、いずれも、内視鏡チャネルの表面上に湿潤薄膜を生成した。組成Q及びRの場合には、細流又は液体断片化は、観察されず、RDF形態も観察されなかった。
【0358】
比較例C−S及びC−Tは、それぞれ、アルコールエトキシレートであるTERGITOL(登録商標)TMN−10とラウリル硫酸ナトリウム(SLS)から製造された。これらの界面活性剤は、50mmを上回るRoss−Miles泡高さを具備し、且つ、小流量において、(一般的に)有害な泡の薄膜によってチャネルの断面及び長さの大部分を覆う泡/薄膜形態を生成した。利用された条件においては、RDF形態は観察されなかった。TMN−10などの発泡性界面活性剤は、内視鏡のチャネル又はその他の内腔装置のRDF洗浄に使用するのに適していない。
【0360】
[例10]
[界面活性剤混合物を含む液体洗浄媒体の例]
表5に一覧表示されている例を調製し、且つ、例8及び9に記述されているものと同一の手順によって試験した。以前の例とは対照的に、これらの洗浄組成は、アセチレン系界面活性剤であるSURFYNOL(登録商標)485とアルコキシル化エーテルアミン酸化物であるAO−455という2つの界面活性剤の混合物を含んでいた。すべての組成は、良好に機能し、且つ、いくつかのものが、非常に有効且つ安定したRDF流動形態を提供した。
【0362】
[例11]
[放射性核種法(RNM)によって判定した洗浄性能]
この例は、放射線核種法(RNM)によって評価した洗浄有効性により、一相液体流動と、RDFモードと、による内視鏡チャネルの洗浄を比較している。RNMは、特殊なガンマカメラ(米国のPicker社)を使用してガンマ量子/秒/内視鏡をカウントすることにより、チャネル内の汚染物質の直接的な定量化を提供する。この方法は、内視鏡からの残留汚染物質の回収を必要とせず、且つ、従って、洗浄レベルの正確な判定を提供する。マイクロアルブミン中のTc(99)を有機質汚物と混合し、次いで、これを使用し、この混合物を内視鏡ポートの1つから注入することにより、内視鏡チャネルを汚染させる。異なるチャネルを別個に試験可能である。それぞれの試験においては、洗浄の前後における汚染物質の空間分布を示す画像も取得する。
【0363】
PENTAX(登録商標)内視鏡(モデルEG−2901)を試験し、液体流動洗浄の有効性を判定した。5mLの乾燥羊血液を5mLの食塩水と混合し、次いで、これに10μMの硫酸プロタミンを添加した。望ましい量のマクロアルブミン中のTc−99を前述の溶液と完全に混合させた。Alfa他の汚染方法(American Journal of Infection Control、34(9)、561−570頁、(2006))に従って、6.5mLの混合物を内視鏡のアンビリカル端部に配置されたA/Wポートを介して内視鏡内に注入した。血液が凝固してチャネル壁に付着することができるように、内視鏡を少なくとも一時間にわたって直立状態とした。試験においては、1)汚染の直後、2)洗浄の直前、3)プレ洗浄、洗浄、すすぎ、及び乾燥のそれぞれのステップの後という時点においてガンマカメラ画像を取得した。それぞれの時点において、量子/秒/内視鏡を計測し、洗浄サイクルのそれぞれのセグメントの効果を判定した。通常の手順を使用し、内視鏡又は保持トレーの外部表面上における偶発的な流出から発生する放射能レベルを判定及び低減した。
【0364】
表6の「比較例11」という名称が付与された列に要約されているこの試験においては、初期の量子/秒/内視鏡(q/s/e)の値は、3407であり、この放射能は、7.5mL/分の液体流量における空気/水チャネル(1.4mmのID及び約350cmの長さ)の液体流動洗浄の5分の後に、2603q/s/eに減少した。すすぎ及び乾燥の後に、放射能は、1855q/s/eに更に減少した。この例は、液体流動洗浄が、
図25に付与されているガンマカメラ画像によって支持されているように、A/Wチャネルを効果的に洗浄しないことを実証している。
【0365】
前述の比較例と同一のPENTAX(登録商標)内視鏡を乾燥羊血液によって汚染させ、且つ、前述のように汚した。洗浄の前の初期カウントは、1044q/s/eであった。これが、初期RDFプレ洗浄ステップの後に、321q/s/eに減少した。RDF洗浄及びすすぎの後に、残留汚物レベルは、59q/s/eに更に減少した。流動は、内視鏡の制御ハンドルにおけるA/Wシリンダから注入した。この実験及び結果は、表6の「例11」という名称の列に記述されている。RDF法による洗浄の後の内視鏡内の最終的な残留放射能は、洗浄が液体流動(比較例11)によって実行された際の1855q/s/eと比べて、59q/s/eであった。
【0367】
更なる研究は、例11における残留放射能の相当の部分は、汚染ポートから生じる1つ又は複数のホットスポットに起因することを実証している。
【0368】
液体流動によって洗浄された内視鏡(
図25a)と細流液滴流動を使用する洗浄によって洗浄された内視鏡(
図25b)を比較する高感度画像(
図25)は、本発明の方法によるチャネル表面の非常に効果的な洗浄を実証している。
【0369】
[例12]
[凝固血液によって汚れた空気/水(A/W)チャネルのRDF洗浄]
この一連の試験においては、汚物は、その製法が以下の表7に付与されている凝固した新鮮な羊の血液に基づくものであった。内視鏡の血液汚染は、非常に一般的なものであり、且つ、液体流動法によって洗浄するには、困難な汚物であると考えられる。6.5mLのTc−99アイソトープを含む凝固混合物を内視鏡のアンビリカル端部からA/Wチャネルに注入した。28又は14psiの空気において、且つ、15mL/分又は7.5mL/分の液体流量により、洗浄を実行する6つの試験を実施した。これらの動作条件は、RDF流動形態を付与するべく、前述の流動マッピング法によって選択した。試験洗浄組成は、pHが約10.0の0.05%の非イオン性表面活性剤Tergitol(1倍)に基づいたアルカリ界面活性剤溶液を含んでいた。洗浄溶液と空気を内視鏡(PENTAX(登録商標)EG−3401)の制御ハンドル内に配置されたA/Wシリンダから注入した。
【0370】
表7に要約されている試験1〜6の結果は、空気圧力14〜28psi及び7〜15mL/分の液体流量におけるRDF流動形態が、公開されている報告書(Schrimm他、Zentri.Steril.、2(5)、313〜324頁(1994))に基づいて「清浄」であると見なすことができるレベルに内視鏡内の放射能を低減することができたことを示している。小さなハンドヘルド型の医療装置の場合には、洗浄の後に残留放射能が6量子/秒/装置の範囲にあれば、その装置は、「清浄」であると見なされ、且つ、有機物の数における約10E6(「6 log」)の低減に等しいと推定される。PENTAX(登録商標)(EG−3401)などの大きな内視鏡の場合には、残留q/s/eは、0、6、36、41、75、及び99であった(表7)。内視鏡は公開されているデータにおいて使用されたハンドヘルド型の装置よりも10倍も大きいため、これらのレベルは、RDF法が「清浄」な内視鏡を生成するのに有効であることを示している。RDFは、液体流動のみの洗浄と等価であると仮定されるプレ洗浄後に実現されるレベルと比べて、176〜543q/s/eと推定される洗浄のメリットを提供した。様々な試験におけるRDF洗浄のメリットの違いは、異なるレベルの初期汚染と試験において使用されたその他の様々なパラメータに起因している。
