(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5978760
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気ガス浄化方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20160817BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20160817BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20160817BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20160817BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20160817BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20160817BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20160817BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20160817BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
F01N3/20 B
F01N3/08 A
B60K6/20 310
B60K6/46
F02D19/02 B
F02D29/06 D
F02D41/02 325H
F02D41/02 325K
F02D41/04 305Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-116641(P2012-116641)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-241914(P2013-241914A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】野元 義隆
(72)【発明者】
【氏名】大室 朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂俊
【審査官】
永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−177307(JP,A)
【文献】
特開2010−12870(JP,A)
【文献】
特開2008−68802(JP,A)
【文献】
特開2010−13976(JP,A)
【文献】
特開2000−120427(JP,A)
【文献】
特開2005−233017(JP,A)
【文献】
特開2004−197703(JP,A)
【文献】
特開2005−248875(JP,A)
【文献】
特開2004−320841(JP,A)
【文献】
特開2006−291768(JP,A)
【文献】
特開平11−44234(JP,A)
【文献】
特開2002−262410(JP,A)
【文献】
特開2006−177306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38,
B01D 53/73,53/86−53/96,
B60K 6/20−6/547,
F02D 19/02,29/06,41/00−41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化方法であって、
前記NOx触媒でのNOxの吸蔵量を検出する第1ステップと、
前記第1ステップで検出されたNOxの吸蔵量が所定量以上のときに、前記エンジンの運転状態を、理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える第2ステップと、
を備え、
前記リッチ運転状態への切換えが、前記リーン運転状態で発電を行っている時間が前記NOx触媒が活性化温度以上になるまで昇温されるのに必要十分な時間として設定される所定時間以上継続して行われていることを条件として許可され、
前記第1ステップで検出されるNOx吸蔵量が前記所定量以上のときに、前記リッチ運転状態への切換えが許可されないときは、その後に行われるリッチ運転状態での運転時間が延長され、
前記リッチ運転状態での運転時間が、最低の運転時間となる基本時間に対して、前記延長分の時間を加算した加算時間とされ、
前記延長分の時間が、前記リッチ運転状態への切換えが許可されない時間が長いほど長くされる、
ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記リッチ運転状態へ切換えられた後は、吸蔵NOxのパージが終了されるまでの間に車両の加速が検出されても該リッチ運転状態が継続される、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記リッチ運転状態へ切換えられた後は、吸蔵NOxのパージが終了されるまでの間に車両の減速が検出されても該リッチ運転状態が継続される、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記走行用モータの駆動要求電力が前記バッテリの出力電力よりも大きいときは、前記リッチ運転状態とすることが禁止される、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記リーン運転状態は、一定負荷でかつ一定回転数で行われる、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記所定時間が10秒以上とされている、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記エンジンが、水素を燃料として運転される、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記リッチ運転状態とされたときは、発電が中止される、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【請求項9】
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動されるジェネレータと、
前記ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、
前記ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、
前記NOx触媒でのNOxの吸蔵量を検出する吸蔵量検出手段と、
前記吸蔵量検出手段で検出されたNOxの吸蔵量が所定量以上のときに、前記エンジンの運転状態を、理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える空燃比変更手段と、
前記空燃比変更手段による前記リッチ運転状態への切換えを、前記リーン運転状態で発電を行っている時間が前記NOx触媒が活性化温度以上になるまで昇温されるのに必要十分な時間として設定される所定時間以上継続して行われていることを条件として許可する変更許可手段と、
前記吸蔵量検出手段で検出されるNOx吸蔵量が前記所定量以上のときに、前記リッチ運転状態への切換えが許可されないときは、その後に行われるリッチ運転状態での運転時間の延長分を、前記リッチ運転状態への切換えが許可されない時間が長いほど長くなるように設定する延長時間設定手段と、
を備え、
前記リッチ運転状態での運転時間が、最低の運転時間となる基本時間に対して、前記延長時間設定手段で設定された延長分の時間を加算した加算時間とされる、
ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車にあっては、内燃機関つまりエンジンが搭載されると共に走行用モータが搭載されたハイブリッド車が増加している。ハイブリッド車にあっては、エンジンによってジェネレータを駆動することにより発電が行なわれ、発電された電力は、走行用モータへの給電やバッテリへの充電に用いられることになる。
【0003】
一方、燃費向上のために、エンジンを理論空燃比よりもリーンなリーン運転を行うことが行われている。そして、リーン運転に伴って排出されるNOx低減のために、排気通路にはNOx触媒が配設されることになる。特許文献1には、ハイブリッド車において、通常はリーン運転を行いつつ、NOx触媒でのNOx吸蔵量が増大したときに、エンジンの運転をリッチな空燃比で行うことにより、吸蔵されたNOxをパージすることが開示されている。また、特許文献1には、駆動輪へ付与されるトータルトルクが、エンジンのリーン運転時とリッチ運転時とで変化しないように、モータトルクを制御することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−68802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイブリッド車において、ジェネレータを駆動するエンジンのリーン運転を続けていると、NOx触媒でのNOx吸蔵量が上限値にまで増大してしまうことになる。この場合に、吸蔵しているNOxをパージすべくエンジンをリッチ運転に切換えたとき、NOx触媒が活性化温度にまで達していないと、効率よくNOxをパージすることが不可能となる。このため、NOx触媒の温度を検出する温度センサを別途設けて、この温度センサで検出されるNOx触媒の温度が活性化温度に対応した所定温度以上であることを条件として、リッチ運転へと切換えることが考えられる。しかしながら、この場合は、NOx触媒の温度を検出する温度センサが別途必要になる。
【0006】
また、種々の観点から、NOxパージを極力頻繁に行うこと、例えばNOx触媒のNOx吸蔵に余裕がある状態となる例えば吸蔵量50%以上となった時点で、リッチ運転に切換えてパージを行うことが考えられる。このような場合、NOx触媒が活性化温度に達していないことが往々にして生じやすいものとなる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、温度センサに依存することなくNOx触媒が活性化温度にまで達していることを確認して、NOxを効率よくパージできるようにした内燃機関の排気ガス浄化方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化方法であって、
