【実施例】
【0036】
以下、予備発泡粒子及び発泡粒子成形体の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1〜11)
実施例に係る予備発泡粒子は、AS樹脂を基材とする予備発泡粒子の少なくとも表面にパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドが付着してなり、パラフィン系ワックスの付着量は、該予備発泡粒子100質量部に対して1質量部以上かつ20質量部以下であり、脂肪酸アマイドの付着量は、該予備発泡粒子100質量部に対して2質量部以下(但し、0を除く)である予備発泡粒子である。また、発泡粒子成形体は、予備発泡粒子を型内成形してなる。なお、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの付着量は、これらのパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドが付着した予備発泡粒子の質量からパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの付着量分を差し引いて求めた質量100質量部に対する値である。
【0037】
本例の予備発泡粒子は、発泡性AS樹脂粒子をワックス及び脂肪酸アマイド存在下で発泡させて作製することができる。以下、その製造方法について具体的に説明する。
まず、発泡性AS樹脂粒子として、(株)JSP製の「HA300」を準備した。この発泡性AS樹脂粒子のAS樹脂を構成する単量体成分は、アクリロニトリル28質量%、及びスチレン72質量%であり、発泡性AS樹脂粒子の平均粒子径は1mmである。発泡性AS樹脂粒子の平均粒子径は、測定試料として発泡性AS樹脂粒子を用いた以外は、上述の予備発泡粒子の平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定した。なお、測定には約500ccの発泡性樹脂粒子群を用いた。
【0038】
また、パラフィン系ワックスとしては、後述の表1及び表2に示すように、日本精蝋株式会社製のパラフィンワックス「PALVAX1230」(融点65℃)、「PALVAX1330」(融点64℃)、「POLYCOTE3030」(融点75℃)を用いた。また、脂肪酸アマイドとしては、大日化学株式会社製のオレイン酸アマイド(ダイワックスOA、融点75℃)、花王株式会社製のエルカ酸アマイド(アマイドE、融点80℃)、大日化学株式会社製のステアリン酸アマイド(ダイワックスSA−200、融点100℃)を用いた。
【0039】
次に、発泡性AS樹脂粒子100質量部に対して表1及び表2に示す各配合割合でパラフィン系ワックス及び脂肪酸マイドを添加して混合した。そして、容積60Lのバッチ式発泡機により、発泡性AS樹脂粒子をパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを含まない嵩発泡倍率で40倍に発泡させ、表面にパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドが付着した予備発泡粒子を得た。次いで、得られた予備発泡粒子をサイロ内で1日間室温放置することにより熟成させた。このようにして、実施例1〜11の11種類の予備発泡粒子を得た。
【0040】
各実施例にかかる予備発泡粒子について、作製時に使用した発泡性AS樹脂粒子、パラフィン系ワックス、及び脂肪酸アマイドの種類及び配合量を表1及び表2に示す。
各予備発泡粒子について、平均粒子径[mm]、嵩発泡倍率[倍]を上述の方法により測定した。その結果を表1及び表2に示す。なお、平均粒子径および嵩発泡倍率の測定には約500ccの予備発泡粒子群を用い、嵩発泡倍率の計算にはAS樹脂の密度として1g/cm
3を採用した。さらに、表1及び表2には、参考までにパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを除いた部分の予備発泡粒子の嵩発泡倍率(嵩倍率)を示す。
【0041】
また、各予備発泡粒子について、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの付着量を以下のようにガスクロマトグラフィにより測定した。そして、その結果をAS樹脂予備発泡粒子100質量部に対する、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの付着量[質量部]として後述の表1及び表2に示す。
【0042】
[前処理条件]
パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドが付着している予備発泡粒子約100mgをテトラヒドロフラン3mlで希釈し、これをガスクロマトグラフィ用試料とする。
