特許第5979093号(P5979093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979093
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】弁開閉時期制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-156936(P2013-156936)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25440(P2015-25440A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100148183
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊也
(72)【発明者】
【氏名】沼波 晃志
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 崇
(72)【発明者】
【氏名】天野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌樹
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132272(JP,A)
【文献】 特開2011−32905(JP,A)
【文献】 特開2011−132932(JP,A)
【文献】 特開2010−255499(JP,A)
【文献】 特開2010−138699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L1/34−1/356
9/00−9/04
13/00−13/08
F02D13/00−28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸と同期回転する駆動側回転部材と、
前記内燃機関のカム軸と一体回転すると共に前記駆動側回転部材に対して相対回転可能な従動側回転部材と、
前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材とにより形成される流体圧室と、
前記流体圧室内に配置され、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の相対回転位相を相対回転の方向のうち遅角方向に移動させる遅角室と前記相対回転位相を前記相対回転の方向のうち進角方向に移動させる進角室とに前記流体圧室を仕切るベーンと、
前記駆動側回転部材及び前記従動側回転部材のいずれか一方に設けられたロック部材と、周方向に沿って延在し、前記駆動側回転部材及び前記従動側回転部材のいずれか他方に設けられた凹部とを含み、前記ロック部材が突出して前記凹部に嵌入することにより前記相対回転位相を最進角位相と最遅角位相との間の中間ロック位相に拘束するロック状態と、前記ロック部材が前記凹部から引退することにより拘束が解除されたロック解除状態とに切り替え可能な中間ロック機構と、
前記ロック部材が前記中間ロック位相に達するように、前記遅角室及び前記進角室への流体の給排を制御する位相制御部と、
前記位相制御部による前記給排の制御後に、前記ロック部材が前記凹部における前記中間ロック位相とは異なる位置に設定された判定位相に向かって移動するように制御された時、当該判定位相に前記ロック部材が達するか否かを判定し、且つ否と判定したとき、前記相対回転位相が前記ロック状態であると判定する判定部と、
を備えた弁開閉時期制御装置。
【請求項2】
前記凹部及び前記ロック部材が2つずつ設けられ、
前記判定位相は、前記2つの凹部のうちいずれか一方の凹部に設けられ、前記ロック部材の一方が、対応する前記凹部の内部で位相変化が規制される状態にあるとき、前記判定位相は、前記中間ロック位相に対する規制範囲の狭い側の凹部に設定されている請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項3】
前記位相制御部は、前記給排の制御後に前記判定部により前記判定位相に前記ロック部材がないと判定された場合、又は前記判定部による判定の際に、前記遅角室及び前記進角室の夫々に交互に流体を供給する請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸と同期回転する駆動側回転部材に対して、内燃機関のカム軸と一体回転する従動側回転部材の相対回転位相を制御する弁開閉時期制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関(以下「エンジン」とする)の燃費向上を図るべく、吸気弁及び排気弁の一方又は双方の開閉時期を制御する弁開閉時期制御装置が利用されてきた。この種の弁開閉時期制御装置は、クランク軸と同期回転する駆動側回転部材と、カム軸と一体回転する従動側回転部材との相対回転位相を変更して上記開閉時期を制御する。
【0003】
一般に、吸排気弁の最適な開閉時期はエンジンの始動時や車両の走行時等エンジンの運転状況により異なる。エンジンの始動時には、駆動側回転部材の回転に対する従動側回転部材の相対回転位相(以下「相対回転位相」とする)を最遅角位相と最進角位相との間の所定位相に拘束することにより、エンジンの始動に最適な吸排気弁の開閉時期を実現している。しかしながら、エンジン始動後のアイドリング時にあっては、相対回転位相をエンジン始動時の位相に維持すると炭化水素(HC)排出量が増加するので、エンジン始動後のアイドリング時には、相対回転位相をHC排出量が抑制可能な位相に変化させることが望まれる。また、通常運転中にブレーキペダルを踏み込んで停車した際にエンジンを一時的に停止するアイドルストップ時には、高温状態のエンジンを再始動させることが容易になる相対回転位相に変化させることが望ましい。係る技術として下記に出展を示す特許文献1に記載のものがある。
【0004】
