(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記複数の評価領域のうち記録媒体の中央部に位置する少なくとも1つの評価領域を除外して、前記第2処理量を決定する、請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
前記制御手段は、前記複数の評価領域のうち記録媒体の端部に位置する少なくとも1つの評価領域を除外して、前記第1処理量を決定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
前記後処理機構は、前記液滴吐出ヘッドにより画像が形成された記録媒体を、その形状を保持しつつ前記排出部に搬送する搬送機構である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
前記後処理機構は、前記液滴吐出ヘッドにより画像が形成された記録媒体の形状を保持しつつ乾燥させる乾燥機構である、請求項1乃至6の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る液滴吐出装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明に係る「液滴吐出装置」をインクジェットプリンタに適用したものであり、「液体」としてインクを用いており、「液滴吐出ヘッド」としてインク吐出ヘッドを用いている。
【0015】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成を示す概念図である。
図2は、インクジェットプリンタ10に用いられるインク吐出ヘッド72の構成を示す平面図である。
図3は、インク吐出ヘッド72の構成を示す部分拡大断面図である。
【0016】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、筐体12と、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクのそれぞれに対応する4つのヘッドユニット14a〜14dと、4色のインクのそれぞれを個別に収容する4つのインクタンク16a〜16dとを備えている。また、インクジェットプリンタ10は、紙や布、フィルムなどの記録媒体Pを収容する記録媒体収容部18と、記録媒体Pを搬送する搬送機構20と、後処理機構22と、各種の制御を実行する制御装置24とを備えている。本実施形態では、制御装置24が後処理機構22を制御する「制御手段」として機能する。また、
図4に示すように、制御装置24が画像データを記憶する画像データ記憶部94を有している。
【0017】
図1に示すように、筐体12は、その内部に各種の機器を収容する空間Sを有しており、筐体12の上面には、搬送機構20によって筐体12の外部に排出された記録媒体Pを収納する排出部26が設けられている。なお、記録媒体Pの排出先としてオプショントレイ(図示省略)を用いる場合には、当該オプショントレイが「排出部」となる。そして、インクタンク16a〜16dが空間Sの下部に配置されており、記録媒体収容部18が空間Sの下部におけるインクタンク16a〜16dの上方に配置されている。また、ヘッドユニット14a〜14dおよび制御装置24が空間Sの上部に配置されている。さらに、搬送機構20が空間Sの上下方向中央部から上部に亘る領域に配置されており、後処理機構22が空間Sの上部における搬送機構20の近傍に配置されている。
【0018】
図1に示すように、搬送機構20は、記録媒体Pを水平方向に向けて搬送する搬送ユニット28と、搬送ユニット28の搬送方向上流側に設けられ、記録媒体収容部18に収容された記録媒体Pを搬送ユニット28に供給する送給ユニット30と、搬送ユニット28の搬送方向下流側に設けられ、記録媒体Pを排出部26に排出する排出ユニット32とを有している。
【0019】
搬送ユニット28は、一対のベルトローラ34,36と、ベルトローラ34,36間に掛け渡された環状の搬送ベルト38と、搬送ベルト38に押し当てられたテンションローラ40と、搬送ベルト38の上側に位置する部分を水平に支持するプラテン42とを有している。また、一方のベルトローラ34の回転軸34aには、ギアユニット44を介してモータ46の回転軸46aが接続されている。そして、