【0372】
[例13]
[3つの圧力における流動の関数としてのバイオバーデンの除去]
この例は、内視鏡チャネル内の流動モードが、容認された回収プロトコルの後の回収可能なバイオバーデン(微生物)を試験することによって判定される洗浄効果に対してどのような影響を付与するのかを実証している。別の目的は、流動形態と、実際の内視鏡チャネルからバイオバーデンを除去する有効性と、に対する空気圧力(速度)及び液体流量の効果を定義するということにあった。
【0373】
この場合には、Alfaによって開発された人工試験汚物(Articical Testing Soil:ATS)を胃腸手技の後の患者の内視鏡に見出されるワーストケース有機質汚物の模擬物質として採用している(米国特許第6,447,990号)。内視鏡洗浄の有効性を試験する詳細な手順については、Alfa他によって公開されている(American Journal of Infection Control、34(9)、561〜570頁、(2006)と、この論文中に引用されている文献)。Alfaの洗浄評価の原理は、ATS汚物中に混合されたグラム陽性、グラム陰性、及び酵母菌からなる代表的な種を含む3種類の有機物を有するカクテルを使用し、十分な容積の多数の接種源(通常は、8 log 10 cfu/mL超)により、内視鏡チャネルを汚染させるステップを含む。長さ及び直径に応じて、それぞれのチャネルは、通常、30〜50mL/チャネルのATS汚物−バイオバーデン混合物を受け入れ、且つ、次いで、内視鏡の再生において使用される推奨慣行をシミュレートするべく、2時間にわたって直立状態とされる。この汚染手順は、特有のものであり、従って、それぞれのチャネルがATS汚物及び有機物によって完全に覆われることを保証するべく特別な技術を必要としている。待機時間の後に、注射器を使用し、既知の容積の空気により、内視鏡チャネルを軽くパージし、過剰な混合物をチャネルから除去する。次いで、評価のために、内視鏡を洗浄装置に移送する。洗浄及びすすぎサイクル(外部洗浄を含む)の終了時に、チャネル内の残留バイオバーデンを特有の高精度なプロトコルに従って回収する。
【0374】
採用した機能性チャネル(吸引及び生検)からのバイオバーデンの回収法は、機能性チャネルには、フラッシング(Flushing)/ブラッシング(Brushing)/フラッシング(Flushing)(F/B/F)プロトコルを使用し、狭いA/Wチャネルには、フラッシング/フラッシング(F/F)を使用するというものである。この検証済みのF/B/Fプロトコルは、まず、殺菌された逆浸透(sRO)水によってチャネルの全体を洗い流し、且つ、このステップの回収された溶液を殺菌ガラス瓶内に定量的に収集することを必要としている。第2ステップは、チャネルの表面全体に到達すると共に定量的に且つ再生可能な方式によって付着有機物を取り除くべく、特定の順序及び操作を使用し、複数回にわたって特別に設計された内視鏡ブラシによってチャネル全体をブラッシングするステップを必要としている。次いで、ブラシの先端を切断し、且つ、同一の収集殺菌ガラス瓶内に配置する。第3のバイオバーデン回収ステップは、sROによってチャネルを更に洗い流して前述のブラッシング動作によって剥離した有機物を除去するステップを伴う。このステップのフラッシング液体を同一の収集ガラス瓶内に追加する。回収された液体の合計容積は、約40mLに維持する。次いで、ガラス瓶の内容物を超音波分解し、ブラシから有機体を取り除くか、或いは、回収された密集したバクテリアを浮遊させる。先程引用したAlfa他によって記述されているように、この回収された流体のアリコートをプレート培養する。連続希釈法を使用し、厳格な微生物学研究室の慣行及び手順に準拠した信頼性の高い結果を生成する。それぞれの試験において、3つの複製を製造する。吸引/生検チャネルから回収されたバイオバーデンをL1と呼称する。このプロトコルを実行するには、内視鏡及びそのチャネル構成に関する詳細な知識が必要である。
【0375】
狭い空気/水(A/W)チャネル(IDが1.0〜2.1mmである)からのバイオバーデンの回収は、通常は、ブラッシングステップを包含しないフラッシング/フラッシング(F/F)プロトコルによって実行される。これらの狭い内視鏡チャネルは、その小さな直径と、内視鏡の複雑な構成と、に起因し、ブラッシングが不可能であり、且つ、この動作を実行可能とする入手可能なブラシも存在しない。しかしながら、F/Fプロトコルは、A/Wチャネルのための優れた回収をもたらすことが検証されている。洗浄及びすすぎサイクルの終了時に、Alfaプロトコルに従って、sRO水を使用し、ダブルフラッシング法により、残留バイオバーデンを回収する。回収された液体を空気及び水チャネルの両方から収集し、且つ、1つの殺菌ガラス瓶内に一緒にプールしておく。約30mLを収集し、且つ、前述の同一の準備及び培養手順を適用する。空気/水チャネルから回収されたバイオバーデンをL2と呼称する。
【0376】
それぞれの試験においては、接種源を、採用したプロトコルに従って培養し、且つ、結果をmL当たりのコロニー形成単位、即ち、単にcfu/mLという単位において表現する。一般には、洗浄の後のチャネルから回収されたバイオバーデンをcfu/mLとして表現する。cfu/mLと、それぞれのチャネルからのmLを単位とした回収された液体の容積と、の積は、合計cfu/チャネルをもたらす。後者の値をcm2を単位とするチャネルの表面面積によって除算すると、cfu/cm2を単位としてバイオバーデン表面密度が表現可能である。チャネルから回収された液体の容積は、チャネルを汚染させるべく使用された接種源の容積と略同一であるため、使用した接種源のlog10 cfu/mLから、回収された溶液のcuf/mLのlog10を減算することにより、log10の除去(低減)係数(RF)を得ることができる。実際のRFに到達するは、汚染された内視鏡(洗浄されていないもの)の正の制御を同時に回収する必要があるため、この計算は、多少概略的なものであろう。しかしながら、多数の試験に伴う本発明者らの経験によれば、RFを推定する2つの方法は、+/−0.5〜1.0 log内において互いに近接している。負の制御は、Alfaプロトコルに従って、それぞれの試験において使用される。
【0377】
この例においては、本発明者らは、Enterococcus faecalis ATCC 29212を使用して内視鏡チャネルの洗浄を評価した。Enterococcus faecalisは、ガラス管内においてビオフィルムを形成することが知られているグラム陽性の日和見病原体である。この種は、内視鏡チャネルに対する強力な付着を有することが知られており、且つ、洗浄有効性を確実に評価するための優れたワーストケース代理有機物であると見なされている。
【0378】