特許文献1には、内燃機関のクランク軸に対するカム軸の回転位相をその調整可能範囲の略中間に位置する中間ロック位相でロックする機能を備えた内燃機関の可変バルブタイミング制御装置が開示される。この内燃機関の可変バルブタイミング制御装置は、ロック要求が発生した時にロックピンによりカム軸の回転位相を中間ロック位相でロックさせるように油圧制御装置を制御するロック制御手段を備えて構成される。当該ロック制御手段は、ロック要求が発生した時にロックピンをロック方向に付勢しながらカム軸の回転位相が中間ロック位相を通り越すように油圧制御装置を制御し、この位相可変制御中にカム軸の回転位相が中間ロック位相付近で動かなくなった時に油圧制御装置の制御量をカム軸の回転位相を動かす方向に更に所定量変化させる。この際、カム軸の回転位相が動かない場合にロック完了と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−138699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、ロック要求が発生した時に、カム軸の回転位相が中間ロック位相を通り越すように制御する。また、その制御後に、カム軸の回転位相が中間ロック位相付近で動かなくなった時に油圧制御装置の制御量をカム軸の回転位相を動かす方向に更に所定量変化させ、更にカム軸の回転位相が動かない場合にロック完了と判定する。このため、カム軸の回転位相が中間ロック位相を通り越すことがあり、係る場合、ロック完了までに時間を要してしまう。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、中間ロック位相に達したことを迅速に判定することが可能な弁開閉時期制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る弁開閉時期制御装置の特徴構成は、内燃機関のクランク軸と同期回転する駆動側回転部材と、前記内燃機関のカム軸と一体回転すると共に前記駆動側回転部材に対して相対回転可能な従動側回転部材と、前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材とにより形成される流体圧室と、前記流体圧室内に配置され、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の相対回転位相を相対回転の方向のうち遅角方向に移動させる遅角室と前記相対回転位相を前記相対回転の方向のうち進角方向に移動させる進角室とに前記流体圧室を仕切るベーンと、前記駆動側回転部材及び前記従動側回転部材のいずれか一方に設けられたロック部材と、周方向に沿って延在し、前記駆動側回転部材及び前記従動側回転部材のいずれか他方に設けられた凹部とを含み、前記ロック部材が突出して前記凹部に嵌入することにより前記相対回転位相を最進角位相と最遅角位相との間の中間ロック位相に拘束するロック状態と、前記ロック部材が前記凹部から引退することにより拘束が解除されたロック解除状態とに切り替え可能な中間ロック機構と、前記ロック部材が前記中間ロック位相に達するように、前記遅角室及び前記進角室への流体の給排を制御する位相制御部と、前記位相制御部による前記給排の制御後に、前記ロック部材が前記凹部における前記中間ロック位相とは異なる位置に設定された判定位相に向かって移動するように制御された時、当該判定位相に前記ロック部材が達するか否かを判定し、且つ否と判定したとき、前記相対回転位相が前記ロック状態であると判定する判定部と、を備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、駆動側回転部材に対する従動側回転部材の相対回転位相が中間ロック位相であるか否かを、凹部内に設けられた判定位相にロック部材が達するか否かの判定結果に基づいて容易に判定することが可能となる。つまり、現在のロック部材の位置から見て、ロック部材の現在位置、中間ロック位相、判定位相の順で並んでいる状態において、ロック部材が中間ロック位相に達するように制御された場合、最後の判定動作(相対回転位相を判定位相の側に移動させる動作)で判定位相にロック部材が達しなければロック部材が中間ロック位相にある(駆動側回転部材に対する従動側回転部材の相対回転位相が中間ロック位相である)と判定することができる。また、現在のロック部材の位置から見て、ロック部材の現在位置、判定位相、中間ロック位相の順で並んでいる状態において、ロック部材が中間ロック位相に達するように制御された場合、ロック部材が判定位相を通過し、最後の判定動作で判定位相に再び達しなければロック部材が中間ロック位相にあると判定することができる。このように、本弁開閉時期制御装置によれば、凹部内における中間ロック位相とは異なる位置に判定位相を設けているので、相対回転位相を中間ロック位相に移行する際に、中間ロック位相を到達する目標位置(目標位相)として制御するだけでロック部材が中間ロック位相に達しているか否かを判定することが可能となる。また、判定動作では、ロック部材が判定位相の側に移動するように制御するだけで良いので、例えば制御弁の切り替え等に係る時間を短くすることができる。したがって、中間ロック位相に達したことを迅速に判定することができる。
【0010】
また、前記凹部及び前記ロック部材が2つずつ設けられ、前記判定位相は、前記2つの凹部のうちいずれか一方の凹部に設けられ、前記ロック部材の一方が、対応する前記凹部の内部で位相変化が規制される状態にあるとき、前記判定位相は、前記中間ロック位相に対する規制範囲の狭い側の凹部に設定されていると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、狭い規制範囲内に判定位相を設定することができるので、判定位相と中間ロック位相との間隔を狭くすることができる。したがって、相対回転位相が中間ロック位相であるか否かの判定精度を高めることが可能となる。
【0012】
また、前記位相制御部は、前記給排の制御後に前記判定部により前記判定位相に前記ロック部材がないと判定された場合、又は前記判定部による判定の際に、前記遅角室及び前記進角室の夫々に交互に流体を供給すると好適である。