図4に示すように、モータ46が制御装置24に電気的に接続されている。
図1に示すように、本実施形態では、搬送ユニット28による記録媒体Pの搬送方向が「副走査方向」となっており、記録媒体Pの搬送方向に対して直交し、かつ、水平面に沿う方向が「主走査方向」となっている。
【0020】
送給ユニット30は、上下方向に延びる送給路R1を構成するガイド48と、ガイド48の上流側の端部に近接して設けられ、記録媒体収容部18に収容された記録媒体Pを送給路R1に送り出す送給ローラ50と、送給路R1の途中に設けられた一対の送りローラ52a,52bと、ガイド48の下流側の端部に近接して設けられ、記録媒体Pを搬送ベルト38の表面に押し付けるニップローラ54とを有している。また、送給ユニット30は、送給ローラ50を駆動させるモータ56(
図4)と、送りローラ52a,52bおよびニップローラ54を駆動させるモータ58(
図4)とを有している。そして、
図4に示すように、モータ56,58が制御装置24に電気的に接続されている。
【0021】
排出ユニット32は、上下方向に延びる排出路R2を構成するガイド60と、排出路R2の上流側の端部に近接して設けられ、搬送ベルト38の表面から記録媒体Pを剥離する剥離プレート62と、排出路R2の途中に設けられた一対の第1送りローラ64a,64bと、第1送りローラ64a,64bから下流側に離間して排出路R2の途中に設けられた一対の第2送りローラ66a,66bと、ガイド60の下流側の端部に近接して設けられた一対の排出ローラ68a,68bとを有している。また、排出ユニット32は、一対の第1送りローラ64a,64b、一対の第2送りローラ66a,66bおよび一対の排出ローラ68a,68bを駆動させるモータ70(
図4)を有している。そして、
図4に示すように、モータ70が制御装置24に電気的に接続されている。
【0022】
図1に示すように、一対の第1送りローラ64a,64bおよび一対の第2送りローラ66a,66bは、インク吐出ヘッド72により画像が形成された記録媒体Pの形状を保持しつつ排出部26に向けて記録媒体Pを搬送するように構成されている。一対の第1送りローラ64a,64bおよび一対の第2送りローラ66a,66bの回転速度は、制御装置24によりモータ70(
図4)を制御することにより制御可能である。したがって、記録媒体Pに対する乾燥処理およびカール矯正処理に長時間を必要とする場合には、制御装置24でモータ70(
図4)を制御して、これらのローラの回転速度を遅くすることによって又はこれらのローラの回転を一時的に停止させることによって、乾燥処理およびカール矯正処理のための時間を長く取ることができる。一方、記録媒体Pに対する乾燥処理およびカール矯正処理に長時間を必要としない場合には、制御装置24でモータ70(
図4)を制御して、これらのローラの回転速度を速くすることによって、印刷のスループットを向上させることができる。つまり、本実施形態では、記録媒体Pに対して共通の処理方法により乾燥処理およびカール矯正処理を施す後処理機構22が、搬送機構20の排出ユニット32により構成されている。乾燥処理およびカール矯正処理に必要な後処理機構22の制御量は、モータ70(
図4)の回転数又は一時停止時間である。
【0023】
図1に示すように、搬送ユニット28の上方には、複数のヘッドユニット14a〜14dが、副走査方向に並んで配置されており、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれの下方に位置する領域が、インクが吐出される吐出領域となっている。ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれは、主走査方向に延びて設けられた略直方体状のヘッドホルダ71と、ヘッドホルダ71の下面に主走査方向に延びて設けられたインク吐出ヘッド72とを有している。つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ10はライン式プリンタである。
【0024】
図2および
図3に示すように、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれのインク吐出ヘッド72は、1つの流路ユニット74と、その上面に接合された複数(本実施形態では8つ)の駆動部76とを有している。
