特許第5978500号(P5978500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5978500活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978500
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20160817BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20160817BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160817BHJP
   C09J 143/04 20060101ALI20160817BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J133/06
   C09J11/06
   C09J143/04
   C09K3/10 E
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-282116(P2011-282116)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129799(P2013-129799A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(74)【代理人】
【識別番号】100125933
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 晃
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
(72)【発明者】
【氏名】及川 宏習
(72)【発明者】
【氏名】米田 耕太郎
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−075904(JP,A)
【文献】 特開2007−106822(JP,A)
【文献】 特開2004−018748(JP,A)
【文献】 特開2005−179559(JP,A)
【文献】 特開2010−163591(JP,A)
【文献】 特開2003−321669(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117845(WO,A1)
【文献】 特開平11−061099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 4/02
C09J 11/06
C09J 133/06
C09J 143/04
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)乃至(C)を少なくとも含有し、
下記成分(A)及び(B)の合計100重量%に対して、下記成分(A)を40〜80重量%及び下記成分(B)を60〜20重量%含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物。
成分(A):アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレート、及び/又は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を必須成分として含むエチレン性不飽和基含有化合物(但し、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は成分(A)中に20〜100重量%含まれる)
成分(B):ビニル系単量体を150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られた重量平均分子量1,000〜20,000の共重合体、
成分(C):光重合開始剤。
【請求項2】
成分(B)のビニル系単量体が炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)のガラス転移温度が−80〜20℃である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(B)の多分散度が5以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(B)は分子中にアルコキシシリル基を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートを成分(A)中に10〜70重量%含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の組成物の硬化物により、タッチパネルモジュール、表面保護層、画像表示ユニットのいずれか又は全てが固定されてなることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物、及びそれを用いて製造された画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン、携帯ゲーム機等のモバイル機器に用いられる画像表示装置として、液晶ディスプレイ(以下、「LCD」という)や有機EL(OLED)が広く用いられている。
近年、これらのモバイル機器用の画像表示装置において、表面保護層又はタッチパネルと画像表示ユニットの表示面との間や、表面保護層とタッチパネルとの間に存在する空隙を、屈折率がこれらの部材に近い透明材料を充填することにより、光の反射を抑制して透過性を向上させ、画像表示装置の輝度やコントラストを向上させる方法が提案されている。透明材料としては、透明樹脂シート、反応硬化性液状樹脂、粘着剤等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、可塑剤含有のアクリル系ポリマーからなる透明樹脂シートを介し、その透明樹脂シートと液晶表示パネル又は透明保護板の一方又は双方との間に当該シートを膨潤・溶解させない粘度が10cp以下の揮発性液体を配備した状態で、液晶表示パネルの視認側と透明保護板とを密着させたのち、加温押加圧下に乾燥処理するLCDの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、液晶表示素子とガラス板との間に、無色透明弾性樹脂である反応硬化性シリコーンゲルを液体状態で注入したのち、硬化させることにより、液晶表示素子とガラス板とを固定するLCDの製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、液晶表示素子と保護板との間に、透明物質を充填したLCDが開示されている。透明物質としては、不飽和ポリエステルを重合性単量体に溶解したものが使用され、それを液晶表示素子と保護板との間の空隙に注入後、固化している。
【0006】
特許文献4には、アルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有(メタ)アクリレートを特定割合で共重合した(メタ)アクリル系ポリマーと、過酸化物を含む光学部材用粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−197387号公報