[ガスクロマトグラフィ条件]
装置 :(株)島津製作所製のGC−2010
注入量 :1.0μL
気化室温度 :280℃
カラム :アジレント・テクノロジー(株)製のHP−5MS(30m×0.25mm×0.25μm)
カラム槽 :100℃(5min保持)から280℃まで、15℃/minで昇温
カラム流量 :He 1.0ml/min(スプリット比1/50)
検出器 :FID
【0043】
次に、各予備発泡粒子について、以下のようにして耐ブロッキング性の評価を行った。
「耐ブロッキング性」
パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドが付着した予備発泡粒子同士がサイロ内で互いに融着し、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを付着させていない予備発泡粒子に比べて流動性が著しく悪くなったものを「×」、流動性に問題がなかったものを「○」として評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0044】
次に、MDX−10VS自動成型機(日立化成工業株式会社製)を用いて各実施例の予備発泡粒子をそれぞれ成形し、発泡粒子成形体(AS樹脂発泡粒子成形体)を作製した。
具体的には、予備発泡粒子を寸法700mm×500mm×25mmの金型に充填した。そして、元圧0.08MPa(G)の蒸気を金型内に導入して15秒間加熱して予備発泡粒子を二次発泡及び融着させた。次いで、水冷を8秒行った後、発泡体圧力が0.01MPaになるまで真空冷却し、発泡粒子成形体を得た。なお、上記(G)はゲージ圧を意味する。この時の真空冷却時間を冷却時間[秒]とし、その結果を表1及び表2に示す。また、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを付着させていない予備発泡粒子を型内成形して得られた発泡粒子成形体(後述の比較例1)の冷却時間に対する各実施例の発泡粒子成形体の冷却時間の短縮率(冷却時間短縮率;%)を算出した。その結果を表1及び表2に示す。また、蒸気の元圧を0.08MPa(G)から、0.07MPa(G)、0.09MPa(G)に変更し、上記と同様の条件にてそれぞれ発泡粒子成形体を得た。
【0045】
次に、得られた発泡粒子成形体について、以下のようにして融着率、曲げ強さを測定し、さらに曲げ強さ保持率を求めた。
「融着率」
各発泡粒子成形体を長手方向(700mmの方向)の中央部(350mmの位置)付近で割り、その破断面を目視により観察した。そして、破断面における全発泡粒子数に対する、発泡粒子内部から破断した発泡粒子数の比率(百分率)を算出し、これを融着率(%)とした。なお、融着率は、成形圧(元圧)0.07MPa(G)、0.08MPa(G)、0.09MPa(G)の蒸気を用いて作製した各発泡粒子成形体について、それぞれ算出した。その結果を表1及び表2に示す。
【0046】
「曲げ強さ及び曲げ強さ保持率」
曲げ強さは、JIS K7221−2:2006に準拠して測定した。測定にあたっては、成形圧(元圧)0.08MPa(G)の蒸気にて作製した発泡粒子成形体から成形スキンを除去せず(25mm)に、得られた発泡粒子成形体を100×350mmにカットして試験片を作製した。支点間距離は300mm、加圧くさびの速度は20mm/min、試験温度は23℃、試験湿度は相対湿度で50%とした。
また、曲げ強さ保持率は、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを用いずに倍率40倍で作製した発泡粒子成形体の曲げ強さを測定してこれを基準値とし、この基準値に対する100分率で示した。具体的には、後述の比較例1の発泡粒子成形体の曲げ強さを基準値とした。基準値に対する比較は、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを含まない倍率に換算した発泡倍率が同じものを用いて行なった。発泡粒子の融着性が低下しているほど曲げ強さ保持率の値が低くなる。その結果を表1及び表2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(比較例1〜10)
次に、実施例1〜11との比較用の予備発泡粒子及び発泡粒子成形体を作製した。
比較例1は、後述の表3に示すごとく、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを用いずに作製した点を除いては、上述の実施例と同様に作製した。
【0050】
