特許第5979036号(P5979036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979036スライドシート用のワイヤハーネス配索装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979036
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】スライドシート用のワイヤハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20160817BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H02G11/00
   B60R16/02 620Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-33891(P2013-33891)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-166008(P2014-166008A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真治
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051494(JP,A)
【文献】 特開2003−025850(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/018384(WO,A1)
【文献】 特開2008−025775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドシートに配索するワイヤハーネスを保持固定するハーネスボードと、該ハーネスボードに被せて結合する電線余長吸収機能付きの蓋を備え、前記ハーネスボードと前記蓋のいずれか一方にスライドシートへの固定部を設け、
前記蓋は、前記ワイヤハーネスをターンさせて挿通する電線余長収容部と、該電線余長収容部の入口と連通して前記ワイヤハーネスを摺動自在に挿通するハーネスレール部を備え、
前記電線余長収容部から引き出される前記ワイヤハーネス前記ハーネスボーに位置決め固定された後に前記スライドシート内へ配線される一方、前記蓋のハーネスレール部から引き出す前記ワイヤハーネスフロアハーネスとコネクタ接続される構成としており、
前記蓋には、その上板部の内面または外面からU字状の周壁部を突設し、該周壁部の先端を屈折させて保持板部を設け、該保持板部と前記上板部との間にワイヤハーネスをU字状にターンさせて摺動自在に挿通するハーネス挿通路を設けた前記電線余長収容部と、前記ハーネス挿通路の一端に設けた前記入口に前記ハーネスレール部が連続して設けられ、該ハーネスレール部は直線状に延在し、その長さ方向全長にハーネス嵌合溝を備えると共に該ハーネス嵌合溝の底部にワイヤハーネスをフロア側へ引き出すハーネス引出開口が設けられているスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置。
【請求項2】
前記ハーネスボードおよび電線余長吸収機能付きの蓋はいずれも樹脂成型品からなり、前記蓋はハーネスボードの全面または部分的に被せられ、前記ハーネスボードと蓋とに互いに結合する手段設けられている請求項1に記載のスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置。
【請求項3】
前記蓋の前記ハーネスレール部からフロア側へ引き出すワイヤハーネスは、その引出部分を長くして束ねておくと共に端末に接続したコネクタが前記蓋またはハーネスボードに設ける仮止め手段で仮止されている一方、フロアハーネス側のコネクタは、作業員に踏まれない位置に固定した待ち受けコネクタとされている請求項1または請求項2に記載のスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置。
【請求項4】
前記蓋の前記電線余長収容部および前記ハーネスレール部に収容するワイヤハーネスにキャタピラ型のプロテクタを外装しており、
