【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(画像処理を用いた薬剤分包機用計測モジュールおよびカートリッジの開発)」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カセットは可動式の蓋部を有し、前記蓋部を外方に移動させて隙間を形成した状態で、前記カセットの胴体部を回転させることにより、前記カセットに内蔵された前記薬剤を外部に放出させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤分包装置。
前記薬剤供給部から投下された前記薬剤は、前記薬剤分包装置の他の部位に接触すること無く、前記分包部に配置された前記薬剤袋に収納されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の薬剤分包装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、微細な粉末状の散剤と呼ばれる薬剤は、所定量毎に薬剤袋に詰められた状態で提供されている。例えば、この種の薬剤は「朝」、「昼」、「夕」、「寝る前」などの服用時期毎に個別に分包されている。
【0003】
図8を参照して、従来から行われている一般的な分包方法を説明する。
図8(A)は一般的な分包方法を説明するフローチャートであり、
図8(B)は具体的な計測方法を示す図である。
【0004】
図8(A)を参照して、先ず、薬剤師が、レセプト(処方箋)の内容を参照して、分包する薬剤と分包数を確認する(ステップS101)。具体的には、このレセプトの内容に従い、薬剤師が、薬剤ビン等の容器から薬剤師が所定量の役剤と取り出し、必要分を計測する。例えば、一包1gで毎食後3日分の薬剤が必要とされたら、薬剤ビンから9gの薬剤を外部に取り出す(ステップS102)。この後、計測された所定量の薬剤を、自動分包機に投入する(ステップS103)。ここまでが、薬剤師により手動で行われる行程である。
【0005】
自動梱包機では、先ず、供給された所定量の薬剤104を円盤102の上面に均等に散布する(ステップS104、
図8(B)参照)。具体的には、所定の回転速度で回転する円盤102の上面中心部付近に薬剤104を供給することにより、円盤102の上面に略均一に薬剤104を散布する。更に、分包数に合わせて中心角を算出し、この角度により円盤102の上面を小領域に分け、この小領域毎に円盤102の上面から薬剤104を掻き出し、一包分を取り出す。
図8(B)では、点線で示される小領域に分割される。一例として、円盤102の上面に分散された薬剤104を9(朝昼晩毎食×3日)に分割するのであれば、中心角が40度の扇形の小領域から、各包に収納されるべき薬剤が採取される。
【0006】
薬剤の梱包が終了した後は、自動分包機に残留した薬剤を除去するためのクリーニングを行う(ステップS105)。具体的には、自動分包機の薬剤投入口から内部にホウ酸を投入し、このホウ酸を外部に放出させることで、内部に残留した薬剤をホウ酸に付着させて外部に取り出す。また、このクリーニングが不十分な場合は、装置に内蔵された掃除機で残留薬剤を吸引して排除する。
【0007】
上記した作業(ステップS101からステップS105)は、必要とされる薬剤の種類の数だけ繰り返される。
【0008】
上記ステップが終了した後に、採取された薬剤は個別に薬剤袋に梱包され、患者に提供される(ステップS106)。
【0009】
また、以下の特許文献1−特許文献3に記載された自動分包機も、一般的なものとして知られている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
図1から
図4を参照して、本発明の実施の形態にかかる薬剤分包装置10を説明する。
【0022】
先ず
図1を参照して、薬剤分包装置10の構成を説明する。
図1(A)は薬剤分包装置10の主要部分を示す図であり、
