(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧縮機を含む熱源側ユニット(20)と冷媒連絡管(71,72)を介して結ばれる利用側ユニット(40,50,60)であって、前記放熱器あるいは前記蒸発器として機能する利用側熱交換器(42,52,62)および前記膨張機構として機能する利用側膨張弁(41,51,61)を含む利用側ユニットが、複数存在する、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷媒回路における膨張機構の絞り量を、蒸発器出口の冷媒の過熱度や放熱器出口の冷媒の過冷却度が目標値になるように決定する、という制御を行う場合、冷凍サイクル内の冷媒の圧力が一時的に変動するときに、その変動に伴って膨張機構の絞り量が不必要に変動してしまうことがある。例えば、圧縮機やファンの回転数が変化したり、複数の利用側ユニットのうち幾つかのユニットがオン/オフしたりした場合に、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことがある。
【0005】
本発明の課題は、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動した場合にも膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことが抑制される冷凍装置、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る冷凍装置は、冷媒回路と、制御部とを備えている。冷媒回路では、圧縮機、放熱器、膨張機構、蒸発器が順に結ばれている。膨張機構の絞り量を制御する制御部は、過熱度と蒸発温度とから求められる第1パラメーターに基づいて膨張機構の絞り量を決定する。過熱度は、蒸発器の出口の冷媒温度と、蒸発器における冷媒の蒸発温度との差である。
【0007】
ここでは、従来のように過熱度が目標値に近づくように膨張機構の絞り量を決めるのではなく、過熱度と蒸発温度とから求められる第1パラメーターに基づいて膨張機構の絞り量を決定している。このように、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動したときに大きく変動してしまう過熱度をパラメーターとして採用することを止め、本発明を採用して、過熱度よりも冷媒圧力変動時の変動が小さくなる第1パラメーターを選ぶことで、冷凍装置の挙動が安定するようになる。
【0008】
また、本発明の第1観点に係る冷凍装置では、第1パラメーターは、過熱度を、熱交換流体温度と蒸発温度との差で除した値である。ここで、熱交換流体温度は、蒸発器に供給され蒸発器を流れる冷媒と熱交換する流体の温度である。例えば、蒸発器が内部の冷媒と室内空気との間で熱交換を行わせる室内熱交換器である場合には、熱交換流体温度は、室内熱交換器を通る室内空気の温度である。
【0009】
冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動すると、蒸発器の出口冷媒温度の変化に較べて蒸発温度の変化が大きくなる傾向があることを、本願の発明者は見いだしている。そして、それに伴って、蒸発器の出口冷媒温度と蒸発温度との差である過熱度も大きく変化することになるが、その過熱度を従来のように膨張機構の絞り量を決定するためのパラメーターとして採用する場合には、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことになる。
【0010】
これに対し、本発明の第2観点に係る冷凍装置では、熱交換流体温度と蒸発温度との差を分母に、過熱度を分子にした第1パラメーターを採用している。この第1パラメーターは、冷媒回路内の冷媒の圧力が変わっても殆ど変化がない熱交換流体温度を用いたパラメーターであるため、過熱度ほどは一時的な冷媒の圧力変動の影響を受けないパラメーターとなる。したがって、この第1パラメーターに基づいて膨張機構の絞り量を決定する場合には、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことが抑制される。
【0011】
また、本発明の第1観点に係る冷凍装置では、制御部は、第1パラメーターに基づいて膨張機構の絞り量を決定しつつ、過熱度が許容最小値を下回るときには、過熱度が許容最小値を超えるように、以下の式を満たすように膨張機構の絞り量を決定する。
式:前記許容最小値(SHmin)/前記流体の温度(Tr)と前記蒸発温度(Te)との差(ΔT)<前記第1パラメーター(RSH)
【0012】
本発明の第1観点に係る冷凍装置では、熱交換流体温度と蒸発温度との差を分母に、過熱度を分子にした第1パラメーターを採用し、その第1パラメーターを基に膨張機構の絞り量を決定しているため、蒸発温度の変動に対して膨張機構の絞り量の追随(応答)が遅れる傾向が出る。この傾向は、冷凍装置の挙動を安定させる役割を果たす一方、例えば、蒸発器で冷媒が蒸発しきれず、液冷媒を含む冷媒が圧縮機に吸入されるといった、冷媒回路の構成によっては好ましくない状況を生むこともある。これに鑑み、
本発明の第1観点に係る冷凍装置では、第1パラメーターに基づいて膨張機構を制御しつつ、過熱度が許容最小値を下回るときには、過熱度が許容最小値を超えるように制御を行っている。これにより、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動したときの膨張機構の絞り量の過剰な変動を抑制することと、過熱度が許容最小値を下回ることの回避とが、
第1観点に係る冷凍装置では両立する。
【0013】