前記プロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた複数本の折曲ラインを折り曲げて筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れて一辺を連続させると共に他辺を分離し、一方側には屈曲するが他方側には屈曲しない状態で連結している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドシート用のワイヤハーネス配索装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートには電動リクライニング装置やシートヒータなど種々の電装品が装備されており、これらの電装品に給電するために、車体フロアからシートに給電用のワイヤハーネスが配索されている。スライドシートの場合には、ワイヤハーネスをシートのスライド動作に追従させる必要があり、そのためワイヤハーネスに余長部を持たせて配索している。
【0003】
この種のスライドシートへのワイヤハーネスの接続構造として、従来、特開2007−318912号公報において、図9(A)(B)(C)に示すように、スライドシート100のシート101の裏面(下面)に余長吸収機能のケース110が固定された構成が開示されている。該ケース110内に配索されるワイヤハーネス200はケースに設けた開口111から引き出されてフロアの車体側固定部201で固定されてフロアハーネスと接続される一方、ケース110の開口112から引き出されてシート側固定部202で固定され、シート101の内部へ配索されている。
【0004】
前記余長吸収機能のケース110は図9(C)に示すように、ケース本体110aに蓋110bをかぶせ、内部空間110iに円形ガイド115とバネ116が設置されている。該ケース110の内部にワイヤハーネス200の中間部を挿通し、スライドシートの移動に応じてケース内部でワイヤハーネス200が出入し、U形状に迂回するワイヤハーネスの長さを調節して追従させている。なお、ケース110のシート裏面への固定機構、該ケース110から引き出されたワイヤハーネスのシート側固定部202への固定機構、ケース110の開口111、112から引き出されたワイヤハーネスの配線については具体的な記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−318912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載されたワイヤハーネスの接続構造では、シートの裏面側に余長吸収機能のケース110と、該ケース110から引き出されるワイヤハーネス200をシートに固定するシート側固定部202が別位置に設けられているため、これらを個別にシートに固定する作業が必要となり、車両への組付作業性が悪い問題がある。かつ、余長吸収機能のケース110は本体、蓋および内部に収容するバネ、円形ガイドが必要であり、部品点数が多くコスト高になる問題がある。さらに、ケース110内にワイヤハーネスをU形状に配線して余長を吸収しているだけであるため、スライドシートの移動長さが大となるとケース110の長さを延ばして大型化する必要があり、設置スペースが大きくなる問題がある。
【0007】
また、ワイヤハーネス200のフロアの車体側固定部201ではフロアハーネスとコネクタ接続されていると解される。その際、通常、フロアハーネスの幹線から分岐したシート行きの枝線の端末にコネクタが接続され、スライドシートが車両に搭載された後に、前記枝線がスライドシート側へ延ばされて配線され、端末のコネクタがシート側ワイヤハーネスのコネクタと接続される。スライドシートが車体に組みつけられ、シート側ワイヤハーネスのコネクタとフロアハーネス側のコネクタとが接続がされるまでの期間、フロアハーネス側のコネクタは、組立作業者に踏まれて損壊する恐れがある。よって、従来は、フロアハーネスのシート行きの枝線端末のコネクタを踏まれない箇所に一時的にテープ止めしており、作業手数がかかると共に、破棄するテープが車両に残りやすい問題がある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、スライドシートへ配索する給電用のワイヤハーネスの余長吸収部材と該ワイヤハーネスのスライドシートへの固定材とを同時にスライドシートに取り付けることが出来るようにして、スライドシートへのワイヤハーネスの取付作業性を改善することを主たる課題としている。
また、フロアハーネス側コネクタとの接続前に、該コネクタが作業員に踏まれないように接続作業性を改善し、さらに、部品点数を削減および余長吸収量をケースを大型化することなく増大可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、スライドシートに配索するワイヤハーネスを保持固定するハーネスボードと、該ハーネスボードに被せて結合する電線余長吸収機能付きの蓋を備え、前記ハーネスボードと前記蓋のいずれか一方にスライドシートへの固定部を設け、