図3に示すように、流路ユニット74は、複数の金属製プレートからなる積層体であり、流路ユニット74の下面が、複数のノズル78が形成されたノズル面74aとなっている。また、流路ユニット74の内部には、マニホールド80(
図2)と、マニホールド80(
図2)に連通する副マニホールド82と、副マニホールド82からアパーチャ84および圧力室86を経てノズル78に至る複数の個別インク流路88とが形成されている。
図2に示すように、流路ユニット74の上面74bには、マニホールド80に連通する複数のインク供給口80aが形成されている。そして、
図1に示すヘッドホルダ71の内部におけるインク吐出ヘッド72の上方には、インク供給口80a(
図2)に連通するリザーバ(図示省略)が配置されており、当該リザーバがチューブおよびポンプ(図示省略)を介してインクタンク16a〜16dのいずれかに接続されている。
【0025】
図2に示すように、複数の駆動部76のそれぞれは、主走査方向に並べて配置されている。
図3に示すように、複数の駆動部76のそれぞれは、圧力室86に対応する複数のアクチュエータ90(
図3中に格子線で示す。)を有しており、複数のアクチュエータ90のそれぞれは、圧電層90aと、これを挟むように配置された一対の電極90b,90cとを有している。電極90b,90c間にヘッド制御部92(
図4)から駆動電圧が供給されると、圧電層90aが厚み方向と直交する方向に収縮され、圧電層90aの下方に位置する部分が圧力室86の内側に凸となるように変形される。これにより、圧力室86の容積が小さくなる。この状態が基本状態である。基本状態において、電極90b,90c間にグランド電圧が供給されると、圧電層90aの収縮状態が解除され、圧力室86の容積が大きくなる。したがって、基本状態が保持された状態で、電極90b,90c間にグランド電圧が瞬間的に供給されると、グランド電圧が供給されるタイミングで圧力室86の容積が変動し、圧力室86内のインクに吐出エネルギが付与される。この吐出エネルギによってノズル78からインクが吐出される。
【0026】
図4は、制御装置24(制御手段)の機能ブロック図である。
図4に示す制御装置24は、CPUと、CPUが実行するプログラムや各種のデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラムの実行時にデータを一時的に記憶するRAM(いずれも図示省略)とを有するコンピュータである。そして、制御装置24がプログラムに従って動作することによって、画像データ記憶部94、インク吐出データ生成部96、インク吐出データ記憶部98、ヘッド制御部92、搬送制御部100、評価領域別カウント部102、第1処理量決定部104、第2処理量決定部106および後処理制御部108が実現される。制御装置24には、各種の情報を入力する操作パネル110が接続されている。
【0027】
図4に示すように、画像データ記憶部94は、記録媒体P(
図1)上に記録される画像に係る画像データを記憶する。インクジェットプリンタ10には、画像データを生成する外部コンピュータ112や記憶メディアから画像データを読み取る読取装置(図示省略)等が接続されており、これらから画像データ記憶部94に画像データが転送される。
【0028】
図5は、或領域のインク吐出データを色ごとに示す図であり、(a)はブラックのインク吐出データ、(b)はシアンのインク吐出データ、(c)はマゼンタのインク吐出データ、(d)はイエローのインク吐出データを示している。
図5に示すインク吐出データは、記録媒体P上の同一領域(1〜6までの6行分およびa〜fまでの6列分の計36個分の単位領域D)に形成する画像に対応している。
【0029】
図4に示すインク吐出データ生成部96は、画像データ記憶部94に記憶された画像データに基づいて、インク吐出データ(
図5)を生成する。インク吐出データは、記録媒体P上に仮想的に定められた単位領域D(画素領域)に形成するドットのドットサイズ(ドットの大きさ)を示すデータである。インク吐出データに示されたドットサイズは、インク吐出ヘッド72(
図1)が記録媒体P上の単位領域Dへ吐出するインクの液滴サイズ(ゼロ,小滴,中滴,大滴の4段階のいずれか)を示している。