前記NOx触媒でのNOxの吸蔵量を検出する第1ステップと、
前記第1ステップで検出されたNOxの吸蔵量が所定量以上のときに、前記エンジンの運転状態を、理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える第2ステップと、
を備え、
前記リッチ運転状態への切換えが、前記リーン運転状態で発電を行っている時間が前記NOx触媒が活性化温度以上
になるまで昇温されるのに必要十分な時間として設定される所定時間以上継続して行われていることを条件として許可さ
れ、
前記第1ステップで検出されるNOx吸蔵量が前記所定量以上のときに、前記リッチ運転状態への切換えが許可されないときは、その後に行われるリッチ運転状態での運転時間が延長され、
前記リッチ運転状態での運転時間が、最低の運転時間となる基本時間に対して、前記延長分の時間を加算した加算時間とされ、
前記延長分の時間が、前記リッチ運転状態への切換えが許可されない時間が長いほど長くされる、
ようにしてある。上記解決手法によれば、エンジンがリッチ運転状態へと切換えられたときは、あらかじめエンジンが発電を行いつつリーン運転されている時間が所定時間以上継続して行われていたときで、NOx触媒が十分に活性化する温度にまで達しているときなので、リッチ運転を行ったのときのNOxパージを効率よく行うことができる。また、NOx触媒が活性化温度以上であるか否かを、発電を行っているリーン運転時間が所定時間以上継続して行われているか否かによって知るようにしてあるので、NOx触媒の温度を検出するセンサを設けないようにすることが可能となる。
【0009】
また、NOx触媒が活性化していないためにリッチ運転状態が許可されないことにより、NOx触媒へのNOx吸蔵量がさらに増大することになるが、その後のリッチ運転時間が延長されることによりNOxを十分にパージすることができる。特に、NOx吸蔵量が少ない段階でもNOxのパージを実行すること、つまり頻繁にNOxのパージを行う場合に好適となる。
【0010】
さらに、リッチ運転状態が許可されない時間が長い分だけ延長時間を長くして、その後のNOxパージを十分に行うことができる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項8に記載のとおりである。すなわち、
前記リッチ運転状態へ切換えられた後は、吸蔵NOxのパージが終了されるまでの間に車両の加速が検出されても該リッチ運転状態が継続される、ようにしてある(請求項
2対応)。この場合、パージ中断を行わないようにして、NOx触媒の温度が高い状態下でもってNOx触媒の再生を常に十分に行う上で好ましいものとなる。
【0012】
前記リッチ運転状態へ切換えられた後は、吸蔵NOxのパージが終了されるまでの間に車両の減速が検出されても該リッチ運転状態が継続される、ようにしてある(請求項
3対応)。この場合、請求項4に対応した効果と同様の効果を得ることができる。
【0013】
前記走行用モータの駆動要求電力が前記バッテリの出力電力よりも大きいときは、前記リッチ運転状態とすることが禁止される、ようにしてある(請求項
4対応)。この場合、走行用モータの駆動要求電力が大きくなる加速要求に十分応えて、加速性能を確保する上で好ましいものとなる。
【0014】
前記リーン運転状態は、一定負荷でかつ一定回転数で行われる、ようにしてある(請求項
5対応)。この場合、エンジンをもっとも効率のよい状態で運転して、燃費向上の上で好ましいものとなる。
【0015】
前記所定時間が10秒以上とされている、ようにしてある(請求項
6対応)。この場合、NOx触媒(特に自動車で用いられるNOx触媒)を確実に活性化温度以上に昇温させることができ、その後のNOxパージを確実に効率よく行うことができる。
【0016】
前記エンジンが、水素を燃料として運転される、ようにしてある(請求項
7対応)。この場合、排気ガス温度が低くなる傾向にある水素を燃料とする場合に、NOxを効率よくパージすることができる。
【0017】
前記リッチ運転状態とされたときは、発電が中止される、ようにしてある(請求項
8対応)。この場合、リッチ運転へと切換えたときに、空燃比のリッチ化によって燃焼性が向上することに伴うプリイグニッション発生や燃焼音増大を防止あるいは低減する上で好ましいものとなる。特に、エンジンを定回転かつ定負荷で運転しつつ水素を燃料とした場合に、リッチ運転状態でプリイグニッションや燃焼音増大が発生しやくなるが、このような場合でもプリイグニッション発生や燃焼音増大を防止あるいは低減することができる。
【0018】
前記目的を達成するため、本発明装置にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項
9に記載のように、
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動されるジェネレータと、