【特許文献2】特開平06−59253号公報
【特許文献3】特開平03−204616号公報
【特許文献4】特開2007−31506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、画像表示装置に用いられる空隙充填用の透明材料としては、透明樹脂シート、反応硬化性液状樹脂及び粘着剤等が提案されている。
しかし、透明樹脂シートは液状樹脂や粘着剤よりも弾性率が高いので空隙充填性が悪いという問題がある。
又、反応硬化性液状樹脂は、液体を扱うプロセスとなり製造工程が複雑になり、さらにシリコーンゲルでは接着力が低く信頼性に問題がある。
【0009】
これらに対し、粘着剤は取扱いが容易で歩留りが高く、信頼性も高いことから、画像表示装置と表面保護層を直接貼り合わせる構造には好適である。
しかし、画像表示装置における表面保護層が遮光層等の凹凸形状を有し、かかる凹凸形状面に粘着剤を貼り合わせる場合や、凹凸形状を有する層が設けられた画像表示ユニットの表示面に粘着剤を貼り合わせる場合は、それらの凹凸形状も隙間なく充填し、かつ高温や高湿度条件下に長時間置かれても表面保護層、画像表示ユニットの表示面、又はタッチパネルモジュールとの界面で気泡や剥がれが発生せず、更に白化することがないことが必要である。近年、意匠性の点から凹凸形状の膜厚が大きくなる傾向があり、空隙充填性と信頼性に対する要求はますます高まっており、この課題を解決する空隙充填用樹脂が求められている。
【0010】
本発明者らは、空隙充填性、硬化性及び接着性に優れ、特に画像表示装置の表面保護層、画像表示ユニット又はタッチパネルモジュール等を相互に貼付して積層する際のUV硬化性及び接着性に優れる活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物を見出すため、鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(A)エチレン性不飽和基含有化合物、(B)ビニル系単量体を150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られた重量平均分子量1,000〜20,000の共重合体、及び(C)光重合開始剤を含む組成物が、画像表示装置等に用いられる空隙充填用樹脂として好適であることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、下記成分(A)乃至(C)を少なくとも含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物である。
成分(A):エチレン性不飽和基含有化合物、
成分(B):ビニル系単量体を150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られた重量平均分子量1,000〜20,000の共重合体、
成分(C):光重合開始剤。
【0013】
尚、本明細書では、組成物に活性エネルギー線を照射して得られる架橋物又は硬化物を、まとめて「硬化物」と表す。また、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレート、アクリル又はメタクリルを(メタ)アクリルと表す。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物は、硬化性成分として成分(A)であるエチレン性不飽和基含有化合物を含有するとともに、成分(B)である高温連続重合によって得られた比較的低分子量の共重合体を含有するので、組成物が低粘度で流動性に優れ、空隙充填性に優れ、耐衝撃性を向上させる充填用樹脂として好適であるとともに、硬化性と接着性にも優れ、さらには硬化物の透明性にも優れる。
【0015】
さらに、本発明の組成物として、成分(A)中に分子中にアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートを含有させるか、又は成分(B)としてアルコキシシリル基を有する共重合体を使用することにより、画像表示装置の端部のように、硬化時に照射される活性エネルギー線が十分に到達しない個所でも、アルコキシシリル基の架橋反応により硬化が進行するので、画像表示装置全体の十分な接着信頼性を確保することができる。したがって、本発明によれば、高品位の画像表示装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、前記した成分(A)及び(B)を含む。以下、両成分について説明する。
【0017】
1.成分(A)
本発明の成分(A)は、エチレン性不飽和基含有化合物である。
(A)成分におけるエチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基が挙げられる。
(A)成分としては、種々の化合物が使用可能である。具体的には、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド並びにN−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕が挙げられる。
【0019】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート等の脂肪環式(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの芳香族(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド及びN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のマレイミド(メタ)アクリレート;並びにオキサゾリジノンエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等〕付加物のポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限らない。
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマーも使用することができ、具体的にはウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、並びに(メタ)アクリルロイルモルホリン等が挙げられる。
【0022】
本発明の組成物を湿気硬化性を有する組成物とする場合、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートとしては、反応性や、硬化物の柔軟性に優れる点で、メトキシシリル基またはエトキシシリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
メトキシシリル基またはエトキシシリル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート及びジメチルメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