図5に示すS,M,Lは、記録媒体P上に仮想的に定められた単位領域Dに形成するドットのドットサイズ(小滴,中滴,大滴)を示しており、S,M,Lのいずれの記載もないことは、ドットを形成しないこと(ゼロ)を示している。ドットサイズが異なると、単位領域Dへ吐出されるインクの液滴量が異なる。インク吐出データ生成部96により生成されたインク吐出データ(
図5)は、インク吐出データ生成部96からインク吐出データ記憶部98へ転送される。
【0030】
図4に示すインク吐出データ記憶部98は、4つのインク吐出ヘッド72(
図1)のそれぞれに対応する4つのインク吐出データ(
図5)を記憶する。インク吐出データ記憶部98は、少なくとも1ページ分のインク吐出データ(
図5)を記憶する。
【0031】
図4に示すヘッド制御部92は、インク吐出データ記憶部98に記憶されたインク吐出データに基づいてパルス波形の駆動電圧を生成する。そして、当該駆動電圧によりインク吐出ヘッド72のインク吐出動作を制御する。ヘッド制御部92は、インク吐出ヘッド72から吐出するインクの量をゼロ,小滴,中滴,大滴の4段階で変化させることができる。搬送制御部100は、送給ユニット30、搬送ユニット28および排出ユニット32(
図1)に沿って記録媒体Pが搬送されるように、モータ46,56,58を制御する。
【0032】
図6は、記録媒体Pに定められた複数の評価領域Bと単位領域Dとの関係を示す図である。複数の評価領域Bのそれぞれは、記録媒体P上の位置によって他と区別することができる。そこで、以下では、複数の評価領域Bのそれぞれを区別する必要がある場合には、評価領域B1〜B16と記載し、区別する必要がない場合には、単に評価領域Bと記載する。
図6では、評価領域に対してB1〜B16の符号を用いているが、以下の説明では、これらを単に評価領域Bと記載することがある。
【0033】
図4に示す評価領域別カウント部102は、インク吐出データ生成部96からインク吐出データ記憶部98へインク吐出データが転送される過程で、転送されてくるインク吐出データを取得し、複数の評価領域B(
図6)のそれぞれの液滴数およびインクの吐出量を逐次カウントする。
図6に示すように、本実施形態では、1枚の記録媒体Pが副走査方向に4行×主走査方向に4列に分割されており、1枚の記録媒体Pは合計16個の評価領域Bに分かれている。各評価領域Bは、複数の単位領域D(画素領域)が集められた領域である。
【0034】
各評価領域Bにおけるインクの液滴数は、4つのインク吐出ヘッド72(
図1)のそれぞれから当該評価領域Bへ吐出されるインクの液滴の数である。本実施形態において、或評価領域Bの液滴数は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各インク吐出データにおいて当該評価領域Bのドット数をそれぞれカウントし、これを総計することにより求められる。例えば、
図5(a)〜(d)に示す6×6の単位領域Dが或1つの評価領域Bに対応するとすれば、この評価領域Bの液滴数は26滴(=ブラック6滴+シアン3滴+マゼンタ6滴+イエロー11滴)である。
【0035】
各評価領域Bにおけるインクの吐出量は、4つのインク吐出ヘッド72(
図1)のそれぞれから当該評価領域Bへ吐出されるインクの液滴量の総量である。したがって、或評価領域Bのインクの吐出量は、当該評価領域Bに相当する全色のインク吐出データのドットサイズごとのドット数に、そのドットサイズに対応する液滴量を乗じたものを総計することにより求められる。例えば、
図5(a)〜(d)に示す6×6の単位領域Dが或1つの評価領域Bに対応するとすれば、この評価領域BにおけるSサイズのドット数は10個であり、Mサイズのドット数は12個であり、Lサイズのドット数は4個である。したがって、Sサイズの液滴量を7pl、Mサイズの液滴量を14pl、Lサイズの液滴量を21plとすると、当該評価領域Bにおけるインクの吐出量は322pl(=10×7pl+12×14pl+4×21pl)となる。
【0036】
図4に示す第1処理量決定部104は、複数の評価領域Bのうち少なくともインクの吐出量が最大である評価領域Bにおけるインクの吐出量に基づいて乾燥処理に必要な後処理機構22(
