(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状の本体部及び前記本体部を覆う蓋部より形成されたハウジングと、前記ハウジング内に固定されコイルが巻装されたステータと、前記ステータの内側に設けられ回転軸に一体回転可能に固定されたロータとを備え、
前記本体部には、前記回転軸の軸方向の一方側及び他方側に開口する冷媒流路が形成されると共に、前記冷媒流路に冷媒を供給する冷媒流入口と、前記冷媒流路から冷媒を排出する冷媒流出口とが形成され、
前記本体部には、前記冷媒流路内に隔壁が形成され、
前記隔壁は、軸方向の一方側に形成される一方側隔壁と、軸方向の他方側に形成される他方側隔壁とを備え、
前記一方側隔壁と前記他方側隔壁とは、それぞれ周方向に間隔をあけて配置されると共に、前記一方側隔壁と前記他方側隔壁とで周方向位置が異なるように配置され、
前記一方側隔壁と前記他方側隔壁とは、前記一方側隔壁及び前記他方側隔壁間に周方向に連通する周方向冷媒流路が形成されるよう軸方向に間隔をあけて配置され、
前記蓋部は、前記一方側の冷媒流路の開口を塞ぐ一方側蓋部と前記他方側の冷媒流路の開口を塞ぐ他方側蓋部とを備えていることを特徴とする回転電機。
前記本体部の外周面であって前記周方向冷媒流路に対応する軸方向位置に、金型のパーティングラインが形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機。
前記本体部には、前記隔壁に切り欠き部が設けられ、該切り欠き部から上方に突出し前記コイルの引出し線を前記ハウジング外周へ引出す挿通部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示された車両用交流発電機では、冷却液流路は軸方向冷却液流路、周方向冷却液流路及び径方向冷却液流路によって形成されていることにより、冷却液流路が長くなり冷却液流路内における圧力損失が増大する。また、軸方向冷却液流路は軸方向に貫通形成されているので、所定の流路幅を確保するためには、ダイカスト鋳造における金型の抜き勾配を考慮すると、ハウジングの肉厚が圧肉化してしまい、ハウジングが大型化する問題がある。さらに、発電機の主発熱部位である固定子鉄心(ステータ)に対応する軸方向の領域以外のところに冷却液流路が形成されており、発電機の冷却が効率良く行われない恐れがある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、冷媒流路内における冷媒の圧力損失を軽減し、発熱部位の冷却を効率良く行うことが可能な回転電機の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、円筒状の本体部及び前記本体部を覆う蓋部より形成されたハウジングと、前記ハウジング内に固定されコイルが巻装されたステータと、前記ステータの内側に設けられ回転軸に一体回転可能に固定されたロータとを備え、前記本体部には、前記回転軸の軸方向の一方側及び他方側に開口する冷媒流路が形成されると共に、前記冷媒流路に冷媒を供給する冷媒流入口と、前記冷媒流路から冷媒を排出する冷媒流出口とが形成され、前記本体部には、前記冷媒流路内に隔壁が形成され、前記隔壁は、軸方向の一方側に形成される一方側隔壁と、軸方向の他方側に形成される他方側隔壁とを備え、前記一方側隔壁と前記他方側隔壁とは、それぞれ周方向に間隔をあけて配置されると共に、前記一方側隔壁と前記他方側隔壁とで周方向位置が異なるように配置され、前記一方側隔壁と前記他方側隔壁とは、前記一方側隔壁及び前記他方側隔壁間に周方向に連通する周方向冷媒流路が形成されるよう軸方向に間隔をあけて配置され、
前記蓋部は、前記一方側の冷媒流路の開口を塞ぐ一方側蓋部と前記他方側の冷媒流路の開口を塞ぐ他方側蓋部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、冷媒流路には、周方向に連通する周方向冷媒流路が形成されているので、周方向冷媒流路に冷媒を流通させることにより、冷媒流路内における冷媒の圧力損失を軽減し、発熱部位の冷却を効率良く行うことが可能である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の回転電機において、前記周方向冷媒流路は、前記ステータの固定部位に対応する領域に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、周方向冷媒流路に冷媒を流通させることにより、ステータの固定部位を効率良く冷却することが可能である。