図1(B)は薬剤分包装置10の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1(A)および
図1(B)を参照して、薬剤分包装置10は、分包さえるべき薬剤が収納されるカートリッジ12(薬剤供給部)と、カートリッジ12から排出される薬剤32の薬剤量および薬剤種を計測するカメラ22(計測手段)と、所定量の薬剤32が投入された薬剤袋34を包装する包装部18と、包装された薬剤袋34に印字する印字部20と、薬剤分包装置10の本体16に含まれる各部の動作を制御する制御部14と、本体16に対して所定の情報(薬剤量・薬剤種等)を入力するためのコンピュータ24とを主要に備えている。
【0024】
この様な構成を有する薬剤分包装置10の基本的な機能は、薬剤師が選択した種類の薬品を所定の分量ごとに、薬剤袋34に分包することにある。本形態で取り扱われる薬剤32としては、散剤または顆粒剤が採用される。散剤とは、医薬品を粒状にしたものでおおむね粒径355〜1400μmのもので、有効成分をそのままもしくは賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤を混和して均質とした後、粒状とし粒子をそろえたものである。また、散剤とは、有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤を加えて粉末または微粒状に製したもので、おおむね粒径500μm以下のものである。
【0025】
先ず、本形態の薬剤分包装置10は、本体16と、この本体を制御するコンピュータ24とから構成されている。本体16は、薬剤の供給から包装に到るまでの実質的な作業を担う部位であり、コンピュータ24はこの作業に必要な情報(例えば分包数や分包量)に関する指示を本体16に対して与える。ここで、コンピュータ24の機能が本体16に取り込まれたら、コンピュータ24を排除して全体が構成される。
【0026】
本体16は、カートリッジ12と、カメラ22と、制御部14と、包装部18と、印字部20とから構成されており、所定の種類が所定量分包された薬剤袋34が供給される。
【0027】
カートリッジ12は、所定の種類の薬剤を収納すると共に、収納された薬剤を所定量下部から下方に吐出する役割を有する(
図1(A)参照)。カートリッジ12の形状は、側面視で下方に頂部を有する5角形形状を呈する筐体形状であり、下部にドラム28が回転可能な状態で収納されている。本形態では、1つのカートリッジ12に収納される薬剤の1つであり、薬剤の種類ごとにカートリッジ12が用意される。即ち、カートリッジ12は、複数種の薬剤で共用されることはない。そして、各々のカートリッジ12にドラム28が備えられている。カートリッジ12の具体的構造および動作は
図2を参照して後述する。
【0028】
カメラ22は、高さ方向に於いて、ドラム28の下端と薬剤袋34との間に配置されており、カートリッジ12から投下された薬剤32を空中で撮影する役割を有する。本形態では、薬剤32が撮影された画像を画像解析することにより、カートリッジ12から投下された薬剤量および薬剤種を推定している。本形態では、カートリッジ12から投下された薬剤量および薬剤種を推定する手段としてカメラ22を用いた画像解析手段を採用しているが、他の手段(天秤等を用いて直接的に計測する手段)でこれらが推定されても良い。
【0029】
ここでは、2つのカメラ(22A、22B)で、投下される薬剤32を空中で撮影している。カメラ22Aは視野が広いものであり、その視野は投下される薬剤32の幅よりも広く設定され、空中に存在する薬剤32の全体的な密度を計測することができる。一方、カメラ22Bは、カメラ22Aよりは狭い視野を有し、薬剤32の一部を拡大して撮影することにより、一部のエリアで撮影される薬剤の密度と薬剤種とを判定することが出来る。1台のカメラで撮影された薬剤32の画像から薬剤量および薬剤種を推定することも可能であるが、視野(倍率)の異なる複数のカメラを使用することで、これらの推定を精度高く行うことが出来る。
【0030】