図1)の制御量である第1処理量Uを決定する。各評価領域Bにおけるインクの吐出量は、上記の通り評価領域別カウント部102において画像データに基づいて算出される。各評価領域Bにおけるインクの乾燥に必要な時間は、実験により求められた「インクの吐出量―乾燥時間」に関するデータ(テーブルデータ)に基づいて決定される。本実施形態における第1処理量Uは、後処理機構22における記録媒体Pの搬送速度又は一時停止時間に対応するモータ70の回転数又は一時停止時間である。この第1処理量Uすなわち後処理機構22の制御量は、実験により求められた「乾燥時間―制御量」に関するデータ(テーブルデータ)に基づいて決定される。つまり、第1処理量決定部104は、少なくともインクの吐出量が最大である評価領域Bにおけるインクの吐出量と、「インクの吐出量―乾燥時間」に関するデータと、「乾燥時間―制御量」に関するデータとに基づいて第1処理量Uを決定する。
【0037】
また、第1処理量決定部104は、評価領域Bに吐出されるインクの液滴数が多いほど第1処理量Uを小さく決定する。インクの吐出量が同じであれば、液滴数が多い(すなわち吐出面積が広い)ほど記録媒体Pに吐出されたインクを速く乾燥させることができる。したがって、液滴数が多いほど第1処理量Uを小さく決定することにより、処理効率を高めることができる。
【0038】
第2処理量決定部106は、各評価領域B1〜B16について、インクの吐出量および記録媒体P上の位置に基づいてカール矯正処理に必要な後処理機構22(
図1)の制御量である第2処理量Q1〜Q16を決定する。各評価領域B1〜B16におけるインクの吐出量は、上記の通り評価領域別カウント部102において画像データに基づいて算出される。
【0039】
第2処理量決定部106が第2処理量Q1〜Q16を決定する際には、まず、実験により求められた「インクの吐出量―カール矯正基準時間」に関するデータ(テーブルデータ)に基づいてカール矯正基準時間t1〜t16が決定される。続いて、カール矯正基準時間t1〜t16に記録媒体P上の位置に応じて定められた係数α(本実施形態では、α1,α2,α3のいずれか)を掛け算することによって、各評価領域B1〜B16におけるカールの矯正に必要なより正確な時間(以下、「カール矯正時間」という。)T1〜T16が算出される。その後、「カール矯正時間―制御量」に関するデータ(テーブルデータ)に基づいて、第2処理量Q1〜Q16(制御量)が決定される。なお、以下の説明では、第2処理量Q1〜Q16を単に第2処理量Qと記載することがある。
【0040】
カール矯正基準時間t1〜t16は、記録媒体P上の位置を無視したときの評価領域B1〜B16のそれぞれに対応するカール矯正時間である。カール矯正基準時間t1〜t16に、記録媒体P上の位置に応じて定められた係数α(本実施形態では、α1,α2,α3のいずれか)を掛け算することによって各評価領域B1〜B16におけるカール矯正時間T1〜T16が算出される。
【0041】
本実施形態では、記録媒体Pの中央に位置する4つの評価領域B6,B7,B10,B11について係数α1が定められており、記録媒体Pの端(隅を除く)に位置する8つの評価領域B2,B3,B5,B8,B9,B12,B14,B15について係数α2(α2>α1)が定められている。また、記録媒体Pの隅に位置する4つの評価領域B1,B4,B13,B16について係数α3(α3>α2>α1)が定められている。上述の通り、各評価領域B1〜B16のカール矯正時間T1〜T16は、カール矯正基準時間t1〜t16に係数α1,α2,α3のいずれかを掛け算することによって算出される。例えば、中央に位置する評価領域B6についてのカール矯正時間T6は、T6=t6×α1の式で算出され、端(隅を除く)に位置する評価領域B2についてのカール矯正時間T2は、T2=t2×α2の式で算出される。また、隅に位置する評価領域B1についてのカール矯正時間T1は、T1=t1×α3の式で算出される。そして、「カール矯正時間―制御量」に関するデータ(テーブルデータ)に基づいて第2処理量Q1〜Q16が決定される。
【0042】
このように、本実施形態では、カール矯正基準時間t1〜t16に係数α1,α2,α3(α3>α2>α1)のいずれかを掛け算することによって、記録媒体Pの中央から記録媒体Pの端に位置するに伴い、第2処理量Qが大きくなるようにしている。つまり、記録媒体Pにおいては、その中央に位置する評価領域Bにおけるインクの吐出量よりも、その端に位置する評価領域Bにおけるインクの吐出量の方がカールの発生に寄与する度合が大きくなる。そこで、記録媒体Pの端に位置する評価領域Bについては、中央に位置する評価領域Bよりも係数αの値を大きくして第2処理量Qを大きくし、記録媒体Pのカールを効果的に抑制するようにしている。