本発明の方法によるバイオバーデンの除去の有効性に対する流動モードの効果を実証するべく、本発明者らは、3つの空気圧力、即ち、10、28、及び55psigを選択した。それぞれの空気圧力において、本発明者らは、3つの液体流量において洗浄有効性を試験した。吸引/生検チャネル(ID=3.7mm、長さ=最大400cm)の洗浄を評価するべく使用した液体流量が表8に示されている。A/W(ID=約1.6mm、長さ=最大400cm)の洗浄有効性を評価するべく使用した液体流量も表8に示されている。この液体流量の範囲は、利用した特定の内視鏡チャネルの流動形態マップを例1〜例7に記述されている方法に従って作成すると共にRDF流動形態を提供する前述の制御パラメータを選択することにより、選択した。この場合に使用されたマップは、2.8mmのチューブにおける例2−
図26bと、1.8mmのチューブにおける例3−
図26aと、に記述されているものである。流動形態がチャネルの長さの大部分にわたって乾燥/まばらであると記述されている場合と、チャネル表面上の表面流動体の量が少ない際には、小液体流量を選択した。3相接触ラインを具備した大量の運動する液状体を伴う強力な細流蛇行及び断片化を有する略最適なRDF形態を表すべく、中程度の液体流量を選択した。流動形態が、多少の泡を有すると共に液状体を形成する機会をほとんど有していない完全な薄膜によってチャネルの表面が覆われる薄膜/泡形態となるように、相対的に大きな液体流量を選択した。
【0379】
表9は、3つの空気圧力における3つの流動モードにおいてバイオバーデン除去を評価するための9つの試験の結果を要約している。それぞれの圧力において、動作条件において得ることができる流動モードを液体流量が決定している。
【0380】
大きな(S/B)チャネルと狭い(A/W)チャネルの例を試験した。使用した洗浄組成は、表5の組成10Aであり、この場合には、この界面活性剤混合物は、適切な動作条件において使用された際に優れたRDFモードを付与することが判明した。内視鏡への空気及び液体の注入は、例16に記述されている順序付け方式Aに従って実行され、この場合に、流動は、本明細書に記述されているサイクルに従って制御ハンドルから注入された。
【0381】
10psigの空気圧力において(表8)、第2試験は、チャネルの大部分が、チャネルの長さ及び表面の大部分を覆う細流、蛇行細流、及び液体断片、並びに、液状体を含むRDFモードの要素によって覆われる略最適な液体流量を表している。第2試験の結果は、それぞれ、6.047及び6.472というRF値を有するS/B(L1)チャネル及びA/W(L2)チャネルの両方からの最良のバイオバーデンの除去を示している。この試験においては、RDF洗浄の後の残留/回収可能有機物は、それぞれ、S/B及びA/Wから、48cfu/cm2及び17cfu/cm2のみであった。これらの条件下において形成される小さな数の表面流動体に起因してトリートメント数が小さい更に小さな液体流量(第1試験)においては、結果は、もっと悪い。表面の大部分が薄膜/泡形態下にあると共に液状体による洗浄が不可能である更に大きな液体流量においても(第3試験)、結果は、第2試験のものと比べて悪い。全体として、洗浄有効性は、特に、S/Bチャネル(L1)におけるRDFモード(表8)の使用の重要性を実証している。OLYMPUS(登録商標)Colonoscope(CF型のQ160Lタイプ)を使用し、特に、非常に長いチャネルにおけるワーストケース状態をシミュレートした。
【0384】
略最適なRDFモードに対応した領域が最良の結果を付与している28psigの空気圧力(表8)においても(第5試験)、同一の傾向が見出される。小液体流量(第4試験)は、小さなトリートメント数を有するまばら/乾燥流動モードに対応しており、且つ、大きな流量は、泡/薄膜形態を生成した(第6試験)。第5試験は、非常に小さな回収可能なcfu/cm2値と大きなRF値によって支持されているように、S/B及びA/Wチャネルの両方における最良の結果に対応している。この場合にも、RDFモードにおける洗浄は、28psigの空気圧力において最良の結果を付与することが実証されており、これらの条件下において、6.0を上回るRF値を実現可能であった。
【0385】
更に大きな空気圧力(55psig)においてさえも、主要な傾向は、RDF及び相対的に大きなトリートメント数を300秒の洗浄において実現可能である際には、更に良好な洗浄が可能であるというものに留まっている。この大きな圧力においては、RDFモードに最適な液体流量は、この圧力において得られる大きな気体速度に起因し、更に大きな値にシフトするものと考えられる。
【0386】
内視鏡チャネルの最適な手動洗浄の場合のRFは、4.32+/−1.03であるとAlfa他は指摘している(Alfa他、American Journal of Infection Control、34(9)、561〜570頁、(2006))。又、産業界では、現場において、内視鏡の手動洗浄のRFを約1〜4であると、或いは、平均で約3.0であると、推定している。これらの手動洗浄の結果は、機能性S/Bチャネルのブラッシング及びA/Wのフラッシングを含む推奨手動洗浄用の以下のプロトコルに基づいている(先程引用したAlfa他の論文に提供されているプトロコル)。10及び28psigの空気圧力においてRDF洗浄によって得られる最適なRF値は、6.047〜6.472であり、これは、Alfa他によって報告されている最良の手動洗浄結果よりも、約2log10だけ、格段に良好である。これらの結果に基づいて、RDF洗浄は、ブラッシングによる手動洗浄よりも格段に良好な結果を提供している。
【0387】
[例14]
[多数の有機物を使用したRDFモードによるバイオバーデンの除去]
この例のために使用された3つの細菌系統は、Enterococcus faecalis ATCC 29212、pseudomonas aeroginosa ATCC 27853、及びCandida albicans ATCC 14053であった。この例は、Alfa他及びその論文中に引用されている文献に記述されている方法及びプロトコルに準拠している。例13に記述されているように、3つの有機物のカクテルを含むATSによって内視鏡チャネルを汚染させた。OLYMPUS(登録商標)Colonoscope(CF型のQ160Lタイプ)を使用し、特に、非常に長いチャネルの場合のワーストケース状態をシミュレートした。S/BチャネルとA/Wチャネルの両方を試験し、且つ、結果が表10に要約されている。洗浄/すすぎサイクルは、例13と同一であった。表5内の組成10Aを洗浄液体として使用した。空気圧力、液体流量、及び注入のポートを含む動作条件は、使用した内視鏡内に存在するチャネルサイズに最適又は略最適なRDFを提供するように、選択した。例2〜例7のものに類似した流動モードマップを使用し、RDFモードを定義すると共に動作条件を選択した。すべての試験を28psigの空気圧力において実行した。
【0388】