本発明の第2観点に係る冷凍装置は、第1観点に係る冷凍装置において、第1パラメーターは、予め決められた複数の値から、過熱度および蒸発温度に応じて選択される値である。例えば、制御部は、過熱度と蒸発温度の各値が決まれば第1パラメーターが特定できるマップを具備しており、そのマップを使って求めた第1パラメーターを膨張機構の絞り量の決定に利用する。
【0014】
ここでは、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動したときにおいて過熱度よりも変化率が小さくなる第1パラメーターが選択されるように、過熱度および蒸発温度に応じた複数の値を予め決めておくことで、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことを抑制している。
【0015】
本発明の第3観点に係る冷凍装置は、
第1観点又は第2観点に係る冷凍装置において、複数の利用側ユニットが存在する。各利用側ユニットは、圧縮機を含む熱源側ユニットと、冷媒連絡管を介して結ばれる。利用側ユニットは、放熱器あるいは蒸発器として機能する利用側熱交換器と、膨張機構として機能する利用側膨張弁とを含む。
【0016】
複数の利用側ユニットが存在する冷凍装置では、例えば、一部の利用側ユニットの運転が停止状態あるいは停止に近い状態になると、冷媒回路内のガス冷媒の低圧値が一時的に低下することがある。このように、複数の利用側ユニットが存在する冷凍装置は、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動する傾向にあるが、本発明を採用すれば、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことが抑制され、冷凍装置の挙動が安定する。
【0017】
本発明の第4観点に係る冷凍装置は、
第1観点から第3観点のいずれかに係る冷凍装置において、制御部は、第1パラメーターが目標値に近づくように、膨張機構の絞り量を決定する。
【0018】
ここでは、第1パラメーターが目標値近傍で概ね一定となるように膨張機構の制御を行うため、熱交換効率が高くなるように蒸発器を機能させることが容易となる。
【0019】
本発明の第5観点に係る冷凍装置は、
第4観点に係る冷凍装置において、蒸発器は、室内空間に配置されて室内空気と熱交換を行うものである。そして、制御部は、室内空間の室内空気の設定温度を受け付け、設定温度と室内空気の温度との乖離度合いに基づいて、第1パラメーターの目標値を変える。
【0020】
この
第5観点に係る冷凍装置は、室内空間が設定温度になるように蒸発器を機能させる空気調和装置となっている。そして、制御部は、設定温度と室内空気の温度との乖離度合いに基づき、第1パラメーターの目標値を変えている。このように、この冷凍装置では、設定温度と室内空気の温度との乖離度合い、すなわち、必要な熱交換量に基づいて目標値が変わるため、室内空間を早期に設定温度に到達させることが可能となる。
【0021】
また、蒸発温度を室内空間の熱負荷などに応じて上下させる制御を行う場合に、従来のように過熱度を目標過熱度に近づける制御では能力制御が安定しないことも想定されるが、第1パラメーターを目標値に近づける第7観点に係る冷凍装置であれば、適切な能力制御が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1観点から第3観点に係る冷凍装置では、過熱度よりも冷媒圧力変動時の変動が小さくなる第1パラメーターを選ぶことで、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことが抑制され、冷凍装置の挙動が安定するようになる。
【0023】
本発明の第2観点に係る冷凍装置では、複数の利用側ユニットが存在し、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動する傾向にあるが、その場合にも、変動が小さくなる第1パラメーターを選ぶことで、膨張機構の絞り量が必要以上に変動してしまうことが抑制される。
【0024】
本発明の第1観点に係る冷凍装置では、冷媒回路内の冷媒の圧力が一時的に変動したときの膨張機構の絞り量の過剰な変動、および、過熱度が許容最小値を下回ることが、ともに抑制される。
【0025】
本発明の第4観点に係る冷凍装置では、熱交換効率が高くなるように蒸発器を機能させることが容易となる。
【0026】
本発明の第5観点に係る冷凍装置では、室内空間を早期に設定温度に到達させること、および、適切な能力制御が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態に係る冷凍装置である空気調和装置10について説明する。
【0029】
(1)空気調和装置の構成
図1に示す空気調和装置10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の建物の中にある室内空間を冷房または暖房する装置である。空気調和装置10は、主として、建物の外に配置される1台の熱源側ユニット20と、それに並列に接続された複数台(本実施形態では、3台)の利用側ユニット40、50、60と、液冷媒連絡管71およびガス冷媒連絡管72と、を備えている。空気調和装置10の蒸気圧縮式の冷媒回路11は、熱源側ユニット20と、利用側ユニット40、50、60とが、液冷媒連絡管71およびガス冷媒連絡管72によって接続されることで構成される。
【0030】
(1−1)利用側ユニット
利用側ユニット40、50、60は、建物内の室内空間の天井に埋め込みや吊り下げ等により設置される、あるいは、室内空間の壁面に壁掛け等により設置される、空調室内機である。利用側ユニット40、50、60は、液冷媒連絡管71およびガス冷媒連絡管72を介して熱源側ユニット20に接続されており、冷媒回路11の一部を構成する。
