(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978750
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】RQL方式の低NOx燃焼器
(51)【国際特許分類】
F23R 3/42 20060101AFI20160817BHJP
F23R 3/06 20060101ALI20160817BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20160817BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
F23R3/42 A
F23R3/06
F23R3/28 D
F02C7/22 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-111519(P2012-111519)
(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公開番号】特開2013-238352(P2013-238352A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】廣光 永兆
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−163626(JP,A)
【文献】
特開2000−193244(JP,A)
【文献】
特開2003−139325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンに用いられ、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL方式の低NOx燃焼器であって、
上流側に隔壁を有し、内側に混合気を燃焼させるための燃焼室を有した燃焼器ライナと、
前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記隔壁に設けられ、一次空気を前記燃焼室内に導入する一次空気導入部材と、を具備し、
前記燃焼器ライナの周部に二次空気を前記燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられ、
前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の上流側に燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させるための一次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の下流側に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させるための二次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記一次燃焼領域と前記二次燃焼領域との間に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気を急速混合するための急速混合領域が形成され、
前記燃焼器ライナの周部の内壁面における前記二次空気導入孔よりも上流側であって前記一次燃焼領域と前記急速混合領域の境界位置に、前記二次空気導入孔よりも前記燃焼器ライナの高さ方向へ突出した環状又は円弧状の突出壁が設けられているRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項2】
ガスタービンに用いられ、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL方式の低NOx燃焼器であって、
上流側に環状の隔壁を有し、内側に混合気を燃焼させるための燃焼室を有した中空環状の燃焼器ライナと、
前記隔壁に周方向に沿って間隔を置いて設けられ、前記燃焼室内に燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、
前記隔壁における各燃料噴射弁の周囲に設けられ、一次空気を前記燃焼室内に導入する一次空気導入部材と、を具備し、
前記燃焼器ライナの周部に二次空気を前記燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられ、
前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の上流側に燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させるための一次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の下流側に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させるための二次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記一次燃焼領域と前記二次燃焼領域との間に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気を急速混合するための急速混合領域が形成され、
複数の前記二次空気導入孔は、前記燃焼器ライナの外周部に周方向に沿って間隔を置いて設けられた複数のアウタ二次空気導入孔と、前記燃焼器ライナの内周部に円周方向に沿って間隔を置いて設けられた複数のインナ二次空気導入孔とからなり、複数の前記アウタ二次空気導入孔及び複数の前記インナ二次空気導入孔は、非対向になるように周方向に沿って互い違いに配置され、