S/Bチャネル(L1)に関する10回の独立した試験におけるRF値は、1)Enterococcus faecalisが5.60(±0.82)であり、2)pseudomonas aeroginosaが7.02(±1.38)であり、且つ、3)Candida albicansが5.32(±0.56)というものであった。これらの結果は、Alfa他によるブラッシングによる最良の手動洗浄よりも格段に良好であり、且つ、その他のAERに基づいた液体流動洗浄法に従って洗浄が実行されている(Alfaの論文に引用された)Zuhlsdorfによる公開データよりもはるかに優れている。この例の主要な結論は、RDFモードによる内視鏡チャネルの洗浄は、評価において3つの代表的な有機物を使用した際に、手動によるブラッシング又はその他の方法よりも良好な、信頼性が高く且つ安定した洗浄を実現するということである。
【0389】
同一の内視鏡のA/Wチャネル(L2)の洗浄において得られたRF値は、1)Enterococcus faecalisが5.76(±1.01)であり、2)pseudomonas aeroginosaが6.92(±1.02)であり、且つ、3)Candida albicansが5.82(±0.94)であった。これらの結果は、Alfa他によって公開された最良の手動洗浄値又はZuhlsdorf他による公開データよりも格段に良好である。この例の結果と公開データの比較は、RDFモードが、A/W(L2)のケースにおいて得られたRF値によって支持されているように、その他の方法と比較して、非常に狭いチャネルの洗浄において明らかな利点を提供することを示している。
【0392】
[例15]
[RDF流動形態による内視鏡からの有機質汚物の洗浄]
製薬産業において使用されている1つの洗浄有効性の基準は、機器及び装置の表面からの有機質汚物の除去レベルの計測に基づいている。同一の機器の使用に起因した1つの薬剤から別のものへの汚染の伝播は、FDAによって承認された洗浄プロトコルの遵守を必要とする重大な結果に結び付く可能性がある。これらの原理を適用するために、様々な内視鏡手順において遭遇する患者の汚物をシミュレートするべく、赤色汚物(ISO15883−5付属書R)と黒色汚物(ISO15883−5付属書P)という2つの人工的な汚物を選択した。これらの2つの汚物を使用し、汚物を適用すると共に適用の後にその汚物が少なくとも1時間にわたって乾燥することを許容することにより、内視鏡を汚染させた。
【0393】
試験した市販の内視鏡は、OLYMPUS(登録商標)TJF−160VF duodenoscopeとPENTAX(登録商標)ED−3470 duodenoscopeであった。これらの内視鏡は、洗浄システムにとって最も困難な課題のいくつかを表すべく選択されたものであり、管腔の範囲は、IDが0.8mm〜4.2mmであり、合計長は、3メートルを超過していた。内視鏡の洗浄は、例1に記述されると共に
図23に図式的に示されている装置を使用して実行した。
【0394】
洗浄効果は、洗浄された管腔からの水抽出物を残留全有機炭素(Total Organic Carbon:TOC)及び蛋白質について試験することにより、評価した。以下のプロトコルを利用した。内視鏡の管腔を表10に付与されているレベルにおいて黒色汚物又は赤色汚物によって汚染させた。汚染レベルは、Michelle alfa他によって公開された「Worst−case soiling levels for patient−used flexible endoscopes before and after cleaning」(Amer.J.Infect.Control.、27、392〜401頁、1999年)に含まれている推奨事項に基づくものであった。表に一覧表示されている合計管腔長及び内部直径を使用し、合計表面積を算出した。洗浄試験は、5分の洗浄サイクルと、濾過された水道水による5分のすすぎサイクルと、を含んでいた。
【0396】
すべての試験において、3回の方法標準(ブランク)の設定を実行した。これらのブランクには、残留有機質汚物の抽出の前に、RDF洗浄プロセス(5分)と、蒸留水によるすすぎ(5分)と、を適用した。抽出を脱イオン水を使用して実行し、且つ、検証済みの方法に従って、相対的に大きな管腔寸法(>1.6mm)を有する管腔を管腔ブラシによってブラッシングした。抽出物を清浄なガラス瓶内に収集し、且つ、全有機炭素(TOC)及び蛋白質残留物について分析した。標準的な方法に従って、全有機炭素は、OI Analytical社の全有機炭素(TOC)アナライザ1010型を使用して判定し、蛋白質は、Simadzu社の蛍光分光光度計RF5301型を使用して判定した。動作パラメータは、1)すべての管腔において空気圧力が28psigであり、2)洗浄液体が表5の組成10Aであり、且つ、3)流動モードマップ及び例2〜例7に基づいた液体流量を含んでいた。注射器を使用し、内視鏡の制御ハンドルエリア近傍の生検ポート内に黒色汚物を導入した。黒色汚物を内視鏡のアンビリカル端部に配置された吸引ポート内に導入した。赤色汚物を内視鏡のアンビリカル端部に配置された空気/水チャネルポートに注入した。空気の複数回の注入により、すべての汚物をそれぞれの個別のチャネル内において十分に分散させた。次の表11は、内視鏡管腔から回収された抽出可能な残留物を詳細に示している。
【0398】
この例の結果は、RDF洗浄が、標準的な管腔における一連の課題を代表する2つの市販の内視鏡の吸引/生検チャネル及び空気/水チャネルのための優れた洗浄能力を提供することを実証している。又、RDF法は、OLYMPUS(登録商標)TJF−160VFのエレベータワイヤチャネルのための十分な洗浄能力をも提供した。これらの実験は、RDF法が、内視鏡の試験に推奨されている有機質汚物の高度な除去を実現することを実証した。又、これは、RDFが、有機質汚物洗浄用にAlfa他によって設定された6.2μg/cm2という洗浄基準を満足及び超過可能であることをも確認している。これらの結果は、Alfa他によって報告された液体洗浄法よりも格段に良好である。以上の試験は、ATS汚物を使用して反復され、表11におけるように、類似の結果をもたらしている。
【0399】
[例16]
[内視鏡の洗浄ために流動を順序付けする装置]
この例は、細流−液滴流動(RDF)を適用すると共に再生において廃液を排出するべく使用される2つの流動シーケンスを生成するための装置を示している。以下、2つの流動シーケンスについて説明する。
【0400】
方式A:内視鏡のハンドルポートを通じたRDF洗浄―カスタム製造されたアダプタを使用し、内視鏡の内部チャネルを流体分配マニホルドに接続する。細流−液滴流動は、2つのメイン流路を使用して導入され、i)第1流路は、吸引制御ポートV3及び生検チャネル入口V1に専用であり、ii)第2流路は、RDFを空気−水供給弁V2内に送付する。2つの別個の単一流路は、
図16aに示されているように、前方水噴射ポートV6及びエレベータワイヤチャネルV7に専用である。空気/水チャネルの洗浄を機能強化するべく、洗浄の1つのステップにおいてV4を閉鎖し、これにより、強制的にすべてのRDFを直接的に遠端に向かわせる。
【0401】
方式B:アンビリカル端部に接続されたTPF洗浄―第2流路は、RDFをアンビリカル端部における吸引ポート及び空気/水入口ポートに導入するべく設計されている。RDFは、2つのメイン流路を使用して導入され、i)第1流路は、吸引ポートVb及び生検チャネル入口Vcに専用であり、且つ、ii)第2流路は、流体を空気/水入口Vaに送付する。再生ステップにおける排出流体は、