【0031】
次に、利用側ユニット40、50、60の構成について説明する。なお、利用側ユニット40と利用側ユニット50、60とは同様の構成であるため、ここでは、利用側ユニット40の構成のみ説明し、利用側ユニット50、60の構成については、それぞれ、利用側ユニット40の各部を示す40番台の符号の代わりに50番台または60番台の符号を付して、各部の説明を省略する。
【0032】
利用側ユニット40は、主として、冷媒回路11の一部を構成する利用側冷媒回路11a(利用側ユニット50では利用側冷媒回路11b、利用側ユニット60では利用側冷媒回路11c)を有している。この利用側冷媒回路11aは、主として、室内熱交換器42と、膨張機構として機能する室内膨張弁41とを有している。室内膨張弁41は、利用側冷媒回路11a内を流れる冷媒の流量の調節等を行うために、室内熱交換器42の液冷媒連絡管71側に接続された電動弁であり、冷媒の通過を遮断することも可能である。本実施形態において、室内膨張弁41は、その開度を最大にした状態において開弁パルスが最大となる。また、室内膨張弁41は、利用側ユニット40がサーモオフ状態にあるときに、液冷媒が室内熱交換器42に溜まり込むことを防ぐために、全閉状態で固定せず、冷媒の流動を確保するように微少開度に調整される。なお、この「微少開度に調整される」とは、開弁パルスが、全閉にはならない程度の低開度の最低所定値に設定されることを意味する。
【0033】
利用側熱交換器である室内熱交換器42は、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であり、内部を流れる冷媒と、外部を流れる室内空気(熱交換流体)との間で熱交換を行わせる。室内熱交換器42は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には冷媒の凝縮器として機能して室内空気を加熱する。なお、本実施形態においては室内熱交換器42がクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であるが、これに限定されず、他の型式(積層式など)の熱交換器であってもよい。
【0034】
また、利用側ユニット40は室内ファン43を有している。室内ファン43は、熱交換流体である室内空気を利用側ユニット40の内部に吸い込み、室内熱交換器42において冷媒と熱交換させた後に、空調済み空気として室内空間に供給するための送風機である。室内ファン43は、DCファンモータ等のモータ43mによって駆動されるファンであり、遠心ファンや多翼ファン等が用いられている。
【0035】
また、利用側ユニット40には、各種のセンサが設けられている。室内熱交換器42の液冷媒連絡管71側には、冷媒の温度(すなわち、暖房運転時における過冷却状態の冷媒温度Tscまたは冷房運転時における蒸発温度Teに対応する冷媒温度)を検出する液側温度センサ44が設けられている。室内熱交換器42のガス冷媒連絡管72側には、冷媒の温度を検出するガス側温度センサ45が設けられている。利用側ユニット40の室内空気の吸入口側には、室内空気の温度(室内温度Tr)を検出する室内温度センサ46が設けられている。液側温度センサ44、ガス側温度センサ45および室内温度センサ46は、サーミスタからなる。また、利用側ユニット40は、利用側ユニット40を構成する各部の動作を制御する室内側制御部47を有している。室内側制御部47は、利用側ユニット40の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ47a等を有しており、利用側ユニット40を個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、熱源側ユニット20の室外側制御部37との間で伝送線80aを介して制御信号等のやりとりを行ったりすることができる。
【0036】
(1−2)熱源側ユニット
熱源側ユニット20は、ビル等の建物の外部あるいは地下空間に設置されており、液冷媒連絡管71およびガス冷媒連絡管72を介して利用側ユニット40、50、60に接続され、利用側ユニット40、50、60とともに冷媒回路11を構成している。
【0037】
熱源側ユニット20は、主として、冷媒回路11の一部を構成する熱源側冷媒回路11dを有している。この熱源側冷媒回路11dは、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、熱源側熱交換器である室外熱交換器23と、膨張機構として機能する室外膨張弁38と、アキュムレータ24と、液側閉鎖弁26と、ガス側閉鎖弁27とを有している。
【0038】
圧縮機21は、運転容量を可変することが可能な圧縮機であり、インバータにより回転数が制御されるモータ21mによって駆動される容積式圧縮機である。なお、本実施形態においては圧縮機21が1台のみであるが、これに限定されず、利用側ユニットの接続台数等に応じて2台以上の圧縮機が並列に接続されていてもよい。
【0039】
四路切換弁22は、冷媒の流れ方向を切り換えるための弁であり、冷房運転時には、室外熱交換器23を圧縮機21によって圧縮される冷媒の凝縮器として、かつ、室内熱交換器42、52、62を室外熱交換器23において凝縮される冷媒の蒸発器として機能させる。そのために、四路切換弁22は、冷房運転時には、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続するとともに、圧縮機21の吸入側(具体的には、アキュムレータ24)とガス冷媒連絡管72とを接続する(冷房運転状態:
図1の四路切換弁22の実線を参照)。一方、暖房運転時には、室内熱交換器42、52、62を圧縮機21によって圧縮される冷媒の凝縮器として、かつ、室外熱交換器23を室内熱交換器42、52、62において凝縮された冷媒の蒸発器として機能させるために、四路切換弁22は、圧縮機21の吐出側とガス冷媒連絡管72側とを接続するとともに、圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続する(暖房運転状態:
図1の四路切換弁22の破線を参照)。
【0040】
室外熱交換器23は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であり、空気(外気)を熱源として、内部を流れる冷媒を蒸発させたり凝縮させたりする機器である。室外熱交換器23は、冷房運転時には冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する。室外熱交換器23は、そのガス側が四路切換弁22に接続され、その液側が室外膨張弁38に接続されている。なお、本実施形態において、室外熱交換器23としてクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器を採用しているが、これに限定されず、他の型式の熱交換器を採用してもよい。
【0041】
室外膨張弁38は、熱源側冷媒回路11d内を流れる冷媒の圧力や流量の調節を行うための電動弁である。室外膨張弁38は、冷房運転を行う際の冷媒回路11における冷媒の流れ方向において、室外熱交換器23の下流側に配置されている。(本実施形態においては、室外熱交換器23の液側に接続されている)。
【0042】
また、熱源側ユニット20は、室外ファン28を有している。室外ファン28は、ユニット内に外気を取り入れ、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、ユニットの外部に排出する。この室外ファン28は、室外熱交換器23に供給する空気の風量を可変することが可能なファンであり、本実施形態においては、DCファンモータ等からなるモータ28mによって駆動されるプロペラファンである。
【0043】
液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27は、熱源側ユニット20において、外部の機器・配管(具体的には、液冷媒連絡管71およびガス冷媒連絡管72)との接続口に設けられた弁である。液側閉鎖弁26は、冷房運転を行う際の冷媒回路11における冷媒の流れ方向において、室外膨張弁38の下流側であって液冷媒連絡管71の上流側に配置されることになる。ガス側閉鎖弁27は、四路切換弁22に接続されている。液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27は、メンテナンス時には、手動で全閉状態となって冷媒を遮断することが可能である。
【0044】
また、熱源側ユニット20には、各種のセンサが設けられている。具体的には、圧縮機21の吸入圧力を検出する吸入圧力センサ29と、圧縮機21の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ30と、圧縮機21の吸入温度を検出する吸入温度センサ31と、圧縮機21の吐出温度を検出する吐出温度センサ32とが、熱源側ユニット20に設けられている。熱源側ユニット20の室外空気の吸入口側には、ユニット内に流入する外気の温度(すなわち、室外温度)を検出する室外温度センサ36がさらに設けられている。吸入温度センサ31、吐出温度センサ32、および室外温度センサ36は、サーミスタからなる。また、熱源側ユニット20は、熱源側ユニット20を構成する各部の動作を制御する室外側制御部37を有している。室外側制御部37は、
図2に示すように、熱源側ユニット20の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータ、メモリ37a、モータ21mを制御するインバータ回路等を有しており、利用側ユニット40、50、60の室内側制御部47、57、67との間で伝送線80aを介して制御信号等のやりとりを行う。すなわち、室内側制御部47、57、67と室外側制御部37との間を接続する伝送線80aによって、各制御部37,47,57,67から成る、空気調和装置10全体の運転制御を行う制御部80が構成されることになる。
【0045】
制御部80は、
図2に示すように、各種センサ29〜32、36、38、44〜46、54〜56、64〜66の検出信号を受けることができ、これらの検出信号等に基づいて各種機器および弁21、22、28、38、41、43、51、53、61、63を制御することができる。また、制御部80を構成するメモリ37a、47a、57a、67aには、制御のための各種データが格納されている。
【0046】
(1−3)冷媒連絡管
冷媒連絡管71、72は、空気調和装置10をビル等の建物の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒配管であり、設置場所や熱源側ユニットと利用側ユニットとの組み合わせ等の設置条件に応じて、種々の長さのものが使用される。このため、例えば、新規に空気調和装置10を設置する場合には、空気調和装置10の冷媒回路11に対して、冷媒連絡管71、72の長さ等の設置条件に応じた適正な量の冷媒を充填する必要がある。
【0047】