制御部14は、コンピュータ24から、薬剤量および薬剤種等に関する情報が入力され、カートリッジ12およびカメラ22の動作を制御する。具体的には、制御部14の指示に基づいて、カートリッジ12の下部に設けたスリットを遮断するシャッターが開き、ドラム28が回転することにより、カートリッジ12に収納された薬剤32が、下方に投下される。そして、投下された薬剤32は空中でカメラ22により撮影され画像が得られる。撮影された画像は制御部14により画像処理され、投下された薬剤量および薬剤種が推定される。推定される薬剤量が所定量に達したら、制御部14の指示によりドラム28の回転が停止されシャッターが閉じられることで、薬剤32の投下が終了する。また、推定された薬剤種は、コンピュータ24で入力された薬剤種と比較され、薬剤種が異なれば、このことを示す警告が発せられる。
【0031】
ここで、上記したカートリッジ12、カメラ22および制御部14は、一体化されたモジュールとして薬剤種毎に準備されても良い。これにより、カメラ22や制御部14に薬剤が付着することによる薬剤の混入を防止する効果がさらに大きくなる。また、カートリッジ12のみを薬剤種に応じて取り替え可能とし、カメラ22および制御部14を本体16に固定しても良い。
【0032】
包装部18は薬剤袋34の包装を行う部位であり、カートリッジ12の下方に配置された薬剤袋34に薬剤の投入が終了した後に、薬剤袋34の口を閉じることで包装を行う機能を有する。
【0033】
印字部20は、薬剤が投入された後に包装された薬剤袋34に対して、字や文字等を印刷する部位である。具体的には、印字部20は、薬剤袋34に対して、薬剤種、服用の時期、患者名等の情報を印字する。
【0034】
コンピュータ24は、薬剤分包装置10の本体16に対して薬剤師が指示を与えるための端末であり、本体16と有線または無線で接続されている。薬剤32を薬剤袋34に梱包するとき、薬剤師は、レセプト等に基づいて、コンピュータ24に情報を入力する。この情報としては、分包するべき薬剤種、分包数、各薬剤袋に投入するべき薬剤量、患者名、印字するべき情報などである。
【0035】
図2を参照してカートリッジ12に備えられるドラム28の構成を説明する。上記したように、カートリッジ12の筐体部26は、平面視で頂部が下方を向く5角形形状を呈しており、最下部付近の側面は、下方に幅が狭くなる傾斜面となっている。更に、筐体部26の下端部分は円筒状に成形されており、その内部には円筒形状のドラム28が回転可能な状態で収納されている。ドラム28の直下の筐体部26の最下部には、紙面上を突き抜ける方向に細長い形状のスリット30が設けられており、このスリット30を経由して筐体部26の内部に収納された薬剤32は下方に投下される。また、不図示ではあるが、スリット30にはシャッターが備えられており、シャッターを閉じた状態では薬剤32は下方に投下されず、シャッターを開いた状況下にて薬剤32は下方に投下される。
【0036】
ドラム28の側面形状は滑らかな筒形状ではなく、一定周期で凹凸形状が設けられた異型形状とされている。図では、ドラム28の円周側面は、サインカーブの如き周期性を有する凹凸形状を呈しているが、周期性を有するパルス形状の如き凹凸形状でも良い。ドラム28と筐体部26の内部側面との間には略一定の幅で間隙が設けられており、ドラム28が回転すると、この間隙を介して筐体部26に収納された薬剤32が、下方に移動する。また、ドラム28は回転運動によって薬剤32を移動させるが、回転運動と共に超音波振動を行うことにより、ドラム28の表面への薬剤32が付着することを防止し、更に、スリット30からの薬剤32の投下がスムーズに行われる。
【0037】
ドラム28の側面に設けられる凹凸形状は、カートリッジ12に投入される薬剤の大きさによって異なるが、所定の個数の凹凸が円周方向に移動するような設定とすることにより、ドラム28の回転で投下される薬剤32の量を正確に制御できる。例えば、13個分の凹凸がスリット30を通過するようにドラム28を回転させることにより、1gの薬剤32をカートリッジ12から下方に投下させるような設定が可能である。
