(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)システイン誘導体またはその塩が、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステル、およびそれらの塩から選択される1種以上である、請求項1記載の化粧料。
(B)界面活性剤が、カルボン酸型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、エーテル型ノニオン界面活性剤、エーテルエステル型ノニオン界面活性剤、4級アンモニウム型カチオン界面活性剤、アミノ酸系カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、およびアミノカルボン酸型両性界面活性剤から選択される1種以上である請求項1または2に記載の化粧料。
(B)界面活性剤が、N−アシル酸性アミノ酸塩、N−アシル中性アミノ酸塩、脂肪酸アミノ酸塩、N−アシルN−メチルタウリン塩、アルキルサルフェートのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルアンモニウム塩およびアルキルアミドベタインから選択される1種以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
(A)システイン誘導体またはその塩がN−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルまたはその塩であり、(B)界面活性剤がN−アシル酸性アミノ酸塩である請求項1に記載の化粧料。
(A)システイン誘導体またはその塩と(B)界面活性剤の配合比が、(A)/(B)=1/30000〜20/1(g/g)である請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(A)特定のシステイン誘導体またはその塩および(B)特定の界面活性剤を含有する化粧料である。
【0011】
[(A)システイン誘導体]
本発明のシステイン誘導体は一般式(I)で表されるシステイン誘導体またはその塩である。
【0012】
【化2】
[式中、
X及びYは、それぞれ独立して、OR
1、NHR
2(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子またはC
1−22アルキル基を示す。)、であり;
Zは、水素原子またはC
1−22アルキル基を示し;
Wは、C
1−22アルキル基、C
1−22アルコキシ基またはC
1−22アルキルアミノ基を示す。]
【0013】
本明細書において使用する用語を以下に定義する。
「C
1−22アルキル基」とは、炭素数1〜22個の直鎖または分枝鎖状の炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。
「C
1−16アルキル基」としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基等が挙げられる。
「C
1−6アルキル基」としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
「C
1−22アルコキシ基」とは、上記「C
1−22アルキル基」で置換された水酸基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、エイコシルオキシ基、ヘンエイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基等が挙げられる。
「C
1−6アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0015】
「C
1−22アルキルアミノ基」とは、上記「C
1−22アルキル基」で置換されたアミノ基を意味し、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ウンデシルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基、ペンタデシルアミノ基、ヘキサデシルアミノ基、ヘプタデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、ノナデシルアミノ基、エイコシルアミノ基、ヘンエイコシルアミノ基、ドコシルアミノ基等が挙げられる。
「C
1−6アルキルアミノ基」としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基が挙げられる。
【0016】
「ハロゲン原子」としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)における各置換基について、以下に説明する。
【0018】
X及びYは、それぞれ独立して、OR
1、NHR
2(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子またはC
1−22アルキル基を示す。)である。
【0019】
R
1またはR
2で示される「C
1−22アルキル基」としては、好ましくはC
1−6アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基であり、さらに好ましくはエチル基である。
【0020】
Xは、好ましくはOR
1(式中、R
1は前記と同意義を示す。)であり;より好ましくはOR
1’(式中、R