図16bに示されているように、遠端、空気/水供給弁Vd、及び吸引制御弁Veから排出される。それぞれの洗浄ステップは、生検チャネル入口、空気/水供給弁、及び吸引制御弁内のデッドスペースの洗浄及びすすぎが実行されることを保証するべく、オン及びオフサイクルと関連付けられている。「オン」サイクルにおいては、弁Vc、Vd、及びVeが開放状態にある。「オフ」サイクルにおいては、これらの弁は閉鎖される。洗浄は、Vd及びVeの両方が閉鎖された状態において実行することも可能である。
【0402】
[例17]
[水のトリートメント数の判定]
高速画像の分析は、通常、細流蛇行が存在し、且つ、そのような蛇行は、主には、チューブの入口部分の処理を提供することを明らかにした。サブ細流及びサブ細流断片(様々な円筒体及び液滴)は、特定の瞬間において細流によって覆われていない際にチューブの底部上に観察される。摺動流動体の組は、チューブの底部半体の更なる洗浄を提供する。
サブ細流断片の直径の変動は、通常、30psiの空気圧力において、且つ、一連の液体流量において得られた画像においては、小さいため、式5(下記)を使用し、チューブの上部半体のトリートメント数を定量化可能である。この結果、摺動速度は断片の直径に依存しており、断片の長さに対するその依存性は相対的に弱いため、摺動速度の変動も、大きくはない。これらを総合的に考慮した場合に、式5は、サブ細流断片によるトリートメント数のための形態をとることになる。
NT
rf=2t
cld
avrfU
avrfN
avrf/S (27)
ここで、N
avrfは、画像当たりのサブ細流断片の平均数であり、U
avrfは、断片の平均速度であり、t
clは、洗浄時間(実験が実行された時間)であり、且つ、D
avrfは、観察されている細流断片の平均直径ある。チューブの上部半体のみが検査されるため、S/2がSの代わりに使用されていることから、乗数2が表れており、ここで、Sは、使用されている顕微鏡の下方の拡大される視覚野のチューブセクションの面積である。
【0403】
純粋な水のトリートメント数:この例は、純粋な水の場合における画像分析に基づいてトリートメント数(NT)を算出する方法を示している。2.8mmの直径、200cmの長さを有するチューブを、30psiの空気圧力及び20mL/分の水流量において検査した。チューブの開始点、中間、及び終了点に略対応したチューブの長さに沿った3つの位置において画像を得た。チューブの開始点(28cmの位置)においては、蛇行は存在していなかった。
【0404】
底部細流は、十分な可視状態にあり、且つ、チューブの底部全体を占有していた。蛇行細流は、中間(118cmの位置)において、且つ、終了点(208cmの位置)においては、可視状態にあった。蛇行は、主には、チューブの下部半体にわたって発生している。細流は、チューブの底部中央、左側部、又は右側部内において観察される。
【0405】
水の場合には、サブ細流は、チューブの中間において、8枚の画像中の2枚に存在していた。サブ細流は、チューブの端部においては、8枚の画像のいずれにも存在していなかった。サブ細流断片は、チューブの中間及び端部に存在していた。これらのサブ細流断片は、大部分が約100μmという同一の直径を有しており、その長さは、広い範囲に跨って様々であった。
【0406】
液滴の直径は、サブ細流断片の直径の略半分、即ち、約50ミクロンであった。チューブの中間及び端部の観察エリアにおける画像当たりのサブ細流断片及び液滴の数の平均値が表12に集計されている。
【0408】
2.8mmの直径を有するチューブの場合には、S=0.7cm
2/画像である。式15にこれらの値及びトリートメント時間t
cl=300秒を代入することにより、細流断片及び液滴からもたらされる以下のトリートメント数が得られる。
中間セクション:NT
av=800(6・10
−2U
avrf+10
−2U
avdr) (28)
端部セクション:NT
av=800(6・10
−2U
avrf+10
−2U
avdr) (29)
これは、48.U
avという細流断片におけるNT
avをもたらす。この例における液滴用のNTの項は、非常に小さく、従って、無視可能である。
【0409】
サブ細流断面がその軸に沿って変化しない場合には、サブ細流は、直線的であり、従って、チューブの軸に沿って運動し、洗浄におけるその役割は無視可能である。しかしながら、サブ細流の断面は、画像当たりに約2倍を超過して変化することが判明した。サブ細流内には、弱い蛇行以外に、その形状における大きなよじれは見出されなかった。画像当たりに約4つのよじれ又は蛇行波と、サブ細流内における相対的に幅の広いセクションの存在と、を考慮した場合に、サブ細流によるトリートメントは、次式によって推定可能である。
N
avsub=0.25である際に、d
avsub〜3.4・10
−2cmであり、この結果、次式が得られる。
NT
Sub=800・3・10
−2U
avsub=24U
avsub (30)
【0410】
細流断片(rf)、液滴(dr)、及びサブ細流(sub)におけるNT項の合計は、水における合計トリートメント数をもたらす。これらの項を演算するには、対応する表面流動要素(rf、dr、及びsub)の摺動速度が判明しなければならない。平均速度は、細流断片の場合には、7cm/秒であり、液滴の場合には、4cm/秒であり、そして、サブ細流の場合には、0.7cm/秒であると判明した。適切な表面流動体の摺動速度にこれらの値を代入することにより、この実験において、385という水における全体的なトリートメント数が得られ、即ち、観察されているチャネルは、300秒の洗浄時間内に、385回にわたって清掃されることになる。
【0411】
[例18]
[トリートメント数に対する界面活性剤の影響]
多数の界面活性剤を試験し、サブ細流の形成及びその他の表面流動体への更なる断片化と、トリートメント数と、に対するその影響を評価した。計測法と分析は、例16に記述されているものと類似するものであった。利用した条件は、チューブのIDが2.8mmであり、長さが2mであり、空気圧が30psigであり、液体流量が19.6mL/分であり、且つ、処理時間が300秒というものであった。すべての界面活性剤溶液(液体洗浄媒体)は、メタ珪酸ナトリウム(1.3%)、三燐酸ナトリウム(SPT)(8.7%)、及びピロ燐酸四ナトリウム(2.0%)を含み、且つ、脱イオン水によって調製した。
【0412】
結果が表13に要約されている。式5に従ってトリートメント数を算出するべく使用した表面流動要素の計測摺動速度は、細流断片が7cm/秒であり、液滴が4cm/秒であり、サブ細流が0.7cm/秒である。
【0414】
表13の検討結果は、低HLBを有すると共に不溶性であるタロウアミン2EOエトキシレート(Surfonic T−2)が、環状の薄膜(水に近い又はこれと同一の後退接触角)を形成する傾向を有し、且つ、水に匹敵するトリートメント数を提供することを示している。エトキシル化の程度を5EOに増大させることにより、トリートメント数が多少増大し、エトキシル化を15EOに増大させることにより(Surfonic T−15)、2.5倍のトリートメント数の増大を示す格段に有効な洗浄媒体が得られる。