前記蓋は、前記ワイヤハーネスをターンさせて挿通する電線余長収容部と、該電線余長収容部の入口と連通して前記ワイヤハーネスを摺動自在に挿通するハーネスレール部を備え、
前記電線余長収容部から引き出される前記ワイヤハーネス前記ハーネスボーに位置決め固定された後に前記スライドシート内へ配線される一方、前記蓋のハーネスレール部から引き出す前記ワイヤハーネスフロアハーネスとコネクタ接続される構成としており、
前記蓋には、その上板部の内面または外面からU字状の周壁部を突設し、該周壁部の先端を屈折させて保持板部を設け、該保持板部と前記上板部との間にワイヤハーネスをU字状にターンさせて摺動自在に挿通するハーネス挿通路を設けた前記電線余長収容部と、前記ハーネス挿通路の一端に設けた前記入口に前記ハーネスレール部が連続して設けられ、該ハーネスレール部は直線状に延在し、その長さ方向全長にハーネス嵌合溝を備えると共に該ハーネス嵌合溝の底部にワイヤハーネスをフロア側へ引き出すハーネス引出開口が設けられているスライドシートへのワイヤハーネスの配索装置を提供している。
【0010】
前記のように、本発明のワイヤハーネスの配索装置は、スライドシートに配索するワイヤハーネス(以下、シートハーネスと称す)を、ハーネスボードと蓋とに予め連続して挿通した状態で、該ハーネスボードと蓋とを結合して一体化しておき、該結合したハーネスボードまたは蓋のいずれか一方をスライドシートに固定すると、シートハーネスのスライドシートへの固定と電線余長吸収機能のスライドシートへの固定が同時にできる。このように、電線余長吸収機構とシートハーネスとをそれぞれスライドシートに取り付ける必要はなく、一度の取付作業で済むため、シートハーネスの車両組付作業性を改善できる。かつ、スライドシートへの設置スペースを減少できる。
【0011】
前記ハーネスボードおよび電線余長吸収機能付きの蓋はいずれも樹脂成型品からなり、前記蓋はハーネスボードの下面または上面に全面的または部分的に被せ、該ハーネスボードと蓋とに互いに結合する手段を設けている
【0012】
前記ハーネスボードと電線余長吸収機能付きの蓋とからなるワイヤハーネスの配索装置はシートフレームの下面、側面あるいは背面にボルト固定、あるいは前記ハーネスボードまたは前記蓋に設けるクランプを前記スライドシートのシートフレームに設ける取付穴に挿入係止して固定することが好ましい。該クランプをハーネスボードまたは蓋と一体的に設けてもよいし、別体のクランプを取り付けてもよく、スライドシートへの固定手段は限定されない。
【0013】
前記蓋の電線余長収容部およびハーネスレール部にシートハーネスを摺動自在に挿通した後に、ハーネスボードと蓋とを結合している。該結合手段はハーネスボードと蓋にそれぞれ設けたロック部と被ロック部とから構成してもよい。あるいは、ハーネスボードからボルト穴付き支柱を突設する一方、蓋に設けるボルト穴を連通させてボルトを通して締結してもよく、結合手段は限定されないい。
【0014】
前記蓋に設ける電線余長収容部およびハーネスレール部は、蓋の内面側または外面側に設けている。
前記のように、蓋には、その基板(上板部または下板部)からU字状の周壁部を突設し、該周壁部の先端を屈折させて保持板部を設け、該保持板部と前記基板との間にワイヤハーネスをU字状にターンさせて摺動自在に挿通するハーネス挿通路を設けた前記電線余長収容部と、
前記ハーネス挿通路の一端に設けた前記入口に前記ハーネスレール部を連続させて設け、該ハーネスレール部は直線状に延在し、その長さ方向全長にハーネス嵌合溝を備えると共に該ハーネス嵌合溝の底面にハーネス引出口を備え、該ハーネス引出口からワイヤハーネスをフロア側へ引き出す構成としている。
【0015】
前記のように、蓋に設ける前記電線余長収容部は周壁部の突出端から折り返して保持板部を設けているため、電線余長収容部自体の蓋を不要にでき、その結果、蓋が設けられないハーネスレール部と前記電線余長収容部を一体的に成形できる。かつ、該電線余長収容部とハーネスレール部を備えた蓋として、前記ハーネスボードに被せても嵩高にならず小型化できる。
【0016】