前記燃焼器ライナの周部の内壁面における前記一次燃焼領域と前記急速混合領域の境界位置に前記燃焼器ライナの高さ方向へ突出した環状又は円弧状の突出壁が設けられているRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項3】
ガスタービンに用いられ、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL方式の低NOx燃焼器であって、
上流側に隔壁を有し、内側に混合気を燃焼させるための燃焼室を有した燃焼器ライナと、
前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記隔壁に設けられ、一次空気を前記燃焼室内に導入する一次空気導入部材と、を具備し、
前記燃焼器ライナの周部に二次空気を前記燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられ、
前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の上流側に燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させるための一次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の下流側に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させるための二次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記一次燃焼領域と前記二次燃焼領域との間に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気を急速混合するための急速混合領域が形成され、
前記燃焼器ライナの周部の内壁面における前記一次燃焼領域と前記急速混合領域の境界位置に前記燃焼器ライナの高さ方向へ突出した環状又は円弧状の突出壁が設けられ、前記突出壁の高さは、前記燃焼器ライナの周部の内壁面に衝突した二次空気の流れの境界層厚さよりも高く設定されているRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項4】
各二次空気導入孔は、前記燃焼器ライナに設けられたスリーブの内側に有している請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のRQL方式の低NOx燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL(Rich burn Quick quench Lean burn: 過濃燃焼急速混合希薄燃焼)方式の低NOx燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジェットエンジン等のガスタービンに用いられる燃焼器において、環境保護の観点からNOxの発生量の低減化が求められおり、その要請に応えるために、簡易な構成からなるRQL方式の低NOx燃焼器が開発されている。そして、RQL方式の低NOx燃焼器の特徴部分について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
RQL方式の低NOx燃焼器における燃焼器ライナの隔壁には、一次空気を燃焼器ライナの燃焼室に導入するスワラ等の一次空気導入部材が設けられており、燃焼器ライナの周部には、二次空気を燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられている。また、燃焼室内における二次空気導入孔の上流側には、燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態(酸素不足状態)で過濃燃焼(一次燃焼)させるための一次燃焼領域が形成されており、燃焼室内における二次空気導入孔の下流側には、一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼(二次燃焼)させるための二次燃焼領域が形成されている。更に、燃焼室内における一次燃焼領域と二次燃焼領域との間には、一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気を急速混合するための急速混合領域が形成されている。
【0004】
従って、RQL方式の低NOx燃焼器の運転中、一次燃焼領域における過濃燃焼、急速混合領域における急速混合、及び二次燃焼領域における希薄燃焼が連続して行われることにより、火炎温度を下げてNOx(窒化酸化物)の発生量の低減を図りつつ、燃焼ガスを生成して燃焼器ライナから排出することができる。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−208938号公報
【特許文献2】特開2011−163626号公報
【特許文献3】特開2009−74798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、急速混合領域における急速混合を十分に確保するために、二次空気導入孔から導入される二次空気の貫通度(径方向の貫通度)を高く設定する必要がある。一方、二次空気の貫通度を高く設定すると、燃焼器ライナの周部の内壁面に衝突した二次空気の流れ(壁面衝突噴流)の一部が燃焼器ライナの周部の内壁面に沿って一次燃焼領域側に逆流することがある。そのため、一次燃焼領域における燃焼器ライナの周部の内壁面近傍の火炎温度が局所的に高くなって、NOxが発生すると共に、燃焼器ライナの内壁面の焼損等を招くことがある。
【0008】
