【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載されたワイヤハーネスの接続構造では、シートの裏面側に余長吸収機能のケース110と、該ケース110から引き出されるワイヤハーネス200をシートに固定するシート側固定部202が別位置に設けられているため、これらを個別にシートに固定する作業が必要となり、車両への組付作業性が悪い問題がある。かつ、余長吸収機能のケース110は本体、蓋および内部に収容するバネ、円形ガイドが必要であり、部品点数が多くコスト高になる問題がある。さらに、ケース110内にワイヤハーネスをU形状に配線して余長を吸収しているだけであるため、スライドシートの移動長さが大となるとケース110の長さを延ばして大型化する必要があり、設置スペースが大きくなる問題がある。
【0007】
また、ワイヤハーネス200のフロアの車体側固定部201ではフロアハーネスとコネクタ接続されていると解される。その際、通常、フロアハーネスの幹線から分岐したシート行きの枝線の端末にコネクタが接続され、スライドシートが車両に搭載された後に、前記枝線がスライドシート側へ延ばされて配線され、端末のコネクタがシート側ワイヤハーネスのコネクタと接続される。スライドシートが車体に組みつけられ、シート側ワイヤハーネスのコネクタとフロアハーネス側のコネクタとが接続がされるまでの期間、フロアハーネス側のコネクタは、組立作業者に踏まれて損壊する恐れがある。よって、従来は、フロアハーネスのシート行きの枝線端末のコネクタを踏まれない箇所に一時的にテープ止めしており、作業手数がかかると共に、破棄するテープが車両に残りやすい問題がある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、スライドシートへ配索する給電用のワイヤハーネスの余長吸収部材と該ワイヤハーネスのスライドシートへの固定材とを同時にスライドシートに取り付けることが出来るようにして、スライドシートへのワイヤハーネスの取付作業性を改善することを主たる課題としている。
また、フロアハーネス側コネクタとの接続前に、該コネクタが作業員に踏まれないように接続作業性を改善し、さらに、部品点数を削減および余長吸収量をケースを大型化することなく増大可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、スライドシートに配索するワイヤハーネスを保持固定するハーネスボードと、該ハーネスボードに被せて結合する電線余長吸収機能付きの蓋を備え、前記ハーネスボードと前記蓋のいずれか一方にスライドシートへの固定部を設け、
前記蓋は、前記ワイヤハーネスをターンさせて挿通する電線余長収容部と、該電線余長収容部の入口と連通して前記ワイヤハーネスを摺動自在に挿通するハーネスレール部を備え、
前記電線余長収容部から引き出
される前記ワイヤハーネス
は前記ハーネスボー
ドに位置決め固定
された後に前記スライドシート内へ配線
される一方、前記蓋のハーネスレール部から引き出す前記ワイヤハーネス
はフロアハーネスとコネクタ接続
される構成として
おり、
前記蓋には、その上板部の内面または外面からU字状の周壁部を突設し、該周壁部の先端を屈折させて保持板部を設け、該保持板部と前記上板部との間にワイヤハーネスをU字状にターンさせて摺動自在に挿通するハーネス挿通路を設けた前記電線余長収容部と、前記ハーネス挿通路の一端に設けた前記入口に前記ハーネスレール部が連続して設けられ、該ハーネスレール部は直線状に延在し、その長さ方向全長にハーネス嵌合溝を備えると共に該ハーネス嵌合溝の底部にワイヤハーネスをフロア側へ引き出すハーネス引出開口が設けられているスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置を提供している。
【0010】
前記のように、本発明のワイヤハーネスの配索装置は、スライドシートに配索するワイヤハーネス(以下、シートハーネスと称す)を、ハーネスボードと蓋とに予め連続して挿通した状態で、該ハーネスボードと蓋とを結合して一体化しておき、該結合したハーネスボードまたは蓋のいずれか一方をスライドシートに固定すると、シートハーネスのスライドシートへの固定と電線余長吸収機能のスライドシートへの固定が同時にできる。このように、電線余長吸収機構とシートハーネスとをそれぞれスライドシートに取り付ける必要はなく、一度の取付作業で済むため、シートハーネスの車両組付作業性を改善できる。かつ、スライドシートへの設置スペースを減少できる。
【0011】
前記ハーネスボードおよび電線余長吸収機能付きの蓋はいずれも樹脂成型品からなり、前記蓋はハーネスボードの下面または上面に全面的または部分的に被せ、該ハーネスボードと蓋とに互いに結合する手段を設けている
【0012】