比較例2及び3は、後述の表3に示すごとく、脂肪酸アマイドを用いずにパラフィン系ワックスのみを用いて作製した点を除いては、実施例と同様にして作製した。比較例2及び3は、それぞれ互いにパラフィン系ワックスの添加量を変更して予備発泡粒子におけるパラフィン系ワックスの付着量を変えた例である。
【0051】
比較例4及び5は、後述の表3に示すごとく、パラフィン系ワックスを用いずに脂肪酸アマイドのみを用いて作製した点を除いては、実施例と同様にして作製した。比較例4及び5は、それぞれ互いに脂肪酸アマイドの種類を変更した例である。
【0052】
比較例6〜9は、後述の表4に示すごとく、実施例と同様にパラフィン系ワックスと脂肪酸アマイドの両方を用いて作製した予備発泡粒子及び発泡粒子成形体の例である。比較例6〜9は、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの添加量を変更して予備発泡粒子のワックス及び脂肪酸アマイドの付着量を変えた点を除いては、実施例と同様にして作製した。比較例6及び7においては、パラフィン系ワックスの量を実施例に比べて多くし、比較例8及び9においては、脂肪酸アマイドの量を実施例に比べて多くして予備発泡粒子及び発泡粒子成形体を作製した。
【0053】
比較例10は、後述の表4に示すごとく、発泡性AS樹脂粒子の代わりに発泡性ポリスチレン粒子(株式会社JSP製 FB250 平均粒子径0.9mm)を用いた点を除いては、実施例と同様にして予備発泡粒子を作製した例である。
【0054】
上記のようにして得られた比較例1〜9の予備発泡粒子について、AS樹脂予備発泡粒子100質量部に対するパラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの付着量[質量部]、平均粒子径[mm]、及び嵩発泡倍率[倍]を上述の実施例と同様にして測定し、さらに耐ブロッキング性を上述の実施例と同様にして評価した。その結果を表3及び4に示す。
また、比較例1〜9の発泡粒子成形体について、上述の実施例と同様にして、冷却時間[秒]を測定し、冷却時間の短縮率[%]を求めた。また、比較例1〜9の発泡粒子成形体について、曲げ強さ[kPa]を測定し、曲げ強さ保持率[%]を求めた。その結果を表3及び表4に示す。
なお、比較例10については、発泡性AS樹脂粒子が発泡途中で収縮し、所定の発泡倍率に到達させることができなかった。そのため、比較例10については、予備発泡粒子及び発泡粒子成形体に関する各種測定を行うことができなかった。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
表1及び表2より知られるごとく、パラフィン系ワックス1質量部以上かつ20質量部以下、及び脂肪酸アマイド2質量部以下(但し、0を除く)がAS樹脂発泡粒子の表面に付着した予備発泡粒子(実施例1〜11)は耐ブロッキング性に優れることがわかる。また、かかる予備発泡粒子は、成形の際の冷却時間が短いことがわかる。さらに、これらの予備発泡粒子を用いて作製した発泡粒子成形体は、発泡粒子相互の融着性に優れ、曲げ強さに優れていることがわかる。
【0058】
これに対し、表3より知られるごとく、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドの両方を付着していない比較例1、パラフィン系ワックスのみを付着した比較例2及び3は、成形の際の冷却時間が長くなった。
【0059】
また、表3より知られるごとく、脂肪酸アマイドのみを用いた比較例4及び5の予備発泡粒子を用いて作製した発泡粒子成形体は、発泡粒子相互の融着性が低下し、曲げ強さが不十分であった。
【0060】
また、表4より知られるごとく、パラフィン系ワックスの付着量が多すぎる比較例6及び7の予備発泡粒子は、耐ブロッキング性が劣っていた。
【0061】
また、表4より知られるごとく、脂肪酸アマイドの付着量が多すぎる比較例8及び9の予備発泡粒子を用いて作製した発泡粒子成形体は、発泡粒子相互の融着性が低下し、曲げ強さが不十分であった。
【0062】
また、表4より知られるごとく、発泡性ポリスチレン粒子を用いた比較例10は、パラフィン系ワックス及び脂肪酸アマイドを付着させると、予備発泡工程において、粒子が収縮し、所定の発泡倍率に到達しなかった。
【0063】
このように、本例によれば、AS樹脂を基材とする予備発泡粒子の表面にパラフィン系ワックス1質量部以上かつ20質量部以下、及び脂肪酸アマイド2質量部以下(但し、0を除く)が付着してなる予備発泡粒子は、耐ブロッキング性に優れ、取り扱い性に優れていることがわかる。さらにこれらの予備発泡粒子を用いると、成形時の冷却時間を短くすることができ、曲げ強さ等の機械的強度に優れた発泡粒子成形体を製造できることがわかる。