前記ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、
前記ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、
前記NOx触媒でのNOxの吸蔵量を検出する吸蔵量検出手段と、
前記吸蔵量検出手段で検出されたNOxの吸蔵量が所定量以上のときに、前記エンジンの運転状態を、理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える空燃比変更手段と、
前記空燃比変更手段による前記リッチ運転状態への切換えを、前記リーン運転状態で発電を行っている時間が前記NOx触媒が活性化温度以上となる所定時間以上継続して行われていることを条件として許可する変更許可手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に対応した排気ガス浄化方法を実現するための排気ガス浄化装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、温度センサに依存することなくNOx触媒が活性化温度にまで達していることを確認して、NOxを効率よくパージできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す車両の制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示すブロック図であり、
図2は、
図1に示す車両の制御システムを示す図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両1は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両であり、エンジン10と、エンジン10により駆動されるジェネレータ20と、ジェネレータ20により発電される電力が充電可能な高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力により駆動される走行用モータ40とを有している。
【0023】
また、車両1では、ジェネレータ20、バッテリ30及び走行用モータ40の間にインバータ50が設けられ、インバータ50を介してジェネレータ20の発電電力をバッテリ30及び/又は走行用モータ40に供給することができるとともに、バッテリ30の放電電力を走行用モータ40に供給することができるように構成されている。
【0024】
走行用モータ40は、ジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力の少なくとも一方が供給されることにより駆動され、この走行用モータ40の駆動力がデファレンシャル装置60を介して駆動輪としての左右の前輪61、62に伝達され、これによって、車両1が走行できるようになっている。なお、走行用モータ40はジェネレータとしても作動可能であり、車両1の減速時にはジェネレータとして作動し、発電した電力をバッテリ30に充電することができるようになっている。
【0025】
車両1では、エンジン10は、ジェネレータ20における発電のためにのみ用いられており、本実施形態では、エンジン10として、これに限定されるものではないが、水素燃料タンク70に貯留されている水素ガスが燃料として供給される水素エンジンが用いられる。
【0026】
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式のロータリエンジンであって、ロータハウジング11のトロコイド面に3点で接して3つの作動室を画成するロータ12を備え、該ロータ12が回転することにより出力軸としてのエキセントリックシャフト13が回転されるようになっている。
【0027】
エンジン10では、ロータハウジング11には吸気通路14と排気通路15が接続され、吸気通路14には、スロットル弁16と予混合方式によって燃料供給を行う場合に水素ガスを噴射するための水素インジェクタ17とが設けられ、排気通路15には、排気ガスを浄化するための排気ガス浄化触媒80が配設されている。この排気ガス浄化触媒80は、NOx触媒とされて、リーン運転時にNOxを吸蔵する一方、リッチ運転されることにより吸蔵したNOxがパージされる。
【0028】
ロータハウジング11にはまた、水素ガスを噴射するための水素インジェクタ18及び点火プラグ19がロータハウジング11の作動室を臨むようにして取り付けられている。なお、
図2において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気又は排気の流れを示している。
【0029】
また、車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ電流・電圧センサ(バッテリ残容量検出手段)101と、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、車速を検出する車速センサ103と、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサ104と、空燃比を検出する空燃比センサ105とが搭載されている。なお、排気ガス浄化触媒80の温度を検出する触媒温度検出センサは搭載されていない。