【0013】
ロック部材が中間ロック位相にある場合には、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対回転が規制される。このような構成において、ロック部材が判定位相に達しなければ、ロック部材が凹部に確実に嵌入されているのでロック部材が中間ロック位相にあることを確認することができる。また、遅角室及び進角室の油圧を増減することにより遅角室及び進角室と共に、これらに接続される通路の油圧も増減するので、通路内の異物を流通させて除去する(クリーニングする)ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】弁開閉時期制御装置の断面図である。
図2図1のII−II線におけるロック状態の断面を示した図である。
図3図1のII−II線におけるロック解除状態の断面を示した図である。
図4図1のII−II線における最遅角位相状態の断面を示した図である。
図5】中間ロック位相及び判定位相を模式的に示した図である。
図6】その他の実施形態に係る中間ロック位相及び判定位相を模式的に示した図である。
図7】その他の実施形態に係る中間ロック位相及び判定位相を模式的に示した図である。
図8】その他の実施形態に係る中間ロック位相及び判定位相を模式的に示した図である。
図9】その他の実施形態に係る中間ロック位相及び判定位相を模式的に示した図である。
図10】その他の実施形態に係る中間ロック位相及び判定位相を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る弁開閉時期制御装置は、駆動側回転部材に対する従動側回転部材の相対回転位相を中間ロック位相にする際に、ロック部材が中間ロック位相にあるか否かを容易に判定可能に構成される。以下、本実施形態の弁開閉時期制御装置1について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置1の全体構成を示す側方断面図である。図2図4は、図1のII−II線における各種状態の断面を示した図である。弁開閉時期制御装置1は、内燃機関Eとしてのエンジンを駆動源として備える車両や、エンジン及び電動モータを含む駆動源を備えるハイブリッド車両に搭載される。
【0016】
弁開閉時期制御装置1は、駆動側回転部材としての外部ロータ12と、従動側回転部材としての内部ロータ2とを備えて構成される。外部ロータ12は、内燃機関Eのクランク軸110に対して同期回転する。内部ロータ2は、内燃機関Eのカム軸101に対して一体回転すると共に外部ロータ12に対して相対回転可能に同軸に配置される。本実施形態では、弁開閉時期制御装置1は、外部ロータ12と内部ロータ2との軸芯Xを中心にした相対回転位相(相対回転角)の設定により、吸気弁115の開閉タイミングを制御する。
【0017】
内部ロータ2は、カム軸101の先端部に一体的に組付けられている。具体的には、内部ロータ2は、締結ボルト20によってカム軸101の先端部に締結固定されている。
【0018】
弁開閉時期制御装置1は、カム軸101が接続される側とは反対側に設けられたフロントプレート11と、外部ロータ12と、タイミングスプロケット15が一体的に形成され、カム軸101が接続される側に設けられたリアプレート13と、を備えて構成される。外部ロータ12は内部ロータ2に外装され、フロントプレート11とリアプレート13とで軸方向両側から挟みこまれる。この状態でフロントプレート11と外部ロータ12とリアプレート13とは、上述の締結ボルト20によって締結固定される。
【0019】
クランク軸110が回転駆動すると、動力伝達部材102を介してタイミングスプロケット15に回転駆動力が伝達され、外部ロータ12が図2に示される回転方向Sに回転駆動する。外部ロータ12の回転駆動に伴い、内部ロータ2が回転方向Sに回転駆動してカム軸101が回転し、カム軸101に設けられたカム116が内燃機関Eの吸気弁115を押し下げて開弁させる。
【0020】
図2に示されるように、外部ロータ12には、径方向内側に突出する複数個の突出部14が回転方向Sに沿って互いに離間させて形成され、外部ロータ12と内部ロータ2とにより流体圧室4が形成される。突出部14は内部ロータ2の外周面2aに対するシューとして機能する。本実施形態においては、流体圧室4が4つ形成されている例を挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。
【0021】
外周面2aのうち流体圧室4に面する部分には、内部ロータ2の径方向を深さ方向とするベーン溝21が形成されている。ベーン溝21には、ベーン22の一部が挿入され、径方向外側に立設配置される。したがって、ベーン22は流体圧室4内に配置される。
【0022】
また、流体圧室4は、ベーン22によって回転方向Sに沿って進角室41と遅角室42とに仕切られている。遅角室42にオイルが供給されると、外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が相対回転方向のうち遅角方向に移動(変位)される。遅角方向とは、遅角室42の容積が大きくなる方向であり、図2において符号S2で示される方向である。進角室41にオイルが供給されると、相対回転位相を相対回転方向のうち進角方向に移動(変位)される。進角方向とは、ベーン22が外部ロータ12に対して相対回転移動し、進角室41の容積が大きくなる方向であり、図2において符号S1で示される方向である。ベーン溝21とベーン22との間にはスプリング23が配設され、ベーン22は径方向外側に付勢される。これにより、進角室41と遅角室42との間でのオイルの漏洩を防止している。
【0023】
図1及び図2に示されるように、各進角室41に連通するよう、進角通路43が内部ロータ2及びカム軸101に形成される。また、各遅角室42に連通するよう、遅角通路44が内部ロータ2及びカム軸101に形成される。進角通路43及び遅角通路44は第1制御弁174の所定のポートに接続される。
