特許第5978633号(P5978633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978633
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】水冷壁パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20160817BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20160817BHJP
   B23K 9/02 20060101ALI20160817BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B23K9/04 H
   B23K9/04 Q
   B23K9/00 501H
   B23K9/02 D
   F22B37/10 602C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-15215(P2012-15215)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-154359(P2013-154359A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 浩次
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】南川 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】大矢 耕二
(72)【発明者】
【氏名】水野 史人
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−050003(JP,A)
【文献】 特開2010−271001(JP,A)
【文献】 特開平11−063408(JP,A)
【文献】 特開2007−210012(JP,A)
【文献】 特開2000−084665(JP,A)
【文献】 特開2005−314721(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009036477(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B23K 26/00−26/70
F22B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を通過させる複数の筒状管路部とこれら管路部の間に位置させられて両側端が管路部の周壁に接合された連結板とを備える水冷壁パネルの製造方法であって、前記管路部の略半周の表面に肉盛溶接による高耐食性金属層を形成する工程と、前記連結板の一方の板面に肉盛溶接による高耐食性金属層を形成する工程と、肉盛溶接を施された前記管路部の略半周表面と肉盛溶接を施された前記連結板の板面を同一側に位置させて前記連結板の側端を前記管路部の周面に隅肉溶接により接合する工程とを備え、かつ前記管路部表面の高耐食性金属層の形成範囲を半周よりも少ない範囲に限定して、隅肉溶接を施すために前記管路部の周面に前記連結板の側端を当接させた際に、当該当接部に隅肉溶接の溶接材料や溶接アークを侵入させる空間を形成するようにした水冷壁パネルの製造方法。
【請求項2】
冷却水を通過させる複数の筒状管路部とこれら管路部の間に位置させられて両側端が管路部の周壁に接合された連結板とを備える水冷壁パネルの製造方法であって、前記連結板を、互いに接合された金属板の一方を高耐食性金属板としたクラッド金属板で構成し、前記管路部の略半周の表面に肉盛溶接による高耐食性金属層を形成する工程と、肉盛溶接を施された前記管路部の略半周表面と前記連結板の高耐食性金属板を同一側に位置させて前記連結板の側端を前記管路部の周面に隅肉溶接により接合する工程とを備え、前記管路部表面の高耐食性金属層の形成範囲を半周よりも少ない範囲に限定して、隅肉溶接を施すために前記管路部の周面に前記連結板の側端を当接させた際に、当該当接部に隅肉溶接の溶接材料や溶接アークを侵入させる空間を形成するようにした水冷壁パネルの製造方法。
【請求項3】
前記管路部表面に形成された前記高耐食性金属層の、周方向の両端部を機械加工で除去するようにした請求項1又は2に記載の水冷壁パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火力発電所やごみ焼却炉に設置されるボイラーの、火炉の壁面に使用される水冷壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラー火炉の水冷壁パネルPは、図9に示すように、冷却水を流通させる複数の筒状の管路部(水管)1とこれら水管1を連結する連結板(フィン)5とから構成されている。すなわち、水管1は複数が間隔をおいて平行に配設されており、これらの間に一定幅のフィン5を介在させて、フィン5の両側端を水管1の周壁に隅肉溶接で接合してある。そして、火炉内方に向くパネルPの表面に、腐食防止のために所定厚以上のインコネル等の高耐食性金属層9が肉盛溶接によって形成されている。