【0415】
利用する界面活性剤の濃度も、最適な流動形態を生成するその能力を決定する重要なパラメータであることに留意されたい。例えば、この実験で使用したタロウ15EOエトキシレート(Surfonic T−15)は、0.05%であった。但し、濃度が0.1%に増大した際には、その溶液が大量の泡を生成し、且つ、トリートメント数が減少することが見出された。
【0416】
又、表14は、アセチレンエトキシレート(Surfynol 485)とアルコキシル化エーテルアミン酸化物(AO−455)から構成された混合界面活性剤システムが、水よりも4.6倍だけ有効な非常に大きなトリートメント数を提供することを実証している。
【0417】
これらの結果は、本発明の実施例の洗浄方法におけるその性能にとって、前述の表面張力、湿潤、及び発泡要件を満足するための界面活性剤及びその濃度の適切な選択が非常に重要であることを示している。
【0418】
[例19]
[不連続なプラグ液滴流動(DPDF)によるチャネル洗浄]
不連続なプラグ液滴流動という流動形態(DPDF)の洗浄有効性を試験するべく、本発明者らは、例15に記述されているように、黒色汚物によって汚染された2.8mmの直径のテフロン(登録商標)チャネル(2メートル長)を使用して洗浄実験を実行した。汚染の後には、洗浄の前に、24時間にわたってチャネルが乾燥することを許容した。使用した洗浄条件は、28psigの空気、19.6mL/分の液体流量、Surynol485及びAO−455を含む洗浄液体(表5に指定されている組成10A)、及び処理時間300秒というものであり、空気及び液体は、室温において使用した。
【0419】
洗浄手順は、空気を伴うことなしに、2〜3秒にわたって洗浄液体をチャネル内に導入し、且つ、次いで、空気を6秒にわたって導入するというステップに基づくものであった。この洗浄のモードは、まず、入口から出口までのチャネルの周囲全体を清掃する運動するメニスカスを生成するという結果をもたらした。ほとんど同時に、空気の導入により、洗浄液体が、時間の一部分において、チャネルの表面全体をカバーする細流、サブ細流、細流断片、及び液滴を含む表面流動体に変換された。空気パルスのもっと後の方の部分は、チャネル表面の完全な脱湿及び乾燥を結果的にもたらした。チャネルは、次のステップにおいて、運動する接触ラインによる効果的な洗浄を受ける準備が整った状態となる。以上の洗浄ステップを、300秒にわたって、即ち、43回にわたって、反復した。このモードによる洗浄の終了時点において、チャネルを水ですすいだ。
【0420】
次いで、電子顕微鏡法による検査のために、チャネルの開始点、中間、及び終了点においてセクション別に切断した。1000×及び5000×という倍率において、代表的な走査電子顕微鏡写真(SEM)を取得した。SEMの分析は、DPDF流動形態が、RDFモードにおいて使用された空気及び洗浄液体の際と類似した品質の高度な洗浄の実現において有効であることを明らかにした。この洗浄のモードは、チャネルの天井及び底部上における3相接触を伴う表面流動体の相対的に良好な分布を許容する。これは、単独で使用することも可能であり、或いは、その他のRDFモードと組み合わせることにより、チャネル表面のすべての部分における高トリートメント数の実現を保証することも可能である。又、高速画像は、DPDFによる洗浄の際に、特にチャネルの入口部分と出口部分の両方のチャネル表面が、表面流動体による相対的に効果的な処理と、相対的に均一なカバレージと、をも受けることを示した。この例の結果は、チャネル表面の周期的な脱湿及び乾燥により、本発明による表面流動体による洗浄を妨げることが判明したチャネル表面に対する液体薄膜形成の悪影響が防止されることを支持している。液体を導入するための期間、液体流量、空気圧力、空気持続時間、及び界面活性剤タイプの選択肢は、効果的な洗浄を実現するように選択することを要する。又、この洗浄モードは、表面の更に均一なカバレージを提供すると共に、特に、底部セクションと入口及び出口セクションの両方などのチャネルのいくつかの部分における低トリートメント数の発生を極小化するため、内視鏡のすすぎ及びプレ洗浄の際にも有効である。
【0421】
[例20]
[本発明による内視鏡洗浄の制御パラメータ]
表14〜表16は、現在入手可能な大部分の内視鏡のチャネルを洗浄する最適なRDF流動形態を生成するための様々な圧力における推奨液体及び気体流量を提供している。使用した洗浄液体は、0.036%のSurfynol−485Wと0.024%のAO−455を含むものであった。
【0425】
[例21]
[ベイスンの2つの側部にエダクタを有するエダクタシステム及びベイスン設計]
エダクタシステムの設計の有効性を調査するべく、24インチの長さ×24インチの幅×12インチの深さという寸法の単純なプラスチックコンテナを使用して実験を実施し、様々なノズルサイズ(0.125インチ〜0.375インチ)を具備するエダクタの効率を試験した。エダクタは、
図22bに示されているように、ベイスンの2つの側部に取り付けた。この予備エダクタシステムを1/3馬力のポンプ840によって駆動し、且つ、循環システム中の2つの手動ボール弁によって制御した。これらの初期試験の結果は、0.25インチのノズル直径を有するエダクタが、内視鏡の外部表面を洗浄するのに最も有効なサイズであることを示した。それぞれのエダクタは、最大で駆動ポンプ840からの3.5ガロン/分(gpm)の洗浄溶液を供給し、且つ、最大で12.7gpmの更なる流動を周囲の液体から引き込み、これにより、略16.2gpmの合計流量を生成し、これが内視鏡表面に衝突した。
【0426】
[例22]
[ベイスンのコーナーにエダクタを有するエダクタシステム及びベイスン設計]
2つの内視鏡を洗浄するケースを綿密にシミュレートするという目的の下に、実験用のベイスンを設計及び構築し、ベイスンのコーナーに配置された複数のエダクタによって生成される流動パターン及び流体力学を試験した。これが
図22cに示されている。ベイスンは、1つに接着されたアクリルプレートから構築され、且つ、その寸法は、幅30インチ×深さ28インチ×高さ6インチであった。内部のスロープを底部プレートに追加することにより、内視鏡の完全な浸漬を実現しつつ、洗浄及び消毒に必要とされる合計容積を低減させた。2つのエダクタをベイスンのそれぞれのコーナーに設置し、且つ、それぞれのエダクタを、ベイスン内において生成された流動に対する様々な組合せの効果を試験するべく、手動ボール弁と接続した。このエダクタシステムを1/3馬力のポンプと接続し、約15〜20psigの供給源圧力において洗浄液を循環させた。この設計において、本発明者らは、エダクタが洗浄溶液レベルの下方約0.5インチに配置された際に、且つ、特に、それぞれのコーナーに1つずつ配設された3つ又は4つのエダクタが同時に作動した際に、内視鏡の大部分の外部表面を覆う非常に強力な流動パターンを観察した。この実験における洗浄液体のレベルは、ベイスンの底部から約3インチ〜4インチであった。この設定によれば、強力な摩擦と攪拌がベイスンの底部近傍の空間内に生成されることが判明した一方で、前述の上方の噴霧設計は、ベイスンに対向する内視鏡表面に到達することができなかった。内視鏡を洗浄するための好適な構成は、2つのエダクタが前面のそれぞれのコーナーに設置され(ベイスンの前面に合計4つ)、且つ、ベイスンの背面のそれぞれのコーナーに1つずつ設置された(ベイスンの底部に合計2つ)際に、見出された。ベイスンのそれぞれのコーナーに2つのエダクタを具備することも可能である。