【0024】
第1制御弁174を制御することによって、進角室41及び遅角室42に対してオイルを供給、排出、又は給排を保持し、ベーン22に当該オイルの流体圧力を作用させる。このようにして、相対回転位相を進角方向S1又は遅角方向S2へ変位させ、或いは、任意の位相に保持する。
【0025】
また、図1に示されるように、内部ロータ2とフロントプレート11とに亘ってトーションスプリング3が設けられる。トーションスプリング3は、カム軸101のトルク変動に基づく遅角方向S2への平均変位力に抗するよう、内部ロータ2を進角側に付勢する。これにより、相対回転位相を円滑かつ迅速に進角方向S1へ変位させることが可能となる。
【0026】
このような構成により、内部ロータ2は外部ロータ12に対して軸芯Xの回りに一定の範囲内で円滑に相対回転移動可能である。外部ロータ12と内部ロータ2とが相対回転移動可能な一定の範囲、即ち最進角位相と最遅角位相との位相差は、流体圧室4の内部でベーン22が変位可能な範囲に対応する。遅角室42の容積が最大となるのが最遅角位相であり、進角室41の容積が最大となるのが最進角位相である。
【0027】
中間ロック機構6は、内燃機関Eの始動直後等のオイルの流体圧力が安定しない状況において、外部ロータ12と内部ロータ2とを所定の相対位置に保持することで、外部ロータ12と内部ロータ2との相対回転位相を最遅角位相と最進角位相との間の中間ロック位相に拘束する。このように相対回転位相を中間ロック位相に保持することにより、クランク軸110の回転位相に対するカム軸101の回転位相を適正に維持し、内燃機関Eの安定的な回転を実現する。なお、本実施形態では、中間ロック位相を、吸気弁115と排気弁との開弁時期が一部重複(オーバーラップ)する位相、もしくは排気弁の閉弁するタイミングと吸気弁115の開弁するタイミングとがほぼ同等(ゼロラップ)となる位相としている。この結果、吸気弁115と排気弁との開弁時期が一部重複する位相であれば、内燃機関Eの始動時の炭化水素(HC)の低減が図られ、低エミッションの内燃機関Eとすることができる。また、排気弁の閉弁するタイミングと吸気弁115の開弁するタイミングとがほぼ同等となる位相であれば、冷間域での始動性及びアイドリング安定性の良い内燃機関Eとすることができる。
【0028】
本実施形態では、中間ロック機構6は、図1及び図2に示されるように、中間ロック通路61と、2つの中間ロック溝62と、収容部63と、プレート状の2つの中間ロック部材64と、スプリング65と、を備えて構成される。中間ロック溝62は本発明の凹部に相当し、中間ロック部材64は本発明のロック部材に相当する。
【0029】
中間ロック通路61は、内部ロータ2とカム軸101とに形成され、中間ロック溝62と第2制御弁175とを接続する。第2制御弁175を制御することによって、中間ロック溝62へのオイルの給排を単独で切換えることができる。中間ロック溝62は、内部ロータ2の外周面2aに周方向に延在して形成されており、相対回転方向に一定の幅を有している。収容部63は、外部ロータ12の二箇所に形成されている。二つの中間ロック部材64は各収容部63に夫々配設され、収容部63から径方向に出退可能である。このため、本実施形態では中間ロック部材64は外部ロータ12に形成される。スプリング65は収容部63に配設され、各中間ロック部材64を径方向内側、即ち、中間ロック溝62の側に付勢する。
【0030】
中間ロック溝62からオイルが排出されていると、2つの中間ロック部材64の夫々が突出して中間ロック溝62の夫々に嵌入することにより、中間ロック溝62の所定の位置に各中間ロック部材64が夫々同時に係止することとなる。この結果、図2に示されるように、外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が上述した中間ロック位相に拘束される。第2制御弁175を制御して、中間ロック溝62にオイルを供給すると、図3に示されるように、両方の中間ロック部材64が中間ロック溝62から収容部63へ引退して相対回転位相の拘束が解除され、内部ロータ2は相対回転移動自在となる。以下、中間ロック機構6が相対回転位相を中間位相に拘束している状態を「ロック状態」と称する。また、ロック状態が解除された状態を「ロック解除状態」と称する。中間ロック機構6は、このような「ロック状態」と「ロック解除状態」とを切り替え可能に構成される。
【0031】
なお、中間ロック部材64の形状としては、本実施形態に示されたプレート状の他にピン状等を適宜採用することができる。
【0032】
本実施形態では、2つの中間ロック溝62が、内部ロータ2における遅角方向S2に沿って溝深さが段階的に深くなるようにラチェット構造で形成されている。これにより、中間ロック部材64が段階的に規制され、中間ロック部材64が中間ロック溝62に突入し易くなる。なお、中間ロック通路61は内部ロータ2の途中で二手に分岐され、各中間ロック溝62に接続されている。
【0033】
本弁開閉時期制御装置1は、上述した中間ロック機構6に加え、最遅角ロック機構7も備えている。最遅角ロック機構7は、アイドリング運転時等の低速回転時において、外部ロータ12と内部ロータ2とを所定の相対位置に保持することで、相対回転位相を最遅角位相に拘束する。即ち、カム軸101のトルク変動に基づく遅角方向S2及び進角方向S1の変位力に拘らず、内部ロータ2が相対回転移動しないため、安定したアイドリング運転状態を実現できる。なお、本実施形態において、最遅角位相は、排気弁の閉弁タイミングよりも遅い時期にて開弁する位相であり、内燃機関Eの温間域にてプレイグニッションを回避しつつ内燃機関Eの始動性を確保できる位相である。
【0034】