【0043】
記録媒体Pが用紙の場合には、用紙の繊維方向よりも繊維方向に直交する方向の方がカールが発生し易いことが知られている。そこで、この場合、第2処理量決定部106は、記録媒体Pの端(隅を除く)に位置する8つの評価領域B2,B3,B5,B8,B9,B12,B14,B15を、さらに、記録媒体Pの繊維方向の両端に位置する評価領域B2,B3,B14,B15と、繊維方向に直交する方向の両端に位置する評価領域B5,B8,B9,B12とに区別し、後者の係数α2aを前者の係数α2bよりも大きくする(α3>α2a>α2b>α1)。これにより、記録媒体Pのカールをより効果的に抑制することができる。このような繊維方向に応じた措置は、ユーザが操作パネル110から入力する指示信号に基づいて実行されてもよい。
【0044】
後処理制御部108は、第1処理量Uと各評価領域B1〜B16における第2処理量Q1〜Q16のうち、最大の後処理機構22(
図1)の制御量により後処理機構22(
図1)を制御して記録媒体Pの乾燥処理およびカール矯正処理を施させる。本実施形態における制御量は、後処理機構22における記録媒体Pの搬送速度又は一時停止時間に対応するモータ70の回転数又は一時停止時間であり、後処理制御部108は、上記最大の制御量に基づいてモータ70の回転数又は一時停止時間を制御する。
【0045】
図7は、制御装置24(制御手段)による後処理機構22(
図1)の制御の流れを示すフロー図である。
図7に示すように、制御装置24の制御動作が実行されると、まず、ステップS1において、評価領域別カウント部102(
図4)により、複数の評価領域B1〜B16(
図6)のそれぞれのインクの吐出量が算出される。続いて、ステップS3において、第1処理量決定部104(
図4)により、乾燥処理に必要な後処理機構22(
図1)の制御量である第1処理量Uが決定される。ここで決定される第1処理量Uは、インクの吐出量が最大である評価領域Bに対応する1つの処理量であってもよいし、インクの吐出量が最大である評価領域Bを含む複数の評価領域Bに対応する複数の処理量であってもよい。また、ステップS5において、第2処理量決定部106(
図4)により、複数の評価領域B1〜B16のそれぞれについて、カール矯正処理に必要な後処理機構22(
図1)の制御量である第2処理量Q1〜Q16が決定される。
【0046】
そして、ステップS7において、後処理制御部108(
図4)により、第1処理量Uと各評価領域B1〜B16における第2処理量Q1〜Q16のうち、最大の後処理機構22(
図1)の制御量が決定され、ステップS9において、当該最大制御量で後処理機構22(
図1)が駆動される。つまり、制御量がモータ70の回転数である場合には、乾燥処理およびカール矯正処理に必要な時間を確保できるように、最大の制御量に応じてモータ70の回転数が制御され、記録媒体Pの搬送速度が調整される。
一方、制御量がモータ70の一時停止時間である場合には、乾燥処理およびカール矯正処理に必要な時間を確保できるように、最大の制御量に応じてモータ70の一時停止時間が制御され、記録媒体Pの一時停止時間が調整される。これにより、記録媒体Pに対する乾燥処理およびカール矯正処理を、無駄な処理を生じることなく効率よく施すことができる。次のステップS11では、後処理機構22(
図1)の制御を終了するか否かが判断され、YESと判断されると終了し、NOと判断されるとステップS1に戻る。
【0047】
本実施形態では、乾燥処理(第1処理)に必要な第1処理量Uと複数の評価領域B1〜B16のそれぞれにおけるカール矯正処理(第2処理)に必要な第2処理量Q1〜Q16のうち、最大の処理量すなわち後処理機構22(
図1)の制御量により記録媒体Pの乾燥処理およびカール矯正処理を施させるようにしているので、これらの処理を統合して無駄な処理の発生を抑制できる。
【0048】
記録媒体Pの中央に位置する評価領域Bでは、インクの吐出量にかかわらずカールが生じ難く、当該評価領域Bについては、カールを矯正する必要性が低い。本実施形態では、制御装置24(