1’は水素原子またはC
1−6アルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基)を示す。)であり;さらに好ましくは水酸基、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基であり、さらにより好ましくは水酸基またはメトキシ基である。
【0021】
Yは、好ましくはOR
1(式中、R
1は前記と同意義を示す。)であり、より好ましくはOR
1’(式中、R
1’は前記と同意義を示す。)であり、さらに好ましくは水酸基、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基であり、さらにより好ましくは水酸基またはメトキシ基である。
【0022】
Zは、水素原子またはC
1−22アルキル基を示す。
Zで示される「C
1−22アルキル基」としては、好ましくはC
1−6アルキル基であり、より好ましくはメチル基である。Zは、好ましくは水素原子またはC
1−6アルキル基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0023】
Wは、C
1−22アルキル基、C
1−22アルコキシ基またはC
1−22アルキルアミノ基を示す。
Wで示される「C
1−22アルキル基」としては、好ましくはC
1−16アルキル基であり、より好ましくは、メチル基、ノニル基、ペンタデシル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
Wで示される「C
1−22アルコキシ基」としては、好ましくはC
1−6アルコキシ基であり、より好ましくはtert−ブトキシ基である。
Wで示される「C
1−22アルキルアミノ基」としては、好ましくはC
1−6アルキルアミノ基である。
【0024】
Wは、好ましくはC
1−22アルキル基、C
1−22アルコキシ基であり、より好ましくは、C
1−16アルキル基、C
1−6アルコキシ基であり、さらに好ましくはメチル基、ノニル基、ペンタデシル基、tert−ブトキシ基であり、特に好ましくはメチル基、tert−ブトキシ基である。
【0025】
一般式(I)で表されるシステイン誘導体としては、具体的には、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸、およびN−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルが好ましく、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルがより好ましい。
【0026】
本発明のシステイン誘導体の塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩が挙げられる。
無機塩基との塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、銀塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
有機塩基との塩として、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン、シンコニン、メグルミン、アミノ酸(アルギニン、リジン等)等との塩が挙げられる。
自体公知の方法に従って、本発明のシステイン誘導体と、無機塩基または有機塩基を反応させることにより、各々の塩を得ることができる。
【0027】
本発明のシステイン誘導体は、上記のとおり、様々な塩の形態をとることができるが、本発明の効果は、塩の形態をとらない場合に効果が大きい。
【0028】
本発明のシステイン誘導体は黒色メラニン産生抑制効果を有するため、美白剤、または、シミの予防剤もしくは治療剤として使用することができる。これらの用途は、本発明のシステイン誘導体が、安定な剤形を呈する一方で、経皮吸収を経て、作用部位においてアシラーゼなどの酵素によって、比較的速やかにシステインへと分解される性質を利用したものである。
【0029】
本発明のシステイン誘導体またはその塩を化粧料に配合する場合の下限値は、その効果が発揮されさえすれば特に制限はないが、0.0001重量%を下限値とするのが好ましい。有効な効果を発揮し得るという観点で、0.001重量%がより好ましく、0.01重量%がより好ましく、0.1重量%がより好ましく、0.5重量%がより好ましく、1重量%がより好ましく、2重量%がより好ましい。システイン誘導体の塩を使用する場合は、システイン誘導体部分(フリー体)の重量とする。
【0030】
本発明のシステイン誘導体またはその塩を化粧料に配合する場合の上限値は、その効果が発揮されさえすれば特に制限はないが、20重量%を上限値とするのが好ましい。18重量%がより好ましく、16重量%が更に好ましく、12重量%が更に一層好ましく、10重量%が殊更好ましく、5重量%が特に好ましい。システイン誘導体の塩を使用する場合は、システイン誘導体部分(フリー体)の重量とする。
【0031】
上記一般式(I)で表されるシステイン誘導体(以下、システイン誘導体(I)と略記する場合がある。)の製造方法は、特に限定されるものではなく、既知の方法を組み合わせることにより製造することができる。具体的には、下記方法により合成することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