最遅角ロック機構7は、図2に示されるように、最遅角ロック通路71と、最遅角ロック溝72と、収容部73と、プレート状の最遅角ロック部材74と、スプリング75と、を備えている。本実施形態では、最遅角ロック通路71は、複数の進角通路43のうちの一つと併用して構成される。最遅角ロック部材74は、2つの中間ロック部材64のうち進角方向S1の側の中間ロック部材64と同一の部材である。同様に、収容部73は、二つの収容部63のうち進角方向S1の側の収容部63と同一であり、スプリング75は、その収容部63に配設されるスプリング65と同一である。
【0035】
このような構成において、最遅角ロック溝72からオイルが排出されていると、最遅角ロック部材74は最遅角ロック溝72に突出する。図4に示されるように、最遅角ロック溝72に最遅角ロック部材74が係止されると、内部ロータ2の外部ロータ12に対する相対回転移動が拘束され、相対回転位相が最遅角位相に保持される。第1制御弁174を制御して相対回転位相を進角側へ変位させようとすると、最遅角ロック溝72にオイルが供給され、最遅角ロック部材74が最遅角ロック溝72から収容部73へ引退する。即ち、相対回転位相の拘束は解除される。
【0036】
相対回転位相が最遅角位相以外の位相であるときは、最遅角ロック部材74は最遅角ロック溝72と位置ずれしているため、内部ロータ2の外周面2aに摺接するだけである。なお、最遅角ロック部材74の形状としては、本実施形態に示されたプレート状の他にピン状等を適宜採用することができる。
【0037】
このような構成において、図2に示されるような中間ロック状態において、第2制御弁175への給電を停止すれば、図3に示されるように、ロック解除状態となる。その後、第2制御弁175への給電が停止され続ける限りは、中間ロック溝62にオイルが供給され続けるため、中間ロック部材64が中間ロック溝62に突入することはない。
【0038】
図4に示されるように、相対回転位相が最遅角位相に変位し、最遅角ロック部材74が最遅角ロック溝72に対向すると、最遅角ロック部材74(64)が最遅角ロック溝72に突入し、最遅角ロック状態となる。
【0039】
このように、本実施形態の構成であると、構成を簡易化することができると共に、部品点数を減らすことができ、製作コストの低減が可能となる。また、中間ロック部材64と最遅角ロック部材74とを共用するため、周方向において外部ロータ12にスペースの余裕ができ、図2に示されるように、流体圧室4を四箇所備えることができる。この結果、相対回転位相を変位させる力が大きくなり、迅速な位相変位が実現できる。また、流体圧室4の周方向の幅を広くして、相対回転位相の変位可能範囲を広くすることも可能である。
【0040】
次に、本実施形態に係る油圧回路の構成について説明する。油圧回路には、図1に示されるように、内燃機関Eにより駆動されてオイルの供給を行うポンプ171と、流体圧室4へのオイルの供給を制御する第1制御弁174と、中間ロック機構6へのオイルの供給を制御する第2制御弁175とが設けられる。
【0041】
位相制御部180は、上述の相対回転位相を制御するべく、第1制御弁174及び第2制御弁175の動作制御を行う。位相制御部180は、例えば中間ロック部材64が中間ロック位相に達するように、遅角室42及び進角室41への流体の給排を制御する。この位相制御部180は、演算処理装置を利用したものであり、単一の制御機器で構成されることもあれば、複数の制御機器で構成されることもある。
【0042】
本実施形態において、ポンプ171は、内燃機関Eのクランク軸110から伝達される回転力により駆動される機械式の油圧ポンプからなる。ポンプ171は、オイルパン176に貯留されたオイルを吸入ポートから吸入し、当該オイルを吐出ポートから下流側に吐出する。ポンプ171の吐出ポートは、第1制御弁174及び第2制御弁175の所定のポートに連通している。
【0043】
第1制御弁174は、例えば、位相制御部180からのソレノイドへの通電によってスリーブ内に摺動可能に配置されたスプールをスプリングに抗して変位させる可変式電磁スプールバルブを用いることができる。この第1制御弁174は、進角通路43に連通する進角ポートと、遅角通路44に連通する遅角ポートと、ポンプ171の下流側の流路に連通する供給ポートと、オイルパン176に連通するドレインポートとを有している。
【0044】
第1制御弁174は、進角ポートを供給ポートと連通し、遅角ポートをドレインポートと連通する進角制御、遅角ポートを供給ポートと連通し、進角ポートをドレインポートと連通する遅角制御、及び進角ポート及び遅角ポートを閉塞するホールド制御の3つの状態制御を行うことが可能な3位置制御弁から構成される。進角制御を行うことにより、ベーン22は外部ロータ12に対して進角方向S1に相対回転移動し、相対回転位相は進角側へ変位する。遅角制御を行うと、ベーン22は外部ロータ12に対して遅角方向S2に相対回転移動し、相対回転位相は遅角側へ変位する。ホールド制御を行うと、ベーン22は相対回転移動せず、相対回転位相を任意の位相に保持できる。
【0045】
進角制御が行われると、進角通路43と最遅角ロック通路71とにオイルが供給される。最遅角ロック状態のときは、最遅角ロック通路71は最遅角ロック部材74によって閉塞されている。進角制御によって最遅角ロック部材74が最遅角ロック溝72から引退して最遅角ロック解除状態となると、進角通路43を介して進角室41にオイルが供給され、内部ロータ2は進角側へ相対回転移動する。
【0046】
また、第1制御弁174は、位相制御部180により制御されて動作し、進角室41及び最遅角ロック通路71、又は遅角室42に対するオイルの供給又は排出の制御を行う。これにより、第1制御弁174は、中間ロック機構6のロック状態又は解除状態の切替制御、及び外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相の制御を行う。本実施形態では第1制御弁174に通電すると遅角制御が可能な状態となり、第1制御弁174への給電を停止すると進角制御が可能な状態となるように設定されている。また、第1制御弁174は、電磁ソレノイドに供給する電力のデューティ比の調節により開度を設定するものである。これにより、オイルの給排量の微調節が可能である。