これら化合物は、単独で使用しても、2種類以上併用して使用してもよい。
【0024】
成分(A)としては、硬化後の耐衝撃性に優れる点及び穴埋めに使用する際のしみだしを防止できる適切な粘度とすることができる点で、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。本発明では、(B)成分が可塑剤として作用することにより、成分(A)として多官能(メタ)アクリレートのみを使用しても、空隙充填剤用組成物として適切な粘度とすることができる。
多官能(メタ)アクリレートは、成分(A)中に20〜100重量%含まれることが好ましく、より好ましくは50〜100重量%である。
【0025】
成分(A)としてアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートを使用する場合、その含有量は、成分(A)中に10〜70重量%が好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。
【0026】
2.成分(B)
本発明の成分(B)は、ビニル系単量体を150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られた重量平均分子量1,000〜20,000の共重合体である。
【0027】
成分(B)の共重合体に使用できるビニル系単量体としては、特に制限はなく、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられるが、共重合性、硬化物の機械的物性、耐候性、耐水性などが優れるため、(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロデシニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートおよびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0029】
これらの中でも炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートは硬化物に柔軟性を付与し、耐水性、耐候性に優れるため、好ましい。炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートの割合は40重量部以上が好ましい(成分(B)の共重合体の製造に使用する全単量体を100重量部とした場合)。40重量部未満ではガラス転移温度が高くなり、硬化物の柔軟性が不足する場合がある。
【0030】
成分(B)に湿気硬化性を付与する目的で、アルコキシシリル基を有するビニル系単量体を共重合することもできる。
アルコキシシリル基を有するビニル系単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランおよびビニルメトキシジメチルシランなどのビニルアルコキシシラン類、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートおよびメチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートなどのアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート類、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのアルコキシシリル基含有ビニルエーテル類、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルなどのアルコキシシリル基含有ビニルエステル類などが挙げられる。
これらの中でも、その他のビニル系単量体との共重合性や得られる共重合体の柔軟性が優れるため、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0031】
成分(B)にアルコキシシリル基を有するビニル系単量体を共重合する場合の好ましい割合は、5〜70重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である(成分(B)の共重合体の製造に使用する全単量体を100重量部とした場合)。5重量部未満では湿気硬化性が不足する場合があり、70重量部を超えると空隙充填性や接着性が低下する場合がある。
【0032】
これら単量体は、1種類又は2種類以上を重合してもよい。
【0033】
成分(B)は、ラジカル重合によって得ることができ、150〜350℃の高温連続重合方法により得られる。重合方法は、溶液重合、塊状重合、分散重合いずれの方法でもよく、また、近年開発されたリビングラジカル重合法でもよい。重合温度が150℃に満たない場合は、分岐反応が起こり分子量分布を広くし、分子量を下げるのに多量の開始剤や連鎖移動剤を必要とするため耐候性、耐熱性、耐久性に悪影響を与える。また除熱などの生産上の問題がおこることもある。他方350℃より高すぎると、分解反応が発生して重合液が着色したり、分子量が低下する。この温度範囲で重合することにより、分子量が適当で粘度が低く、無着色で夾雑物の少ない共重合体を効率よく製造することができる。
すなわち、当該重合方法によれば、極微量の重合開始剤を使用すればよく、メルカプタンのような連鎖移動剤や、重合溶剤を使用する必要がなく、純度の高い共重合体が得られる。一般的に重合体中に均一に架橋性官能基が導入されることが、硬化性や耐侯性等の物性を保つ上で重要である。反応器に攪拌槽型反応器を用いれば組成分布(架橋性官能基の分布)や分子量分布の比較的狭い(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得ることができるため好ましい。また、管状型反応器よりも連続攪拌槽型反応器を用いるプロセスが組成分布、分子量分布を狭くするのでより好ましい。
【0034】
高温連続重合法としては、特開昭57−502171号、特開昭59−6207号、特開昭60−215007号等に開示された公知の方法に従えば良い。
例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応機へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。また、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100重量部に対して0.001〜2重量部であることが好ましい。
圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。
単量体混合物の滞留時間は、1〜60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が充分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2〜40分である。
【0035】