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の回転電機において、前記隔壁に前記一方側蓋部及び前記他方側蓋部の取付手段が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、取付手段を形成するための部位を新たに設ける必要がなくハウジングの小型化を図れる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機において、前記本体部の外周面であって前記周方向冷媒流路に対応する軸方向位置に、金型のパーティングラインが形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、ダイカスト鋳造により、固定型・可動型の両方を使用し冷媒流路を周方向冷媒流路に対応する軸方向位置で2分割して形成することで、抜き勾配による冷媒流路の流路幅の低減を最小限に抑えることが可能となる。また、ダイカスト鋳造により本体部を製造可能なので本体部の製造が容易である。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機において、前記本体部には、前記隔壁に切り欠き部が設けられ、該切り欠き部から上方に突出し前記コイルの引出し線を前記ハウジング外周へ引出す挿通部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、挿通部を通ってコイルの引出し線をハウジング外周へ簡単に引出すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷媒流路内における冷媒の圧力損失を軽減し、発熱部位の冷却を効率良く行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本発明の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る回転電機としての電動モータを
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1に示す電動モータ10は、ハウジング11と、ハウジング11内に固定されたステータ(固定子)12と、ステータ12の内側に設けられ回転軸19に一体回転可能に固定されたロータ(回転子)13とを備えている。
なお、
図1における左右方向に対応する方向を「軸方向」、
図1における左側を「一方側」、
図1における右側を「他方側」とする。
本実施形態では、軸方向の一方を「前側」とし、軸方向の他方を「後側」としている。
【0021】
ハウジング11は、円筒状の本体部14と、本体部14の前端を覆うフロントカバー15と、本体部14の後端を覆うリヤカバー16とで構成されている。フロントカバー15及びリヤカバー16は、蓋部に相当し、フロントカバー15を一方側蓋部とし、リヤカバーを他方側蓋部とする。
【0022】
ステータ12は、固定子鉄心17に固定子コイル18が巻装されて、本体部14の内周面に、焼き嵌め或いは圧入等によって固定されている。固定子コイル18には、図示しない駆動回路から三相交流が供給されるようになっている。
ロータ13は、回転軸19と、回転軸19に嵌合した複数の磁極鉄心20とを備えている。フロントカバー15及びリヤカバー16の中心部には軸受21、22がそれぞれ固定されており、軸受21、22によって回転軸19が支持され、ロータ13は、ステータ12の内側に回転可能に支持されている。ロータ13は、ステータ12内でステータ12に供給される電流によって回転駆動される。
回転軸19の前端部は、ハウジング11の外部に突出しており、この前端部には図示しないプーリが嵌合され、プーリを介して外部負荷と作動連結されている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、本体部14の外周面には円周方向に周回するパーティングライン29が軸方向中央に形成されている。本体部14におけるパーティングライン29より前側の部位を第1本体部14Aとし、パーティングライン29より後側の部位を第2本体部14Bとする。パーティングライン29は、後述するようにダイカスト鋳造における固定型・可動型の分割面に対応して本体部14に形成される線状の盛り上がり部分である。
【0024】
図2に示すように、第1本体部14Aには、軸方向の一方側に開口し円周方向に延在する一方側冷媒流路23が形成されている。一方側冷媒流路23内には円周方向に間隔を空けて複数個(この場合は5個)形成され、それぞれ順に一方側冷媒流路23A〜23Eとする。