システイン誘導体(I)の前駆体となる化合物(IV)を以下のステップ1により合成し、その後ステップ2によりシステイン誘導体(I)を合成することができる。化合物(IV)は必要に応じて精製しても良いし、しなくても良い。
【0033】
ステップ1
システイン、または、あらかじめシステインをエステル化もしくはアミド化して得た一般式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)と略記し、他の式で表される化合物についても同様である。)を、化合物(III)と反応させて環構築し、化合物(IV)を得る方法
【0035】
(式中、各記号は前記と同意義を示す。)
化合物(IV)は、水またはメタノール、エタノールなどのアルコール中で化合物(II)と化合物(III)とを5〜24時間反応させることによって得られる。化合物(II)の内、システインエチルエステルは例えば、システインをエチルアルコール中で、塩酸または塩化チオニル存在下、室温で5〜24時間程度反応させることにより得ることができる。化合物(II)の内、システインアミドは保護システインとアミンをEDCI・HCl(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩)のような脱水縮合剤の存在下、塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような溶媒中で、室温で5〜24時間反応して得られた化合物を、脱保護することによって得られる。
【0038】
(式中、Aはハロゲン原子を示し、その他の記号は前記と同意義を示す。)
化合物(IV)を溶媒の存在下または非存在下、塩基の存在下または非存在下に化合物(V)または化合物(V’)と反応させて、システイン誘導体(I)を合成することができる。溶媒としては、THF(テトラヒドロフラン)、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、水、あるいはそれらの混合物等が挙げられ、好ましくはTHF、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、アセトン、ジクロロメタン、水、あるいはそれらの混合物である。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等の有機塩基、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の無機塩基が挙げられ、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムである。
化合物(V)または化合物(V’)の使用量は、化合物(IV)1モルに対し、1.0〜5.0モルであり、好ましくは1.2〜3.0モルである。塩基を使用する場合には、塩基の使用量は、化合物(IV)1モルに対し、1.0〜5.0モルであり、好ましくは1.2〜4.0モルである。反応温度は、−10〜100℃であり、好ましくは0〜90℃である。反応時間は、1時間〜48時間であり、好ましくは3時間〜20時間である。
更にこれをエステル化、アミド化、加水分解または酸無水物化などによって他のシステイン誘導体(I)に変換しても良い。
【0039】
[(B)界面活性剤]
本発明の(B)成分である界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(例えば、カルボン酸型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、リン酸エステル型アニオン界面活性剤)、ノニオン界面活性剤(例えば、エーテル型ノニオン界面活性剤、エステル型ノニオン界面活性剤、エーテルエステル型ノニオン界面活性剤、アミド型ノニオン界面活性剤)、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
【0040】
カルボン酸型アニオン界面活性剤としては、N−アシルグルタミン酸塩およびN−アシルアスパラギン酸塩等のN−アシル酸性アミノ酸塩(ここで、アシルとは、炭素数が10〜26、好ましくは12〜20のアシル基を意味し、例えば、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘニル基、オレオイル基又はココイル基が挙げられる。以下同じ);N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルサルコシン塩、およびN−アシルスレオニン塩などのN−アシル中性アミノ酸塩;アルキルエーテルカルボン酸;脂肪酸塩等が挙げられる。
スルホン酸型アニオン界面活性剤としては、N−アシル−N−メチルタウリン塩、スルホコハク酸系界面活性剤が挙げられる。
硫酸エステル型アニオン界面活性剤としては、アルキルサルフェートおよびそのアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドエーテルサルフェートが挙げられる。
リン酸エステル型アニオン界面活性剤としては、アルキルフォスフェートおよびそのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0041】
エーテル型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル類、アルキルグリコシド類、ポリグリセリンアルキルエーテル類等が挙げられる。