成分(B)の重量平均分子量は、1,000〜20,000が好ましく、より好ましくは2,000〜15,000である。重量平均分子量が1,000を下回ると硬化性組成物の機械的強度が十分でなく、20,000を上回ると粘度が高くなりすぎる。
成分(B)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の割合である多分散度(Mw/Mn)は、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。その理由は組成物の粘度、得られる被膜の物性のバランスが良好なものとなるためである。
本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)により測定したポリスチレン換算の分子量を意味する。
また、成分(B)のガラス転移温度は、−80〜20℃が好ましく、より好ましくは
−70〜10℃である。20℃を超えると、作業性が悪くなり、空隙充填性が劣る。
【0036】
成分(B)にアルコキシシリル基を含有させる場合、1分子中のアルコキシシリル基の数は0.1〜4個が好ましく、より好ましくは0.3〜3個である。0.1個未満では硬化不十分になり、4個を超えると硬化物が硬くなるからである。
【0037】
成分(B)の製造に使用するラジカル重合開始剤としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的にはジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等の過酸化物、又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウム等の無機過酸化物、リビング重合に用いられる金属錯体等があげられる。またスチレン等から発生する熱開始ラジカルでもよい。
特に好ましくは、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジターシャリーヘキシルパーオキサイド、ジターシャリーアミルパーオキサイド、アゾ系開始剤は、安価で開始剤ラジカルが水素引抜きを起こしにくいのでよい。水素引き抜き反応を頻度高く起こすと分子量分布が広くなり、架橋性官能基の導入されていない低分子量成分が出来やすく、耐侯性が悪化する場合がある。
【0038】
本発明では、有機溶媒中で行う溶液重合と、無溶剤で行う塊状重合を用いることができる。この中では、塊状重合が好ましいが、有機溶媒を用いる場合は、有機炭化水素系化合物が適当でありテトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種または2種以上を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体をよく溶解しない溶剤では、反応器の壁にスケールが成長しやすく洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。溶媒の使用量は、80部以下とすることが好ましい。
【0039】
成分(A)と成分(B)の組成比は、成分(A)及び成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)が40〜80重量%で成分(B)が60〜20重量%が好ましく、より好ましくは成分(A)が50〜70重量%で成分(B)が50〜30重量%である。成分(A)が40重量部未満では硬化性と接着強度が不足する。
【0040】
3.成分(C)
成分(C)は、光重合開始剤である。成分(C)は、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し、成分(A)の重合を開始する化合物である。
【0041】
成分(C)成分の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4-(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチルー1−プロパンー1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシー2−メチルー1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシー1−{4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパンー1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノー2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、アデカオプトマーN−1414(旭電化製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチルー(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロー4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチルー9−オキソー9H−チオキサントンー2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピルーN,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン及び10−ブチルー2−クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチルー6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾールー3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等のオキシムエステル類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
成分(C)の配合割合としては、組成物中の成分(C)を除いた合計量100重量部に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。
成分(C)の配合割合を0.1重量%以上とすることにより、適量な活性エネルギー線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10重量%以下とすることで、硬化物を耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0043】
4.その他の成分
本発明は、前記した成分(A)、(B)及び(C)を必須とするものであるが、必要に応じて種々の成分を含有してもよい。以下、その他の成分について説明する。
4−1.有機溶剤
本発明の組成物は、有機溶剤を含有しない無溶剤系であってもよいし、または、塗工性を改善する等の目的で、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、成分(B)の製造に関連して上記した有機溶剤を使用できる。