つまり、燃焼器ライナの内壁面の焼損等を十分に防止しつつ、高いレベルでNOxの発生量の低減を図ることは容易でないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のPQL方式の低NOx燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の
態様は、ガスタービンに用いられ、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL方式の低NOx燃焼器であって、上流側に隔壁を有し、内側に混合気を燃焼させるための燃焼室を有した燃焼器ライナと、前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に燃料を噴射(噴霧)する燃料噴射弁と、前記隔壁に設けられ、一次空気を前記燃焼室内に導入する一次空気導入部材と、を具備し、前記燃焼器ライナの周部に二次空気を前記燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられ、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の上流側に燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態(酸素不足状態)で過濃燃焼(一次燃焼)させるための一次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の下流側に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼(二次燃焼)させるための二次燃焼領域が形成され、前記燃焼室内における前記一次燃焼領域と前記二次燃焼領域との間に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気を急速混合するための急速混合領域が形成され、前記燃焼器ライナの周部の内壁面における
前記二次空気導入孔よりも上流側であって前記一次燃焼領域と前記急速混合領域の境界位置
に、前記二次空気導入孔よりも前記燃焼器ライナの高さ方向(内方向)へ突出した環状又は円弧状の突出壁(フェンス)が設けられていること
である。
【0011】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「燃焼器ライナの周部」とは、アニュラ型の低NOx燃焼器の場合には燃焼器ライナの外周部又は内周部のことをいい、カン型の低NOx燃焼器の場合には燃焼器ライナの外周部のことをいう。更に、「上流側」とは、空気、混合気、又は燃焼ガスの主流の流れ方向から見て上流側のことをいい、「下流側」とは、空気、混合気、又は燃焼ガスの主流の流れ方向から見て下流側のことをいう。
【0012】
本発明の
態様によると、前記燃料噴射弁によって前記燃焼室内に燃料が噴射されると共に、前記一次空気導入部材から一次空気が前記燃焼室内に導入されることにより、前記一次燃焼領域において燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させて、燃焼ガスを生成する。続いて、複数の前記二次空気導入孔から多量の二次空気が前記燃焼室内に導入されることにより、前記急速混合領域において前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気が急速に混合され、前記二次燃焼領域において前記急速混合領域からの混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させて、燃焼ガスを生成する。そして、前記一次燃焼領域における過濃燃焼、前記急速混合領域における急速混合、及び前記二次燃焼領域における希薄燃焼が連続して行われることにより、火炎温度を下げてNOx(窒化酸化物)の発生量の低減を図りつつ、燃焼ガスを生成して前記燃焼器ライナから排出することができる。
【0013】
ここで、前記燃焼器ライナの周部の内壁面における前記境界位置に前記燃焼器ライナの高さ方向へ突出した環状又は円弧状の前記突出壁が設けられているため、前記二次空気導入孔から導入される二次空気の貫通度(径方向の貫通度)が高く設定されても、前記燃焼器ライナの周部の内壁面に衝突した二次空気の流れ(壁面衝突噴流)の一部が前記燃焼器ライナの周部の内壁面に沿って前記一次燃焼領域側に逆流することを十分に抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二次空気の貫通度が高く設定されても、前記燃焼器ライナの周部の内壁面に衝突した壁面衝突噴流の一部が前記燃焼器ライナの周部の内壁面に沿って前記一次燃焼領域側に逆流することを十分に抑えることができるため、前記燃焼器ライナの周部の内壁面の焼損等を十分に防止しつつ、高いレベルでNOxの発生量の低減を図ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るRQL方式の低NOx燃焼器の部分側断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るRQL方式の低NOx燃焼器におけるアウタ突出壁及びインナ突出壁の高さについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。なお、図面中、「F」は、前方向(上流方向)、「R」は、後方向(下流方向)をそれぞれ指してある。
【0017】
図1、
図2、及び