第1本体部14Aにおける一方側冷媒流路23A〜23E間には、一方側リブ部25が形成されている。すなわち、一方側冷媒流路23A、23B間のリブ部を一方側リブ部25Aとし、一方側冷媒流路23B、23C間のリブ部を一方側リブ部25Bとし、一方側冷媒流路23C、23D間のリブ部を一方側リブ部25Cとし、一方側冷媒流路23D、23E間のリブ部を一方側リブ部25Dとする。一方側リブ部25Aは、一方側冷媒流路23Aと一方側冷媒流路23Bを分離する隔壁である。一方側リブ部25Bは、一方側冷媒流路23Bと一方側冷媒流路23Cを分離する隔壁である。一方側リブ部25Cは、一方側冷媒流路23Cと一方側冷媒流路23Dを分離する隔壁である。一方側リブ部25Dは、一方側冷媒流路23Dと一方側冷媒流路23Eを分離する隔壁である。なお、一方側冷媒流路23A、23E間には、軸方向の一方側に開口する冷媒流路が形成されておらず、切り欠き部26となっている。一方側冷媒流路23Eと切り欠き部26間のリブ部を一方側リブ部25Eとし、一方側冷媒流路23Aと切り欠き部26間のリブ部を一方側リブ部25Fとすると、一方側リブ部25E、25Fは共同して、一方側冷媒流路23Eと一方側流路23Aを分離する隔壁を形成し、この隔壁に切り欠き部26が形成されている。
【0025】
各一方側リブ部25A〜25Fには、フロントカバー15の取付手段としてのねじ孔27が形成されている。
切り欠き部26の周囲には、上方に突出し固定子コイル18の引出し線をハウジング外周へ引出す挿通部28が形成されている。挿通部28には、固定子コイル18の引出し線を挿通させる貫通孔281が形成されている。
【0026】
図3に示すように、第2本体部14Bには、軸方向の他方側に開口し円周方向に延在する他方側冷媒流路24が形成されている。他方側冷媒流路24内には円周方向に間隔を空けて複数個(この場合は5個)形成され、それぞれ順に他方側冷媒流路24A〜24Eとする。なお、他方側冷媒流路24Dは、第1本体部14Aにおける切り欠き部26に対応する部位に形成され、円周方向の長さが、他の他方側冷媒流路24A〜24C、24Eより長くなるように形成されている。
【0027】
第2本体部14Bにおける他方側冷媒流路24A〜24E間には、他方側リブ部30が形成されている。すなわち、他方側冷媒流路24A、24B間のリブ部を他方側リブ部30Bとし、他方側冷媒流路24B、24C間のリブ部を他方側リブ部30Cとし、他方側冷媒流路24C、24D間のリブ部を他方側リブ部30Dとし、他方側冷媒流路24D、24E間のリブ部を他方側リブ部30Eとし、他方側冷媒流路24E、24A間のリブ部を他方側リブ部30Aとする。他方側リブ部30Bは、他方側冷媒流路24Aと他方側冷媒流路24Bを分離する隔壁である。他方側リブ部30Cは、他方側冷媒流路24Bと他方側冷媒流路24Cを分離する隔壁である。他方側リブ部30Dは、他方側冷媒流路24Cと他方側冷媒流路24Dを分離する隔壁である。他方側リブ部30Eは、他方側冷媒流路24Dと他方側冷媒流路24Eを分離する隔壁である。他方側リブ部30Aは、他方側冷媒流路24Eと他方側冷媒流路24Aを分離する隔壁である。
各他方側リブ部30A〜30Eには、リヤカバー16の取付手段としてのねじ孔27が形成されている。
図2,
図3に示すように、各冷媒流路23A〜23E、24A〜24Eは本体部14の一方側端、他方側端に開口するが、それぞれフロントカバー15、リヤカバー16によって開口が塞がれる。
【0028】
図4に示すように、一方側リブ部25A〜25Fがそれぞれ周方向に間隔を空けて配置されるとともに、他方側リブ部30A〜30Eがそれぞれ周方向に間隔を空けて配置される。一方側リブ部25A〜25F(一方側隔壁)と他方側リブ部30A〜30E(他方側隔壁)とは、周方向位置がそれぞれ異なるように配置されている。すなわち、各一方側リブ部25A〜25F間に形成される一方側冷媒流路23A〜23Eと、各他方側リブ部30A〜30E間に形成される他方側冷媒流路24A〜24Eとは、周方向位置がそれぞれ異なるよう円周方向に位相をずらして配置されている。
【0029】
図5は本体部14におけるハウジングの外側から見た冷媒流路と各リブの配置を展開した展開図である。
図5に示すように、一方側リブ部25B〜25Fと他方側リブ部30A〜30Eとは、軸方向に所定の長さを有している。一方側リブ部25B〜25Fと他方側リブ部30A〜30Eとは、一方側リブ部25B〜25Fと他方側リブ部30A〜30E間に周方向に連通する周方向冷媒流路31が形成されるよう軸方向に間隔をあけて配置されている。周方向冷媒流路31は、軸方向に一定の幅を有し、周方向においてほぼ周回する帯状の流路である。周方向冷媒流路31が冷媒流入口32から供給される冷媒を周方向に循環させる主冷媒流路に相当する。周方向冷媒流路31は、ステータ12の本体部14への固定部位に対応する領域に形成されている。