有機溶剤の使用割合としては、適宜設定すれば良いが、組成物中に10〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。
【0044】
4−2.湿気硬化用触媒
本発明の組成物を湿気硬化型組成物として使用する場合、湿気硬化用触媒を使用することが好ましい。
湿気硬化用触媒としては、従来の湿気硬化型組成物で使用されているもの、及び湿気によりアルコキシシリル基含有共重合体やアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートのアルコキシシリル基を縮合させることができるものであれば、種々の化合物が使用可能である。
具体的には、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジアセテート及びジブチル錫ジアセトアセトナート等の錫系触媒、テトラブチルチタネート及びテトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物;これらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩が挙げられる。又、カルボン酸、カルボン酸金属塩、有機スルホン酸、酸性リン酸エステル類、3B族・4A族金属を含有する有機金属化合物、その他酸性触媒並びに塩基性触媒等のシラノール縮合触媒が挙げられる。
湿気硬化用触媒の使用割合としては、使用目的や使用するアルキシシリル基を有する共重合体又は/及びアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートの種類及び割合等に応じて適宜設定すれば良いが、組成物中に0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0045】
4−3.その他の成分
前記以外に、本発明の組成物には、必要に応じて、無機材料、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤及び/又は酸化防止剤、耐光性向上剤等を含有させることができる。
【0046】
5.活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物
本発明の組成物は、前記成分(A)、(B)及び(C)を必須とするものである。
本発明の組成物の製造方法は常法に従えばよく、前記成分(A)、(B)及び(C)、必要に応じてその他の成分を攪拌・混合して得ることができる。必要に応じて、加熱することにより混合時間を短くすることができる。
本発明の組成物は、物品の空隙を充填するために広く使用できるが、特に、タッチパネルを含む画像表示装置(以下、「タッチパネル型画像表示装置」)の構成部材である表面保護層、タッチパネルモジュール及び画像表示ユニットの間に充填して、これらの部材を互いに貼り合わせるのに好適に使用できる。
【0047】
6.タッチパネル型画像表示装置
タッチパネル型画像表示装置は、表面保護層、タッチパネルモジュール及び画像表示ユニットから主に構成される。
本発明の組成物は、表面保護層又はタッチパネルモジュールと画像表示ユニットとの空隙、表面保護層とタッチパネルモジュールとの空隙を埋めるために主に使用することができる。
例えば、表面保護層とタッチパネルモジュールとの空隙を埋める場合は、表面保護層のタッチパネルモジュールと対向する面に本発明の組成物を塗工し、該塗工面にタッチパネルモジュールを貼り合わせた後、透明材料である表面保護層を介して塗工面に活性エネルギー線を照射すればよい。表面保護層又はタッチパネルモジュールと画像表示ユニットとの空隙も、上記の方法に準じて本発明の組成物で埋めることができる。
層間接着力を大きくするために、貼り合わせる一方又は両方の表面に活性化処理を行うことができる。表面活性化処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、薬液処理、粗面化処理、エッチング処理及び火炎処理等が挙げられ、これらを併用しても良い。
【0048】
本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、被膜膜厚が0.5〜500μmとなるように塗工するのが好ましく、より好ましくは5〜200μmである。
塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0049】
組成物が有機溶剤を含む場合は、塗布後に乾燥させ、有機溶剤を蒸発させる。
乾燥条件は、使用する有機溶剤に応じて適宜設定すればよく、40〜120℃の温度に加熱する方法等が挙げられる。
【0050】
本発明の組成物の硬化に使用する活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、X線及び電子線等が挙げられ、安価な装置を使用できることから、紫外線及び/又は可視光線を使用することが好ましい。紫外線及び/又は可視光線により硬化させる場合の光源としては、種々のものが使用可能である。好適な光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ及び紫外線及び/又は可視光を放射するLED等が挙げられる。
活性エネルギー線照射における、照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜選択すれば良い。
【0051】
表面保護層は、画像表示装置上に配置された際に、最表面に配置される層である。
表面保護層は、高分子フィルム、又はガラス等のみから構成されていても、他の層とともに複数の層から構成されていても良い。
表面保護層は、画像表示装置の保護フィルム等として従来から使用されているものであれば良く、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はガラスであることができる。表面保護層の厚さは、通常、0.1〜5mmである。
【0052】
表面保護層が複数の層から構成される積層体である場合、画像表示装置の観測者側には、耐摩耗性、耐擦傷性、防汚性、反射防止性、帯電防止性等の機能・特性を付与するための層を設けることができる。
例えば、耐摩耗性及び耐擦傷性は、ハードコート層を形成することで得られる。さらに、該ハードコート層に帯電防止性、防汚性等を付与することも可能である。
【0053】
又、表面保護層が複数の層から構成される積層体である場合、観測者側の反対面に、印刷層、ハードコート層、蒸着層等の追加の層が表面保護層の全面もしくは一部の領域に含まれていてもよい。
このような追加の層が、表面保護層の一部の領域に形成されている場合には、表面保護層は凹凸形状を有する表面となる。この場合の表面保護層の厚さは、全体として、通常、0.l〜6mmである。
【0054】
表面保護層が端部に凹凸形状を有する場合や、画像表示ユニットが端部に凹凸形状を有する層を備える場合に、かかる表面保護層や画像表示ユニットの全体を他の部材と貼り合わせても、本発明の組成物は、それらの端部の凹凸形状にも隙間なく充填するので、高品位の画像表示装置を得ることができる。また、本発明の組成物の成分(B)が分子中にアルコキシシリル基を有するか、または、本発明の組成物が(A)成分にアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートを含有する場合は、本発明の組成物が湿気硬化性を有するので、このような端部で湿気により硬化し、かかる端部で剥がれが生じることも防止される。