エステル型ノニオン界面活性剤としては、脂肪酸エステル類、グリコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
エーテルエステル型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリンピログルタミン酸脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油ピログルタミン酸脂肪酸エステル類等が挙げられる。
アミド型ノニオン界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド類等が挙げられる。
【0042】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩などの芳香族4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム型カチオン界面活性剤、N−アシルアルギニンエステル塩等のアミノ酸系カチオン界面活性剤が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、カルボキシベタイン、スルホベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、アミノカルボン酸型両性界面活性剤、イミダゾリン型界両性面活性剤、N−アシルアルギニン等のN−アシル塩基性アミノ酸塩、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩が挙げられる。
【0044】
上記界面活性剤は、塩の形態であってもよい。塩としては、特に制限はないが、カチオンとの塩としては具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、リジン、オルニチン、アルギニン等の有機アミン塩、および;アニオンとの塩としては塩酸、硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸塩、酢酸、酒石酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、脂肪酸、酸性アミノ酸、ピログルタミン酸等の有機酸塩、等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせても構わない。
【0045】
好ましくは、(A)成分をより溶解させることが出来、それにより使用感を改善させることができるという観点で、カルボン酸型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、エーテル型ノニオン界面活性剤、エーテルエステル型ノニオン界面活性剤、4級アンモニウム型カチオン界面活性剤、アミノ酸系カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、およびアミノカルボン酸型両性界面活性剤が好ましい。
より好ましくは、N−アシル酸性アミノ酸塩、N−アシル中性アミノ酸塩、脂肪酸アミノ酸塩、N−アシルN−メチルタウリン塩、アルキルサルフェートのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルアンモニウム塩およびアルキルアミドベタインから選択される1種以上であり、
より好ましくは、N−アシル酸性アミノ酸塩、N−アシルN−メチルタウリン塩、アルキルアンモニウム塩およびベタイン型界面活性剤から選択される1種以上である。
使用感の面より、より好ましくは、N−アシル酸性アミノ酸塩、N−アシル中性アミノ酸塩から選択される1種以上である。
【0046】
(B)成分を化粧料に配合する場合の下限値は、その効果が発揮されさえすれば特に制限はないが、0.0001重量%を下限値とするのが好ましい。有効な効果を発揮し得るという観点で、0.001重量%がより好ましく、0.01重量%が更に好ましく、0.1重量%が更に一層好ましく、0.5重量%が殊更好ましく、1重量%が特に好ましい。
【0047】
(B)成分を化粧料に配合する場合の上限値は、その効果が発揮されさえすれば特に制限はないが、20重量%を上限値とするのが好ましい。18重量%がより好ましく、16重量%が更に好ましく、14重量%が更に一層好ましく、12重量%が殊更好ましく、10重量%が特に好ましい。
【0048】
(A)システイン誘導体またはその塩と(B)界面活性剤の配合比は、その効果が発揮されさえすれば特に制限はないが、(A)/(B)=1/30000〜20/1(g/g)であり、好ましくは、1/10000〜5/1(g/g)であり、より好ましくは1/10000〜1/1(g/g)であり、さらにより好ましくは1/1000〜1/10(g/g)である。システイン誘導体の塩を使用する場合は、システイン誘導体部分(フリー体)の重量で上記の比を計算する。
【0049】
本発明の化粧料には、上記(A)、(B)に加え、通常、化粧料(医薬用外用剤、医薬部外品を含む)に使用し得る各種成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合しても良い。例えば、油性成分、アミノ酸類、アミノ酸誘導体類、低級アルコール、多価アルコール、糖アルコールおよびそのアルキレンオキシド付加物、水溶性高分子、殺菌剤および抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗真菌剤、角質軟化剥離剤、皮膚着色剤、ホルモン剤、紫外線吸収剤、育毛剤、美白用薬剤、発汗防止剤および収斂活性成分、汗防臭剤、ビタミン剤、血管拡張剤、生薬、pH調整剤、粘度調整剤、パール化剤、天然香料、合成香料、色素、酸化防止剤、防腐剤、脂肪及びワックス、シリコーン化合物、香油等が挙げられる。