前記蓋は、シートハーネスをU字状に迂回させる略長円形状の前記電線余長収容部の長辺の一周壁に沿って、直線状とするハーネスレール部を平行に設け、全体形状を略J形状としている。あるいは、前記電線余長収容部の長辺と直交方向に延在させてハーネスレール部を設け、全体形状を略L形状としている。いずれの場合もハーネスレール部を長くすると、電線余長を長くでき、スライドシートのスライド量が長い場合に対応できる。このように、前記蓋をJ字状またはL字状とすると前記ハーネスボードの一部に蓋を被せることとなる。
一方、蓋の基板の形状を前記ハーネスボードの全面に被せる形状とし、該基板に前記J字状またはL字状に前記電線余長収容部と前記ハーネスレール部を突設してもよい。
【0017】
また、前記ハーネスレール部からフロア側へ引き出すシートハーネスは、その引出部分を長くして束ねておくと共に端末に接続したコネクタを前記蓋またはハーネスボードに設ける仮止め手段で仮止めしておく一方、フロアハーネス側のコネクタは、作業員に踏まれない位置に固定した待ち受けコネクタとすることが好ましい。
前記構成とすると、フロアハーネス側のコネクタが、シートハーネス側のコネクタと接続する前の損傷防止対策を施す必要はなく、該コネクタの仮テープ止め等の作業を不要にできる。
【0018】
前記電線余長収容部のハーネス挿通路およびハーネスレール部のハーネス嵌合溝に摺動自在に挿通するシートハーネスはキャタピラ型のプロテクタで外装し、
前記プロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた複数本の折曲ラインを折り曲げて筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れて一辺を連続させると共に他辺を分離し、一方側には屈曲するが他方側には屈曲しない状態で連結していることが好ましい。
【0019】
前記キャタピラ型のプロテクタは、四角筒状等の本体に長さ方向に間隔をあけて切り込みを入れて、前記のように、一方側には屈曲するが他方側には屈曲しないキャタピラ型としている。
前記四角筒状のキャタピラ型のプロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在する4本の折曲ラインを幅方向の中間部に間隔をあけて設け、かつ、該幅方向の両側縁の一方側に係止突片を突設すると共に他方側に前記係止突片を挿入係止する係止穴を設け、前記折曲ラインに沿って折り曲げて四角筒形状とすると共に係止突片を係止穴に挿入係止して四角筒状を保持し、さらに、前記4本の折曲ラインを結ぶ幅方向の切込ラインを長さ方向に間隔をあけて設けて四角筒の3辺を分離して折り曲げ自在に連結された形状としていることが好ましい。
【0020】
前記電線余長収容部およびハーネスレール部を挿通するワイヤハーネスに前記四角筒状のキャタピラ型のプロテクタを外装した場合、電線余長収容部の上板部と保持板部との間の空間の高さは前記プロテクタの高さに相当させ、ガタツキなく摺動できるようにし、かつ、該プロテクタの屈曲側は周壁部に沿わせ、電線余長収容部の内部側は屈曲できない側とし、電線余長収容部内で蛇行しないようにしている。
【発明の効果】
【0021】
前記のように、本発明では、シートハーネスを保持固定してスライドシートに固定するハーネスボードを設け、該ハーネスボードに電線余長収容部とハーネスレール部とからなる電線余長吸収機構を備えた蓋を被せて結合しているため、スライドシートへのシートハーネスの固定と電線余長吸収機構の固定を一度に一括して行うことができる。よって、従来のように、シートハーネスと電線余長吸収ケースとを別々にスライドシートに固定する必要はなく、組付作業性を大幅に改善できる。また、電線余長吸収をU字状に迂回させる電線余長収容部にハーネスレール部を加えて行っているため、電線余長吸収量を長くでき、スライドシートのスライド量が長くなっても対応できる。
かつ、装置全体の部品点数の削減、小型化ができ、スライドシートへの設置スペースを減少できる。さらに、フロアハーネス側を待ち受けコネクタとして、前記蓋のハーネスレール部の先端から引き出すシートハーネスを長くして仮止めしておくと、フロアハーネス側のコネクタが組立作業員に踏まれないようにオプションテープ止め等の対策を講じておく必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のワイヤハーネスの配索装置の実施形態を示す概略側面図である。
図2】前記配索装置を示し、(A)は正面図、(B)は(A)の蓋の平面図である。
図3】前記蓋を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)はハーネスレール部の断面図である。
図4】シートハーネスとフロアハーネスとの接続部を示す斜視図である。