【0047】
第2制御弁175は、第1制御弁174と同様に可変式電磁スプールバルブを用いて構成される。第2制御弁175は、中間ロック通路61に連通する規制ポートと、ポンプ171の下流側の流路に連通する供給ポートと、オイルパン176に連通するドレインポートとを有している。また、第2制御弁175は、規制ポートを供給ポートと連通する解除制御、及び規制ポートをドレインポートと連通する規制制御の2つの状態制御を行うことが可能な2位置制御弁として構成される。第2制御弁175は、位相制御部180により制御されて動作し、中間ロック機構6の中間ロック溝62へのオイルの供給又は排出の制御を行う。このようにして、第2制御弁175は、中間ロック機構6の規制状態又は解除状態の切替制御を行う。
【0048】
第2制御弁175により、中間ロック溝62へのオイルの供給と、中間ロック溝62からのオイルの排出とが切換え可能である。なお、本実施形態においては、第2制御弁175は、給電されると中間ロック溝62からのオイルが排出可能な状態となり、給電が停止されると中間ロック溝62へのオイルが供給可能な状態となるように構成されている。
【0049】
ここで、内燃機関Eのクランク軸110の近傍には、当該クランク軸110の回転角を検出するクランク角センサが備えられる。また、カム軸101の近傍には、当該カム軸101の回転角を検出するカム軸角センサが備えられる。位相制御部180は、クランク角センサとカム軸角センサとの検出結果から相対回転位相を検出し、相対回転位相がいずれの位相にあるかを判定する。また、位相制御部180には、イグニッションキーのON/OFF情報等が伝達される。また、位相制御部180のメモリ内には、内燃機関Eの運転状態に応じた最適の相対回転位相の制御情報が記憶されている。位相制御部180は、内燃機関Eの運転状態に応じて相対回転位相を制御する。
【0050】
判定部181は、位相制御部180による給排の制御後に、中間ロック部材64が中間ロック溝62における中間ロック位相とは異なる位置に設定された判定位相に向かって移動するように制御された時、当該判定位相に中間ロック部材64が達するか否かを判定し、且つ否と判定したとき、相対回転位相がロック状態であると判定する。位相制御部180による吸排の制御とは、中間ロック部材64が中間ロック位相となるように進角室41及び遅角室42の作動油の吸排を行う制御である。
【0051】
ここで、図5には本実施形態に係る中間ロック位相及び判定位相が模式的に示される。図5においては、中間ロック部材64は夫々中間ロック溝62に嵌入しているロック状態が示される。このような状態における中間ロック部材64が存在する位置Aが中間ロック位相の位置にあたる。このような位置Aに対して異なる位置に判定位相の位置が設定される。このような判定位相の位置は符号Bを付して示される。
【0052】
本実施形態では、判定位相の位置は、2つの中間ロック溝62のうちいずれか一方の中間ロック溝62に設けられる。具体的には、中間ロック部材64の一方が、対応する中間ロック溝62の内部で位相変化が規制される状態にあるとき、判定位相は中間ロック位相に対する規制範囲の狭い側の中間ロック溝62に設定される。ここで、相対回転位相が中間ロック位相になる場合には、中間ロック溝62の夫々に嵌入する中間ロック部材64が予め設定されている。したがって、対応する中間ロック溝62とは、相対回転位相が中間ロック位相とされる場合に、所定の中間ロック部材64が嵌入される中間ロック溝62が相当する。中間ロック部材64の一方が、対応する中間ロック溝62の内部で位相変化が規制される状態にあるときとは、中間ロック部材64が中間ロック溝62内のいずれかの位置にある状態をいう。中間ロック位相に対する規制範囲とは、中間ロック部材64が中間ロック溝62内に嵌っている状態において、移動可能な範囲をいう。図5において、遅角方向S2側の中間ロック溝62では符号L1を付した範囲が相当し、進角方向S1側の中間ロック溝62では符号L2を付した範囲が相当する。したがって、本実施形態では規制範囲の狭い側の中間ロック溝62とは、進角方向S1側の中間ロック溝62が相当する。
【0053】
本実施形態では、判定位相はこのような進角方向S1側の中間ロック溝62における深さが浅い側のうち、中間ロック位相の位置Aから離間した端部の側に設定される。より具体的には、判定位相はこのような端部に中間ロック部材64が位置した場合における中間ロック部材64の周方向の中央の位置に設定される。図5においては、理解を容易にするために、このような端部に位置する中間ロック部材64が二点鎖線で示される。
【0054】
2つの中間ロック部材64が夫々、中間ロック溝62内に位置していない状態から内部ロータ2が進角方向S1に回転して中間ロック位相に移行する際において、位相制御部180による中間ロック部材64が中間ロック位相となるように進角室41及び遅角室42の作動油の吸排を行う制御が終了すると、判定部181は位相制御部180に対して、再度、中間ロック部材64が進角方向S1の方向に回転するように作動油の吸排を行うよう制御させる(以下「判定制御」とする)。この判定制御が、上述の「中間ロック部材64が中間ロック溝62における中間ロック位相とは異なる位置に設定された判定位相の側に移動するように制御した」ことに相当する。この判定制御後、判定部181により中間ロック部材64が判定位相の位置Bに達したと判定された場合には、その結果が位相制御部180に伝達される。係る場合、位相制御部180は外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が中間ロック位相でないと認識(中間ロック部材64が中間ロック位相を通り越したと認識)し、位相制御部180は第1制御弁174を制御して内部ロータ2を遅角方向S2に回転して中間ロック位相に移行させる。
【0055】