図5において、周方向冷媒流路31における冷媒の流れをF1で表している。なお、一方側リブ部25Aは軸方向の長さが、他の一方側リブ部25B〜25Fと比べて長く形成されている。
【0030】
図2〜
図4に示すように、第1本体部14Aには、冷媒流路に冷媒を供給する冷媒流入口32と、冷媒流路から冷媒を排出する冷媒流出口33とが形成されている。冷媒流入口32は、一方側冷媒流路23Bに連通するように設けられ、冷媒流出口33は、一方側冷媒流路23Aに連通するように設けられている。
冷媒としては、例えば、LLC(ロング・ライフ・クーラント)などを使用することができる。
【0031】
図6は冷媒流路の形状を示す。つまり、冷媒の流れうる空洞の形状を示している。
図5及び
図6に示すように、一方側冷媒流路23A〜23E及び他方側冷媒流路24A〜24Eは、本体部14の軸方向中心部でそれぞれ連通されて周方向冷媒流路31を形成しており、この連通部を連通部34とすると、連通部34は、後で説明する金型の突合せ部に相当する。
例えば、他方側冷媒流路24Bは、軸方向に対して反対方向に傾斜した2つの連通部34を備えており、2つの連通部34を介して他方側冷媒流路24Bと一方側冷媒流路23C、23Dとの連通が図られている。また、他方側冷媒流路24Cは、軸方向に対して反対方向に傾斜した2つの連通部34を備えており、2つの連通部34を介して他方側冷媒流路24Cと一方側冷媒流路23D、23Eとの連通が図られている。連通部34により、一方側冷媒流路23B〜23E及び他方側冷媒流路24A〜24Eは、軸方向及び周方向に連通されている。
図6において、周方向冷媒流路31における冷媒の流れをF1で表している。
また、冷媒流入口32に対応する流入側流路44及び冷媒流出口33に対応する流出側流路45が設けられており、流入側流路44は、一方側冷媒流路23Bと連通され、流出側流路45は、一方側冷媒流路23Aと連通されている。
【0032】
図5及び
図6に示すように、他方側冷媒流路24Eと一方側冷媒流路23A、23Bとは、周方向に延在する2つの連通部35を介してそれぞれ連通されている。連通部35は、後で説明する金型の突合せ部に相当する。
図5及び
図6に矢印F2で示すように、一方側冷媒流路23Bから他方側冷媒流路24Eに至り、さらに一方側冷媒流路23Aに至る冷媒流路は、副冷媒流路36を形成している。すなわち、副冷媒流路36中における冷媒の流れは、周方向冷媒流路31を流通する冷媒の流れと反対方向となっている。
【0033】
本体部14は、ダイカスト鋳造により製造される。ダイカスト鋳造は溶湯を高圧で金型に注入する鋳造法であり、
図7(a)に示すように、先ず、固定金型37と可動金型38とを型合せして本体部14の形状に対応したキャビティー39を形成する。
このとき、固定金型37には、内側に開口し円筒状に繰り抜かれた空洞部40が形成されている。空洞部40には、内側に向けて突出する突出部41が形成されている。突出部41は、円周方向に間隔をあけて複数個設けられている。突出部41は、成形後、他方側冷媒流路24A〜24Eを形成する。突出部41は、根元側から先端側に向けて先細り形状を有している。
【0034】
可動金型38には、内側に開口し円筒状に繰り抜かれた空洞部42が形成されている。空洞部42には、内側に向けて突出する突出部43が形成されている。突出部43は、円周方向に間隔をあけて複数個設けられている。突出部43は、成形後、一方側冷媒流路23A〜23Eを形成する。突出部43は、根元側から先端側に向けて先細り形状を有している。
空洞部40及び空洞部42は内側の開口側が突合されキャビティー39を形成する。
突出部41と突出部43とは、図示しないが軸方向内側に突出しつつ円周方向に異なる位相で配置され、軸方向中心部で突出部41及び突出部43が突合されて、突合せ部が形成されている。突合せ部は
図5及び
図6における連通部34、35と対応している。
【0035】
次に、
図7(b)に示すように、キャビティー39内にアルミニウム合金などの軽金属の溶湯を注入する。
次に、
図7(c)に示すように、溶湯金属が硬化後、可動金型38を固定金型37から型抜きし、成形された本体部14を固定金型37から離脱させることにより、成形された本体部14を得ることができる。なお、成形後、型の突合せ部のバリ除去作業が必要となる。