図4に示すように、本発明の実施形態に係るRQL(Rich burn Quick quench Lean burn: 過濃燃焼急速混合希薄燃焼)方式の低NOx燃焼器1は、燃料と空気(一次空気、二次空気)との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するものである。また、低NOx燃焼器1は、ジェットエンジン(図示省略)に用いられることの多い所謂アニュラ型の燃焼器である。
【0018】
低NOx燃焼器1は、中空環状の燃焼器ケース3を具備しており、この燃焼器ケース3は、環状のアウタケース5と、このアウタケース5の内側にジェットエンジンのエンジン軸心ECを中心として同心円状に設けられた環状のインナケース7とを備えている。また、燃焼器ケース3の入口側は、ジェットエンジンにおける圧縮機(図示省略)からの空気(圧縮空気)を導入可能である。
【0019】
燃焼器ケース3内には、中空環状の燃焼器ライナ9が同心状に設けられており、この燃焼器ライナ9は、環状のアウタライナ11と、このアウタライナ11の内側に同心状に設けられた環状のインナライナ13とを備えている。また、アウタライナ11の上流端(上流側の端部)とインナライナ13の上流端の間には、環状の隔壁(前壁)が連結するように設けられており、換言すれば、燃焼器ライナ9は、上流側に、環状の隔壁15を有している。また、アウタライナ11とインナライナ13との間には、燃料と空気(一次空気、二次空気)との混合気を燃焼させるための環状の燃焼室17が区画形成されており、換言すれば、燃焼器ケース3は、内側に、環状の燃焼室17を有している。
【0020】
隔壁15には、燃焼室17内に燃料を円錐状の噴霧流Sとして噴射(噴霧)する複数の燃料噴射弁19が円周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各燃料噴射弁19は、例えば公知の構成からなる渦巻き噴射弁であって、中央(中心部)に、燃料を噴霧可能な噴射孔(ノズル孔)19hを有している。また、アウタケース5には、燃料を供給可能な複数(1つのみ図示)の燃料供給管21が円周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各燃料供給管21の先端部は、対応する燃料噴射弁19の基部に接続されている。なお、アウタケース5の適宜位置には、燃焼室17内で燃料に着火(点火)する複数の点火栓(図示省略)が燃焼室17側へ突出して設けられている。
【0021】
隔壁15における各燃料噴射弁19の周りには、一次空気を燃焼室17内に旋回流として導入する一次空気導入部材としてのスワラ(軸流スワラ又は接線流スワラ)23が設けられている。
【0022】
アウタライナ11(燃焼器ライナ9の外周部)には、複数のアウタスリーブ25が周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各アウタスリーブ25は、内側に、二次空気を燃焼室17内に導入するアウタ二次空気導入孔25hを有している。換言すれば、燃焼器ライナ9の外周部には、複数のアウタ二次空気導入孔25hが複数のアウタスリーブ25を介して周方向に沿って間隔を置いて設けられている。同様に、インナライナ13(燃焼器ライナ9の内周部)には、複数のインナスリーブ27が周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各インナスリーブ27は、内側に、二次空気を燃焼室17内に導入するインナ二次空気導入孔27hを有している。換言すれば、燃焼器ライナ9の内周部には、複数のインナ二次空気導入孔27hが複数のインナスリーブ27を介して周方向に沿って間隔を置いて設けられている。ここで、複数のアウタ二次空気導入孔25h及び複数のインナ二次空気導入孔27hは、非対向になるように周方向に沿って互い違いに配置されている。
【0023】
図1に示すように、燃焼室17内における二次空気導入孔25h,27hの上流側(前側)には、燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態(酸素不足状態)で過濃燃焼(一次燃焼)させるための一次燃焼領域FAが形成されている。また、燃焼室17内における二次空気導入孔25h,27hの下流側(後側)には、一次燃焼領域FAからの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼(二次燃焼)させるための二次燃焼領域SAが形成されている。更に、燃焼室17内における一次燃焼領域FAと二次燃焼領域SAとの間には、一次燃焼領域FAからの燃焼ガスと二次空気を急速混合するための急速混合領域MAが形成されている。
【0024】
図1及び
図3に示すように、アウタライナ11(燃焼器ライナ9の外周部)の内壁面における一次燃焼領域FAと急速混合領域MAの境界位置(境界部)には、燃焼器ライナ9の高さ方向(内方向)へ突出した環状のアウタ突出壁(アウタフェンス)29が設けられている。また、アウタ突出壁29の突出高さH
1 は、燃焼器ライナ9のライナ高さ(アウタライナ11の内壁面とインナライナ13の内壁面との間の距離)以下であって、燃焼器ライナ9の外周部の内壁面に衝突した二次空気の流れ(壁面衝突噴流)IFの境界層厚さT
1 より高く設定されている。アウタ突出壁29の突出高さH
1 を壁面衝突噴流IFの境界層厚さT
1 より高く設定されるようにしたのは、アウタ突出壁29の突出高さH
1 が壁面衝突噴流IFの境界層厚さT
1 以下であると、壁面衝突噴流IFの一部が燃焼器ライナ9の外周部の内壁面に沿って一次燃焼領域FA側に逆流することを十分に抑えることが困難になるからである。ここで、アウタ突出壁29の軸方向位置(エンジン軸心EC方向の位置)を適宜に変更することによって、アウタ突出壁29の突出高さH
1 を燃焼器ライナ9のライナ高さの1/2以上にすることが可能である。