以上のように、利用側冷媒回路11a、11b、11cと、熱源側冷媒回路11dと、冷媒連絡管71、72とが接続されて、空気調和装置10の冷媒回路11が構成されている。そして、空気調和装置10は、室内側制御部47、57、67および室外側制御部37から構成される制御部80によって、四路切換弁22により冷房運転および暖房運転を切り換えて空調運転を行うとともに、各利用側ユニット40、50、60の運転負荷に応じて、熱源側ユニット20および利用側ユニット40、50、60の各機器の制御を行うように構成されている。
【0048】
(2)空気調和装置の動作
次に、空気調和装置10の動作について説明する。
【0049】
空気調和装置10では、冷房運転および暖房運転それぞれにおいて、利用者がリモコン等の入力装置により設定している設定温度Tsに室内温度Trを近づける室内能力制御を、各利用側ユニット40、50、60で行っている。この室内能力制御では、設定温度Tsに室内温度Trが収束するように、後述のように各室内膨張弁41、51、61の開度が調整される。
【0050】
なお、空気調和装置10をビル等の建物の設置場所に設置し終えると、試運転の前に、閉鎖状態の液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27が手動で開状態とされる。通常の冷房運転や暖房運転において、液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27は開いた状態となっている。
【0051】
(2−1)冷房運転
まず、冷房運転について、
図1を用いて説明する。
【0052】
冷房運転時は、四路切換弁22が
図1の実線で示される状態、すなわち、圧縮機21の吐出側が室外熱交換器23のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側がガス冷媒連絡管72を介して室内熱交換器42、52、62のガス側に接続された状態となる。ここで、室外膨張弁38は、全開状態にされている。各室内膨張弁41、51、61は、後述のように、第1パラメーターである相対過熱度RSHが目標相対過熱度RSHsに近づいて一定になるように、開度調整される。
【0053】
この冷媒回路11の状態で、圧縮機21、室外ファン28および室内ファン43、53、63を運転すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。その後、高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由して室外熱交換器23に送られて、室外ファン28によって供給される室外空気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒となる。そして、この高圧の液冷媒は、液冷媒連絡管71を経由して、利用側ユニット40、50、60に送られる。
【0054】
利用側ユニット40、50、60に送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁41、51、61によって圧縮機21の吸入圧力近くまで減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器42、52、62に送られる。そして、室内熱交換器42、52、62において室内空気と熱交換を行い、蒸発して低圧のガス冷媒となる。
【0055】
この低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管72を経由して熱源側ユニット20に送られ、四路切換弁22からアキュムレータ24に流入し、圧縮機21に吸入される。このように、空気調和装置10では、室外熱交換器23を冷媒の凝縮器として、かつ、室内熱交換器42、52、62を冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転を行うことが可能である。
【0056】
なお、空気調和装置10では、室内熱交換器42、52、62のガス側に冷媒の圧力を調整する機構は存在せず、全ての室内熱交換器42、52、62における蒸発圧力Peが共通の圧力となる。そして、この蒸発圧力Pe、具体的には吸入圧力センサ29が検知する低圧値が所定の値になるように、圧縮機21の回転数が制御される。
【0057】
(2−2)暖房運転
次に、暖房運転について説明する。
【0058】
暖房運転時は、四路切換弁22が
図1の破線で示される状態(暖房運転状態)、すなわち、圧縮機21の吐出側がガス冷媒連絡管72を介して室内熱交換器42、52、62のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側が室外熱交換器23のガス側に接続された状態となる。室外膨張弁38は、室外熱交換器23に流入する冷媒を室外熱交換器23において蒸発させることが可能な圧力(すなわち、蒸発圧力Pe)まで減圧するために開度調節されるようになっている。室内膨張弁41、51、61は、後述するように、第2パラメーターである相対過冷却度RSCが目標相対過熱度RSCsに近づいて一定になるように、開度調整される。
【0059】
この冷媒回路11の状態で、圧縮機21、室外ファン28および室内ファン43、53、63を運転すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となり、四路切換弁22およびガス冷媒連絡管72を経由して、利用側ユニット40、50、60に送られる。
【0060】
利用側ユニット40、50、60に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器42、52、62において、室内空気と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となった後、室内膨張弁41、51、61を通過する際に、室内膨張弁41、51、61において弁開度に応じて減圧される。