図5】前記配索装置のハーネスボード上のシートハーネスの配線状態を示す概略図である。
図6】シートハーネスに外装するプロテクタを示し、(A)は斜視図、(B)はプロテクタの展開図、(C)はプロテクタの一部断面図である。
図7】(A)(B)はスライドシートの移動に追従するシートハーネスの動きを説明する図面である。
図8】(A)〜(C)は蓋の変形例を示す斜視図である。
図9】(A)〜(C)は従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7に本発明の実施形態を示す。
図1に示すように、自動車に搭載するスライドシート1に装着した電装品(図示せず)に給電するワイヤハーネス(以下、シートハーネス5と称す)を、フロアパネル2に配索したフロアハーネス50とコネクタ接続して配索している。該シートハーネス5をスライドシート1のシート下面に固定した図2、3に示す配索装置3を通してスライドシート1内に配線している。
【0024】
前記配索装置3はハーネスボード6と、該ハーネスボード6の下面を覆うように取り付ける電線余長吸収機能付きの蓋7とからなる。ハーネスボード6は基板16の下面にシートハーネス5を配索して固定している。該基板16の下面と空間をあけて対向させて取り付ける蓋7は、その基板10の上面に電線余長収容部8とハーネスレール部9とを連続的に突設している。
【0025】
前記蓋7のハーネスレール部9および電線余長収容部8を通したシートハーネス5をハーネスボード6上で保持固定し、該ハーネスボード6に蓋7を被せて結合している。このように一体化した状態で、スライドシート1のシートの下面に固定し、ハーネスボード6に固定したシートハーネス5をシート内に配線している。詳細には、図5に示すように、ハーネスボード6の周縁からブラケット6bを突設し、該ブラケット6bをスライドシート1のシートフレームの下面に突き当ててボルト締結している。
なお、ボルト締結に代えて、ハーネスボードからクランプを突設し、シートフレームに設けた係止穴に挿入係止して、クランプ結合してもよい。
【0026】
前記ハーネスボード6および電線余長吸収機能付きの蓋7はいずれも樹脂成型品からなる。ハーネスボード6は略長方形状の基板16を備える一方、蓋7は略L形状で、長方形状の基板16の下面に一部を被せている。ハーネスボード6と蓋7とを結合するため、図2(A)に示すように、ハーネスボード6の基板16の下面から支柱6hを下向きに突設し、その先端に設けるボルト穴を開口させ、蓋7の基板10に設けるボルト穴10bから支柱6hのボルト穴にボルトを通して固定できるようにしている。なお、該固定手段は限定されず、互いに結合されるロック片と被ロック片を突設して結合してもよい。
【0027】
蓋7の基板10は略L形状で、自動車の幅方向に延在させる長円形状の部分を電線余長収容部8とし、該電線余長収容部8の幅方向の一端から自動車の長さ前方に延在する直線部分をハーネスレール部9としている。
【0028】
前記電線余長収容部8では上板部となる基板10の上面(内面)から外周縁に沿ってU字状に周壁部11を上向きに突設している。周壁部11の先端を屈折させて保持板部12を設け、該保持板部12と基板10との間にシートハーネス5をU字状にターンさせて摺動自在に挿通するハーネス挿通路13を設けている。該ハーネス挿通路13の一方の長辺側の一端に前記ハーネスレール部9と連通する入口14を設けている。
なお、基板10の下面(外面)に周壁部11を下向きに突設し、外面側に電線余長収容部8を設けてもよい。
【0029】
前記入口14に連続させたハーネスレール部9は長さ方向全長に上面開口のハーネス嵌合溝20を設けると共に該ハーネス嵌合溝20の底部にハーネス引出開口21を設け、該ハーネス引出開口21からシートハーネス5をフロア側に引き出している。本実施形態のスライドシート1のスライド量は一般的な240〜300mm程度とし、ハーネスレール部9の長さと電線余長収容部8内でUターンする長さとの合計でシートハーネス5の余長寸法を吸収できるようにしている。
【0030】
前記ハーネスレール部9から引き出すシートハーネス5は比較的長尺とし、その先端にフロアハーネス50との接続用のコネクタ24を取り付けている。該コネクタ24をフロアハーネス50側のコネクタ51と接続するまでは、図3(B)に示すように仮巻き材29にシートハーネス5を巻き付けている。なお、仮巻き材を設けずに、シートハーネス5を束ねて垂れさがらないようにしておいてもよい。