【0030】
車両1にはまた、該車両1に関係する構成を総合的に制御するコントロールユニット100が設けられ、このコントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、エンジン回転数センサ104、空燃比センサ105などからの各種信号が入力されるようになっている。コントロールユニット100はまた、インバータ50、スロットル弁アクチュエータ107、水素インジェクタ17、18及び点火プラグ19などに制御信号を出力す
ることができるようになっている。
【0031】
コントロールユニット100は、インバータ50を制御することにより、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力でのみ行う態様と、ジェネレータ20からの発電電力でのみ行う態様と、バッテリ30および燃料タンク20の両方からの電力で行う態様とが切換可能となっている。
【0032】
コントロールユニット100によって制御されるエンジン10は、通常は、燃費向上のために、理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比(例えば、空気過剰率λ=2.3)で運転されると共に、燃費向上のためにもっとも効率のよい所定回転数での一定回転数(例えば2000rpm)での定回転数運転とされ、しかも定負荷運転とされる。
【0033】
NOx触媒とされた排気ガス浄化触媒80でのNOx吸蔵量があらかじめ設定された所定量(NOx吸蔵にまだ十分余裕がある量で、例えば50%)以上に増大すると、エンジン10は、理論空燃比またはそれ以下のリッチ空燃比となるリッチ運転状態に切換えられる(例えば、空気過剰率λ=1での運転で、λは1未満であってもよい)。
【0034】
リッチ運転は、排気ガス浄化触媒80でのNOx吸蔵量が十分に低減されたある下限値(例えば0%)以下になるまで実行されるが、実施形態では、NOx吸蔵量が下限値まで低減するのに十分な時間に設定された所定の基本時間(例えばNOx吸蔵量50%に対応した例えば5秒)だけ行うようになっている。ただし、後述するように、リッチ運転状態への切換えが許可されない場合(禁止された場合)は、この許可されない時間分だけ、その後のリッチ運転時間が延長される(上記基本時間の例えば5秒に対して、延長時間が加算された時間だけリッチ運転される)。なお、エンジン回転数は、リーン運転時と同じ所定回転数での一定回転数とされる。勿論、排気ガス浄化触媒80でのNOx吸蔵量が十分に低減された後は、エンジン10は再びリーン運転へと復帰されることになる。
【0035】
ここで、排気ガス浄化触媒80に吸蔵されたNOxをパージするためにリッチ運転を行う際に、エンジン10がジェネレータ20を駆動していて(発電を行っていて)、エンジン10への駆動負荷が大きい場合がある。この場合、特に水素を燃料としており、しかも効率のよい定回転かつ定負荷運転を行っていることから、そのままではプリイグニッションが発生したり、燃焼音が増大してしまう可能性が極めて高くなる。
【0036】
本実施形態では、エンジン10でジェネレータ20を駆動している状態(発電している状態)において、リッチ運転へと切換えられたときは、エンジン10の駆動負荷を低減するようにしてある。なお、エンジン10への駆動負荷低減は、ジェネレータ20での発電を行いつつ発電電力を低減する(例えば50%にする)ことにより行うことができ、実施形態では、発電電力を0にするようにしてある。また、発電電力の調整は、例えば界磁巻線への供給電流を調整することにより行なうことができ、エンジン10とジェネレータ20との間にクラッチを有する場合は、クラッチの締結度合を調整することにより行うこともできる。
【0037】
図3は、本発明の制御例を示すタイムチャートである。この
図3において、t0時点においては、リーン運転状態での発電が行われており、これに伴いNOx触媒80でのNOx吸蔵量が徐々に増大される。t1時点では、NOx吸蔵量が、パージを開始する所定値(例えば50%)にまで増大したときである。そして、t0からt1時点までのリーン運転状態での発電時間が、所定時間(例えば10秒)以上継続していたときである。このときは、t1時点で、即座にリッチ運転に切換えられてパージが実行され、また発電が中止されてエンジン10が無負荷運転とされる。
【0038】
t1時点から開始されたパージは、t2時点まで行われる。t1からt2までのパージ時間は、NOx触媒80でのNOx吸蔵量が所定値(例えば50%)であるのに対応して、基本時間t0(例えば5秒)とされる。
【0039】
パージが完了したt2時点からは、再び、リーン運転状態での発電が行われ、これに伴ってNOx触媒80でのNOx吸蔵量が徐々に増大される。t3時点では、NOx触媒80のNOx吸蔵量が所定値(例えば50%)に達している。ただし、t3時点では、リーン運転状態での発電が再開されたt2時点からは、まだ所定時間継続していないときである。このときは、パージが、t2時点からt3時点を経て所定時間経過したt4時点になったときから開始される。そして、t5時点でパージが終了される。t4からt5までのパージ時間は延長されて、t1からt2までの基本時間t0よりも長くされている。延長時間△t0は、パージの禁止時間(t3時点からt4時点までの時間)が長いほど長くなるように設定される。