【0061】
この室内膨張弁41、51、61を通過した冷媒は、液冷媒連絡管71を経由して熱源側ユニット20に送られ、室外膨張弁38を経由してさらに減圧された後、室外熱交換器23に流入する。そして、室外熱交換器23に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン28によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、低圧のガス冷媒となって四路切換弁22からアキュムレータ24に流入する。そして、アキュムレータ24に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。
【0062】
図3は、空気調和装置10の冷媒回路11における冷凍サイクルをp−h線図(モリエル線図)により示したものである。
図3のA、B、C、D、Eは、暖房運転の場合の、
図1における各点A、B、C、D、Eに対応した冷媒の状態を表している。
【0063】
この冷媒回路11では、冷媒は、圧縮機21により圧縮されて高温かつ高圧Phになる(A→B)。そして、圧縮機21により圧縮されて高温かつ高圧Phのガス冷媒は、凝縮器として機能している室内熱交換器42、52、62において放熱し、低温かつ高圧Phの液冷媒となる(B→C)。そして、室内熱交換器42、52、62で放熱・凝縮した冷媒は、室内膨張弁41,51,61により高圧Phから中間圧Pmに減圧される(C→D)。そして、中間圧Pmまで減圧された冷媒は、熱源側ユニット20に流入し、室外膨張弁38により中間圧Pmから低圧Plに減圧され、気液二相状態となる(D→E)。気液二相状態となった冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器23において熱を吸収し、蒸発して圧縮機21へ戻る(E→A)。
【0064】
(2−3)室内膨張弁の制御
空気調和装置10では、膨張機構である室内膨張弁41、51、61の弁開度、すなわち、室内膨張弁41、51、61の絞り量を、制御部80がきめ細かく制御している。具体的には、冷房運転時には、第1パラメーターである相対過熱度RSHに応じて各室内膨張弁41、51、61の開度が決められ、暖房運転時には、第2パラメーターである相対過冷却度RSCに応じて各室内膨張弁41、51、61の開度が決められる。
【0065】
過熱度SHと蒸発温度Teとから求められる第1パラメーターとして、ここでは相対過熱度RSHを採用している。過熱度SHは、
図4に示すように、蒸発器として機能する室内熱交換器42、52、62の出口の冷媒温度と、その室内熱交換器42、52、62における冷媒の蒸発温度Teとの差である。そして、相対過熱度RSHは、過熱度SHを、室内空気温度Trと蒸発温度Teとの差ΔTで除した値である。
相対過熱度RSH=過熱度SH/(室内空気温度Tr−蒸発温度Te)=SH/ΔT
【0066】
制御部80は、この相対過熱度RSHが目標相対過熱度RSHsに近づいて収束するように、室内膨張弁41、51、61の絞り量を決定する。すなわち、各室内膨張弁41、51、61の開度は、相対過熱度RSHが一定になるように制御される。具体的には、まず、相対過熱度RSHと目標相対過熱度RSHsとの乖離度Ershを次式で求める。
乖離度Ersh=目標相対過熱度RSHs−相対過熱度RSH
【0067】
次に、数秒〜数十秒に一度変更するときの室内膨張弁41、51、61の開度パルスの変更量ΔEVを、所定のゲイン値A、Bを含む次式で求める。
開度パルスの変更量ΔEV=A×(Ersh−前回のErsh)+B×Ersh
【0068】
このように、数秒〜数十秒に一度、乖離度Ershを演算し、上式によって開度パルスの変更量ΔEVを求め、その分だけ室内膨張弁41、51、61の開度パルスを変更することが繰り返される。これによって、相対過熱度RSHが目標相対過熱度RSHsに近づく。
【0069】
一方、暖房運転時に室内膨張弁41、51、61の絞り量を決めるための、過冷却度SCと凝縮温度Tcとから求められる第2パラメーターとして、ここでは相対過冷却度RSCを採用している。過冷却度SCは、放熱器として機能する室内熱交換器42、52、62の出口の冷媒温度と、その室内熱交換器42、52、62における冷媒の凝縮温度Tcとの差である。そして、相対過冷却度RSCは、過冷却度SCを、室内空気温度Trと凝縮温度Tcとの差ΔTで除した値である。
相対過冷却度RSC=過冷却度SC/(室内空気温度Tr−凝縮温度Tc)=SC/ΔT
【0070】
制御部80は、この相対過冷却度RSCが目標相対過冷却度RSCsに近づいて収束するように、室内膨張弁41、51、61の絞り量を決定する。すなわち、各室内膨張弁41、51、61の開度は、相対過冷却度RSCが一定になるように制御される。具体的には、まず、相対過冷却度RSCと目標相対過冷却度RSCsとの差Erscを次式で求める。
差Ersc=目標相対過冷却度RSCs−相対過冷却度RSC
【0071】
次に、数秒〜数十秒に一度変更するときの室内膨張弁41、51、61の開度パルスの変更量ΔEVを、所定のゲイン値C、Dを含む次式で求める。
開度パルスの変更量ΔEV=C×(Ersc−前回のErsc)+D×Ersc
【0072】
このように、数秒〜数十秒に一度、差Erscを演算し、上式によって開度パルスの変更量ΔEVを求め、その分だけ室内膨張弁41、51、61の開度パルスを変更することが繰り返される。これによって、相対過冷却度RSCが目標相対過冷却度RSCsに近づく。
【0073】