一方、判定制御後、判定部181により中間ロック部材64が判定位相の位置Bに達していないと判定された場合には、その結果が位相制御部180に伝達される。係る場合、位相制御部180は外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が中間ロック位相であると認識し、位相制御部180は第1制御弁174の制御を停止する。
【0056】
また、2つの中間ロック部材64が夫々、中間ロック溝62内に位置していない状態から内部ロータ2が遅角方向S2に回転して中間ロック位相に移行する際において、位相制御部180による中間ロック部材64が中間ロック位相となるように進角室41及び遅角室42の作動油の吸排を行う制御が終了すると、判定部181は位相制御部180に対して、再度、中間ロック部材64が進角方向S1の方向に回転するように作動油の吸排を行うよう制御させる(判定制御させる)。この判定制御後、判定部181により中間ロック部材64が判定位相の位置Bに達したと判定された場合には、その結果が位相制御部180に伝達される。係る場合、位相制御部180は外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が中間ロック位相でないと認識し、位相制御部180は第1制御弁174を制御して内部ロータ2を遅角方向S2に回転して中間ロック位相に移行させる。
【0057】
一方、判定制御後、判定部181により中間ロック部材64が判定位相の位置Bに達していないと判定された場合には、その結果が位相制御部180に伝達される。係る場合、位相制御部180は外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が中間ロック位相であると認識し、位相制御部180は第1制御弁174の制御を停止する。
【0058】
即ち、上記一連の形態は以下のように言い換えることができる。現在の中間ロック部材64の位置から見て、中間ロック部材64の現在位置、中間ロック位相、判定位相の順で並んでいる状態において、中間ロック部材64が中間ロック位相に達するように制御された場合、最後の判定動作で判定位相に中間ロック部材64が達しなければ中間ロック部材64が中間ロック位相にある(外部ロータ12に対する内部ロータ2の相対回転位相が中間ロック位相である)と判定することができる。また、現在の中間ロック部材64の位置から見て、中間ロック部材64の現在位置、判定位相、中間ロック位相の順で並んでいる状態において、中間ロック部材64が中間ロック位相に達するように制御された場合、中間ロック部材64が判定位相を通過し、最後の判定動作で判定位相に再び達しなければ中間ロック部材64が中間ロック位相にあると判定することができる。
【0059】
本実施形態では、位相制御部180は、第1制御弁174による吸排の制御後に判定部181により判定位相に中間ロック部材64がないと判定された場合、遅角室42及び進角室41の夫々に交互に流体を供給する。第1制御弁174による吸排の制御後に判定部181により判定位相に中間ロック部材64がないと判定された場合とは、中間ロック部材64が中間ロック位相に位置している場合に相当する。係る場合、内部ロータ2と外部ロータ12とが相対回転が規制されているので、位相制御部180が遅角室42及び進角室41の夫々に交互に流体を供給することにより、相対回転が規制された状態でベーン22が進角方向S1及び遅角方向S2に揺さぶられることになる。このように中間ロック部材64が判定位相に達しなければ、中間ロック部材64が中間ロック溝62に確実に嵌入されていると判定することができる。したがって、本構成により、中間ロック部材64の嵌入状態を確認することができる。また、遅角室42及び進角室41の油圧を増減することにより、遅角室42及び進角室41と共に、これらに接続される通路の油圧も増減するので、通路内の異物を流通させて除去する(クリーニングする)ことが可能となる。
【0060】
このように、本弁開閉時期制御装置1によれば、中間ロック溝62内における中間ロック位相とは異なる位置に判定位相を設けているので、相対回転位相を中間ロック位相に移行する際に、中間ロック位相を到達する目標位置(目標位相)として制御するだけで中間ロック部材64が中間ロック位相に達しているか否かを判定することが可能となる。また、判定動作では、中間ロック部材64が判定位相の側に移動するように制御するだけで良いので、第1制御弁174の切り替え等に係る時間を短くすることができる。したがって、中間ロック位相に達したことを迅速に判定することができる。
【0061】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、図5において進角方向S1側にある中間ロック溝62の位置Bに判定位相が設定されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば図6に示されるように、進角方向S1の側の中間ロック溝62の周方向の距離よりも、遅角方向S2の側の中間ロック溝62の周方向の距離の方が短い場合には(L1<L2)、遅角方向S2の側の中間ロック溝62内の進角方向S1の側の所定の位置Bに判定位相を設定することも当然に可能である。
【0062】
上記実施形態では、2つの中間ロック溝62が、内部ロータ2における遅角方向S2に沿って溝深さが段階的に深くなるようにラチェット構造で形成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示されるように、溝深さが一様な中間ロック溝62で構成することも当然に可能である。係る場合、中間ロック位相の位置Aは、進角方向S1の側の中間ロック溝62では進角方向S1の側の所定の位置に設けられ、遅角方向S2の側の中間ロック溝62では遅角方向S2の側の所定の位置に設けられる。また、例えば図7に示されるように、遅角方向S2の側の中間ロック溝62の周方向の距離よりも、進角方向S1の側の中間ロック溝62の周方向の距離の方が短い場合には(L1>L2)、進角方向S1の側の中間ロック溝62内の遅角方向S2の側の所定の位置Bに判定位相を設定すると好適である。
【0063】