【0040】
なお、一旦、リッチ運転に切り替えられ、パージが開始されると、車両の加速や減速が検出されても、基本時間t0(t1〜t2の間)又は、延長された時間(t4〜t5の間)が経過するまではリッチ運転状態が継続されるようにして、NOx触媒の再生が十分に行われ、NOx吸蔵量が下限値(例えば0%)となり、その後のNOx吸蔵量の推定精度を確保できるようにする。
【0041】
図4は、
図3に示すような制御を行うためのフローチャートを示す。以下、このフローチャートについて説明するが、以下の説明でQはステップを示す。まず、Q1において、各種センサ等からの信号が読み込まれる。この後Q2において、エンジン10を発電運転する条件となっているか否かが判別される。すなわち、エンジン10は、バッテリ30の充電量(残容量)が所定値(例えば80%)以上のときに発電運転が停止され、それ以外では発電運転されるようになっている。
【0042】
Q2の判別でNOのときは、Q1に戻る。Q2の判別でYESのときは、Q3において、エンジン10をリーン運転しつつ発電が行われる。Q3の後、Q4において、NOx触媒80でのNOx吸蔵量が、あらかじめ設定された所定値(例えば50%)以上であるか否かが判別される。なお、NOx吸蔵量の算出は、例えば、リーン運転開始からのリーン運転時間に基づいて推定することができ、この他適宜の手法を採択できる。
【0043】
Q4の判別でNOのときは、Q1に戻る。Q4の判別でYESのときは、Q5において、Q4の判別でYESとなった時点まで、リーン運転での発電が所定時間(例えば10秒)以上継続して行われていたか否かが判別される。上記所定時間は、NOx触媒80が活性化温度以上にまで昇温されるのに必要十分な時間として設定されている。
【0044】
Q5の判別でYESのときは、Q6において、走行用モータ40の要求駆動電力が、バッテリ30の出力電力よりも大きいか否かが判別される。このQ6の判別でNOのときは、バッテリ30の出力電力に余裕のあるときで、このときは、Q7において、リッチ運転が開始されると共に、発電が0にされる(無負荷パージ)。リッチ運転開始によって、NOx触媒80に吸蔵されていたNOxがパージされる。また、発電停止によってエンジン10が実質的に無負荷運転とされるので、リッチ運転したことに起因するプリイグニッション発生や燃焼音増大が防止あるいは低減される。
【0045】
Q7の後、Q8において、リッチ運転開始から所定時間tpが経過したか否かが判別される。この所定時間tpは、NOx触媒80でのNOx吸蔵量50%に対応した基本時間t0(例えば5秒)に対して、後述する延長時間△t0を加算した時間である。このQ8の判別でNOのときは、Q7に戻る。すなわち、一旦、リッチ運転に切り替えられ、パージが開始されると、車両の加速や減速が検出されても、所定時間tpが経過するまではリッチ運転状態が継続される。Q8の判別でYESのときは、パージ完了ということで、Q9において、リッチ空燃比での無負荷運転が中止されて、リーン運転での発電が行われる状態へと復帰される。なお、Q9では、NOx触媒80のNOx推定吸蔵量が0にリセットされる。
【0046】
前記Q5での判別でNOのとき、あるいはQ6の判別でYESのときはそれぞれ、Q10の処理を経た後、Q1に戻る。Q10に移行されたときは、吸蔵NOxのパージが許可されないとき(禁止されているとき)である。このときは、Q4での判別でYESとなった時点からのNOx触媒80での吸蔵NOx増加分だけ、延長時間△t0が設定される。すなわち、その後のリッチ運転時間tpが、基本時間t0に対して、延長時間△t0が加算された時間とされる。勿論、増加したNOx吸蔵量が多いほど、延長時間△t0が長く設定されるが、延長時間には上限(例えば5秒)を設けることができる。Q10の処理によって、NOxパージが禁止されている時間分だけ、その後のパージ時間が延長されて、1回のパージでNOx触媒80が常に十分に再生されるようになっている。
【0047】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。エンジン10としては、往復動型エンジンであってもよく、また燃料として水素以外の燃料を用いるエンジンあってもよい。パージ実行の際のエンジン10の駆動負荷低減は、ジェネレータ20の発電電力を0にする代わりに、発電は実行するものの例えば20〜50%まで発電電力を低減することにより行うようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、NOx触媒による排気ガス浄化に好適である。
【符号の説明】
【0049】
10:エンジン
15:排気通路
17,18:燃料噴射弁
19:点火プラグ
20:ジェネレータ
30:バッテリ
40:走行用モータ
70:水素タンク
80:排気ガス浄化触媒(NOx触媒)
100:コントロールユニット(制御手段)