なお、冷房運転時の目標相対過熱度RSHsや暖房運転時の目標相対過冷却度RSCsは、室内空間の空調の設定温度Tsと現在の室内空気温度Trとの乖離度Er(Er=Ts−Tr)に基づいて決定される。具体的には、冷房運転時の目標相対過熱度RSHs/暖房運転時の目標相対過冷却度RSCsの見直しが数秒〜数十秒に一度行われ、その際に、所定のゲイン値J、K、L、Mを含む次式の変更量ΔRSHs/ΔRSCsだけ修正が為される。
ΔRSHs=J×(Er−前回のEr)+K×Er
ΔRSCs=L×(Er−前回のEr)+M×Er
【0074】
また、室内膨張弁41、51、61の開度を制御する制御部80は、基本的には上述の相対過熱度RSHの一定制御および相対過冷却度RSCの一定制御を行っているが、過熱度SHあるいは過冷却度SCが許容最小値を下回ることがないように、上下限の範囲で制御を行っている。具体的には、過熱度SHが例えば3℃を下回らないように、過冷却度SCが例えば3℃を下回らないように、相対過熱度RSH/相対過冷却度RSCに次式のような上限および下限を設けている。
(許容最小過熱度SHmin/ΔT)<RSH<(許容最大過熱度SHmax/ΔT)
(許容最小過冷却度SCmin/ΔT)<RSC<(許容最大過冷却度SCmax/ΔT)
【0075】
このように、制御部80は、室内膨張弁41、51、61の開度に関して、冷房運転時は相対過熱度RSHの一定制御、暖房運転時は相対過冷却度RSCの一定制御を行いつつ、過熱度SHや過冷却度SCが所定範囲を逸脱することがないようにしている。
【0076】
なお、上述の式におけるゲイン値A、B、C、D、J、K、L、Mは、冷媒状態などに応じて可変される値である。
【0077】
(3)特徴
(3−1)
冷媒回路11内の冷媒の圧力が一時的に変動すると、蒸発器や放熱器として機能する室内熱交換器42、52、62の出口の冷媒温度の変化に較べて、蒸発温度Teや凝縮温度Tcの変化が大きくなる傾向があることを本願の発明者は見いだしている。例えば、利用側ユニット40、50、60の一部のユニットが、室内空気温度Trが設定温度Tsに達してサーモオフの状態になると、圧縮機21の吸入圧力(冷媒回路11内のガス冷媒の低圧値)が一時的に低下する。すると、吸入圧力の低下に伴って、
図5に示すように、室内熱交換器42、52、62の蒸発温度Teも一時的に低下する。
図4を参照すれば明らかなように、蒸発器の出口における冷媒温度が殆ど変化しない状態において、蒸発温度Teが低下すると、過熱度SHは相対的に大きくなる。すなわち、蒸発温度Teが一時的に低下すると、それに伴って
図5に示すように過熱度SHは急上昇してしまう。蒸発温度Teが11℃下がれば、過熱度SHは約11℃上昇することになる。したがって、従来のように過熱度SHを目標値に近づける膨張弁制御を行っている場合、膨張弁の開度が大きく変えられることになる。
【0078】
また、上記実施形態では、冷媒の低圧値が一定になるように圧縮機21の回転数のフィードバック制御を行っているが、その制御が最適化されていない場合には、低圧値や蒸発温度Teがハンチングしてしまうことがある。このような場合にも、従来の過熱度SHの一定制御(目標値制御)を行っていると、膨張弁の開度が不必要に大きくなったり小さくなったりしてしまい、冷凍サイクルが不安定となる。
【0079】
これに対し、上記実施形態に係る空気調和装置10では、過熱度SHや過冷却度SCが目標値に近づくように室内膨張弁41、51、61の絞り量(弁開度)を決める従来の制御に代えて、過熱度SHと蒸発温度Teとから求められる相対過熱度RSH(第1パラメーター)や、過冷却度SCと凝縮温度Tcとから求められる相対過冷却度RSC(第2パラメーター)に基づいて、室内膨張弁41、51、61の絞り量を決定している。これらの相対過熱度RSH/相対過冷却度RSCは、冷媒回路11内の冷媒の圧力が変わっても殆ど温度が変わることがない室内空気温度Tr(熱交換流体温度)を用いたパラメーターであるため、過熱度SH/過冷却度SCほどは、一時的な冷媒の圧力変動の影響を受けないパラメーターとなっている。
図5を参照すれば明らかなように、一時的に冷媒の低圧値が下がって、それに伴い蒸発温度Teが11℃下がり、過熱度SHが約11℃上昇するような場合にも、相対過熱度RSHはあまり上昇しない。これは、次式のように、相対過熱度RSHが過熱度SHをΔT(ΔT=室内空気温度Tr−蒸発温度Te)で除した値だからである。
図4に示すように、室内空気温度Trは冷媒の圧力変化に伴って直ちに変わる値ではないので、ΔTは、蒸発温度Teが低下する分だけ大きくなる値である。すなわち、蒸発温度Teが下がったときに、分子の過熱度SHも分母のΔTも共に大きくなるため、相対過熱度RSHの上昇は比較的小さく抑えられる。
【0080】
このような相対過熱度RSH(RSH=SH/ΔT)をパラメーターとして室内膨張弁41、51、61の絞り量を決める弁開度制御を行っているため、この空気調和装置10では、室内膨張弁41、51、61の絞り量が必要以上に変動してしまうことが抑制されている。そして、一部の利用側ユニットがサーモオフや停止の状態に変わって冷媒の低圧値が低下したような場合にも、空気調和装置10の冷凍サイクルが安定するようになっている。
【0081】
(3−2)
上記実施形態に係る空気調和装置10では、例えば冷房運転時には、相対過熱度RSH(RSH=SH/ΔT)をパラメーターとして室内膨張弁41、51、61の絞り量を決めている。このため、蒸発温度Teの変動に対して室内膨張弁41、51、61の弁開度の応答が遅れる傾向が出る。この傾向は、上述のように空気調和装置10の挙動を安定させる役割を果たす一方、例えば、蒸発温度を下回る温度の冷媒(室内熱交換器42、52、62で蒸発しきれず液冷媒を含んだ状態の冷媒)が圧縮機に吸入されるといった状況を生むことも想定される。これを回避するために、アキュムレータ24の容量を増やすことも考えられるが、コストアップにつながる。