【0038】
図3のフローチャートを参照して、上記した各図も参考としつつ、上記した構成の薬剤分包装置10を用いた薬剤分包方法を説明する。
【0039】
ステップS11では、先ず、目的とする薬剤が収納されたカートリッジ12を選択する。具体的には、先ず、
図1を参照して、医師等が処方したレセプト等を薬剤師が参照して、所定の薬剤が収納されたカートリッジ12を、薬剤分包装置10の本体16にセットする。このセットは、薬剤師が手動で行ってもよいし、薬剤分包装置10に備えられた移動機構等を用いて自動で行われても良い。ここで、カートリッジ12は、薬剤種毎の色による区分や、バーコードの付与が施されているので、薬剤師によるカートリッジ12ご選択の可能性が低く抑えられている。また、薬剤師により、薬剤種や分包数等の必要な情報がコンピュータ24に入力され、この情報は本体16の制御部14に伝送される。
【0040】
本形態では、薬剤師により手動で行われる作業は以上であり、以下の作業は薬剤分包装置10により自動で行われる。これにより、薬剤分包に必要とされる薬剤師の手間が大幅に軽減される。
【0041】
ステップS12では、薬剤の吐出を開始する。具体的には、
図1を参照して、カートリッジ12の直下には、上方に口を開けた薬剤袋34が配置される。そして、制御部14の指示に従い、所定量の薬剤32が薬剤袋34に投下されるまで、ドラム28が回転する。
図2を参照して、本ステップでは、スリット30をカバーするシャッターを先ず開き、この状態でドラム28が所定の回転角で回転する。上記したように、ドラム28の側面には凹凸形状が設けられているので、ドラム28の回転角度と投下される薬剤32の量との相関関連は概略既知である。また、ドラム28は、薬剤32の投下をスムーズに行うために、回転しつつ超音波振動を行っている。
【0042】
ステップS13では、カートリッジ12から投下される薬剤32の吐出量を計測する。計測する具体的な方法としては天秤等の接触型の計測手段や画像処理等が考えるが、ここでは画像処理が採用された例を説明する。画像処理による方法は非接触型であるので、計測に必要とされるカメラ等に薬剤32が付着する恐れが小さい。
【0043】
図1を参照して、カートリッジ12から薬剤32を下方に投下させつつ、空中に存在する薬剤32をカメラ22で撮影する。ここではカメラ22Aおよびカメラ22Bで撮影を行っており、カメラ22Aは広角で薬剤32をその幅全体に渡り撮影し、カメラ22Bは一部の薬剤32を拡大して撮影している。
【0044】
広角のカメラ22Aで薬剤32を撮影した画像を
図4(A)に示し、この画像では、薬剤32の幅全体が画像に収まっている。また、拡大して撮影するカメラ22Bで撮影した画像を
図4(B)に示し、この画像では1つの細粒状の薬剤32が拡大された状態で撮影される。
【0045】
本ステップでは、これらの画像のマッチングを行うことにより、薬剤量を推定している。具体的には、薬剤32を密度10%から100%まで1%毎に撮影された多数の参照画像を用意し、実際に撮影された画像と参照画像とを比較し、最も誤差の小さい参照画像の密度を、実際の密度の推定値として採用する。更に、推定された密度と、撮影された薬剤32の面積等を勘案して、カートリッジ12から投下された薬剤32の薬剤量を推定する。この際、実際に撮影された画像としては、カメラ22A、22Bの何れかまたは両方が採用される。
【0046】
上記したように、ドラム28の回転角度によっても薬剤32の投下量は推定されるが、画像処理による推定と合わせて使用することにより、カートリッジ12から投下される32量をより正確なものとすることができる。
【0047】
同様な手法で、投下される薬剤32の薬剤種を推定することも可能である。この場合は、薬剤分包装置10で分包される薬剤種毎に予め参照画像を撮影し、実際に撮影された画像と参照画像とを比較し、最も誤差の小さい参照画像の薬剤種を、薬剤32の薬剤種の推定値として採用する。