前記ハーネスボードと電線余長吸収機能付きの蓋とからなるワイヤハーネスの配索装置はシートフレームの下面、側面あるいは背面にボルト固定、あるいは前記ハーネスボードまたは前記蓋に設けるクランプを前記スライドシートのシートフレームに設ける取付穴に挿入係止して固定することが好ましい。該クランプをハーネスボードまたは蓋と一体的に設けてもよいし、別体のクランプを取り付けてもよく、スライドシートへの固定手段は限定されない。
【0013】
前記蓋の電線余長収容部およびハーネスレール部にシートハーネスを摺動自在に挿通した後に、ハーネスボードと蓋とを結合している。該結合手段はハーネスボードと蓋にそれぞれ設けたロック部と被ロック部とから構成してもよい。あるいは、ハーネスボードからボルト穴付き支柱を突設する一方、蓋に設けるボルト穴を連通させてボルトを通して締結してもよく、結合手段は限定されないい。
【0014】
前記蓋に設ける電線余長収容部およびハーネスレール部は、蓋の内面側または外面側に設けている。
前記
のように、蓋には、その基板(上板部または下板部)からU字状の周壁部を突設し、該周壁部の先端を屈折させて保持板部を設け、該保持板部と前記基板との間にワイヤハーネスをU字状にターンさせて摺動自在に挿通するハーネス挿通路を設けた前記電線余長収容部と、
前記ハーネス挿通路の一端に設けた前記入口に前記ハーネスレール部を連続させて設け、該ハーネスレール部は直線状に延在し、その長さ方向全長にハーネス嵌合溝を備えると共に該ハーネス嵌合溝の底面にハーネス引出口を備え、該ハーネス引出口からワイヤハーネスをフロア側へ引き出す構成としてい
る。
【0015】
前記のように、蓋に設ける前記電線余長収容部は周壁部の突出端から折り返して保持板部を設けているため、電線余長収容部自体の蓋を不要にでき、その結果、蓋が設けられないハーネスレール部と前記電線余長収容部を一体的に成形できる。かつ、該電線余長収容部とハーネスレール部を備えた蓋として、前記ハーネスボードに被せても嵩高にならず小型化できる。
【0016】
前記蓋は、シートハーネスをU字状に迂回させる略長円形状の前記電線余長収容部の長辺の一周壁に沿って、直線状とするハーネスレール部を平行に設け、全体形状を略J形状としている。あるいは、前記電線余長収容部の長辺と直交方向に延在させてハーネスレール部を設け、全体形状を略L形状としている。いずれの場合もハーネスレール部を長くすると、電線余長を長くでき、スライドシートのスライド量が長い場合に対応できる。このように、前記蓋をJ字状またはL字状とすると前記ハーネスボードの一部に蓋を被せることとなる。
一方、蓋の基板の形状を前記ハーネスボードの全面に被せる形状とし、該基板に前記J字状またはL字状に前記電線余長収容部と前記ハーネスレール部を突設してもよい。
【0017】
また、前記ハーネスレール部からフロア側へ引き出すシートハーネスは、その引出部分を長くして束ねておくと共に端末に接続したコネクタを前記蓋またはハーネスボードに設ける仮止め手段で仮止めしておく一方、フロアハーネス側のコネクタは、作業員に踏まれない位置に固定した待ち受けコネクタとすることが好ましい。
前記構成とすると、フロアハーネス側のコネクタが、シートハーネス側のコネクタと接続する前の損傷防止対策を施す必要はなく、該コネクタの仮テープ止め等の作業を不要にできる。
【0018】
前記電線余長収容部のハーネス挿通路およびハーネスレール部のハーネス嵌合溝に摺動自在に挿通するシートハーネスはキャタピラ型のプロテクタで外装し、
前記プロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた複数本の折曲ラインを折り曲げて筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れて一辺を連続させると共に他辺を分離し、一方側には屈曲するが他方側には屈曲しない状態で連結していることが好ましい。
【0019】
前記キャタピラ型のプロテクタは、四角筒状等の本体に長さ方向に間隔をあけて切り込みを入れて、前記のように、一方側には屈曲するが他方側には屈曲しないキャタピラ型としている。
前記四角筒状のキャタピラ型のプロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在する4本の折曲ラインを幅方向の中間部に間隔をあけて設け、かつ、該幅方向の両側縁の一方側に係止突片を突設すると共に他方側に前記係止突片を挿入係止する係止穴を設け、前記折曲ラインに沿って折り曲げて四角筒形状とすると共に係止突片を係止穴に挿入係止して四角筒状を保持し、さらに、前記4本の折曲ラインを結ぶ幅方向の切込ラインを長さ方向に間隔をあけて設けて四角筒の3辺を分離して折り曲げ自在に連結された形状としていることが好ましい。
【0020】
前記電線余長収容部およびハーネスレール部を挿通するワイヤハーネスに前記四角筒状のキャタピラ型のプロテクタを外装した場合、電線余長収容部の上板部と保持板部との間の空間の高さは前記プロテクタの高さに相当させ、ガタツキなく摺動できるようにし、かつ、該プロテクタの屈曲側は周壁部に沿わせ、電線余長収容部の内部側は屈曲できない側とし、電線余長収容部内で蛇行しないようにしている。