【0427】
[例23]
[エダクタによって運動する流体中に空気を流入させるためのエダクタシステム及びベイスン設計]
本発明者らは、エダクタ800内に引き込まれた流入液体の一部が、気泡などの形態を有する空気を有する場合には、内視鏡の外部表面に衝撃を与える衝突力及び攪拌力によって洗浄プロセスを更に強化可能であることをも発見した。これは、例えば、液体に加えて、多少の空気をエダクタ800内に引き込むことができるように、エダクタ800をベイスン850内の液体の表面のレベル近傍に配置することにより、実現可能である。これが
図22dに示されている。
【0428】
これを実現する別の方法は、
図22eに示されている設計を必要とする。
図13dに示されているものに似たこの設計は、ベイスン装置の上部空間からエダクタ800の吸引領域822又は混合領域824に空気を供給するのに好適な空気吸入チューブ862を更に含む。これにより、エダクタ800を離脱する流体は、気泡と液体を包含可能である。
【0429】
[例24]
[アルコール−水溶液を使用するRDF洗浄]
アルコールと水の溶液である液体を使用し、細流液滴流動を使用した洗浄の実行を試みた。一般に、アルコール−水溶液の組成を調節して望ましい表面張力を実現することは容易であり、且つ、当然のことながら、アルコールは、単純な既製の化合物である。エタノールを使用し、且つ、更には、メタノール、n−ブタノール、及びt−ブタノールを使用し、実験を実施した。これらの溶液の表面張力を、その他の界面活性剤組成の場合に望ましい値であることが判明している約40dynes/cmの値に調節した。これらのアルコール−水溶液は、いずれも、明らかに、残存する液体薄膜と、完全な乾燥状態にならない表面と、に起因し、良好な洗浄を生成しなかった。
【0430】
[例25]
[相対的に大きな粘度の液体を使用するRDF洗浄]
実験を実施し、水の粘度よりも大きな粘度を具備する液体を使用する洗浄を調査した。液体は、0.05重量%のポリビニルピロリドン(増粘剤)を含む水の溶液であった。このような液体は、乾燥した表面の実現を防止すると共に、望ましい表面流動体の形成の大幅な減少に結び付く薄膜の形成を結果的にもたらすことが判明した。従って、これは、液体の表面張力が望ましい範囲にある場合にも、洗浄に望ましいものではなかった。液体は、純粋な水の粘度程度の粘度を具備することが望ましいと考えられる。
【0431】
多くのアプリケーションにおいては、通路は、均一な円形断面(円形)を具備し、この場合には、「平均」直径は、チャネルの実際の物理的な内部直径である。しかしながら、前述の方法は、断面が円形ではなく、且つ、均一な直径を有してもいない通路に対しても使用可能であり、即ち、通路は、よじれ、制限、湾曲などを具備可能である。
【0432】
本明細書においては、洗浄対象の通路が、主には、水平の向きにあると記述している。但し、一般的に、向きの組合せを含む任意の向きが可能である。例えば、通路は、垂直であってもよく、或いは、斜めであってもよく(流動は、上向き又は下向きのいずれか)、又はこれらの任意の組合せであってもよく、或いは、その他の向きであってもよいであろう。例えば、気管支鏡は、垂直の向きにおいて洗浄可能であろう。
【0433】
更には、前述の細流液滴流動は、洗浄ステップとして本明細書に記述されている実際のステップではないプロセスにおいて実行することも可能である。例えば、すすぎは、全体的な洗浄サイクルの特定の段階において実行可能であり、且つ、すすぎは、部分的又は全体的に細流液滴流動を使用して実行可能であろう。同様に、チャネルからの微細な汚染物質の除去を目的としたプレ洗浄と呼ばれるステップも存在する。このステップも、部分的又は全体的に細流液滴流動を使用して実行可能であろう。これらのステップの第一義的な目的ではない場合にも、これらのステップにおいてなんらかの洗浄を実現可能であろう。一般に、洗浄は、メイン洗浄ステップ以外のステップにおいても実現可能であろう。プレ洗浄ステップは、界面活性剤の使用を伴うことが可能であり、この界面活性剤は、プロセスの任意のその他のステップにおいて使用される同一の界面活性剤組成であってもよく、或いは、そうでなくてもよいであろう。これらのステップの中の任意のものにおける細流液滴流動の使用は、安定状態で供給される流体流動を伴う細流液滴流動であるか、或いは、液体又は気体又はこれらの両方の不安定(時変)状態で供給される流動を伴う細流流動であってよいであろう。例えば、細流液滴流動が、通路を流れるアルコール又はアルコール−水を伴うステップ(すすぎ又は乾燥ステップ)において使用される場合には、相対的に少ないアルコールを使用し、依然として、望ましい目的を実現可能であろう。
【0434】
前述のように、その断面形状が円形以外である、或いは、場合によっては、環状である通路を洗浄することも更に可能である。例えば、前述の方法及び装置によって洗浄可能な通路の断面形状は、楕円及び矩形を含み、且つ、更には、円形チャネル内における前述の円形ワイヤ以外のその他の共存形状の組合せをも含む。通路の構造を具備していないものの洗浄は、それを通路内に収容することにより、或いは、その物品と別のものが協働して通路を形成するようにその物品に隣接して別のものを配置することにより、前述の方法又は装置を使用して洗浄可能であろう。
【0435】
洗浄方法については、6mm以下のレベルの内部直径を具備した通路について開示したが、本方法の有用性は、このような相対的に小さな通路に限定されるものではない。本方法は、少なくとも数センチメートル又は数インチのレベルの内部直径を具備する通路に対しても同様に適用可能であると考えられる。このような拡張の際に有用なスケーリングパラメータは、本明細書の別のところに記述されている周囲長によって正規化された液体流量であろうと考えられる。前述の方法又は装置は、微細流体物品の洗浄などのように、検討したものよりも直径が小さい通路に対して使用することも可能であろう。
【0436】
更には、前述の方法又は装置は、その他の産業用又は家庭内の洗浄に使用することも可能であろう。液状体は、画定された通路が存在しない状態においても、気体を運動させることによって運動させることが可能であり、且つ、本明細書の別のところに記述されているように、反復するドライアウト及び再湿潤を実現するように、動作を順序付けることができよう。
【0437】
運動する液状体と遭遇する乾燥した表面の存在は、洗浄に寄与するものと考えられ、且つ、本発明の実施例の装置及び方法は、運動する液状体との遭遇の合間に乾燥状態の表面を生成すると共にこれを保証するべく、構成可能であることに再度言及しておく。乾燥は、流動気体中への液体の蒸発により、又は表面の疎水性により、又はこれらの任意の組合せにより、実現可能である。プラグ動作モードにおいては、気体流動は、液体プラグの間において、蒸発などの脱湿を実現するのに十分な持続時間にわたって、継続可能である。対照的に、伝統的な2相の液体−気体流動の多くは、液状体との遭遇の合間に壁の乾燥を絶対に実現しないことを理解されたい。