【0048】
ここで、上記したように、薬剤分包装置10にセットされる薬剤種は、予め薬剤師がカートリッジ12を選択することにより確認されている。しかしながら、画像処理による薬剤種の推定を行うことにより、薬剤師による薬剤の誤選択を検出して、誤った種類の薬剤を提供してしまうことが防止される。
【0049】
ステップS14では、上記した画像処理により検出された薬剤量が所定の量に達した場合、カートリッジ12からの薬剤の吐出を終了する。具体的には、
図2を参照して、ドラム28の回転を停止し、スリット30をシャッターにより塞ぐ。
【0050】
上記したステップS12からステップS14を、必要とされる薬剤袋の数だけ繰り返す。更に、薬剤種を変更する場合は、ステップS11でカートリッジ12の選択を再び行った後に、ステップS12からステップS14を繰り返す。
【0051】
ステップS15では、
図1を参照して、上記した作業で薬剤が投入された薬剤袋34を梱包し、必要な文字等を薬剤袋34の表面に印刷する。
【0052】
以上のステップにより、薬剤分包装置を用いて薬剤が適切に分包される。
【0053】
ここで、上記した画像処理による薬剤量検出とは別に、カートリッジの重量を計測することにより、吐出された薬剤量を計測しても良い。具体的には、薬剤の吐出を開始するステップS12に先行してカートリッジ全体の重量を測定し、更に、薬剤吐出が終了するステップS14の後に再びカートリッジの重量を計測する。そして、吐出前のカートリッジの重量から、吐出完了後のカートリッジの重量を差し引くことにより、吐出された薬剤量が正確に算出される。
【0054】
<第2の実施の形態>
本形態では、
図5から
図7を参照して、より具現化された実施形態を説明する。本形態の薬剤分包装置40の基本的な構成は上記した実施形態と同一であり、薬剤を分包する具体的な機構が異なる。
【0055】
図5を参照して、薬剤分包装置40は、薬剤カセット44が収納されるカセットコラム42と、所定量の薬剤を分包する薬剤分包部46と、所定のカセットをカセットコラム42から薬剤分包部46に輸送する輸送機構とを有している。
【0056】
カセットコラム42は、複数の薬剤カセット44を収納する部位であり、使用者の指示により特定されたカセットを内部で移動させた後に、下部から外部に離脱させる機能を有する。カセットコラム42が各薬剤カセット44を収納および移動させる機構は、例えば、立体駐車場で自動車が収納および移動させる機構と同様である。本形態では、薬剤分包部46の上方に、4つのカセットコラム42を配置しているが、配置されるカセットコラム42の数は、必要とされる薬剤カセット44の数に応じて異なる。
【0057】
カセットコラム42と薬剤分包部46との間には、不図示のカセット輸送機構が設けられている。使用状況下では、カセットコラム42から薬剤カセット44がこの輸送機構で薬剤分包部46に輸送され、薬剤分包部46で使用された薬剤カセット44が薬剤分包部46からカセットコラム42に返送される。
【0058】
図6を参照して、上記した薬剤分包部46を説明する。
図6(A)は薬剤分包部46を全体的に示す図であり、
図6(B)は薬剤カセット44から薬剤32が放出される状態を示す図である。
【0059】
図6(A)を参照して、薬剤分包部46は、薬剤32を受けるV字受け56と、このV字受け56を保持するロードセル60と、薬剤32の受け紙52が巻回されたロール48と、薬剤32を分包する分包フィルム62が巻回されたロール50とを主要に有している。本形態では、基本的には密閉された筐体の内部に、これらの要素が収納されている。
【0060】
薬剤カセット44は、薬剤分包部の上部に回転可能な状態で配置されている。薬剤カセット44が回転可能な状態とされる理由は、薬剤カセット44を回転させることで、薬剤カセット44の内部から外部に薬剤32を放出させているからである。ここでは、薬剤カセット44が2つ配置されているが、一つのみの薬剤カセット44が配置されても良い。複数の薬剤カセット44が配置される場合は、各々の薬剤カセット44に異なる種類の薬剤が収納されても良い。例えば、一方の薬剤カセット44に頭痛薬が収納され、他方の薬剤カセット44に胃薬が収納される。これにより、異なる種類の薬剤を混合して1つの分包に収納させることができる。