一方、前記シートハーネス5のコネクタ24と接続するフロアハーネス50側のコネクタ51は図4に示すように、作業員が足踏みできない箇所(フロアトンネルの側面)に待ち受けで固定しており、フロアの水平面上に位置させていない。これにより、該コネクタ51が損傷を受けないようにするオプションテープ巻き等の対策を不要としている。
【0031】
前記蓋7を下部に被せるハーネスボード6の基板16の下面でシートハーネス5を配索固定している。詳細には、図5に示すように、蓋7の電線余長収容部8から引き出されるシートハーネス5を4つに分岐している。第1枝線5Aにジョイントコネクタ25Aを接続し、該ジョイントコネクタ25Aを基板16上に位置決め保持している。第2枝線5Bにコネクタ25Bを接続し、基板16上で前記ジョイントコネクタ25Aと並列した位置に位置決め保持している。第3枝線5Cと第4枝線5Dは基板16上で他方側へと延在させ、クリップ付きバンド26A、26Bを締結し、これらバンドのクリップを基板16に設けた係止穴に挿入係止して位置決め保持している。このように、スライドシート1の内部へ配線するシートハーネス5の分岐した枝線5A〜5Dをそれぞれハーネスボード6に位置決め固定している。
【0032】
前記蓋7の電線余長収容部8およびハーネスレール部9に摺動自在に配線するシートハーネス5に、図6(A)に示す四角筒状のキャタピラ型のプロテクタ30を外装している。該プロテクタ30は図6(B)に示す帯状の連続した長尺材からなる平板40を折り曲げて組み立てている。平板40には、長さ方向Xに延在する4本の折曲ライン41、42、43、44を幅方向Yの中間部に間隔をあけて設け、平板40を幅方向に5個の辺S1〜S5に区画し、折曲ライン41〜44を直角に折り曲げ、幅方向の両側辺S1とS5を重ねることで図6(A)に示すように、四角筒状に組み立てている。
【0033】
また、平板40の幅方向の両側の一方側の辺S1の側縁に係止突片45を長さ方向Xに間隔をあけて突設している。該係止突片45は円弧状の突出部の根元両側に切込45aを設け、両側に係止辺45bが突出する形状としている。平板40の他方側の辺S5に係止突片45を挿入係止する細長い係止穴46を設けている。該係止穴46の長さ方向両端に切込46aを設け、その先端に小径穴46cを設けている。前記切込46aに係止辺45bがかかるようにし、かつ、小径穴46cで切込46aの先端から亀裂が生じないようにしている。平板40を折曲ライン41〜44に沿って折り曲げ、辺S1とS5を重ねた状態で係止突片45を係止穴46に挿入係止することで、四角筒形状を保持できるようにしている。
【0034】
平板40には前記4本の折曲ライン41〜44を結ぶ幅方向Yの切込ライン48を長さ方向Xに間隔をあけて設け、辺S2、S3、S4を分離している。該切込ライン48の両端、すなわち、折曲ライン41および44と接する位置には小径穴48aを連続して設け、先端からの亀裂発生を防止している。さらに、切込ライン48の中央部で辺S3の中央位置に直線を湾曲させた円弧状の切込49を設け、長さ方向に隣接する一方側を円弧状に突出させ、他方を円弧状に窪ませ、凹凸嵌合部を設けている。
平板40に設ける折曲ライン41〜44は、図3(C)に示すように、板厚の1/3程度を切削して断面円弧状のラインとしている。前記切込ライン48、係止穴46、係止突片45はすべて平板を打抜いて形成している。よって、平板40を成形した後に、打抜加工、切削加工で形成している。
【0035】
前記プロテクタ30は予め折曲ライン41〜44を折り曲げる一方、係止突片45は係止穴46に挿入せず、開いた状態でシートハーネス5の電線群を折り曲げたプロテクタ30の両側辺S1とS5の間の開口から挿入する。この電線群の挿入後に辺S1とS5を重ね、係止突片45を係止穴46に挿入係止し、電線群を四角筒の中に挿入した状態で外装する。
前記プロテクタ30は四角筒の3辺S2、S3、S4が切込ライン48で長さ方向で分離され、重ねて係止した辺S1とS5が長さ方向で屈曲自在に連結された構成となり、かつ、分離された辺S3は、隣接する辺S3同士が円弧状切込で凹凸嵌合する状態となる。即ち、短尺な四角筒が屈曲自在に長さ方向に順次連結し、かつ、隣接する四角筒同士を凹凸嵌合させているため幅方向にずれない、キャタピラ状のプロテクタとなる。該プロテクタ30は屈曲自在な辺S3を周壁部11の内面に添わせ、対向する幅方向にずれない辺S1とS5を電線余長収容部8の内側に配置している。
【0036】