【0025】
インナライナ13(燃焼器ライナ9の内周部)の内壁面における前記境界位置には、燃焼器ライナ9の高さ方向へ突出した環状のインナ突出壁(インナフェンス)31が設けられている。また、インナ突出壁31の突出高さH
2 は、燃焼器ライナ9のライナ高さ以下であって、アウタ突出壁29の突出高さH
1の設定理由と同じ理由から、燃焼器ライナ9の内周部の内壁面に衝突した二次空気の流れ(壁面衝突噴流)IFの境界層厚さT
2 より高く設定されており、本発明の実施形態にあっては、アウタ突出壁29の突出高さH
1 と同じ高さに設定されている。ここで、インナ突出壁31の軸方向位置を適宜に変更することによって、インナ突出壁31の突出高さH
2を燃焼器ライナ9のライナ高さの1/2以上にすることが可能である。
【0026】
なお、燃焼器ライナ9の外周部の内壁面における前記境界位置に環状のアウタ突出壁29が設けられる代わりに、円弧状の複数のアウタ突出壁(図示省略)が周方向に沿って設けられたり、燃焼器ライナ9の内周部の内壁面における前記境界位置に環状のインナ突出壁31が設けられる代わりに、円弧状の複数のインナ突出壁(図示省略)が周方向に沿って設けられたりしても構わない。
【0027】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
複数の燃料噴射弁19によって燃焼室17内に燃料が円錐状の噴霧流Sとして噴射されると共に、複数のスワラ23から一次空気が旋回流として燃焼室17内に導入される。これにより、一次燃焼領域FAにおける各燃料噴射弁19の下流側近傍に循環流CFを形成しつつ、一次燃焼領域FAにおいて燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させて、燃焼ガスを生成する。なお、燃料と一次空気との混合気を燃焼させる直前に、点火栓によって混合気中の燃料を着火する。
【0029】
続いて、複数のアウタ二次空気導入孔25h及び複数のインナ二次空気導入孔27hから多量の二次空気が燃焼室17内に高い貫通度(径方向の貫通度)で導入される。これにより、急速混合領域MAにおいて一次燃焼領域FAからの燃焼ガスと二次空気が急速に混合され、二次燃焼領域SAにおいて急速混合領域MAからの混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させて、燃焼ガスを生成する。
【0030】
前述の一次燃焼領域FAにおける過濃燃焼、急速混合領域MAにおける急速混合、二次燃焼領域SAにおける希薄燃焼が連続して行われることにより、火炎温度を下げてNOx(窒化酸化物)の発生量の低減を図りつつ、燃焼ガスを生成して燃焼器ライナ9から排出することができる。なお、燃焼器ライナ9から排出された燃焼ガスは、低NOx燃焼器1の下流側に配設されたタービン(図示省略)を駆動するようになっている。
【0031】
ここで、燃焼器ライナ9の周部(外周部及び内周部)の内壁面における前記境界位置に燃焼器ライナ9の高さ方向へ突出した環状のアウタ突出壁29等及び環状のインナ突出壁31等が設けられているため、二次空気導入孔25h,27hから導入される二次空気の貫通度(径方向の貫通度)が高く設定されても、燃焼器ライナ9の周部の内壁面に衝突した壁面衝突噴流IFの一部が燃焼器ライナ9の周部の内壁面に沿って一次燃焼領域FA側に逆流することを十分に抑えることができる。また、同じ理由により、各燃料噴射弁19の下流側近傍に形成された循環流CFが一次燃焼領域FAを超えて下流側に拡大することを抑えることができると共に、一次燃焼領域FAからの燃焼ガスを急速混合領域MAにおける燃焼器ライナ9の高さ方向の中央部に集中的に流入させつつ、急速混合領域MAにおける急速混合を促進することができる。
【0032】
従って、本発明の実施形態によれば、二次空気導入孔25h,27hから導入される二次空気の貫通度が高く設定されても、燃焼器ライナ9の周部の内壁面に衝突した壁面衝突噴流IFの一部が燃焼器ライナ9の周部の内壁面に沿って一次燃焼領域FA側に逆流することを十分に抑えることができるため、燃焼器ライナ9の周部の内壁面の焼損等を十分に防止しつつ、高いレベルでNOxの発生量の低減を図ることできる。
【0033】
また、循環流CFが一次燃焼領域FAを超えて下流側に拡大することを抑えることができるため、一次燃焼領域FAにおける混合気の均質性を高めて、PQL方式の低NOx燃焼器1の燃焼安定性を向上させることができる。
【0034】
更に、一次燃焼領域FAからの燃焼ガスを急速混合領域MAにおける燃焼器ライナ9の高さ方向の中央部に集中的に流入させつつ、急速混合領域MAにおける急速混合を促進することができるため、二次燃焼領域SAにおける希薄燃焼の質を向上させることができる。
【0035】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、例えばアニュラ型のRQL方式の低NOx燃焼器1に適用した技術的思想をカン型のRQL方式の低NOx燃焼器(図示省略)に適用する等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0036】
FA 一次燃焼領域
SA 二次燃焼領域
MA 急速混合領域
CF 循環流
IF 壁面衝突噴流
1 RQL方式の低NOx燃焼器
3 燃焼器ケース
5 アウタケース
7 インナケース
9 燃焼器ライナ
11 アウタライナ
13 インナライナ
15 隔壁
17 燃焼室
19 燃料噴射弁
21 燃料供給管
23 スワラ
25 アウタスリーブ
25h アウタ二次空気導入孔
27 インナスリーブ
27h インナ二次空気導入孔
29 アウタ突出壁
31 インナ突出壁