【0061】
薬剤カセット44の下方には、薬剤カセット44から放出された薬剤32を暫定的に受けるためのV字受け56が設けられている。V字受け56は、金属板等の板状の部材をV字形状に曲折加工したものであり、本形態では2つの薬剤カセット44の下方に渡るように配置されている。
【0062】
ロール48には、受け紙52が巻かれて用意されており、ローラ54が回転することにより、所定の長さの受け紙52がV字受け56に供給される。ここで、ローラ54は受け紙52の経路に直列に2つが配置されており、ローラ54同士の間には不図示の切断手段が設けられている。V字受け56の上面に配置された受け紙52を入れ替える際に、ローラ54同士の間で受け紙52を切断する。
【0063】
受け紙52は、V字受け56の上面を正常な状態に保つために配置されている。よって、V字受け56を用いた薬剤の投下を行う度に受け紙52を交換しても良い。また、受け紙52に替えて、V字受け56の内部形状に対応した形状の掃除機で、V字受け56に残留した薬剤32を吸引することに依って、V字受け56の清浄性を確保することも可能である。更に、受け紙52は、チャッキング58で内側から押圧されることにより、V字受け56の内壁に密着している。
【0064】
V字受け56は、ロードセル60により支持される。ロードセル60は縦方向に回転可能なアームを有し、平行性を保ったままのV字受け56を、薬剤カセット44の下方から、分包フィルム62の近傍まで移動させる。また、ロードセル60の先端部には、この先端部を支点としてV字受け56を回転させる回転機構を有する。よって、V字受け56が、時計回りに回転することにより、V字受け56に貯留された薬剤32は分包フィルム62に投入される。
【0065】
ロール50には分包フィルム62が巻回されており、不図示のローラでロール50から所定量の分包フィルム62が引き出される。熱圧着により熱圧着部64が形成された部分の分包フィルム62に、V字受け56から所定量の薬剤32が投入される。
【0066】
図6(B)の断面図を参照して、薬剤カセット44から薬剤32を外部に取り出すための構造を説明する。この図を参照して、薬剤カセット44は紙面上横方向に軸を有する円筒形状を呈し、その内部に薬剤32が存在している。薬剤カセット44は、円筒状の胴体部44Aと、胴体部44Aの端部で開口部を塞ぐ蓋部44Bとを有している。薬剤カセット44の側面の紙面上右側に於ける端部には不図示のギア部が設けられており、このギア部はモータ66のギアと嵌合している。この状態で、モータ66を回転させることにより、薬剤カセット44の胴体部が回転する。
【0067】
薬剤カセット44の蓋部44Bの凹部に、薬剤分包部に内蔵された開放部68の爪が嵌合している。この状態で開放部68を紙面上左側に引っ張ることにより、胴体部44Aと蓋部44Bとの間に間隙が形成される。蓋部44Bを開放部68で固定した状態のまま、モータ66で胴体部44Aを回転させる。これにより、胴体部44Aと蓋部44Bとの間隙から下方に薬剤32が投下される。この際、薬剤カセット44の胴体部44Aはモータ66の駆動力で回転するが、蓋部44Bは回転しない。
【0068】
上記したV字受け56は、薬剤カセット44の上記間隙の下方に配置されている。よって、薬剤32は、薬剤カセット44の間隙からV字受け56の内部に投下される。また、薬剤32が投下される様子は、V字受け56の側方に配置されたカメラ70により撮影され、撮影された画像を解析することで、薬剤32の種類や投下された薬剤32の量が推定される。この事項の詳細は、上記した第1の実施の形態と同様である。
【0069】
次に、上記した各図および
図7のフローチャートを参照して、本形態に於ける薬剤の分包方法を説明する。
【0070】
先ず、ステップS21では、所望のカセットの選択と装填を行う。即ち、