【0082】
これに鑑み、空気調和装置10では、基本的には、相対過熱度RSH/相対過冷却度RSCが一定になるように室内膨張弁41、51、61の開度を制御しているが、過熱度SHや過冷却度SCが所定範囲を逸脱することがないように、相対過熱度RSH/相対過冷却度RSCに上限および下限を設けている。すなわち、空気調和装置10の制御部80は、過熱度SH/過冷却度SCが許容最小値(SHmin/SCmin)を下回るときには、過熱度SH/過冷却度SCが許容最小値を超えるように制御を行っている。これにより、冷媒回路11内の冷媒の圧力が一時的に変動したときの室内膨張弁41、51、61の開度の過剰な変動を抑制することと、過熱度SH/過冷却度SCが許容最小値を下回ることの回避とが、空気調和装置10では両立している。
【0083】
(3−3)
上記実施形態に係る空気調和装置10では、室内空間の室内空気温度Trが設定温度Tsになるように室内熱交換器42、52、62を蒸発器あるいは放熱器として機能させる。そして、制御部80は、設定温度Tsと現在の室内空気温度Trとの乖離度Er(Er=Ts−Tr)に基づいて、冷房運転時の目標相対過熱度RSHsや暖房運転時の目標相対過冷却度RSCsを変えている。このように、空気調和装置10では、乖離度Er、すなわち、各利用側ユニット40、50、60で必要な熱交換量に基づいて目標値(目標相対過熱度RSHs,目標相対過冷却度RSCs)が変わるため、室内空間を早期に設定温度Tsに到達させることが可能となっている。
【0084】
また、蒸発温度Teや凝縮温度Tcを室内空間の熱負荷などに応じて変更する制御を行う場合に、従来のように過熱度SH/過冷却度SCを目標過熱度SHs/目標過冷却度SCsに近づける制御では能力制御(室温制御)が安定しないことも想定されるが、相対過熱度RSH/相対過冷却度RSCが目標相対過熱度RSHs/目標相対過冷却度RSCsになるようなRSH/RSC一定制御を採用している上記実施形態に係る空気調和装置10では、各利用側ユニット40、50、60における適切な能力制御が可能となっている。
【0085】
(4)変形例
(4−1)第1変形例
上記実施形態に係る空気調和装置10では、相対過熱度RSH(=SH/ΔT)や相対過冷却度RSC(=SC/ΔT)に基づいて各室内膨張弁41、51、61の開度を決定しているが、本発明はこれらのパラメーター(RSH,RSC)を使わない空気調和装置においても成立する。
【0086】
例えば、制御部80のメモリ37a,47a,57a,67aに、上述の相対過熱度RSH/相対過冷却度RSCに代わる第1パラメーター/第2パラメーターを求めるための二次元マップを記憶させておくことが考えられる。過熱度SHと蒸発温度Teとから第1パラメーターが一義的に決まるマップおよび過冷却度SCと凝縮温度Tcとから第2パラメーターが一義的に決まるマップを予め用意し、メモリ37a,47a,57a,67aに組み込んでおけば、第1パラメーター/第2パラメーターを用いて各室内膨張弁41、51、61の開度を決めることができる。
【0087】
また、相対過熱度RSHは、過熱度SHを、室内空気温度Trと蒸発温度Teとの差ΔTで除した値であるが、相対過熱度RSHに代わる第1パラメーターを、過熱度SHおよび蒸発温度Teから別の数式によって求めるようにしてもよい。
【0088】
(4−2)第2変形例
上記実施形態において、各室内熱交換器42、52、62の出口における冷媒の過熱度SHは、ガス側温度センサ45、55、65により検出される冷媒温度値から液側温度センサ44、54、64により検出される冷媒温度値(蒸発温度Teに対応)を差し引くことによって検出されている。
【0089】
しかし、各室内熱交換器42、52、62の出口における冷媒の過熱度SHは、上述の方法に代えて、吸入圧力センサ29により検出される圧縮機21の吸入圧力を蒸発温度Teに対応する飽和温度値に換算し、ガス側温度センサ45、55、65により検出される冷媒温度値からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって検出してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では採用していないが、各室内熱交換器42、52、62内を流れる冷媒の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサにより検出される蒸発温度Teに対応する冷媒温度値を、ガス側温度センサ45、55、65により検出される冷媒温度値から差し引くことによって、各室内熱交換器42、52、62の出口における冷媒の過熱度SHを検出するようにしてもよい。
【0091】
室内熱交換器42、52、62の出口における冷媒の過冷却度SCについても、上記実施形態では、吐出圧力センサ30により検出される圧縮機21の吐出圧力Pdを凝縮温度Tcに対応する飽和温度値に換算し、この冷媒の飽和温度値から液側温度センサ44、54、64により検出される冷媒温度Tscを差し引くことによって検出している。
【0092】
これに代えて、上記実施形態では採用していないが各室内熱交換器42、52、62内を流れる冷媒の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサにより検出される凝縮温度Tcに対応する冷媒温度値を、液側温度センサ44、54、64により検出される冷媒温度Tscから差し引くことによって室内熱交換器42、52、62の出口における冷媒の過冷却度SCを検出するようにしてもよい。