【0003】
なお、引用文献1には、肉盛溶接によるパネルの反りを防止するために、パネルの裏面側だけに隅肉溶接を施すようにした水冷壁パネルの製造方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−155233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水冷壁パネルを製造する場合に従来は、水管とフィンを接合してパネルにした状態でパネル表面に肉盛溶接を施している。しかし、この方法では、比較的大型のパネルを溶接する必要があるため溶接トーチ等の姿勢を一定にできず、溶接条件が複雑になって生産性が下がるという問題がある。また生産性向上のために溶接電極を複数使用すると、装置全体が大型化するとともに電極間の干渉が問題となる。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、コンパクトな溶接装置を使用して電極間の干渉を生じることなく生産性を大きく向上させることができる水冷壁パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、冷却水を通過させる複数の筒状管路部(1)とこれら管路部(1)の間に位置させられて両側端が管路部(1)の周壁に接合された連結板(5)とを備える水冷壁パネル(P)の製造方法であって、前記管路部(1)の略半周の表面に肉盛溶接による高耐食性金属層(4)を形成する工程と、前記連結板(5)の一方の板面に肉盛溶接による高耐食性金属層(6)を形成する工程と、肉盛溶接を施された前記管路部(1)の略半周表面と肉盛溶接を施された前記連結板(5)の板面を同一側に位置させて前記連結板(5)の側端を前記管路部(1)の周面に隅肉溶接により接合する工程とを備え、かつ前記管路部(1)表面の高耐食性金属層(4)の形成範囲を半周よりも少ない範囲に限定して、隅肉溶接を施すために前記管路部(1)の周面に前記連結板(5)の側端を当接させた際に、当該当接部に隅肉溶接の溶接材料(3)や溶接アーク(L)を侵入させる空間(S)を形成するようにする。
【0008】
本第1発明においては、水冷壁パネルとして一体化する前の管路部や連結板に肉盛溶接を施して予め高耐食性金属層を形成しておき、これら管路部と連結板を隅肉溶接によって接合しているから、従来のように大型のパネルに対して肉盛溶接を行う必要が無い。したがってパネルへ溶接する場合と異なり、単純な筒体あるいは板体への溶接であるから、肉盛溶接時の溶接トーチの姿勢をほぼ一定に保つことができ、溶接条件の複雑化を避けて生産性を大きく向上させることができる。また、生産性を上げるために複数の電極を使用する必要がないから、電極間の干渉を生じないコンパクトな溶接装置を使用することができる。さらに、連結板の側端を管路部の周面に当接させた当接部に一定の空間(開先)を形成しているから、当接部に溶接材料や溶接アークが入り易く、隅肉溶接の融合不良を抑制して、より良好な溶接を行うことができる。
【0009】
本第2発明では、冷却水を通過させる複数の筒状管路部とこれら管路部の間に位置させられて両側端が管路部の周壁に接合された連結板とを備える水冷壁パネルの製造方法であって、前記連結板を、互いに接合された金属板の一方を高耐食性金属板としたクラッド金属板で構成し、前記管路部の略半周の表面に肉盛溶接による高耐食性金属層を形成する工程と、肉盛溶接を施された前記管路部の略半周表面と前記連結板の高耐食性金属板を同一側に位置させて前記連結板の側端を前記管路部の周面に隅肉溶接により接合する工程とを備え、かつ前記管路部(1)表面の高耐食性金属層(4)の形成範囲を半周よりも少ない範囲に限定して、隅肉溶接を施すために前記管路部(1)の周面に前記連結板(5)の側端を当接させた際に、当該当接部に隅肉溶接の溶接材料(3)や溶接アーク(L)を侵入させる空間(S)を形成するようにする。本第2発明においては、連結板としてクラッド金属板を使用するから、本第1発明の作用効果に加えて、連結板に肉盛溶接する必要が無いから、さらに生産性を向上させることができる。また、連結板の側端を管路部の周面に当接させた当接部に一定の空間(開先)を形成しているから、当接部に溶接材料や溶接アークが入り易く、隅肉溶接の融合不良を抑制して、より良好な溶接を行うことができる。
【0012】
本第3発明においては、前記管路部(1)の略半周の表面に肉盛溶接によって形成された前記高耐食性金属層(4)の、周方向の両端部(41)を機械加工で除去するようにする。
【0013】
本第3発明によれば、連結板の側端を管路部の周面に当接させた当接部に一定の空間(開先)がより確実に形成されるから、当接部に溶接材料や溶接アークが入り易く、隅肉溶接の融合不良を確実に抑制して、より良好な溶接を行うことができる。特に、肉盛溶接の際には高耐食性金属層の表面に酸化物層が形成され、これが起点となって隅肉溶接の際に割れが生じることがあり、通常は隅肉溶接に先立ってブラシ等によって酸化物層を除去している。ここにおいて、本第3発明では隅肉溶接に先立って機械加工を行うことによって酸化物層が確実に除去されるから、割れの発生が防止されてさらに良好な溶接を行うことができる。その結果、製品寿命が向上する。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の水冷壁パネルの製造方法によれば、コンパクトな溶接装置を使用して電極間の干渉を生じることなく生産性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を示す、肉盛溶接を施工中の水管の斜視図である。