図5を参照して、薬剤師等の使用者が支持することで、所定の薬剤が充填された薬剤カセット44が選択される。その後、選択された薬剤カセット44はカセットコラム42の下方から外部に放出され、不図示の輸送手段により、薬剤分包部46の内部の所定箇所に装填される。ここで、選択されるカセットコラム42の個数は一つでも良いし複数でも良い。
【0071】
次に、ステップS22では、装填された薬剤カセットに間隙を設ける。具体的には、
図6(B)を参照して、所定箇所に装填された薬剤カセット44の蓋部44Bに開放部68の突起部(爪)を引っ掛け、開放部68を紙面上左側に引っ張る。これにより、薬剤カセット44の、胴体部44Aと蓋部44Bとの間に間隙が形成される。この状態で、モータ66の駆動力により胴体部44Aを回転させる。これにより、蓋部44Bと胴体部44Aとの間隙から薬剤32が下方に投下される(ステップS23)。尚、開放部68は、薬剤32の投下が終了するまで連続して蓋部44Bを引っ張り続け、蓋部44Bは本ステップでは回転しない。
【0072】
ステップS24では、上記したS23で投下される薬剤32の量を計測し、計測された薬剤量の指定量よりも少なければ薬剤投下を連続するために、
図6(B)を参照して、薬剤カセット44の胴体部44Aの回転を連続する(ステップS24のNO)。一方、計測された薬剤料が指定量に達したら(ステップS24のYES)、モータ66を停止して胴体部44Aの回転をストップする(ステップS25)。
【0073】
ここで、ステップS24に於ける薬剤重量の計測方法に関して詳述する。
図6(A)を参照して、本形態では、薬剤32を薬剤カセット44から直に投下しているが、投下された薬剤の量は、画像処理または重量計測で計測される。画像処理で計測する場合は、第1の実施形態にて説明した方法により高速に薬剤量が算出される。一方、投下された薬剤量を重量計測で計測する場合は、ロードセル60に投下された薬剤32の重量を計測する。これにより、薬剤32の投下量を、画像処理による場合よりも正確に計測することができる。
【0074】
また、画像処理と重量計測とを組み合わせて薬剤32の投下量を計測しても良い。具体的には、投下される薬剤32をカメラで撮影してその投下量を確認しつつ、ロードセル60に投下された薬剤32の重量も計測する。これにより、画像処理により高速に薬剤32の投下量を計測できる利点と、重量計測により薬剤32の投下量を正確に計測できる利点の両方が得られる。
【0075】
ここで、複数の薬剤カセット44から薬剤を投下する場合は、一方の薬剤カセット44からの薬剤投下を行った後に、他方の薬剤カセット44からの薬剤投下を行うようにしても良い。具体的には、先ず、紙面上にて左側の薬剤カセット44から所定量の薬剤32を計測しつつ受け紙52に投下する。これが終了した後に、紙面上にて右側の薬剤カセット44から所定量の薬剤32を計測しつつ受け紙52に投下する。その後、ロードセル60を移動させて薬剤32を分包フィルム62に投入する。これにより、異なる種類の薬品を正確に分包フィルム62に投入することができる。
【0076】
ステップS26では、
図6(A)を参照して、ロードセル60のアームを変位させることにより、V字受け56を下方に移動させ、ロードセル60の先端を支点としてV字受け56を時計回りに回転させる。これにより、V字受け56に貯留された所定量の薬剤32が分包フィルム62に投入される(ステップS26)。そして、所定量の薬剤32が投入された分包フィルム62に対して熱圧着を行い、個別に密封する。また、分包フィルム62は、所定の長さで切断されるように成っている。
【0077】
その後、開放部68の引っ張り動作を解除して、薬剤カセット44の胴体部44Aと蓋部44Bとの間隙を塞ぐ(ステップS27)。
【0078】
最後に、
図5を参照して、使用された薬剤カセット44を、薬剤分包部46から所定のカセットコラム42に戻す(ステップS28)。
【0079】
以上が本形態の薬剤分包装置40を用いた分包方法である。