【0050】
本発明の化粧料は、構成する成分を適宜混合撹拌することにより得ることができる。適宜40℃〜90℃に加熱することもできる。
【0051】
本発明において、化粧料は医薬部外品も含む概念である。その形態には特に制限はなく、液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等の任意の形態をとることができる。具体的には、化粧水、ローション、クリーム、乳液、美容液、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアワックス、エナメル、ファンデーション、アイライナー、アイブロウペンシル、マスカラ、アイシャドウ、チーク、リップスティック、おしろい、パウダー、パック、パックマスク、香水、オーデコロン、洗顔フォーム、クレンジングフォーム、クレンジングオイル、クレンジングジェル、クレンジングミルク、歯磨、石鹸、エアゾル、浴用剤、養毛剤、日焼け防止剤が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
[成分Aの合成]
[合成例1]N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステル(本明細書中、N−Ac−CP2Etと略記する場合がある。)
【0054】
【化5】
【0055】
L−システイン塩酸塩一水和物(100g、569mmol)を水(200ml)に溶解後、6N水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを5.03に調整した。反応混合物を40℃に加熱し、ピルビン酸エチルエステル(76ml、684mmol)を徐々に添加し、40℃にて3.5時間撹拌し、2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルを得た(反応液中の生成物のHPLCチャートにおける面積比を確認したところ、トランス体:シス体の比率が約55:45であった)。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた酢酸エチル溶液にアルゴン下にてトリエチルアミン(159ml、1141mmol)を加え、塩化アセチル(61ml、858mmol)をゆっくりと滴下後、反応混合物を4時間加熱還流し、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルを得た(反応液中の生成物のHPLCチャートにおける面積比を確認したところ、トランス体:シス体の比率が約95:5であった)。反応終了後、水(300ml)を加え、さらにHClでpHを1.0に調整した。水層を分離後、有機層を水(300ml)で洗浄し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた酢酸エチル溶液を約500g濃縮し、ヘプタンを加えて再結晶し、ヘプタン/酢酸エチル=2/1で洗浄し、減圧下50℃にて乾燥し、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルのトランス体(HPLCチャートにおける面積比を確認したところ、トランス体の比率が約99%であった)の結晶を得た(81g、収率55%)。
NMR
1H−NMR(CDCl
3):δ;1.27(3H,t,J=7.12Hz),1.94(3H,s),2.18(3H,s),3.40(1H,d,J=11.6Hz),3.56(1H,dd,J=5.5,11.0Hz),4.20(2H,t,J=7.08Hz),5.00(1H,d,J=5.9Hz),9.10(1H,brs).
【0056】
[合成例2]
N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸(N−アセチル−システイニルピルビン酸;以下、N−Ac−CPと略記する場合がある。)
【0057】
【化6】
【0058】
合成例1と同様の操作により得られたN−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸−2−エチルエステルをメタノール(120ml)と水(120ml)の混合溶媒に溶解し、2N NaOH(182.4ml)を加えた。アルゴン雰囲気下に、反応液を100℃で4時間、80℃で一夜攪拌しながら加熱した。反応液を放冷して室温にした後に、AMBERLITEIR120B H AG(約250g)を加えて溶液のpHを1〜2になるように調整した。AMBERLITEを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、酢酸エチル(200ml)を加え、1時間攪拌した後に白色結晶を濾取して、N−アセチル−2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸を得た(15.99g、75%)。
NMR:
1H−NMR(DMSO−d
6):δ;1.73(3H,s),2.01(3H,s),3.36(2H,d,J=3.6Hz),5.26(1H,t,J=3.6Hz).
MSスペクトルm/z;[M+H]
+=234.0、[M−H]
−=232.0.