【0055】
タッチパネルモジュールとしては、抵抗膜方式、表面型静電容量方式及び投影型静電容量方式等の静電容量方式等の種々の方式等が挙げられる。
【0056】
画像表示ユニットとしては、透過型又は反射型の液晶表示ユニット、プラズマディスプレイユニット、有機EL(OLED)ユニット及び電子ペーパー等の画像表示ユニット等が挙げられる。
画像表示ユニットの表示面には、追加の機能層(一層又は多層)、例えば、偏光板等を設けることができる。又、タッチパネルモジュールが画像表示ユニットの表示面に存在してもよい。
【0057】
タッチパネル型画像表示装置は、種々の電子装置に使用することができる。
当該電子装置の具体例としては、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、携帯ゲーム機、電子書籍、カーナビゲーションシステム、携帯音楽プレーヤー、時計、タブレット型コンピューター、ビデオカメラ、ビデオプレーヤー、デジタルカメラ、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)装置及びパーソナルコンピュータ(PC)等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味する。
【0059】
実施例で使用した略号の意味は、以下のとおりである。
・M402:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びヘキサアクリレートの混合物、東亞合成(株)製アロニックスM402。
・DPCA60:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製KAYARAD DPCA60。
・重合体A:後記製造例1で得られたアルコキシシリル基含有ポリマー(Tg=−57℃、Mw=3300、Mw/Mn=1.9)。
・重合体B:後記製造例2で得られたアクリルポリマー(Tg=−64℃、Mw=2500、Mw/Mn=1.6)。
・Irg379:2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、BASF製。
・KBM5103:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学製。
・DBTDL:ジブチルすずジラウレート、アデカ製。
【0060】
○製造例1〔(B)成分の製造〕
オイルジャケットを備えた容量1000mlの加圧式攪拌槽型反応器の温度を200℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、メチルメタクリレート(以下、「MMA」ともいう)10部、ブチルアクリレート(以下、「BA」ともいう)77部、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート13部、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」ともいう)8部、オルト酢酸トリメチル4部、重合開始剤としてジターシャリーへキシルパーオキサイド1部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御することにより、反応温度を227〜229℃に保持した。
単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。
その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して濃縮液を得た。得られた共重合体を重合体Aという。
溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は3300、Mw/Mnは1.9であった。
【0061】
○製造例2〔(B)成分の製造〕
単量体混合液をMMA20部、2−エチルへキシルアクリレート80部、メチルエチルケトン25部、重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド1部に変更し、反応温度を234〜236℃に保持する以外は製造例1と同様に重合および処理を行い、共重合体を得た。当該共重合体を、重合体Bという。
重合体BのMwは2500、Mw/Mn=1.6であった。
【0062】
(実施例1〜同4、比較例1〜同3)
表1に示す化合物を表1に示す割合でステンレス製容器に投入し、室温にてマグネチックスターラーで均一になるまで攪拌し、活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物を得た。得られた組成物を下記評価方法にて評価した。
【0063】
(評価方法)
(1)UV硬化性
組成物をガラス板にバーコーターで塗布(50μm)し、以下の条件で1回UV照射するごとに表面を指でさわり、液状物の付着がなくなるまでの照射回数(パス)を測定した。
UV照射条件:80W/cm集光型メタルハライド灯、ランプ高さ10cm(焦点)、コンベアスピード5m/min。
【0064】
(2)湿気硬化性
組成物をガラス板にバーコーターで塗布(50μm)し、以下の条件で放置した後、表面を指でさわり、液状物の付着がなくなるまでの日数を測定した。
放置条件:30℃、80%Rh。
【0065】
(3)引張せん断強度
組成物をガラス板にバーコーターで塗布(50μm)し、もう一枚のガラス板を貼り合わせた後、以下の条件で5回UV照射を実施してテストピースを作成し、JIS K6850に従い引張せん断強度を測定した。
UV照射条件:80W/cm集光型メタルハライド灯、ランプ高さ10cm(焦点)、コンベアスピード5m/min。
【0066】
【表1】
【0067】
本発明の組成物である実施例1〜同4では、UV硬化性及び引張せん断強度の何れもが優れていた。尚、実施例1は湿気硬化型組成物ではないので、湿気硬化性は評価していない。
また、分子中にアルコキシシリル基を有する成分(B)及び/又は分子中にアルコキシシリル基を有するアクリレート(成分(A))を用いた実施例2〜4の湿気硬化型組成物では、さらに湿気硬化性が優れていた。
これに対して比較例1は本発明の成分(A)を含まないためUV硬化性及び引張せん断強度の何れもが劣っていた。また、比較例2は本発明の成分(B)を含まないためUV硬化性及び引張せん断強度の何れもが劣っていた。また、比較例3では本発明の成分(A)の含有量が少なすぎるためUV硬化性及び引張せん断強度の何れもが劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の活性エネルギー線硬化型空隙充填用樹脂組成物は、物品の空隙の充填、例えば、積層体の層間の充填及び接着、特に、タッチパネルモジュール、表面保護層、画像表示ユニットのいずれか又は全てが固定されてなることを特徴とする画像表示装置の製造に好適に使用できる。