【0438】
本明細書の記述の大部分は、水平の向きを具備した通路の洗浄に関するものであったが、本方法及び装置の適用可能性は、これに限定されるものではない。本明細書に記述された方法及び装置を使用し、水平の向き、垂直の向き、斜めの向き、又はこれらの向きの任意のものの任意の組合せを具備した通路を洗浄可能であろう。通路の異なる部分は、異なる向きを具備可能であろう。前述のように、細流及びその他の液状体の運動のための駆動力は、気体の運動であった。しかしながら、駆動力は、重力であってもよく、或いは、重力と気体流動の組合せであってもよいであろう。
【0439】
一般的に多少上昇した温度において洗浄プロセスを実行することにより、洗浄の有効性が改善されるものと考えられる。本明細書の別のところに記述されている液体の予熱及び気体の予熱の提供は、この理由によるものである。
【0440】
本明細書に報告されている実験データの大部分は、相対的に疎水性の材料であるポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))から製造された通路を使用して採取されたものである。しかしながら、装置及び方法は、恐らくは、液体の組成の調節を伴って、その他の材料から製造された通路を洗浄するべく使用することも可能であろう。
【0441】
洗浄サイクルにおいて経験したパラメータを記録可能である。このような情報は、任意の形態のコンピュータメモリ内に保存可能であり、或いは、保存装置上に書き込み可能である。本装置は、ディスプレイ、キーボード、バーコード判読機、及びデータ転送コネクタを包含可能な装置を有するように設計されたユーザーインターフェイス機能を有することが可能であり、これにより、操作者は、プロセスパラメータを選択及び設定し、且つ、異なるタイプの内視鏡を再生するべく洗浄結果を文書化可能である。
【0442】
前述のように、本発明の実施例は、水平、又は垂直、又は傾斜した向き、又はこれらの組合せなどの通路の任意の向きにおいて使用可能である。液状体によって清掃される前の乾燥状態の又は実質的に乾燥状態の通路の内部表面の実現は、蒸発により、又は表面の本質的な疎水性により、又は表面の疎水性を増大させる液体中における界面活性剤添加物の使用を通じて、又はこれらの任意の組合せにより、実現可能である。液体のプラグとして通路に進入する液体の流動は、通路の通過の際に終始その構造を正確に維持することは不可能であるが、通路の通過の際に多少の不規則性を生成するプラグは、汚染物質を除去するべく依然として通路の内部表面を清掃可能であるため、これは、許容可能であり、且つ、プラグがその他の液状体に分割される場合にも、元のままのプラグによるものよりも更に強力な清掃が存在可能であることを理解されたい。プラグ流動は、本明細書の別のところに記述されているように、不連続なプラグ流動(DPF)及び不連続なプラグ液滴流動(DPDF)を意味可能である。ある期間にわたって液体を供給した後に、ある期間にわたって気体を供給することによって実現可能なプラグ流動においては、プラグは、通路の入口に供給された気体の全体的な最大圧力の下において、相当に大きな速度に、即ち、摺動液状体の速度よりも大きな速度に、加速可能であろう。例えば、プラグが、通路の全体長の10%などの小さな割合のみを占有する場合には、プラグは、本明細書の別のところに記述されているように、同一の駆動圧力差において、通路の全体長を充填する液体の速度よりも格段に大きな速度に到達可能である。これは、相応して、通路の壁における相対的に大きな粘性せん断を生成可能である。これは、通路の全体長の10%などの小さな割合の組合せ合計長を具備するいくつかのそのようなプラグが存在する場合にも当て嵌まる。流動形態は、細流液滴流動、プラグ流動、又は蛇行細流流動、又は更にその他の流動形態であってよい。すすぎの際の液体及び気体を伴う細流液滴流動又はプラグ流動又はその他の流動形態の使用は、水の流動のみによって提供可能なものと同じすすぎ効果を生成可能であると考えられ、且つ、これにより、すすぎステップにおいて、多少の追加の洗浄効果が発生するものと更に考えられる。洗浄/再生サイクルにおける全体的なトリートメント数は、プレ洗浄、洗浄、洗浄後のすすぎ、及び消毒後のすすぎにおける前述の流動形態(RDF、DPF、DPDF)の適用から生成されるトリートメント数成分の合計であることを理解されたい。又、前述の流動形態による水のみによるすすぎは、全体的な洗浄サイクルの一部分として見なすことができると考えられる。
【0443】
不安定流動は、周期的な(定義されたパターンにおいて反復する)方式により、或いは、非周期的な方式、即ち、相対的に不規則に時間に伴って変化する方式により、提供可能である。周期的なパターンは、例えば、少なくとも10回の反復周期を有することができよう。一般に、様々な目的のために、液体供給の任意の時間的なパターン(オン/オフ、又は脈動、又は更に漸進的な変動)を気体供給の任意の時間的なパターン(オン/オフ、又は脈動、又は更に漸進的な変動)と組み合わせることができよう。2つの通路又は2つの内視鏡が同時に洗浄されている場合には、1つの通路又は内視鏡内のステップは、一般に、もう1つの通路又は内視鏡内のステップとの間の任意の時間的関係において、実行可能である。質量流束は、質量流動/単位断面流動面積/単位時間である。内視鏡の外部表面を洗浄するためのエダクタの使用の際には、特定のエダクタを動作させる任意の時間的順序を具備可能である。これは、異なる時点においてベイスン内の液体の異なる流動パターンを提供可能である。
【0444】
本発明の一実施例は、内視鏡内において有機質汚物と相互作用してチャネルからのその効果的な除去を結果的にもたらす細流液滴流動並びに関連する3相接触ライン及びメニスカスの特別な能力と関係している。これらの特別な能力は、RDF、PDF、及びDPDFにおいて生成される3相接触ライン及びメニスカスと有機質汚物の相互作用に起因したものであろう。(チャネル長さと比べて)短いプラグの場合に気体流動及びその関連する3相接触ライン及びメニスカスによって生成される相対的に大きなプラグ速度は、液状体洗浄と比べて、容積の大きな汚物片(例えば、内視鏡チャネル内の沈殿物)を取り除いて除去する際に特に有効であることが判明した。
【0445】
本装置は、望ましい向きにおいて内視鏡又はその他の内腔医療装置を保持するためのトレー又はその他の類似の装置を有することができる。
【0446】
本明細書に記述されている方法及び装置による洗浄は、実際に、ブラシなどによる内視鏡の手作業による洗浄よりも良好な結果と、恐らくは、一貫性のある結果と、を提供可能であることが判明した。
【0447】
引用されたすべての参考文献は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0448】
実施例と例が付与されているが、変更は可能であり、且つ、範囲は、添付の請求の範囲によってのみ限定されることが望ましい。