【0059】
[溶解性評価1]
【0060】
合成例1または合成例2のシステイン誘導体の結晶0.1gに表1の各種界面活性剤(すなわち(B)成分)を1g加え24℃で撹拌した。結晶の残存が目視で確認できた場合、さらに界面活性剤を1g加え24℃で撹拌した。本操作を繰り返し、結晶が溶解した濃度Y(重量%)を求めた。溶解性は、この濃度Yを使用して以下の基準で評価した。
【0061】
◎:Y ≧ 9.1
○:9.1 > Y ≧ 2.4
△:2.4 > Y ≧ 2.0
×:2.0 > Y
【0062】
【表1】
【0063】
表1から、本発明の(A)特定のシステイン誘導体に、(B)特定の界面活性剤を併用させた場合に、水への溶解性が顕著に向上することが分かった。これにより、溶解性に起因する使用感の悪さも顕著に向上する。
【0064】
界面活性剤としては、カルボン酸型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、エーテル型ノニオン界面活性剤、エーテルエステル型ノニオン界面活性剤、4級アンモニウム型カチオン界面活性剤、アミノ酸系カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、およびアミノカルボン酸型両性界面活性剤において効果が確認された。
【0065】
特に、N−アシル酸性アミノ酸塩、N−アシル中性アミノ酸塩、脂肪酸アミノ酸塩、N−アシルN−メチルタウリン塩、アルキルサルフェートのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルアンモニウム塩およびアルキルアミドベタインから選択される界面活性剤を使用すると、化粧料中にシステイン誘導体をより多く配合できることがわかった。
【0066】
[溶解性評価2]
表2および表3に示す割合で、実施例、および比較例の組成物を調製し、その際の組成物の濃度をC
1とした。調製時に溶液の溶状を確認し、沈殿が生じた組成物は評価しなかった。溶解性は、水での飽和濃度(C
0)と比較して以下の基準で評価した。
【0067】
◎:C
1/C
0> 2.0
○:2.0 ≧ C
1/C
0 > 1.5
△:1.5 ≧ C
1/C
0 > 1.0
×:1.0 ≧ C
1/C
0【0068】
[経皮吸収性評価]
表2および表3に示す割合で、実施例、および比較例の組成物を調製し、12ウェルプレートに入れた3次元皮膚モデルのカップ上部に200μl/カップで添加、下部に1ml/ウェルのPBS(phosphate−buffered saline)を添加、37℃で5時間静置した。静置後、下部の溶液を採取し、HPLCを用いてシステイン誘導体濃度(T
1)を測定した。経皮吸収性は、水溶液(比較例3もしくは比較例5)を皮膚モデルカップ上部に添加し同様の実験を行い、得られたシステイン誘導体濃度(T
0)と比較して以下の基準で評価した。
尚、本経皮吸収性評価にはクラボウ社製EPI−200X3次元皮膚モデルを使用した。
またHPLC分析条件としては、実施例20〜22においては、カラム:Waters社製XTerra MS C18 5μm 4.6×50mm Column、溶離液:1%蟻酸、20%メタノール、流速:1.0ml/min、カラム温度40℃、注入量:20μl、測定波長210nmにて分析した。実施例23から26までは、カラム:YMC−PackODS−A 150*6.0mmI.D. S−5μm 12nm(AA12S05−1506WT)、溶離液:50mM NaH2PO4(pH=2):MeOH=60:40、流速:1.0ml/min、カラム温度:40℃、注入量:10μl、測定波長210nmにて分析した。
【0069】
◎:T
1/T
0> 2.0
○:2.0 ≧ T
1/T
0 > 1.5
△:1.5 ≧ T
1/T
0 > 1.0
×:1.0 ≧ T
1/T
0【0070】
【表2】
【表3】
【0071】
表2、表3より、(A)成分に(B)成分を添加すると、経皮吸収性が改善することがわかった。なお、溶解性の改善よりも、経皮吸収性の改善のほうが顕著であることが明らかであり、(B)成分は(A)成分の経皮吸収助剤として使用することができることがわかった。
【0072】
以下に本発明の化粧料を例示する。いずれも、使用感、経皮吸収性に優れた化粧料である。
【0073】
【表4-1】
【0074】
【表4-2】
【0075】
【表5-1】
【0076】
【表5-2】
【0077】
【表6-1】
【0078】
【表6-2】
【0079】
【表7-1】
【0080】
【表7-2】
【0081】
【表7-3】
【0082】
【表8-1】
【0083】
【表8-2】
【0084】
【表9】
【0085】
*1:表10の抽出物1から59のいずれをも使用することができる
*2:表11の混合物1から5のいずれをも使用することができる
【0086】
【表10-1】
【0087】
【表10-2】
【0088】
【表11】
【0089】
表中BGは、1,3ブチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、DPGはジプロピレングリコールを、PEGはポリエチレングリコールを、PPGはポリプロピレングリコールを、PVPはポリビニルピロリドン、VAは酢酸ビニルを表す。