図1)は、複数の評価領域B1〜B16それぞれの第2処理量Q1〜Q16を決定する際に、記録媒体Pの位置が、記録媒体Pの中央から記録媒体Pの端に位置するに伴い、第2処理量Q1〜Q16を大きくするようにしているので、後処理機構22(
図1)による記録媒体Pの処理量を適正に定めることができる。
【0049】
(他の実施形態)
図8は、他の実施形態における制御装置24(制御手段)による後処理機構22(
図1)の制御の流れを示すフロー図である。
図6に示す記録媒体Pの中央部に位置する評価領域(以下、「中央評価領域」という。)B6,B7,B10,B11では、インクの吐出量にかかわらずカールが生じ難く、当該中央評価領域については、カールを矯正する必要性が低い。一方、記録媒体Pの端部に位置する評価領域(以下、「端部評価領域」という。)B1〜B5,B8,B9,B12〜B16では、インクの吐出量がカール量に影響する度合いが大きく、端部評価領域のいずれか一つに着目すると、カール矯正処理に必要な処理量は、乾燥処理に必要な処理量よりも常に大きくなる。したがって、中央評価領域については、カール矯正処理に必要な第2処理量Qを決定する必要性は低く、端部評価領域については、乾燥処理に必要な第1処理量Uを決定するときに考慮する必要性は低い。そこで、
図8に示す他の実施形態では、少なくとも1つの中央評価領域Bを除外して第2処理量Qを決定し、少なくとも1つの端部評価領域Bを除外して第1処理量Uを決定するようにしている。
【0050】
図8に示すように、他の実施形態において、制御装置24の制御動作が実行されると、まず、ステップS21において、
図4に示す評価領域別カウント部102により、複数の評価領域B1〜B16(
図6)のそれぞれのインクの吐出量が算出される。そして、ステップS23において、全ての中央評価領域B6,B7,B10,B11におけるインクの吐出量が所定の閾値βより大きいか否かが判断される。YES(大きい)と判断されると、次のステップS25において複数の評価領域B1〜B16のうち少なくともインクの吐出量が最大である評価領域Bにおけるインクの吐出量に基づいて第1処理量Uが決定される。上述の通り、端部評価領域B1〜B5,B8,B9,B12〜B16については、乾燥処理に必要な第1処理量Uを決定するときに考慮する必要性は低いため、ステップS25では、これらのうち少なくとも1つを除外して第1処理量Uが決定される。
【0051】
一方、ステップS23においてNO(小さい)と判断されると、第1処理量Uが決定されることなく、ステップS27に進む。つまり、全ての中央評価領域B6,B7,B10,B11におけるインクの吐出量が所定の閾値βより小さい場合には、乾燥処理を行う必要がないとして、乾燥処理のための工程が省略される。したがって、NOと判断された場合には、後処理機構22(
図1)の最大制御量をより迅速に決定することができる。
【0052】
ステップS27では、複数の評価領域B1〜B16のうち、端部評価領域B1〜B5,B8,B9,B12〜B16のそれぞれについて、第2処理量Q1〜Q5,Q8,Q9,Q12〜Q16が決定される。上述の通り、中央評価領域B6,B7,B10,B11については、カール矯正処理に必要な第2処理量Qを決定する必要性が低いため、ステップS27では、第2処理量Q6,Q7,Q10,Q11を決定する各工程のうち少なくとも1つが省略される。
【0053】
必要な第1処理量Uと必要な第2処理量Qが決定されると、ステップS29において、これらのうち、最大の後処理機構22(
図1)の制御量が決定され、ステップS31において、当該最大の制御量で後処理機構22(
図1)が駆動される。これにより、記録媒体Pに対する乾燥処理およびカール矯正処理が施される。次のステップS33では、後処理機構22(
図1)の制御を終了するか否かが判断され、YESと判断されると終了し、NOと判断されるとステップS21に戻る。
【0054】
この実施形態では、記録媒体Pの中央部に位置する少なくとも1つの中央評価領域Bを除外して、他の評価領域Bについて第2処理量Qを決定するようにしているので、必要な第2処理量Qを迅速に決定することができる。また、記録媒体Pの端部に位置する少なくとも1つの評価領域(すなわち端部評価領域)Bを除外して、他の評価領域Bにおけるインクの吐出量に基づいて第1処理量Uを決定するようにしているので、第1処理量Uを迅速に決定することができる。
【0055】