本体部14の外周面に形成されるパーティングライン29(
図2及び
図3参照)は、固定金型37及び可動金型38の分割面に対応して本体部14に形成される線状の盛り上がり部分である。パーティングライン29は本体部14の軸方向の中央に形成され、周方向冷媒流路31に対応した軸方向位置に形成される。
【0036】
上記構成を有する電動モータ10につき作用説明を行う。
図5及び
図6に示すように、図示しない外部冷却液循環装置からの冷媒は、流入側流路44を介して一方側冷媒流路23Bに流入した後、円周方向に延在され主冷媒流路である周方向冷媒流路31に流入する。そして、周方向冷媒流路31を周方向に向って流れる。なお、
図6では、冷媒は周方向冷媒流路31を冷媒の流れF1で示すように右回り方向に流通する。(
図5では、冷媒の流れF1で示すように上方より下方に向って流通する)
【0037】
ところで、ステータ12の固定子コイル18に電流が流れることにより熱が発生するが、この熱は固定子鉄心17を介して本体部14に伝達される。そして、本体部14と、冷媒流路中を還流する冷媒との間で熱交換が行われ、本体部14に伝達された熱は、冷媒に移動し、ステータ12の冷却が行われる。すなわち、ステータ12(固定子鉄心17)が固定されている本体部14の内周面(固定部位)は、発生する熱が最も多く、この固定部位を主発熱部位とすると、主発熱部位に対応する軸方向領域の中心部に周方向冷媒流路31が形成されている。よって、周方向冷媒流路31に冷媒を循環させることにより、電動モータ10の冷却を効率良く行うことが可能である。
また、冷媒は周方向冷媒流路31を周方向にスムーズに流れることができ、従来技術のように、蛇行しながら流通することがないので、冷媒流路内における冷媒の圧力損失を軽減することが可能である。
【0038】
冷媒は、周方向冷媒流路31を
図6において右回り方向に流通した後、他方側冷媒流路24Dを経て一方側冷媒流路23Aに流入し、一方側冷媒流路23Aに連通された流出側流路45を介して外部に排出される。
一方、流入側流路44を介して一方側冷媒流路23Bに流入した冷媒のうち、周方向冷媒流路31に流入しない冷媒は、
図5及び
図6に冷媒の流れF2で示すように、一方側リブ部25Aに沿って後方に移動し、他方側冷媒流路24Eを介して一方側冷媒流路23Aに流入する。すなわち、一方側冷媒流路23Bから他方側冷媒流路24Eに至り、さらに一方側冷媒流路23Aに至る副冷媒流路36を経由して、一方側冷媒流路23Aに連通された流出側流路45を介して外部に排出される。このように、周方向冷媒流路31以外に、副冷媒流路36が形成されていることにより、冷媒を滞留させることなく一層効率よく循環させ、流入側流路44から流出側流路45の間の周方向位置に配置されるステータ12の熱を効果的に抜熱することが可能である。
【0039】
本体部14に設けられている一方側リブ部25A〜25Fと他方側リブ部30A〜30Eとは、周方向に間隔をあけて配置されると共に、周方向位置がそれぞれ異なるように位相をずらして配置されている。よって、一方側リブ部25A〜25F及び他方側リブ部30A〜30Eを設けることにより、本体部14の機械的強度を向上可能である。
また、この一方側リブ部25A〜25F及び他方側リブ部30A〜30Eにフロントカバー15及びリヤカバー16の取付手段としてのねじ孔27が形成されているので、別途ねじ孔を設けるために外周側へ張り出す部分を形成する必要が無く、ハウジング11の小型化を図れる。
【0040】
本体部14は、ダイカスト鋳造により固定金型37及び可動金型38を使用して製造される。固定金型37及び可動金型38に冷媒流路を形成するための突出部41及び突出部43を周方向に間隔をあけて複数設けると共に、突出部41及び突出部43を周方向に位相をずらして設ける。このことにより、一方側冷媒流路23A〜23E及び他方側冷媒流路24A〜24Eを、軸方向の中央で2分割して形成できるので、抜き勾配による冷媒流路の流路幅の低減を最小限に抑えることが可能となる。また、ダイカスト鋳造により製造可能なので製造が容易である。なお、抜き勾配とは、成形品を鋳造後、金型を成形品からスムーズに離すために金型の側壁に設けた傾斜(勾配)のことを指す。
【0041】
この本発明の実施形態に係る電動モータ10によれば以下の効果を奏する。
(1)本体部14に形成されている一方側リブ部25B〜25Fと他方側リブ部30A〜30Eとは、一方側リブ部25B〜25Fと他方側リブ部30A〜30E間に周方向に連通する周方向冷媒流路31が形成されるよう軸方向に間隔をあけて配置されている。よって、周方向冷媒流路31に冷媒を流通させることにより、冷媒流路内における冷媒の圧力損失を軽減し、電動モータ10の冷却を効率良く行うことが可能である。