前記キャタピラ型のプロテクタ30を用い、電線余長収容部8内でプロテクタ30の下辺を基板10に摺動自在に搭載し、上面を保持板部12の下面に添わせていることでガタつき無く摺動自在に収容できる。また、ハーネスレール部9ではハーネス嵌合溝20内にプロテクタ30を摺動自在に内嵌する形状としているため、ガタつき無く摺動させることができる。
【0037】
図7に、スライドシート1のスライド動作に追従するシートハーネス5の動きを示す。図7(A)はスライドシート1が前方に位置する状態を示し、電線余長収容部8内にシートハーネス5が巻き込まれて余長が吸収されている。スライドシート1が後退すると、図7(B)に示すように、電線余長収容部8からシートハーネス5がハーネスレール部9側へ引き出され、ハーネスレール部9側でシートハーネス5が前進移動して余長部分を吸収する。
このように、スライドシート1のスライドに応じたシートハーネス5の余長吸収機能を、スライドシート1に固定した配索装置3の電線余長収容部8と、ハーネスレール部9とに分担させている。これにより、ハーネスレール部9から引き出すシートハーネス5をフロア側で更に移動させる必要がなく、フロアハーネスと接続できる。よって、フロア側に電線余長吸収装置を設置する必要がなくなる。
【0038】
本発明の配索装置3では、シートハーネス5のシート側固定部として機能させるハーネスボード6と電線余長吸収機能を備える蓋7とを結合しているため、該配索装置3をスライドシート1に固定するだけでよく、組付作業性を向上できる。
また、電線余長吸収はU字状に迂回させる電線余長収容部8にハーネスレール部9を加えて行っているため、電線余長吸収量を長くでき、スライドシートのスライド量が長くなっても対応できる。
かつ、ハーネスボード6、蓋7は樹脂成形品のみからなり、バネやガイド材等の付属部品を必要としないため、装置全体の部品点数の削減、小型化ができ、スライドシートへの設置スペースを減少できる。さらに、フロアハーネス50側のコネクタ51を待ち受けコネクタとして、蓋7のハーネスレール部9の先端から引き出すシートハーネス5を長くして仮止めしておくと、フロアハーネス側のコネクタ51が組立作業員に踏まれないようにオプションテープ止め等の対策を講じておく必要がない。
【0039】
本発明の電線余長収容部8とハーネスレール部9とを一体成形した蓋7は前記実施形態に限定されず、図8(A)〜(C)に示す構造としてもよい。
図8(A)に示す第1変形例では、ハーネスレール部9を電線余長収容部8の長辺に沿って延在させ、全体をJ形状としている。他の構成は前記実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0040】
図8(B)に第2変形例の蓋7を示す。
該第2変形例は第1実施形態と同様なL形状としているが、電線余長収容部8の周壁部11は保持板部12を突設した部分だけ設け、保持板部を設けていない部分は周壁無し部分としている。該構成とすると樹脂量を減少して軽量化を図ることができ、スライドシート1に固定する場合に、スライドシートの重量増加を抑えることができる。他の構成は第1変形例と同様であるため説明を省略する。
【0041】
図8(C)に第3変形例の蓋7示す。
該第3変形例の蓋7は保持板部を間隔をあけて設けず、周壁部11の全長にわたって連続保持板部を設けている。他の構成は第1、第2変形例と同様であるため説明を省略する。
【0042】
なお、蓋7の基板10はハーネスボード6の全体を覆う長方形状とし、該基板に電線余長収容部およびハーネスレール部をL字状またはJ字状に突設して設けている。
【0043】
本発明は前記実施形態に限定されず、ハーネスボードを下側、蓋7を上側として結合してスライドシートに固定してもよい。また、スライドシートのシート下面に配索装置3を固定せずに、シート側面または背面に配索装置3を固定してもよい。
さらに、スライドシートのスライド寸法が400〜1200mm程度のロングスライドシートである場合には、前記配索装置3をスライドシートに固定すると共に、シートレールの側方のフロアに第二余長吸収部材を設置し、配索装置3のハーネスレール部から引き出すシートハーネスを前記第二余長吸収部材に通して、ワイヤハーネスの余長吸収量を増加して対応させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 スライドシート
3 配索装置
5 ワイヤハーネス(シートハーネス)
6 ハーネスボード
7 蓋
8 電線余長収容部
9 ハーネスレール部
30 キャタピラ型のプロテクタ
図1
図2
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図9