図9は、記録媒体Pに定められた評価領域Bの変形例を示す図であり、
図10は、記録媒体Pに定められた評価領域Bの他の変形例を示す図である。上述の実施形態では、1枚の記録媒体Pが16個の評価領域Bに分かれているが、記録媒体Pの分割数は、特に限定されるものではなく、例えば、
図9の変形例のように9個に分割されてもよいし、
図10の変形例のように3個に分割されてもよい。
【0056】
図9の変形例のように、記録媒体Pが副走査方向に3行×主走査方向に3列に分割されている場合には、記録媒体Pの中央に位置する1つの評価領域B5について第2処理量Q5を決定するための係数α1が定められ、記録媒体Pの端(隅を除く)に位置する4つの評価領域B2,B4,B6,B8について第2処理量Q2,Q4,Q6,Q8を決定するための係数α2(α2>α1)が定められる。また、記録媒体Pの隅に位置する4つの評価領域B1,B3,B7,B9について第2処理量Q1,Q3,Q7,Q9を決定するための係数α3(α3>α2>α1)が定められる。そして、
図8のフロー図に従って後処理機構22(
図1)を制御する場合には、評価領域B5を「中央評価領域」とし、評価領域B1〜B4,B6〜B9を「端部評価領域」として、ステップS23〜S29の各工程が実行される。
【0057】
図10の変形例のように、記録媒体Pが副走査方向に1行×主走査方向に3列に分割されている場合には、記録媒体Pの中央に位置する1つの評価領域B2について第2処理量Q2を決定するための係数α1が定められる。また、記録媒体Pの端に位置する2つの評価領域B1,B3について第2処理量Q1,Q3を決定するための係数α2(α2>α1)が定められる。そして、
図8のフロー図に従って後処理機構22(
図1)を制御する場合には、評価領域B2を「中央評価領域」とし、評価領域B1,B3を「端部評価領域」として、ステップS23〜S29の各工程が実行される。
【0058】
なお、「後処理機構」は、記録媒体Pに対して共通の処理方法により乾燥処理およびカール矯正処理を施すものであればよく、上述の実施形態のように搬送機構20(
図1)に限定されるものではない。例えば、「後処理機構」は、インク吐出ヘッド72により画像が形成された記録媒体Pの形状を保持しつつ乾燥させる乾燥機構(図示省略)であってもよいし、搬送機構20(
図1)および乾燥機構(図示省略)の両方であってもよい。「後処理機構」が乾燥機構(図示省略)である場合、乾燥機構は、ヒータ、送風装置および押さえローラ等を有している。そして、ヒータの出力の大きさ、ヒータの稼動時間、送風装置の出力の大きさ、送風装置の稼動時間および押さえローラの押さえ時間等が乾燥処理およびカール矯正処理に必要な後処理機構の制御量となる。
【0059】
また、上述の実施形態では、第2処理量決定部106は、複数の評価領域Bそれぞれについて、記録媒体P上の位置および液体の吐出量に基づいて第2処理量Qを決定するようにしているが、さらに、インクの液滴数に基づいて第2処理量Qを決定するようにしてもよい。つまり、インクの液滴数が多いほど第2処理量Qが大きくなるように係数αの値を変更するようにしてもよい。発明者等は、インクの吐出量が同じであれば、液滴数が多いほどカール量が大きくなることを実験等により確認している。したがって、インクの液滴数が多いほど第2処理量Qを大きくすることにより、カールの発生量を効果的に抑制することができる。
【0060】
また、制御装置24は、単一のCPUにより構成されてもよいし、複数のCPU、特定のASIC(application specific integrated circuit)、或いは、単数又は複数のCPUと特定のASICとの組み合わせにより構成されてもよい。
【0061】
そして、
図1に示すように、上述の実施形態では、本発明を、インクを吐出するインクジェットプリンタ10に適用しているが、他の実施形態では、本発明を、他の液体を吐出する液滴吐出装置に適用してもよい。また、液滴吐出方式としては、アクチュエータ方式に代えて、発熱素子で液体の体積を膨張させたときの圧力を利用して吐出させる方式を用いてもよい。
【0062】
10… インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)
22… 後処理機構
26… 排出部
24… 制御装置(制御手段)
72… インク吐出ヘッド
94… 画像データ記憶部