また、例えば図8に示されるように、進角方向S1の側の中間ロック溝62の周方向の距離よりも、遅角方向S2の側の中間ロック溝62の周方向の距離の方が短い場合には(L1<L2)、遅角方向S2の側の中間ロック溝62内の進角方向S1の側の所定の位置Bに判定位相を設定すると好適である。
【0064】
また、上記実施形態では、中間ロック溝62及び中間ロック部材64が2つずつ設けられているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示されるように、中間ロック溝62及び中間ロック部材64が1つずつ設けられ、中間ロック溝62が、内部ロータ2における遅角方向S2に沿って溝深さが段階的に深くなるようにラチェット構造で形成されていても良い。係る場合、溝深さが深い側の周方向の長さは、中間ロック部材64が当該深い側の溝に嵌入した際に、外部ロータ12と内部ロータ2とが相対回転しない程度に設定すると好適である。
【0065】
また、例えば図10に示されるように、溝深さが一様な中間ロック溝62で構成することも可能である。係る場合、中間ロック溝62の周方向の長さは、中間ロック部材64が当該中間ロック溝62に嵌入した場合であっても、外部ロータ12と内部ロータ2との相対回転を許容できる程度に設定すると好適である。
【0066】
図7図10の場合であっても、現在の中間ロック部材64の位置から見て、中間ロック部材64の現在位置、中間ロック位相、判定位相の順で並んでいる状態において、中間ロック部材64が中間ロック位相に達するように制御された場合、最後の判定動作で判定位相に中間ロック部材64が達しなければ中間ロック部材64が中間ロック位相にあると判定することができる。また、現在の中間ロック部材64の位置から見て、中間ロック部材64の現在位置、判定位相、中間ロック位相の順で並んでいる状態において、中間ロック部材64が中間ロック位相に達するように制御された場合、中間ロック部材64が判定位相を通過し、最後の判定動作で判定位相に再び達しなければ中間ロック部材64が中間ロック位相にあると判定することができる。なお、図9及び図10の例にあっては、中間ロック部材64は、最遅角ロック部材74と併用する構成であっても良いし、別体で設ける構成であっても良い。
【0067】
上記実施形態では、中間ロック部材64が外部ロータ12に設けられ、中間ロック溝62が内部ロータ2に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。中間ロック部材64が内部ロータ2に設けられ、中間ロック溝62が外部ロータ12に設けられるように構成することも当然に可能である。
【0068】
上記実施形態では、判定位相は、2つの中間ロック溝62のうちいずれか一方の中間ロック溝62に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。判定位相を、2つの中間ロック溝62の双方に設けるように構成することも可能である。
【0069】
上記実施形態では、判定位相は、中間ロック部材64が中間ロック溝62の内部で位相変化が規制される状態にあるとき、中間ロック位相に対する規制範囲の狭い側の中間ロック溝62に設定されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。判定位相は、中間ロック部材64が中間ロック溝62の内部で位相変化が規制される状態にあるとき、中間ロック位相に対する規制範囲の広い側の中間ロック溝62に設定することも可能である。
【0070】
上記実施形態では、位相制御部180は、第1制御弁174による吸排の制御後に判定部181により判定位相に中間ロック部材64がないと判定された場合、遅角室42及び進角室41の夫々に交互に流体を供給するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1制御弁174による吸排の制御後に判定部181により判定位相に中間ロック部材64がないと判定された場合、位相制御部180が遅角室42及び進角室41の夫々に交互に流体を供給しないように構成することも当然に可能である。また、位相制御部180が、判定部181による判定の際に、遅角室42及び進角室41の夫々に交互に流体を供給する構成とすることも当然に可能である。
【0071】
上記実施形態では、2つの中間ロック溝62が、内部ロータ2における遅角方向S2に沿って溝深さが段階的に深くなるようにラチェット構造で形成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。2つの中間ロック溝62のうちの一方の中間ロック溝62のみを溝深さが段階的に深くなるようにラチェット構造で形成することも当然に可能である。係る場合、判定位相を溝深さが段階的に深くなるように中間ロック溝62に設けることも可能であるし、溝深さが段階的に深くならない中間ロック溝62に設けることも当然に可能である。
【0072】
上記実施形態では、弁開閉時期制御装置1は、吸気弁115の開閉タイミングを制御する例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。弁開閉時期制御装置1が、排気弁の開閉タイミングを制御する構成とすることも当然に可能である。
【0073】
本発明は、内燃機関のクランク軸と同期回転する駆動側回転部材に対して、内燃機関のカム軸と一体回転する従動側回転部材の相対回転位相を制御する弁開閉時期制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:弁開閉時期制御装置
2:内部ロータ(従動側回転部材)
4:流体圧室
6:中間ロック機構
12:外部ロータ(駆動側回転部材)
22:ベーン
41:進角室
42:遅角室
62:中間ロック溝(凹部)
64:中間ロック部材(ロック部材)
101:カム軸
110:クランク軸
180:位相制御部
181:判定部
E:内燃機関
S1:進角方向
S2:遅角方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10