図2】肉盛溶接を完了した水管の横断面図である。
図3】肉盛溶接を施工中のフィンの斜視図である。
図4】肉盛溶接を完了したフィンの横断面図である。
図5】隅肉溶接施工中の水冷壁パネルの横断面図である。
図6】隅肉溶接完了後の水冷壁パネルの要部横断面図である。
図7】本発明の他の実施形態を示す水管の横断面図である。
図8】隅肉溶接施工前の水冷壁パネルの横断面図である。
図9】従来の水冷壁パネルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
本発明の方法はパネルに組み立てる前の水管(管路部)やフィン(連結板)に対して肉盛溶接を施すことを特徴としている。すなわち、図1に示すように、ボイラー用鋼よりなる水管1に対して、180度よりは少ないそのほぼ半周の表面に、溶接トーチ2を順次周方向へ位置をずらして長手方向へ往復作動させることによってTIG溶接による肉盛溶接を行う。なお、図中、符号Lは溶接アークを示し、符号3は高耐食性金属の溶接材料を示す。図2には肉盛溶接完了後の水管1の横断面図を示し、水管1の180度より少ない略半周の表面に肉盛溶接によって所定厚以上の高耐食性金属層4が形成されている。
【0019】
図3に示すように、フィン5を切り出すためのボイラー用鋼よりなる原板9に対し、その一面の両側縁を除く領域に、順次幅方向へ位置をずらして溶接トーチ2を長手方向へ往復作動させることによってTIG溶接による肉盛溶接を行う。図4には肉盛溶接完了後の原板9の横断面図を示す。両側縁91を除いた原板9の表面に肉盛溶接によって所定厚以上の高耐食性金属層6が形成されている。続いて、このような原板9の両側縁91部をカットするとともに、残る板部を板面に垂直に所定幅でカットして(図4中の鎖線)複数のフィン5を得る。
【0020】
このように肉盛溶接によって高耐食性金属層4,6を形成した水管1とフィン5を必要数準備し、これらを図5に示すように、フィン5の両側端を隅肉溶接によって水管1に接合して水冷壁パネルPを製造する。図中、符号7が隅肉溶接部である。この場合の隅肉溶接部7を形成する溶接材料3は、高耐食性金属層4,6を構成する金属材と同一のものとする。隅肉溶接を行うに際しては、図5に示すように、フィン5の側端を水管1の径方向の対称位置に当接させる。この際、水管1とフィン5の継手部裏面側に、水管1およびフィン5と同一金属材の、仮付けのための隅肉溶接部8を形成する。このような隅肉溶接部8を形成することによって水管1とフィン5が確実に位置決めされるから、表面側の隅肉溶接部7をより迅速かつ的確に形成することができる。そして、本実施形態では前述のように水管1の肉盛溶接を180度より少ない略半周の表面としているから、フィン5の側端の水管1への当接部(継手部分)には一定の空間Sが形成される。そして、この空間S内に溶接材料3や溶接アークLが入り易くなって融合不良が抑制され、隅肉溶接をより良好に行うことができる。
【0021】
完成した水冷壁パネルPの要部断面図を図6に示す。ボイラー火炉の内方に向けて位置させるパネルPの表面側には、肉盛溶接と隅肉溶接によって所定厚の高耐食性金属層4,6およびこれらと同材の隅肉溶接部7が形成されている。
【0022】
図7図8には本発明の他の実施形態を示す。図7に示すように、水管1のほぼ半周の表面に肉盛溶接を行って高耐食性金属層4を形成した後、当該金属層4の周方向の両端部を図中の線Lで示すように径方向の対称位置でそれぞれ平行接線に沿って機械加工で切削除去する。このようにすると、図8に示すように、フィン5の側端の水管1への当接部(継手部分)に略直角のコーナを有する空間Sが形成されるから、この空間S内に溶接材料3や溶接アークLがより入り易くなって融合不良が抑制され、隅肉溶接をさらに良好に行うことができる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、パネルとして一体化する前の水管1やフィン5に肉盛溶接を施して予め高耐食性金属層4,6を形成しておき、これら水管1とフィン5を隅肉溶接によって接合しているから、従来のように大型のパネルに対して肉盛溶接を行う必要が無い。したがってパネルへ溶接する場合と異なり、単純な筒体あるいは板体への溶接であるから、肉盛溶接時の溶接トーチの姿勢をほぼ一定に保つことができ、溶接条件の複雑化を避けて生産性を大きく向上させることができる。また、溶接装置全体の大型化も避けることができる。さらに、フィン5としては、ボイラー用鋼の肉盛溶接側面に耐熱板を接合したクラッド材を使用すると良い。
【符号の説明】
【0024】
1…水管(管路部)、2…溶接トーチ、3…溶接材料、4…高耐食性金属層、5…フィン(連結板)、6…高耐食性金属層、L…溶接アーク、S…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9