(2)周方向冷媒流路31は、ステータ12の本体部14に固定されている主発熱部位に対応する軸方向領域の中心部に形成されている。よって、周方向冷媒流路31に冷媒を循環させることにより、電動モータ10の冷却を一層効率良く行うことが可能である。
(3)本体部14に設けられている一方側リブ部25A〜25Fと他方側リブ部30A〜30Eとは、周方向に間隔をあけて配置されると共に、周方向位置がそれぞれ異なるように位相をずらして配置されている。よって、一方側リブ部25A〜25F及び他方側リブ部30A〜30Eを設けることにより、本体部14の機械的強度を向上可能である。また、この一方側リブ部25A〜25F及び他方側リブ部30A〜30Eにフロントカバー15及びリヤカバー16の取付手段としてのねじ孔27が形成されているので、ねじ孔27を形成するための部位を新たに設ける必要がなくハウジング11の小型化を図れる。
(4)冷媒流路には周方向冷媒流路31以外に、副冷媒流路36が形成されていることにより、冷媒を滞留させることなく一層効率よく循環させることが可能である。また、流入側流路44と流出側流路45との間の周方向におけるステータ12の発熱を効果的に抜熱することができる。
(5)本体部14は、ダイカスト鋳造により固定金型37及び可動金型38を使用して製造され、固定金型37及び可動金型38に冷媒流路を形成するための突出部41及び突出部43を周方向に間隔をあけて複数設けると共に、周方向に位相をずらして設ける。このことにより、一方側冷媒流路23A〜23E及び他方側冷媒流路24A〜24Eを、軸方向に2分割して形成でき、本体部14の外周面に、金型のパーティングライン29が形成される。パーティングライン29は本体部14の軸方向中央にすることで、本体部14の肉厚を第1本体部と第2本体部とで、同じに出来るので、抜き勾配による冷媒流路の流路幅の低減を最小限に抑えることが可能となる。また、ダイカスト鋳造により本体部14を製造可能なので本体部14の製造が容易である。
(6)一方側冷媒流路23A、23E間に形成されている切り欠き部26の周囲には、上方に突出し固定子コイル18の引出し線をハウジング外周へ引出す挿通部28が形成されている。よって、挿通部28を通って固定子コイル18の引出し線をハウジング外周へ簡単に引出すことができる。
【0042】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 本発明の実施形態においては、本体部14は、ダイカスト鋳造により固定金型37及び可動金型38を使用し、固定金型37及び可動金型38に冷媒流路を形成するための突出部41及び突出部43を周方向に間隔をあけて複数設けると共に、周方向に位相をずらして設けることにより、一方側冷媒流路23A〜23E及び他方側冷媒流路24A〜24Eを形成し、突出部41及び突出部43が軸方向中心部で突合されて、連通部34と対応する突合せ部が形成されるとして説明した。そして、連通部34(突合せ部)は軸方向に対して傾斜しているとして説明したが、
図8に示すように、連通部50(突合せ部)は階段状に形成しても良い。この場合においても、本発明の実施形態と同様に、周方向に連通する周方向冷媒流路31が形成される。
○ 本発明の実施形態においては、一方側冷媒流路23A〜23E及び他方側冷媒流路24A〜24Eの連通部34、35は、固定金型37及び可動金型38の突出部41及び突出部43の突合せにより形成するとして説明したが、エンドミルなどの切削加工により後加工で貫通孔を形成しても良い。また、周方向冷媒流路31に対応する連通部34は、固定金型37及び可動金型38の突合せにより形成し、副冷媒流路36に対応する連通部35は、後加工により形成しても良い。後加工により形成することにより、型の突合せ部のバリ除去作業が比較的容易となる。
○ パーティングライン29は本体部14の軸方向中央に形成されるのが好ましいが、例えば周方向冷媒流路31に対応する軸方向位置に形成しても、抜き勾配による冷媒流路の流路幅の低減を抑えることが出来る。
○ 本発明の実施形態においては、切り欠き部26から固定子コイル18の引出し線をハウジング外周へ引出す挿通部28を設けたが、切り欠き部26や挿通部28を設けずに他の手段や他の部位で引出し線を引出しても良い。
○ 本発明の実施形態においては、回転電機を電動モータとして説明したが、回転電機を発電機としても良い。
○ 本発明の実施形態においては、冷媒はLLCを使用するとして説明したが、LLC以外のものを使用しても良い。